(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6181272
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】携帯用ゆで麺機
(51)【国際特許分類】
A47J 36/36 20060101AFI20170807BHJP
A47J 36/34 20060101ALI20170807BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
A47J36/36
A47J36/34
A47J27/00 101E
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-219504(P2016-219504)
(22)【出願日】2016年11月10日
【審査請求日】2017年1月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597046546
【氏名又は名称】草野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(72)【発明者】
【氏名】草野 秀雄
【審査官】
豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−333368(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3098588(JP,U)
【文献】
実公昭51−019584(JP,Y2)
【文献】
実開昭60−053216(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/34
F24C 15/10
A47J 27/00 − 36/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺ゆで用の鍋本体と、該鍋本体の周囲に配置する保温筒体と、鍋本体を支持すると共に、鍋本体の下に設置される携帯用ガスバーナーの設置スペースを確保する載置台とで構成される携帯用ゆで麺機であって、保温筒体の内周面に沿って蓄熱コイルを装着し、
該蓄熱コイルは金属製の丸棒材が螺旋状に巻き上げられ、該蓄熱コイルの一部が前記保温筒体の内側面に固定されると共に、該固定部以外の蓄熱コイルが鍋本体の外側面と保温筒体の内側面とから離れた位置で鍋本体を巻き込むように設置され、携帯用ガスバーナーの火力で鍋本体と共に該蓄熱コイルを直接加熱するように構成したことを特徴とする携帯用ゆで麺機。
【請求項2】
前記保温筒体は、前記載置台の上に被せて載置する鍔状を成した載置部と、該載置部から上方に延長され前記鍋本体の外周面を囲む壁面部と、該壁面部の上部に開穿された複数個の排気口と、前記鍋本体を巻き込むように設置した前記蓄熱コイルとを備えた請求項1記載の携帯用ゆで麺機。
【請求項3】
前記鍋本体は、前記保温筒体の内部に挿入する有底筒状の鍋部と、該鍋部の底部の外側下面に溶接された金属製の蓄熱部と、鍋部の上端に形成され前記保温筒体の上端部に係止する鍔状の係止部とを備えた請求項1記載の携帯用ゆで麺機。
【請求項4】
前記載置台は、平面略C字形状を成した基盤と、該基盤に立設する複数の支柱と、該支柱の上端部に連結された平面円形状を成した載置部とを備え、基盤の解放端部から載置台内部に前記携帯用ガスバーナーをスライド移動させるように構成した請求項1記載の携帯用ゆで麺機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばケータリングやキャンプ場等で、携帯用のガスバーナーを使用して各種の麺類を本格的に茹でることが可能な携帯用ゆで麺機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケータリングは顧客の指定先に出向いて食事を提供する業務である。特に、ラーメンやパスタ等の麺類を指定先やキャンプ場などの屋外などで調理する場合は、市販されている携帯用のガスバーナーを使用して麺類を茹でることがある。
【0003】
一方、業務用のゆで麺機として使用する加熱調理機が特許文献1に記載されている。この加熱調理機は、鍋本体となる湯槽の外周壁に、フィンを旋回するように設けることで、鍋本体の加熱効率を高めるようとするものである。すなわち、ガスバーナーによる火炎や燃焼ガスが、湯槽外周壁のフィンによって旋回上昇すると、加熱効率が良くなり、湯槽内の湯の沸騰が早く、麺の良好な茹で上りが保証されるというものである。
【0004】
また、特許文献2に記載のゆで麺機は、鍋本体の周囲に円環状の余熱タンクを装着し、該余熱タンクの内周面にコルゲートフィンを設けたものである。このコルゲートフィンを余熱タンクの内周面に配設することで、ガスバーナーの排気ガスの熱を吸収し、余熱タンクの内部に貯めた水又は湯への熱交換を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3990930号公報
【特許文献2】特開2011−194007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1では、フィンによる旋回を促進するために、火炎を炎口から斜め上方に旋回状に噴出させる、所謂、旋回流ガスバーナーを使用するものである。この旋回流ガスバーナーは、燃料と空気を別々に燃焼器に送り,燃焼器内で主として渦による混合を行わせながら燃焼を進行させる型式のもので、工場などで多く用いられるバーナーである。そのため、特許文献1のゆで麺機は、厨房で加熱効率を高めることが可能でも、市販されている携帯用のガスバーナーを使用し、屋外等で鍋本体の加熱効率を高めることは想定されていない。
【0007】
一方、特許文献2に記載のゆで麺機は、鍋本体の周囲に円環状の余熱タンクを装着して鍋本体を保温する構成を採用している。このような保温構成は、ゆで麺機を屋外で使用する場合に好ましい構成であるといえる。すなわち、鍋本体が直接外気に触れると鍋本体の温度が急激に低下するおそれがある。そこで、余熱タンクで鍋本体を保温すると外気温の影響を受け難くすることができるので携帯用のゆで麺機として好適である。
【0008】
ところが、特許文献2の余熱タンクは、まず、余熱タンク内の貯留水を保温可能な温度まで高める必要がある。そのため、余熱タンクの温度が上昇するまでに多くの時間を要する不都合がある。しかも、余熱タンクの温度が十分に高まっていないと、鍋本体の側面から加熱するといった補助的効果も期待することはできない。したがって、貯留水を長時間加熱しなければならない余熱タンクは、携帯用のガスバーナーを使用して麺を効率良く茹でる場合に不都合が生じる。
【0009】
このように、従来のゆで麺機は、携帯用のガスバーナーを使用して麺を効率良く茹でることが極めて困難であることから、各種麺類を本格的に茹でることが可能な携帯用のゆで麺機はこれまで提案されていなかった。
【0010】
そこで本発明は、上述の課題を解消すべく創出されたもので、携帯用のガスバーナーを使用して各種の麺類を本格的に茹でることが可能な携帯用ゆで麺機の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、麺ゆで用の鍋本体10と、該鍋本体10の周囲に配置する保温筒体20と、鍋本体10を支持すると共に、鍋本体10の下に設置される携帯用ガスバーナーPの設置スペースを確保する載置台30とで構成される携帯用ゆで麺機であって、保温筒体20の内側面に沿って蓄熱コイル21を装着し、該
蓄熱コイル21は金属製の丸棒材が螺旋状に巻き上げられ、該蓄熱コイル21の一部が保温筒体20の内側面に固定されると共に、該固定部以外の蓄熱コイル21が鍋本体10の外側面と保温筒体20の内側面とから離れた位置で鍋本体10を巻き込むように設置され、携帯用ガスバーナーPの火力で鍋本体10と共に該蓄熱コイル21を直接加熱するように構成したことにある。
【0013】
第
2の手段において、前記保温筒体20は、前記載置台30の上に被せて載置する鍔状を成した載置部22と、該載置部22から上方に延長され前記鍋本体10の外周面を囲む壁面部23と、該壁面部23の上部に開穿された複数個の排気口24と、前記鍋本体10を巻き込むように設置した前記蓄熱コイル21とを備えている。
【0014】
第
3の手段の前記鍋本体10は、前記保温筒体20の内部に挿入する有底筒状の鍋部11と、該鍋部11の底部の外側下面に溶接された金属製の蓄熱部12と、鍋部11の上端に形成され前記保温筒体20の上端部に係止する鍔状の係止部13とを備えたものである。
【0015】
第
4の手段の前記載置台30は、平面略C字形状を成した基盤31と、該基盤31に立設する複数の支柱32と、該支柱32の上端部に連結された平面円形状を成した載置部33とを備え、基盤31の解放端部から載置台30内部に前記携帯用ガスバーナーPをスライド移動させるように構成している。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1によると、保温筒体20の内側面に沿って蓄熱コイル21を装着し、該蓄熱コイル21が鍋本体10の外側面と保温筒体20の内側面とから離れた位置で鍋本体10を巻き込むように設置して、携帯用ガスバーナーPの火力で鍋本体10と共に該蓄熱コイル21を直接加熱するように構成したことにより、鍋本体10内の湯を沸かし上げる際に、この蓄熱コイル21を効率良く加熱することができる。
【0017】
すなわち、加熱された蓄熱コイル21は、鍋本体10の外側面と保温筒体20の内側面とから離れた位置で鍋本体10を巻き込むように設置しているので、高温ガスの流動通路を確保し、昇温がスムーズになるだけでなく、鍋本体10を側面から加熱することができる。したがって、鍋本体10に与える熱効率を高め、使用するガスの消費を抑えることが可能になる。この結果、携帯用ガスバーナーPを使用して短時間で麺を茹で上げることが可能になり、ケータリングやキャンプ場など、厨房以外での使用を可能にしたものである。
【0018】
しかも、蓄熱コイル21は金属製の丸棒材が螺旋状に巻き上げられ、該蓄熱コイル21の上端部と下端部とが保温筒体20の内側面に固定されると共に、該固定部以外の蓄熱コイル21は鍋本体10の外側面と保温筒体20の内側面とから離れた位置に設置されるように構成したものであるから、鍋本体10を有効に保温する効果も有する。
【0019】
すなわち、蓄熱コイル21は保温筒体20の内周面から離れた位置に設置されているので、蓄熱コイル21の熱が保温筒体20に伝導し難くなっている。そのため、仮に保温筒体20が外気に触れて急激な温度低下が生じたとしても、蓄熱コイル21の温度低下を抑制する。したがって、屋外で使用する場合でも鍋本体10を極めて効率良く保温することができる。
【0020】
また、請求項
2によると、保温筒体20は、載置台30の上に被せて載置する鍔状を成した載置部22と、鍋本体10の外周面を囲む壁面部23と、該壁面部23の上部に開穿された複数個の排気口24と、鍋本体10を巻き込むように設置される蓄熱コイル21とを備えているので、保温筒体20の構成が簡素化し、携帯に都合が良く、しかも、保温筒体20の設置や撤去が極めて容易になる。
【0021】
更に、請求項
3のごとく、鍋本体10は、有底筒状の鍋部11と、該鍋部11の底部の外側下面に溶接された金属製の蓄熱部12と、鍋部11の上端に形成され保温筒体20の上端部に係止する鍔状の係止部13とを備えたものであるから、湯切り用の振りザル等を使用することが可能になり、ぬめりの無い本格的な麺を提供することが可能になる。
【0022】
請求項
4によると、シンプルな構成で鍋本体10や保温筒体20を安定した状態で支持することができ、しかも、携帯用ガスバーナーPの設置や携帯に好適である。
【0023】
このように本発明によると、携帯用のガスバーナーで各種の麺類を本格的に茹でることが可能になるなどといった当初の目的を達成した。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図3】本発明の蓄熱コイルを示す要部断面図である。
【
図4】本発明の載置台を示す使用状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、携帯用ガスバーナーPの火力で加熱する携帯用ゆで麺機であり、基本構成として、鍋本体10、保温筒体20、載置台30にて構成されている(
図1参照)。
【0026】
鍋本体10は、麺ゆで用に構成したもので、後述する保温筒体20の内部に挿入する鍋部11を備えている。この鍋部11は、湯切り用の振りザル等の使用が可能な有底筒状に形成している。更に鍋部11の底部には蓄熱部12を設けている。
【0027】
図示の蓄熱部12は、金属製の棒状を成し、底部の外側下面に略井桁状に溶接されており、携帯用ガスバーナーPの熱を蓄熱部12に蓄えて鍋部11を効率良く加熱し、保温する。この蓄熱部12の形状や材質は任意に変更することができる。更に、鍋部11の上端に鍔状の係止部13を形成している。この係止部13は、保温筒体20の上端部に係止する部位である。
【0028】
保温筒体20は、鍋本体10の周囲に配置する筒状の部材である。この保温筒体20には、蓄熱コイル21、載置部22、壁面部23、排気口24が設けられている(
図1参照)。
【0029】
蓄熱コイル21は、保温筒体20の内周面に沿って装着したコイル状部材である(
図2参照)。この蓄熱コイル21は鍋本体10の外側面と保温筒体20の内側面とから離れた位置で鍋本体10を巻き込むように設置している。そして、携帯用ガスバーナーPで鍋本体10加熱すると、蓄熱コイル21も携帯用ガスバーナーPから上昇する熱で直接加熱されるように構成したものである。
【0030】
図示の蓄熱コイル21は、金属製の丸棒材が螺旋状に巻き上げられ、蓄熱コイル21の一部が前記保温筒体20の内側面に固定される。このとき固定手段は、例えば蓄熱コイル21の上端部と下端部とを保温筒体20の内側面に溶着して固定する手段や、ボルト、ナット等を使用した他の固定手段など、任意の固定手段を選択することができる(図示せず)。そして、固定部以外の蓄熱コイル21は、鍋本体10の外側面と保温筒体20の内周面とから離れた位置に設置されている(
図3参照)。
【0031】
実験によると、湯切り用の振りザル等の使用が可能な鍋本体10を囲む保温筒体20に蓄熱コイル21を巻き付ける場合、コイル径を10mmとし、保温筒体20の壁面部23内側と蓄熱コイル21との間隙を2mm、鍋本体10の鍋部11外側と蓄熱コイル21との間隙を3mmに設定し、コイルピッチを25mmにして設置したときに、蓄熱コイル21の余熱は外気温に拘わらず1〜2分持続することが分かった。この蓄熱コイル21は、鍋本体10を保温するのみならず、加熱された蓄熱コイル21が鍋本体10の側面を加熱するので、湯を沸かし上げる時間を短縮すると共に、鍋本体10を効率良く保温することも可能になる。
【0032】
載置部22は、載置台30の上に被せて載置する鍔状を成した部位である(
図2参照)。壁面部23は、載置部22から上方に延長され鍋本体10の外周面を囲む筒状部位で、この壁面部23の上部に複数個の排気口24を開穿している(
図1参照)。
【0033】
載置台30は、鍋本体10を支持すると共に、鍋本体10の下に設置される携帯用ガスバーナーPの設置スペースを確保する支持部材である(
図1参照)。図示の載置台30は、平面略C字形状を成した基盤31と、該基盤31に立設する複数の支柱32と、該支柱32の上端部に連結された平面円形状を成した載置部33とを備えている。そして、基盤31の解放端部から載置台30内部に前記携帯用ガスバーナーPをスライド移動させるように構成したものである(
図4参照)。
【0034】
この携帯用ガスバーナーPは携帯用ガスボンベQを使用するものであるから、携帯用のガスコンロなどの使用も可能である。また、載置台30の形状も使用する携帯用ガスバーナーPによって任意に変更することが可能である。
【0035】
本発明の鍋本体10、保温筒体20、載置台30の構成等は図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で自由に設計変更できるものである。
【符号の説明】
【0036】
P 携帯用ガスバーナー
Q 携帯用ガスボンベ
10 鍋本体
11 鍋部
12 蓄熱部
13 係止部
20 保温筒体
21 蓄熱コイル
22 載置部
23 壁面部
24 排気口
30 載置台
31 基盤
32 支柱
33 載置部
【要約】
【課題】携帯用のガスバーナーで各種の麺類を本格的に茹でることが可能な携帯用ゆで麺機を提供する。
【解決手段】麺ゆで用の鍋本体10と、該鍋本体10の周囲に配置する保温筒体20とを設ける。鍋本体10を支持する載置台30を設ける。鍋本体10の下に設置する載置台30を設ける。保温筒体20の内周面に沿って蓄熱コイル21を装着する。該蓄熱コイル21を鍋本体10の外側面と保温筒体20の内周面とから離れた位置に設置する。蓄熱コイル21で鍋本体10を巻き込むように設置する。
【選択図】
図2