特許第6181286号(P6181286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181286
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/28 20060101AFI20170807BHJP
   F16B 2/22 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   A61M39/28 110
   F16B2/22 C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-506712(P2016-506712)
(86)(22)【出願日】2016年2月3日
(86)【国際出願番号】JP2016053180
(87)【国際公開番号】WO2016125820
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2016年2月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-18906(P2015-18906)
(32)【優先日】2015年2月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】船村 重彰
【審査官】 落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/162376(WO,A1)
【文献】 特開2003−235971(JP,A)
【文献】 特開2009−022744(JP,A)
【文献】 特開2012−075520(JP,A)
【文献】 特開2005−27721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/28
A61M 5/14
F16B 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に第1凸部が形成されるとともに、先端に被係止部が形成された一端部と、
前記第1凸部に対向する部位に第2凸部が形成されるとともに、前記被係止部を係止可能な係止部が形成された他端部と、
前記一端部及び他端部に連なる中間部と、
前記第1凸部と第2凸部との間に可撓性チューブを挿通させ得る挿通孔と、
を具備し、前記一端部を押圧して前記他端部に近接させることにより前記被係止部を係止部に係止させたクランプ状態とし、前記他端部を撓ませることにより前記係止部による被係止部の係止を解除して非クランプ状態とし得るとともに、前記クランプ状態で前記第1凸部と第2凸部とが近接して前記可撓性チューブをクランプし、その部位における流体の流れを遮断するクランプ装置において、
前記一端部又は他端部に干渉部が形成されるとともに、前記被係止部が係止部に係止された状態で前記一端部を更に押圧させたとき、前記干渉部が干渉して当該被係止部の移動を規制し得る構成とされ、且つ、前記干渉部は、前記他端部における前記係止部の近傍に形成された凸部から成り、前記被係止部が係止部に係止された状態で前記一端部を更に押圧させたとき、当該凸部が前記一端部の先端部であって前記被係止部の裏面側の部位に干渉し得ることを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
前記被係止部を係合部に係止させて可撓性チューブをクランプした状態で、当該可撓性チューブの長手方向に対する前記第1凸部及び第2凸部の相対的位置決めが可能な位置決め部を備えたことを特徴とする請求項1記載のクランプ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のクランプ装置が取り付けられたことを特徴とする医療用回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性チューブをクランプし、その部位における流体の流れを遮断するクランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に透析装置等における血液回路は、医療現場における患者の血液や生理食塩液又は投与する薬剤等を流動させる可撓性チューブから主に構成されており、ダイアライザーやエアトラップチャンバといった各構成要素間を連結するものである。かかる可撓性チューブの所望の部位を任意に遮断するためのクランプ装置は、従来、内側に第1凸部が形成されるとともに、先端に被係止部が形成された一端部と、第1凸部に対向する部位に第2凸部が形成されるとともに、被係止部を係止可能な係止部が形成された他端部と、一端部及び他端部に連なる中間部と、第1凸部と第2凸部との間に可撓性チューブを挿通させ得る挿通孔とを具備していた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
そして、一端部を押圧して他端部に近接させることにより係止部を被係止部に係止させたクランプ状態とし、他端部を撓ませることにより係止部による被係止部の係止を解除して非クランプ状態とし得るとともに、クランプ状態で第1凸部と第2凸部とが近接して可撓性チューブをクランプし、その部位における流体(血液や整理食塩液等)の流れを任意に遮断することができるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−27721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、被係止部が係止部に係止された状態で一端部を誤って更に押圧させたとき、係止部以外の意図しない部位に被係止部が引っかかってしまう可能性があり、その場合、クランプ装置全体が変形してその後のクランプ作用に支障が生じる虞があるとともに、クランプする部位が所望よりずれてしまって正常なクランプがなされない虞があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、可撓性チューブのクランプを常時良好に行わせることができ、より正確に可撓性チューブ内の流体の流れを遮断させることができるクランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、内側に第1凸部が形成されるとともに、先端に被係止部が形成された一端部と、前記第1凸部に対向する部位に第2凸部が形成されるとともに、前記被係止部を係止可能な係止部が形成された他端部と、前記一端部及び他端部に連なる中間部と、前記第1凸部と第2凸部との間に可撓性チューブを挿通させ得る挿通孔とを具備し、前記一端部を押圧して前記他端部に近接させることにより前記被係止部を係止部に係止させたクランプ状態とし、前記他端部を撓ませることにより前記係止部による被係止部の係止を解除して非クランプ状態とし得るとともに、前記クランプ状態で前記第1凸部と第2凸部とが近接して前記可撓性チューブをクランプし、その部位における流体の流れを遮断するクランプ装置において、前記一端部又は他端部に干渉部が形成されるとともに、前記被係止部が係止部に係止された状態で前記一端部を更に押圧させたとき、前記干渉部が干渉して当該被係止部の移動を規制し得る構成とされ、且つ、前記干渉部は、前記他端部における前記係止部の近傍に形成された凸部から成り、前記被係止部が係止部に係止された状態で前記一端部を更に押圧させたとき、当該凸部が前記一端部の先端部であって前記被係止部の裏面側の部位に干渉し得ることを特徴とする。
【0010】
請求項記載の発明は、請求項1記載のクランプ装置において、前記被係止部を係合部に係止させて可撓性チューブをクランプした状態で、当該可撓性チューブの長手方向に対する前記第1凸部及び第2凸部の相対的位置決めが可能な位置決め部を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のクランプ装置が取り付けられたことを特徴とする医療用回路である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、一端部又は他端部に干渉部が形成されるとともに、被係止部が係止部に係止された状態で一端部を更に押圧させたとき、干渉部が干渉して当該被係止部の移動を規制し得るので、可撓性チューブのクランプを常時良好に行わせることができ、より正確に可撓性チューブ内の流体の流れを遮断させることができる。
【0013】
また、干渉部は、他端部における係止部の近傍に形成された凸部から成り、被係止部が係止部に係止された状態で一端部を更に押圧させたとき、当該凸部が一端部の所定部位に干渉し得るので、他端部に凸部を形成させることにより可撓性チューブのクランプを常時良好に行わせることができ、より正確に可撓性チューブ内の流体の流れを遮断させることができる。
【0015】
請求項の発明によれば、前記被係止部を係合部に係止させて可撓性チューブをクランプした状態で、当該可撓性チューブの長手方向に対する第1凸部及び第2凸部の相対的位置決めが可能な位置決め部を備えたので、クランプ時の液漏れを防止しつつシール面積を最小限とすることができ、クランプを容易に解除させることができる。
【0016】
請求項の発明によれば、請求項1又は請求項2記載のクランプ装置による効果を伴った医療用回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るクランプ装置を示す斜視図
図2】同クランプ装置(非クランプ状態)を示す側面図
図3】同クランプ装置(クランプ状態)を示す側面図
図4】同クランプ装置(干渉部が干渉した状態)を示す側面図
図5】同クランプ装置が取り付けられた医療用回路を示す模式図
図6第1の参考例に係るクランプ装置(非クランプ状態)を示す側面図
図7】同クランプ装置(クランプ状態)を示す側面図
図8】同クランプ装置(干渉部が干渉した状態)を示す側面図
図9第2の参考例に係るクランプ装置(非クランプ状態)を示す側面図
図10】同クランプ装置(クランプ状態)を示す側面図
図11】同クランプ装置(干渉部が干渉した状態)を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
実施形態に係るクランプ装置1は、可撓性チューブをクランプし、その部位における流体の流れを遮断するもので、図1〜4に示すように、第1凸部2aが形成された一端部2と、第2凸部3aが形成された他端部3と、これら一端部2及び他端部3に連なる中間部4とから主に成り、これら部位は所定の樹脂(射出成形等が可能な熱可塑性樹脂が好ましく、例えばポリプロピレン、ポリエチレン又はポリアセタール等が挙げられるが、これに限定されるものではない。)を一体成形して構成されている。なお、図1、2は、クランプ装置1が非クランプ状態のとき、図3はクランプ状態のときを示している。
【0019】
一端部2は、その内側の面(他端部3と対向する面)から下方に突出形成された第1凸部2aが一体形成されているとともに、外側の面には作業者がクランプ作業時に指を滑らせないよう凹凸形状が形成されている。また、一端部2の先端には、後述する係止部6によって係止可能な被係止部5が形成されている。他端部3は、第1凸部2aと対向する部位に第2凸部3aが一体形成されているとともに、被係止部5を係止し得る係止部6が一体形成されている。
【0020】
中間部4は、一端部2及び他端部3に連なる部位(一端部2及び他端部3の間の部位)から成り、可撓性チューブTを挿通させるための一方の挿通孔H1が形成されている。一方、他端部3は、中間部4から略直線状に延びた部位(第2凸部3aが形成された部位)とそこから屈曲しつつ立ち上がった部位(係止部6が形成された部位)とを有しており、立ち上がった部位には、可撓性チューブTを挿通させるための他方の挿通孔H2が形成されている。
【0021】
本実施形態に係るクランプ装置1は、図2に示すように、一端部2の先端と他端部3の先端とが離間した非クランプ状態において、一方の挿通孔H1及び他方の挿通孔H2に可撓性チューブTを挿通させた後、一端部2を図2中α方向に押圧して中間部4を撓ませることにより、一端部2を他端部3に近接させると、図3に示すように、係止部6が被係止部5を係止させたクランプ状態となる。かかるクランプ状態においては、第1凸部2aと第2凸部3aとが近接して挿通孔H1、H2に亘って挿通された可撓性チューブTをクランプし、その部位における流体の流れを遮断し得るようになっている。
【0022】
しかるに、図3で示すクランプ状態において、同図中β方向に他端部3を撓ませることによって係止部6による被係止部5の係止を解除し、図2に示す非クランプ状態とすることができる。すなわち、係止部6による被係止部5の係止を解くと、クランプ装置1を構成する樹脂材の復元力によって一端部2の先端と他端部3の先端とが離間する方向に自然と移動するのである。かかる非クランプ状態においては、第1凸部2aと第2凸部3aとが離間しており、可撓性チューブTに対するクランプが解除された状態(非クランプ状態)とされている。
【0023】
また、本実施形態に係るクランプ装置1においては、他端部3の両側縁に壁部8が一体形成されている。かかる壁部8は、他端部3の両側縁から一端部2に向かって立設された一対の壁形状から成り、挿通孔H1、H2に亘って挿通された可撓性チューブTがその径方向(長手方向と直交する方向)に移動してしまうのを規制し得るようになっている。なお、クランプ状態において、壁部8に一端部2が干渉してしまうのを回避するため、当該一端部2の両側縁には切欠きmが形成されている。
【0024】
さらに、本実施形態に係るクランプ装置1に係る壁部8には、一端部2側に開口した凹溝から成る被嵌入部8aが形成されている。かかる被嵌入部8aは、図3に示すように、被係止部5を係止部6に係止して可撓性チューブTがクランプされた状態において、第1凸部2aの両端部から成る嵌入部2aaを嵌入可能とされている。すなわち、被係止部5を係止部6に係止させた状態で被嵌入部8aに嵌入部2aaが嵌入することにより第1凸部2a及び第2凸部3aの可撓性チューブTの長手方向に対する相対的位置決めが可能とされているのである。
【0025】
しかして、本実施形態に係る嵌入部2aa及び被嵌入部8aは、本発明の「位置決め部」を構成しており、被係止部5を係合部6に係止させて可撓性チューブTをクランプした状態で、当該可撓性チューブTの長手方向(すなわち、第1凸部2a及び第2凸部3aの延設方向と直交する方向であって、図3中左右方向)に対する第1凸部2a及び第2凸部3aの相対的位置決めが可能とされたものである。
【0026】
このように、嵌入部2aa及び被嵌入部8aから成る位置決め部を有することにより、クランプ時の液漏れを防止しつつシール面積を最小限とすることができ、クランプを容易に解除させることができる。特に、本実施形態に係る位置決め部は、一端部2及び他端部3にそれぞれ形成された嵌入部2aa及び被嵌入部8aから成り、被係止部5を係止部6に係止させた状態で当該被嵌入部8aに嵌入部2aaが嵌入することにより第1凸部2a及び第2凸部3aの相対的位置決めが可能とされたので、可撓性チューブTの長手方向に対する第1凸部2a及び第2凸部3aの相対的位置決めをより確実に行わせることができる。
【0027】
また、他端部3における側面の縁部から立設した壁部8を有するとともに、当該壁部8に被嵌入部8aが形成されたので、被嵌入部8aに対する嵌入をより円滑且つ確実に行わせることができる。なお、壁部8を一端部2における側面の縁部から他端部3に向かって立設させてもよく、この場合、壁部8に凹溝から成る被嵌入部を形成するとともに、当該被嵌入部に嵌入させ得る嵌入部が他端部3側に形成される。
【0028】
さらに、本実施形態に係る一対の壁部8は、一端部2又は他端部3における両側面の縁部からそれぞれ立設されるとともに、被係止部5を係止部6に係止させる過程で一端部2を案内し得るものとされている。このように、本実施形態に係るクランプ装置1によれば、位置決め部(嵌入部2aa及び被嵌入部8a)及び壁部8が形成されているので、可撓性チューブTの長手方向に対する第1凸部2a及び第2凸部3aの相対的位置決めに加え、係止過程において一端部2の案内を行わせることができる。
【0029】
ここで、本実施形態に係る他端部3には、干渉部7が一体形成されている。かかる干渉部7は、他端部3の先端部における内側の係止部6の近傍に一体形成された凸部から成り、被係止部5が係止部6に係止された状態(図3で示すクランプ状態)で一端部2を更にα方向に押圧させたとき、図4に示すように、干渉部7が一端部2の所定部位P1に干渉して当該被係止部5の移動を規制し得るよう構成されている。なお、本実施形態における干渉部7が干渉する部位は、一端部2の先端両縁部であって被係止部5の裏面側とされている。
【0030】
本実施形態に係るクランプ装置1は、図5に示すように、患者の血液を体外循環させるための動脈側血液回路D1及び静脈側血液回路D2を有した血液回路(医療用回路)に取り付けられる。すなわち、本クランプ装置1は、動脈側血液回路D1及び静脈側血液回路D2の任意流路や分岐した流路に接続され、体外循環する血液や生理食塩液等の流れを遮断し得るようになっている。なお、同図においては、動脈側血液回路D1から分岐した流路、及び静脈側血液回路D2に接続された静脈側エアトラップチャンバfから延設した流路にそれぞれクランプ装置1が取り付けられている。なお、クランプ装置の配設位置は、医療用回路の可撓性チューブであれば何れの位置であってもよい。
【0031】
しかるに、動脈側血液回路D1は、その先端に動脈側穿刺針が取付可能なシャントコネクタaを有し、途中に動脈側エアトラップチャンバeが接続されるとともに、その基端に血液浄化器(ダイアライザ)の動脈側接続部と接続可能なダイアライザ接続部cを有している。また、静脈側血液回路D2は、その先端に静脈側穿刺針が取付可能なシャントコネクタbを有し、途中に静脈側エアトラップチャンバfが接続されるとともに、その基端に血液浄化器(ダイアライザ)の静脈側接続部と接続可能なダイアライザ接続部dを有している。符号Bは、可撓性チューブ内に対して薬剤等を注入又は血液等を採取し得るゴムボタン(混注部材)を示している。
【0032】
本実施形態によれば、他端部3に干渉部7が形成されるとともに、被係止部5が係止部6に係止された状態で一端部2をα方向に更に押圧させたとき、干渉部7が一端部2の所定部位P1と干渉して当該被係止部5の移動を規制し得るので、可撓性チューブTのクランプ時、係止部6以外の意図しない部位に被係止部5が引っかかってしまうのを抑制できる。したがって、可撓性チューブのクランプを常時良好に行わせることができ、より正確に可撓性チューブ内の流体の流れを遮断させることができる。
【0033】
また、本実施形態に係る干渉部7は、他端部3における係止部6の近傍に形成された凸部から成り、被係止部5が係止部6に係止された状態で一端部2を更にα方向に押圧させたとき、当該凸部が一端部2の所定部位P1に干渉し得るので、他端部3に凸部を形成させることにより可撓性チューブTのクランプを常時良好に行わせることができ、より正確に可撓性チューブT内の流体の流れを遮断させることができる。さらに、図5に示すように、本実施形態のクランプ装置1が取り付けられた医療用回路によれば、上記の如きクランプ装置1の効果を伴った医療用回路を提供することができる。
【0034】
次に、第1の参考例に係るクランプ装置について説明する。
参考例に係るクランプ装置1’は、実施形態と同様、可撓性チューブをクランプし、その部位における流体の流れを遮断するもので、図6〜8に示すように、第1凸部2aが形成された一端部2と、第2凸部3aが形成された他端部3と、これら一端部2及び他端部3に連なる中間部4とから主に成り、これら部位は所定の樹脂(射出成形等が可能な熱可塑性樹脂が好ましく、例えばポリプロピレン、ポリエチレン又はポリアセタール等が挙げられるが、これに限定されるものではない。)を一体成形して構成されている。なお、図6は、クランプ装置1’が非クランプ状態のとき、図7はクランプ状態のときを示している。実施形態と同様の部位には、同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略することとする。
【0035】
参考例に係るクランプ装置1’は、図6に示すように、一端部2の先端と他端部3の先端とが離間した非クランプ状態において、一方の挿通孔H1及び他方の挿通孔H2に可撓性チューブTを挿通させた後、一端部2を図6中α方向に押圧して中間部4を撓ませることにより、一端部2を他端部3に近接させると、図7に示すように、係止部6が被係止部5を係止させたクランプ状態となる。一方、図7で示すクランプ状態において、同図中β方向に他端部3を撓ませることによって係止部6による被係止部5の係止を解除し、図6に示す非クランプ状態とすることができる。
【0036】
参考例に係る他端部3には、干渉部9が一体形成されている。かかる干渉部9は、他端部3における内側の第2凸部3aの近傍に一体形成された凸部(壁状の凸部)から成り、被係止部5が係止部6に係止された状態(図7で示すクランプ状態)で一端部2を更にα方向に押圧させたとき、図8に示すように、干渉部9の突端部が一端部2の所定部位P1に干渉して当該被係止部5の移動を規制し得るよう構成されている。なお、本参考例における干渉部9が干渉する部位は、一端部2の先端両縁部であって被係止部5の裏面側とされている。
【0037】
参考例によれば、他端部3に干渉部9が形成されるとともに、被係止部5が係止部6に係止された状態で一端部2をα方向に更に押圧させたとき、干渉部9が一端部2の所定部位P1と干渉して当該被係止部5の移動を規制し得るので、可撓性チューブTのクランプ時、係止部6以外の意図しない部位に被係止部5が引っかかってしまうのを抑制できる。したがって、可撓性チューブのクランプを常時良好に行わせることができ、より正確に可撓性チューブ内の流体の流れを遮断させることができる。
【0038】
また、本参考例に係る干渉部9は、他端部3における第2凸部3aの近傍に形成された凸部から成り、被係止部5が係止部6に係止された状態で一端部2を更にα方向に押圧させたとき、当該凸部が一端部2の所定部位P1に干渉し得るので、他端部3に凸部を形成させることにより可撓性チューブTのクランプを常時良好に行わせることができ、より正確に可撓性チューブT内の流体の流れを遮断させることができる。さらに、図5に示すように、本参考例のクランプ装置1’が取り付けられた医療用回路とすれば、上記の如きクランプ装置1’の効果を伴った医療用回路を提供することができる。
【0039】
次に、第2の参考例に係るクランプ装置について説明する。
参考例に係るクランプ装置1”は、実施形態及び第1の参考例と同様、可撓性チューブをクランプし、その部位における流体の流れを遮断するもので、図9〜11に示すように、第1凸部2aが形成された一端部2と、第2凸部3aが形成された他端部3と、これら一端部2及び他端部3に連なる中間部4とから主に成り、これら部位は所定の樹脂(例えば、ポリプロピレン、オレフィン系樹脂又はポリエチレン等)を一体成形して構成されている。なお、図9は、クランプ装置1”が非クランプ状態のとき、図10はクランプ状態のときを示している。実施形態と同様の部位には、同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略することとする。
【0040】
参考例に係るクランプ装置1”は、図9に示すように、一端部2の先端と他端部3の先端とが離間した非クランプ状態において、一方の挿通孔H1及び他方の挿通孔H2に可撓性チューブTを挿通させた後、一端部2を図9中α方向に押圧して中間部4を撓ませることにより、一端部2を他端部3に近接させると、図10に示すように、係止部6が被係止部5を係止させたクランプ状態となる。一方、図10で示すクランプ状態において、同図中β方向に他端部3を撓ませることによって係止部6による被係止部5の係止を解除し、図9に示す非クランプ状態とすることができる。
【0041】
参考例に係る一端部2には、干渉部10が一体形成されている。かかる干渉部10は、一端部2の先端における被係止部5の近傍に一体形成された凸部から成り、被係止部5が係止部6に係止された状態(図10で示すクランプ状態)で一端部2を更にα方向に押圧させたとき、図11に示すように、干渉部10が他端部3の所定部位P2に干渉して当該被係止部5の移動を規制し得るよう構成されている。なお、本参考例における干渉部10が干渉する部位は、他端部3の先端部であって係止部6の反対面側とされている。
【0042】
参考例によれば、一端部2に干渉部10が形成されるとともに、被係止部5が係止部6に係止された状態で一端部2をα方向に更に押圧させたとき、干渉部10が他端部3の所定部位P2と干渉して当該被係止部5の移動を規制し得るので、可撓性チューブTのクランプ時、係止部6以外の意図しない部位に被係止部5が引っかかってしまうのを抑制できる。したがって、可撓性チューブのクランプを常時良好に行わせることができ、より正確に可撓性チューブ内の流体の流れを遮断させることができる。
【0043】
また、本参考例に係る干渉部10は、一端部2における被係止部5の近傍に形成された凸部から成り、被係止部5が係止部6に係止された状態で一端部2を更にα方向に押圧させたとき、当該凸部が他端部3の所定部位P2に干渉し得るので、一端部2に凸部を形成させることにより可撓性チューブTのクランプを常時良好に行わせることができ、より正確に可撓性チューブT内の流体の流れを遮断させることができる。さらに、図5に示すように、本参考例のクランプ装置1”が取り付けられた医療用回路とすれば、上記の如きクランプ装置1”の効果を伴った医療用回路を提供することができる。
【0044】
なお、本参考例においては、実施形態と同様、被係止部5を係止部6に係止させた状態で被嵌入部8aに嵌入部2aaが嵌入することにより第1凸部2a及び第2凸部3aの可撓性チューブTの長手方向に対する相対的位置決めが可能とされている。このように、嵌入部2aa及び被嵌入部8aから成る位置決め部を有することにより、クランプ時の液漏れを防止しつつシール面積を最小限とすることができ、クランプを容易に解除させることができる。
【0045】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば他端部3に壁部8が形成されないもの、或いは一端部2に壁部8と同様の壁部が形成されたものであってもよい。また、係止部6の形成位置、形状又は突出寸法、或いは被係止部5の形成位置、形状等は、任意設定することができるとともに、干渉部の位置や形状等も任意設定することができる。なお、本発明に係るクランプ装置が取り付けられる医療用回路は、血液回路に限定されず、可撓性チューブを有する種々の医療用回路に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
一端部又は他端部に干渉部が形成されるとともに、被係止部が係止部に係止された状態で一端部を更に押圧させたとき、干渉部が干渉して当該被係止部の移動を規制し得る構成とされ、且つ、干渉部は、他端部における係止部の近傍に形成された凸部から成り、被係止部が係止部に係止された状態で一端部を更に押圧させたとき、当該凸部が一端部の先端部であって被係止部の裏面側の部位に干渉し得るクランプ装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1、1’、1” クランプ装置
2 一端部
2a 第1凸部
2aa 嵌入部(位置決め部)
3 他端部
3a 第2凸部
4 中間部
5 被係止部
6 係止部
7 干渉部
8 壁部
8a 被嵌入部(位置決め部)
9 干渉部
10 干渉部
T 可撓性チューブ
H1、H2 挿通孔
図1
図2
図3
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図5
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図11