特許第6181292号(P6181292)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181292粉末状の前駆材料を製造する方法、粉末状の前駆材料およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181292
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】粉末状の前駆材料を製造する方法、粉末状の前駆材料およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/596 20060101AFI20170807BHJP
   C01B 21/082 20060101ALI20170807BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20170807BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20170807BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20170807BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C04B35/596
   C01B21/082 J
   H01L33/50
   C09K11/08 B
   C09K11/64CQD
   C09K11/08 J
   G02B5/20
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-514315(P2016-514315)
(86)(22)【出願日】2014年4月17日
(65)【公表番号】特表2016-527163(P2016-527163A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2014057957
(87)【国際公開番号】WO2014187624
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2016年1月20日
(31)【優先権主張番号】102013105304.1
(32)【優先日】2013年5月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ビアンカ ポール−クライン
(72)【発明者】
【氏名】ユリアーネ ケヒェレ
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−163078(JP,A)
【文献】 特開2001−322871(JP,A)
【文献】 特表2010−525092(JP,A)
【文献】 特開2006−052337(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/084848(WO,A1)
【文献】 特表2009−545660(JP,A)
【文献】 特表2011−515536(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/135975(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/053601(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
C01B 21/082
C09K 11/00−11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般的な組成IまたはIIまたはIIIまたはIV、すなわち、
I: (CaySr1-y)AlSiN3:X1
II: (CabSraLi1-a-b)AlSi(N1-cc)3:X2
III: Z5-δAl4-2δSi8+2δ18:X3
IV: (Z1-dLid)5-δAl4-2δSi8+2δ(N1-xx)18:X4
蛍光体に使用するための粉末状の前駆材料を製造する方法であって、
ただし、X1およびX2およびX3およびX4はそれぞれ、1つの活性剤または複数の活性剤の組み合わせであり、当該活性剤は、ランタノイド、Mn2+および/またはMn4+のグループから選択され、
Zは、Ca,Sr,Mgのグループおよびその組み合わせから選択され、ただし、0≦y<1かつ0≦a<1かつ0≦b<1かつ0<c≦1かつ|δ|≦0.5かつ0≦x<1かつ0≦d<1が成り立つ、粉末状の前駆材料を製造する方法において、
前記方法は、
A) 複数の出発物質の粉末状の混合物を製造するステップであって、当該出発物質には、前記組成IまたはIIまたはIIIまたはIVの複数のイオンが含まれているステップと、
B) 不活性または還元雰囲気下で前記混合物を焼成し、引き続いて粉砕するステップとを有しており、
ステップA)では、出発物質として、5m2/g以上100m2/g以下の比表面積を有する1つの窒化ケイ素が選択され、ステップB)における焼成は、1550℃以下の温度で行われ、
前記一般的な組成IまたはIIまたはIIIまたはIVの粉末状の前駆材料を形成し、
前記粉末状の前駆材料は、第1粒子径値d50および第2粒子径値d90を有し、
第1粒子径値d50は2μm以下であり、および、第2粒子径値d90は3.5μm以下である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
1200℃から1450℃までの範囲から選択した温度において前記ステップB)における前記焼成を実行する、
請求項に記載の方法。
【請求項3】
ステップB)における焼成は、1200℃から1550℃までの範囲から選択された温度において行われる、
請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記窒化ケイ素は、10m2/gから30m2/gまでの範囲の比表面積を有する、
請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップA)において出発物質としてAlNを選択し、
AlNは12/gから25m2/gまでの比表面積を有する、
請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップA)では、出発物質として、複数の炭酸塩、複数の酸化物、複数の窒化物、複数の炭化物、1つの金属、複数の金属合金および/または複数のハロゲン化物を使用する、
請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップA)において少なくとも窒化ケイ素は、部分結晶性または結晶性である、
請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップB)を1回、2回、3回、4回又は回実行する、
請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップB)における焼成中に、1分から24時間までの範囲から選択される保持時間を維持する、
請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップB)に続くステップC)において、前記粉末状の前駆材料をアルカリ液および/または酸内で洗浄する、
請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
以下の一般的な組成IまたはIIまたはIIIまたはIV、すなわち、
I: (CaySr1-y)AlSiN3:X1
II: (CabSraLi1-a-b)AlSi(N1-cc)3:X2
III: 5-δAl4-2δSi8+2δ18:X3
IV: (Z1-dLid)5-δAl4-2δSi8+2δ(N1-xx)18:X4
の蛍光体に使用するための粉末状の前駆材料であって、
ただし、X1およびX2およびX3およびX4はそれぞれ、1つの活性剤または複数の活性剤の組み合わせであり、当該活性剤は、ランタノイド、Mn2+および/またはMn4+のグループから選択され、
Zは、Ca,Sr,Mgのグループおよびその組み合わせから選択され、ただし、0≦y<1かつ0≦a<1かつ0≦b<1かつ0<c≦1かつ|δ|≦0.5かつ0≦x<1かつ0≦d<1が成り立ち、
前記前駆材料は、
第1粒子径値d50および第2粒子径値d90を有し、
第1粒子径値d50は2μm以下であり、および、第2粒子径値d90は3.5μm以下である、
ことを特徴とする粉末状の前駆材料。
【請求項12】
前記第1粒子径値d50は、1±0.3μmの値を有し、および/または、前記第2粒径値d90は、3±0.3μmの値を有する、
請求項11に記載の粉末状の前駆材料。
【請求項13】
オプトエレクトロニクス素子(100)のセラミック層(11)を構成するための請求項11または12に記載の粉末状の前駆材料の使用方法において、
前記セラミック層(11)は、半導体積層体(1)を有する前記オプトエレクトロニクス素子のビーム路に配置される、
ことを特徴とする使用方法。
【請求項14】
前記セラミック層(11)を波長変換層として使用する、
請求項13に記載の使用方法。
【請求項15】
前記波長変換層はプレート片として成形され、
当該プレート片は、前記半導体積層体(1)のビーム主面に直接配置される、
請求項14に記載の使用方法。
【請求項16】
前記波長変換層は、前記半導体積層体(1)から放射される電磁1次ビームを電磁2次ビームに完全に変換する、
請求項14に記載の使用方法。
【請求項17】
白色光を形成するため、前記オプトエレクトロニクス素子の前記ビーム路に、少なくとも1つの付加的な蛍光体または付加的な前駆材料または付加的な蛍光体セラミックを配置する、
請求項13に記載の使用方法。
【請求項18】
前記粉末状の前駆材料は、粉末として成形されており、
当該粉末は、半導体積層体(1)を有する前記オプトエレクトロニクス素子の前記ビーム路に配置されている、
請求項13に記載の粉末状の前駆材料をオプトエレクトロニクス素子(100)に使用する使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状の前駆材料を製造する方法、粉末状の前駆材料およびオプトエレクトロニクス半導体素子において粉末状の前駆材料を使用する方法に関する。
【0002】
例えば発光ダイオード(LED)のようなオプトエレクトロニクス半導体素子では、ビーム源から放射される第1の波長のビームを、第2の波長のビームに変換するセラミック材料またはセラミック製の蛍光体が使用される。セラミック材料は、特にその熱放散が良好であることに起因して耐熱性が高い点が優れている。テープ成形または放電プラズマ焼結(SPS:Spark Plasma Sintering)のようなセラミックプロセスを容易に行えるようにするため、セラミック前駆材料または蛍光体前駆材料または前駆材料には、高い焼成性のために小さな粒度が必要である。
【0003】
本発明の解決すべき課題は、粉末状の前駆材料を製造する改善された方法を提供することである。別の課題は、粉末状の前駆材料およびその使用方法を提供することである。これらの課題は、独立請求項の特徴部分に記載した方法、前駆材料およびその使用方法によって解決される。有利な実施形態および発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0004】
少なくとも1つの実施形態によれば、粉末状の前駆材料を製造する方法が提供され、この前駆材料は、以下の一般的な組成Iおよび/またはIIおよび/またはIIIおよび/またはIVを有する。すなわち、
I: (CaySr1-y)AlSiN3:X1
II: (CabSraLi1-a-b)AlSi(N1-cc)3:X2
III: Z5-δAl4-2δSi8+2δ18:X3
IV: (Z1-dLid)5-δAl4-2δSi8+2δ(N1-xx)18:X4
を有する。ここでX1およびX2およびX3およびX4はそれぞれ、1つの活性剤または複数の活性剤の組み合わせであり、この活性剤は、ランタノイド、Mn2+および/またはMn4+のグループから選択され、ここでZは、Ca,Sr,Mgのグループおよびその組み合わせから選択され、ただし、0≦y≦1かつ0≦a<1かつ0≦b<1かつ0<c≦1かつ|δ|≦0.5かつ0≦x<1かつ0≦d<1が成り立つ。
【0005】
上記の方法は、以下のステップを有する。すなわち、
A) 複数の出発物質の粉末状の混合物を製造するステップであって、これらの出発物質には、上で挙げた組成Iおよび/またはIIおよび/またはIIIおよび/またはIVの複数のイオンが含まれているステップと、
B) 保護ガス雰囲気下で上記混合物を焼成し、引き続いて粉砕するステップとを有しており、ステップA)では、出発物質として、5m2/g以上100m2/g以下の比表面積を有する少なくとも1つの窒化ケイ素が選択され、ステップB)における焼成は、1550℃以下の温度で行われる。
【0006】
ここでX1および/またはX2および/またはX3および/またはX4は、活性剤またはドーピング剤として作用する。この活性剤は、上で挙げた一般的な組成IまたはIIまたはIIIまたはIVの粉末状の前駆材料のカチオンの結晶格子内に組み込まれてよい。この活性剤は、ランタノイドのグループからの1つまたは複数の元素を有し得る。択一的または付加的に上記の活性剤は、2価のマンガン(Mn2+)および/または4価のマンガン(Mn4+)とすることが可能である。上記の活性剤は、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムを含むグループから選択することができる。特に活性剤は、ユーロピウム、セリウムおよび/またはランタンである。活性剤として3価の元素、例えばCe3+を使用する場合、電荷中性は得られない。したがって一般的には電荷相殺が必要である。粉末状の前駆材料における活性剤の濃度は、0.01mol%から20mol%まで、または0.1mol%から20mol%まで、特に0.01mol%から5mol%まで、例えば0.5mol%とすることが可能である。
【0007】
保護ガス雰囲気とは、例えば、不活性または還元性雰囲気と理解することができる。還元性雰囲気に除外されないのは、この還元性雰囲気において酸素が存在することである。
【0008】
|δ|≦0.5とは、−0.5≦δ≦0.5の範囲と理解することができる。
【0009】
上記の焼成した混合物は、粉砕した後、必要に応じてさらにふるいにかけることができる。
【0010】
上で述べた方法によれば、特に細かく分散された粉末状の前駆材料を製造することができる。合成パラメタおよび出発物質を適切に選択することにより、結果的に得られる粉末状の前駆材料の粒度または粒子径もしく粒子径値を変化させることができる。この際には特に、出発物質の、例えば使用される窒化物の反応性が重要な役割を果たす。
【0011】
一実施形態によれば、ステップA)において窒化物として、窒化ケイ素(Si34)および窒化アルミニウム(AlN)および/または窒化カルシウム(Ca32)を選択するか使用することができる。これらのような窒化物の反応性に対して重要なパラメタは、その比表面積である。ここで比表面積とは、単位重量当たりの材料の表面積のことである。この比表面積は、例えばガス吸着(BET測定)によって求めることができる。
【0012】
上記の窒化ケイ素の比表面積は、5m2/g以上100m2/g以下である。少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも窒化ケイ素の比表面積は、10m2/gから30m2/gの範囲から選択され、例えば11m2/gが選択される。特に窒化ケイ素の比表面積は、10から15m2/gの範囲から選択される。少なくとも1つの実施形態によれば、窒化アルミニウムの比表面積は、1から25m2/gまでの、特に1から15m2/gまでの範囲から選択され、例えば3m2/gが選択される。使用される1つまたは複数の窒化物、例えば窒化ケイ素の反応性が高ければ高いほど、合成温度を低く選択することができ、また製造される前駆材料が細かく分散される。比表面積が大きすぎると、例えば100m2/gよりも大きい場合には、結果的に得られる粉末状の前駆材料が強く焼結されてしまうというリスクがある。さらに表面の反応性が大きくなることよる酸素汚染のリスクが生じる。類似のことは、25m2/gよりも大きな比表面積においてAlNに対しても成り立つ。
【0013】
ここでは粒子の粗い前駆材に対し、細かく分散した、および/または、粉末状の前駆材料とは、この前駆材料が、小さな第1粒子径値d50および/または小さな第2粒子径値d90を有することである。特に第1粒子径値d50は、2μm以下の値を有しており、および/または、第2粒子径値d90は、3.5μm以下の値を有する。
【0014】
少なくとも1つの実施形態によれば、ステップA)において上記の出発物質は、化学量論的に量り入れることができる。択一的には上記の出発物質を非化学量論的に量り入れることができ、この際には少なくとも1つの出発物質を過剰に量り入れ、これにより、製造中に場合によっては発生する蒸発損失を補償する。例えばアルカリ土類成分を含む出発物質を過剰に量り入れることができる。少なくとも1つの実施形態によれば、ステップA)において出発物質として、炭酸塩、酸化物、窒化物、炭化物、金属および/またはハロゲン化物を使用する。
【0015】
ここでは合金、水素化物、ケイ化物、窒化物、ハロゲン化物、酸化物、アミド、アミン、炭酸塩、金属およびこれらの化合物および/または金属の混合物からなるアルカリ土類化合物またはアルカリ化合物を選択することができる。有利には窒化カルシウム、炭酸ストロンチウムおよび/または窒化ストロンチウムを使用する。
【0016】
ケイ素化合物は、窒化ケイ素、アルカリ土類ケイ化物、シリコンジイミンド、シリコンハイドリド、酸化ケイ素、ケイ素、または、これらの化合物および/またはケイ素の混合物から選択することができる。有利には、安定かつ容易に入手可能である好適な窒化ケイ素が使用される。
【0017】
アルミニウム化合物は、合金、酸化物、窒化物、金属およびこれらの化合物の混合物および/または金属から選択することができる。有利には安定かつ容易に入手可能である好適な窒化アルミニウムが使用される。
【0018】
ランタノイドのグループから得られる化合物、例えばユーロピウムの化合物は、酸化物、窒化物、ハロゲン化物、ハイドライド、金属またはこれらの化合物および/または金属の混合物から選択することができる。有利には安定かつ容易に入手可能である好適なユーロピウム酸化物が使用される。
【0019】
出発物質の仮比重は、結果的に得られる前駆材料の粒度に対する尺度である。ステップA)では特に、出発物質の仮比重が小さいことに注意しなければならない。ステップA)における出発物質の粉末状の混合物が圧縮されていればいるほど、結果的に得られる粉末状の前駆材料の粒子は粗くなる。これに対し、仮比重が小さいと、細かく分散される前駆材料が得られる。仮比重は、ふるいにかけることによって変化させることができる。
【0020】
少なくとも1つの実施形態によれば、ステップA)における窒化ケイ素は、部分結晶性または結晶性である。これにより、粉末状で細かく分散され前駆材料を形成することができる。上記の窒化物の結晶度は、粉末状の前駆材料の粒度または粒子径もしく粒子径値に影響を与える。
【0021】
少なくとも1つの実施形態によれば、ステップA)において付加的に融剤を使用する。択一的にはステップA)において融剤を省略することも可能である。融剤は、結晶度を改善するため、および、粉末状の前駆材料の結晶成長を促進するために使用することができる。他方では融剤を添加することにより、反応温度または焼成温度を下げることができる。出発物質は、融剤と一緒に均質化することができる。択一的または付加的には上記の融剤を、第1の焼成の後に前駆材料に添加することも可能である。上記の均質化は、例えば、モルタグラインダ、ボールミル、乱流ミキサ、プラウシアーミキサにおいて、または別の適切な方法によって行うことができる。
【0022】
上記の方法においてステップB)は少なくとも1回実行することができる。特にステップB)は、1回から5回、特に1回から3回、例えば2回実行することができる。粉砕および場合によってふるいかけがそれぞれ引き続いて行われる焼成の回数により、結果的に得られる前駆材料の粒度または粒子径もしくは粒子径値を変化させることができる。最後に行われた焼成の後、混合物を粉砕してふるいかけすることができる。
【0023】
上記の方法において、ステップB)における焼成は、1550℃以下の温度で行われる。少なくとも1つの実施形態によれば、ステップB)は、1200から1550℃の、特に1200から1500℃の、例えば1450℃の温度で行われる。この温度を選択することにより、結果的に得られる粉末状の前駆材料の粒子径または粒子径値を変化させることができる。ここでこの温度は、ステップB)における最高温度または最高合成温度を示している。この方法において選択される合成温度は、従来の方法の温度よりも低い。ステップB)においてより低い温度を使用することにより、粉末状の前駆物質をさらに加工する場合、一層良好な焼成性が得られる。窒化物の前駆材料または蛍光体において合成温度を低くすると、副相が生じることが多い。反応出発物質を適当に選択することにより、合成温度が低くても、副相の形成を回避して、細かく分散した前駆物質を得ることができる。
【0024】
少なくとも1つの実施形態によれば、ステップB)における焼成中に、1分から24時間の範囲から選択される保持時間を維持する。特にこの保持時間は、1時間から8時間の範囲から、例えば1時間から4時間の範囲から選択され、例えば2時間が選択される。保持時間とは、この間に上記の最高温度が維持される時間のことである。
【0025】
加熱および冷却時間と合わせれば、上記の保持時間により、全体の焼成持続時間が得られる。上記の保持時間を用いれば、結果的に得られる粉末状の前駆材料の粒度を同様に変化させることができる。
【0026】
結果的に得られる粉末状の前駆材料の粒度を変化させる別のパラメタは、加熱および冷却ランプである。これは、例えば炉のタイプに応じて選択することができる。炉のタイプは、例えば、管状炉、チャンバ型炉または通過炉である。
【0027】
焼成は、例えばタングステン、モリブデン、コランダム、アルミナ、グラファイトまたは窒化ホウ素製のるつぼにおいて行うことができる。この際にこのるつぼは、例えばモリブデン製のライニングまたはサファイア製のライニングを有することができる。上記の焼成は、ガス気密の炉において、例えば水素、アンモニア、アルゴン、窒素またはこれらの混合物内のような還元性雰囲気および/または不活性ガス下で行うことができる。この雰囲気は、流動性または静止性の雰囲気とすることが可能である。さらに、元素状炭素が細かく分散した形態で炉室内に存在する場合、結果的に得られる前駆材料の品質にとって有利になり得る。択一的には炭素を出発物質の混合物内に直接供給することが可能である。
【0028】
例えば粉砕および/またはふるいかけのような中間に挿入される後処理プロセスを伴ってまたはこれを伴わずに出発物質を複数回焼成することにより、結晶度または粒子径分布をさらに改善することができる。別の利点は、結果的に得られる前駆材料の改善された光学特性に関連する低い欠陥密度、および/または、結果的に得られる前駆材料の高い安定である。
【0029】
少なくとも1つの実施形態によれば、ステップB)にステップC)が続く。ステップC)では、上記の粉末状の前駆材料をアルカリ液および/または酸内で洗浄することができる。この酸は、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、有機酸およびこれらの混合物を含むグループから選択可能である。アルカリ液は、苛性カリ、苛性ソーダおよびこれらの混合物を含むグループから選択することができる。このような洗浄は、ドーピングされた粉末状の前駆材料を製造する場合、効率を高めることができる。さらにこれにより、副相、ガラス相または別の不純物を除去し、粉末状の前駆材料の光学特性の改善することができる。
【0030】
本発明ではさらに、上で説明した方法にしたがった製造される粉末状の前駆材料が提案される。
【0031】
少なくとも1つの実施形態によれば、上記の粉末状の前駆材料は、第1粒子径値d50および/または第2粒子径値d90によって特徴付けられる。特にこの粉末状の前駆材料は、上で説明した方法によって製造される。この粉末状の前駆材料は第1粒子径値d50および第2粒子径値d90を特に有する。第1粒子径値d50は、2μm以下とし、および/または、第2粒子径値d90は、3.5μm以下とすることが可能である。第1粒子径値d50として以下では、特に断らない限り、つぎのように定義される値d50のことであるとする。すなわち、この値は、体積分率について上記の材料の50%が、上記のサイズまたは上記の直径を下回る、および/または、体積分率について上記の材料の50%が、上記のサイズまたは上記の直径を上回ると定義されるのである。第2粒子径値d90として以下では、特に断らない限り、つぎのように定義される。すなわち、この値は、体積分率について上記の材料の90%が、上記のサイズまたは上記の直径を下回る、および/または、体積分率について上記の材料の10%が、上記のサイズまたは上記の直径を上回ると定義されるのである。この関連において粒子径または粒子径値という概念には、個々の粒子の1次粒子径も凝集粒子径も共に含まれるものとする。上記の第1粒子径または第2粒子径は、レーザ回折によって求めることができる。粒度は、d50および/またはd90値によって表すことができる。
【0032】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1粒子径値d50は、1+/−0.3μmの値を有する。択一的または付加的には第2粒径値d90は、3+/−0.3μmの値を有し得る。
【0033】
すなわち上記の方法により、極めて小さい第1粒径値d50も第2粒子径値d90も共に有する特に細かく分散した粉末状の前駆材料が提供されるのである。この細かく分散した粉末状の前駆材料は、例えば発光ダイオードのようなオプトエレクトロニクス素子に使用するのに適している。これには、粉末状の変換材料として粉末の形態で上記の前駆体を使用することも、前駆体を加工してセラミックの発光物質変換器にすることも、または、これをオプトエレクトロニクス素子に使用することも共に含まれている。オプトエレクトロニクス素子への使用は特に、細かく分散した粉末状の前駆材料の良好な焼結性によって左右される。
【0034】
本発明ではさらに、オプトエレクトロニクス素子の少なくとも1つのセラミック層を形成するために上記の粉末状の前駆材料を使用する方法が提供される。このオプトエレクトロニクス素子は、例えばLEDを含み得る。
【0035】
少なくとも1つの実施形態によれば、上記の粉末状の前駆材料は、オプトエレクトロニクス素子のセラミック層を構成し、このセラミック層は、半導体積層体を有するオプトエレクトロニクス素子のビーム路に配置される。
【0036】
この実施形態によれば、半導体積層体に設けられる半導体材料は、これが少なくとも部分的にエレクトロルミネッセンスを有するのであれば限定されない。ここでは、例えば、インジウム、ガリウム、アルミニウム、窒素、リン、ヒ素、酸素、ケイ素、炭素およびこれらから選択された元素からなる化合物が使用される。しかしながら別の元素および添加物を使用することも可能である。活性領域を有する上記積層体は、例えば、窒化物系化合物半導体材料をベースとすることが可能である。「窒化物系化合物半導体材料ベース」とは、本発明において、半導体積層体またはその一部が、窒化物系化合物半導体材料、有利にはAlnGamIn1-n-mNを有するかまたはこれから構成されていることを意味し、ただし0≦n≦1,0≦m≦1かつn+m≦1である。ここでこの材料は必ずしもこの式にしたがった数学的に正確な組成を有する必要はない。むしろ例えば1つまたは複数のドーピング物質および付加的な成分を有し得る。しかしながらわかりやすくするため、上の式では、結晶格子の重要な成分(Al,Ga,In,N)の一部が少量の別の物質に置き換えられ得るおよび/または補われ得るとしても、これらの重要な成分だけが含まれている。
【0037】
上記の半導体積層体は、活性領域として、例えば、従来のpn接合部、ダブルヘテロ構造、単一量子井戸構造(SQW構造)または多重量子井戸構造(MQW構造)を有し得る。この半導体積層体は、上記の活性領域の他に、別の複数の機能層および機能領域を含むことができ、例えばpまたはnドーピングされた電荷輸送層、すなわち電子またはホール輸送層、pまたはnドーピングされた閉じ込めまたはクラッディング層、バッファ層、および/または電極ならびにこれらの組み合わせを含むことができる。このような活性領域または別の機能層および領域に関連する構造体の特に構成、機能および構造については当業者に公知であるため、ここでは詳しく説明しない。
【0038】
上記の粉末状の前駆材料は、セラミック層を完全に構成することができる。択一的には、上記の粉末状の前駆材料に含まれていない別の添加物をセラミック層に追加することができる。粉末状の前駆材料は、セラミックまたはセラミック層にさらに加工することができる。セラミック加工は、例えば放電プラズマ焼結(SPS:Spark Plasma Sintering)またはテープ成形によって行うことができる。
【0039】
少なくとも1つの実施形態によれば、上記のセラミック層は、波長変換層として使用される。波長変換層は、発光ダイオード、例えば完全変換型発光ダイオードに含まれ得る。ここでまた以下で完全変換とは、粉末またはセラミック層の形態の蛍光体により、ここで1次ビームと称される半導体積層体から放射されるビームが、2次ビームと称される波長の変化したビームに完全に変換されることをいう。択一的には上記のセラミック層または粉末として成形された蛍光体により、1次ビームの一部だけが2次ビームに変換され得る。ここで一部分とは、1次ビームも2次ビームも共に全体放射として上記の発光ダイオードから放出されることを意味する。したがって上記の波長変換層には、蛍光体前駆体でありかつ小さな粒度を有し、ひいては良好な焼結性を有する粉末状の前駆材料を使用することができる。波長変換層における使用は、粉末としてまたはさらに加工されるセラミックとして行われ得る。いずれの場合も波長変換層は、発光ダイオードのビーム路に配置することができ、放射される1次ビームは部分的または完全に、ほとんどの場合にはより長い波長である異なる波長の2次ビームに変換される。
【0040】
この波長変換層は、粉末状の前駆材料に関連して提供される一般的なセラミック製造方法によって製造することができる。セラミック製造プロセスに必要な、粉末状の前駆材料の小さな粒度または粒子径もしくは粒子径値を得、この結果として得られる焼結性を高めるためには、粒子の粗い粉末を比較的強く粉砕しなければならない。しかしながらこれにより、特にこれらの材料の効率が悪化することになる。この効率の悪化は、少なくとも1つの粉砕過程による、例えば、スプリッタ粒子の形成、個々の粒子の割れなど、ならびに、長い粉砕プロセスにより、碾いたもの中に混入する汚染物質による損傷に起因するものである。これによって特に量子効率が低くなる。反応性の出発物質によって粉末状の前駆材料を製造することにより、この粉末状の前駆材料は十分に細かく分散され、長い粉砕プロセスを回避することができる。したがってこの粉末状の前駆材料は、効率的なセラミック製の波長変換層に加工することができるのである。
【0041】
択一的には上記の粉末状の前駆材料をセラミック素子にさらに加工することなく、オプトエレクトロニクス素子における粉末状の変換材料として使用することができる。このために、粉末状の前駆材料を3次元モールドにおいて加工することができる。この粉末状の前駆材料は、マトリクス材料に、例えばシリコーンまたは別の有利なマトリクス材料に埋め込むことできる。マトリクス材料に埋め込まれた粉末状の前駆材料は、モールド、層またはシートとして成形することができる。
【0042】
少なくとも1つの実施形態によれば、波長変換層はプレート片として成形され、このプレート片は、半導体積層体のビーム主面上に直接配置される。ここでビーム主面とは、半導体積層体の成長方向に対して横方向に配置されている、この半導体積層体の1つの面のことである。ここでまた以下で「直接」とは、波長変換層が上記のビーム主面に直接機械的に接触接続していることを意味する。ここでは波長変換層とビーム主面との間には別の層および/または要素は配置されていない。
【0043】
少なくとも1つの実施形態によれば、上記の波長変換層は、半導体積層体から放射される電磁的な1次ビームを電磁的な2次ビームに完全に変換する。
【0044】
択一的には上記の波長変換層は、半導体積層体から放射される電磁的な1次ビームの一部だけ、例えば70%を電磁的な2次ビームに変換する。
【0045】
一実施形態によれば、波長変換層は、ビーム源に直接接触接続している。これにより、電磁的な1次ビームの電磁的な2次ビームへの変換は、少なくとも部分的にビーム源の近傍で、例えば、200μm以下、有利には50μm以下のセラミック層とビーム源との間隔で行うことできる(いわゆる「チップレベル変換」)。
【0046】
一実施形態によれば、波長変換層はビーム源から所定の間隔に設けられる(いわゆる「リモート蛍光体変換」である)。
【0047】
一実施形態によれば、波長変換層はビーム源から離隔されている。これにより、電磁的な1次ビームの電磁的な2次ビームへの変換は少なくとも部分的に、ビーム源に対して大きな間隔で行うことができる。
【0048】
例えば、200μm以上の、有利には750μm以上の、特に有利には900μm以上のセラミック層とビーム源との間の間隔で行うことができる(いわゆる「リモート蛍光体変換」である)。
【0049】
放射性の蛍光体または前駆材料についての、ここでまた以下で示す色情報は、電磁ビームのそれぞれスペクトル領域を表す。
【0050】
少なくとも1つの実施形態によれば、前駆材料は赤色のスペクトル領域において発光する。赤色を発光する前駆材料は、粉末またはセラミックとして成形することができる。赤色を発光する前駆材料は、オプトエレクトロニクス素子のビーム路に配置することができる。
【0051】
付加的に上記のオプトエレクトロニクス素子は、黄色のスペクトル領域において発光する層を有することができる。黄色を発光する層は、粉末として、または、例えばシリコーンのようなマトリクス材料内の粉末から設けることができるか、または、セラミックとして成形することができる。黄色を発光する層は、オプトエレクトロニクス素子のビーム路に配置することができる。例えば、黄色を放射する層内にまたは黄色を放射する層として、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)および/またはルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LuAG)を使用することができる。
【0052】
少なくも1つの実施形態によれば、オプトエレクトロニクス素子の青色を発光する1次ビームのビーム路に赤色および黄色を放射する層が配置される。この1次ビームは一部だけが赤色および黄色を放射する層によって変換されるため、このオプトエレクトロニクス素子の全体的な放射は、外部の観察者に対して、温白色光として知覚される。
【0053】
少なくとも1つの実施形態によれば、オプトエレクトロニク素子のビーム路には、上で述べた実施形態に基いて、さらに少なくとも1つの付加的な蛍光体または付加的な前駆材料または付加的な蛍光体セラミックが配置される。基本的にこの付加的な蛍光体または付加的な前駆材料または付加的な蛍光体セラミックは、可視スペクトル領域の任意の波長を放射することができ、例えば、青色または緑色のスペクトル領域における波長を放射することができる。このオプトエレクトロニクス素子の全体的な放射は、外部の観察者にとって白色光として知覚され得る。
【0054】
少なくとも1つの実施形態によれば、粉末状の前駆材料は、例えば、注型材料において変換層として構成され、オプトエレクトロニクス素子に配置される。この変換層は、半導体積層体を有するオプトエレクトロニクス素子のビーム路に配置される。
【0055】
上記の方法、粉末状の前駆材料およびその使用方法の別の利点および有利な実施形態は、以下の複数の実施例および図面から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】複数の実施形態および複数の比較例の粉末状の前駆材料の第1粒径値d50および第2粒径値d90を示す図である。
図2】一実施形態によるオプトエレクトロニクス素子の概略断面図である。
【0057】
以下では、粒の粗い前駆材料を製造するための比較例V1,V2およびV3,ならび、細かく分散された粉末状の前駆材料を製造するための実施例A1,A2およびA3を示す。
【0058】
比較例V1:CaAlSiN3:Eu
50gのCa32,41gのAlN,47gのSi34(約11m2/gの比表面積)および5gのEu23が、保護ガス雰囲気下で量り入れられ、均質化される。引き続き、管状炉またはチャンバ型炉内で1550℃と1800℃との間の温度で、出発物質混合物が、還元雰囲気下において数時間の間、やや濃縮されて焼成される。引き続き、粒子径ないしは粒子径値を適合させるための別の焼成を1550℃と1800℃との間で行うことができる。焼成ケークを引き続いて粉砕およびふるいかけした後、一般的な式CaAlSiN3:Euを有する粒子の粗い蛍光体が得られる。図1および表1に示した粒子の粗い蛍光体は、後処理の後、9.4μmの第1粒子径値d50および15.8μmの第2粒子径値d90を有する。
【0059】
比較例V2:CaAlSiN3:Euの製造
50gのCa32,41gのAlN,47gの非晶質Si34(約110m2/gの比面積)および5gのEu23が、保護ガス雰囲気下で量り入れられ、均質化される。引き続き、管状炉またはチャンバ型炉内で1300℃と1800℃との間の、例えば1450℃の温度で、出発物質混合物が、還元雰囲気下において数時間に間、やや濃縮されて焼成される。引き続き、粒子径または粒子径値を適合化するため、同様に還元性雰囲気下において1300℃と1800℃との間で、例えば1450℃の温度で別の焼成を行うことができる。引き続いて焼成ケークを粉砕およびふるいかけした後、粒子の粗い蛍光体が得られる(表1を参照されたい)。
【0060】
比較例V3:CaAlSiN3:Euの製造
50gのCa32,41gのAlN,47gの非晶質Si34(約103〜123m2/gの比表面積)および5gのEu23が、保護ガス雰囲気下で量り入れられ、均質化される。引き続き、管状炉またはチャンバ型炉において1300℃と1800℃との間の、例えば1450℃の温度で、出発物質混合物が、還元雰囲気下において数時間の間、やや濃縮されて焼成される。引き続いて粒子径または粒子径値を適合化するため、同様に還元性雰囲気下で1300℃と1800℃との間の、例えば1450℃の温度で、別の焼成を行うことができる。引き続いて焼成ケークを粉砕およびふるいかけした後、粒子の粗い蛍光体が得られる。粒子の粗い蛍光体は、2.3μmの第1粒子径d50および4.9μmの第2粒子径d90を有する(図1および表1)。
【0061】
実施例A1:CaAlSiN3:Euの製造
82gのCa32,68gのAlN,78gのSi34(約11m2/gの比表面積)および1gのEu23が、保護ガス雰囲気下で量り入れられ、均質化される。引き続いて管状炉またはチャンバ型炉内で1300℃と1550℃との間の温度で、出発物質混合物が還元雰囲気下において数時間の間、やや濃縮されて焼成される。引き続いて焼成ケークを粉砕およびふるいかけした後、粒子が細かくかつ極めて反応性の高い粉末状の前駆材料が得られる。この前駆材料は、セラミック材料に使用可能である。この粉末状の前駆材料は、相CaAlSiN3:Euの他に、中間生成物CaSiN2:Euおよび未反応のAlNからなる。最後の2つは、セラミック製造時に所望のCaAlSiN3:Euに完全に反応させられる。
【0062】
実施例A2:CaAlSiN3:Euの製造
82gのCa32,68gのAlN,78gのSi34(約13m2/gの比表面積)および1gのEu23が、保護ガス雰囲気下で量り入れられ、均質化される。引き続き、管状炉またはチャンバ型炉内で1300℃と1550℃との間の温度で、出発物質混合物が、還元雰囲気下で数時間の間、やや濃縮されて焼成される。引き続いて焼成ケークを粉砕およびふるいかけした後、粒子が細かくかつ反応性の高いCaAlSiN3:Euが得られる。この粉末状の前駆材料は、1.2μmの第1粒子径d50および2.9μmの第2粒子径d90を有する。X線回折(XRD)により、この粉末状の前駆材料の相純度が確認される。
【0063】
実施例A3:CaAlSiN3:Euの製造
82gのCa32,68gのAlN,78gのSi34(約14m2/gの比表面積)および1gのEu23が、保護ガス雰囲気下で量り入れられ、均質化される。引き続き、管状炉またはチャンバ型炉内で1300℃と1550℃との間の温度で、出発物質混合物が、還元雰囲気下で数時間に間、やや濃縮されて焼成される。引き続いて焼成ケークを粉砕およびふるいかけした後、粒子が細かくかつ反応性の高いCaAlSiN3:Euが得られる。この粉末状の前駆材料は、1.3μmの第1粒子径d50および3.3μmの第2粒子径d90を有する。X線回折(XRD)により、この粉末状の前駆材料の相純度が確認される。
【0064】
図1には、対応する比較例V1,V2−1,V2−2およびV3ならびに実施例A1−1,A1−2,A2およびA3に対し、時間hで示した対応する保持時間t、℃で示した最大温度または最大焼成温度およびm2/gで示したSi34の比表面積Aにおけるμmで示した第1粒子径値d50およびμmで示した第2粒子径値d90が示されている。表1にはさらに量子収率Q.E.が粉末状の前駆材料の%で示されている。比較例V2−1,V2−2は、比較例V2と同様に製造され、ここでm2/gで示したSi34の比表面積A,℃で示した最大焼成温度Tmaxおよび/またはhで示した最大保持時間tは、表1に対応して設定した。実施例A1−1およびA1−2では同様にした。表1にはさらにμmで示した第1粒子径値d50と、μmで示した第2粒子径値d90と、粉末状の前駆材料の%で示した量子収量Q.E.とが一実施形態にしたがい、複数の比較例について示されている。このQ.E.はそれぞれ粉体錠剤測定によって求めた。
【表1】
【0065】
表1からわかるのは、出発物質として5m2/g以上かつ100m2/g以下の比表面積を有するSi34を使用し、ステップB)における焼成の際に1550℃以下の温度を使用すれば、細かく分散した粉末状の前駆材料を製造することができることであり、この前駆材料は、対応する高い量子収率において、極めて小さい第1粒子径値d50および/または第2粒子径値d90を有する。上記の保持時間は、2〜4時間である。
【0066】
以下の表2には、m2/gで示した窒化アルミニウムAlNの比表面積AAが、細かく分散された粉末状の前駆材料の第1粒径値d50および第2粒径値d90に与える影響が示されている。窒化ケイ素の約11m2/gの比表面積は、すべての実験において一定に維持した。表2からわかるのは、窒化アルミニウムの小さい比表面積により、特に3.6m2/g以下の比表面積により、小さな粒子径または粒子径値が得られることである。したがって、例えば3.1から3.6m2/gまでの比表面積を有する窒化アルミニウムを用いて製造された粉末状の前駆材料は、1.1μmの第1粒子径値d50および3.0μmの第2粒径値d90を有するのである。
【表2】
【0067】
窒化物(出発物質)の比表面積および適切に選択した温度により、粉末状の前駆材料を所期のように製造し、またその焼成特性または粒子径を制御できることを示すことができた。これにより、粒度を介して、例えばテープキャスティングの際の充填密度を変化させることができることがわかる。一般的には高いd90値または第2粒子径値を有する前駆体は、セラミック製造において加工するのが困難であるか加工することができず、または、コストのかかる複数の粉砕プロセスにおいて後処理しなければならず、これらの粉砕プロセスにより、効率が損なわれて汚染されることになる。
【0068】
図2には、発光ダイオード(LED)の実施例でオプトエレクトロニクス素子100の概略側面図が示されている。オプトエレクトロニク素子100は、(明瞭に図示されていない)活性領域を備えた積層体1と、第1電気端子2と、第2電気端子3と、ボンディングワイヤ4と、モールド5と、ケーシング壁部7と、ケーシング8と、凹部9と、セラミック層11または波長変換層11を構成する前駆材料6と、マトリクス材料10とを有する。波長変換層11を含む活性領域を備えた積層体1は、オプトエレクトロニクス素子、モールド5および/または凹部9内に配置されている。第1および第2電気端子2,3は、活性領域を備えた積層体1の下に配置されている。活性領域を備えた積層体1と、ボンディングワイヤ4と、第1および/または第2電気端子2,3を備えた活性領域を有する積層体1とは、間接的および/または直接的に直に電気および/または機械的に接触接続している。
【0069】
さらに活性領域を備えた積層体1は、(ここで図示しない)支持体上に配置することができる。支持体は、例えばPCB(Printed Circuit Board)、セラミック基板、プリント基板または例えばアルミニウムプレートのような金属プレートとすることが可能である。
【0070】
択一的にはいわゆる薄膜チップにおいて、積層体1を支持体なしに配置することが可能である。
【0071】
上記の活性領域は、所定の放射方向に電磁1次ビームを放出するのに適している。活性領域を備えた積層体1は、例えば、窒素化合物半導体材料ベースとすることが可能である。窒素化合物半導体材料は、特に青色および/または紫外のスペクトル領域における電磁1次ビームを放射する。特に、波長460nmの電磁1次ビームを有する窒素化合物半導体材料としてInGaNを使用することができる。
【0072】
電磁1次ビームのビーム路には波長変換層11が配置されている。マトリクス材料10は、例えばポリマまたはセラミック材料である。波長変換層11は、活性領域を備えた積層体1上に機械および/または電気的に直に接触接続して直接配置されている。
【0073】
択一的には波長変換層と積層体1との間には、例えばモールドのような別の複数の材料および層を配置することができる(ここでは図示せず)。
【0074】
択一的には波長変換層11を直接または間接的にケーシング8のケーシング壁部7に配置することができる(ここでは図示せず)。
【0075】
択一的には、モールドコンパウンドに上記の前駆材料を埋め込み(ここでは図示せず)、例えば拡散体のような別の材料10と共にモールド5として成形することが可能である。
【0076】
波長変換層11は、少なくとも部分的に上記の電磁1次ビームを電磁2次ビームに変換する。例えば電磁1次ビームは、電磁ビームの青色のスペクトル領域において発光し、この電磁1次ビームの少なくとも一部分が、波長変換層11により、赤色および/または緑色および/またはこれらの組み合わせのスペクトル領域の電磁2次ビームに変換される。オプトエレクトロニクス素子から発せられる全体ビームは、青色に発光する1次ビームと、赤色および緑色に発光する2次ビームとが重畳されたものであり、外部の観察者に見える全体放射は、白色光である。
【0077】
波長変換層11は、セラミックまたは粉末として成形し、電磁1次ビームを完全に電磁2次ビームに変換することができる。電磁2次ビームは、この場合、赤色のスペクトル領域を有する。
【0078】
少なくとも1つの実施形態によれば、赤色を放射する波長変換層11はセラミックとして成形され、付加的に粉末として成形される黄色および/緑色を放射する蛍光体と共にオプトエレクトロニクス素子に配置される。このオプトエレクトロニクス素子は特に、外部の観察者にとって白色光として知覚される全体放射を有する。
【0079】
少なくとも1つの実施形態によれば、赤色を放射する波長変換層11が、セラミックとして成形され、付加的または択一的にはセラミックとして成形された黄色および/または緑色を放射する蛍光体を伴ってオプトエレクトロニクス素子に配置される。このオプトエレクトロニクス素子は特に、外部の観察者にとって白色光として知覚される全体放射を有する。
【0080】
少なくとも1つの実施形態によれば、赤色を放射する波長変換層11は、粉末として成形され、セラミックとして成形された黄色および/または緑色を放射する蛍光体を付加的に伴ってオプトエレクトロニクス素子に配置される。このオプトエレクトロニクス素子は特に、外部の観察者にとって白色光として知覚される全体放射を有する。
【0081】
少なくとも1つの実施形態によれば、赤色を放射する波長変換層11は粉末として成形され、粉末として成形された黄色および/または緑色を放射する蛍光体を伴ってオプトエレクトロニクス素子に配置される。このオプトエレクトロニクス素子は特に、外部の観察者にとって白色光として知覚される全体放射を有する。
【0082】
少なくとも1つの実施形態によれば、上記の1次ビームは、UVスペクトル領域からの一波長を有する。波長変換層11は、セラミックまたは粉末として成形することができ、セラミックまたは粉末として成形された黄色および/または緑色を放射する発光体を伴って、またセラミックまたは粉末とした成形された青色を放射する発光体を伴って、オプトエレクトロニクス素子に配置することができる。このオプトエレクトロニクス素子は、特に外部の観察者にとって白色光として知覚される全体放射を有する。
【0083】
本発明は、上記の実施例に基づく上記の説明によって制限されることはなく、むしろ本発明には、あらゆる新たな特徴および複数の特徴の任意の組み合わせが含まれ、これには特に特許請求の範囲における複数の特徴の組み合わせが含まれる。このことは、この特徴またはその組み合わせそのものが特許請求の範囲または実施例に明示的に示されていない場合であっても当てはまるものである。
【0084】
本発明は、独国特許出願第10 2013 105 304.1号に優先権を主張するものであり、その開示内容は参照によってここに取り込まれるものである。
図1
図2