特許第6181295号(P6181295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノースロップ グラマン システムズ コーポレイションの特許一覧

<>
  • 特許6181295-拡張された範囲の海中通信システム 図000002
  • 特許6181295-拡張された範囲の海中通信システム 図000003
  • 特許6181295-拡張された範囲の海中通信システム 図000004
  • 特許6181295-拡張された範囲の海中通信システム 図000005
  • 特許6181295-拡張された範囲の海中通信システム 図000006
  • 特許6181295-拡張された範囲の海中通信システム 図000007
  • 特許6181295-拡張された範囲の海中通信システム 図000008
  • 特許6181295-拡張された範囲の海中通信システム 図000009
  • 特許6181295-拡張された範囲の海中通信システム 図000010
  • 特許6181295-拡張された範囲の海中通信システム 図000011
  • 特許6181295-拡張された範囲の海中通信システム 図000012
  • 特許6181295-拡張された範囲の海中通信システム 図000013
  • 特許6181295-拡張された範囲の海中通信システム 図000014
  • 特許6181295-拡張された範囲の海中通信システム 図000015
  • 特許6181295-拡張された範囲の海中通信システム 図000016
  • 特許6181295-拡張された範囲の海中通信システム 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181295
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】拡張された範囲の海中通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/80 20130101AFI20170807BHJP
   H04B 13/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   H04B10/80
   H04B13/02
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-521695(P2016-521695)
(86)(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公表番号】特表2016-535949(P2016-535949A)
(43)【公表日】2016年11月17日
(86)【国際出願番号】US2014059593
(87)【国際公開番号】WO2015054331
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2016年5月31日
(31)【優先権主張番号】14/050,031
(32)【優先日】2013年10月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503178185
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】NORTHROP GRUMMAN SYSTEMS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】モトリー、セシル エフ.
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−278455(JP,A)
【文献】 特開2009−55408(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0183782(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B10/00−10/90
H04J14/00−14/08
H04B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク・インタフェースからネットワーク・データを受信して変換出力を生成する紫外線(UV)エンコーダ変換ブロックであって、前記ネットワーク・データを変調信号に変換し、前記変調信号は前記変換出力を生成するように複数のマルチスペクトル源を駆動する、UVエンコーダ変換ブロックと、
前記UVエンコーダ変換ブロックから前記変換出力を受信して出力ビームを生成する波面光学部品であって、液体媒体における前記出力ビームの吸収及び散乱を軽減するように屈折補償を行う、波面光学部品と、
前記波面光学部品から受信した前記出力ビームを前記液体媒体において光子エネルギーとして送信する等方性送信機クラスタであって、前記液体媒体における複数の方向への前記光子エネルギーの送信を行うための2つ以上の送信ノードを備える、等方性送信機クラスタと、を備える、送信機。
【請求項2】
前記ネットワーク・インタフェースは、複数のイーサネット(登録商標)入力を受け取り、前記入力を前記UVエンコーダ変換ブロックによって変換されるデータへ変換する、請求項1に記載の送信機。
【請求項3】
前記複数のマルチスペクトル源は、前記送信機のデータ速度性能を増加させるように約380nm〜約450nmのUVスペクトルにおける複数の波長を含む光を生成する、レーザ、発光ダイオード、及び非コリメート・ビームのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の送信機。
【請求項4】
複数の発光ダイオード(LED)をさらに備え、各ダイオードは異なる波長を有し、前記複数のLEDは前記マルチスペクトル源を提供するカスケードとして構成されている、請求項3に記載の送信機。
【請求項5】
前記UVエンコーダ変換ブロックが前記変換出力を生成するためのシンボル及びフレーム形成用のタイミングを提供する安定化されたタイミング・リファレンスをさらに備える、請求項1に記載の送信機。
【請求項6】
前記波面光学部品の前記屈折補償は、前記液体媒体における光の吸収を軽減するための
非回析ベッセルビーム(DBB)をさらに含む、請求項1に記載の送信機。
【請求項7】
エキシコン・レンズをさらに備え、前記DBBは、前記エキシコン・レンズにUV光を通過させることによって生成される、請求項6に記載の送信機。
【請求項8】
前記エキシコン・レンズの装置は、送信されるエネルギーを光軸に沿った位置に配置するように選択される非線形関数によって指定されるテーパへと研磨される、請求項7に記載の送信機。
【請求項9】
前記波面光学部品の前記屈折補償は、前記液体媒体における光の吸収を軽減するための負屈折率材料(NIM)をさらに含む、請求項1に記載の送信機。
【請求項10】
液体媒体から変調ネットワーク・データを有する光子エネルギーを受信し、クラスタ出力データを生成する等方性受信機クラスタであって、前記液体媒体における複数の方向からの前記光子エネルギーの受信を行うための2つ以上の受信ノードを備える、等方性受信機クラスタと、
等方性受信機から前記クラスタ出力データを受信し、受信機出力データを生成する光子受信機であって、
受信した前記光子エネルギーをフィルタ処理して個々のスペクトル帯域へと分離するマルチスペクトル弁別器、及び、
光子カウンター・アレイであって、前記マルチスペクトル弁別器によって生成された前記個々のスペクトル帯域を前記アレイにおける個別の受信データ要素に格納する光子カウンター・アレイ、をさらに備える、光子受信機と、
前記光子カウンター・アレイの前記個別の受信データ要素からの前記変調ネットワーク・データをデコードする紫外線(UV)デコーダ変換ブロックと、を備える、受信機。
【請求項11】
前記等方性受信機クラスタは、前記液体媒体から光子エネルギーを受信するためのN×Mマルチカラー光学センサを備え、N及びMは正の整数である、請求項10に記載の受信機。
【請求項12】
前記等方性受信機クラスタは、海中環境において等方性パターンの光を受信するための二十・十二面体圧力容器をさらに備える、請求項11に記載の受信機。
【請求項13】
ネットワーク・インタフェースからネットワーク・データを受信して変換出力を生成するUVエンコーダ変換ブロックであって、前記ネットワーク・データを変調信号に変換し、前記変調信号は前記変換出力を生成するように複数のマルチスペクトル源を駆動する、UVエンコーダ変換ブロックと、
前記UV変換ブロックから前記変換出力を受信して出力ビームを生成する波面光学部品であって、液体媒体における前記出力ビームの吸収及び散乱を軽減するように屈折補償を行う、波面光学部品と、
前記波面光学部品から受信した前記出力ビームを前記液体媒体において光子エネルギーとして送信する等方性送信機クラスタであって、前記液体媒体における複数の方向への前記光子エネルギーの送信を行うための2つ以上の送信ノードを備える、等方性送信機クラスタと、
前記液体媒体から変調ネットワーク・データを有する光子エネルギーを受信し、クラスタ出力データを生成する等方性受信機クラスタであって、前記液体媒体における複数の方向からの前記光子エネルギーの受信を行うための2つ以上の受信ノードを備える、等方性受信機クラスタと、を備える、システム。
【請求項14】
等方性受信機から前記クラスタ出力データを受信し、受信機出力データを生成する光子
受信機であって、
受信した前記光子エネルギーをフィルタ処理して個々のスペクトル帯域へと分離するマルチスペクトル弁別器、及び、
光子カウンター・アレイであって、前記マルチスペクトル弁別器によって生成された前記個々のスペクトル帯域を前記アレイにおける個別の受信データ要素に格納する光子カウンター・アレイ、をさらに備える光子受信機、をさらに備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記光子カウンター・アレイの前記個別の受信データ要素からの前記変調ネットワーク・データをデコードする紫外線(UV)デコーダ変換ブロックと、
前記UVデコーダ変換ブロックからネットワーク・メッセージを受信する第1のネットワーク・インタフェースであって、前記メッセージを受信するためにイーサネット(登録商標)・プロトコル又はインターネット・プロトコルのうちの1つ以上を用いる、第1のネットワーク・インタフェースと、
前記UVエンコーダ変換ブロック用のネットワーク・メッセージを生成する第2のネットワーク・インタフェースであって、前記メッセージを送信するためにイーサネット(登録商標)・プロトコル又はインターネット・プロトコルのうちの1つ以上を用いる、第2のネットワーク・インタフェースと、をさらに備える、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システム、より詳細には、水などの液体媒体における拡張されたワイヤレス・ネットワーク性能を提供するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
水中音響通信は、音響波を介した水面下でのメッセージの送受信を伴う。空気など電磁スペクトル波を使用する陸上ワイヤレス通信用の伝送媒体とは異なり、水中メッセージ用の伝送媒体は水そのものであり、それによって多数の設計課題が提示される。水中通信は、とりわけ長距離において、多重波伝播、通信チャネルの時間のばらつき、狭い利用可能周波数帯域幅、及び強い信号減衰などの要因によって困難である。水中通信では、通常、データの伝送に電磁波に代えて音響波が用いられることから、殆どの水中通信システムでは陸上通信と比較してデータ速度が低い。殆どの海中通信が典型的には音響によって行われることから、通信は10キロビット毎秒以下のデータ速度において約200メートルの距離に制限される。しかし、また、水の中における音響の遅延により、長距離通信媒体としての音又は超音波は厳しく制限される。
【0003】
信頼性のある水中音響チャネルの設計は、通信システムの設計者に多くの困難を提示する。チャネルの目立った特徴の幾つかは、周波数依存性伝播損失、極度の多重波伝播、及び低速な音伝播である。これらの特徴の何れも地上の無線チャネルにおいては顕著でなく、この事実により、水中ワイヤレス通信は極めて困難になり、専用のシステム設計が必要とされる。また、音響波以外の波を使用する水中ワイヤレス通信を提供するべく、幾つかの非音響の試みも行われている。例えば、電磁スペクトルの青及び青−緑領域が海中通信に使用されたが、これは例えばスペクトルの535ナノメートル領域における信号減衰が高いため、乏しい結果しか与えていない。したがって、水の中における音響波及び/又は電磁波伝送の場合、通信距離、データ速度、及びシステムの信頼性は限定されたままである。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】水などの液体媒体におけるワイヤレス通信のための拡張された範囲の通信システムの一例を示す図。
図2】水などの液体媒体におけるワイヤレス通信のための拡張された範囲の通信システム用の送信機の一例を示す図。
図3】水などの液体媒体におけるワイヤレス通信のための拡張された範囲の通信システム用の受信機の一例を示す図。
図4図1〜3のエンコーダ及びデコーダ変換ブロックを介してエンコード及びデコードされることが可能な、例示のメッセージング・シンボル及び波形を示す図。
図5図1〜3のエンコーダ及びデコーダ変換ブロックを介してエンコード及びデコードされることが可能な、例示のメッセージング・シンボル及び波形を示す図。
図6】液体媒体におけるワイヤレス通信のための拡張された範囲の通信システム用の紫外線波形(UVW)受信機の一例を示す図。
図7】液体媒体におけるワイヤレス通信のための拡張された範囲の通信システム用の、RZシンボルを検出するスライディング・ウィンドウ整合フィルタの一例を示す図。
図8】液体媒体におけるワイヤレス通信のための拡張された範囲の通信システム用の検出プロセスに関連付けられるアイ・ダイアグラム。
図9】液体媒体におけるワイヤレス通信のための拡張された範囲の通信システム用の例示の光子計数アレイ構成。
図10】液体媒体におけるワイヤレス通信のための拡張された範囲の通信システム用の検出器アレイに関連付けられるアイ・ダイアグラム。
図11】液体媒体におけるワイヤレス通信のための拡張された範囲の通信システム用の、吸収性媒体においてエキシコン・レンズ(Exicon lens)によって生成される光のレイ・トレーシング及び断面を示す図。
図12】液体媒体におけるワイヤレス通信のための拡張された範囲の通信システム用のエキシコン・レンズによって生成される、光路に沿ったエネルギーの集中を示す図。
図13】液体媒体におけるワイヤレス通信のための拡張された範囲の通信システム用の材料の光学的負の率(optical negative index of material)を示す図。
図14】液体媒体におけるワイヤレス通信のための拡張された範囲の通信システム用の二十・十二面体送受信機圧力容器について、例示の構成を示す図。
図15】液体媒体におけるワイヤレス通信のための拡張された範囲の通信システム用の、例示の受信キャニスタ及びその関連光学部品を示す図。
図16】液体媒体におけるワイヤレス通信のための拡張された範囲の通信システム用の、例示の送信キャニスタ及びその関連光学部品を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本開示は、水などの液体媒体におけるワイヤレス通信のための拡張された範囲の通信システムに関する。送信機は、ネットワーク・インタフェースからネットワーク・データを受信して変換出力を生成する紫外線(UV)エンコーダ変換ブロックを備える。UVエンコーダ変換ブロックはネットワーク・データを変調信号に変換し、変調信号は変換出力を生成するように複数のマルチスペクトル源を駆動する。波面光学部品はUVエンコーダ変換ブロックから変換出力を受信し、出力ビームを生成する。波面光学部品は、液体媒体における出力ビームの吸収及び散乱を軽減するように屈折補償を行う。等方性送信機クラスタは、波面光学部品から受信した出力ビームを液体媒体において光子エネルギーとして送信する。等方性送信機クラスタは、液体媒体における複数の方向への光子エネルギーの送信を行うための2つ以上の送信ノードを備える。
【0006】
別の例では、受信機は、液体媒体から変調ネットワーク・データを有する光子エネルギーを受信してクラスタ出力データを生成する等方性受信機クラスタを備える。等方性受信機クラスタは、液体媒体における複数の方向からの光子エネルギーの受信を行うための2つ以上の受信ノードを備える。光子受信機は、等方性受信機からクラスタ出力データを受信し、受信機出力データを生成する。光子受信機は、受信した光子エネルギーをフィルタ処理して個々のスペクトル帯域へと分離するマルチスペクトル弁別器を備える。光子受信機は、また、光子カウンター・アレイを備え、マルチスペクトル弁別器によって生成された個々のスペクトル帯域をアレイにおける個別の受信データ要素に格納する。紫外線(UV)デコーダ変換ブロックは、光子カウンター・アレイの個別の受信データ要素からの変調ネットワーク・データをデコードする。
【0007】
さらに別の例では、システムは、ネットワーク・インタフェースからネットワーク・データを受信して変換出力を生成する紫外線(UV)エンコーダ変換ブロックを備える。UV変換ブロックはネットワーク・データを変調信号に変換し、変調信号は変換出力を生成するように複数のマルチスペクトル源を駆動する。波面光学部品はUV変換ブロックから変換出力を受信し、出力ビームを生成する。波面光学部品は、液体媒体における出力ビームの吸収及び散乱を軽減するように屈折補償を行う。等方性送信機クラスタは、波面光学部品から受信した出力ビームを液体媒体において光子エネルギーとして送信する。等方性送信機クラスタは、液体媒体における複数の方向への光子エネルギーの送信を行うための2つ以上の送信ノードを備える。システムは、液体媒体から変調ネットワーク・データを有する光子エネルギーを受信してクラスタ出力データを生成する等方性受信機クラスタを備える。等方性受信機クラスタは、液体媒体における複数の方向からの光子エネルギーの
受信を行うための2つ以上の受信ノードを備える。
【0008】
本開示は、水などの液体媒体におけるワイヤレス・ネットワーク・メッセージの伝送のための拡張された範囲の通信システムに関する。例えば、インターネット・プロトコル(IP)などネットワーク・プロトコルを介して通信可能なネットワーク・インタフェースが提供されている。従来のシステムを通じた液体媒体における通信の範囲を大きくするために、ネットワーク・インタフェースからのメッセージ・データを紫外線(UV)スペクトル(例えば、約380nm〜約450nm)のエネルギーへと変調及び変換することができる。したがって、一例では、海中通信システムはUV光に変換されるネットワーク・メッセージに基づいてよく、この変換を行うために、プログラム可能なデジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)を介してネットワーク・メッセージを処理することができる。このような変換には、液体媒体の送信側におけるネットワークからUVへの変換と、受信側におけるUVからネットワークへの変換とが含まれ得る。続く送信及び/又は受信のために、例えばパーソナル・コンピュータ(PC)を介してDSPからの変換出力を処理し得る。液体媒体における距離をさらに増加させて損失を低減させるために、コンピュータからの出力を屈折補償波面光学素子に接続することができる。複数の方向において通信の範囲をさらに大きくするために、一例では、波面光学素子から生成されるビームは、海中レンズ・クラスタを介して液体媒体中に送信されてよい。
【0009】
特定の一例では、通信範囲は波面光学素子によって拡張される。波面光学素子は、液体媒体における吸収損失及び散乱を軽減するように屈折補償を提供するよう構成されており、屈折補償は、一例では非回析ベッセルビーム(DBB)の利用を含んでよく、又は、別の例では負屈折率材料(Negative Index of Refraction Material)(NIM)を介する。通信システムの送信範囲は、UVビームへ変換されたネットワーク・メッセージの等方性伝播を提供する海中光学レンズ・クラスタを介してさらに拡張されることができる。受信機には、また、入力を収集した光子エネルギーを光子計数アレイに集める(focus)レンズ・クラスタが実装され得る。結果として生じる送信及び受信ネットワーク・システムでは、例えば、10−6以上のビット・エラー・レート(BER)を有する1メガビット以上のデータ速度において、1km超の範囲に海中通信が提供される。
【0010】
図1では、例えば、水などの液体媒体104におけるワイヤレス通信のための拡張された範囲の通信システム100の一例を示す。送信機110は、ネットワーク・インタフェース124からネットワーク・データを受信して変換出力を生成する紫外線(UV)エンコーダ変換ブロック120を備える。UVエンコーダ変換ブロック120はネットワーク・データを変調信号に変換し、変調信号によってブロック内の複数のマルチスペクトル源(例えば、異なる周波数を有する光源)が変換出力を生成する。波面光学部品130はUVエンコーダ変換ブロック120から変換出力を受信し、紫外線又は近紫外線波長の出力ビームを生成する。波面光学部品130は、液体媒体104における出力ビームの吸収及び散乱を軽減するように屈折補償を行う。等方性送信機クラスタ140は、波面光学部品130から受信した出力ビームを液体媒体104において光子エネルギーとして送信する。等方性送信機クラスタ140は、液体媒体104における複数の方向への光子エネルギーの送信を行うための2つ以上の送信ノードを備える。
【0011】
液体媒体104を通じて送信機110から幾らかの距離にあるとき、受信機150は、液体媒体104から変調ネットワーク・データを有する光子エネルギーを受信してクラスタ出力データを生成する等方性受信機クラスタ160を備える。等方性受信機クラスタ160は、液体媒体104における複数の方向から光子エネルギーを受信するための2つ以上の受信ノードを備える。光子受信機170は、等方性受信機160からクラスタ出力データを受信し、受信機出力データを生成する。光子受信機170は、受信した光子エネル
ギーをフィルタ処理して個々のスペクトル帯域へと分離するマルチスペクトル弁別器174を備える。光子受信機170は、また、光子カウンター・アレイ178を備え、マルチスペクトル弁別器によって生成した個々のスペクトル帯域をアレイの個別の受信データ要素に格納する。紫外線(UV)デコーダ変換ブロック180は、光子カウンター・アレイの個別の受信データ要素からの変調ネットワーク・データをデコードし、光子カウンター・アレイでは、送信機110を介してネットワーク・インタフェース124から生成されたメッセージをネットワーク・インタフェース190が受信する。1つの送信機110及び受信機のみが示されているが、双方向の通信が、また、ネットワーク・インタフェース124及び190の間において支持されることができる。ネットワーク・インタフェース124及び190の間では、通信路のそれぞれの側が送信機110及び受信機150の両方を備え、液体媒体104を通じた両方向へのメッセージ・データ・フローを可能にする。
【0012】
送信機110に関して、ネットワーク・インタフェース124は、一例では複数のイーサネット(登録商標)入力を受け取り、これらの入力をUVエンコーダ変換ブロック120によって変換されるデータへ変換する。これには、例えば、インターネット・プロトコルを介してなどのグローバルネットワークのメッセージ処理が含まれる。UVエンコーダ変換ブロック120は変調器を備えることができ、変調器は、例えば、ブロック内の複数のマルチスペクトル源を変調する同期及びプリアンブルを含むようなオンオフ変調(OOK)波形又はパルス位置変調(PPM)波形を生成する。マルチスペクトル源は、送信機110のデータ速度性能を増加させるように、例えば、約380nm〜約450nmのUVスペクトル(又は近UV)における複数の波長を含む光を生成する、レーザ、発光ダイオード、及び非コリメート・ビームのうちの1つ以上を含むことができる。特定の一例では、マルチスペクトル源は複数の発光ダイオード(LED)を備えることができる。各ダイオードは異なる波長を有し、LEDはマルチスペクトル源を提供するカスケードとして構成されている。安定化されたタイミング・リファレンスは、UVエンコーダ変換ブロック120が変換出力を生成するためのシンボル及びフレーム形成用のタイミングを提供する。
【0013】
波面光学部品130の屈折補償は、液体媒体における光の吸収を軽減するための非回析ベッセルビーム(DBB)を含み得る。例えば、波面光学素子130はエキシコン・レンズ(Exicon lens)を備えることができ、DBBは、エキシコン・レンズにUV光を通過させることによって生成される。エキシコン・レンズは、送信されるエネルギーを光軸に沿った位置に配置するように選択される非線形関数によって指定されるテーパへと研磨されることができる。代替的な例では、波面光学部品130の屈折補償は、液体媒体104における光の吸収を軽減するための負屈折率材料(NIM)を含み得る。このNIMには、層間に所定の間隔(例えば、70nmの間隔)を有する複数の金ナノ構造層を用いる光学材料を含むことができる。さらに他の波面光学素子は、アキシコン・レンズ(Axicon lens)、スリットを有する格子、及び/又はホログラム生成器を含んでよい。等方性送信機クラスタ140は、例えば、約360度の球状又は半球状のパターンにより光子エネルギーを照射するための複数のマルチカラー・エミッタを備え得る。等方性送信クラスタ140は、例えば、海中環境において等方性パターンの光を送信するための二十・十二面体圧力容器を備え得る。
【0014】
受信機150に関して、光子受信機170における個別の受信データ要素は、間隔に基づく光子計数として光子カウンター・アレイ178に格納され得る。間隔に基づく光子計数は、例えば、光子計数データ・シーケンスの二値シンボルを検出するために、ポアソン/スケラム分布に基づく通信波形に由来し得る。UVデコーダ変換ブロック180は、オンオフ変調(OOK)又はパルス位置変調(PPM)シーケンスをネットワーク・メッセージ・データへとデコードするモジュールを備え得る。ネットワーク・インタフェース1
90は、一例では、UVデコーダ変換ブロック180から受信したネットワーク・メッセージ・データを、イーサネット(登録商標)・プロトコル又はインターネット・プロトコルのうちの1つ以上を介して処理する。ネットワーク・インタフェース124及び190の間のこのような通信は、所望により、様々な暗号化プロトコルと共に安全性のためのSSL(secure socket layer)を備えることができる。等方性受信機クラスタ160は、液体媒体から光子エネルギーを受信するためのN×Mマルチカラー光学センサを備えることができ、N及びMは正の整数である。等方性受信機クラスタ160は、また、例えば、海中環境において等方性パターンの光を受信するための二十・十二面体圧力容器を備え得る。
【0015】
一例の適用では、システム100は、約380〜450ナノメートルの範囲のUV光を用いて海水中での減衰を最小とすることによって、より長距離の通信を可能にする一方で、傍受及び検出の確率は低いものとなる。非回析ベッセルビーム(DBB)又はメタマテリアルによる負屈折率(negative index of refraction using MetaMaterial)(NIM)の形態の光波面工学は、1メガビット毎秒以上のデータ速度において動作範囲を1km以上に拡張するために適用され得る。等方性マルチ要素光子計数アレイと接続されている海中光学レンズ・クラスタによって、見通し線(line−of−sight)を向ける必要なく、この複合光学構造の実用が可能になる。
【0016】
UVに基づいた等方性通信システムは、インターネット・プロトコル(IP)・ネットワーク用のノード間接続を提供することができる。例えば、海中プラットフォーム及び乗物は変換区域内で自動的にネットワークを構築することができ、この変換区域は海中プラットフォーム及び乗物の位置を示さない。本明細書に記載のシステムにより、数百メートル離れた間隔のノードを使用して10−6のビット・エラー・レート(BER)を有する数百キロビット毎秒のデータ速度が可能となる。従来のワイヤレス通信システムは、とりわけ電磁スペクトル(EMS)の無線周波数(RF)領域では、一般にガウス分布論に基づくが、しかしながら、そのような処理はシステム100の範囲を制限する場合がある。システム100は、ポアソン及びスケラム分布を使用して光子エネルギーに基づく通信システムを提供する。したがって、システム100は、従来のシステムの場合のような絶対信号レベル(デシベル)の代わりに、伝播路の各地点での1秒あたりの光子計数を予測するリンク・バジェットをもたらす。特殊化された通信波形は、この代替的な分析アプローチに基づいて提供され得る。効率的な長距離の水中通信を行うために、UV及び近UV帯域において選択可能な波長で光を放射するUV源、光学NIM、及びソリッドステートのチャネル型光電子増倍管(CPM)の可用性を用いることができる。
【0017】
波長の選択、光波面工学、特殊化された波形、及び等方性レンズ・クラスタの組み合わせは、例えば、より長距離の高いデータ速度のIP通信システムを固定位置及び移動中の海中プラットフォーム及び乗物に提供する。したがって、潜水艦、水上船、ダイバー、無人水中航走体(UUV)、及び大水深作業プラットフォーム(deep submerged operating platform)(DSOP)は、本明細書に記載のUV光接続を利用して形成されるネットワークから利益を得ることができる。
【0018】
図2及び3では、水などの液体媒体におけるワイヤレス通信のための、図1に示される拡張された範囲の通信システムの送信機及び受信機の例を示す。図2の送信機200に関して、ネットワーク・インタフェースは、コンピュータ(図示せず)などのソースからインターネット・プロトコル(IP)・メッセージ・パケットを受信する。IPパケットは、リターン・トゥ・ゼロ(RZ)・ストリーミング・ビット(図4及び5に関する説明を見よ)への変換と、UVエンコーダ変換ブロック220へのルーティングとが可能な任意の種類の情報を含み得る。前述されるように、UVエンコーダ変換ブロック220はUV
波(UVW)送信モデム224を備えることができ、UVW送信モデム224では、オンオフ変調(OOK)又はパルス位置変調(PPM)変調が生じ得る。送信モデム224は、エンコードされたマルチカラー(マルチスペクトルとも称される)UV源226のオンオフ切替を提供し、エンコードされたマルチカラーUV源226は、例えば、レーザ、LEDアレイ、及び/又は非コリメート・ビームであってよい。安定化されたタイミング・リファレンス228は、UVW変調器224を駆動するために提供され得る。適切な波面は、波面光学素子230を通じてUV源226からのUV光を処理することによって生成され得る。波面光学素子230は、前述されるように、アキシコン・レンズ、エキシコン・レンズ、光学スリットを有する格子、ホログラム生成器、及び/又は光学NIM装置を含んでよい。光学素子230からの波面ビームは、レンズ・クラスタ240(例えば、送信機テレスコープ・クラスタ)へ光学的にルーティングされ、レンズ・クラスタ240では、例えば、等方性の非回析又はNIMビームの放射が海洋などの液体媒体において生じ得る。レンズ・クラスタ240は、実質的に円錐状のパターン250で海洋中へ光子エネルギーを出力する。海洋中では、光子は吸収及び散乱の対象となり、これらを組み合わせた影響が減衰として見られる。本明細書に記載のシステムは、海洋環境では約380及び約450ナノメートルの間の波長で光の減衰が最小となる現象を活用する。
【0019】
ここで図3の受信機300を参照すると、前述の送信機クラスタと同様の受信機海中レンズ・クラスタ(例えば、受信機テレスコープ・クラスタ)310を使用することで、光子エネルギーを検出できる。受信機クラスタ310は、収集した光子エネルギーを光子カウンター・アレイ320に集め、光子カウンター・アレイ320は、UVデコーダ変換ブロックのUVW信号プロセッサ受信機324へルーティングするために各アレイ要素からの光子計数を結合する。マルチカラー弁別器(マルチスペクトル弁別器とも称される)フィルタバンク340は光子計数アレイ320へ進み、UV光子エネルギーを個々の帯域へと分離する。マルチカラー/マルチスペクトル動作により、本システムの情報の周波数帯域幅は大きく増加する。UVW受信機324は、OOK又はPPMフォーマットのビット・ストリームを出力し、このビット・ストリームはPPM又はOOKデコーダ344によってデコードされる。安定化されたタイミング・リファレンス348は、受信機324及びデコーダ344を駆動する。デコードされたビット・ストリームは、コンピューティング装置への接続及び/又は他のネットワークへのルーティングが可能なネットワーク・インタフェース350によってIPパケットへと再フォーマットされ得る。受信機タイミング・リファレンス348は、本明細書に記載の送信動作及び受信動作の間の同期を管理する。
【0020】
図4及び5では、図1〜3のエンコーダ及びデコーダ変換ブロックを介してエンコード及びデコードされることが可能な例示のメッセージング・シンボル及び波形を示す。図4では、本明細書に記載のエンコード及びデコード・システムによるシンボル・フォーマットを提供するために、NRZシンボル波形400と共にRZシンボル波形420を示す。図4に示すように、NRZシンボル・フォーマット400に関して、第1の論理状態(例えば、論理「1」状態)は、所定の期間を通じてエネルギーを送信する(オン状態)ことによって提供されることができる一方、第2の論理状態(例えば、論理「0」状態)は、所定の期間を通じてエネルギーを送信しない(オフ状態)ことによって提供されることができる。図4に示すように、RZシンボル・フォーマット400に関して、第1の論理状態(例えば、論理「1」状態)は、所定の期間の第1の時間間隔を通じてエネルギーを送信する(オン状態)ことと、それに続く所定の期間の第2の時間間隔を通じてエネルギーを送信しない(オフ状態)ことによって提供されることができ、第2の論理状態(例えば、論理「0」状態)は、所定の期間の第1の時間間隔を通じてエネルギーを送信しない(オフ状態)ことと、それに続く所定の期間の第2の時間間隔を通じてエネルギーを送信する(オン状態)ことによって提供されることができる。
【0021】
RZシンボル・フォーマットは、NRZシンボル・フォーマットを超える幾つかの異なる利点、例えば固定の50%デューティ・サイクル、自己クロッキング(シンボル毎に1回以上の遷移が存在する)及び自己閾値決定(self thresholding)(エネルギー状態及びエネルギー無し状態が全てのシンボルにおいて生じる)を有する。後述の例はRZシンボル・フォーマットに関して示すものであるが、他の実施形態ではNRZシンボル・フォーマット又は他のシンボル・フォーマット(例えば、より高次のシンボル・フォーマット)が用いられてよいことが認識される。これには、NRZシンボル・フォーマットへのRZシンボル・フォーマットのマッピング及び/又はRZシンボル・フォーマットへのNRZシンボル・フォーマットのマッピングなど、シンボル・フォーマット間のマッピングが含まれ得る。
【0022】
一般に、光子計数は、図3に関して前述される光子計数アレイにおいて受信されるRZシンボルの各半分の間に行われ得る。RZシンボルの一方の半分は、受信された光エネルギーによって生成される計数に、検出器によって生成される内部雑音の計数が加算されたものを含み得る。平均値は、S+Nとなる。RZシンボルの他方の半分は、検出器の雑音からの計数のみを有することになり、その平均値はNである。図5では、波形500における1つのRZシンボルについての関係が示されている。復調器は、RZシンボルの半分がオン状態又はオフ状態であるのかを判定するために、所定の計数値によって計数をチェックすることができる。
【0023】
シンボルをデコードするためのビット決定には、後述の簡単な規則が使用できる:シンボルの第1の半分及び第2の半分における計数の数を比較すること;第1の半分がより大きい場合、そのシンボルは、第1の論理状態(例えば、論理「1」)であると宣言され、第2の半分が等しい又はより大きい場合、そのシンボルは、第2の論理状態(例えば、論理「0」)であると宣言される。例えば、論理「1」が送られたとき、第1の半分における計数は、受信された信号の平均と、所与の期間のその時間間隔の最中に生成された検出器の雑音の平均との和に等しい平均値を有する;第2の半分における計数は、所与の期間の第2の時間間隔における検出器の雑音のみの平均値に等しい平均値を有する。図5に示すように、Pois(S+N)は、シンボルについて信号の方の半分の間のポアソン過程を表し、Pois(N)は、雑音のみの方の半分の間のポアソン過程を示す。論理状態は、論理「1」がシンボルの第2の半分において受信されたエネルギーに基づき、論理「0」が、シンボルの第1の半分において受信されたエネルギーに基づくように置き換えることができる。サンプリング処理と入ってくる波形の間のタイミング誤差は、受信機の復調器に存在する整合フィルタの出力波形の対称性を測定することによって推定される。
【0024】
図6では、液体媒体におけるワイヤレス通信のための拡張された範囲の通信システム用の紫外線波形(UVW)受信機600の一例を示す。UVW受信機600は光子計数に基づき、UVW受信機600の動作の理論は、古典的な通信理論に関連付けられる通常のガウス分布の代わりにポアソン分布の計算に基づく。610における受信されたRZシンボル波形光子計数サンプルは、1データ・ビットあたり8サンプル(又は他の数)の速度で計数検出器620を介してサンプリングされ、バイポーラ波形によりDCオフセットを除去する整合フィルタ630を介して整合フィルタ処理される。バイポーラ整合フィルタ700は、図7に示されており、例えば、4サンプル・スライディング・ボックスカー・フィルタ710、4サンプル遅延ライン720、及び減算動作730を使用する(4以外のサンプル数も可能)。3db SNRにおける整合フィルタ波形の典型的なアイ・ダイアグラムは、図8に示される。
【0025】
再び図6を参照すると、64サンプル・ブロック・プロセッサ640は、図9に示されるように8データビットを1グループとして表すサンプルを処理する。サンプルは、64要素のアレイへと編成される。各ビットからのサンプル位置は、DSPプロセッサにより
扱うのに列又は行のどちらがより容易かに依存して、列又は行により整合されることができる。図9に示されるアレイの例は、各列を連続して満たす。他のアレイ及びサンプルの大きさも可能である。
【0026】
再び図6を参照すると、ビット決定650は、ビットのグループを通じて最も高い総合エネルギーを有するサンプル位置を識別することによって行われる。各ビットのサンプルにおけるこのサンプル位置に対応する8つの波形値は、前述のNRZフォーマットへマッピングされ得る。整合フィルタ処理された波形によって提供される情報を使用することで、受信された波形及びローカル・クロック660の間のタイミング及び位相調整における誤差を推定することができる。誤差推定は、処理された各ブロックの最後(直近)のビットからのサンプル・データを使用する誤差推定器670によって生成される。誤差推定は、受信機サンプル・クロックを生成する数値制御発振器(NCO)680を制御することに使用される。誤差推定器670からのサンプル・タイミング誤差をフィルタ処理するために、ループ・フィルタ690(例えば、デジタル・フィルタ)を提供することができる。このアレイについての一例のアイ・ダイアグラムが、図10に示される。1000において最も高いエネルギーを有するサンプル位置と、1020におけるタイミング誤差を推定するのに使用されるサンプル位置とが、このアイ・ダイアグラムに示される。
【0027】
UVW受信機600は、UVW受信機600の動作に対する要因である「自己閾値決定」(エネルギー状態及びエネルギー無し状態が全てのシンボルにおいて生じる)であることから、光子計数環境において適切な性能を有する。光エネルギー生成及び検出器の雑音生成のプロセスは、どちらもポアソン分布である。ポアソン分布の特徴は、従来のシステムの無線周波数(RF)に基づく伝送を説明するのに一般に使用されるガウス分布とは大幅に異なる。ポアソン分布及びガウス分布の違いを強調するために、信号対雑音比(S/N)の代替として新たな記述子OP(S,N)が導入される。記述子OP(S,N)は、Sの信号計数値及びNの雑音計数値における動作点を示す。ポアソン分布のプロセスは計数イベントに等しいことから、正の計数のみが一般に関係し、したがって、信号計数は雑音計数の上に乗ることができる。
【0028】
水などの液体媒体における通信距離が増加する別の態様は、図1〜3に関して前述される波面光学素子を関連付ける。光学システムは、従来とは異なる波面修正を使用し、吸収及び散乱が起こる中で光子エネルギーを保存する非回析ビームを生成することにより動作の通信範囲を拡張する。代替的な範囲拡張手法では、正屈折率媒体(例えば、水)における吸収から光子を免れさせる負の屈折率を生じることによって水の中における光の吸収を打ち消す負の率の材料(NIM)が利用される。
【0029】
一例として、ベッセルビーム(Bessel Beam)と称されるこのような1つの波面は、一例における光学素子が、水中環境において光子エネルギーの照射範囲を拡張するためにどのように非回折ベッセルビーム(Diffraction−less Bessel Beam)(DBB)を使用するのかを示すべく説明される。本明細書に記載の実施形態は、吸収媒体における光学範囲拡張体(optical range extender)としてDBBを使用することに限定されず、放射される光子エネルギーの通信範囲を拡張する波面修正の全ての形態を含む。
【0030】
ベールの法則によって説明される線形媒体における光の吸収は、光の伝播を制限する物質の基本特性である。耐吸収性光ビームの構築には、吸収媒体におけるビームの指数関数的減少を補償する(例えば、屈折補償)ように光学要素の位相応答を選ぶことが伴う。幾つかの例におけるこのような光学要素は、指数関数的強度のエキシコン・レンズ又はミラーと称される。これらの光学要素は、所定の範囲を通じて吸収のない(absorption−free)ビーム又は非回折ビームをDBB波面構成に基づいて生成する。このD
BB波面構成では、入射ビームの異なる複数のビームレットすなわち複数の部分の重ね合わせによって有限の距離を通じて横断寸法が一定であるパターン(例えば、非回折ビーム)、すなわち、吸収媒体における所定の距離を通じて強度が実質的に一定であるパターンを生成するようにそれら複数のビームレット又は部分を再配光させることにより、これを達成している。
【0031】
図11では、どのようにDBBがエキシコン・レンズ1100として実装されることができ、吸収が起こる中で自己修復性である光ビームを生成するのかを示す。DBBは、エキシコン・レンズ1100にコリメート光ビームを通過させることによって生成されることができるが、格子又はホログラムを使用することで同様の効果を実現することができる。水などの吸収媒体の場合(例えば、吸収のないビーム)において、損失又は吸収を補償するために、より大きなパワーが入射ビームの複数の部分から光路に沿ってさらに集中させられる。図11では、画像1130に示される所定の範囲上にエキシコン・レンズにより生成される光の重ね合わせによって生成される、1110における水の中の光の非補償性伝播、1120でエキシコン・レンズのエネルギー焦点、及び一定の光強度を示す。エキシコン・レンズ1100は環状リングを生成し、環状リングの数は、1140、1150、及び1160に示されるように、光が光軸を下流へ伝播するにつれて増加する。リングは、粒子による妨害又は水分子による吸収にも関わらずに光子エネルギーを運び続ける自己修復性特徴を形成する。
【0032】
図12では、エキシコン・レンズ1200によって生成される、光路に沿ったエネルギーの集中を示す。エキシコン・レンズ1200は、3つのパラメータ、すなわち、その基部の半径W0、その円錐の角度AA、及び、因数βを特徴とすることができ、因子βは、d1<z<d2であり、d1及びd2は開始及び終止焦点領域である、自由空間における所望の軸上指数関数的強度E(z)=exp(βz)の因子である。1220に示されるエキシコン焦点距離は、光子エネルギーの集中が最大となる、光軸に沿った距離であり、その後、リング・ダイアグラム1230に示すように光子エネルギーは急速に低下する。
【0033】
光学範囲をさらに遠くへ拡張することの代替的構成の一例は、吸収媒体の複素屈折率を補償するためにNIM装置を使用することである。媒体における屈折率は、nが複素屈折率の屈折を示す部分であり、noが複素屈折率の吸収を示す部分であるN=n+inoによって与えられる。複素屈折率Nn=−n−inoを生成可能である光学NIMは、Nをゼロにし、媒体(例えば、誘電率及び透磁率=0)を通る好適なトンネルを生成する。
【0034】
図13では、このような特性を有する材料の光学的負の率を示す。金ナノ技術を用いる個々のNIM要素が1300に示されており、U型構造は、例えば、約380nmの高さ、約430nmの幅、及び約80nmの脚幅を有して形成される。このような構造は、1310に図示されるような層として、層間に約70nmの一例の間隔を有して形成されることができる。この種類のメタマテリアルを生成することにより、実質的に吸収のないトンネルを生成することができ、吸収のないトンネルは、水分子による光吸収の影響を低減することによってワイヤレス通信の動作範囲を拡張する。本実施形態は如何なる特定の波長用のNIMの実装にも限定されず、水の吸収特性を補償するためのモノトーン又はマルチカラーに使用される全てのこのような材料を含むことが留意される。
【0035】
図14では、二十・十二面体送受信機圧力容器についての例示の構成を示す。本明細書に記載のシステムの別の態様は、前述の受信機に対して光の等方性放射を行い、前述の送信機から光の等方性受信を行うことである。これを達成するため、二十・十二面体圧力容器1400は、例えば、12個(又は他の数)の五角形表面及び20個の三角形表面から成ることができる。五角形表面は1410における光送信機の専用であり、三角形表面は1420における光受信機の専用である。関連するヒート・シンク、ドライバ電子機器、
及び光子検出器アレイなどに加えて、2種類のキャニスタ(例えば、送信キャニスタ1460及び受信キャニスタ1470)を備える容器1400の内部構成が、1450に示される。圧力容器は、360度の球状適用域を可能にすることによって等方性放射及び受信を生成するために、例えば、800送信エタンデュ及び480受信エタンデュを有する。
【0036】
図15では、受信キャニスタ1500及びその関連光学部品を示す。球状ドーム・レンズ・ウィンドウ1510は、480度の視野で光を収集する。光は、その後、凸レンズ1520及び凹レンズ1530によってナロービームへと集束される。このプロセスによって、光子計数検出器に対するファイバ光リンク1550に接続するコリメータ1540上へと合焦されるサブミリ・ビームが生成される。受信機のそれぞれからのファイバ光リンク(例えば20個)はまとめて束ねられ、1つの光子計数検出器に接続される。結合された計数は、UVW波形のデコードを実行するプロセッサへ伝達される。本明細書に記載の実施形態は、1つの光子検出器へと束ねられる20個の光受信機に限定されず、海中環境における光の等方性受信を得る目的の複数の受信キャニスタ及びその関連光学素子を伴う全てのこれらの構成を含む。
【0037】
図16では、送信キャニスタ1600及びその関連光学部品を示す。1600におけるハイパワー・マルチカラーLEDは、放射面反射器1620の中に位置する。エキシコン・レンズ1630及び関連コリメータ1640は、反射器の対面する一端に配置される。反射器1620は、等方性適用域をもたらたすために800エタンデュに調整される。保護ウィンドウ1650は、圧力容器を封止するためにキャニスタ1600の遠端に配置される。本実施形態は12個の光送信機に限定されず、海中環境における光の等方性送信を得る目的の複数の送信キャニスタ及びその関連光学素子を伴う全てのこのような材料を含むことが留意される。
【0038】
ワイヤレス通信の別の態様では、前述のUVW波形及びマルチカラー放射装置の適用に基づく海中動作に適切なアドホック・ネットワーク・プロトコルが提供される。一例において、本明細書に記載のシステムは、例えば、前述の等方性送受信機によって形成されるノードに基づくアドホック・ネットワークを生成する目的のために、802.11プロトコルの修正されたバージョンを使用することができる。プロトコルに対する1つの修正は、マルチカラー・コードに基づくノード・アドレスの使用を伴う。異なる波長の光は互いに干渉しないことから、通常のIP4又はIP6規格の代わりに、波長を混合することによって生成されるコードを使用することができる。ネットワーク構成のマルチカラーの態様は、周波数帯域幅の増加と各ノードの識別の簡略化との両方を行う。本明細書に記載の実施形態は、修正された802.11プロトコルのみに基づくネットワーク構成に限定されず、本明細書に記載のUVW送受信機及び受信機と共に使用される場合に全てのこれらのアドホック・ネットワーク・プロトコルを含む。
【0039】
上記に述べた事項は例である。もちろん、構成要素又は方法論の全てのあり得る組み合わせを記載することは不可能であるが、当業者は、本発明の多くのさらなる組み合わせ及び置換が可能であることを認めるだろう。したがって、本発明は、添付の請求項を含む本出願の範囲内に含まれる、全てのそのような変更、修正、及び変形を包含するものと意図する。本明細書で使用されるように、用語「備える、含む(include)」は備えること又は含むことを意味するが、それに限定されない。用語「基づく(based on)」は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。これに加えて、本開示又は請求項が列挙する「a」、「an」、「第1の(a first)」又は「別の(another)」要素又はその同義語は、2つ以上のこれらの要素を要求するでも除くでもなく、1つ又は1つ以上のこれらの要素を含むように解釈されるだろう。
[項目1]
ネットワーク・インタフェースからネットワーク・データを受信して変換出力を生成する紫外線(UV)エンコーダ変換ブロックであって、前記ネットワーク・データを変調信号に変換し、前記変調信号は前記変換出力を生成するように複数のマルチスペクトル源を駆動する、UVエンコーダ変換ブロックと、
前記UVエンコーダ変換ブロックから前記変換出力を受信して出力ビームを生成する波面光学部品であって、液体媒体における前記出力ビームの吸収及び散乱を軽減するように屈折補償を行う、波面光学部品と、
前記波面光学部品から受信した前記出力ビームを前記液体媒体において光子エネルギーとして送信する等方性送信機クラスタであって、前記液体媒体における複数の方向への前記光子エネルギーの送信を行うための2つ以上の送信ノードを備える、等方性送信機クラスタと、を備える、送信機。
[項目2]
前記ネットワーク・インタフェースは、複数のイーサネット(登録商標)入力を受け取り、前記入力を前記UVエンコーダ変換ブロックによって変換されるデータへ変換する、
項目1に記載の送信機。
[項目3]
前記複数のマルチスペクトル源は、前記送信機のデータ速度性能を増加させるように約380nm〜約450nmのUVスペクトルにおける複数の波長を含む光を生成する、レーザ、発光ダイオード、及び非コリメート・ビームのうちの1つ以上を含む、項目1に記載の送信機。
[項目4]
複数の発光ダイオード(LED)をさらに備え、各ダイオードは異なる波長を有し、前記複数のLEDは前記マルチスペクトル源を提供するカスケードとして構成されている、項目3に記載の送信機。
[項目5]
前記UVエンコーダ変換ブロックが前記変換出力を生成するためのシンボル及びフレーム形成用のタイミングを提供する安定化されたタイミング・リファレンスをさらに備える、項目1に記載の送信機。
[項目6]
前記波面光学部品の前記屈折補償は、前記液体媒体における光の吸収を軽減するための非回析ベッセルビーム(DBB)をさらに含む、項目1に記載の送信機。
[項目7]
エキシコン・レンズをさらに備え、前記DBBは、前記エキシコン・レンズにUV光を通過させることによって生成される、項目6に記載の送信機。
[項目8]
前記エキシコン・レンズの装置は、送信されるエネルギーを光軸に沿った位置に配置するように選択される非線形関数によって指定されるテーパへと研磨される、項目7に記載の送信機。
[項目9]
前記波面光学部品の前記屈折補償は、前記液体媒体における光の吸収を軽減するための負屈折率材料(NIM)をさらに含む、項目1に記載の送信機。
[項目10]
前記NIMは光学材料をさらに含み、前記光学材料には層間に所定の間隔を有する複数の金ナノ構造層が用いられる、項目9に記載の送信機。
[項目11]
前記波面光学部品の前記屈折補償は、前記液体媒体における光の吸収を軽減するためのアキシコン・レンズ、光学スリットを有する格子、及びホログラム生成器のうちの1つ以上をさらに含む、項目1に記載の送信機。
[項目12]
前記等方性送信機クラスタは、約360度の球状又は半球状のパターンにより光子エネルギーを照射するための複数のマルチカラー・エミッタを備える、項目1に記載の送信機。
[項目13]
前記等方性送信機クラスタは、海中環境において等方性パターンの光を送信するために使用される二十・十二面体圧力容器をさらに備える、項目12に記載の送信機。
[項目14]
液体媒体から変調ネットワーク・データを有する光子エネルギーを受信し、クラスタ出力データを生成する等方性受信機クラスタであって、前記液体媒体における複数の方向からの前記光子エネルギーの受信を行うための2つ以上の受信ノードを備える、等方性受信機クラスタと、
等方性受信機から前記クラスタ出力データを受信し、受信機出力データを生成する光子受信機であって、
受信した前記光子エネルギーをフィルタ処理して個々のスペクトル帯域へと分離するマルチスペクトル弁別器、及び、
光子カウンター・アレイであって、前記マルチスペクトル弁別器によって生成された前記個々のスペクトル帯域を前記アレイにおける個別の受信データ要素に格納する光子カウンター・アレイ、をさらに備える、光子受信機と、
前記光子カウンター・アレイの前記個別の受信データ要素からの前記変調ネットワーク・データをデコードする紫外線(UV)デコーダ変換ブロックと、を備える、受信機。
[項目15]
イーサネット(登録商標)・プロトコル又はインターネット・プロトコルのうちの1つ以上を介してネットワーク・メッセージ・データを処理するネットワーク・インタフェース装置をさらに備える、項目14に記載の受信機。
[項目16]
前記等方性受信機クラスタは、前記液体媒体から光子エネルギーを受信するためのN×Mマルチカラー光学センサを備え、N及びMは正の整数である、項目15に記載の受信機。
[項目17]
前記等方性受信機クラスタは、海中環境において等方性パターンの光を受信するための二十・十二面体圧力容器をさらに備える、項目16に記載の受信機。
[項目18]
ネットワーク・インタフェースからネットワーク・データを受信して変換出力を生成するUVエンコーダ変換ブロックであって、前記ネットワーク・データを変調信号に変換し、前記変調信号は前記変換出力を生成するように複数のマルチスペクトル源を駆動する、UVエンコーダ変換ブロックと、
前記UV変換ブロックから前記変換出力を受信して出力ビームを生成する波面光学部品であって、液体媒体における前記出力ビームの吸収及び散乱を軽減するように屈折補償を行う、波面光学部品と、
前記波面光学部品から受信した前記出力ビームを前記液体媒体において光子エネルギーとして送信する等方性送信機クラスタであって、前記液体媒体における複数の方向への前記光子エネルギーの送信を行うための2つ以上の送信ノードを備える、等方性送信機クラスタと、
前記液体媒体から変調ネットワーク・データを有する光子エネルギーを受信し、クラスタ出力データを生成する等方性受信機クラスタであって、前記液体媒体における複数の方向からの前記光子エネルギーの受信を行うための2つ以上の受信ノードを備える、等方性受信機クラスタと、を備える、システム。
[項目19]
等方性受信機から前記クラスタ出力データを受信し、受信機出力データを生成する光子受信機であって、
受信した前記光子エネルギーをフィルタ処理して個々のスペクトル帯域へと分離するマルチスペクトル弁別器、及び、
光子カウンター・アレイであって、前記マルチスペクトル弁別器によって生成された前記個々のスペクトル帯域を前記アレイにおける個別の受信データ要素に格納する光子カウンター・アレイ、をさらに備える光子受信機、をさらに備える、項目18に記載のシステム。
[項目20]
前記光子カウンター・アレイの前記個別の受信データ要素からの前記変調ネットワーク・データをデコードする紫外線(UV)デコーダ変換ブロックと、
前記UVデコーダ変換ブロックからネットワーク・メッセージを受信する第1のネットワーク・インタフェースであって、前記メッセージを受信するためにイーサネット(登録商標)・プロトコル又はインターネット・プロトコルのうちの1つ以上を用いる、第1のネットワーク・インタフェースと、
前記UVエンコーダ変換ブロック用のネットワーク・メッセージを生成する第2のネットワーク・インタフェースであって、前記メッセージを送信するためにイーサネット(登
録商標)・プロトコル又はインターネット・プロトコルのうちの1つ以上を用いる、第2のネットワーク・インタフェースと、をさらに備える、項目19に記載のシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16