特許第6181314号(P6181314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181314強誘電体メモリセルを形成する方法および関連する半導体デバイス構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181314
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】強誘電体メモリセルを形成する方法および関連する半導体デバイス構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/11507 20170101AFI20170807BHJP
【FI】
   H01L27/11507
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-541993(P2016-541993)
(86)(22)【出願日】2014年8月27日
(65)【公表番号】特表2016-534575(P2016-534575A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】US2014052815
(87)【国際公開番号】WO2015038332
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2016年5月20日
(31)【優先権主張番号】14/026,883
(32)【優先日】2013年9月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595168543
【氏名又は名称】マイクロン テクノロジー, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100106851
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 泰久
(72)【発明者】
【氏名】タオ,チエン
(72)【発明者】
【氏名】ロックレイン,マシュー エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】クック,ベス アール.
(72)【発明者】
【氏名】ラマスワミ,ドゥライ ヴィシャーク ニルマル
【審査官】 加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−256850(JP,A)
【文献】 特開2007−250631(JP,A)
【文献】 特開2010−118443(JP,A)
【文献】 特開2001−135798(JP,A)
【文献】 特開2015−015334(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0057737(US,A1)
【文献】 特開2011−029399(JP,A)
【文献】 U. Schroeder,Hafnium Oxide Based CMOS Compatible Ferroelectric Materials,ECS J. Solid State Sci. Technol.,2013年 1月28日,volume 2, issue 4,N69-N72
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/11507
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強誘電体メモリセルを形成する方法であって
極材料として、優位な(111)結晶配向において窒化チタンを形成することと、
前記窒化チタンの上に前記窒化チタンに接して非晶質のケイ酸ハフニウムを形成することと、
前記非晶質のケイ酸ハフニウムをアニールして、優位な(200)結晶配向において結晶化されたケイ酸ハフニウムを形成することと、
を含む、
方法。
【請求項2】
優位な(111)結晶配向において窒化チタンを形成することは、有機金属前駆物質を使用して前記優位な(111)結晶配向における前記窒化チタンを形成することを含む、
請求項に記載の方法。
【請求項3】
優位な(111)結晶配向において窒化チタンを形成することは、原子層堆積によって、前記優位な(111)結晶配向における前記窒化チタンを形成することを含む、
請求項に記載の方法。
【請求項4】
優位な(111)結晶配向において窒化チタンを形成することは、四塩化チタンおよびアンモニアを使用して、前記優位な(111)結晶配向における前記窒化チタンを形成することを含む、
請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記結晶化されたケイ酸ハフニウムは、斜方晶系の結晶構造を有する
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非晶質のケイ酸ハフニウムの上に別の電極材料を形成することをさらに含む、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記別の電極材料を形成することは、前記非晶質のケイ酸ハフニウムの非晶質状態を留めたままで形成することを含み、
前記アニールは、前記別の電極材料を形成した後に行う、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記非晶質のケイ酸ハフニウムをアニールすることは、前記ケイ酸ハフニウムを約800℃よりも高い温度にさらすことを含む、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ケイ酸ハフニウムは、約4.4モルパーセントのシリコンから約5.6モルパーセントのシリコンを含む、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記別の電極の上に金属シリサイド材料をさらに形成することを含む、
請求項6または7に記載の方法。
【請求項11】
基板の上に形成された電極であって、優位な(111)結晶配向における窒化チタンを含む電極と、
前記電極の上に形成された強誘電材料と、
前記強誘電材料の上の別の電極と、
を含み、
前記強誘電材料は、優位な(200)結晶配向におけるケイ酸ハフニウムであって前記窒化チタンに接して形成されたケイ酸ハフニウムを含み、
前記ケイ酸ハフニウムは、約4.4モルパーセントのシリコンから約5.6モルパーセントのシリコンを含む、
半導体デバイス構造。
【請求項12】
前記別の電極の上に形成された金属シリサイド材料をさらに含む、
請求項11に記載の半導体デバイス構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権主張]
この出願は、「METHODS OF FORMING A FERROELECTRIC MEMORY CELL AND RELATED SEMICONDUCTOR DEVICE STRUCTURES」のための、2013年9月13日に出願された米国特許出願シリアル番号14/026,883の出願日の利益を主張する。
【0002】
[技術分野]
開示の実施形態は、半導体デバイスの設計および製造の分野に関する。より具体的には、開示の実施形態は、電極材料上に強誘電(FE)材料を含む強誘電メモリセルを形成する方法に関し、かつ、関連する半導体デバイス構造に関する。
【背景技術】
【0003】
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)は、FEランダムアクセスメモリ(FERAM)といった不揮発性のデータストレージにおける使用のためのFE材料として研究されて来ている。しかし、PZTは厚さが少ないときにそのFE特性を失うために、PZTは従来の半導体加工技術と適合せずかつスケーラブルではなく、このために集積化に問題を持つ。
【発明の概要】
【0004】
ケイ酸ハフニウム(HfSiO)は高誘電率誘電性材料であり、PZTにとっての置換強誘電材料として研究されてきている。ケイ酸ハフニウムは多形性であり、単斜晶系の、正方晶系の、立方晶系の、または斜方晶系の結晶構造で形成する場合があり、結晶構造のそれぞれは多数の可能な、(111)または(200)結晶配向といった、結晶配向を有し得る。ケイ酸ハフニウムは、優位な(優勢な)形成結晶配向(dominant formed crystallographic orientation)である(111)結晶配向で従来は形成される。
【0005】
窒化チタンは多形性の材料であり、それぞれが(001)、(002)、(100)、(110)、(111)または(200)結晶配向といった多数の可能な結晶配向を有する多くの結晶構造を形成し得る。窒化チタンは、立方相において従来は形成され、しばしば優位な形成結晶配向である(200)結晶配向といった多数の結晶配向を有する。
【0006】
強誘電材料の望まれる結晶配向が達成されることが可能なようにケイ酸ハフニウムまたは他のFE材料を形成する改良方法を持つことが望ましいであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に従った半導体デバイス構造の部分断面図である。
図2】原子層堆積(ALD)処理によって形成されたTiNおよび従来のSFD(Sequential Flow Deposition)法によって形成されたTiNの、斜入射X線回折(GIXRD)によって測定された結晶配向を示す。
図3】ALD処理によって形成されたTiNの粗さを、SFD法によって形成されたTiNの粗さと比べて示す顕微鏡画像である。
図4】ALD処理によって形成されたTiNの粗さを、SFD法によって形成されたTiNの粗さと比べて示す顕微鏡画像である。
図5】GIXRDによって測定された、テストウエハおよび制御ウエハ用のケイ酸ハフニウムの結晶配向を示す。
図6】テストウエハおよび制御ウエハ用に100サイクルで実施されたポジティブアップネガティブダウン(Positive Up Negative Down (PUND))ヒステリシスである。
図7】テストウエハおよび制御ウエハ用のサイクル数の関数としての中央値2Pr(E=0での陽分極および陰分極の大きさの合計である残留分極)の図表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
強誘電体メモリセルを形成する方法が、強誘電材料および電極材料を含む関連する半導体デバイス構造と同様に、開示される。強誘電材料は望まれる結晶配向で結晶化され得る。強誘電材料の望まれる結晶配向は、望まれる結晶配向で電極材料を形成すること、電極材料の上にハフニウム系材料を形成すること、および強誘電材料を製造するためにハフニウム系材料を結晶化すること、によって達成され得る。したがって、電極材料は、強誘電材料の望まれる結晶配向の形成を誘導するためのテンプレートとして機能し得る。
【0009】
開示の実施形態の綿密な記載を提供するために、以下の記載は、材料の種類、材料の厚さおよび加工の条件といった具体的な詳細を提供する。しかしながら、これらの具体的な詳細を採用せずに開示の実施形態が実施され得ることを当業者は理解するであろう。実際には、開示の実施形態は、産業で採用される従来の製造技術と連携して実施され得る。加えて、本書類に提供される記載は半導体デバイス構造を形成するための完全な加工フローをなすものではなく、以下に記載される半導体デバイス構造のそれぞれは完全な半導体デバイスをなすものではない。開示の実施形態を理解するために必要なこれらの加工動作と構造のみが以下に詳細に記載される。完全な半導体デバイスをなすための追加の動作は従来の製造技術によって実行され得る。また、本出願に添付の任意の図面は例示する目的のみであり、従って一定の縮尺ではないことに留意するべきである。加えて、図面間で共通の要素は同じ番号指定を保持する場合がある。
【0010】
本書類で使われる場合、「一つの(a)」、「一つの(an)」、「その(the)」といった単数形は、そうでないことが文脈から明確にわかる場合を除いて、複数形も含むことが意図される。
【0011】
本書類で使われる場合、「第一の(first)」、「第二の(second)」、「上部(top)」、「底部(bottom)」、「上方(upper)」、「下方(lower)」、「上(over)」、「下(under)」などといった、関係を示す語は、開示と添付の図面を理解するうえでの明確さおよび便宜のために使用され、いかなる具体的な優先、配向、または順番を暗示することもこれらに依存することも、そうでないことが文脈から明確にわかる場合を除いて、ない。
【0012】
本書類で使用される場合、「基板(substrate)」は、半導体デバイス構造内のコンポーネントといったコンポーネントがその上に形成される、下地材料または構造物を意味し、かつこれらを含む。基板は、半導体基板、支持構造上の半導体基材、金属電極、または、1以上の材料、構造もしくは領域をその上に持つ半導体基板であり得る。基板は、従来のシリコン基板、または半導電性材料を含む他のバルク基板であり得る。本書類で使用される場合、「バルク基板(bulk substrate)」はシリコンウエハのみならず、シリコン・オン・サファイア(「SOS」)基板またはシリコン・オン・グラス(「SOG」)基板といったシリコン・オン・インシュレータ(「SOI」)基板、ベース半導体下地、その他の半導体、または、シリコン・ゲルマニウム(Si1−xGe、xは例えば、0.2と0.8の間のモル分率)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)もしくはリン化インジウム(InP)といった光電子工学的な材料のエピタキシャル層、その他をも、意味し、かつこれらを含む。さらに、以下の記載で「基板」が参照された場合、ベース半導体構造あるいは下地内またはこれら上の、材料、領域、接合を形成するために以前の加工段階が利用されている場合がある。
【0013】
本書類で使用される場合、「強誘電(ferroelectric)」という語は、電界の存在下で反転可能な自発電気分極(電気双極子)を有する材料を意味し、かつこれを含む。
【0014】
本書類で使用される場合、材料の結晶配向の参照における「優位な(dominant)」あるいは「優勢な(dominant)」という語は、指定された結晶配向を他の任意の結晶配向と比べてより多量に示す材料を意味し、かつこれを含む。非限定的な例によって、「優位な(111)結晶配向」は、(111)結晶配向を他の任意の結晶配向と比べてより多量に示す材料を意味する。
【0015】
本書類で使用される場合、「ケイ酸ハフニウム(hafnium silicate)」は、ハフニウム原子、ケイ素原子、酸素原子を含む材料を意味し、かつこれを含む。便宜上、材料の組成は、「HfSiO」と略される場合があり、これは、ハフニウム原子、ケイ素原子、酸素原子の化学量論を示すものではない。
【0016】
本書類で使用される場合、「ハフニウムアルミネート(hafnium aluminate)」という語は、ハフニウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子を含む材料を意味し、かつこれを含む。便宜上、材料の組成は「HfAlOx」と略される場合があり、これは、ハフニウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子の化学量論を示すものではない。
【0017】
本書類で使用される場合、「ジルコン酸ハフニウム(hafnium zirconate)」という語は、ハフニウム原子、ジルコニウム原子、および酸素原子を含む材料を意味し、かつこれを含む。便宜上、材料の組成は「HfZrOx」と略される場合があり、これは、ハフニウム原子、ジルコニウム原子、および酸素原子の化学量論を示すものではない。
【0018】
本書類で使用される場合、「ストロンチウムドープ酸化ハフニウム(strontium-doped hafnium oxide)」という語は、ハフニウム原子、ストロンチウム原子、および酸素原子含む材料を意味し、かつこれを含む。便宜上、材料の組成は「HfSrOx」と略される場合があり、これは、ハフニウム原子、ストロンチウム原子、および酸素原子の化学量論を示すものではない。
【0019】
本書類で使用される場合、「マグネシウムドープ酸化ハフニウム(magnesium-doped hafnium oxide)」という語は、ハフニウム原子、マグネシウム原子、および酸素原子含む材料を意味し、かつこれを含む。便宜上、材料の組成は「HfMgOx」と略される場合があり、これは、ハフニウム原子、マグネシウム原子、および酸素原子の化学量論を示すものではない。
【0020】
本書類で使用される場合、「ガドリニウムドープ酸化ハフニウム(gadolinium-doped hafnium oxide)」という語は、ハフニウム原子、ガドリニウム原子、および酸素原子含む材料を意味し、かつこれを含む。便宜上、材料の組成は「HfGdOx」と略される場合があり、これは、ハフニウム原子、ガドリニウム原子、および酸素原子の化学量論を示すものではない。
【0021】
本書類で使用される場合、「イットリウムドープ酸化ハフニウム(yttrium-doped hafnium oxide)」という語は、ハフニウム原子、イットリウム原子、および酸素原子含む材料を意味し、かつこれを含む。便宜上、材料の組成は「HfYOx」と略される場合があり、これは、ハフニウム原子、イットリウム原子、および酸素原子の化学量論を示すものではない。
【0022】
図1は、基板102と、基板102の上の電極104、電極104の上のFE材料106、FE材料106の上の別の電極108、および別の電極108の上の金属シリサイド材料110を有する半導体デバイス構造100を示す。電極104は、優位な(111)結晶配向といった望まれる優位な結晶配向を有する、窒化チタンといった結晶性材料から形成され得る。従って、電極材料が窒化チタンであると、電極材料は、窒化チタンの他の結晶配向、すなわち(001)、(002)、(100)、(110)、(200)、(311)、(331)、(420)、(422)または(511)結晶配向、よりも多量に窒化チタンの(111)結晶配向を含み得る。本書類の例は、電極104はTiNで形成されることが記載されるが、FE材料106の望まれる結晶配向を生み出すように構成される望まれる結晶配向を電極104の材料が有する限り、他の材料が使用されてもよい。
【0023】
半導体デバイス構造100はFERAMのメモリセルとして構成され得る。メモリセルは、例えば1トランジスタ/1キャパシタ(1T/1C)構成にて、配列され得る。しかし、メモリセルの他の構成も使用され得る。図1の半導体デバイス構造100を含む完全なFERAMを形成するための追加の動作が、本書類に詳細には記載されない従来の製造技術によって実行され得る。
【0024】
FE材料106は、ドーパントを含む、ハフニウム系材料といった金属酸化物材料であり得る。ハフニウム系材料はFE材料106を形成するために結晶化される。単純さと便宜のために、「ハフニウム系材料(hafnium-based material)」という語は本書類では結晶化される前の材料を指すために使用され、「FE材料(FE material)」という語は結晶化された後の材料を指すために使用される。FE材料106は、ドーパントが取り入れられる酸化ハフニウムであり得る。ドーパントは、シリコン、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ストロンチウム、ガドリニウム、イットリウム、他の希土類元素、またはこれらの組み合わせであり得る。強誘電材料の例は、ケイ酸ハフニウム(HfSiO)、ハフニウムアルミネート(HfAlO)、ジルコン酸ハフニウム(HfZrO)、ストロンチウムドープ酸化ハフニウム(HfSrO)、マグネシウムドープ酸化ハフニウム(HfMgO)、ガドリニウムドープ酸化ハフニウム(HfGdO)、イットリウムドープ酸化ハフニウム(HfYO)またはこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。酸化ハフニウムは強誘電特性を示さないが、結晶形態にありかつ上記のドーパントの1つを含む酸化ハフニウムは強誘電性である得る。結晶形態にありかつ正しい組成で上記のドーパントの1つを含む酸化ハフニウムは強誘電性である。FE材料106は0.1モルパーセントから約70モルパーセントのドーパントを含み得る。FE材料106がHfSiOなら、FE材料106は、約4.4モルパーセントから約5.6モルパーセントのシリコンといったような、約4モルパーセントから約6モルパーセントのシリコンを含む酸化ハフニウムであり得る。一実施形態において、HfSiO材料は、4.7モルパーセントのシリコンを含む。FE材料106がHfAlOなら、FE材料106は、約5モルパーセントから約7モルパーセントのアルミニウムを含む酸化ハフニウムであり得る。FE材料106がHfYOなら、FE材料106は、約2.5モルパーセントから約5.5モルパーセントのイットリウムを含む酸化ハフニウムであり得る。FE材料106がHfZrOなら、FE材料106は、約40モルパーセントから約70モルパーセントのジルコニウムを含む酸化ハフニウムであり得る。半導体デバイス構造100のFE材料106は結晶状態にあり得、かつ、望まれる結晶配向を有し得る。
【0025】
別の電極108は、結晶状態で窒化チタン(TiN)から形成され得る。別の電極108の材料は特定の結晶配向に限定されず、したがって、(001)、 (002)、 (100)、 (110)、 (111)、もしくは(200)結晶配向またはこれらの組み合わせにおいて結晶TiNから形成され得る。別の電極108は、電極104と同じまたは異なる優位な結晶配向を有する窒化チタンから形成され得る。本書類の例は別の電極108がTiNから形成されることを記載するが、他の従来の材料が使用されてもよい。
【0026】
金属シリサイド材料110は、タングステンシリサイド(WSi)または他の金属シリサイドであり得る。金属シリサイド材料110は、別の電極108およびFE材料106の上に配置され得る。金属シリサイド材料110は、半導体デバイス構造100の製造中の、別の電極108の酸化といった、劣化を防ぎ得る。
【0027】
一実施形態において、電極104は優勢な(111)結晶配向においてTiNから形成され、FE材料106は優勢な(200)結晶配向におけるケイ酸ハフニウムであり、別の電極材料108はTiNから形成され、金属シリサイド材料110はタングステンシリサイドである。
【0028】
従って、本開示は、基板の上で優位な(111)結晶配向において窒化チタンを含む電極を含むFEメモリセルを記載する。強誘電材料は電極の上にあり、別の電極材料は強誘電材料の上にある。
【0029】
半導体デバイス構造100を形成するために、望まれる優位な結晶配向を示す電極104は、電極材料および形成条件を適切に選択することによって基板102上に形成され得る。例えば、電極104は、基板102の上に(111)結晶配向窒化チタンを堆積することで形成され得る。一実施形態において、電極104の(111)結晶配向窒化チタンは、ALDによって、有機金属ALD前駆物質を使用して、窒化チタンを堆積することによって形成される。有機金属ALD前駆物質は、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(TDMAT)を含み得るが、これに限定されない。しかし、他の有機金属ALD前駆物質が使用されてもよい。TiNを形成するためのALD技術は本技術分野で知られ、従って本書類では詳細には記載しない。有機金属ALD前駆物質は塩素を含まないため、結果として生じるTiNは低い塩素含有量を有し、これがシールディングを低減し、その結果、電極104における均一な電界につながる。電極104は、約20オングストロームから約200オングストロームにわたる、約50オングストロームから約130オングストロームにわたる、または約40オングストロームから約70オングストロームにわたる厚さにおける、といったような、連続する材料として形成され得る。一実施形態において、電極104の厚さは約60オングストロームである。
【0030】
特定のALD前駆物質を使用してTiNから電極104を形成するALD方法が本書類に記載されるが、結果として生じる電極104が望まれる優位な結晶配向、すなわち優位な(111)結晶配向におけるTiN、を有するかぎり、電極104を形成する他の方法は利用可能である。例えば、望まれる優位な結晶配向を有する電極104は、TiAlNを使用して窒化チタンを堆積すること、または四塩化チタン(TiCl)前駆物質およびアンモニア(NH)を使用して窒化チタンを堆積することによって、代わりに形成され得る。これらの他の技術のための加工条件は、電極104のTiNが優位な(111)結晶配向において形成されるように選択され得る。
【0031】
FE材料106のハフニウム系材料は電極104の上に形成され得る。ハフニウム系材料は、前記されたように、ドーパントを有する酸化ハフニウム材料を含み得る。ハフニウム系材料は、本書類には詳細には記載されない、スパッタリング、ALD、CVD、PECVD、またはMOCVDといった従来の技術によって形成され得る。金属酸化物材料は、形成された段階では(as formed)強誘電性ではなく、金属酸化物材料におけるドーパントのモル濃度が、強誘電特性を有する金属酸化物材料を提供するように適応され得る。金属酸化物材料におけるドーパントのモル濃度は、用いられる金属前駆物質、酸素前駆物質、およびドーパント前駆物質の相対的な比率を適切に選択することによって、および実施されるサイクルの数を変えることによって制御され得る。ハフニウム系材料は、その初期状態、形成された状態では、非晶質材料である得る。
【0032】
別の電極108の電極材料は、FE材料106のハフニウム系材料の上に形成され得る。別の電極108の電極材料は、本書類には詳細には記載されない従来技術によって形成され得る。別の電極108の電極材料がTiNである一実施形態では、TiNは、TiClおよびNHを用いた従来のSFD(Sequential Flow Deposition)法によって形成され得る。電極104と別の電極108の両方がTiNから形成される場合、別の電極108のTiNは、電極104と同じ結晶配向または電極104とは異なる結晶配向を有し得る。電極104、FE材料106のハフニウム系材料および別の電極108は、金属−絶縁体−金属(MIM)スタック112を形成し得る。別の電極108の形成の間、FE材料106のハフニウム系材料は非晶質状態に留まり得る。
【0033】
FE材料106および別の電極108のハフニウム系材料を形成した後、MIMスタック112は、ハフニウム系材料をその望まれる結晶配向へ結晶化するためのアニール処理に晒され得る。アニール条件は、ハフニウム系材料の組成と電極104および108の厚さとに基づいて決定され得る。ハフニウム系材料の結晶化温度は、ハフニウム系材料において存在するドーパントの量の関数であり得る。比較的高いドーパント濃度において、ハフニウム系材料の結晶化温度は、より少量のドーパントを有するハフニウム系材料の結晶化温度より高いことがあり得る。ハフニウム系材料の結晶化温度は、約800℃から約1000℃にわたり得る。望まれる優位な結晶配向を有する電極104を適切に形成することおよび、その後アニールを行うことによって、ハフニウム系材料は、その望まれる結晶配向へと結晶化し得る。例として、アニールに続いて電極104が(111)結晶配向TiNから形成され、FE材料106のハフニウム系材料が4.7モルパーセントのシリコンを有するケイ酸ハフニウムから形成されると、FE材料106は優位な(200)結晶配向を有する斜方晶系の結晶構造を有する。電極104の(111)結晶配向窒化チタンは、FE材料106として使用されるケイ酸ハフニウムの優位な(200)結晶配向を形成するためのテンプレートとして機能する平滑な表面を提供し得る。ケイ酸ハフニウム以外の材料がFE材料106のハフニウム系材料として使用される場合、アニール処理に続いて、FE材料106は斜方晶系の結晶構造を有し得る。しかし、結果として生じるFE材料106の優位な結晶配向は、使用されるハフニウム系材料によって、(200)結晶配向以外の結晶配向であり得る。
【0034】
本開示の半導体デバイス構造100を含むFERAMを形成するための追加の加工動作が、本書類には詳細には記載しない従来の製造技術によって実施され得る。
【0035】
従って、本開示は、強誘電メモリセルを形成する方法をも含む。方法は、望まれる優位な結晶配向を示す電極材料を形成することを含む。ハフニウム系材料は、電極材料の上に形成され、ハフニウム系材料は、望まれる結晶配向を有する強誘電材料の形成を誘導するために結晶化される。
【0036】
本開示は強誘電メモリセルを形成する別の方法を含む。方法は、優位な(111)結晶配向において窒化チタンを含む電極材料を形成することを含む。非晶質ケイ酸ハフニウム材料は電極材料の上に形成される。別の電極材料は非晶質ケイ酸ハフニウム材料の上に形成され、非晶質ケイ酸ハフニウム材料は優位な(200)結晶配向の形成を誘導するために結晶化される。
【0037】
使用および動作の間、本開示の半導体デバイス構造100は、改善されたセル性能を示し得る。望まれる優位な結晶配向を有する電極104上で望まれる結晶配向をFE材料106が有する半導体デバイス構造100は、向上したサイクリング、向上したデータ保持、より低い強誘電飽和保磁力(E)およびより低い電界飽和といった、本質的に(intrinsically)向上した強誘電性質を示した。
【0038】
いかなる理論にも拘束されることなく、望まれる優位な結晶配向を有する電極104を形成することによって、強誘電材料106のハフニウム系材料の望まれる結晶配向は形成され得ると思われる。望まれる結晶配向を有する強誘電材料106を形成することによって、強誘電材料106の双極子メカニズムは、電極104および108に対して直角に配向され得る。例えば、TiNの優位な(111)結晶配向は、TiNの他のいかなる結晶配向よりも平滑であると思われる。TiNの優位な(111)結晶配向は、その上に、HfSiOといった強誘電材料のハフニウム系材料の(200)結晶配向が形成され得る、平滑テンプレートとして機能すると思われる。TiNの優位な(111)結晶配向から形成される電極104と、(200)結晶配向においてHfSiOから形成されるFE材料106とを有するFERAMにおいて、強誘電材料106の双極子は、電極104および108に対して直角に配向される。従って、FERAMセルは、そのc軸にそって容易に分極され、動作されることが可能である。
【0039】
以下の例は、本発明の実施形態をより詳細に説明するために役立つ。これらの例は、本開示の範囲に関して網羅的であるとも排他的であるとも解釈されるべきではない。
【0040】
<例>
例1
窒化チタンの150オングストロームの層が、TiClおよびNHを使用して従来のSFD(Sequential Flow Deposition)法によって形成された。窒化チタンの150オングストロームの別の層がALD前駆物質としてTDMATを使用してALD処理によって形成された。TiN材料の結晶構造および結晶配向は、斜入射X線回折(GIXRD)分析によって決定された。両方のTiN材料の結晶構造は多結晶立方晶だった。しかし、両方の材料は、異なる結晶配向を有した。図2に示されるように、ALD処理によって形成されたTiNは、より小さなピークを(200)および(220)結晶配向において持つ優位な(111)結晶配向を有したのに対し、SFD法によって形成されたTiNは、小規模なピークを(111)および(220)結晶配向において持つ優位な(200)結晶配向を有した。SFD法によって形成されたTiNにおいて、(200)結晶配向は、基板の表面に平行または略並行だったのに対し、ALD処理によって形成されたTiNにおいて、(111)結晶配向は、基板の表面に平行または略並行だった。
【0041】
2つの窒化チタン材料の粗さも異なった。材料の粗さは、従来の原子間力顕微鏡(AFM)技術によって測定された。図3および図4に示されるように、ALD処理によって形成されたTiNは、SFD法によって形成されたTiNより有意に平滑だった。ALD処理によって形成されたTiNは、4.0Aの二乗平均平方根(RMS)粗さを有したのに対し、SFD法によって形成されたTiNは11.1AのRMSを有した。
【0042】
例2
異なる技術によって形成されたTiN材料を含むテストウエハが用意された。制御ウエハは、ポリシリコン基板、基板の上の50オングストロームのTiN材料(底面電極)、底面電極のTiN材料の上の100オングストロームのHfSiO材料、HfSiO材料の上の100オングストロームのTiN材料(上面電極)、および上面電極のTiN材料の上の600オングストロームのWSiを含んでいた。底面電極のTiNは、優位な(200)結晶配向を有した。HfSiO材料は4.7モルパーセントのシリコンを含んだ。底面電極および上面電極のTiNは、TiClおよびNHを用いて従来のSFD(Sequential Flow Deposition)処理によって形成された。制御ウエハは、この書類および図面では、ウエハ5として参照される。
【0043】
サンプルウエハにおいて、底面電極のTiN材料は、ALD前駆物質としてTDMATを使用してALD処理によって60オングストロームまたは125オングストロームに形成された。底面電極の125オングストロームのTiN材料を有するサンプルウエハは、本書類および図面ではウエハ5として参照され、底面電極の60オングストロームのTiN材料は、本書類および図面ではウエハ18として参照される。底面電極のTiNは優位な(111)結晶配向を有していた。サンプルウエハは、ポリシリコン基板、底面電極のTiN材料の上の100オングストロームのHfSiO材料(4.7モルパーセントのシリコンを含む)、HfSiO材料の上の100オングストロームのTiN材料(上面電極)、および上面電極のTiN材料の上の600オングストロームのWSiを含んでいた。上面電極の100オングストロームのTiN材料は従来のSFD法によって形成された。
【0044】
上記のように材料のスタック112を含む制御ウエハおよびサンプルウエハは、1000℃にてアニールに晒された。ALD処理によって形成されたTiN材料の上のHfSiOx材料(ウエハ18)は、アニールに続いて、図5に示すように、斜方晶系の結晶構造と優位な(200)結晶配向を示した。対照的に、SFD法によって形成されたTiN材料の上のHfSiOx材料(ウエハ5)は、優位な(111)結晶配向を示した。
【0045】
制御ウエハおよびサンプルウエハの性能も決定された。データ保持特性は、100サイクルで、従来のポジティブアップネガティブダウン(Positive Up Negative Down (PUND))パルス技術によって評価された。図6に示されるように、ウエハ18は、制御ウエハ(ウエハ5)のE(2.8V)と比べて、1.6Vというより低い強誘電飽和保磁力(E)を有した。より低いEは、ウエハ18を含むデバイスを作動させるのに必要とされる電圧が、ウエハ5の作動に必要とされる電圧も低いであろうということと、ウエハ18を含むデバイスが、ウエハ5よりも低い電圧にて作動させられることが可能であるということを暗示する。従って、ウエハ18は、より低いEおよびより低い電界飽和を有し、はるかに堅実な強誘電性質/PUNDヒステリシス振る舞いを見せた。
【0046】
図7は、段階1が初期のポーリング(polling)状態、段階2が存続期間(lifetime)状態、段階3が劣化状態である、サイクル数の関数としての中央値2Prの図表である。図7に示されるように、ウエハ18はウエハ5(制御ウエハ)と比べて、延長されたサイクリングを劣化の前に示した。ウエハ5は、約1×10のサイクルで分極疲労を見せたのに対し、ウエハ18は、劣化が発生し始める前に、より大きな規模(3×10のサイクル)のほとんど1.5オーダーの向上を見せた。加えて、ウエハ18は、約9uC/平方cmの平均2Pr安定期を有するウエハ5と比べて、30パーセントのメモリウインドウ/センシングマージンの向上である、約12uC/平方cmの平均2Pr安定期を有した。段階1で測定されたデータに合致する線(図示せず)のより少ない傾きによって裏づけられるように、ウエハ18は初期サイクリングにおいて向上も見せた。ウエハ18の初期のサイクリング(すなわち段階1)は、ウエハ5の初期のサイクリングよりもより安定的であり、これは、ウエハ18のFE材料の双極子が電極の双極子に対して正しく配向されていること、および結果として生じるデバイスが迅速に書き込みを開始することが可能であることを暗示していた。対照的に、ウエハ5はそのFE材料の双極子がその電極の双極子と正しく整列するための追加の時間を必要とし、このことは、段階1における線の急峻な傾きによって示されている。従って、ウエハ18は、向上した初期のサイクリング、より大きな2Pr、および向上しかつ延長されたサイクリングを、劣化が起こる前に示した。
【0047】
これらの結果は、(優位な(111)結晶配向TiN上の斜方晶系のHfSiO結晶構造および優位な(200)結晶配向を有する)ウエハ18が、制御ウエハと比較して向上した2Pr値、向上したサイクリング、向上したE、及びより低い電界飽和といった、本質的に向上した強誘電性質を有したということを示す。
【0048】
開示には様々な修正および代替の形態の余地があり、特定の実施形態が、図面において例示目的で示され、かつ本書類に詳細に記載されてきた。しかし、開示は、開示された特定の形態に限定されることを意図していない。むしろ、開示は、以下に添付された請求の範囲で定義される開示の範囲内に入る全ての改変物、全ての等価物、および全ての代替物、そしてそれらの法律上の均等物を網羅するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7