【実施例】
【0046】
本発明を、具体的実施例としてより詳細に記載する。以下の実施例は例示のために示すにすぎず、いかなる様式でも本発明を限定する意図はない。当業者であれば、変更または改変して本質的に同じ結果を生じ得る、様々な重大でないパラメーターを容易に理解するであろう。
【0047】
実施例1
(2,8-ビス(5-フルオロ-7-(5'-ヘキシル-[2,2'-ビチオフェン]-5-イル)ベンゾ[c]-[1,2,5]チアジアゾール)-5,11-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)アントラ[2,3-b:6,7-b']ジチオフェンおよび2,8-ビス(5-フルオロ-7-(5'-ヘキシル-[2,2'-ビチオフェン]-5-イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール)-5,11-ビス-(トリイソプロピルシリルエチニル)アントラ[2,3-b:7,6-b']ジチオフェンの合成)
5-ブロモ-2,3-チオフェンジカルボキサルデヒド(1)の合成:臭素(6.0mL、116.3mmol)を100mLのCHCl
3中2,3-チオフェンジカルボキサルデヒド(5.1g、36.38mmol)の溶液に室温で滴加した。反応混合物を終夜撹拌し、次いで過剰の臭素をNa
2S
2O
3の飽和溶液で不活化した。有機層をCHCl
3で抽出し、Na
2SO
4で乾燥し、揮発性物質を減圧下で除去して、1を褐色固体で得た。分光学的に純粋な化合物を、固定相としてのシリカゲルおよびCH
2Cl
2:ヘキサンの4:1混合物を用いてのカラムクロマトグラフィにより単離した。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3): δ1 0.37 (s, 1H), 10.26 (s, 1H), 7.59 (s, 1H)。
【0048】
5-ブロモ-2,3-チオフェンジカルボキサルデヒド(1および2)の合成の代替手順:臭素(1.2mL、7.5mmol)を20mLの氷酢酸中の2,3-チオフェンジカルボキサルデヒド(1.0g、7.1mmol)の溶液に滴加した。反応混合物を70℃で終夜撹拌し、次いで過剰の臭素をNa
2S
2O
3の飽和溶液で不活化した。有機層をCH
2Cl
2で抽出し、Na
2SO
4で乾燥し、揮発性物質を減圧下で除去して、1および4,5-ジブロモ-2,3-チオフェンジカルボキサルデヒド2の混合物を褐色固体で得た(
1H NMR分光法により30:65)。分光学的に純粋な化合物を、固定相としてのシリカゲルおよびCH
2Cl
2:ヘキサンの4:1混合物を用いてのカラムクロマトグラフィにより単離した。
4,5-ジブロモ-2,3-チオフェンジカルボキサルデヒドの
1H NMRデータ(500MHz、CDCl
3): δ 9.81 (s, 1H), 7.36 (s, 1H)。
【0049】
2,8-ジブロモアントラジチオフェンキノン(3)の合成:1(2.0g、9.18mmol)および1,4-シクロヘキサンジオン(50mg、0.46mmol)の混合物に、10mLのエタノールを加え、その後KOHのエタノール溶液(15%、0.5mL)を反応混合物に加えた。得られた褐色スラリーを室温で3時間撹拌し、次いでろ過し、エタノールで洗浄して、3を淡褐色粉末で得た。
【0050】
アントラ[2,3-b:6,7-b']ジチオフェン-5,11-ジオンおよびアントラ[2,3-b:7,6-b']ジチオフェン-5,11-ジオン(4)の合成:200mLのEtOH中のチオフェン-2,3-ジカルボキサルデヒド(2.0g、17.2mmol)の溶液を室温で撹拌し、続いて1,4-シクロヘキサンジオン(0.96g、8.6mmol)を加えた。その後、15%KOHの溶液を反応混合物に加えて、褐色沈澱を生じた。得られた反応混合物をさらに3時間撹拌し、次いでろ過して、淡黄色粉末を定量的収率で得た。化合物4および6は、一般的な有機溶媒に難溶性であったため、特徴付けできなかった。HR-質量分析により生成物の生成を確認した。
【0051】
5,11-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)アントラクス[2,3-b:6,7-b']ジチオフェンおよび5,11-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)アントラクス[2,3-b:7,6-b']ジチオフェン(5)の合成:nBuLi(7.8mL、ヘキサン中1.6M溶液)をトリイソプロピシリルアセチレン(2.95mL、13.2mmol)に滴加し、次いで60℃で1時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却した後、化合物4を窒素気流下で加え、60℃で終夜加熱して暗褐色溶液を得た。その後、10%HCl溶液中の無水塩化スタンニル(3.0g、13.8mmol)を加え、再度60℃で2時間加熱して暗桃色溶液を得た。溶離剤としてヘキサンを用いてのシリカゲルフラッシュカラムを通してろ過した後、粗生成物を得た。分光学的に純粋な5を、35℃でのヘキサンからの再結晶後に暗赤色結晶として38%の収率で単離した。
【0052】
2,8-ビス(トリメチルスタンニル)-5,11-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-アントラ[2,3-b:6,7-b']ジチオフェンおよび2,8-ビス(トリメチルスタンニル)-5,11-ビス(トリイソプロピルシリル-エチニル)アントラ[2,3-b:7,6-b']ジチオフェン(6)の合成:15mLの無水THF中の化合物5(1.0g、1.54mmol)の冷(-78℃)溶液に、LDA(1.6mL、THF中2M溶液)を加え、その温度で1時間撹拌した。その後、塩化トリメチルスズ(3.4mL、THF中1M溶液)を反応混合物に-78℃で滴加し、次いで室温まで徐々に加温し、終夜撹拌した。水で反応停止した後、有機層をヘキサンで抽出し、Na
2SO
4で乾燥し、揮発性物質を除去して、95%純度の6を赤色粉末で得た。X線結晶解析に適した結晶を、-35℃でのヘキサンからの再結晶により得た。
図2AおよびBは化合物6の熱振動楕円体描画の2つの異なる図を提供する。
【0053】
2,8-ビス(5-フルオロ-7-(5'-ヘキシル-[2,2'-ビチオフェン]-5-イル)ベンゾ[c]-[1,2,5]チアジアゾール)-5,11-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)アントラ[2,3-b:6,7-b']ジチオフェンおよび2,8-ビス(5-フルオロ-7-(5'-ヘキシル-[2,2'-ビチオフェン]-5-イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール)-5,11-ビス-(トリイソプロピルシリルエチニル)アントラ[2,3-b:7,6-b']ジチオフェン(8)の合成:20mLマイクロ波ガラスチューブに7(196mg、0.41mmol)、6(200mg、0.2mmol)、Pd(PPh
3)
4(15mg、0.013mmol)および15mLの無水THFを加えた。ガラスチューブをテフロン(登録商標)キャップで密封し、室温で15分間撹拌した。その後、反応混合物をBiotageマイクロ波反応器内で100℃で2分間、125℃で2分間、140℃で10分間、150℃で12分間および160℃で15分間加熱した。反応混合物を室温まで冷却した後、粗生成物混合物を次いでジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムの水溶液(1g/100mL)に加え、室温で12時間撹拌した。その後、有機層を分離し、揮発性物質を除去して、粗生成物を暗褐色粉末で得た。化合物8を、トルエン、ジクロロメタンおよびメタノールで洗浄することにより精製した(278mg、70%)。NMR試験は、7が一般的な有機溶媒に不溶性(170℃のジクロロメタンにのみ溶解)であるため、完了していない。LR MALDI, C
80H
84F
2N
4S
8S
i2に対する計算値: 1,450 [M+]. C
80H
84F
2N
4S
8S
i2に対する分析計算値: C, 66.16; H, 5.83; N, 3.86; S, 17.66. 実測値: C, 63.29; H, 5.56; N, 3.61; S, 18.01. 化合物8は高度に結晶性で、おそらくは強力な分子間π-πスタッキングの存在により、反応中に針金様の構造を形成する。
【0054】
実施例2
(2,8-ビス(5-フルオロ-7-(5'-ヘキシル-[2,2'-ビチオフェン]-5-イル)ベンゾ[c]-[1,2,5]セレノ-ジアゾール)-5,11-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)アントラ[2,3-b:6,7-b']ジチオフェンおよび2,8-ビス(5-フルオロ-7-(5'-ヘキシル-[2,2'-ビチオフェン]-5-イル)ベンゾ[c][1,2,5]セレノ-ジアゾール)-5,11-ビス-(トリイソプロピルシリルエチニル)アントラ[2,3-b:7,6-b']ジチオフェン(10)の合成)
10の合成:20mLマイクロ波バイアルに9(216mg、0.41mmol)、6(200mg、0.2mmol)、Pd(PPh
3)
4(15mg、0.013mmol)および15mLの無水THFを加えた。ガラスチューブをテフロン(登録商標)キャップで密封し、室温で15分間撹拌した。その後、反応混合物をBiotageマイクロ波反応器内で100℃で2分間、125℃で2分間、140℃で10分間、150℃で10分間、160℃で20分間および170℃で30分間加熱した。反応混合物を室温まで冷却した後、粗生成物混合物を次いでジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムの水溶液(1g/100mL)に加え、室温で12時間撹拌した。その後、有機層を分離し、揮発性物質を除去して、粗生成物を暗褐色粉末で得た。粗製材料をCH
2Cl
2/ヘキサン(5:1、4×30mL)で洗浄して、純粋な10を暗褐色粉末で得た(210mg、54%)。NMR試験は、9が一般的な有機溶媒に不溶性であるため、完了していない。LR MALDI, C
80H
84F
2N
4S
6Se
2Si
2に対する計算値: 1546.1 [M+1]. C
80H
84F
2N
4S
6Se
2Si
2に対する分析計算値: C, 62.15; H, 5.48; N, 3.62; S, 12.44. 実測値: C, 62.04; H, 5.44; N, 3.62; S, 12.41. HRMS (MALDI-TOF), C
80H
84F
2N
4S
6Se
2Si
2に対する計算値: 1546.2870 [M+], 実測値1546.2850。
【0055】
実施例3
(化合物8および10に関するデータ)
結晶構造:化合物8は、それぞれ
図3および4に示す、走査電子顕微鏡(SEM)およびX線回折(XRD)パターンで見られる均一かつ直鎖構造により示唆されるとおり、結晶構造を有する。
【0056】
溶解性:化合物8および10の溶解性を試すために、様々な極性および非極性溶媒でスクリーニングした。溶解は起こらなかった。ジクロロメタン中で撹拌せずに160〜165℃まで化合物を加熱すると、化合物を含む凝集性フィルムを生成するために用いることができる、暗い透明溶液の生成を誘導することが判明した。
図4のXRDスペクトルは3つの状況を示す:(i)「溶液」は、フィルムを成型する前に化合物を可溶化することを意味し(165℃、撹拌なし);(ii)「撹拌」は、加熱なしでフィルムの成型前に溶液を撹拌することを意味し;かつ(iii)「懸濁液」は、化合物の顕著な溶解が少しもない溶媒添加を意味する。
図4における25°付近のより高い2θ値の差は、C
2-対称回転軸を有する分子と回転軸のない分子との間の仮定された切り替えを示差するものである。化合物8および10はC
2-回転軸を有する。
【0057】
ガラス基板上でのフィルム形成:
図5は、ガラス基板上で化合物8(QuIS-S)および10(QuIS-Se)から形成されたフィルムの原子間力顕微鏡(AFM)画像を示す。フィルムを165℃のジクロロベンゼン中、それぞれ5mg/mlの化合物8および10の溶液から成型した。
図6は、化合物QuIS-SおよびQuIS-SeフィルムのUV-Visスペクトルを提供する。
図6において、ガラスバックグラウンドを差し引き、吸光度を標準化した。溶液を生じるためのより高温のoジクロロベンゼン処理により、平滑で、比較的無欠陥のフィルムがいったん調製されれば、厚さを制御することができ、したがって電子特性を正確に測定することができる。
図7におけるQuIS-SおよびQuIS-SeフィルムのTaucプロットは、直接および間接バンドギャップの存在を示す。QuIS-Sについて、ギャップは間接では1.32eVであり、直接ギャップでは1.56eVであるが、QuIS-Seでは、ギャップは間接では1.26eV、直接ギャップでは1.50eVである。
図8は、両方のフィルムの紫外光電子分光(UPS)を提供する。上の2つのプロットは仕事関数スキャンからの測定値を示し、一方で下の2つのプロットは価電子帯スキャンの値を示す。
図9は、ITO、PEDOT:PSS、PC71BM、およびLiF/AlのTaucプロットおよび公知の値からのデータに基づく、両方のフィルムの提唱されるバンド図を提供する。
【0058】
二層電子デバイス:
図10は、QuIS-SフィルムおよびPC71BMフィルムによって生成した二層OPVを示す。表1は生成したOPVに関するデータを提供する。
【0059】
【表1】
【0060】
図11は、PC71BMフィルムとの二層構成におけるQuIS-Sフィルムを用いて得た最良の結果を示すI-V曲線を提供する。
【0061】
提唱されるバルクヘテロ接合(BHJ)電子デバイス:
図12は、本発明の文脈において調製し得る、PC71BMおよびQuIS-Sバルクヘテロ接合(BHJ)電子デバイスの例示を提供する。