(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181324
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】多機能室及び冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/00 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
F25D23/00 302D
F25D23/00 302L
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-557032(P2016-557032)
(86)(22)【出願日】2015年5月30日
(65)【公表番号】特表2017-508125(P2017-508125A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】CN2015080431
(87)【国際公開番号】WO2016082505
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2016年9月8日
(31)【優先権主張番号】201410702107.0
(32)【優先日】2014年11月28日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516270865
【氏名又は名称】チンダオ ハイアール ジョイント ストック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER JOINT STOCK CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン クェァシン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン ウェイイン
(72)【発明者】
【氏名】ディン エンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リー ミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン アイミン
(72)【発明者】
【氏名】ユー グゥォシン
【審査官】
石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平1−256783(JP,A)
【文献】
特開昭63−3162(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0300264(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層及び前記内層を閉鎖する扉を備える多機能室であって、
前記内層は、取り囲むように配置された複数の板体によって構成されており、
前記複数の板体のうち少なくとも1つの板体に形成された少なくとも1つの開口部と、
前記開口部に配置され、前記多機能室の湿度を調整する保湿モジュールと、
前記保湿モジュールに対して移動自在に配置された上蓋と、
前記複数の板体のうち少なくとも1つの板体に形成され、前記多機能室の水分を排出する少なくとも1つの換気口と、をさらに備え、
前記多機能室が高湿モードにある場合、前記上蓋は、前記保湿モジュールが露出されるように、前記保湿モジュールに対して移動し、
前記多機能室が乾燥モードにある場合、前記上蓋は、前記保湿モジュール全体を覆うことを特徴とする多機能室。
【請求項2】
前記保湿モジュールには、透過可能湿度が設定されており、前記多機能室の現在の湿度が前記透過可能湿度を超えた場合、前記保湿モジュールは、前記多機能室内の水分を流出させ、前記多機能室の現在の湿度が前記透過可能湿度以下である場合、前記保湿モジュールは、前記多機能室内の水分の流出を遮断することを特徴とする請求項1に記載の多機能室。
【請求項3】
前記多機能室が前記高湿モードにある場合、前記保湿モジュールは、前記現在の湿度が前記透過可能湿度に徐々に近づき、前記透過可能湿度と同じになるように、前記多機能室の前記現在の湿度を調整することを特徴とする請求項2に記載の多機能室。
【請求項4】
前記保湿モジュールは、前記開口部に配置され、前記開口部を密封することを特徴とする請求項1に記載の多機能室。
【請求項5】
前記保湿モジュールは、少なくとも2つの支持基体及び少なくとも1つの保湿膜を備えており、前記保湿膜は、前記支持基体の間に挟まれて配置され、前記支持基体に、少なくとも1つの通気穴が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多機能室。
【請求項6】
前記保湿モジュール、又は、前記複数の板体のうち前記保湿モジュールが設けられた板体に、第1スライド部が設けられており、
前記上蓋に、前記第1スライド部に対応する第2スライド部が設けられており、
前記上蓋は、前記第1スライド部及び前記第2スライド部を介して、前記保湿モジュールに対してスライドすることを特徴とする請求項1に記載の多機能室。
【請求項7】
前記第1スライド部及び前記第2スライド部のうち、一方はシュートであり、他方は凸型ブロックであることを特徴とする請求項6に記載の多機能室。
【請求項8】
前記保湿モジュール、又は、前記複数の板体のうち前記保湿モジュールが設けられた板体に、前記上蓋が前記保湿モジュールから外れないように、少なくとも1つのスライド止め部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の多機能室。
【請求項9】
前記多機能室は、送風モジュール及び蒸発器をさらに備えており、
前記少なくとも1つの換気口は、給気口であり、
前記蒸発器は、乾燥空気を生成するために使用され、
前記多機能室が乾燥モードにある場合、前記送風モジュールは、前記給気口を経由して、前記乾燥空気を前記多機能室内に送り込むことを特徴とする請求項1に記載の多機能室。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の多機能室を備えることを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、中国特許出願第201410702107.0(2014年11月28日出願、発明の名称「多機能室及び冷蔵庫」)に基づく優先権を主張しており、この内容は全て本明細書に参照として取り込まれる。
【0002】
本発明は、冷蔵庫に関し、特に、多機能室及び冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、冷蔵庫及び冷凍庫は、既に乾燥室や高湿度室を搭載可能であり、ユーザーの厳しい湿度管理が要求される食品、薬材などの貯蔵が便利になっている。一般的に、乾燥室は乾燥した環境だけ、高湿度室は高湿度の環境だけを提供するものにすぎず、ユーザーは必要に応じて各室の使用環境を円滑に調整することができない。したがって、空き室が出て、冷蔵庫空間の無駄遣いを引き起こしてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その1つの目的は、多機能室及び冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の1つの目的を実現するため、本発明は、内層及び前記内層を閉鎖する扉を備える多機能室であって、前記内層は、取り囲むように配置された複数の板体によって構成されており、前記複数の板体のうち少なくとも1つの板体に形成された少なくとも1つの開口部と、前記開口部に配置され、前記多機能室の湿度を調整する保湿モジュールと、前記保湿モジュールに対して移動自在に配置された上蓋と、前記複数の板体のうち少なくとも1つの板体に形成され、前記多機能室の水分を排出する少なくとも1つの換気口と、をさらに備える多機能室を提供する。
【0006】
ここで、前記多機能室が高湿モードにある場合、前記上蓋は、前記保湿モジュールが露出されるように、前記保湿モジュールに対して移動し、前記多機能室が乾燥モードにある場合、前記上蓋は、前記保湿モジュール全体を覆う。
【0007】
本発明の一実施形態において、前記保湿モジュールには、透過可能湿度が設定されており、前記多機能室の現在の湿度が前記透過可能湿度を超えた場合、前記保湿モジュールは、前記多機能室内の水分を流出させ、前記多機能室の現在の湿度が前記透過可能湿度以下である場合、前記保湿モジュールは、前記多機能室内の水分の流出を遮断する。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記多機能室が前記高湿モードにある場合、前記保湿モジュールは、前記現在の湿度が前記透過可能湿度に徐々に近づき、前記透過可能湿度と同じになるように、前記多機能室の前記現在の湿度を調整する。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記保湿モジュールは、前記開口部に配置され、前記開口部を密封する。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記保湿モジュールは、少なくとも2つの支持基体及び少なくとも1つの保湿膜を備え、前記保湿膜は、前記支持基体の間に挟まれて配置され、前記支持基体に、少なくとも1つの通気穴が形成されている。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記保湿モジュール、又は、前記複数の板体のうち前記保湿モジュールが設けられた板体に、第1スライド部が設けられており、前記上蓋に、前記第1スライド部に対応する第2スライド部が設けられており、前記上蓋は、前記第1スライド部及び前記第2スライド部を介して、前記保湿モジュールに対してスライドする。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記第1スライド部及び前記第2スライド部のうち、一方はシュートであり、他方は凸型ブロックである。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記保湿モジュール、又は、前記複数の板体のうち前記保湿モジュールが設けられた板体には、前記上蓋が前記保湿モジュールから外れないように、少なくとも1つのスライド止め部が設けられている。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記多機能室は、送風モジュール及び蒸発器をさらに備えており、前記少なくとも1つの換気口は、給気口であり、前記蒸発器は、乾燥空気を生成するために使用され、前記多機能室が乾燥モードにある場合、前記送風モジュールは、前記給気口を経由して、前記乾燥空気を前記多機能室内に送り込む。
【0015】
上記したその1つの目的を実現するため、本発明は、前記多機能室を備える冷蔵庫を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、従来の技術に比べて、下記の有益な効果がある。即ち、本発明によれば、同一室で、貯蔵対象物の望ましい湿度によって、高湿モードと乾燥モードとを切り替えることができる。これにより、室内の環境を円滑に調整し、室の無駄遣いを抑制するという目的を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る多機能室の立体構造を示す図面である。
【
図2】本発明の実施形態に係る多機能室の断面を示す図面である。
【
図3】本発明の実施形態に係る多機能室の一部を示す図面である。
【
図4】本発明の実施形態に係る多機能室の一部を示す図面である。
【
図5】本発明の実施形態に係る保湿モジュールでの上蓋の第1位置構造を示す図面である。
【
図6】本発明の実施形態に係る保湿モジュールでの上蓋の第2位置構造を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に示されている具体的な実施形態をもって、本発明について詳細に説明するが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。また、当業者は、これらの実施形態を検討することにより、本発明の構造、方法あるいは機能について修正や変更を加えることができるが、本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない限り、全て本発明の保護範囲に属する。
【0019】
図1ないし
図3に示すように、本発明の一実施形態に係る多機能室100は、内層300、及び、内層300を閉鎖する扉200を備える。内層300は、取り囲むように配置された複数の板体によって構成されている。当該板体は、例えば側壁301及び裏壁302を含む。多機能室100は、少なくとも1つの開口部311、保湿モジュール303、上蓋310及び少なくとも1つの換気口304をさらに備えている。少なくとも1つの開口部311は、複数の板体のうち少なくとも1つの板体に形成されている。保湿モジュール303は、開口部311に配置され、多機能室100の湿度調整に用いられる。上蓋310は、保湿モジュール303に対して移動自在に配置されている。少なくとも1つの換気口304は、複数の板体のうち少なくとも1つの板体に形成され、多機能室100の水分排出に用いられる。
【0020】
ここで、多機能室100が高湿モードにある場合、上蓋310は、保湿モジュール303が露出されるように、保湿モジュール303に対して移動する。多機能室100が乾燥モードにある場合、上蓋310は、保湿モジュール303全体を覆う。
【0021】
本実施形態において、多機能室100内の気体及び水分などの物質が扉200から滲み出ることを防止するため、扉200と内層300との接続部に、全てシールパッキン400を配置している。内層300の内には、引出し309を配置できる。引出し309は、ローラー307及びスライドレール308を介して、内層300内でスライドでき、貯蔵対象物の収納に使用される。引出し309は、重力の作用により沈みながら、シールパッキン400を押さえ、扉200と内層300との隙間を緊密に密封する。
【0022】
本実施形態において、保湿モジュール303は側壁301に配置されるが、これに限定されない。保湿モジュール303の位置及び数は、実際の事情に応じて決定できる。保湿モジュール303は、第1支持基体3031、第2支持基体3032及び保湿膜3033を備えている。第1支持基体3031及び第2支持基体3032は、上下に重ねて配置されている。保湿膜3033は、第1支持基体3031と第2支持基体3032との間に挟まれて配置されている。保湿膜3033と第1支持基体3031及び第2支持基体3032との固定方式は限定されず、例えば釘や接着剤で保湿膜3033を第1支持基体3031及び第2支持基体3032に固定することができる。
【0023】
本実施形態において、保湿膜3033は、比較的薄い膜であるから、割れやすいもので、側壁301に固定しにくいことから、開口部311に直接固定するのに適さない。したがって、本実施形態では、保湿膜3033の破裂を防止するため、第1支持基体3031及び第2支持基体3032で保湿膜3033を挟んで支持しており、かつ保湿膜3033を固定する目的を達成するため、第2支持基体3032を側壁301の開口部311に対して固定している。
【0024】
本実施形態において、第2支持基体3032は、バックルや貼付物などで側壁301に固定されている。多機能室100内の水分などの物質が第2支持基体3032と側壁301との固定部から滲み出ることを防止するため、第2支持基体3032は、側壁301に対して開口部311を密封するよう配置されている。例えば、第2支持基体3032と側壁301との間にシールパッキンが設けられている。
図3に示すように、第2支持基体3032の周辺縁部は、階段状となっており、側壁301の開口部311に形成される階段と嵌合することで、密封及び固定の効果がさらに高められている。
【0025】
本実施形態において、保湿モジュール303は、多機能室100内の水分などの物質を透過させることができる場合に限って、多機能室100内の湿度を調整できる。本実施形態では、第1支持基体3031及び第2支持基体3032には、それぞれ、少なくとも1つの通気穴3034が形成されている。通気穴3034は、第1支持基体3031及び第2支持基体3032を貫通している。第1支持基体3031及び第2支持基体3032のそれぞれに形成された通気穴3034の方向は、開口部311の方向と一致することができる。保湿膜3033自体が水分などの物質を透過させることができることから、多機能室100の水分などの物質は、第1支持基体3031及び第2支持基体3032に形成されている通気穴3034及び保湿膜3033を経由して、多機能室100外部の水分などの物質と交換される。通気穴3034の数及び位置は、具体的な情況に応じて決定できる。
【0026】
図3ないし
図5に示すように、保湿モジュール303の第1支持基体3031には第1スライド部3035が設けられ、上蓋310には第1スライド部3035に対応する第2スライド部3101が設けられている。上蓋310は、第1スライド部3035及び第2スライド部3101を介して、保湿モジュール303に対してスライドする。本実施形態において、第1スライド部3035はシュートであり、第2スライド部3101は凸型ブロックである。第2スライド部(凸型ブロック)3101は、第1スライド部(シュート)3035内でスライドできるが、これに限定されない。第1スライド部3035及び第2スライド部3101の具体的な構造は、実際の情況に応じて決定できる。他の実施形態において、
図4に示すように、第1スライド部3035’は、側壁301における保湿モジュール303に近接した部分に設けられている。上蓋310に設けられる第2スライド部3101’は、保湿モジュール303の両側から延出して側壁301に設けられた第1スライド部3035’と嵌合している。この場合、第1支持基体3031に第1スライド部3035が設けられていないため、第1支持基体3031の透過領域が大きくなり、保湿モジュール303の透過領域が拡大する。
【0027】
本実施形態において、上蓋310がスライドしながら保湿モジュール303から外れないように、
図5及び
図6に示すように、第1スライド部(シュート)3035の両端にスライド止め部3036が配置されている。スライド止め部3036の位置は、例えば、第1スライド部(シュート)3035の両端縁部でもよいが、これに限定されない。スライド止め部3036は、側壁301に配置されてもよい。スライド止め部3036により、第2スライド部(凸型ブロック)3101は、第1スライド部(シュート)3035に沿って往復スライドする時、第1スライド部(シュート)3035から外れない。すなわち、上蓋310は、スライドする方向に沿って保湿モジュール303から外れない。さらに、上蓋310が上下方向に沿って保湿モジュール303から外れないように、保湿モジュール303や側壁301に、ストップブロック3037を配置してもよい。上下方向とは、第1支持基体3031と第2支持基体3032との積層方向を指す。
図5に示すように、ストップブロック3037が保湿モジュール303に配置される場合を例とすると、ストップブロック3037は止め金具でもよい。止め金具の一端は保湿モジュール303につながり、止め金具の他端は上蓋310の上面まで延びている。これにより、ストップブロック3037は上蓋310が軸方向に沿って移動するのを抑制する。
【0028】
図2に示すように、本実施形態に係る多機能室100は、送風モジュール305をさらに備えている。送風モジュール305は、例えば送風機である。上記少なくとも1つの換気口304は、給気口3041及び排気口3042を含む。多機能室100が乾燥モードにある場合、給気口3041及び排気口3042の少なくとも一方は開状態となっており、送風モジュール305は、給気口3041及び/又は排気口3042を経由して、多機能室100内の水分を排出する。本実施形態において、給気口3041及び送風モジュール305は、風路3051を経由してつながっている。給気口3041及び排気口3042には、それぞれ、遮蔽扉306が配置されている。遮蔽扉306は、給気口3041及び排気口3042の開閉を制御するのに使用される。多機能室100が高湿モードにある場合、送風モジュール305は、給気口3041を経由して、冷気を多機能室100内に送り込む。冷気は、開状態となっている保湿モジュール303から送り出すことができる。
【0029】
本実施形態において、多機能室は、蒸発器(不図示)をさらに備えている。当該蒸発器は、空気中の水分を除去することにより、乾燥した空気を生成する。多機能室100が乾燥モードにある場合、送風モジュール305は、給気口3041を経由して、蒸発器で除湿された乾燥空気を多機能室100内に送る。一例として、給気口3041が開状態となりかつ排気口3042が閉状態となっている場合、送風モジュール305は、風路3051及び給気口3041を経由して、乾燥空気を多機能室100内に送り込むことにより、多機能室100内の湿度を下げる。その後、多機能室100内に一定量の乾燥空気が送り込まれた場合、多機能室100内の気体の圧力が高まり、その気体の圧力により、引出し309が若干移動し、隙間が形成される。多機能室100内の水分は、当該隙間から排出される。送風モジュール305が停止した後、引出し309が復位して給気口3041が閉鎖されるため、多機能室100は密閉空間となる。したがって、上記の例においては、排気口3042を配置することなく、給気口3041のみを配置してもよい。他の例として、給気口3041及び排気口3042が共に開状態となっている場合、送風モジュール305は、風路3051及び給気口3041を経由して、乾燥空気を多機能室100内に送る。乾燥空気は、多機能室100内の比較的高湿度の空気と共に、排気口3042から排出される。その後、一定時間経過後、多機能室100内の比較的高湿度の空気が全て排出されると、給気口3041及び排気口3042が閉鎖され、多機能室100は密閉空間となり、多機能室100は乾燥機能を果たす。
【0030】
本実施形態において、保湿膜3033には、透過可能湿度が設定されている。透過可能湿度は、保湿膜3033によって異なるものである。透過可能湿度は、多機能室100内の貯蔵対象物の最適な湿度によって決定することができる。例えば、多機能室100内の貯蔵対象物の最適な湿度が現在90%である場合、透過可能湿度が90%の保湿膜3033を選ぶことができる。多機能室100内の現在の湿度が保湿膜3033の透過可能湿度90%を超えた場合、保湿膜3033は、透湿機能を果たし、多機能室100内の水分を流出させることにより、現在の湿度を最適貯蔵湿度90%まで下げる。一方、多機能室100内の現在の湿度が保湿膜3033の透過可能湿度90%以下である場合、保湿膜3033は、保湿機能を果たし、多機能室100内の水分の流出を遮断することにより、現在の湿度を最適貯蔵湿度90%まで上げる。
【0031】
本実施形態において、上蓋310は、スライドしながら、保湿モジュール303の開閉状態を調整することができる。多機能室100が高湿モードにある場合、上蓋は全開状態となる。すなわち、このとき、上蓋310は、保湿モジュール303を全部露出させる。この場合、高湿モードの効果は最良である。多機能室100が乾燥モードにある場合、上蓋310は全閉状態となる。すなわち、このとき、上蓋310は、保湿モジュール303全体を覆う。この場合、乾燥モードの効果は最良である。
【0032】
次に、本実施形態に係る多機能室100の動作について説明する。
ユーザーが多機能室100内に野菜や果物を収納する場合、野菜や果物にとっては、高湿度環境が望ましいため、多機能室100は高湿モードに切り替えられる。すなわち、この場合、換気口304は閉鎖され、上蓋310は全開状態となる。野菜や果物の最適な貯蔵湿度Hが90%であると仮定すると、保湿膜3033は、透過可能湿度Hnが90%であるものを選ぶことになるが、保湿モジュール303は、透過可能湿度Hnの異なる複数の保湿膜3033を備えることができる。実際の利用では、貯蔵対象物によって、透過可能湿度Hnが適切な保湿膜3033を選ぶことができる。多機能室100の現在の湿度H1が99%である場合に、現在の湿度H1が保湿膜3033の透過可能湿度Hnを超えると、保湿膜3033は透湿機能を果たし、保湿モジュール303が多機能室100内の水分を流出させることにより、現在の湿度H1が透過可能湿度Hnに徐々に近づき、透過可能湿度Hnと同じになる。一方、多機能室100の現在の湿度H2が80%である場合、現在の湿度H2は、保湿膜3033の透過可能湿度Hn以下であるため、保湿膜3033は、保湿機能を果たし、保湿膜3033は、多機能室100内の水分の流出を遮断することにより、現在の湿度H2が透過可能湿度Hnに徐々に近づき、透過可能湿度Hnと同じになる。
【0033】
ユーザーが多機能室100内に薬材を収納する場合、薬材にとっては、乾燥環境が望ましいため、多機能室100は乾燥モードに切り替えられる。すなわち、この場合、上蓋310は、保湿モジュール303全体を覆うことから、給気口3041及び排気口3042は開状態となる。送風モジュール305は、風路3051及び給気口3041を経由して、乾燥空気を多機能室100内に送り込む。乾燥空気は、多機能室100内の比較的高湿度の空気と共に、排気口3042から排出される。その後、一定時間経過後、多機能室100内の比較的高湿度の空気が全部排出されると、給気口3041及び排気口3042は閉鎖され、多機能室100は密閉空間となり、多機能室100は乾燥機能を果たす。
【0034】
本実施形態において、多機能室100は、制御モジュールをさらに備えてもよい。当該制御モジュールは、多機能室100の高湿モードと乾燥モードとの切り替え、上蓋310のスライド、給気口3041及び排気口3042の開閉状態、送風モジュール305の動作を制御するのに使用される。
【0035】
本実施形態に係る多機能室100では、室内の貯蔵対象物の望ましい湿度によって、高湿モードと乾燥モードとを切り替えることができる。これにより、同一室で、異なる要求をもつ物品を貯蔵することができ、したがって、室内の環境を円滑に調整し、室の無駄遣いを抑制するという目的を達成できる。
【0036】
なお、本発明の更なる目的は、上記の多機能室100を少なくとも1つ備える冷蔵庫を提供することにある。
【0037】
本明細書では、本発明の原理の理解を促す目的で、上記した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明したが、各実施形態には、それぞれ1つの独立した技術案ずつ含まれていることではなく、当業者は、本明細書を一体とみなした上で、各実施形態の技術案を適切に組み合わせ、当業者が理解できる他の実施形態を導き出してもよい、と理解されるであろう。
【0038】
上記した一連の詳細な説明は、本発明の実現可能性のある実施形態を具体的に説明するために提供したものであり、本発明を限定する目的で提供したのではない。本発明に関する等価の実施形態や変更は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない限り、全て本発明の保護範囲に属する。
【符号の説明】
【0039】
100:多機能室
200:扉
300:内層
301:側壁
302:裏壁
303:保湿モジュール
3031:第1支持基体
3032:第2支持基体
3033:保湿膜
3034:通気穴
3035、3035’:第1スライド部
3036:スライド止め部
3037:ストップブロック
304:換気口
3041:給気口
3042:排気口
305:送風モジュール
3051:風路
306:遮蔽扉
307:ローラー
308:スライドレール
309:引出し
310:上蓋
3101、3101’:第2スライド部
311:開口部
400:シールパッキン
Hn:透過可能湿度
H1、H2:現在の湿度