【文献】
土屋好司,"界面活性剤(3)−ナノバブルとその医療分野への応用",色材協会誌,日本,社団法人色材協会,2010年 2月20日,Vol.83, No.2,pp.30-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水性液体へ前記添加物を添加した場合、前記バブルの表面である前記気体と前記水性液体との気液界面の一部に、前記添加物の分子および/または前記添加物由来の成分が存在している請求項1に記載のバブルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のバブルの製造方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて説明する。
【0022】
<第1実施形態>
まず、本発明のバブルの製造方法の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明のバブルの製造方法の第1実施形態を説明するためのフローチャートであり、
図2(a)〜(d)は、本発明のバブルの製造方法の第1実施形態を説明するための図(バブル製造用容器の断面を示す。)であり、
図3は、
図2(c)に示す工程において、水性液体と容器の内面(上面)とが激しく衝突した状態を説明するための図である。
なお、以下の説明では、
図2(a)〜(d)および
図3中の上側を「上」と言い、
図2(a)〜(d)および
図3中の下側を「下」と言う。
【0023】
本実施形態のバブルの製造方法は、
図1に示すように、工程[S1]〜工程[S5]の5つの工程を有する。工程[S1]は、水性液体を注入するためのバブル製造用容器(以下、単に「製造容器」という)を準備する工程である。工程[S2]は、この水性液体を製造容器の所定の高さまで注入する工程である。工程[S3]は、製造容器内にガス(気体)を充填させた状態で製造容器を密閉する工程である。工程[S4]は、水性液体が容器の内面に繰り返し衝突するように、所定の回転数で製造容器を振動させる工程である。工程[S5]は、製造容器を静置する工程である。
【0024】
以下、これらの工程について順次説明する。
[S1] 準備工程
まず、水性液体10を準備する。水性液体10としては、例えば、蒸留水、純粋、超純水、イオン交換水、RO水等の水が挙げられる。なお、水性液体10は、若干量のアルコール類を含有してもよい。
【0025】
次に、製造容器20(本実施形態のバブル製造用容器)を準備する。
製造容器20は、水性液体10を収容する容器本体21と、容器本体21を密閉するための蓋22とを有している。
容器本体21は、特に限定されないが、
図2(a)に示すような有底円筒状をなしていることが好ましい。
【0026】
本実施形態では、容器本体21として、容量が0.5〜20ml程度のバイアル瓶を用いる。バブルの製造方法では、容器本体21として、このような容量の小さなバイアル瓶を用いた場合であっても、容器本体21を蓋22で密閉した際に、容器本体21内の密閉空間で適切な圧力が水性液体10に付与されるので、均一な径(サイズ)のバブル1を安定的に得ることができる。
【0027】
特に、容量が0.5〜1.5ml程度のバイアル瓶であれば、1つの製造容器20内に、1回の超音波診断に必要となる0.3〜0.6ml程度のバブル1を含有する液(以下、単に「バブル含有液」という)を製造することができる。この場合、超音波診断の際に、1つの製造容器20内のバブル含有液を使い切ることができるため、製造されるバブル1(バブル含有液)の無駄をなくすことができる。
このように容量の小さいバイアル瓶(容量:0.5〜20ml程度)の寸法は、長手方向の長さXが、35〜60mm程度であり、外径Rが、10〜40mm程度である。
【0028】
蓋22は、
図2(b)〜(d)に示すように、容器本体21の瓶口に密着する円盤状のゴム栓(セプタム)221と、ゴム栓221を容器本体21の瓶口に固定する締付部222とを備えている。
ゴム栓221は、特に限定されないが、例えば、シリコン製のゴム栓を用いることができる。
【0029】
締付部222は、ゴム栓221の縁部を覆うように構成されている。また、締付部222の瓶口側の内周面および容器本体21の瓶口側の外周面には、互いに螺合可能に形成されるネジ溝が、それぞれ形成されており(図示せず)、これらを螺合させることにより、ゴム栓221が容器本体21の瓶口と密着した状態で固定される。また、締付部222を容器本体21の瓶口にしめることで、ゴム栓221が容器本体21の瓶口と密着した状態で、容器本体21と締付部222とを固定することもできる。
【0030】
[S2] 水性液体を製造容器に注入する工程
次に、水性液体10を容器本体21(製造容器20)の所定の高さまで注入する。本実施形態では、
図2(a)に示すように、Y[mm]まで注入する。したがって、
図2(a)に示すように、水性液体10が注入された状態の容器本体21は、その上部に空隙部11を有する。
【0031】
本実施形態では、水性液体10が注入された容器本体21(製造容器20)を水平に静置した状態において、容器本体21の高さ(長手方向の長さ)をX[mm]とし、容器本体21における水性液体10の液面の高さをY[mm]としたとき、0.2≦Y/X≦0.7の関係を満足するのが好ましい。上記関係を満足することにより、十分な大きさの空隙部11が存在するので、工程[S4]において、水性液体10を製造容器20の上下面および側面(特に、上下面)により勢いよく衝突させることができる。この衝突により、水性液体10中に衝撃波が生じ、水性液体10中にバブル1を容易に形成することができる。
【0032】
なお、前記関係は、0.3≦Y/X≦0.5の関係を満足するのがより好ましく、0.35≦Y/X≦0.4の関係を満足するのがさらに好ましい。これにより、工程[S4]において、水性液体10中にバブル1をより容易に形成することができる。
【0033】
[S3] 製造容器を密閉する工程
次に、容器本体21にガス(気体)3を充填させた状態で密閉する(
図2(b)参照)。具体的には、水性液体10が注入された容器本体21の空隙部11を、ガス3でパージした後、蓋22を容器本体21の開口部(瓶口)に締付ける。これにより、製造容器20内に水性液体10とガス3とが密閉される。
【0034】
より具体的には、水性液体10が注入された容器本体21をチャンバー内に移動させ、その後、チャンバー内を減圧する。次に、チャンバー内にガス3を送り込み、ガス3の雰囲気下で蓋22を容器本体21の開口部に締付けることにより、製造容器20内に水性液体10とガス3とを密閉することができる。
【0035】
ガス3としては、特に限定されないが、例えば、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、水素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、クリプトンのような不活性ガス、六フッ化硫黄、十フッ化二硫黄、トリフルオロメチル硫黄ペンタフルオリドのようなフッ化硫黄、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、エチレン、プロピレン、プロパジエン、ブテン、アセチレン、プロピン、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタンのような低分子量炭化水素類またはこれらのハロゲン化物、ジメチルエーテルのようなエーテル類、ケトン類、エステル類等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
これらの物質の中でも、特に、六フッ化硫黄、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタンが好ましい。これらのガス3で構成されるバブル1は、体内において安定性が高く、血管を通して患部(治療対象部位)または診断対象部位までより確実に搬送される。
【0037】
[S4] 製造容器を振動させる工程
次に、水性液体10が、製造容器20の上下面および側面(特に、上下面)に繰り返し衝突するように、製造容器20を振動させる。本実施形態では、
図2(c)に示すように、製造容器20が、略その長手方向(
図2(c)では、鉛直方向)に往復運動するように、製造容器20を振動させる。
【0038】
本工程では、工程[S3]で密閉した製造容器20(
図2(c)の下図)を上方向に振動させる(
図2(c)の真中の図)。これにより、水性液体10は、製造容器20の中間付近に移動する。更に製造容器20を上方向に振動させると、水性液体10が製造容器20の上部に移動して、蓋22の下面(ゴム栓221)に衝突する(
図2(c)の上図)。この際に、
図3に示すように、衝撃波が発生する。
【0039】
一方、製造容器20(
図2(c)の上図)を下方向に振動させる(
図2(c)の真中の図)。これにより、水性液体10は、製造容器20の中間付近に移動する。更に製造容器20を下方向に振動させると、水性液体10が製造容器20の下部に移動して、製造容器20の下面に衝突する(
図2(c)の下図)。この時も、
図3に示すように、衝撃波が発生する。
また、製造容器20を鉛直方向に振動させる際に、水性液体10は、製造容器20の内側の側面とも衝突する。この時も、
図3に示すように、衝撃波が発生する。
【0040】
このようにして、水性液体10とガス3とを混合しつつ、これらに振動(外力)を付与して、この振動により生じる衝撃波の圧力により、ガス3を水性液体10中に微分散させる。これにより、水性液体10中にガス3で構成される複数のバブル1を生成させることができる。
以上の操作を繰り返し行うことによって、水性液体10中に均一な径のバブル1を多量に安定的に生成させることができる。
【0041】
バブルの製造方法では、十分に微細で、均一な径のバブル1を得るために、製造容器20を5000rpm以上で振動させることが好ましい。これにより、水性液体10と製造容器20とが衝突する際に発生する衝撃波の大きさ(圧力)が十分に大きくなり、水性液体10中に生じるバブル1が微細化され、その径を均一にすることができる。また、製造容器20の回転数を上記範囲内で低めに設定した場合には、発生する衝撃波の大きさが小さくなるので、比較的径の大きなバブル1を生成することができる。また、回転数を高めに設定した場合には、発生する衝撃波の大きさが大きくなるので、比較的径の小さいバブル1を生成することができる。
【0042】
なお、本明細書において、製造容器20の「回転数」とは、単位時間当たりに、製造容器20がその全振動経路を移動する回数を意味する。例えば、製造容器20が5000rpmで振動するとは、製造容器20が、1分間に全振動経路を5000回移動(振動)することを意味する。
【0043】
また、製造容器20の回転数は、5500rpm以上であることがより好ましく、6000〜20000rpmであることがさらに好ましい。製造容器20の回転数を上記範囲内とすることにより、振動により生成したバブル1同士が、衝突により崩壊したり、合体して粗大化するのをより確実に防止することができる。これにより、バブル1の径を微細化しつつ、より均一な径のバブル1を多量に水性液体10中に生成させることができる。
【0044】
上記のような回転数で製造容器20を振動させることができる装置としては、例えば、ビーズ方式の高速細胞破砕システム(ホモジナイザー)を用いることができる。具体例としては、バーティンテクノロジーズ(bertin Technologies)社製のプレセリーズ(Precellys)等を用いることができる。
【0045】
また、水性液体10と製造容器20とが衝突する際に発生する衝撃波の圧力は、40kPa〜1GPaとなることが好ましい。水性液体10と製造容器20との衝突時に発生する衝撃波の圧力が上記範囲内となることにより、水性液体10中に生じるバブル1をより微細化し、その径をより均一にすることができる。特に、水性液体10と製造容器20との衝突時に発生する衝撃波の圧力が大きくなるほど、より微細なバブル1を生成することができる。
【0046】
製造容器20を振動させる際に、製造容器20の長手方向の振動幅は、0.7X〜1.5X[mm]程度であるのが好ましく、0.8X〜1X[mm]程度であるのがより好ましい。これにより、製造容器20の振動時に、水性液体10と製造容器20の下面および蓋22とを確実に衝突させることができ、水性液体10と製造容器20の下面および蓋22との衝突回数を十分に多くすることができる。また、このように十分な振動幅で製造容器20を振動させることにより、水性液体10が製造容器20内を移動する速度が大きくなる。そのため、水性液体10と製造容器20の下面および蓋22との衝突時に発生する衝撃波の大きさが十分に大きくなる。結果として、水性液体10中に微細なバブル1を多量に生成させることができる。
【0047】
また、製造容器20を鉛直方向に往復運動させる際に、製造容器20は、その短手方向(水平方向)にも振動させるのが好ましい。これにより、製造容器20の内側の側面にも水性液体10が衝突するので、水性液体10に衝撃波をより多く発生させることができる。製造容器20の短手方向への振動幅は、0.3X〜0.8X[mm]程度であるのが好ましく、0.5X〜0.7X[mm]程度であるのがより好ましい。これにより、上述した効果はより顕著となる。
【0048】
また、本工程では、水性液体10を製造容器20の上下面および側面に衝突させる際における製造容器20と水性液体10との瞬間相対速度が40km/h以上となるように製造容器20を振動させることが好ましい。また、かかる瞬間相対速度が50km/h以上となるように製造容器20を振動させることがより好ましい。上記条件を満足することにより、水性液体10と製造容器20とが衝突する際に生じる衝撃波の圧力を十分に大きくすることができる。その結果、水性液体10中に生じるバブル1をより微細化し、その径をより均一にすることができる。
【0049】
なお、製造容器20を上記条件で振動させる時間は、10〜120秒程度であるのが好ましく、30〜60秒程度であるのがより好ましい。製造容器20の振動時間を上記範囲内とすることにより、水性液体10が製造容器20と衝突する回数が十分に多くなるため、水性液体10中に、多量のバブル1を生成させることができる。なお、製造容器20の振動時間を上記範囲内で長く設定することにより、水性液体10中に生成されるバブル1の量をより多くすることができる。
【0050】
なお、水性液体10中に生成されるバブル1の径は、後述するような水性液体10へ添加する添加物の種類および/または量を変更することに加えて、製造容器20の回転数を前述した範囲内で変更することにより調整することができる。本実施形態では、水性液体10として、上述したような水を用いることにより、おおよそ10〜1000nmの径のバブル1を安定的に生成させることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、製造容器20が、ほぼその長手方向に往復運動するように、製造容器20を振動させているが、製造容器20を振動させる方法は、これに限定されない。例えば、製造容器20が、その短手方向および/または長手方向を主方向として回転運動するように、製造容器20を振動させてもよい。この場合であっても、製造容器20内の水性液体10は、製造容器20の上下面および側面に繰り返し衝突することにより、衝撃波が発生する。このような振動方法を用いても、水性液体10中に、均一な径のバブル1を多量に安定的に生成することができる。
【0052】
[S5] 製造容器を静置する工程
上記条件で製造容器20を振動させた後、製造容器20を静置する(
図2(d)参照)。これにより、製造容器20内に均一な径のバブル1を多量に安定的に製造することができる。
【0053】
なお、上述した工程[S2]と、工程[S3]と、工程[S4]とは、水性液体10の温度を一定に維持するようにして行われるのが好ましい。これにより、バブルの製造過程で水性液体10の特性(粘性等)が安定するため、水性液体10中に均一な径のバブル1を安定的に生成させることができる。水性液体10の温度を一定に維持するための方法としては、例えば、上述した各工程[S2]〜[S4]をグローブボックスや恒温槽内で行う方法が挙げられる。
【0054】
特に、本実施形態では、工程[S4]において、製造容器20を高速で振動させるため、水性液体10と製造容器20の内面との衝突により製造容器20が発熱し易い。しかし、恒温槽内で製造容器20を振動させることにより、水性液体10の温度が上昇するのを確実に防止することができる。その結果、水性液体10中に均一な径のバブル1をより安定的に生成させることができる。
【0055】
以上の工程[S1]〜工程[S5]を経て、10〜1000nm程度の径を有するバブル1が製造される。このようなバブル1では、その表面(ガス3と水性液体10との間の気液界面)に存在する水分子のクラスター構造に起因して、安定化が図られるものと考えられる。水分子のクラスター構造は、主として水分子で構成され、水分子の一部が電離することで生じた若干量の水素イオン(H
+)および水酸化物イオン(OH
−)を含んでいる。これらのイオン(特に、水酸化物イオン)の影響で、バブル1は、帯電しており、これにより、バブル1同士は、電気的な反発力により合体することが防止され、各バブル1は、安定化するものと考えられる。
【0056】
そこで、本発明者は、バブル1の表面に何らかの分子、イオン、ラジカル等を存在させることにより、バブル1の強度の向上が図れるものと考え、バブル1を製造する際に、水性液体10中に各種の添加物を添加する実験を重ねた。その結果、本発明者の予測の通り、バブル1の安定性(保存安定性)が高まる傾向にあったが、予期せぬことに、同一の製造条件(例えば、添加物の量、製造容器20の回転数等)であっても、添加物の種類に応じて、径(平均径)の異なるバブル1が生成することが明らかとなった。さらには、同一の添加物を用いても、その添加量に応じて、径(平均径)の異なるバブル1が生成することも明らかとなった。
【0057】
かかる知見に基づいて、本発明者は、本発明のバブルの製造方法を完成するに至った。すなわち、本発明のバブルの製造方法は、水性液体10へ添加する添加物の種類および/または量を変更することにより、生成するバブル1の径を調整することを特徴とする。
【0058】
水性液体10中へ添加する添加物は、タンパク質、塩類および糖類のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの添加物を用いることにより、バブル1のより確実な安定化を図ることができる。なお、生成するバブル1は、ガス3で構成され、その表面(気液界面)の一部に、添加物の分子および/または添加物由来の成分(例えば、イオン、ラジカル等)が吸着(存在)した状態となっていると考えられる。すなわち、バブル1の表面は、添加物の分子および/または添加物由来の成分により完全に覆われた状態となっていないと考えられる。
【0059】
タンパク質としては、例えば、アルブミン、グロブリン等が挙げられる。塩類としては、例えば、NaCl、KCl、Na
2HPO
4、KH
2PO
4、C
3H
5N
aO
3等が挙げられる。また、糖類(多糖類を含む)としては、例えば、グルコース、スクロース、デキストリン等が挙げられる。
【0060】
なお、塩類が添加された水性液体10としては、例えば、生理食塩水(0.9w/v%のNaCl水溶液)、PBS(phosphate buffered saline)を用いることができる。また、塩類および糖類が添加された水性液体10としては、例えば、1〜4号輸液(電解質溶液)を用いることができる。また、タンパク質が添加された水性液体10としては、例えば、アルブミン製剤、グロブリン製剤等を用いることができる。これらは、製剤として市販されているため、そのまま用いることで、バブル1の製造工程の簡略化および製造コストの低減を図ることができる。
【0061】
上述したようなバブルの製造方法によれば、水性液体10へ添加物を添加しなくても比較的安定なバブル1を製造することが可能であるため、水性液体10へ添加する添加物の量としては、0〜50w/v%程度であるのが好ましく、0.1〜40w/v%程度であるのがより好ましく、0.5〜30w/v%程度あるのがさらに好ましく、1〜20w/v%程度あるのが特に好ましい。水性液体10へ添加する添加物の量を、かかる範囲に設定することにより、添加物の種類にもよるが、高い安定性を有するとともに、より均一な径のバブル1を製造することができる。
【0062】
このようなバブルの製造方法によれば、大掛かりなシステムを必要とせず、バブル1を容易かつ大量に製造することができる。また、バブル1の製造に密閉容器(気密容器)を用いるため、水性液体10およびガス3を密閉容器内に充填した後、例えばγ線滅菌等による滅菌処理を施しておけば、バブル1を滅菌環境下で製造することができる。したがって、このようにして製造されたバブル1は、食品分野や医療分野等に好適に用いることができる。
【0063】
また、得られたバブル1は、水性液体10中で安定的に存在することができる。そのため、得られたバブル1を収納した密閉容器は、室温にて6〜24か月間もの長期間にわたって保存することができる。また、長期間保存後も、水性液体10中のバブル1の数が実質的に減少しないため、使用前に、再度、密閉容器を振動させたりする必要がない。よって、かかるバブル1を収納した密閉容器は、医療機関等にとっては取扱い易い。また、容量が小さい密閉容器を用いることができるので、密閉容器の単価を抑えることもできる。
【0064】
得られたバブル1(バブル含有液)は、患者の超音波診断に用いられる。
具体的には、まず、注射器の注射針を密閉容器のゴム栓に刺通する。次に、密閉容器内からバブル含有液を注射器内に吸引する。注射針をゴム栓から抜去した後、患者の血管(例えば静脈)に穿刺して、バブル含有液を血管内に注入する。これにより、バブル1は、血流により患部(診断対象部位)に搬送される。
【0065】
次いで、バブル1が診断対象部位に到達するタイミングで、バブル1が破裂しない程度の周波数および強度を有する診断用超音波をバブル1に照射(放射)する。その後、診断対象部位から反射される信号(反射エコー)を受信して、データ処理することにより、診断対象部位を画像化する。これにより、超音波診断を行うことができる。
なお、超音波の照射およびバブル1からの反射波を受信するデバイスとしては、公知の超音波探触子を用いることができる。
【0066】
また、バブル1は、超音波診断以外にも、様々な分野で用いることができる。例えば、バブル1は、水や食材に対する殺菌効果を有するとともに、食材の鮮度を維持する効果を有する。さらに、バブル1、水および油分(疎水性成分)を含む水性液体中では、水に対して多量の油分を混合することができる。この効果を利用して、食材中の水分と油分との分離を抑制して調理することも可能である。したがって、バブル1を含有するバブル含有液を食品分野に用いることも可能である。
【0067】
前述したように、バブル1は、10〜1000nm程度の径を有する。上記範囲の径を有するバブル1は、注射により血管内に注入した際に、血流により血管内を円滑に搬送される。特に、200〜300nm程度の径を有するバブル1(ナノバブル)は、血管内での安定性が高いため、ほぼ消滅することなく、目的の部位まで確実に搬送される。
【0068】
一般的に、気体で構成されるバブルは、気体と液体との界面において効率良く超音波を反射する性質を有している。そのため、上記範囲の径を有するバブル1は、ガス3と水性液体10との界面の面積が十分に大きく、超音波造影剤として有効に用いられる。特に、ナノバブルは、安定性が十分に高いため、超音波造影剤としての用途のみならず、上述したような様々な分野で積極的に用いることができる。
【0069】
ここで、癌細胞が存在する患部では、その周囲の正常血管から癌細胞へと、正常血管よりも細径の新生血管が伸びているが、ナノバブルであれば、新生血管内をも円滑に搬送され、癌細胞にまで到達させることができる。その後、バブル1を破裂させることができる周波数および強度を有する治療用超音波をバブル1に照射することにより、癌細胞を死滅させることができる。すなわち、かかるナノバブルは、癌治療に好適に用いることができる。また、一部のナノバブルを、血管壁を通過させて、癌細胞に取り込ませることもできる。
【0070】
また、600〜900nm程度の径を有するバブル1は、脳の血管内を円滑に搬送させるとともに、その位置を超音波画像において確実に特定することができる。すなわち、かかるバブル1は、脳治療(例えば、脳血管内治療等)に好適に用いることができる。
【0071】
なお、バブル1の径(平均径)は、例えば、レーザー回折・散乱法、ナノ粒子トラッキング解析法、電気抵抗法、AFM(Atomic Force Microscope)、レーザー顕微鏡による観測等により測定することができる。また、AFMを測定する装置としては、例えば、Malvern社製の共振式粒子計測システム(商品名:アルキメデス)を用いることができる。
【0072】
上記の説明では、工程[S1]〜工程[S5]を行うことにより、製造容器20内に均一な径のバブル1を多量に安定的に製造することができる。ただし、バブルの製造方法では、例えば、工程[S4]および工程[S5]を繰り返し行うようにしてもよい。これにより、より均一な径のバブル1をより安定的に生成させることができる。
【0073】
<第2実施形態>
次に、本発明のバブルの製造方法の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明のバブルの製造方法の第2実施形態を説明するためのフローチャートである。
図5(a)〜(d)は、本発明のバブルの製造方法の第2実施形態を説明するための図(バブル製造用容器の断面を示す。)である。
なお、以下の説明では、
図5(a)〜(d)中の上側を「上」と言い、
図5(a)〜(d)中の下側を「下」と言う。
【0074】
以下、第2実施形態のバブルの製造方法について、前記第1実施形態のバブルの製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態のバブルの製造方法は、
図4に示すように、前述した第1実施形態の工程[S3]において、製造容器20内にガス3を充填して、製造容器20内を加圧した状態で製造容器20を密閉するようにした以外は、前述した第1実施形態のバブルの製造方法と同様である。
【0075】
[S1] 準備工程
前述した第1実施形態の水性液体10および製造容器20を準備する。
[S2] 水性液体を製造容器に注入する工程
次に、前述した第1実施形態と同様にして、製造容器20内に水性液体10を注入する。
[S3] 製造容器を密閉する工程
次に、容器本体21にガス3を充填させて、製造容器20内を加圧した状態で密閉する(
図5(b)参照)。具体的には、水性液体10が注入された容器本体21の空隙部11を、ガス3でパージした後、蓋22を容器本体21の開口部(瓶口)に締付ける。これにより、製造容器20内に水性液体10とガス3とが密閉される。
【0076】
次に、ガス3が充填された注射器を準備する。そして、注射器の注射針をゴム栓221に刺通する。その後、注射器から製造容器20内にさらにガス3を加える。これにより、製造容器20内が加圧される。その後、ゴム栓221から注射針を抜去することにより、その内部にガス3が加圧された状態で密閉された製造容器20を得ることができる。
【0077】
[S4] 製造容器を振動させる工程
次に、前述した第1実施形態と同様にして、水性液体10が、製造容器20の上下面および側面に繰り返し衝突するように、製造容器20を振動させる。
[S5] 製造容器を静置する工程
次に、前述した第1実施形態と同様にして、製造容器20を静置する。
【0078】
本実施形態のバブルの製造方法では、工程[S3]において、製造容器20内をガス3により加圧した状態とすることにより、ガス3の一部が水性液体10に微分散または溶解した状態となる。このため、工程[S4]において、水性液体10中にバブル1が発生し易くなり、前述した第1実施形態のバブルの製造方法よりも、均一な径のバブル1を多量に製造することができる。また、前記第1実施形態よりも小さい径のバブル1を生成させることもできる。
【0079】
工程[S3]における製造容器20内の圧力(空隙部11に充填されたガス3の圧力)は、1.0atmより大きいのが好ましく、1.5〜10atmであるのがより好ましく、2〜5atmであるのがさらに好ましい。これにより、多量のガス3を水性液体10中に微分散または溶解させることができる。
かかる第2実施形態のバブルの製造方法によっても、前記第1実施形態のバブルの製造方法と同様の作用・効果を生じる。
【0080】
<第3実施形態>
次に、本発明のバブルの製造方法の第3実施形態について説明する。
図6は、本発明のバブルの製造方法の第3実施形態を説明するためのフローチャートである。
以下、第3実施形態のバブルの製造方法について、前記第1および第2実施形態のバブルの製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0081】
本実施形態のバブルの製造方法は、
図6に示すように、前述した第1実施形態の工程[S1]〜工程[S5]の後に、工程[S6]、工程[S7]を有している。工程[S6]は、製造容器内の圧力を変化させる工程である。工程[S7]は、製造容器を振動させる回転数を設定する工程である。
【0082】
本実施形態のバブルの製造方法は、工程[S7]において、回転数を変化させない場合には(
図6中、工程[S7]で「NO」を選択)、さらに、工程[S4’]および工程[S5’]を有している。一方、工程[S7]において、回転数を変化させる場合には(
図6中、工程[S7]で「YES」を選択)、さらに、工程[S8]および工程[S9]を有している。さらに、本実施形態のバブルの製造方法は、製造容器内の圧力を変化させる工程[S10]を有している。以下、工程[S6]以降の各工程について順次説明する。
【0083】
[S6] 製造容器内の圧力を変化させる工程
前述した第2実施形態の工程[S5]後の製造容器20内の圧力を変化させる。
(1)製造容器内の圧力を工程[S3]における圧力より高くする場合
製造容器20内を、前述した工程[S3]と同様にして加圧する。なお、注入するガス3は、工程[S3]で用いたガス3と同じでも、異なっていてもよいが、最終的に生成されるバブルの安定性の観点から、同一のガス3を用いるのが好ましい。
【0084】
このような製造容器20では、製造容器20内が工程[S3]における製造容器20内の圧力よりもさらに加圧さているため、水性液体10中に微分散または溶解するガス3の量が、工程[S3]での水性液体10に微分散または溶解したガス3の量よりも多くなる。そのため、後述する工程[S4’]または工程[S8]において製造容器20を再振動させる際に、バブル1がより生成し易くなり、その結果、バブル1の生成量が多くなる。
【0085】
また、工程[S4]で生成されるバブル1に加えられる圧力よりも大きい圧力が水性液体10に加えられる。これにより、生成過程のバブル1がより大きな圧力で圧縮されるため、バブル1の径が小さくなりやすい。そのため、工程[S4]において生成されるバブル1よりも、より小さい径のバブル1を生成させることができる。
【0086】
この場合、製造容器20内の圧力は、工程[S3]における圧力よりも、0.5atm以上高くするのが好ましく、1〜10atm高くするのがより好ましい。これにより、前述した工程[S4]において生成されるバブル1の径よりも小さい径のバブル1をより確実に生成させることができる。
【0087】
(2)製造容器内の圧力を1.0atmよりも大きくしつつ、工程[S3]における圧力より低くする場合
まず、空の注射器を準備する。次に、注射器の注射針でゴム栓221を刺通して、注射器に製造容器20内のガス3を吸引する。これにより、製造容器20内が減圧され、その内部の圧力を低くすることができる。その後、ゴム栓221から注射針を抜去する。
【0088】
このような製造容器20では、後述する工程[S4’]または工程[S8]において製造容器20を再振動させた際に、水性液体10に加えられる圧力は、工程[S4]で生成される水性液体10に加えられる圧力よりも小さい。これにより、生成過程のバブル1を圧縮する程度が小さくなり、バブル1の径が大きくなりやすい。そのため、工程[S4]において生成されるバブル1よりも、より大きい径のバブル1を生成させることができる。
この場合、製造容器20内の圧力は、1.0atmより大きく、工程[S3]における圧力よりも低い圧力までの範囲内で適宜調整される。
【0089】
[S7] 製造容器を振動させる回転数の設定工程
上記のようにして製造容器20内の圧力を変化させた後、製造容器20を再振動させる際の回転数を設定する。
容器を再振動させる際の回転数は、前述した工程[S4]と同様に、5000rpm以上に設定される。
【0090】
工程[S7]において、製造容器20を再振動させる際の回転数を工程[S4]における回転数から変えない場合、すなわち、
図6中の工程[S7]で「NO」を選択した場合、以下の工程[S4’]を行う。
一方、工程[S7]において、製造容器20を再振動させる際の回転数を工程[S4]における回転数から変える場合、すなわち、
図6中の工程[S7]で「YES」を選択した場合、以下の工程[S8]を行う。
【0091】
[S4’] 製造容器を再振動させる工程
上記のようにして、圧力を変化させた製造容器20を、前述した工程[S4]と同じ回転数で再振動させる。これにより、工程[S4]において生成されるバブル1とは異なる径のバブル1が水性液体10中に生成される。
【0092】
本工程では、工程[S4]と同じ回転数で製造容器20を再振動させるため、本実施形態で新たに生成するバブル1の径は、工程[S6]において変化させた圧力に応じて変化する。すなわち、圧力を変化させることによって、バブル1の径を調整することができるため、水性液体へ添加する添加物の種類および/または量を変更することと相俟って、所望の異なる径(平均径)を有するバブル1を再現性良く製造することができる。また、製造容器20を振動させる装置の設定を変更する必要がないため、より簡易的に異なる径を有するバブル1を製造することができる。
【0093】
[S5’]製造容器を静置する工程
上記条件で製造容器20を振動させた後、工程[S5]と同様にして製造容器20を静置する。これにより、製造容器20内に異なるサイズのバブル1を安定的に多量に製造することができる。
静置後、工程[S10]が行われる。
【0094】
[S8] 製造容器を再振動させる工程
圧力を変化させた製造容器20を、前述した工程[S4]とは異なる回転数で再振動させる。これにより、工程[S4]において生成されるバブル1とは異なる径のバブル1が水性液体10中に生成される。
【0095】
(1)製造容器を工程[S4]よりも高い回転数で再振動させる場合
製造容器20を振動させる回転数を、工程[S4]での回転数よりも高くする以外は、前述した工程[S4]と同様にして、製造容器20を再振動させる。
【0096】
この場合、製造容器20の回転数は、工程[S4]での回転数よりも高くする限り、特に限定されないが、6000〜20000rpmであるのが好ましく、7000〜20000rpmであるのがより好ましい。これにより、工程[S4]での回転数よりも大きい回転数で製造容器20を振動させるため、工程[S4]で生成されたバブル1よりも小さい径のバブル1を生成させることができる。また、製造容器20の回転数を上記範囲内とすることにより、工程[S4]および本工程で生成したバブル1同士が、衝突により崩壊したり、合体して粗大化するのをより確実に防止することができる。これにより、工程[S4]において生成されたバブル1と、工程[S4]において生成されたバブル1よりも小さい径のバブル1とを製造することができる。
【0097】
(2)製造容器を工程[S4]よりも低い回転数で再振動させる場合
製造容器20を振動させる回転数を、工程[S4]での回転数よりも低くする以外は、前述した工程[S4]と同様にして、製造容器20を再振動させる。
【0098】
この場合、製造容器20の回転数は、工程[S4]での回転数よりも低くする限り、特に限定されないが、5000〜9000rpmであるのが好ましく、5500〜7500rpmであるのがより好ましい。これにより、工程[S4]での回転数よりも低い回転数で製造容器20を振動させるため、工程[S4]で生成されたバブル1よりも大きい径のバブル1を生成させることができる。また、製造容器20の回転数を上記範囲内とすることにより、工程[S4]および本工程で生成したバブル1同士が、衝突により崩壊したり、合体して粗大化するのをより確実に防止することができる。これにより、工程[S4]において生成されたバブル1と、工程[S4]において生成されたバブル1よりも大きい径のバブル1とを製造することができる。
【0099】
本工程では、工程[S4]と異なる回転数で製造容器20を再振動させるため、本実施形態で新たに生成するバブル1の径は、製造容器20内の圧力の変化および再振動時の回転数によって変化する。このように、製造容器20内の圧力および再振動時の回転数のいずれも変化させることにより、前述した第2実施形態で得られる径とは大きく異なる径のバブル1を製造することができる。したがって、平均径が大きく異なるバブル1を製造する際には、本工程は有利である。
【0100】
[S9] 製造容器を静置する工程
工程[S8]で製造容器20を振動させた後、工程[S5]と同様にして製造容器20を静置する。これにより、製造容器20内に異なる径のバブル1を安定的に製造することができる。
静置後、工程[S10]が行われる。
【0101】
[S10] 製造容器内の圧力を再度変化させる工程
製造容器20内の圧力を変化させない場合、すなわち、
図6中の工程[S10]で「NO」を選択した場合、本実施形態のバブルの製造方法は終了する。これにより、平均径が10〜1000nmの範囲で、それぞれ異なる平均径を有する2種類のバブル1が製造される。
【0102】
一方、製造容器20内の圧力を変化させる場合、すなわち、
図6中の工程[S10]で「YES」を選択した場合、工程[S7]が行われる。その後、上述した工程[S4’]、[S5’]および[S10]、または工程[S8]、[S9]および[S10]が繰り返し行われる。これにより、平均径が10〜1000nmの範囲で、互いに異なる複数の平均径を有するバブル1を製造することができる。
【0103】
なお、工程[S10]において、繰り返し圧力を変化させる場合には、圧力を変化させる回数に応じた数の互いに異なる複数の平均径を有するバブル1を製造することができる。
【0104】
以上のようにして、水性液体10中に異なる径のバブル1を含有するバブル含有液が得られる。バブル1は、径の違いにより血管内の通過のし易さ、また、運搬される部位も変わってくる(例えば、径が小さいバブル1ほど、毛細血管の先端まで搬送される。)ため、上記のようにして得られたバブル含有液は、超音波診断および/または超音波治療の目的に合わせて多面的に用いることが可能である。
かかる第3実施形態のバブルの製造方法によっても、前記第1および第2実施形態のバブルの製造方法と同様の作用・効果を生じる。
【実施例】
【0105】
1.バブルの製造
(実施例1)
以下のようにして、バブルを製造した。
【0106】
[準備工程]
まず、蒸留水(水性液体)を12ml準備した。また、15mlのバイアル瓶(高さX:50mm、外径R:25mm)を準備した。なお、このバイアル瓶は、
図2に示す製造容器20と同様の形状をなしている。
[蒸留水を容器に注入する工程]
準備したバイアル瓶内に、蒸留水を注入した。なお、蒸留水の液面の高さYは、25mmであった。
【0107】
[容器を密閉する工程]
次に、蒸留水が注入されたバイアル瓶内の空隙をパーフルオロプロパン(気体)でパージした後、バイアル瓶の瓶口に
図2に示す蓋22と同様の形状の蓋を挿着した。次に、パーフルオロプロパンが充填された注射器を準備した。注射器の注射針で蓋のゴム栓を刺通して、注射器からバイアル瓶内にさらに2mlのパーフルオロプロパンを加えた。これにより、内部の圧力が2atmの密閉バイアル瓶を得た。
【0108】
[容器を振動させる工程]
次に、bertin Technologies社製のPrecellys(高速細胞破砕システム)を用いて、密閉バイアル瓶を回転数6500rpmで30秒間振動させた。その際、密閉バイアル瓶は、上下方向に往復運動し、蒸留水がバイアル瓶の上下面に繰り返し衝突することを確認した。
なお、密閉バイアル瓶を振動させる際に、密閉バイアル瓶の鉛直方向の振動幅を40mmであり、密閉バイアル瓶の水平方向の振動幅を20mmに設定することにより、バイアル瓶と蒸留水との瞬間相対速度が40km/h以上となるようにした。
【0109】
[容器を静置させる工程]
振動後、密閉バイアル瓶を静置させ、蒸留水中にパーフルオロプロパンで構成されたバブルを含有するバブル含有液を得た。
【0110】
(実施例2)
蒸留水を1w/v%のデキストリン水溶液に変更した以外は、前記実施例1と同様にしてバブルを生成させ、バブル含有液を製造した。
(実施例3)
蒸留水をPBSに変更した以外は、前記実施例1と同様にしてバブルを生成させ、バブル含有液を製造した。
【0111】
(実施例4)
蒸留水をソルデム3A輸液(テルモ株式会社製)に変更した以外は、前記実施例1と同様にしてバブルを生成させ、バブル含有液を製造した。
(実施例5)
蒸留水をソルデム1輸液(テルモ株式会社製)に変更した以外は、前記実施例1と同様にしてバブルを生成させ、バブル含有液を製造した。
【0112】
(実施例6)
蒸留水を生理食塩水(0.9w/v%のNaCl水溶液)に変更した以外は、前記実施例1と同様にしてバブルを生成させ、バブル含有液を製造した。
(実施例7)
蒸留水を0.25w/v%のアルブミン水溶液に変更した以外は、前記実施例1と同様にしてバブルを生成させ、バブル含有液を製造した。
【0113】
(実施例8)
蒸留水を20w/v%のグルコール水溶液に変更した以外は、前記実施例1と同様にしてバブルを生成させ、バブル含有液を製造した。
(実施例9)
蒸留水を5w/v%のグルコール水溶液に変更した以外は、前記実施例1と同様にしてバブルを生成させ、バブル含有液を製造した。
【0114】
(実施例10)
蒸留水を10w/v%のグルコール水溶液に変更した以外は、前記実施例1と同様にしてバブルを生成させ、バブル含有液を製造した。
(実施例11)
蒸留水を40w/v%のグルコール水溶液に変更した以外は、前記実施例1と同様にしてバブルを生成させ、バブル含有液を製造した。
(実施例12)
蒸留水を50w/v%のグルコール水溶液に変更した以外は、前記実施例1と同様にしてバブルを生成させ、バブル含有液を製造した。
【0115】
2.バブルの径分布測定
上記のようにして得られたバブル含有液をバブル測定装置(ナノ粒子解析システム nanosight)にセットして、バブル含有液(水性液体)中に含まれるバブルの径分布測定を行った。その結果を、
図7および
図8に示す。
【0116】
図7に示すように、水性液体への添加物の有無によって、生成するバブルの径が変化することが判る。また、水性液体へ添加する添加物の種類および量の違いによっても、生成するバブルの径が変化することが判る。
【0117】
また、
図8に示すように、同一の添加物(グルコース)を用いた場合において、水性液体に添加する添加物の量を変更することによっても、生成するバブルの径が変化することが判る。なお、図示は省略したが、異なる添加物を同一の量で水性液体に添加した場合も、すなわち、添加物の種類のみの変更によっても、生成するバブルの径が変化することを、本発明者は確認している。
【0118】
また、前記第1実施形態のように、容器を密閉する工程において、密閉バイアル瓶内を加圧状態としない場合、生成するバブルの径が大きくなる傾向を示した。さらに、前記第3実施形態と同様にしてバブルを製造しても、水性液体に添加する添加物の種類および/または量に応じて、生成するバブルの径を変更することができた。
【0119】
以上、本発明のバブルの製造方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、本発明のバブルの製造方法は、任意の目的の1以上の追加の工程を含んでいてもよい。
また、前記実施形態の工程[S4]では、水性液体10およびガス3に対して超音波を供給することにより、振動(外力)を付与するようにしてもよい。この場合、超音波の周波数は、20kHz〜10MHz程度(特に、200kHz〜1MHz程度)、その強度は、10mW/cm
2〜1000W/cm
2程度(特に、100mW/cm
2〜100W/cm
2程度)であるのが好ましい。