(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181356
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】生体電極用パッド
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0408 20060101AFI20170807BHJP
A61B 5/0492 20060101ALI20170807BHJP
A61B 5/0402 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
A61B5/04 300C
A61B5/04 300E
A61B5/04 310A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-146125(P2012-146125)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-8166(P2014-8166A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】300079612
【氏名又は名称】株式会社アイ・メデックス
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】市 田 信 七
(72)【発明者】
【氏名】市 田 誠
(72)【発明者】
【氏名】箕 輪 隆 城
(72)【発明者】
【氏名】長 濱 知 夫
【審査官】
永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0318018(US,A1)
【文献】
特開2000−271100(JP,A)
【文献】
特開2005−137456(JP,A)
【文献】
米国特許第07206630(US,B1)
【文献】
実開平07−015001(JP,U)
【文献】
特開2008−036210(JP,A)
【文献】
特開2010−012161(JP,A)
【文献】
特開平05−253199(JP,A)
【文献】
特開2004−329478(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/103186(WO,A1)
【文献】
特開平11−262476(JP,A)
【文献】
実開平02−068803(JP,U)
【文献】
特開平09−313454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/04 − 5/0472
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
何れかの面に粘着層が設けられたシート状の保持体と、
当該保持体の粘着層が設けられた面に設置された電極部分と、
当該電極部分を覆う、半流動性又は流動性を有する電解質層と、
前記保持体を貫通して前記電極部分と電気的に接続された端子部分とからなり、
前記保持体と電解質層との間には、布帛からなる電解質保持層が設けられており、
前記保持体は、広さ方向おける何れかの方向が他方よりも長く形成された形状であって、
前記電極部分は、前記保持体の粘着層が設けられた面に所定の間隔をおいて2個以上設置されており、
前記電解質層は、各電極部分毎に分離されると共に、当該電極部分毎に前記端子部分が設けられており、
前記保持体における電極部分同士の間には2本以上の脆弱部が形成されると共に、当該脆弱部同士の間には、前記2個以上の電極部分同士を連結する為の、保持体のみからなる連結領域が設けられており、
前記脆弱部は、保持体に於いて窪んだ部分に、短手方向に延びるように形成され、
前記脆弱部を切断することにより、電極部分同士の距離を変更することができる事を特徴とする、生体電極用パッド。
【請求項2】
前記保持体は、広さ方向における何れかの方向が他方よりも長く形成された形状であって、
前記保持体における電極部分同士の間には、短手方向に延伸する脆弱部が形成されている、請求項1に記載の生体電極用パッド。
【請求項3】
前記脆弱部は、保持体の短手方向の何れか一方の端部から、他方の端部の手前まで延伸するミシン目状の切れ込みとして形成されており、当該ミシン目状の切れ込みは、切れ込みが始まる側の端部と、延伸が止まる側の端部の組み合わせが、交互に並べられたミシン目状の切れ込み毎に異なっている請求項1又は2に記載の生体電極用パッド。
【請求項4】
前記保持体において、電極部分同士の間に存在する脆弱部同士の間の連結領域には粘着層が存在しない、請求項1〜3の何れか一項に記載の生体電極用パッド。
【請求項5】
前記脆弱部は、装着者の動きによって、当該保持体に延びる方向の力が作用した際に切断するように形成されている、請求項1〜4の何れか一項に記載の生体電極用パッド。
【請求項6】
人体に装着される生体電極用パッドと、当該生体電極用パッドに接続可能な端子が先端に設けられたリード線を具備する生体信号測定装置本体とからなる生体信号測定装置であって、
当該生体電極用パッドが、請求項1〜5の何れか一項に記載の生体電極用パッドである、生体信号測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体信号を取得する為、或いは各種治療を行う為に生体に設置される電極(以下、「生体電極」とする)用のパッドに関し、特に医療機器から延びるリード線を接続して使用される生体電極用パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
生体からの電気信号を測定装置に伝えたり、或いは刺激装置からの電気刺激を生体に伝えたりする為に、生体皮膚表面に密着状態で貼着固定される生体電極用パッドが使用されている。そしてかかる生体電極用パッドとしては、例えば心電図用途などでは、支持体に設けた電極と、当該電極と導通している金属製のスナップ(ホック)を具備し、このスナップを介して外部装置のコネクターと接続する方式のものが古くから利用されている。
【0003】
かかるスナップにより外部装置のコネクターと接続する電極としては、例えば特許文献1(実開平5−70552号公報)に開示されている。この文献では、導電性粘着剤、電子電導性の層、それを支持する非導電性のシート状物および外部への接続手段よりなり、互いに電気的に独立した複数の電極が、該シート状物を介して一体化されている生体医学用電極を開示している。
【0004】
また、特許文献2(実公平7−41442号公報)には、シート材よりなる保持体が、複数の特定位置に設けられた、人体の胴体部分に接触させて測定する生体電極を取り付けるための透孔を備え、前記生体電極の近傍の前記保持体に、該保持体分離用の切り込み部を設け、前記保持体に、前記生体電極を相互に接続するリード線を保持する保持具を備えた生体用電極保持体が開示されている。そしてこの文献の
図3(C)には、「スポンジ等発泡剤に導電性のゲルを含んだ人体との接合部12とカーボン繊維導電ゴム、銀メッキ、銀蒸着したフィルム等の柔軟性のある導電材料から成る電極11と人体と電極部を固定する電極11の周囲に設けられる粘着剤13と電極を固定するシート14及び電極コネクタ7と接続するスナップ部10からなる」生体用電極6の断面図が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−70552号公報
【特許文献2】実公平7−41442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したスナップにより外部装置のコネクターと接続する電極においては、当然のことながら、外部装置のコネクターと接続する為の金属製のスナップ(電極コネクター)を備えなければならない。
【0007】
かかるスナップ(電極コネクター)は、通常は金属製であることから、導電性粘着剤(導電性のゲル)との密着性の向上を図ることが困難であり、また非導電性のシート状物(保持体)と導電性粘着剤(導電性のゲル)との一体性を向上させる点については、未だ改善の余地を有するものとなっていた。そして導電性粘着剤や導電性のゲルと、保持体および/または電極部との一体性が十分でない場合には、これを着用した使用者の動き等によりノイズが発生したり、隙間に汗などが入り込んでしまうことも考えられ、その結果、正確な信号の取得が困難になってしまうことも考えられた。
そこで本発明は、生体に接触する導電性粘着剤や導電性のゲルと、保持体および/または電極部との密着性を向上させた生体電極用パッドを提供する事を第一の課題とする。
【0008】
また生体に対して2つの電極を設置する際、多くの場合は一定の間隔で2つの電極を設置する事になるが、外傷がある場合や、どの部分における信号を取得するか、更には装着者の体格などによっては、当該2つの電極同士の間隔を任意に調整する事が望まれることも考えられる。
そこで本発明では、常には2つの電極同士の間隔を一定にしておきながら、必要に応じて、当該電極同士の間隔を広げることのできるようにした生体電極用パッドを提供する事を第二の課題とする。
【0009】
また、上記の様に2つの電極同士の間隔を任意に調整できるように形成する場合、仮に2つの電極同士を切り離すように構成したとすると、何れかの電極が身体から剥がれてしまった場合には、これを探し出すのは相当に困難になってしまう。
そこで本発明は、2つの電極同士を繋げておく事ができるようにし、更に2つの電極同士の間隔を任意に調整できるようにした生体電極用パッドを提供する事を第三の課題とする。
【0010】
そして電極を保持する保持体としては伸縮自在な素材も使用されてはいるものの、装着者毎に皮膚の伸縮率は異なるのが通例であるから、装着時に於いて保持体とこれを貼付した皮膚との間で伸び具合のギャップが生じてしまう。その結果、当該電極の保持体は装着者の動きについていくことはできず、剥がれてしまう等の問題が生じる。この問題は、特に保持体が長尺に形成されている場合、長尺方向に於いて顕著になってしまう。
そこで本発明では、保持体を装着者の体の動きに追従する事ができるように構成し、剥がれにくくする事を第四の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の少なくとも何れかを解決するべく、本発明では 何れかの面に粘着層が設けられたシート状の保持体と、当該保持体の粘着層が設けられた面に設置された電極部分と、当該電極部分を覆う、半流動性又は流動性を有する電解質層と、前記保持体を貫通して前記電極部分と電気的に接続された端子部分とからなり、前記保持体と電解質層との間には、布帛からなる電解質保持層が設けられている生体電極用パッドを提供する。
【0012】
上記保持体は、十分な柔軟性と一定の保形性を備え、且つ簡易に切断しない程度の引っ張り強度を有する絶縁材料で形成することができる。より具体的には、例えばポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドイミドフィルム等の樹脂材料の他、合成材不織布等のような電気絶縁性を有する材料を使用することができる。
【0013】
また、この保持体の少なくとの何れかの面には、粘着剤又は接着剤からなる粘着層を形成する。かかる粘着層は、医療用用途で使用されている各種の粘着剤又は接着剤を使用する事ができ、且つ絶縁性を有するものを使用することができる。
【0014】
前記電極部分は導電性材料を用いて形成されており、基材の何れか一方に存在し、基材の他方の面には、この電極と電気的に接続された端子部分が存在する。この電極部分と端子部分とは、電極本体として1つの金属材料で形成する事ができる。例えば、金属材料を用いて、断面形状を「凸」字状、「L」字状に形成し、平面部分を電極部分として保持体の何れか一方の面に存在させ、当該平面部分から立ち上がった部分は保持体を貫通して他方の面に存在するようにし、これを端子部分とすることができる。即ち、電極部分と端子部分を一体にした電極本体として形成する事ができる。
【0015】
そしてこの電極部分は、半流動性又は流動性を有する電解質層によって覆われる。この電解質層は生体に接して、生体信号を電極に伝える等の機能を有するものであり、少なくとも導電性を有する材料で形成される。また当該電解質層は、生体との密着性を高めるため、ゲル状又はジェル状等の様に半流動性又は流動性を有することが望ましい。よって当該電解質層は、導電性が付与されたアクリル系樹脂、導電性が付与されたウレタン系樹脂等で構成でき、更に導電性が付与されたカラヤゴムで構成することもできる。
【0016】
そして本発明に係る生体電極用パッドでは、当該電解質層と保持体との間には、布帛からなる電解質保持層が設けられる。この電解質保持層を構成する布帛は、シート状に形成されており、一方の面が前記保持体の粘着層に貼付されており、他方の面でゲル状又はジェル状に形成された電解質層を保持する。
その結果、当該電解質層が保持体から剥離するおそれを無くす事ができ、両者の一体性を高めて、常に安定して生体信号を取得可能な生体電極用パッドとすることができる。
【0017】
上記生体電極用パッドにおいて、電解質保持層は、保持体の広さ方向に於いて、電解質層からはみ出さない大きさ及び形状に形成されていることが望ましい。当該電解質保持層は、それ自体、装着者の皮膚に対して粘着性や接着性を有しないことから、当該電解質保持層が電解質層を超えて広がってしまうと、その部分に於いて生体電極用パッドの皮膚に対する密着性が低下する。よって、生体電極用パッドの皮膚に対する密着性を高める為には、電解質保持層は、保持体の広さ方向に於いて、電解質層からはみ出さない大きさ及び形状に形成するのが望ましい。
【0018】
また前記電解質保持層は、前記シート状の保持体の粘着層に貼付されており、前記電極部分は、保持体に貼付された電解質保持層に重ねて設けられると共に、前記電解質保持層は、当該電極部分の外側まで広がる部分を有する大きさ及び形状に形成されている事が望ましい。即ち、保持体、電解質保持層、電極部分をこの順序で積層させる事が望ましい。この時、電極部分と端子部分を一体にして、前記の様に断面「凸」字状、「L」字状に形成した場合には、平面から立ち上がる部分は、保持体のみならず電解質保持層を貫通して、保持体における反対側の面に露出させ、当該露出した部分を端子部分とする。そして端子部分に対して、当該保持体を抜け出ない様に導電性のカバー等を設ける事により、当該電極本体の脱落を阻止する事ができる。
【0019】
そして上記の様に保持体、電解質保持層、電極部分をこの順序で積層させた場合には、当該電極部分を覆う電解質層は、電極部分を超えて広がる電解質保持層に密着する事ができ、これにより電極部分との密着性を高めることができる。
【0020】
そして前記本発明に係る生体電極用パッドでは、前記保持体が、広さ方向おける何れかの方向が他方よりも長く形成された形状として形成され、前記電極部分が保持体の粘着層が設けられた面に所定の間隔をおいて2個以上設置される場合、前記電解質層は各電極部分毎に分離し、前記保持体における電極部分同士の間には、短手方向に延伸する脆弱部を形成する事が望ましい。
【0021】
保持体が何れかの方向に長いシート状に形成されている場合、これを皮膚に装着すると、皮膚との間における伸縮率の違いから、装着者の体の動きに追従できず、剥がれてしまう等の問題が生じる。そこで、装着者の動きにより、当該保持体に延びる方向の力が作用した際には、脆弱部が切断する事により、剥がれることなく装着者の動きに追従できるようにしたものである。特に、短手方向に延伸する脆弱部とすることにより、より大きな応力が作用する事になる長手方向における力を、脆弱部の切断によって解放する事ができる。よって、当該脆弱部は、長さ方向における中心に形成される事が望ましい。係る脆弱部は、他の部分よりも切断しやすい部分として形成されるものであり、ミシン目によって形成する他、他の部分より肉薄に形成したり、溝を設ける等によって形成する事ができる。
【0022】
そして、当該脆弱部は、保持体における短手方向の長さ全体にわたって形成する事もできるが、保持体の短手方向の何れか一方の端部から、他方の端部の手前まで延伸する様に形成する事が望ましい。保持体が少なくとも一部に於いて繋がっている事により、切断した一部が剥がれて無くなってしまうといった問題を解消する事ができる。特に、当該脆弱部は、複数本のミシン目状の切れ込みとして形成し、これを交互に向きを変えて並べて形成する事が望ましい。この様に形成する事により、脆弱部が切断された場合であっても、保持体は短手方向の端部、即ち長手方向に沿う縁部分に於いて交互に繋がっている事から、電極部分同士の間隔を変化させながらも、両者を繋げておくことができる。これにより、皮膚から剥がれてしまった電極部分を無くしてしまうといった問題を極力回避する事ができる。なお、保持体における脆弱部同士の間に存在する領域には、粘着層が存在しない事が望ましい。
【0023】
そして、本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、上記本発明に係る生体電極用パッドを用いて構成した生体信号測定装置を提供する。即ち、人体に装着される生体電極用パッドと、当該生体電極用パッドに接続可能な端子が先端に設けられたリード線を具備する生体信号測定装置本体とからなる生体信号測定装置であって、当該生体電極用パッドが、上記した本発明に係る生体電極用パッドである、生体信号測定装置である。
【0024】
かかる生体信号測定装置に於いては、前記の生体電極用パッドを使用している事から、当該生体電極用パッドに基づいた効果を享受する事ができ、少なくともリード線を生体電極用パッドに接続して生体信号を取得する生体信号測定装置において、パッドにおける保持体と電解質層との一体性を高め、安定して生体信号を取得することができる。
【発明の効果】
【0025】
上記本発明に係る生体電極用パッドによれば、電解質保持層の存在により、生体に接触する電解質層と保持体との一体性、および電解質層と電極部との密着性を向上させた生体電極用パッドとすることができる。
【0026】
また前記のとおり保持体に脆弱部を設ける事により、常には2つの電極同士の間隔を一定にしておきながら、必要に応じて、当該電極同士の間隔を広げることのできるようにした生体電極用パッドを提供する事ができる。
【0027】
更に、保持体における長さ方向に沿う縁部分が繋がる様にして脆弱部を形成し、更に当該脆弱部の向きを交互にして2つ以上並べて形成する事により、2つの電極同士を繋げておく事ができるようにし、更に2つの電極同士の間隔を任意に調整できるようにした生体電極用パッドを提供する事ができる。また、脆弱部の切断により、保持体に作用する応力を逃すことができ、依って保持体を装着者の体の動きに追従する事ができるように構成し、剥がれにくくした生体電極用パッドを提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施の形態に係る生体電極用パッドの分解斜視図
【
図2】本実施の形態に係る生体電極用パッドの六面図であって、(A)正面図、(B)背面図、(C)左側面図、(D)D−D矢視断面図、(E)底面図、(F)F−F矢視断面図
【
図3】本実施の形態に係る生体電極用パッドの使用態様を示す正面図
【
図4】他の実施の形態に係る生体電極用パッドの使用態様を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本実施の形態に係る生体電極用パッドを、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施の形態に係る生体電極用パッドの分解斜視図であり、
図2は本実施の形態に係る生体電極用パッドの六面図であって、(A)正面図、(B)背面図、(C)左側面図、(D)D−D矢視断面図、(E)底面図、(F)F−F矢視断面図である。なお、この
図2に於いて右側面図は左側面図と対称に現れ、平面図は底面図と対称に現れる。
特にこの実施の液体に係る生体電極用パッドは、2つの電極本体30を備えた生体電極用パッドとして構成された例を示しており、例えば心電、筋電、脳波などを測定するための生体電極用パッドとして使用する事ができる。
【0030】
この生体電極用パッドは、輪郭形状が横向き「8」字形状に形成された保持体10を用いて形成されている。即ち、当該保持体10は横向き楕円形状であって、長さ方向の中央部分の上下方向が窪んだ形状に形成されている。この保持体10には、長尺方向に一定の間隔をおいて開口部が形成されており、また図示した状態における下面には生体に貼付する為の粘着剤層16が設けられている。また、この保持体10に於いて窪んだ部分には短手方向に延びる2本のミシン目からなる脆弱部12が形成されている。それぞれの脆弱部12は、何れかの端部から延伸するものの、他方の端部までには至らない長さに形成されている。そして当該脆弱部12は相互に逆向きに形成されている。そして保持体10における2本の脆弱部12同士に存在する領域部分は、2つの電極部分同士32,32を連結する為の連結領域14として機能する。なお、当該連結領域14においては、その下側(使用時に於いて生体に向かう面)に設けられる粘着剤層16は存在しない事が望ましい。
【0031】
上記のように構成された保持体10の下面には、電解質保持層20が接合される。この電解質保持層20は、レーヨンからなるメッシュ状シートを使用する事ができ、その他にも不織布や合成紙、或いは各種樹脂を用いて形成した開口又は凹凸を有するシート材、若しくは繊維質が露出しているシート材を用いることができる。この電解質保持層20も、前記保持体10に形成された開口部と正対する開口部が形成されている。
【0032】
そして上記保持体10には、電極本体30を重なる様にして設置する。本実施の形態にかかる電極本体30は円盤状に形成された電極部分32と、この電極部分32から立ち上がる端子部分34とで構成されており、端子部分34は、前記電解質保持層20に形成された開口部および保持体10に形成された開口部を貫通して、図面に示した状態に於いて、保持体10の上面に突出する。
【0033】
そして突出した電極本体30の端子部分34には、当該電極本体30が保持体10から脱落するのを阻止する為にスタットを結合する。これにより、保持体10と電解質保持層20とは、それぞれの開口部周りに於いて電極本体30とスタッド36により挟着され、一体化されることになる。
【0034】
上記の電解質保持層20は、電極本体30における電極部分32よりも大きく形成されており、電極部分32よりも突出した部分が存在する。よって、この電極部分32を覆うように電解質層40を設ける事により、当該電解質層40は電解質保持層20に保持され、確実に固定される事になる。本実施の形態では、特にゲル状であって導電性を有する樹脂材料を用いて形成する事ができる。
【0035】
以上の様に電解質保持層20を形成する事により、当該生体電極用パッドを装着した際、仮に電解質が生体からの汗などを吸収して膨張した場合であっても、当該電解質が剥がれてしまったり、或いは生体に付着している電解質層40から電極部分32が剥がれてしまう虞を減じる事ができる。
【0036】
よって、この電解質保持層20は、電極本体30における電極部分32よりも大きく形成される事が望ましい。また、この電解質保持層20は布帛を用いて形成されている事から、これが露出してしまうと着用時に於いて不快感が生じる恐れがあり、また保持体10における接着領域が減じられる事になる。よって、当該電解質保持層20は電解質層40よりも小さく形成される事が望ましい。
【0037】
図3は、この実施の形態に係る生体電極用パッドにおける電極部分32間の距離を変更する状態を示しており、(A)は電極部分同士の間の距離を一定にして使用する場合、(B)は電極部分同士の間の距離を広げて使用する場合をそれぞれ示している。
【0038】
即ち、上記
図1及び2に示したように、電極部分同士の間、特に上下に窪んだ部分に、保持体10の短手方向に延伸する2本の脆弱部12を形成し、各脆弱部12における先端側に於いては保持体10が連結されている様に形成する。即ち、それぞれの脆弱部12は、何れかの端部から延伸するものの、他方の端部までには至らない長さに形成している。この様に形成する事により、各脆弱部12を切り離した場合には、当該脆弱部12同士の間に存在する領域部分は、2つの電極部分が存在する領域同士を連結する為の連結領域14として機能する事ができる。即ち、各脆弱部12の外側に存在し、それぞれに電極部分32が設けられた領域は、両者間に存在する電極部分32が設けられていない連結領域14に於いて繋がり、何れか一方が剥がれて紛失しまうといった事態を回避する事ができる。
【0039】
また、この連結領域14の長さは一定である事から、脆弱部12を切断しないで使用する場合の電極部分同士の第一の距離の他、脆弱部12を切断して連結部分を伸ばした状態で使用する場合の電極部分同士の第二の距離の2通りの距離により、安定して生体信号を取得する事ができる。
【0040】
更に
図4は、保持体10に於いて窪んだ部分に、相互に向きが異なる脆弱部12を3本形成した例を示している。この様に形成する事により、脆弱部12を切断しない場合における電極部分同士の第一の距離、隣り合う2つの脆弱部12を切断した場合における電極部分32同士の第二の距離、更に全ての脆弱部12を切断した場合における電極部分32同士の第三の距離の、予め定まった3つの電極部分32の距離で生体信号を取得する事ができる。
s よって上記連結領域14は、必ずしも生体に付着している必要はない事から、当該連結領域14には粘着剤層16を設けないで形成する事もできる。
【0041】
なお、上記本実施の形態では、2つの電極部分32を有する実施態様について説明してきたが、当然のことながら3つ以上の電極部分32を有する生体電極用パッドであってもよく、更に保持体10の形状も、必ずしも横向き「8」字形状に限ることなく、様々な形状時形成する事ができる。即ち、生体電極用パッドの実施に際しては、本発明の要旨を逸脱しない範囲に於いて適宜変更する事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
上記本発明にかかる生体電極は、医療分野などにおいて利用することができる他、医療分野に限らず、ゲル状の層を生体に保持する為、或いは電極同士の距離を任意に変更する目的でも適宜応用する事ができる。
【符号の説明】
【0043】
10 保持体
12 脆弱部
14 連結領域
16 粘着剤層
20 電解質保持層
30 電極本体
32 電極部分
34 端子部分
36 スタッド
40 電解質層