(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181361
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ガソリン直接噴射、特に制御された点火を用いる内燃エンジンの燃料を制御する方法
(51)【国際特許分類】
F02D 19/08 20060101AFI20170807BHJP
F02D 41/02 20060101ALI20170807BHJP
F02D 41/34 20060101ALI20170807BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
F02D19/08 C
F02D41/02 301A
F02D41/02 301K
F02D41/34 C
F02D41/04 325C
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-205337(P2012-205337)
(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公開番号】特開2013-68219(P2013-68219A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2015年8月24日
(31)【優先権主張番号】1102884
(32)【優先日】2011年9月22日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】オビオル ジェローム
【審査官】
戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−323823(JP,A)
【文献】
特開2003−013726(JP,A)
【文献】
特表2003−522877(JP,A)
【文献】
特開2006−189050(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/006572(WO,A1)
【文献】
特表2003−532829(JP,A)
【文献】
特開2006−77740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 19/08
F02D 41/02
F02D 41/04
F02D 41/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御された点火および液体燃料の直接噴射を用いる内燃エンジンであって、燃焼室(14)を含む少なくとも1つの気筒(12)と、少なくとも1つの吸気手段(16)と、少なくとも1つの排気手段(22)と、前記燃焼室内で燃料/空気混合物を得るためのガソリン燃料型の液体燃料用の少なくとも1つの直接噴射手段(34)と、を備える内燃エンジンの燃焼を制御する方法において、
前記燃料/空気混合物の燃焼時に微粒子が放出される前記内燃エンジンの少なくとも1つの動作ゾーンを求めることと、
この求められた前記動作ゾーンにおける前記内燃エンジンの動作のために、車両用天然ガス型または液体石油ガス型の気体燃料を間接的に噴射することによって他の燃料/空気混合物を前記燃焼室に導入し、それにより、前記内燃エンジンの動作を単一燃料燃焼から多重燃料燃焼に変化させることと、を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの動作ゾーンを試験から判定することと、そのゾーンのパラメータをエンジン制御ユニット(42)に記憶することとを含む、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの動作ゾーンを微粒子センサ(50)によって行われた測定から判定することを含む、請求項1に記載の制御方法。
【請求項4】
前記微粒子センサ(50)を前記内燃エンジンの排気管(30)内に有する、請求項3に記載の制御方法。
【請求項5】
前記排気手段に連結された排気マニフォルド(28)に前記微粒子センサ(50)を配置することを含む、請求項3に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリン直接噴射型内燃エンジンの燃焼を制御する方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、点火プラグなどによって点火を制御することによって、燃焼室内に入れられた燃料/空気混合物の点火が行われるそのようなエンジンに適用可能である。
【0003】
本発明は、CAIエンジンと呼ばれる制御式自動点火燃焼エンジンにも適用可能である。CAIエンジンでは、燃料/空気混合物の点火が燃料/空気混合物の圧縮によって放出される熱によって生じる。
【背景技術】
【0004】
広く知られているように、ガソリン直接噴射型エンジンからの排気ガスは、多数の汚染物質、特に微粒子を含む。
【0005】
そのような微粒子は、環境に有害であり、人間の健康に問題を生じさせる。その結果、汚染に対処するためにそのような微粒子排出量は将来の規制において大幅に低減させられる。
【0006】
そのような微粒子排出量を制限するために、特許文献1により詳しく記載されているように、直接噴射型内燃エンジンの排気管上に配置された微粒子フィルタを使用し、排気ガス中の酸素濃度を高めるようにエンジンの燃焼室内の燃料/空気混合物の燃焼を制御することができる方法が提供されている。
【0007】
酸素の増加は、微粒子フィルタに封じ込められたほぼすべての微粒子が燃焼できることを意味する。そのフィルタの出口の所では、排気ガスに含まれる微粒子は微量である。
【0008】
この方法は、満足行くものであるが、少なからず欠点がある。
【0009】
実際、微粒子排出量を最小限に抑えることができるように、エンジンの排気管は、概して、互いに平行な長手方向溝を備えるセラミックブロックの形をした微粒子フィルタを有する。微粒子フィルタは、高価で構成が複雑である。また、排気中に酸素を含めるように燃焼パラメータを修正すると燃焼の過程が乱れ、そのエンジンの性能が悪影響を受ける。さらに、排気管に酸素を導入すると、排気ガスに含まれる未燃焼炭化水素(HC)の二次燃焼が起こり、その管が損傷する可能性がある。
【0010】
特定のフィルタの使用に対する代替解決策も公知である。これらの解決策は、多重噴射を用いるかあるいは燃料噴射圧力を上昇させることによって、供給源の所での微粒子の排出量を低減させることから成る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−303878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これらの解決策は、より強力な制御ソフトウェア(出力段階)が必要になり、燃料を噴射するのに使用される高圧ポンプの動作に伴うエンジン内の摩擦による損失が増大するというそれぞれの欠点を有する。
【0013】
本発明の目的は、排気管上に微粒子フィルタを配置する必要なしに、一方、エンジンの動作を修正することなく、微粒子の生成を大幅に制限することのできる方法によって上記の欠点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のために、本発明は、制御された点火および液体燃料の直接噴射を用いる内燃エンジンであって、燃焼室を含む少なくとも1つの気筒と、少なくとも1つの吸気手段と、少なくとも1つの排気手段と、燃焼室内で燃料/空気混合物を得るためのガソリン燃料型の液体燃料用の少なくとも1つの直接噴射手段とを備えるエンジンの燃焼を制御する方法において、
燃料/空気混合物の燃焼時に微粒子が放出されるエンジンの少なくとも1つの動作ゾーンを判定することと、
この判定されたゾーンにおけるエンジンの動作のために、車両用天然ガス型または液体石油ガス型の気体燃料を間接的に噴射することによって他の燃料/空気混合物を燃焼室に導入
し、それにより、前記内燃エンジンの動作を単一燃料燃焼から多重燃料燃焼に変化させることと、を含むことを特徴とする方法に関する。
【0018】
この方法は、少なくとも1つの動作ゾーンを試験から判定することと、そのゾーンのパラメータをエンジン制御ユニットに記憶することとから成ってもよい。
【0019】
この方法は、少なくとも1つの動作ゾーンを微粒子センサによって行われた測定から判定することから成ってもよい。
【0020】
この方法は、排気手段に連結された排気マニフォルドにセンサを配置することから成ってもよい。
【0021】
この方法は、センサをエンジンの排気管に配置することから成ってもよい。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、制限ではなく一例として与えられ添付の図面を参照する以下の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の燃焼段階を制御するための方法を使用するエンジンを示す図である。
【
図2】本発明の方法を使用した排気ガスの微粒子Pの濃度(ガソリンの百分率の関数としての微粒子の数(#)/立方センチメートル(cm3))の低下の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例として
図1に示されているエンジン10は、点火が制御されるガソリン直接噴射型の内燃エンジンである。
【0025】
このエンジンは、単一の燃料が使用される単一燃料モードと呼ばれる第1の燃焼モード、または異なる種類のいくつかの燃料を組み合わせるのに使用できる多重燃料モードと呼ばれる他の燃焼モードで動作してもよい。
【0026】
非制限的な例として、単一燃料動作に使用される燃料は液体燃料、この場合はガソリン型の液体燃料であるが、エタノールまたは生物燃料のような任意の他の種類の液体燃料が使用されてもよい。多重燃料動作の場合、NVG(車両用天然ガス)またはLPG(液化天然ガス)または生物ガスのような他の気体燃料がこの液体燃料と組み合わされる。
【0027】
以下の説明を簡略化するために、単一燃料動作用のガソリン型液体燃料および多重燃料動作用のガソリン型液体燃料、この場合は複燃料動作用のガソリン型液体燃料について述べる。このガソリン型液体燃料は気体状NVG型燃料と組み合わされる。
【0028】
図1に示されているエンジン10は、少なくとも1本の気筒12、この場合は4本の気筒を有し、気筒の内側ではピストン(不図示)が直線的に往復運動して変位する。したがって、このピストンおよびそれと向かい合う気筒ヘッドゾーン(不図示)は、燃料/空気混合物の燃焼が生じる燃焼室14を画定することができる。
【0029】
気筒12は、吸気配管20と組み合わされた少なくとも1つの吸気弁18を含む吸気手段16と、排気配管26を制御する少なくとも1つの排気弁24を含む、既燃ガスを排気する手段22と、を有している。
【0030】
排気配管26は、排気管30に連結された排気マニフォルド28に連結されている。
【0031】
明らかに、本発明の範囲から逸脱せずに、この排気管上に過給装置(不図示)を配置してもよい。
【0032】
有利なことに、この装置はタービンを含むターボチャージャであってよく、排気管30内を流れる排気ガスは、タービンを通過し、かつ外気を圧縮するとともにその加圧された空気(または過給気)を吸気配管20に導入するようにこのタービンに回転可能に連結された圧縮機を通過する。
【0033】
この気筒は、気筒12の燃焼室14に存在する燃料/空気混合物に点火することができる1つまたは2つ以上の火花を発生させることが可能な点火プラグのような制御式点火手段32も有する。
【0034】
この気筒は、直接供給手段と呼ばれる、エンジンに燃料を供給する第1の手段34も有している。この直接供給手段は基本的に、燃焼室の方を向き、燃料を燃焼室に直接導入するのに使用できる液体ガソリン型燃料噴射装置36を有している。
【0035】
この気筒は、間接供給手段と呼ばれる第2の燃料供給手段38も有する。第2の燃料供給手段38は、この気体燃料を吸気配管20内に噴射する気体状NVG型燃料噴射装置40を有する。
【0036】
エンジン10は、このエンジンの動作を制御することができるエンジン制御ユニット42と組み合わされている。
【0037】
特に、このエンジン制御ユニット42は、エンジン10内に構成された様々なセンサ、プローブ、および/または検出手段(水温、オイル温度、燃焼室内の圧力など)に直接接続されるかあるいは導体を介して間接的に接続されている。受け取られた信号が処理され、エンジン制御ユニット42は次いで、このエンジン10が適切に動作するように制御線を介してこのエンジン10の各手段を制御する。
【0038】
したがって、エンジン制御ユニット42は、特に制御線44を介してプラグを制御し、線46を介して直接供給手段の噴射装置36を制御し、線48を介して間接供給手段の噴射装置38を制御する。
【0039】
このエンジン制御ユニット42は、その動作に必要なパラメータを推定するのに使用することのできるマップまたはデータテーブルも含んでいる。
【0040】
このエンジン制御ユニット42は、微粒子の形成を助長するエンジンの動作ゾーンを記録するテーブルも含んでいる。これらのテーブルは基本的に、この種のエンジンに対して実施される一連の試験の結果として得られる。
【0041】
これらの試験では、これらのゾーンが、エンジンの低温動作および/または高エンジン負荷の下での動作のゾーンに対応することが示されている。
【0042】
低温動作の場合、この種の動作は、潤滑油および/または冷却剤のような、エンジン10の動作に使用される液体の温度が約30℃よりも低い動作に相当すると仮定される。
【0043】
高負荷動作に関しては、エンジン10は平均有効圧力(MEP)が10バールよりも高い状態で動作する。
【0044】
エンジン10のこれらの動作ゾーンでは、空気と燃料の混合物が不均質であることにより、特に非常にリッチなゾーンが混合物中にあるとき、すなわち燃料が空気と完全には混合されない場合に微粒子が形成される。
【0045】
したがって、低温動作時には、ガソリンは、適切に気化しない傾向があり、気筒12やピストンの壁に堆積する傾向がある。この液体ガソリンは、炎が通過するときに煤を形成する。
【0046】
高負荷動作の場合、噴射されるガソリンの量が多く、局所的に非常にリッチな燃料/空気混合物のゾーンが形成される可能性が高くなる。
【0047】
したがって、このエンジン10が上記で引用した2つのゾーンのうちの一方において動作するとき、エンジン制御ユニット42は微粒子の排出量を制限するように噴射パラメータを修正する。この目的のために、エンジンの動作は、単一燃料燃焼から多重燃料燃焼に変化する。
【0048】
エンジン制御ユニット42は、まず、ガソリンが燃焼室14内に直接噴射され、燃焼室14の内側に燃料/空気混合物が形成される、エンジンの従来の単一燃料動作を実施し、燃焼室14に入っている燃料/空気混合物がガソリン燃料部とNVG燃料部とを有するように燃料供給手段を制御する。
【0049】
各燃料の比率は、エンジン制御ユニット42に含まれるマップによって決定される。このマップを使用して、NVGに対するガソリンの比率を、超えてはならない目標微粒子排出量の関数として調整してもよい。一例として、この目標は公害防止規制値から導き出してもよい。
【0050】
厳密に言えば、エンジン制御ユニット42は、燃焼室14に導入されるガソリンの量が従来の動作と比べて少なくなるように、線46を介して液体燃料噴射装置36を制御する。同時に、このエンジン制御ユニット42は、気体燃料噴射装置38が吸気配管20にNVGを噴射し燃料/空気混合物を得て、次いで、この燃料/空気混合物が、吸気弁18が開いたときに燃焼室に導入されるように、線48を介して気体燃料噴射装置38を制御する。
【0051】
気体燃料に基づくこの燃料/空気混合物は、準均質な総合的な燃料/空気混合物を得るために、すでに燃焼室に入っているガソリンに基づく燃料/空気混合物と混ざる。
【0052】
この総合的な混合物が得られた後、エンジン制御ユニット42は、エンジン10の圧縮段階の終了時近くで点火プラグ32を制御してこの燃料/空気混合物に点火する。
【0053】
ある量の気体燃料を間接的に噴射するので、2つの燃料の総合的な混合物の均質化が大幅に向上し、その結果、排出される微粒子の数が実質的に少なくなりかつ微粒子のサイズが実質的に小さくなる。
【0054】
一例として、本発明の方法を使用した、エンジンからの排気ガスに含まれる微粒子の濃度を示す試験の結果を示す
図2に言及する。
【0055】
この試験のために、ガソリン液体燃料と気体NVG燃料を使用して、動作点を1500
rpm、MEPを3バール、ならびに水およびオイルの温度を20℃としてエンジン10を動作させた。
【0056】
図を見ると明確にわかるように、ガソリンの重量分率が約95%でありNVGの重量分率が約5%である燃料/空気混合物(点A)を用いた場合に排出される微粒子の濃度を約25%低減させることが可能である。ガソリンの重量分率が約40%でありNVGの重量分率が約60%である燃料/空気混合物(点B)を使用することによって、排出される微粒子の濃度を、80%を超える割合だけ低減させることが可能である。すべての多重燃料動作ケースにおいて、エンジンの性能は基本的に変化しなかった。
【0057】
さらに、この多重燃料動作モードは、最大のサイズを有する微粒子の量を低減させるのを可能にする。
【0058】
変形実施形態では、エンジン10は、排気管30または排気マニフォルド28内に配置され、導体52を介してエンジン制御ユニット42に接続された微粒子センサ50を有してもよい。
【0059】
したがって、このエンジン制御ユニット42を使用して、センサ50から送られる情報から、微粒子の形成を助長するエンジン10の動作ゾーンを判定してもよい。
【0060】
このことから、エンジン制御ユニット42は、微粒子排出量が少ないかあるいはほとんど存在しない動作ゾーン用の単一燃料モードまたはこれらの微粒子の形成を助長するゾーン用の多重燃料モードのいずれかにおいて燃料供給手段34および38を制御する。
【符号の説明】
【0061】
10 エンジン
12 気筒
14 燃焼室
16 吸気手段
22 排気手段
34 第1の手段