(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181362
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20170807BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
A61B6/03 350P
G06T1/00 290B
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-230854(P2012-230854)
(22)【出願日】2012年10月18日
(65)【公開番号】特開2013-85960(P2013-85960A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2015年10月13日
(31)【優先権主張番号】13/276,609
(32)【優先日】2011年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】ダキシン・シー
(72)【発明者】
【氏名】ユー・ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンダー・ザミャチン
【審査官】
原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0150305(US,A1)
【文献】
特開2011−177396(JP,A)
【文献】
特開2011−139894(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/073863(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/03
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影データに基づいて画像を再構成する画像処理装置であって、
a)測定された投影データに対する、測定された信号、電子ノイズの分散及び検出器の利得に基づく所定のノイズモデルによる重みと、コーン角依存性アーチファクトを軽減するための所定の窓関数による重みとの合成重みを生成するノイズリダクション手段と、
b)逐次再構成法により画像を反復的に再構成する間に前記測定された投影データに前記合成重みを適用する再構成手段と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記所定のノイズモデルがV=(gI+Ve/I)/Iによって規定され、ここでIが前記測定された信号であり、Veとgがそれぞれ、前記電子ノイズの分散と、チャンネル、セグメント、データ収集システム(DAS)、および/またはコリメーションの関数である前記検出器の利得である、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記所定の窓関数が、平滑なPI重み付け関数w
【数1】
によって規定され、ここで(γ,v)が検出器座標であり、γがファン角度であり、vが垂直方向の座標であり、
【数2】
cが0≦c≦1の範囲を有する平滑化係数である、請求項1に記載の
画像処理装置。
【請求項4】
前記逐次再構成法としては、代数的再構成法(ART)型のアルゴリズム、同時代数的再構成法(SART)型のアルゴリズム、オーダードサブセット同時代数的再構成法(OS−SART)型のアルゴリズム、同時逐次再構成法(SIRT)型のアルゴリズム、期待値最大化法(EM)型のアルゴリズム、および罰則付き最小二乗法型のアルゴリズム(PLS)がある、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記逐次再構成法が、
【数3】
のように、前記測定された投影データのi番目の測定された投影のためのdiによって示される前記合成重み値によって重み付けされるオーダードサブセット同時代数的再構成法(OS−SART)であり、ここで、
【数4】
は、古い画像
【数5】
から更新された画像であり、λnは緩和係数であり、ai,jはシステム行列の要素であり、biはi番目の検出器ビンにおける測定された投影データの対数変換後データである、請求項1に記載の
画像処理装置。
【請求項6】
前記合成重み値diが、
【数6】
によって規定され、ここで、wiが所定の窓関数であり、Viが所定のノイズモデルである、請求項5に記載の
画像処理装置。
【請求項7】
画像の調整を実行する調整手段をさらに備える、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
投影データに基づいて画像を再構成する画像処理装置であって、
a)測定された投影データに対する、所定のノイズモデルによる重みとコーン角依存性アーチファクトを軽減するための所定の窓関数による重みとの合成重みを生成するノイズリダクション手段と、
b)逐次再構成法により画像を反復的に再構成する間に前記測定された投影データに前記合成重みを適用する再構成手段と
を備え、
前記所定の窓関数が、平滑なPI重み付け関数w
【数7】
によって規定され、ここで(γ,v)が検出器座標であり、γがファン角度であり、vが垂直方向の座標であり、
【数8】
cが0≦c≦1の範囲を有する平滑化係数である、画像処理装置。
【請求項9】
前記所定のノイズモデルがV=(gI+Ve/I)/Iによって規定され、ここでIが測定された信号であり、Veとgがそれぞれ、電子ノイズの分散と、チャンネル、セグメント、データ収集システム(DAS)、および/またはコリメーションの関数である検出器の利得である、請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記逐次再構成法としては、代数的再構成法(ART)型のアルゴリズム、同時代数的再構成法(SART)型のアルゴリズム、オーダードサブセット同時代数的再構成法(OS−SART)型のアルゴリズム、同時逐次再構成法(SIRT)型のアルゴリズム、期待値最大化法(EM)型のアルゴリズム、および罰則付き最小二乗法型のアルゴリズム(PLS)がある、請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記逐次再構成法が、
【数9】
のように、前記測定された投影データのi番目の測定された投影のためのdiによって示される前記合成重み値によって重み付けされるオーダードサブセット同時代数的再構成法(OS−SART)であり、ここで、
【数10】
は、古い画像
【数11】
から更新された画像であり、λnは緩和係数であり、ai,jはシステム行列の要素であり、biはi番目の検出器ビンにおける測定された投影データの対数変換後データである、請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記合成重み値diが、
【数12】
によって規定され、ここで、wiが所定の窓関数であり、Viが所定のノイズモデルである、請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項13】
画像の調整を実行する調整手段をさらに備える、請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項14】
投影データに基づいて画像を再構成する画像処理装置であって、
a)測定された投影データに対する、所定のノイズモデルによる重みとコーン角依存性アーチファクトを軽減するための所定の窓関数による重みとの合成重みを生成するノイズリダクション手段と、
b)逐次再構成法により画像を反復的に再構成する間に前記測定された投影データに前記合成重みを適用する再構成手段と
を備え、
前記逐次再構成法が、
【数13】
のように、前記測定された投影データのi番目の測定された投影のためのdiによって示される前記合成重み値によって重み付けされるオーダードサブセット同時代数的再構成法(OS−SART)であり、ここで、
【数14】
は、古い画像
【数15】
から更新された画像であり、λnは緩和係数であり、ai,jはシステム行列の要素であり、biはi番目の検出器ビンにおける測定された投影データの対数変換後データであり、
前記合成重み値diが、
【数16】
によって規定され、ここで、wiが所定の窓関数であり、Viが所定のノイズモデルである、画像処理装置。
【請求項15】
前記所定のノイズモデルがV=(gI+Ve/I)/Iによって規定され、ここでIが測定された信号であり、Veとgがそれぞれ、電子ノイズの分散と、チャンネル、セグメント、データ収集システム(DAS)、および/またはコリメーションの関数である検出器の利得である、請求項14に記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記所定の窓関数が、平滑なPI重み付け関数w
【数17】
によって規定され、ここで(γ,v)が検出器座標であり、γがファン角度であり、vが垂直方向の座標であり、
【数18】
cが0≦c≦1の範囲を有する平滑化係数である、請求項14に記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記逐次再構成法としては、代数的再構成法(ART)型のアルゴリズム、同時代数的再構成法(SART)型のアルゴリズム、オーダードサブセット同時代数的再構成法(OS−SART)型のアルゴリズム、同時逐次再構成法(SIRT)型のアルゴリズム、期待値最大化法(EM)型のアルゴリズム、および罰則付き最小二乗法型のアルゴリズム(PLS)がある、請求項14に記載の画像処理装置。
【請求項18】
画像の調整を実行する調整手段をさらに備える、請求項14に記載の画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に画像処理およびシステムに関し、より詳細には、代数的再構成法(ART)、同時代数的再構成法(SART)、およびオーダードサブセット同時代数的再構成法(OS−SART)などの逐次再構成法への合成重み(combination weights)の適用に関する。
【背景技術】
【0002】
ボリューム画像再構成に関して、反復アルゴリズムが種々のグループによって開発されており、その例としては全変動(TV)最小化逐次再構成アルゴリズムがある。逐次再構成法には、さらに、代数的再構成法(ART)、同時代数的再構成法(SART)、またはオーダードサブセット同時代数的再構成法(OS−SART)がある。
【0003】
従来技術は、逐次再構成処理で重みの何らかの使用を試みてきた。たとえば、画像の再構成が反復的に実行され、更新は、特許文献1で開示される測定された光子数の固有の統計的誤差で重み付けされた。この例示的な重みは、ポアソン分布の統計的不確実性である。別の実施形態では、画像の再構成が反復的に実行され、更新は、非特許文献1で開示される所定の窓の重み付け関数で重み付けされた。
【0004】
従来技術による他の技法としては、逐次再構成中に重み付けを行うための信号対雑音比(SNR)がある。たとえば、検出器の測定値は、ARTまたはSART実行中の線積分のSNRの推定値に反比例する信頼度(confidence measure)に基づくSNRにより互いに対して適切に重み付けされる(非特許文献2)。
【0005】
従来技術による他の技法としては、さらに、ARTまたはSARTアルゴリズムに関連して画像再構成に重み付けを行う際の長手方向のハミング窓(longitudinal Hamming window)がある。この窓の長さは、再構成円(reconstruction circle)によって切り取られるレイの一部を表す点の数に基づいてノイズを抑制するために変化する(非特許文献3)。
【0006】
上記の従来技術の取り組みにもかかわらず、ノイズ抑制とアーチファクト軽減は、通常、重み付けされた逐次再構成法において分離され、かつ競合する状態を保っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,526,060号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Zengら、「Correction of Iterative Reconstruction Artifacts in Helical Cone−Beam CT」、10th International Meeting on Fully Three−Dimensional Image Reconstruction in Radiology and Nuclear Medicine、242ページ(2009年)
【非特許文献2】「SNR−Weighted ART Applied to Transmission Tomography」、Kohlerら、Nuclear Science Symposium Conference Record 6、IEEE(2003年)
【非特許文献3】「Simultaneous Algebraic Reconstruction Technique (SART)」、Andersenら、Ultrasonic Imaging、81〜94ページ(1984年)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
目的は、投影データに基づいて画像を再構成するに際して、ノイズ抑制とアーチファクト軽減とをともに達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態においては、投影データに基づいて画像を再構成するシステムは、測定された投影データに対する、所定のノイズモデルによる重みとコーン角依存性アーチファクトを軽減するための所定の窓関数による重みとの合成重みを生成するためのノイズリダクションデバイスと、逐次再構成法により画像を反復的に再構成する間に前記測定された投影データに前記合成重みを適用するための再構成デバイスとを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態によるマルチスライスX線CT装置またはスキャナを示す図。
【
図2】従来技術では逐次再構成処理の前に所定の窓関数を使用することを示すフロー図。
【
図3】本実施形態において、逐次再構成処理中に合成重みを使用することを示すフロー図。
【
図4A】シャープなPI窓関数に関する検出素子の列を示す図。
【
図4B】平滑化されたPI窓関数に関する検出素子の列を示す図。
【
図5A】重み付け方式を用いないSARTにより再構成され、ストリークアーチファクトが認められる画像を示す図。
【
図5B】逐次再構成中に重み付け方式を用いたSARTにより再構成され、大幅に軽減された量のストリークアーチファクトが認められる画像を示す図。
【
図6A】単純な重み付け方式を用いないSARTにより再構成され、回転ヘリカルアーチファクトが認められる画像を示す図。
【
図6B】逐次再構成中に上述の合成重み付け方式を用いたSARTにより再構成され、大幅に軽減された量の回転ヘリカルアーチファクトが認められる画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで図面を参照すると、同じ参照番号はすべての図面を通して対応する構造を示すが、特に
図1を参照すると、図は、ガントリ100と他のデバイスまたはユニットとを含む、本実施形態によるマルチスライスX線CT装置またはスキャナを示す。ガントリ100は、側面図にて示されており、X線管101と、環状フレーム102と、多列または2次元配列型のX線検出器103とをさらに含む。X線管101およびX線検出器103は、環状フレーム102上の被検体(subject)Sを横切る対角線上に取り付けられ、環状フレーム102は、回転軸RAのまわりに回転可能に支持される。回転ユニット107は、フレーム102を0.4秒/回転などの高速で回転させ、被検体Sは、軸RAに沿って、図示の紙面に対する奥行き方向または手前方向に移動される。
【0013】
マルチスライスX線CT装置は、X線管101がX線を生成するようにスリップリング108を介して管電圧をX線管101に印加する高電圧発生装置109をさらに含む。X線は被検体Sに向かって照射され、被検体Sの断面領域は円によって表されている。X線検出器103は、被検体Sを透過した照射X線を検出するために、被検体Sを挟んでX線管101の反対側にある。
【0014】
さらに
図1を参照すると、X線CT装置またはスキャナは、X線検出器103からの検出された信号を処理するための他のデバイスをさらに含む。データ収集回路またはデータ収集システム(DAS)104は、各チャンネルに対してX線検出器103から出力された信号を電圧信号に変換し、それを増幅して、さらにデジタル信号に変換する。X線検出器103およびDAS104は、1回転あたりの所定の全投影数(TPPR:total number of projections per rotation)を、最大で900TPPR、900TPPRから1800TPPRの間、および900TPPRから3600TPPRの間にできるよう処理するように構成される。
【0015】
上述のデータは、非接触データ伝送装置105を通して、ガントリ100の外部のコンソールに収容された前処理デバイス106に送られる。前処理デバイス106は、生データに対して感度補正などの特定の補正を実行する。次に、その結果として生成されるデータ(投影データとも呼ばれるデータ)を、記憶デバイス112が再構成処理の直前の段階で記憶する。記憶デバイス112は、再構成デバイス114、表示デバイス116、入力デバイス115、およびスキャンプラン支援装置200と共に、データ/制御バスを介してシステムコントローラ110に接続される。スキャンプラン支援装置200は、撮像技師がスキャンプランを策定するのを支援するための機能を含む。
【0016】
再構成デバイス114は、種々のソフトウェア構成要素とハードウェア構成要素とをさらに含む。
【0017】
ここで逐次再構成法では、まず、測定された投影データから画像(一次画像)を再構成する。一次画像から投影処理により投影データを生成する。測定された投影データと、生成された投影データとを差分する。差分により生成された投影データから差分画像を再構成する。差分画像と一次画像とを合成して、二次画像を生成する。この処理を繰り返して、ノイズ低減された最終画像を再構成する。
【0018】
本実施形態によれば、CT装置の再構成デバイス114は、ノイズリダクションに有効な逐次再構成法を用いて全変動(TV)を最小化する。一般に、本実施形態の再構成デバイス114は、投影データに対してオーダードサブセット同時代数的再構成法(OS−SART)ステップと、TV最小化ステップとを実行する全変動逐次再構成(TVIR)アルゴリズムを実施する。この2つのステップは、繰り返し回数があらかじめ設定されているメインループにおいて連続して実施される。
【0019】
投影データは、TV最小化ステップの前に、オーダードサブセット同時代数的再構成法(OS−SART)に供される。投影データは、それぞれ特定数のビューを有する所定数のサブセットNにグループ化される。オーダードサブセット同時代数的再構成法(OS−SART)の実施中に、各サブセットが連続して処理されてもよい。また、複数のサブセットが、複数の中央処理装置(CPU)または1つのグラフィック処理装置(GPU)などの特定のマイクロプロセッサを利用して並列に処理されてもよい。
【0020】
再構成デバイス114はまた、オーダードサブセット同時代数的再構成法(OS−SART)の実施中に、2つの主要な演算を実行する。すなわち、再構成デバイス114は、各サブセットNに対して、計算上の投影データを生成するために画像ボリュームを再投影し、更新画像ボリュームを再構成するために、測定された投影データと計算上の投影データとの正規化された差分を逆投影する。さらに詳細には、再構成デバイス114は、システム行列の係数がキャッシュされないレイトレーシング法を用いることによって、画像ボリュームを再投影する。さらに、再構成デバイス114は、サブセット内のすべてのレイを同時に再投影する。この処理は任意選択で並列に実施される。逆投影において、再構成デバイス114は、所望の更新画像ボリュームを生成する目的でサブセット内のすべての正規化された差分投影データを逆投影するためにピクセルドリブン(pixel-driven)法を用いる。再構成デバイス114が、画像ボリュームを生成するためにサブセット内のすべてのレイサム(すなわち差分投影データ)を逆投影するので、この演算も任意選択で並列に実施される。これらの演算は、単一のOS−SARTステップを完了するために、すべてのサブセットNに適用される。このおよびその他の実施形態は、任意選択で、添付の特許請求の範囲においてより詳細に記載されている本実施形態の範囲に含まれる。
【0021】
全変動(TV)最小化ステップにおいて、再構成デバイス114は、現在の画像ボリュームの目的関数が前の画像ボリュームの目的関数より小さくなるように正のステップ幅(step size)を探索するために直線探索方式(line search strategy)を用いる。
【0022】
本実施形態は、所定のフィルタを使用してコンピュータ断層撮影画像のストリークおよび/またはノイズを大幅に軽減させるための種々のソフトウェアモジュールとハードウェア構成要素とをさらに含む。本実施形態によれば、CT装置のノイズリダクションデバイス117は、有利には、ノイズおよび/またはストリークの軽減を実行する。本実施形態では、ノイズリダクションデバイス117は、データ/制御バスを介して、他のソフトウェアモジュール、ならびに/または記憶デバイス112、再構成デバイス114、表示デバイス116、および入力デバイス115などのシステム構成要素に動作的に接続される。この点に関して、他の実施形態では、ノイズリダクションデバイス117単独では、必ずしもノイズリダクション関数および/またはそれに関連するタスクを実行しない。そのうえ、ノイズリダクションデバイス117は、任意選択で再構成デバイス114などの他のデバイスの一部であってもよい。
【0023】
一般に、CTの投影データは、所定の対数変換処理の後で利用可能である。この対数変換処理では、スキャンされた対象によって減衰された、測定されたX線強度信号を線積分データに変換する。その後、この線積分データから、既知の数学的反転方法によってCT画像が再構成される。本実施形態によるノイズ/ストリークリダクションシステムは例示的にはノイズリダクションデバイス117は、投影データを変換して元のX線強度データまたは光子数測定値に戻す。この場合、ノイズリダクションデバイス117は、変換ステップにおいてシステム較正正処理に関する何らかの情報を必要とする。あるいは、ノイズリダクションデバイス117は、測定されたX線強度信号への直接アクセスを有する。
【0024】
ノイズリダクションデバイス117は、X線強度信号または光子数に基づいて対数変換後(after-log)データのノイズ分散(V)を決定する。このノイズ分散は、対数変換処理後にノイズが均一化されるように計算される。
【0025】
測定されたデータに対する対数変換の効果を理解するため、対数変換の前および後の分散に関してノイズモデルを調べる。対数変換前(before-log)ノイズ分散VarBLは、式(1)で定義される対数変換前ノイズモデルによって推定される。
【数1】
【0026】
ここで、VarBLは、対数変換前全ノイズ分散であり、Veは電子ノイズの分散(electronic noise variance)であり、Iは平均数である。Wは検出器の利得であり、これは、チャンネル、セグメント、データ収集システム(DAS)、および/またはコリメーションの関数である。一方、対数変換後ノイズ分散VarALは、式(2)で定義される対数変換後ノイズモデルによって推定される。
【数2】
【0027】
上記の式は両方とも、「Adaptive streak artifact reduction in CT resulting from excessive x−ray photon noise」、Jiang Hsieh (GE)、Med. Phys. 25 (11)、2139〜47ページ、1998年に開示されている。
【0028】
同様に、ノイズリダクションデバイス117は、逐次再構成処理中に再構成の前に用いられるべき重み付け関数の決定に関連するタスクも実行する。特定の実施形態では、ノイズリダクションデバイス117は、本実施形態により心臓および肺などの静止していない臓器(non-stationary organ)の画像を改善するための重要なタスクであるモーションの重み付けに関連する窓関数を決定する。1つの例示的な窓関数は、検出器に基づくものである。そのうえ、他の実施形態では、再構成デバイス114は、任意選択で、逐次再構成処理の前またはその実行中に窓の重み付け関数を決定する。
【0029】
さらに
図1を参照すると、ノイズリダクションデバイス117または再構成デバイス114のいずれかまたはその両方は、逐次再構成処理中に所定の重みの合成を画像のインスタンスに適用する。本実施形態では、この重みは、事前に生成および記憶される。あるいは、別の実施形態では、この重みは実行中に生成される。一般に、合成重みは、本実施形態による所定のノイズモデルと所定の窓関数とに基づく少なくとも2つの関数を用いて生成される。1つの例示的な合成重みは、式(2)に規定される対数変換後ノイズ分散であるVarALによる重みと、
図4Bに関して説明される平滑化されたPI窓関数による重みとの合成によりなる。
【0030】
次に
図2を参照すると、フロー図は、従来技術では逐次再構成処理の前に所定の窓関数を使用することを、本実施形態では逐次再構成中に合成重みを使用することと比較して示す。投影データPDは収集済みであり、この投影データPDに対して、所定の窓関数Wが所定の逐次再構成処理の前に適用される。言い換えれば、測定された投影データは、画像再構成の前に重み付けされた投影データを生成するために重み付けされる。ステップS10では、第1のループは、オーダードサブセット同時代数的再構成法(OS−SART)を含む。たとえば、再構成デバイスは、ステップS10において2つの主要な演算を実行する。すなわち、再構成デバイスは、各サブセットNに対して、計算上の投影データを生成するために画像ボリュームを再投影し、更新画像ボリュームを再構成するために、測定された投影データと計算上の投影データとの正規化された差分を逆投影する。さらに詳細には、再構成デバイスのは、システム行列の係数がキャッシュされないレイトレーシング法を用いることによって、画像ボリュームを再投影する。さらに、再構成デバイスは、サブセット内のすべてのレイを同時に再投影する。この処理は任意選択で並列に実施される。逆投影において、再構成デバイスでは、所望の更新画像ボリュームを生成する目的でサブセット内のすべての正規化された差分投影データを逆投影するためにピクセルドリブン法を用いる。再構成デバイスが、画像ボリュームを生成するためにサブセット内のすべてのレイサム(すなわち差分投影データ)を逆投影するので、この動作は任意選択で並列に実施される。これらの演算は、単一のOS−SARTステップを完了するために、すべてのサブセットNに適用される。
【0031】
いずれの場合にも、最初に、投影データPDが反復処理の前に重み付けされるが、OS−SARTは、以下に式(3)によって示す窓関数によって重み付けされない。
【数3】
【0034】
から更新された画像であり、λnは緩和係数であり、ai,jはシステム行列の要素であり、biはi番目の検出器ビンにおける測定された投影データの重み付けされたデータである。
【0035】
さらに
図2を参照すると、従来技術において逐次再構成処理の前に所定の窓関数を使用することにより、ステップS20において全変動(TV)最小化がさらに実行される。たとえば、再構成デバイス114は、現在の画像ボリュームの目的関数が前の画像ボリュームの目的関数より小さくなるように正のステップ幅を探索するために直線探索方式を用いる。上述のステップS10およびS20は所定の回数だけ反復され、ステップS30では、所定の反復回数が実行されたかどうかを判断する。ステップS30で、所定の反復回数が達成されていないと判断された場合、反復処理は、更新画像に対してステップS10およびS20をさらに繰り返す。一方、ステップS30で、所定の反復回数が達成されたと判断された場合、反復処理は次にステップS40で更新画像を出力する。
【0036】
次に
図3を参照すると、フロー図は、本実施形態における逐次再構成処理中の所定の窓関数とノイズ分散関数とを含む合成重みの使用を示す。本実施形態では、投影データPDは収集済みであり、投影のたびに所定の合成重みが生成され、記憶デバイスに記憶される。あるいは、別の実施形態では、合成重みは、適用されるときに実行中に生成される。たとえば、合成重みは、所定の平滑化されたPI窓関数と所定のノイズ分散関数とに基づく。画像再構成のステップS110において、合成重みは、各投影ビンで測定された投影と、オーダードサブセット同時代数的再構成法(OS−SART)を実行する反復ループにおける反復の各インスタンスでの計算上の投影との差分に適用される。たとえば、ステップS110において、再構成デバイス114は、各サブセットNに対して、計算上の投影データを生成するために画像ボリュームを再投影し、更新画像ボリュームを再構成するために、測定された投影データと計算上の投影データとの正規化された差分を逆投影する。実際には、ステップS110の1つの例示的処理における再構成デバイス114は、記憶された合成重みのうちの対応する重みを取り出し、それを、各サブセットNの各インスタンスの上記の正規化された差分に適用する。ステップS110の別の例示的処理では、再構成デバイス114は、記憶された合成重みのうちの対応する重みを生成し、それを、各サブセットNの各インスタンスの上記の正規化された差分に適用する。
【0037】
さらに詳細には、再構成デバイス114は、システム行列の係数がキャッシュされないレイトレーシング法を用いることによって、画像ボリュームを再投影する。さらに、再構成デバイス114は、サブセット内のすべてのレイを同時に再投影する。この処理は任意選択で並列に実施される。逆投影において、再構成デバイス114は、所望の更新画像ボリュームを生成する目的でサブセット内のすべての正規化された差分投影データを逆投影するためにピクセルドリブン法を用いる。再構成デバイス114が、画像ボリュームを生成するためにサブセット内のすべてのレイサム(すなわち差分投影データ)を逆投影するので、この演算は任意選択で並列に実施される。
【0038】
本実施形態では、OS−SARTは、所定の合成重みによって重み付けされる。他の実施形態では、SART、ART、およびSIRTなどの他の逐次再構成法は、任意選択で、所定の合成重みによって重み付けされる。OS−SARTは、その再構成中の反復の各インスタンスにおいて以下の式(4)に示すように合成重みdiによって重み付けされる。
【数6】
【0041】
から更新された画像であり、λnは緩和係数であり、ai,jはシステム行列の要素であり、biはi番目の検出器ビンにおける測定された投影データの対数変換後データである。さらに詳しくは、1つの例示的な合成重みdiは式(5)
【数9】
【0042】
によって規定され、ここで、wiは所定の窓関数であり、Viは所定のノイズモデルである。
【0043】
さらに
図3を参照すると、逐次再構成処理では、ステップS120において全変動(TV)最小化がさらに実行される。たとえば、再構成デバイス114は、現在の画像ボリュームの目的関数が前の画像ボリュームの目的関数より小さくなるように正のステップ幅を探索するために直線探索方式を用いる。上述のステップS110およびS120は所定の回数だけ反復され、ステップS130では、所定の反復回数が実行されたかどうかを判断する。ステップS130で、所定の反復回数が達成されていないと判断された場合、反復処理は、更新画像に対してステップS110およびS120をさらに繰り返す。一方、ステップS130で、所定の反復回数が達成されたと判断された場合、反復処理は次にステップS140で更新画像を出力する。
【0044】
次に
図4Aを参照すると、検出素子の列が、シャープなPI窓関数に関して示されている。シャープな窓関数は、VPI-とVPI+の間のその行の間では1を出力し、その範囲外ではゼロを出力する。上記の急激に変化する出力特性のために、対応する重みは平滑ではない。
【0045】
次に
図4Bを参照すると、検出素子の列が、所定の平滑化間隔に関して示されている。検出器は、
図4Aに示すような検出器高さが2W未満の原サイズから、高さ2Wに拡張される。図示のように、平滑化されたPI関数は、「拡張」とマークされている部分を含む2Wの範囲を有する。2Wに拡張されているので、平滑化間隔Δγも、平滑化関数が拡張高さ2Wの中でより大きなまたはより平滑な変化率を有するようになるように拡張される。1とゼロの出力遷移は、延長範囲2Wで平滑化される。
【0046】
1つの例示的な平滑化されたPI重み付け関数wを以下に規定する。この平滑化されたPI窓関数は、合成重み付け方式の一部として用いられる。
【数10】
【0047】
ここで、(γ、v)は検出器座標である。γはファン角度であり、vは垂直方向の座標である。1つの例示的な平滑化されたPI窓関数における他のパラメータも、以下のように規定する。
【数11】
【0048】
ここで、Cchは投影データの中心レイであり、447.25の値を有する。Hは、所定のヘリカルピッチである。cは、0≦c≦1の範囲を有する平滑化係数である。c=0のとき、平滑化されたPI窓関数は、シャープなPI−窓になる。つまり、0%の冗長データの使用率が実現される。一方、c=1のとき、平滑化されたPI−窓は、100%の冗長データの使用率を実現する。同様に、c=0.5のとき、平滑化されたPI−窓は、50%の冗長データの使用率を意図した中程度平滑化されたPI−窓になる。
【0049】
次に
図5Aおよび
図5Bを参照すると、図は、肩画像におけるストリークアーチファクトに対する重みの効果を示す。
図5Aは、画像が上述の重み付け方式のいずれも用いずにSARTにより再構成されているので、ストリークアーチファクトが認められることを示す。一方、
図5Bは、画像が逐次再構成中に重み付け方式を用いたSARTにより再構成されているので、大幅に軽減された量のストリークアーチファクトが認められることを示す。
図5Bの重み付け方式はノイズ分散のみに基づいており、この例では2Dファンビームデータが用いられるので、PI−窓関数は適用されない。
【0050】
次に
図6Aおよび
図6Bを参照すると、図は、頭部領域の画像における回転ヘリカルアーチファクトに対する合成重みの効果を示す。
図6Aは、画像が上述の重み付け方式の所定のノイズ分散モデルのみを用いるSARTにより再構成されているので、矢印によって表される回転ヘリカルアーチファクトが認められることを示す。一方、
図6Bは、画像が逐次再構成中にノイズ分散モデルと所定の平滑化されたPI窓関数とを含む上述の合成重み付け方式を用いたSARTにより再構成されており、大幅に軽減された量の回転ヘリカルアーチファクトが認められることを示す。上記の例示的な所定の逐次再構成技法を用いる合成重みの適用から分かるように、画質は大幅に向上することができる。
【0051】
しかし、本実施形態の多数の特徴および利点が本実施形態の構造および機能の詳細と共に前述の説明に記載されているが本開示は例示に過ぎないこと、さらに、詳細、特に部品の形状、大きさ、および構成、ならびにソフトウェア、ハードウェア、またはその両方の組み合わせにおける実装形態に関して、変更を加えることができるが、この変更は、添付の特許請求の範囲が表現される用語の広い一般的な意味によって最大限示される本実施形態の原理内に含まれることを理解されたい。
【符号の説明】
【0052】
100…ガントリ、101…X線管、102…環状フレーム、103…X線検出器、104…データ収集システム(DAS)、105…非接触データ伝送装置、106…前処理デバイス、107…回転ユニット、108…スリップリング、109…高電圧発生装置、110…システムコントローラ、112…記憶デバイス、114…再構成デバイス、116…表示デバイス、115…入力デバイス、200…スキャンプラン支援装置。