特許第6181385号(P6181385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181385
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20170807BHJP
   E04B 1/344 20060101ALI20170807BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   E04H9/14 Z
   E04B1/344 A
   E04B2/56 644Z
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-44112(P2013-44112)
(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公開番号】特開2014-173239(P2014-173239A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄住金鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【弁理士】
【氏名又は名称】時岡 恭平
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】井口 龍美
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−040442(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0236062(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/14
E04B 1/344
E04B 2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の躯体が備える梁または柱に壁体を取り付けた壁構造であって、
前記壁体は、2枚の金属板の間に芯材を充填したサンドイッチパネルを外壁パネルとして備え、
前記壁体は、その上端部を中心に回動自在となるように、前記梁または前記柱に取り付けられ、
前記壁体は、
前記躯体に対して固定手段により固定されることで前記構造物の壁をなす起立姿勢となり、
前記壁体に所定以上の外力が加わったときに、前記固定手段による固定が解除されて回動自在な状態となるように設けたことを特徴とする壁構造。
【請求項2】
前記固定手段は、前記躯体のうち前記壁体の下方部位に設けられる係止部材を備え、
前記係止部材は、
前記壁体に所定以上の外力が加わっていない状態では、前記壁体の下端部を係止して、前記壁体を前記起立姿勢で固定し、
前記壁体に所定以上の外力が加わったときには、前記壁体の前記下端部の係止を解除して、前記壁体が回動する回動範囲の外側まで退避可能となるように設けたものであることを特徴とする請求項1に記載の壁構造。
【請求項3】
前記に固定される固定壁体を備え、
前記固定手段は、前記固定壁体に対して前記壁体を固定するものであることを特徴とする請求項1に記載の壁構造。
【請求項4】
構造物の躯体に壁体を取り付けた壁構造であって、
前記壁体の上端部は、前記躯体に回動自在に取り付けられ、
前記壁体は、
前記躯体に対して固定手段により固定されることで前記構造物の壁をなす起立姿勢となり、前記壁体に所定以上の外力が加わったときに、前記固定手段による固定が解除されて回動自在な状態となるように設け、
前記固定手段は、
前記躯体のうち前記壁体の側方に位置する箇所から前記壁体に向けて突出する固定用プレートと、
前記壁体から前記箇所に向けて突出する固定板と、
上下に重なった前記固定用プレートと前記固定板とを固定するボルト及びナットと、
を備えることを特徴とする壁構造。
【請求項5】
前記壁体は、2枚の金属板の間に芯材を充填したサンドイッチパネルを外壁パネルとして備えることを特徴とする請求項に記載の壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、津波対策を施した構造物の壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、構造物の外壁構造は、特許文献1等に記載されているように、隣り合う2本の柱に亘るようにパネルが固定されて構成される。
【0003】
このような外壁構造では、屋外側から受ける風等の外圧は、パネルを介して躯体である柱で受けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−57336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した構造物の外壁構造では、津波災害時に津波を受けたときに、パネルが津波の波圧を受け流すことができず、パネルを介して伝わる外力によって躯体が損傷するおそれがある。
【0006】
そこで、上記事情を鑑みて、本発明は、津波を受けたときに、津波の波圧を受け流して、構造物の躯体の損傷を抑制することができる壁構造を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の壁構造は、構造物の躯体が備える梁または柱に壁体を取り付けた壁構造であって、前記壁体は、2枚の金属板の間に芯材を充填したサンドイッチパネルを外壁パネルとして備え、前記壁体は、その上端部を中心に回動自在となるように、前記梁または前記柱に取り付けられ、前記壁体は、前記躯体に対して固定手段により固定されることで前記構造物の壁をなす起立姿勢となり、前記壁体に所定以上の外力が加わったときに、前記固定手段による固定が解除されて回動自在な状態となるように設けたことを特徴とする。
【0008】
また、前記固定手段は、前記躯体のうち前記壁体の下方部位に設けられる係止部材を備え、前記係止部材は、前記壁体に所定以上の外力が加わっていない状態では、前記壁体の下端部を係止して、前記壁体を前記起立姿勢で固定し、前記壁体に所定以上の外力が加わったときには、前記壁体の前記下端部の係止を解除して、前記壁体が回動する回動範囲の外側まで退避可能となるように設けたものであることが好ましい。
【0009】
あるいは、前記に固定される固定壁体を備え、前記固定手段は、前記固定壁体に対して前記壁体を固定するものであることが好ましい。
【0010】
上記課題を解決するために本発明の壁構造は、構造物の躯体に壁体を取り付けた壁構造であって、前記壁体の上端部は、前記躯体に回動自在に取り付けられ、前記壁体は、前記躯体に対して固定手段により固定されることで前記構造物の壁をなす起立姿勢となり、前記壁体に所定以上の外力が加わったときに、前記固定手段による固定が解除されて回動自在な状態となるように設け、前記固定手段は、前記躯体のうち前記壁体の側方に位置する箇所から前記壁体に向けて突出する固定用プレートと、前記壁体から前記箇所に向けて突出する固定板と、上下に重なった前記固定用プレートと前記固定板とを固定するボルト及びナットと、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記壁体は、2枚の金属板の間に芯材を充填したサンドイッチパネルを外壁パネルとして備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の壁構造では、構造物の躯体に壁体を回動自在に取り付けることで、構造物が津波を受けたときに、壁体を回動させて、津波の波圧を受け流すことができる。また、本発明の壁構造では、津波を受けていない通常時には、固定手段によって壁体を躯体に対して固定することで、壁体を構造物の壁をなす起立姿勢とすることができ、これにより壁体を構造物の壁として機能させることができる。以上のように、本発明の壁構造は、津波を受けたときには、津波の波圧を受け流して、構造物の躯体の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態の壁構造を示す側断面図である。
図2】(a)(b)は同上の壁構造の回動状態を示す側断面図である。
図3】同上の壁構造を屋外側から視た正面図である。
図4図3の壁構造のA部分を示す正面図であり、パネルユニット及び下壁パネルの図示を省略した図である。
図5図3の壁構造のB−B´線における平断面図である。
図6】同上の壁構造の下端部の変形例を示す側断面図である。
図7図6の壁構造の要部を屋外側から視た正面図であり、パネルユニット及び下壁パネルの図示を省略した図である。
図8】本発明の第二実施形態の壁構造を示す側断面図である。
図9】(a)(b)は同上の壁構造の回動状態を示す側断面図である。
図10】同上の壁構造の下端部を屋外側から視た正面図である。
図11図10の壁構造のC−C´線における平断面図である。
図12図10のD部分を示す斜視図である。
図13図12のE−E´線における側断面図である。
図14】(a)は本発明の第三実施形態の壁構造の下端部を屋外側から視た正面図であり、壁体のパネルユニット、固定壁体のパネル、固定壁体の縦胴縁、及び柱に設けられる取付片の図示を省略した図である。(b)は(a)の壁構造のF−F´線における平断面図であり、ボルト及びナットの図示を省略した図である。
図15】(a)は本発明の第四実施形態の壁構造の下端部を屋外側から視た正面図であり、壁体のパネルユニット、固定壁体のパネル、固定壁体の縦胴縁、及び柱に設けられる取付片の図示を省略した図である。(b)は(a)の壁構造のG−G´線における平断面図であり、ボルト及びナットの図示を省略した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
【0015】
本発明の第一実施形態の壁構造は、津波対策を施した構造物の壁構造である。具体的には、本実施形態の壁構造は、構造物の躯体に壁体2を取り付けた外壁構造からなる壁構造であって、図1及び図2に示すように、壁体2の上端部を躯体である梁1に回動自在に取り付けたものである。
【0016】
本実施形態の壁構造は、構造物が屋外側から津波を受けたときに、図2(a)に示すように、構造物の外壁面の大部分の面積を占める壁体2が回動することによって、津波の波圧を受け流すことができる。これにより、本実施形態の壁構造は、津波による躯体の損傷を抑制することができる。
【0017】
本実施形態の壁構造は、構造物の各階の壁構造のうち、津波が衝突するおそれのある階(例えば1階)の壁構造に適用される(図3参照)。なお、図3に示す構造物では、2階部分の外壁構造には、躯体に壁体を回動不可に固定した一般的な壁構造を適用しているが、この2階部分の外壁構造にも、本実施形態の壁構造を適用してもよい。
【0018】
図1における矢印X1が示す方向は屋外側であり、図1における矢印X2が示す方向は屋内側である。なお、必要に応じて、矢印X1が示す屋外側を前方といい、矢印X2が示す屋内側を後方という。以下では、図3における矢印Y1が示す方向を右方向とし、矢印Y2が示す方向を左方向として各構成について説明する。
【0019】
壁体2は、図1に示すように、縦胴縁20と、縦胴縁20の屋外側に取り付けられるパネルユニット21とを備える。パネルユニット21の屋内側には、図3に示すように、複数(本実施形態では4本)の縦胴縁20が左右に並べて配される。パネルユニット21は、その上端の高さが、壁体2の回動中心と略同じ高さとなるように、縦胴縁20に取り付けられる。
【0020】
構造物の躯体である梁1は、左右横並びの複数の柱3に亘るように設けられている。梁1は、壁体2よりも上方に位置する。壁体2は、梁1のうち、左右横並びの2本の柱3間の部位に回動自在に取り付けられる。つまり、壁体2は、図3に示すように、左右横並びの2本の柱3間に位置して、柱3の屋外側には位置しない。壁体2は、左右横並びの2本の柱3間毎に設けられる。つまり、壁体2は、複数、互いに距離を置いて配される。
【0021】
構造物の躯体のうち壁体2の側方箇所である各柱3の屋外側には、図3及び図5に示すように、固定壁体4が回動不可に固定されている。固定壁体4は、柱3の左右幅と略同じ左右幅で形成されている。固定壁体4は、壁体2に比べて左右幅が短い。構造物の外壁面は、壁体2と固定壁体4とで構成される。ここで、固定壁体4が構造物の外壁面を占める割合は、壁体2が構造物の外壁面を占める割合に比べて小さい。壁体2は、左右に隣り合う2つの固定壁体4間に配される。なお、構造物の2階部分には、左右に隣り合う2本の柱3に亘るように上層壁体5が固定されている。
【0022】
縦胴縁20は、本実施形態では、側方に向けて開口したリップ溝形鋼であり(図5参照)、縦方向を長手方向とする。各縦胴縁20は、その上端部が梁1に対して回動自在に取り付けられる。本実施形態では、図3に示すように、各縦胴縁20は、その下端部同士が繋ぎ材26によって連結されて一体化されている。これにより、各縦胴縁20は、回動動作を一体的に行う。
【0023】
繋ぎ材26は、角筒状の鋼材であり(図1参照)、横方向(左右方向)を長手方向とする。繋ぎ材26は、図3に示すように、左右横並びの縦胴縁20間にそれぞれ配される。ここで、繋ぎ材26は、パネルユニット21の屋内側に配されるものであり、柱3や固定壁体4に対しては非接触に設けられる。繋ぎ材26は、縦胴縁20の数に対応して複数(本実施形態では3本)設けられる。
【0024】
繋ぎ材26は、その長手方向の両端部がそれぞれ縦胴縁20の下端部に固定される。本実施形態では、繋ぎ材26は、図4に示すように、L型のアングル材27を介して縦胴縁20に固定される。アングル材27は、溶接によって縦胴縁20の側面に固定され、ボルト・ナット等の固定具18によって繋ぎ材26の上面に固定される。固定具18は、繋ぎ材26を上下に貫通させて取り付けられる。なお、アングル材27を縦胴縁20及び繋ぎ材26に固定する手段は、その他の手段であってもよい。
【0025】
本実施形態では、繋ぎ材26は、縦胴縁20との間に、左右方向に隙間が形成されるように配される。この隙間は、施工誤差や熱膨張等による寸法変化に対応するための隙間である。なお、繋ぎ材26は、各縦胴縁20に溶接等で直接固定されてもよい。
【0026】
繋ぎ材26の長手方向(左右方向)の一部の下面には、パネル固定用部材28が溶接等によって固定される。図1に示すように、パネル固定用部材28は、パネルユニット21の下端部を縦胴縁20に対して位置固定するための部材である。パネル固定用部材28は、角筒状の鋼材である。パネル固定用部材28の屋外側には、パネル受け29が螺子等の固定具34によって取り付けられる。本実施形態では、パネル固定用部材28の屋外側には水切り材79も取り付けられている。水切り材79は、壁体2の回動の邪魔をしないように設けられている。本実施形態では、水切り材79は、側面視にて屋内側に向けて開口した略コ字状に形成されているが、その他の形状で形成されてもよい。
【0027】
パネル受け29には、パネルユニット21の下端部が載せられる。これにより、パネルユニット21の下端部は、パネル受け29に支持されて、屋外側への浮き上がりが防止される。パネル受け29は、本実施形態では、側断面略J字状である。
【0028】
本実施形態の壁構造では、回動自在な壁体2は、躯体に対して固定手段8により固定されることで、壁体2に所定以上の外力が加わっていない状態では、すなわち壁体2が津波を受けていない通常状態では、構造物の壁をなす起立姿勢となるように設けられている。そのため、壁体2は、回動自在に設けているものの、構造物の壁として機能することができる。そして、壁体2は、壁体2に所定以上の外力が加わったときに、すなわち、壁体2が津波を受けたときに、固定手段8による固定が解除されて回動自在な状態となるように設けられている。したがって、壁体2は、通常状態では固定手段8に固定されて構造物の固定壁をなし、津波を受けたときには暖簾のように回動自在となる可動壁をなす。
【0029】
本実施形態の壁構造では、図1に示すように、梁1に固定部材10が固定され、この固定部材10に連結部材11が回動自在に連結され、この連結部材11に縦胴縁20の上端部が固定されている。本実施形態では、連結部材11にはパネル取付部材19が溶接等によって固定されている。パネル取付部材19は、例えば側断面略L字状である。パネル取付部材19の屋外側には、パネルユニット21の上端部が固定される。
【0030】
固定部材10は、梁1の長手方向に亘って、複数配される。そして、各固定部材10に、連結部材11を介して縦胴縁20が回動自在に取り付けられる。固定部材10の配置数は、縦胴縁20の数に対応する。
【0031】
本実施形態では、図1に示すように、梁1はH形鋼であり、固定部材10は側面視略C字形プレートである。固定部材10は溶接等によって梁1に固定される。固定部材10には、プレート状の連結部材11がボルト・ナット等の連結具12によって回動自在に連結される。連結部材11には、縦胴縁20が複数(本実施形態では2つ)のボルト・ナット等の固定具13によって固定される。これにより、壁体2は、連結部材11と固定部材10との連結箇所である連結具12を設けた部位を回動中心として、図2(a)及び図2(b)に示すように、屋外側及び屋内側に回動自在となる。壁体2は、津波を受けたときに梁1から外れないような連結強度で、梁1に対して回動自在に連結されている。
【0032】
壁体2及び固定壁体4の下方には、図1に示すように、土台である下梁7と、その屋外側に取り付けられる下壁パネル70とを備える。下梁7は、角筒状の鋼材であり(図1参照)、横方向(左右方向)を長手方向とする。下梁7は、基礎6上に固定されている。また、下梁7は、左右横並びの複数の柱3に溶接等で固定されている。
【0033】
本実施形態の壁構造では、固定手段8は、構造物の躯体のうち壁体2の下方部位である下梁7に設けられる係止部材80と、各縦胴縁20の下端部の側面に取り付けたボルト・ナット等からなる係止具15とを備える。この係止具15が係止部材80によって係止されることで、壁体2は躯体である下梁7に対して固定される。
【0034】
係止部材80は、下梁7のうち壁体2の下方部位に、下梁7の長手方向に亘って複数設けられる。各係止部材80は、各縦胴縁20の左右位置に対応してその略真下に配置される。
【0035】
係止部材80は、壁体2に所定以上の外力が加わっていない状態では、壁体2の下端部を係止して、壁体2を構造物の壁をなす起立姿勢で固定するように、下梁7に取り付けられる。そして、係止部材80は、壁体2に所定以上の外力が加わったときには、壁体2の下端部の係止を解除するように、下梁7に取り付けられる。本実施形態では、係止部材80は、壁体2に所定以上の外力が加わったときには、壁体2が回動する回動範囲の外側まで退避可能となるように設けられている。
【0036】
詳しくは、係止部材80は、矩形板状の係止用プレート800と、この係止用プレート800が回転自在に取り付けられるL字型プレートからなるベース71と、係止用プレート800の回転を規制する山型のストッパー72とを備える。係止部材80は、ベース71が下梁7の上面に溶接等で固定されることによって、下梁7に取り付けられる。
【0037】
係止用プレート800は、その長手方向の一方の端部(上端部)に、縦胴縁20に設けた係止具15が差し込まれて係止される差込凹部81を備える。そして、係止用プレート800は、その長手方向の他方の端部(下端部)に、ストッパー72の係止用凸部75が嵌まり込んで係止される係止用溝82を備える。係止部材80は、係止用溝82と差込凹部81の間の部位が、ベース71の縦片部74にボルト・ナット等の連結具16によって回動自在に連結される。係止部材80は、壁体2を係止するときに、差込凹部81が上方に向けて開口し、係止用溝82が下方に向けて開口する。
【0038】
ここで、係止用プレート800は、自然の風から受ける外力程度では、係止用溝82からストッパー72の係止用凸部75が外れないように設けられている。つまり、係止用プレート800は、自然の風からの外力に比べて格段に大きい津波からの外力を受けたときに、係止用溝82からストッパー72の係止用凸部75が外れるように設けられている。
【0039】
ベース71は、縦片部74とその下端から側方に向けて突出した横片部73とを備える。ストッパー72は、横片部73の上面に溶接等で固定されている。ストッパー72は、前後方向の中央部に、上方に向けて突出する係止用凸部75を備える。
【0040】
係止部材80は、起立姿勢にある壁体2の係止具15を係止用プレート800の差込凹部81に差し込み、ベース71の係止用凸部75を係止用プレート800の係止用溝82に嵌め込んだ状態で、壁体2の下端部を係止して、壁体2を、構造物の壁をなす起立姿勢で固定する。このとき、係止部材80の係止用プレート800は、上端部が下壁パネル70よりも上方に突出して、この上端部が壁体2が回動する回動範囲に位置する。
【0041】
係止部材80の係止用プレート800は、壁体2が屋外側から所定以上の外力を受けたときに、係止用プレート800の上端部が縦胴縁20に設けた係止具15によって屋内側に押される。これにより、係止用プレート800が回転して、差込凹部81から係止具15が外れるとともに、係止用溝82から係止用凸部75が外れて、壁体2の固定が解除される。このとき、係止部材80の係止用プレート800は、図2に示すように、壁体2が回動する回動範囲の外側(下側)に退避させることができる。
【0042】
また、本実施形態の壁構造では、下梁7には、図4に示すように、係止部材80を設けた位置とは別の左右位置に、パネル固定用部材76が溶接等によって固定される。パネル固定用部材76は、その屋外側に配される下壁パネル70の上端部を固定するための部材である。本実施形態では、パネル固定用部材76の左右方向の配置は、パネル固定用部材28の配置と同じである。
【0043】
パネル固定用部材76は、図1に示すように、角筒状の鋼材であり、横方向(左右方向)を長手方向とする。パネル固定用部材76は、下梁7上に下梁7と屋外側面が略面一となるように取り付けられる。本実施形態では、パネル固定用部材76は、下梁7に比べて前後方向の幅が狭い。なお、パネル固定用部材76は、下梁7と前後方向の幅が同じであってもよい。
【0044】
下梁7及びパネル固定用部材76の屋外側には、下壁パネル70が固定される。詳しくは、下梁7の屋外側には、パネル受け77が螺子等の固定具35によって取り付けられる。パネル受け77は、例えば、側断面略J字状である。このパネル受け77によって下壁パネル70の下端部は支持されて、屋外側への浮き上がりが防止される。そして、下壁パネル70は、その上端部に、螺子等の固定具35が屋外側から打ち込まれることで、パネル固定用部材76に固定される。
【0045】
本実施形態では、下梁7の屋外側にはさらに水切り材78が取り付けられる。水切り材78は、下壁パネル70と基礎6との間の上下隙間から、雨水が屋内側へと浸入することを抑制する。
【0046】
本実施形態の壁構造では、壁体2のパネルユニット21は、図3に示すように、横張りされたサンドイッチパネル22を上下に複数(図では5枚)並べて連結したものである。各サンドイッチパネル22は、2枚の金属板220,221の間に芯材222を充填したパネル材である。サンドイッチパネル22は、本実施形態では、下端部に嵌合凸部23を備え、上端部に嵌合凹部24を備える(図1参照)。そして、サンドイッチパネル22は、嵌合凹部24の下方の部位に、螺子等の取付具17が打ち込まれる打入部25を備える。さらに、サンドイッチパネル22は、嵌合凸部23の屋外側に位置するカバー片230を備える。カバー片230は、サンドイッチパネル22同士を上下に連結した状態で、打入部25の屋外側に位置して、打入部25に打ち込まれた取付具17を屋外側に対して隠すためのものである。
【0047】
上下に並ぶ2枚のサンドイッチパネル22は、嵌合凸部23と嵌合凹部24を嵌合させることで連結される。各サンドイッチパネル22は、打入部25へ取付具17が打ち込まれることで、縦胴縁20に対してパネル上端部が固定される。本実施形態では、複数のサンドイッチパネル22のうち、一番上に配置されるサンドイッチパネル22は、その上端部がパネル取付部材19に固定されることで、縦胴縁20に対して位置固定される。上から2番目以下の各サンドイッチパネル22は、各上端部が縦胴縁20に直接固定される。
【0048】
一番下以外に配される各サンドイッチパネル22の下端部は、その下方に位置する他のサンドイッチパネル22の上端部に嵌合させることで、縦胴縁20に対して位置固定される。なお、一番下に配置されるサンドイッチパネル22は、その下端部がパネル受け29に支持されることで、縦胴縁20に対して位置固定される。
【0049】
なお、パネルユニット21は、上述のように複数のサンドイッチパネル22を連結したものに限らず、1枚のパネル材であってもよい。また、図3には、パネルユニット21に窓30を形成した例が示されているが、パネルユニット21は窓30を備えないものであってもよい。
【0050】
また、本実施形態の壁構造では、固定壁体4は、図3及び図5に示すように、複数(図では2本)の縦胴縁40と、縦胴縁40の屋外側に取り付けられるパネルユニット41とを備える。各縦胴縁40は、梁1に固定した固定部材10に、ボルト・ナット等の固定具(図示せず)で固定される。これにより、各縦胴縁40は、柱3に対して位置固定される。なお、縦胴縁40は、溶接やボルト・ナット止め等で柱3に直接固定するようにしてもよい。縦胴縁40の下端部は、L字型プレート等の連結部材31を介して下梁7に固定される。本実施計形態では、連結部材31は螺子によって下梁7に固定されているが、溶接等によって固定されてもよい。
【0051】
パネルユニット41は、図3に示すように、サンドイッチパネル45を上下に複数(図では5枚)並べて連結したものである。サンドイッチパネル45は、2枚の金属板450,451の間に芯材452を介装したパネル材である(図5参照)。サンドイッチパネル45は、サンドイッチパネル22と同様に、上端部に嵌合凹部(図示せず)を備え、下端部に嵌合凸部(図示せず)を備える。そして、嵌合凸部の屋外側には、カバー片230と同様の構成であるカバー片(図示せず)を備える。なお、パネルユニット41は、複数のパネルを上下に連結したものでなく、1枚のパネル材であってもよい。
【0052】
また、本実施形態の壁構造では、上層壁体5は、図1に示すように、縦胴縁50と、縦胴縁50の屋外側に取り付けられるパネルユニット51とを備える。縦胴縁50は、図3に示すように、パネルユニット51の屋内側に左右方向に複数(図では4本)並べて設けられる。各縦胴縁50の下端部は、梁1に固定した固定部材10(図1参照)に、ボルト・ナット等の複数の固定具14で固定される。なお、図示していないが、上層壁体5のパネルユニット51の屋内側には横胴縁が取り付けられる。この横胴縁は、左右横並びの柱3にそれぞれ固定されている。図3に示すように、上層壁体5のパネルユニット51は、その左右両端部が柱3の屋外側に位置する。したがって、上層壁体5は、構造物の躯体に回動不可に固定されている。
【0053】
パネルユニット51は、図3に示すように、横張りされたサンドイッチパネル52を上下に複数(図3には3枚まで図示)並べて連結したものである。サンドイッチパネル52は、2枚の金属板520,521の間に芯材522を介装したパネル材である。サンドイッチパネル52は、サンドイッチパネル22と同様に、上端部に嵌合凹部(図示せず)を備え、下端部に嵌合凸部53を備える。そして、嵌合凸部53の屋外側には、カバー片230と同様の構成であるカバー片530を備える。なお、パネルユニット51は、複数のパネルを上下に連結したものでなく、1枚のパネル材であってもよい。
【0054】
また、本実施形態の壁構造では、下壁パネル70は、2枚の金属板700,701の間に芯材702を介装したサンドイッチパネルである。下壁パネル70は、その下端部に嵌合凸部23と同形状の嵌合凸部703を備える。下壁パネル70は、上端には、嵌合凹部24と同形状の嵌合凹部を有しておらず、パネル固定用部材76の屋外側面に沿って上方に向けて突出した固定片704を備える。固定片704は、パネル固定用部材76の屋外側面に重ねられて固定具35が打ち込まれる。下壁パネル70の上端は、固定片704以外の部分はフラット面となっている。
【0055】
本実施形態の壁構造では、図1に示すように、壁体2が起立姿勢にある状態で、パネルユニット21の上端部の嵌合凹部24が、上層壁体5のパネルユニット51の下端部の嵌合凸部53と凹凸嵌合する。つまり、パネルユニット21をなす複数のサンドイッチパネル22のうち、一番上に位置するサンドイッチパネル22の上端部の嵌合凹部24に、パネルユニット51をなす複数のサンドイッチパネル52のうち、一番下に位置するサンドイッチパネル52の下端部の嵌合凸部53が嵌合する。このとき、一番上に位置するサンドイッチパネル22の上端部の打入部25に打ち込まれた取付具17は、カバー片530によって屋外側に対して隠される。
【0056】
また、本実施形態の壁構造では、図1に示すように、壁体2が起立姿勢にある状態で、壁体2の下端部に取り付けた水切り材79と、下壁パネル70との間には上下隙間が存在する。水切り材79は、壁体2が回動する際に下壁パネル70及びパネル固定用部材76に接触しないように設けられている。
【0057】
水切り材79と下壁パネル70との間の上下隙間は、屋内側にバックアップ材93が配され、このバックアップ材93の屋外側にコーキング剤92を充填することで埋められる。バックアップ材93は、例えば発泡スチロールである。コーキング剤92は、金属製の水切り材79と、下壁パネル70の外殻をなす金属板700とに密着する。
【0058】
また、本実施形態の壁構造では、図5に示すように、壁体2とその側方の固定壁体4との間の左右隙間には目地部材9を備える。目地部材9は、この左右隙間から屋内側へと雨水が浸入することを防止するための部材である。
【0059】
目地部材9は、壁体2に固定される第一目地部材90と、固定壁体4に固定される第二目地部材91とを備える。この第一目地部材90と第二目地部材91とを前後に重ねることで、目地部材9は屋内側への雨水の浸入を防止する機能を果たす。
【0060】
目地部材9の屋内側にはバックアップ材93が配され、このバックアップ材93の屋外側にコーキング剤92が充填される。これにより、壁体2とその側方の固定壁体4との間の左右隙間は埋められて、ここから屋内側へと雨水が浸入されることが防止される。コーキング剤92は、壁体2のパネルユニット21を構成する金属板220と、固定壁体4のパネルユニット41を構成する金属板とに密着される。
【0061】
以上説明した本実施形態の壁構造では、壁体2に所定以上の外力が加わっていない通常状態では、すなわち壁体2が津波を受けていないときには、係止部材80が壁体2の各縦胴縁20の下端部の係止具15を係止して、壁体2を構造物の壁をなす起立姿勢に固定する。
【0062】
そして、本実施形態の壁構造では、壁体2が津波を受けたときに以下のように動作する。
【0063】
すなわち、壁体2が屋外側から所定以上の外力を受けたときに、つまり壁体2が屋外側から津波を受けたときに、図2(a)に示すように、係止用プレート800による壁体2の固定が解除されて、壁体2は屋内側へと回動する。壁体2は、構造物の外壁面の大部分を占めるため、構造物が受ける津波の波圧の大部分を壁体2で受け流すことができ、これにより、構造物の躯体の損傷を抑制できる。
【0064】
また、壁体2が屋内側から所定以上の外力を受けたときには、つまり壁体2が屋内側から津波を受けたときには、図2(b)に示すように、壁体2は屋外側へと回動する。このように壁体2は、屋外側へと流れる津波の波圧の大部分も受け流すことができて、構造物の躯体の損傷を抑制できる。なお、壁体2が屋外側に回動する際、上層壁体5のパネルユニット51の下端部のカバー片530及び嵌合凸部53と、パネルユニット21の上端部の嵌合凹部24は、折れ曲がりはするものの、破壊されにくく、壁体2を起立姿勢に戻した際に、元の嵌めあい状態に戻すことが可能となっている。
【0065】
したがって、本実施形態の壁構造は、構造物が津波を受けたときに、壁体2を回動させて、この津波の波圧を受け流して、構造物の躯体の損傷を抑制することができる。また、本実施形態の壁構造では、壁体2が津波の波圧を受け流すことで壁体2を躯体に取り付けた状態を維持できるので、壁体2が躯体から外れて、壁体2自体が新たな漂流物となることを抑制できる。
【0066】
また、本実施形態の壁構造では、壁体2が屋外側から津波を受けたときに、係止用プレート800を、図2(a)に示すように、壁体2が回動する回動範囲の外側(下側)に退避させることができる。これにより、本実施形態の壁構造では、屋内側に回動した壁体2が起立姿勢に戻る際に、係止用プレート800が邪魔になりにくい。
【0067】
また、本実施形態の壁構造では、壁体2を暖簾状に回動するものとしたことで、壁体2は津波による外力を受けていない状態では、壁体2の自重によって、構造物の壁をなす起立姿勢へと回動しようとする。これにより、壁体2は、津波が引いた後には、元の構造物の壁をなす起立姿勢へと戻るものとなっている。
【0068】
また、本実施形態の壁構造では、壁体2を、2枚の金属板の間に芯材を充填したサンドイッチパネル22を外壁パネルとして備えるものとしたことで、津波の波圧によって壁体2が回動せずに破損してしまうことを抑制できる。例えば、壁体2の外壁パネルが、ALCパネル等であった場合、津波の波圧によって壁体2が回動せずに破損するおそれがある。
【0069】
また、本実施形態の壁構造では、壁体2のパネルユニット21の上端の高さ位置が、壁体2の回動中心である連結具12を設けた部分と略同じ高さとなるようにパネルユニット21を縦胴縁20に取り付けている。そのため、パネルユニット21は、縦胴縁20の回動を邪魔しにくいものとなっており、回動の際に折れ曲がりにくい。
【0070】
また、本実施形態の壁構造では、一番下に位置するサンドイッチパネル52は、その下端部が縦胴縁50に固定されていない。そのため、壁体2が屋内側に回動するときに、上層壁体5の一番下に位置するサンドイッチパネル52の下端部は、縦胴縁50から屋外側に浮き上がり可能である。これにより、壁体2が回動するときに、サンドイッチパネル22の嵌合凹部24と、サンドイッチパネル52の嵌合凸部53は、破損しにくい。
【0071】
また、本実施形態の壁構造では、壁体2と固定壁体4との間に配される目地部材9を、第一目地部材90と第二目地部材91とで構成している。そのため、壁体2が回動する際には、目地部材9は、第一目地部材90と第二目地部材91とに分かれることができ、壁体2の回動の邪魔をしにくいものとなっている。
【0072】
また、本実施形態の壁構造では、壁体2の下端に取り付けられる水切り材79を、壁体2が回動する際に下壁パネル70及びパネル固定用部材76に接触しないように設けている。そのため、本実施形態の壁構造では、水切り材79が壁体2の回動の邪魔をしにくいものとなっている。
【0073】
なお、上述した第一実施形態の壁構造では、下梁7に係止部材80とパネル固定用部材76を別々に設けた例について説明したが、係止部材80にパネル固定用部材76の機能を持たせてもよい。
【0074】
すなわち、図6及び図7に示す第一実施形態の変形例の壁構造では、係止部材80のL字型プレート等のベース71にパネル固定用部材76を一体に設けている。なお、変形例の構成のうち、既述した第一実施形態と同様の構成については、図中に同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0075】
この変更例では、パネル固定用部材76は、少なくともベース71の縦片部74の屋外側の端部から側方(右方)に向けて突出するパネル固定壁760を備える。パネル固定用部材76は、縦胴縁20と同様に側方(右方)に向けて開口するリップ溝形鋼であってもよいし、上方に向けて開口する角筒状であってもよいし、側方(右方)に向けて開口する有底角筒状であってもよい。
【0076】
このようにベース71にパネル固定用部材76を一体に設けることで、下梁7に対して係止部材80とパネル固定用部材76とを一度に取り付けることができる。
【0077】
また、この変形例では、パネル固定用部材76の配置を、縦胴縁20の略真下に位置させている。そのため、パネルユニット21への取付具17の打ち込み箇所と、下壁パネル70への固定具35の打ち込み箇所とを屋外側から視て上下に揃えることができて、施工しやすい。
【0078】
続いて、図8〜13に示す本発明の第二実施形態の壁構造について説明する。第二実施形態の壁構造のうち、第一実施形態の壁構造と同様の構成については図中に同じ符号を付けて詳しい説明を省略し、異なる構成について詳しく説明する。
【0079】
第二実施形態の壁構造では、図10に示すように、固定手段8は、固定壁体4に対して、壁体2を固定するものとなっている。
【0080】
第二実施形態の壁構造では、壁体2の各縦胴縁20は、図8及び図10に示すように、各縦胴縁20の下方に配される1本の繋ぎ材26に固定されている。各縦胴縁20と繋ぎ材26とは、L字型プレート等からなる連結部材43によって固定されている。連結部材43は、各縦胴縁20の側面にボルト・ナット等の固定具44によって固定され、繋ぎ材26の上面にボルト・ナット等の固定具44によって固定される。なお。連結部材43の縦胴縁20及び繋ぎ材26への固定手段は、その他の手段であってもよい。
【0081】
繋ぎ材26の屋外側には、パネル受け77及び水切り材78が螺子等の固定具35によって取り付けられる。パネルユニット21は、各縦胴縁20の屋外側と繋ぎ材26の屋外側に配される。パネルユニット21は、その下端部がパネル受け77によって支持されて、屋外側への浮き上がりが防止される。
【0082】
繋ぎ材26は、壁体2が構造物の外壁をなす起立姿勢のときに、基礎6上に載置される。つまり、繋ぎ材26は、基礎6に対して固定されていない。
【0083】
第二実施形態の壁構造では、固定壁体4の各縦胴縁40は、図10に示すように、各縦胴縁20の下方に配される1本の横胴縁42に固定されている。横胴縁42は、角筒状の鋼材であり、横方向を長手方向とする。横胴縁42は、繋ぎ材26とは別部材である。各縦胴縁40と横胴縁42とは、L字型プレート等からなる連結部材43によって固定されている。連結部材43は、各縦胴縁40の側面にボルト・ナット等の固定具44によって固定され、横胴縁42の上面にボルト・ナット等の固定具44によって固定される。なお、連結部材43は、溶接等のその他の手段で縦胴縁40及び横胴縁42に固定されてもよい。また、各縦胴縁40は、横胴縁42に溶接等によって直接固定されてもよい。パネルユニット41は、各縦胴縁40の屋外側及び横胴縁42の屋外側に配される。
【0084】
第二実施形態の壁構造では、図10及び図12に示すように、固定手段8は、繋ぎ材26の両側端部の開口に嵌め込んで取り付けられる溝形成部材802と、固定壁体4の横胴縁42の側端部の開口に嵌め込んで取り付けられる被係止部材801とを備える。被係止部材801は、溝形成部材802の係止溝88に係止される。
【0085】
被係止部材801は、固定壁体4の横胴縁42の側端部の開口に嵌め込んで取り付けられる台部87と、この台部87から壁体2に向けて突出する係止用凸部86とを備える。係止用凸部86は、丸棒状である。
【0086】
溝形成部材802は、図12及び図13に示すように、上下一対のケース83と、各ケース83に収容される可動部材84と、可動部材84をケース83の底面から離れる方向に付勢する付勢部材85を備える。付勢部材85は、ケース83に対して可動部材84を付勢して、可動部材84の一部をケース83の外部へ突出させる。可動部材84は、山部と谷部とを有する波型部材である。
【0087】
付勢部材85は、本実施形態では、コイルバネである。ケース83及び可動部材84はそれぞれ、付勢部材85の上下両端部が嵌まり込む円柱状の嵌め込み部830,840を備える。この嵌め込み部830,840に付勢部材85の上下両端部を嵌め込むことで、各可動部材84はそれぞれ、ケース83の底面に対して直交する方向に安定して付勢される。
【0088】
上下一対の可動部材84は、付勢部材85によって互いに近づく方向に付勢されている。この上下一対の可動部材84間に係止溝88が形成される。係止溝88は、上下一対の可動部材84間の距離である溝幅が拡縮自在なものとなっている。
【0089】
壁体2は、係止用凸部86が、図13に示すように、係止溝88によって上下から挟持されることで係止されて、固定壁体4に対して固定される。係止溝88のうち、上下一対の可動部材84の谷部間に係止用凸部86は係止される。ここで、付勢部材85は、係止溝88による係止用凸部86の係止が、壁体2が津波を受けていない通常状態では外れることがないような付勢力を備えたものが用いられる。つまり、壁体2が自然の風からの外力を受けた程度では、係止溝88による係止用凸部86の係止は外れない。
【0090】
壁体2が津波を受けたときには、係止用凸部86によって少なくとも一方の可動部材84が、他方の可動部材84から離れる方向に押し戻されて、係止溝88の溝幅が広がる。これにより、壁体2は、津波を受けたときには、固定手段8による固定が解除されて、屋外側または屋内側へ回動可能となる。
【0091】
本実施形態の壁構造では、溝形成部材802は、図10に示すように、係止溝88が屋外側に露出するように設けられる。本実施形態の壁構造では、パネルユニット21の係止溝88の屋外側に位置する箇所に、切り欠き210を設けて、係止溝88を屋外側に露出させている。なお、図示はしていないが、溝形成部材802をパネルユニット21の側端よりも側方に突出するように繋ぎ材26に取り付けて、係止溝88を屋外側に露出させるようにしてもよい。
【0092】
以上説明した第二実施形態の壁構造では、壁体2に所定以上の外力が加わっていないとき、つまり、壁体2が津波を受けていない通常状態では、係止用凸部86が係止溝88によって係止されて、壁体2は構造物の壁をなす起立姿勢で固定される。
【0093】
そして、壁体2に屋外側から所定以上の外力が加わったとき、つまり、壁体2が屋外側から津波を受けたときには、係止用凸部86が少なくとも一方の可動部材84に押し当たって、係止溝88を押し拡げて、係止溝88による係止用凸部86の係止が外れる。これにより、壁体2は、固定手段8による固定が解除されて、図9(a)に示すように、屋内側に回動する。係止溝88は、係止用凸部86が係止溝88から外れた後、溝幅が自動的に狭まる。
【0094】
このように壁体2が屋内側に回動した後、壁体2が屋外側へ流れ出す津波を受けたときには、係止用凸部86は可動部材84を押しながら係止溝88内を通過して、構造物の屋外側へと回動することができる。
【0095】
なお、壁体2が初めに受ける津波からの外力が屋内側からである場合、係止用凸部86が少なくとも一方の可動部材84に押し当たって、係止溝88を押し拡げて、係止溝88による係止用凸部86の係止が外れる。これにより、壁体2は、固定手段8による固定が解除されて、図9(b)に示すように、屋外側に回動する。
【0096】
第二実施形態の壁構造では、津波が引いた後は、津波から受ける外力程度の力で、係止用凸部86を可動部材84に押し当てることで、壁体2を起立姿勢に戻すことができる。
【0097】
また、第二実施形態の壁構造では、壁体2を躯体に対して直接固定するのではなく、固定壁体4を介して間接的に固定するようにしたことで、固定手段8にかかる津波の波圧が躯体に直接伝わることを抑制できて、固定手段8によって躯体が破損することを抑制できる。
【0098】
続いて、図14に示す第三実施形態の壁構造について説明する。第三実施形態の壁構造のうち、第二実施形態の壁構造と同様の構成については図中に同じ符号を付けて詳しい説明を省略し、異なる構成について詳しく説明する。
【0099】
図14(a)は、第三実施形態の壁構造の下端部を屋外側から視た図であり、壁体2のパネルユニット21、固定壁体4のパネルユニット41、固定壁体4の縦胴縁40、及び柱3に設けられる取付片33の図示を省略した図である。
【0100】
第三実施形態の壁構造では、固定手段8は、躯体である柱3に対して、壁体2を固定するものとなっている。
【0101】
第三実施形態の壁構造では、固定壁体4は、柱3に溶接等で固定された取付片33に縦胴縁40がボルト・ナット等の固定具46で固定されて、柱3に取り付けられている。固定壁体4は、下端部に横胴縁42を有しておらず、縦胴縁40が基礎6まで延びている。また、壁体2の繋ぎ材26は、基礎6との間に上下隙間が形成されるように、壁体2は梁1に対して回転自在に吊り支持されている。
【0102】
第三実施形態の壁構造では、図14(a)及び図14(b)に示すように、固定手段8は、躯体のうち壁体2の側方に位置する箇所、つまり柱3から壁体2に向けて突出する固定用プレート63と、壁体2から前記箇所(柱3)に向けて突出する固定板60と、上下に重なった固定用プレート63と固定板60とを固定するボルト65及びナット66と、を備える。
【0103】
壁体2の繋ぎ材26の側端部の開口には、台部61が溶接されている。台部61からは側方に向けて(柱3に向けて)固定板60が突出している。固定板60は、ボルト65が挿入される挿入孔62を備える。挿入孔62は、固定板60に上下方向に貫通するとともに、屋外側に向けて開口する。
【0104】
柱3には、固定用プレート63が溶接等で固定されている。固定用プレート63は、平面視H字状の柱3のうち側方に向けて開口する各溝32にそれぞれ1つずつ嵌め込まれて溶接されて固定されている。固定用プレート63には、挿入孔62に挿入されたボルト65が挿入される挿入孔64を備える。
【0105】
第三実施形態の壁構造では、壁体2が前記起立姿勢にあるときに、固定板60が固定用プレート63上に重なって、挿入孔62と挿入孔64とが上方から視て一致する。この挿入孔62及び挿入孔64に下方からボルト65を挿入し、このボルト65の上端部にナット66を堅く締めることで、固定板60と固定用プレート63とは、ボルト65の頭部とナット66とで上下から押さえつけられ、ボルト65及びナット66の摩擦力によって固定される。ここで、ボルト65及びナット66による摩擦力は、壁体2が自然からの風による外力を受けた程度では、固定板60が固定用プレート63との固定位置からずれないような強さとしている。
【0106】
第三実施形態の壁構造では、ボルト65に対してナット66を螺子締めするといった簡単な構造で、壁体2を躯体である柱3に対して固定することができる。
【0107】
上述した第三実施形態の壁構造では、構造物が屋外側から津波を受けたときに、ボルト65とナット66による締め付け力を超える力が固定板60へとかかることで、固定板60は、固定用プレート63との固定位置から屋内側へと回動して、津波の波圧を受け流すことができる。
【0108】
ここで、第三実施形態の壁構造では、挿入孔62を屋外側に向けて開口するように設けているため、壁体2の屋内側への回動に伴って固定板60が屋内側へと移動するときに、固定板60は固定用プレート63との固定位置から屋内側へと抜け出しやすくなっている。
【0109】
また、第三実施形態の壁構造では、構造物が屋内側から津波を受けたときに、ボルト65とナット66による締め付け力を超える力が固定板60へとかかることで、固定板60は、固定用プレート63との固定位置から屋外側へと回動して、津波の波圧を受け流すことができる。
【0110】
ここで、第三実施形態の壁構造では、固定用プレート63の挿入孔64を屋外側に向けて開口するように設けているため、壁体2の屋外側への回動に伴って固定板60が屋外側へと移動するときに、固定板60は、固定用プレート63との固定位置から屋外側へと抜け出しやすくなっている。
【0111】
なお、第三実施形態の壁構造では、ボルト65は壁体2の回動の際、破損しにくいものとなっている。
【0112】
続いて、図15に示す第四実施形態の壁構造について説明する。第四実施形態の壁構造のうち、第三実施形態の壁構造と同様の構成については図中に同じ符号を付けて詳しい説明を省略し、異なる構成について詳しく説明する。
【0113】
第四実施形態の壁構造は、第三実施形態の壁構造とは、挿入孔62及び挿入孔64の形状が異なる。
【0114】
第四実施形態の壁構造では、挿入孔62及び挿入孔64は、図15(a)及び図15(b)に示すように、丸孔状である。つまり、第四実施形態の壁構造では、挿入孔62及び挿入孔64は、屋外側に向けて開口していない。なお、挿入孔62及び挿入孔64は、角孔状であってもよい。
【0115】
第四実施形態の壁構造では、挿入孔62及び挿入孔64にボルト65を下方から挿入して、このボルト65の下端部にナット66を堅く締めることで、固定板60と固定用プレート63とは、ボルト65の頭部とナット66とで上下から押さえつけられ、ボルト65及びナット66の摩擦力及びボルト65の剪断強度によって固定される。ここで、ボルト65及びナット66による摩擦力及びボルト65の剪断強度は、壁体2が自然からの風による外力を受けた程度では、固定板60が固定用プレート63との固定位置からずれないような強さとしている。ボルト65の剪断強度は、ボルト65の軸部の太さや材質によって設定される。
【0116】
第四実施形態の壁構造では、ボルト65に対してナット66を螺子締めするといった簡単な構造で、壁体2を躯体である柱3に対して固定することができる。
【0117】
第四実施形態の壁構造では、構造物が屋外側から津波を受けたときに、固定板60が固定用プレート63と重なる固定位置から屋内側にずれることで、固定手段8であるボルト65が破壊されて、固定板60と固定用プレート63との固定が解除されて、壁体2が屋内側へと回動することで津波の波圧を受け流すことができる。
【0118】
また、第四実施形態の壁構造では、構造物が屋内側から津波を受けたときに、固定板60が固定用プレート63と重なる固定位置から屋外側にずれることで、固定手段8であるボルト65が破壊されて、固定板60と固定用プレート63との固定が解除されて、壁体2が屋外側へと回動することで津波の波圧を受け流すことができる。
【0119】
なお、第四実施形態の壁構造では、ボルト65の剪断強度だけで、固定板60と固定用プレート63とを固定することもできる。つまり、ナット66はボルト65に堅く締めなくてもよい。このようにすることで、ボルト65の軸部の太さや材質を設定することで、固定板60を固定用プレート63に対して固定することができる。
【0120】
以上まとめると、本発明の第一乃至第四実施形態の壁構造(第一実施形態の変更例を含む)では、構造物の躯体(梁1等)に壁体2を取り付けた壁構造であって、壁体2の上端部は、前記躯体(梁1等)に回動自在に取り付けられている。壁体2は、躯体に対して固定手段8により固定されることで構造物の壁をなす起立姿勢となり、壁体2に所定以上の外力が加わったときに、固定手段8による固定が解除されて回動自在な状態となるように設けている。
【0121】
本発明の第一乃至第四実施形態の壁構造では、以上のように、構造物の躯体に壁体2を回動自在に取り付けることで、構造物が津波を受けたときに、壁体2を回動させて、津波の波圧を受け流すことができる。また、本発明の第一乃至第四実施形態の壁構造では、津波を受けていない通常時には、固定手段8によって壁体2を躯体に対して固定することで、壁体2を構造物の壁をなす起立姿勢とすることができ、これにより壁体2を構造物の壁として機能させることができる。以上のように、本発明の第一乃至第四実施形態の壁構造では、津波を受けたときには、津波の波圧を受け流して、構造物の躯体の損傷を抑制することができる。
【0122】
また、本発明の第一実施形態及びその変更例の壁構造では、固定手段8は、躯体のうち壁体2の下方部位(下梁7)に設けられる係止部材80を備える。係止部材80は、壁体2に所定以上の外力が加わっていない状態では、壁体2の下端部を係止して、壁体2を前記起立姿勢で固定し、壁体2に所定以上の外力が加わったときには、壁体2の下端部の係止を解除して、壁体2が回動する回動範囲の外側まで退避可能となるように設けたものである。
【0123】
このように係止部材80を、壁体2の固定を解除した状態では、壁体2の回動範囲の外側に退避可能としたことで、第一実施形態及びその変更例の壁構造では、壁体2に外力が加わらなくなったときに壁体2が起立姿勢に戻ることや、屋外側または屋内側に回動した壁体2に前回とは反対方向に外力が加わった際に壁体2がその方向に回動することを、係止部材80が邪魔することを防止できる。
【0124】
また、本発明の第二実施形態の壁構造では、躯体のうち壁体2の側方箇所(柱3)に固定される固定壁体4を備え、固定手段8は、固定壁体4に対して壁体2を固定するものである。
【0125】
このように固定手段8によって、壁体2を躯体(柱3)に直接固定するのではなく、躯体に固定した固定壁体4に壁体2を固定するようにしたことで、第二実施形態の壁構造では、壁体2が受ける所定以上の外力が固定手段8を介して躯体に直接伝わることを抑制することができ、躯体の損傷を抑制することができる。
【0126】
また、本発明の第三及び第四実施形態の壁構造では、固定手段8は、躯体のうち壁体2の側方に位置する箇所(柱3)から壁体2に向けて突出する固定用プレート63と、壁体2から前記箇所(柱3)に向けて突出する固定板60と、上下に重なった固定用プレート63と固定板60とを固定するボルト65及びナット66と、を備える。
【0127】
このような構成とすることで、第三及び第四実施形態の壁構造では、躯体に設けた固定用プレート63に対して、壁体2に設けた固定板60を重ねて、ボルト65及びナット66で固定するといった簡単な施工で、回動自在な壁体2を躯体に対して固定することができる。
【0128】
また、本発明の第一乃至第四実施形態の壁構造では、壁体2は、2枚の金属板220,221の間に芯材222を充填したサンドイッチパネル22を外壁パネルとして備える。
【0129】
このように壁体2の外壁パネルを外殻が金属製のサンドイッチパネル21とすることで、壁体2は、所定以上の外力を受けたときに、つまり津波を受けたときに、破壊されにくく、壁体2の外壁パネルが新たな漂流物となって、躯体を損傷することを抑制できる。
【0130】
なお、上述した第一乃至第四実施形態の壁構造では、壁体2は、壁体2の上方に位置する梁1に回動自在に取り付けたものであったが、壁体2は、壁体2の側方に位置する柱3の上端部に回動自在に取り付けてもよいし、また柱3に固定された固定壁体4の縦胴縁40に回動自在に取り付けてもよい。
【0131】
また、上述した第一乃至第四実施形態では、構造物の外壁である壁構造について説明したが、構造物の内壁を、所定以上の力がかかったときに、暖簾状に回動するように設けてもよい。
【0132】
また、上述した第一乃至第四実施形態の壁構造では、縦胴縁20は、連結部材11を介して梁1の固定部材10に回動自在に取り付けた例であったが、縦胴縁20は、固定部材10に直接回動自在に取り付けてもよい。その場合、縦胴縁20の上端と、パネルユニット21の上端とを合わせることができて、連結部材11及びパネル取付部材19の構成を省略することができる。
【0133】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0134】
1 梁
2 壁体
4 固定壁体
8 固定手段
22 サンドイッチパネル
60 固定板
63 固定用プレート
65 ボルト
66 ナット
80 係止手段
220 金属板
221 金属板
222 芯材
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