特許第6181395号(P6181395)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181395電動ピペット器具および電動ピペット器具を動作させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181395
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】電動ピペット器具および電動ピペット器具を動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   G01N1/00 101K
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-56662(P2013-56662)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-195431(P2013-195431A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年9月30日
(31)【優先権主張番号】12001933.6
(32)【優先日】2012年3月20日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/613,020
(32)【優先日】2012年3月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/613,537
(32)【優先日】2012年3月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501186645
【氏名又は名称】エッペンドルフ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】カール−フリードリヒ アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】ヤニーネ ヤコビ
(72)【発明者】
【氏名】ペータ− モリトール
(72)【発明者】
【氏名】ペータ− シュミット
【審査官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−316074(JP,A)
【文献】 特開2008−020442(JP,A)
【文献】 特表2010−539489(JP,A)
【文献】 特開2007−327780(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/098437(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0000402(US,A1)
【文献】 特開2009−008464(JP,A)
【文献】 特開2007−240430(JP,A)
【文献】 特表2007−520695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00〜1/44
B01L1/00〜99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペット器具の少なくとも1つの動作モードにしたがって、少なくとも1つの流体の研究室サンプルに対して、少なくとも部分的に電気的に制御されたピペット移液プロセスを行うためのピペット器具(1)であって、
前記ピペット移液プロセスを制御するための電気制御装置(17)であって、該電気制御装置は、前記ピペット移液プロセスを制御するのに用いられる動作パラメータセットによって制御可能であり、該動作パラメータセットは、ユーザが規定することができ、動作モードに関連付けられ、前記ピペット移液プロセスを制御するための少なくとも2つの動作パラメータを各々含み、ユーザは、パラメータ値として前記少なくとも2つの動作パラメータの所望の値を選択すること、および、このようにして少なくともつのパラメータ値を有するパラメータ値セットを決定することによって、前記少なくとも2つの動作パラメータを規定する、電気制御装置(17)と、
ユーザ前記動作パラメータセット規定するための少なくとも1つのオペレータ制御装置(12、13,14a、14b)と、
なくとも1つの前記パラメータ値セットを記憶するための電気記憶装置(18)と、を備える、ピペット器具において、
前記電気制御装置(17)は、前記記憶装置(18)内のこの動作モードに関する少なくとも1つの履歴パラメータ値セットとして、ユーザによって決定された前記少なくとも1つのパラメータ値セットを自動的に記憶するように構成され、
前記電気制御装置は、ユーザが前記パラメータ値セットを選択した後に、ユーザによるさらなる関与を要することなく、該パラメータ値セットの自動記憶を行うように構成され、
前記電気制御装置は、この動作モードに関する前記動作パラメータが変更された後に、少なくとも1つの同一の前記ピペット移液プロセスの後続の制御のために、該動作モードに関する、自動的に記憶された前記少なくとも1つの履歴パラメータ値セットを、前記記憶装置(18)から再び提供するように構成されていることを特徴とする、ピペット器具。
【請求項2】
前記電気制御装置は、前記ピペット移液プロセスが少なくも1回は完了した後に、ユーザによるさらなる関与を要することなく、前記パラメータ値セットの自動記憶を行うように構成されている、請求項1に記載のピペット器具。
【請求項3】
前記記憶装置は、ユーザが各々に提供されかつユーザが各々選択することが可能である、N1個の履歴パラメータ値セットからなる少なくとも1つのコレクションを記憶するために使用される、請求項1または2に記載のピペット器具。
【請求項4】
前記ピペット器具は、N1個の前記履歴パラメータ値セットからなる前記コレクションをN2個記憶ることを指示するように構成されており、
前記パラメータ値セットの前記コレクションの各々は、特定の動作モードに関連付けられ、
ユーザは、各々の前記コレクションを提供され、コレクションから前記パラメータ値セットを選択可能である、請求項に記載のピペット器具。
【請求項5】
前記履歴パラメータ値セットのそれぞれのコレクションを、ユーザに対して表示することができる表示装置(5)を備え、
履歴パラメータ値セットのコレクションは、ユーザのそれぞれの要求によって、概要としてユーザに対して表示され、および、前記オペレータ制御装置のオペレータ制御要素の操作によって表示され、
前記ピペット器具は、ユーザがこのリストから所望のパラメータ値セットを選択してオペレータ制御装置の単一の操作によって動作パラメータセットとして前記所望のパラメータ値セットを設定することを可能にするように構成されている、請求項またはに記載のピペット器具。
【請求項6】
前記オペレータ制御装置は、可変的な機能を有する少なくとも1つのオペレータ制御要素、および、プログラム可能なオペレータ制御要素を有し、
前記プログラム可能なオペレータ制御要素の機能は、ユーザプログラム可能である、請求項1からのいずれか項に記載のピペット器具。
【請求項7】
前記ピペット器具は、表示装置(5)を備えるとともに、該ピペット器具内に記憶された、少なくとも部分的に予め定義されている表示ページのうち複数を表示することが可能であり、
可変的な機能を有する前記オペレータ制御要素は、表示された前記表示ページに基づく予め定められた機能の各々を有する、請求項1からのいずれか項に記載のピペット器具。
【請求項8】
可変的な機能を有する少なくとも1つの前記オペレータ制御要素の機能が、前記表示装置における履歴パラメータ値セットの表示の機能である、請求項5から7のいずれか1項に記載のピペット器具。
【請求項9】
少なくとも1つのプログラム可能な前記オペレータ制御要素は、ユーザによってプログラムされることが可能であり、
前記オペレータ制御要素の動作は、
履歴パラメータ値セットのコレクションをユーザに対して表示することができるか、または、
ユーザに対して少なくとも1つの他の情報断片を表示することができる請求項1からのいずれか項に記載のピペット器具。
【請求項10】
前記ピペット器具および前記制御装置の少なくとも一方は、
履歴パラメータ値セットの自動記憶を、ユーザによって起動および停止し、または、
履歴パラメータ値セットの自動記憶を、ユーザによって起動もしくは停止することを可能とするように構成されている、請求項1からのいずれか項に記載のピペット器具。
【請求項11】
表示装置(5)と、時間記録装置とを備え、
N1個のパラメータ値セットが時系列的に分類され、時系列的に分類された形で表示される、請求項1から10のいずれか項に記載のピペット器具。
【請求項12】
表示装置と、計数装置とを備え、
前記計数装置は、それぞれ、特定の履歴パラメータ値セットの使用の回数N3を計数するとともに、該回数N3をピペット器具内の記憶装置に記憶し、
N1個のパラメータ値セットは、前記回数N3にしたがって分類され、時系列的に分類された形で表示される、請求項1から11のいずれか項に記載のピペット器具。
【請求項13】
ピペット器具(1)の少なくとも1つの動作モードにしたがって、少なくとも1つの流体の研究室サンプルに対するピペット移液プロセスを制御するための、電気制御装置とオペレータ制御装置とを有する、請求項1から12のいずれか項に記載のピペット器具を動作させるための方法であって、
前記ピペット器具のユーザによって、前記ピペット移液プロセスを制御するのに用いられる動作パラメータセットを規定するステップであって、前記動作パラメータセットは、動作モードに関連付けられ、前記ピペット移液プロセスを制御するための少なくともつの動作パラメータを各々含み、ユーザは、パラメータ値として前記少なくとも2つの動作パラメータの所望の値を選択すること、および、このようにして少なくとも2つのパラメータ値を有するパラメータ値セットを決定することによって、前記動作パラメータを規定する、ステップと、
ユーザが前記パラメータ値セットを選択した後に、ユーザによるさらなる関与を要することなく、少なくとも1つの前記パラメータ値セットを、動作モードに関する少なくとも1つの履歴パラメータ値セットとして、前記ピペット器具内の電気記憶装置に自動的に記憶するステップであって、前記少なくとも1つのパラメータ値セットは、ユーザによって決定され、動作モードに関する動作パラメータセットに関連付けられている、ステップと、
の動作モードに関する前記動作パラメータセットが変更された後に、この動作モードに関する自動的に記憶された前記少なくとも1つの履歴パラメータ値セットを、少なくとも1つの同一の前記ピペット移液プロセスの後続の制御のために再び提供するステップと、を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ピペット器具、および、電動ピペット器具を動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
こうしたピペット器具は、通常は、医療研究室、生物学的研究室、生物化学的研究室、化学的研究室、および、他の研究室で使用されている。こうしたピペット器具は、小さな体積を有する流体サンプルを移送および搬送するために、特に、こうしたサンプルの厳密な計量のために、研究室で使用されている。ピペット器具においては、例えば、液体サンプルは、例えばピペット先端部のようなピペット容器の中へ減圧によって吸引され、ピペット容器内に貯蔵され、ピペット容器から再び移動先に搬送される。電動ピペット器具は、そのピペット器具の動作に少なくとも影響を与えるかまたはその動作を制御する少なくとも1つの電気動作パラメータを使用する。以下では、電動ピペット器具は、簡略的に術語「ピペット器具」の名称でも呼称される。
【0003】
ピペット器具は、例えば、手持ち型のピペットとディスペンサとを含む。ピペットは、そのアプライアンスに組み合わされておりかつピストンを有することがある移動装置が、特に、ピペットに連結されているピペット容器の中にピペット移液されるべきサンプルを吸引するために使用されることが可能である、アプライアンスを意味すると理解される。エアクッションピペットの場合には、ピストンが、アプライアンスと、ピペット移液されるべきサンプルとに組み合わされており、および、ピストンの端部が、サンプルがピペット容器内に収容される時にピペット容器の中にサンプルを吸引する減圧下にある、アプライアンスとサンプルとの間のエアクッションを有する。ディスペンサは、ピストンを有することがある移動装置が、特に、ディスペンサに連結されているピペット容器の中にピペット移液されるべき体積を吸引するために使用されることが可能であり、および、この移動装置は、例えばピストンがピペット容器内に配置されていることによって、ピペット容器と少なくとも部分的に組み合わされている、アプライアンスを意味すると理解される。ディスペンサの場合には、ピストンの端部が、ピペット移液されるべきサンプルに非常に接近しているか、または、このサンプルに接触しており、このために、ディスペンサは直接変位式ピペットとも呼ばれる。
【0004】
ピペット器具の場合には、単一の操作動作によって搬送されるサンプルの量が、アプライアンスの中に吸引されるサンプルの量と一致することが可能である。あるいは、この代わりに、サンプルの収容量が、再び段階的に搬送されるべき複数の搬送量に一致するように対応が行われることもある。これに加えて、シングルチャンネル型のピペット器具とマルチチャンネル型のピペット器具とに区別され、シングルチャンネル型のピペット器具は、単一の搬送/収容チャンネルだけを含み、および、マルチチャンネル型のピペット器具は、特に複数のサンプルが並行して搬送されるかまたは収容されることを可能にする複数の搬送/収容チャンネルを含む。ピペット器具は、特に、手動で操作されるだろうし、すなわち、移動装置の駆動がユーザによって生じさせられることを含意することが可能であり、および/または、特に電気的に動作させられることもある。移動装置の手動操作の場合には、ピペット器具は、例えば、現在の搬送体積または少なくとも別の動作パラメータが電気的に選択されることによって、電動ピペット器具であることがある。
【0005】
手持ち型の電子ピペットの一例が、Eppendorf AG(Germany、Hamburg)社製のEppendorf XplorerTMであり、手持ち型の電子ディスペンサの一例が、Eppendorf AG(Germany、Hamburg)社製のMultipette streamTMおよびXstreamTMである。
【0006】
電動ピペット器具は、複数の機能が容易に実現されることが可能なので、非電動式のピペット器具を上回る多数の利点を有する。特に、電動ピペット器具は、自動化または半自動化されていることによって、特にプログラム制御されたピペット移液プロセスの遂行が容易化されることを可能にする。適切なピペット移液プログラムを使用してこうしたピペット移液プロセスを制御するための典型的な動作パラメータが、液体を吸引または搬送するための体積と、この吸引または搬送の順序および反復と、これらのプロセスの時間的配分に関するおそらくは時間的なパラメータとに関係する。
【0007】
電動ピペット器具は、1つの動作モードで、または、複数の動作モードで、動作させられるように設計されているだろう。動作モードは、自動的に要求され、選択され、および/または、適用される、ピペット器具のピペット移液プロセスに影響を与えるか制御する、ピペット器具のための1つまたは複数の動作パラメータを含むセットを提供するだろう。動作パラメータの値がどのような結果をもたらすかに関する判断が、ピペット器具を使用する各々の場合にユーザによって行われることが一般的に必要であり、および、これにしたがって動作パラメータが規定されることが必要である。動作パラメータの要求される数に応じて、動作パラメータの規定にユーザが時間を要する。特に、選択されたそのパラメータ値を以前に有していたピペット移液プロセスが、別の動作プロセスが同時に行われ終わった時に、異なる動作パラメータによって再び行われる必要がある(このことは、同一の動作パラメータが再び規定されることが必要とされることを意味する)場合には、この動作パラメータの規定が繰り返される。既知のプログラム可能な電動ピペット器具の場合にこの問題を解決するためのアプローチが、その都度にユーザによって事前プログラムされることが可能であり、特定の名称によって、かつ、おそらくはさらに別の編集ステップを行うことによって、ユーザによってピペット器具内に記憶されることが可能であり、および、このパラメータ値のセットを使用してピペット移液プロセスを動作させるために、必要に応じて、この名称によってユーザによってロードされることが可能である、1組の動作パラメータ値セットを含む。こうした手順は、所望の作業プロセスをかなり厳密にプランニングすることを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ユーザが便利に使用することが可能な電動ピペット器具と電動ピペット器具を動作させる方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、特許請求項第1項に記載のピペット器具と、特許請求項第14項に記載の方法とによって、この目的を達成する。特に、好ましい改良点が従属特許請求項に示されている。
【0010】
ピペット器具の少なくとも1つの動作モードにしたがって、少なくとも1つの流体の研究室サンプルに対して少なくとも部分的に電気的に制御されたピペット移液プロセスを行うための、本発明によるピペット器具は、
− ピペット移液プロセスを制御するための電気制御装置(17)であって、ユーザによって規定されることが可能であり、かつ、動作モードに関連付けられており、かつ、少なくとも1つの動作パラメータをそれぞれに含む、動作パラメータのセットによって制御されることが可能であり、ユーザは、パラメータ値として動作パラメータの所望の値を選択することと、このようにして少なくとも1つのパラメータ値を有するパラメータ値セットを決定することとによって、動作パラメータを規定し、および、このパラメータ値のセットは、特に、この動作モードのパラメータに基づくプログラム機能が使用されることを可能にする電気制御装置(17)と、
− ユーザによる動作パラメータセットの規定のための少なくとも1つのオペレータ制御装置(12、13,14a、14b)と、
− 少なくとも1つのパラメータ値セットを記憶するための電気記憶装置(18)であって、制御装置(17)は、この記憶装置(18)内のこの動作モードに関する少なくとも1つの履歴パラメータ値セットとしてユーザによって決定される少なくとも1つのパラメータ値セットを自動的に記憶するように設計されており、および、特に、この動作モードに関する動作パラメータが変更された後に、少なくとも1つの同一のピペット移液プロセスの後続の制御のために、この動作モードに関する少なくとも1つの自動的に記憶された履歴パラメータ値セットを再び提供するように設計されている電気記憶装置(18)
とを有する。
【0011】
本発明によるピペット器具は、ピペット器具の動作履歴において以前にユーザによってすでに規定されておりかつ特に使用されている少なくとも1つのパラメータ値セットが、そのピペット器具の履歴機能が有効であり特に起動されている場合に、再び規定される必要がないという利点を提供する。このようにして、ユーザは、時間の経過中のピペット器具における多数の編集プロセスを不要にすることが可能である。したがって、本発明のピペット器具は、使用の利便性がより高い。このことは、編集プロセスがユーザとピペット器具との間の多数の追加的なインタラクションを必要とするだけでなく、さらには、かなり不便であり誤りが生じやすい、より複雑でありかつあまり直感的ではないインタラクションも必要とするので、ますます当てはまる。したがって、本発明によるピペット器具の使用はよりいっそう安全でもある。
【0012】
履歴パラメータ値セットの自動記憶の機能、すなわち、電子制御装置が、ユーザによって決定され、および、記憶装置内の動作モードに関する少なくとも1つの履歴パラメータ値セットとしてのこの動作モードに関する動作パラメータセットに関連つけられている、少なくとも1つのパラメータ値セットを自動的に記憶するように設計されているということが、履歴機能とも呼ばれる。ピペット器具および/または制御装置が、履歴パラメータ値セットの自動記憶の機能がユーザによって起動および/または停止させられることを可能にするように設計されていることが好ましい。これは、オペレータ制御装置上の切替要素によって、および/または、ピペット器具に関するソフトウェア変数または動作パラメータを設定することによって実現されることが可能である。
【0013】
この場合には、パラメータ値は、動作パラメータがユーザによる規定に基づいてまたは他の規定の結果として採用する特定の値を表す。
【0014】
記憶装置が記憶領域セクションであることが好ましく、この記憶領域セクションは、制御装置によってアドレス可能であり、および、より大きな記憶領域内において特にソフトウェアによって定義されている。この記憶領域セクションはファイルであるだろう。この記憶領域はデータメモリであるだろう。記憶領域は、ソフトウェアによって管理されておりかつハードウェア記憶装置内に物理的に配置されている非物理的な記憶空間であるだろう。この記憶装置は、ハードウェア記憶装置を有するだろう。このハードウェア記憶装置が永久データ記憶装置であることが好ましく、フラッシュメモリであることが好ましい。ハードウェア記憶装置が、好ましくは、少なくとも100000回の、少なくとも150000回の、または、少なくとも300000回の書き込みサイクルまたは消去サイクルを行うことが可能であるように設計されていることが好ましい。
【0015】
本発明によるピペット器具が、このピペット器具の少なくとも1つの動作モードにしたがって少なくとも1つのピペット移液プロセスを行うために使用されるように設計されていることが好ましい。特に、本発明によるピペット器具が、このピペット器具の複数の動作モードにしたがってピペット移液プロセスを行うために使用されるように設計されていることが好ましい。1つの動作モードでは、特定の動作パラメータのセット(動作パラメータセット)が、各々の場合に応じて提供され、および、この動作モードで行われるピペット移液プロセスを制御するために使用されることが好ましい。一般的に、動作パラメータセットは少なくとも1つの動作パラメータを含み、および、複数の動作パラメータ、すなわち、多数の動作パラメータ、すなわち、2つ以上の動作パラメータを含むことが好ましい。動作パラメータセットが少なくとも3つ、または、少なくともN4個の動作パラメータを含むことが好ましく、この場合に、N4は数{2;50}の範囲内から選択されることが好ましく、または、{2;25}の範囲内から選択されることが好ましく、または、{2;15}の範囲内から選択されることが好ましく、または、{2;8}の範囲内から選択されることが好ましい。
【0016】
ピペット移液プロセスは、典型的には、特定の量のサンプルが、開始容器から、ピペット器具に連結されているピペット容器の中に収容され、その次に、搬送先の容器の中に再び搬送され、特に計量される形で搬送されることに携わるためのピペット移液プログラムを提供する。用途に応じて、1つまたは複数のサンプルの収容および/または搬送は、収容および搬送段階の特定の順序付けられたパターン(特に順番)に従うことが可能であり、時間に基づいて生じることが可能であり、および、タイミングを合わせられることが可能である。ピペット移液プロセスが、所望の仕方でこのプロセスに影響を与えるために使用されることが可能な1組の動作パラメータによって、制御されることが可能であることが好ましい。
【0017】
ピペット移液プロセスを制御するための動作パラメータは、ピペット器具に連結されているピペット容器の中にサンプルが吸引される段階の場合の、または、サンプルがこのピペット容器から搬送される段階の場合の、ピペット移液されるべき体積の選択と、おそらくは、これらの段階の順序と反復と、さらには、おそらくは、これらのプロセスの時間的配分ための時間的パラメータと、特に、さらに、時間の経過に伴ったこうしたプロセスの交番と、特に、吸引または搬送されるサンプルの速度および/または加速とに関係することが好ましい。
【0018】
ピペット移液プロセスは、動作パラメータセットによって明示的に規定されることが好ましい。この動作パラメータセットは、特にピペット器具のオペレータ制御装置を使用して、ユーザによって少なくとも部分的におよび好ましくは完全に選択および/または入力されることが好ましい。
【0019】
しかし、ピペット移液プロセスが動作パラメータセットによって明示的に規定されないことが可能である。さらに、少なくとも1つの動作パラメータが、ユーザによって規定されないで、例えば、例えば既知の1つまたは複数のパラメータとしてピペット器具内に記憶されていることによって、ピペット器具によって規定されることも可能でありかつ好ましい。ピペット器具は、少なくとも1つの動作パラメータを自動的に決定するように設計されてもよい。
【0020】
例えば、ピペット器具は、センサ装置、例えば、外界パラメータ(特に、温度、湿度、または、圧力)を感知するためのセンサを有するだろう。このセンサ装置は、さらに、ピペット器具に連結されているピペット容器のタイプ(特にピペット容器の最大充填体積)を確認するために使用されることが可能な測定を行うように設計されていることがある。このピペット器具は、センサ装置からの測定された体積に基づいて少なくとも1つの動作パラメータを自動的に決定するように設計されてもよい。
【0021】
互いに関連付けられることが好ましい動作モードと動作パラメータが以下で説明され、これらの各々がピペット器具のために提供されることが好ましい。
【0022】
ピペット移液されるべきピペット移液体積を限定するために使用される動作パラメータが提供されることが好ましい。吸引段階中に吸引される吸引体積を限定するために使用される動作パラメータが提供されるだろうし、および/または、搬送段階中に搬送される搬送体積を限定するために使用される動作パラメータが提供されるだろう。
【0023】
直接的に連続したピペット移液体積または間接的に連続したピペット移液体積を規定するために使用される少なくとも1つの動作パラメータが提供されることが好ましく、および、吸引段階および/または搬送段階の回数と、各々の場合に、好ましくは、さらに、それぞれの関連付けられたピペット移液体積、それぞれの関連付けられたピペット移液速度および/または加速度、および/または、これらの段階の間のそれぞれの関連付けられた時間間隔を規定するために使用される、少なくとも1つの動作パラメータが提供されることが好ましい。
【0024】
1つの動作モードが、サンプルの「分注(dispensing)」(DIS)に関係することが好ましい。関連した動作パラメータが、各々の場合に、複数の搬送段階の中の1つの搬送段階中のピペット移液体積に関する個別サンプルの体積と、搬送段階の回数と、1つまたは複数のサンプルが収容される速度と、1つまたは複数のサンプルが搬送される速度であることが好ましい。この分注機能は、マイクロタイタープレートを試薬液体で迅速に満たすことに特に適しており、例えば、ELISAを行うために使用されることが可能である。
【0025】
1つの動作モードが、サンプルの「自動分注」(ADS)に関係することが好ましい。関連した動作パラメータが、各々の場合に、複数の搬送段階の中の1つの搬送段階中のピペット移液体積に関する個別サンプルの体積と、搬送段階の回数と、搬送段階が連続的に一定不変の時間間隔で自動的に行われる期間の持続時間(この期間は、これらの時間の間隔を規定することが可能である)、または、例えば、連続した搬送段階の終了と開始との間の遅延と、1つまたは複数のサンプルが収容される速度と、1つまたは複数のサンプルが搬送される速度であることが好ましい。この分注機能は、マイクロタイタープレートを満たすためにさらによりいっそう利便的に適しており、これは、ユーザが、例えばキーを押すことのような操作動作によって搬送段階を反復的に開始させる必要がなく、むしろ、自動分注が開始された後に時間制御を受けながら搬送が生じるからである。動作モードにおける他のあらゆる動作プログラムと同様に、少なくとも動作要素が中断なしに動作させられている時に、例えば、中断なしにキーが押された状態に保たれている時に、関連したプログラムが実行されるという条件の下で、この自動分注が生じることが可能である。これは、例えば時間窓に対する厳密な注意が必要とされている、長時間の分注作業または反応の場合に有利である。この自動分注機能は、マイクロタイタープレートを満たすためにさらによりいっそう利便的に適しており、これは、ユーザがこの場合に自分自身で単一の搬送段階を開始させる必要がなく、むしろ、これが自動的に行われ、例えばELISAを行うために使用されることが可能であるからである。
【0026】
1つの動作モードが、サンプルの「ピペット移液」(Pip)に関係することが好ましい。関連した動作パラメータが、各々の場合に、ピペット移液されるべきサンプルの体積と、サンプルが収容される速度と、サンプルが搬送される速度であることが好ましい。
【0027】
1つの動作モードが、サンプルの「後続の混合を伴ったピペット移液」(P/Mix)に関係することが好ましい。関連した動作パラメータが、各々の場合に、吸引されるべきサンプルの体積、および/または、搬送されるべきサンプルの体積と、混合体積と、混合サイクルの回数と、サンプルが収容される速度と、サンプルが搬送される速度であることが好ましい。この「後続の混合を伴ったピペット移液」機能は、例えば非常に小さい体積をピペット移液するために推奨される。10μL未満の計量体積が選択される場合には、これがそれぞれの反応液体の中に流し込まれることが推奨される。これは、その液体が搬送され終わった後での混合動作の自動開始によって可能である。混合体積と混合サイクルとが事前に規定される。この動作モードに関する1つの用途が、その物理的属性のために、水よりも計量が難しい液体の搬送であり、その後で、例えば、ピペット容器(特に、ピペット先端部)内のその残留物が、すでに供給され終わっている液体を使用して、ピペット容器またはピペット先端部の外に洗い流される。さらに別の用途は、すでに供給されている液体との搬送液体の急速な混合であるだろう。この動作モードは、例えばDNAをPCR混合溶液と混合する時に有利である。
【0028】
1つの動作モードが、サンプルの「多重収容(multiple admission)」(「逆分注(reverse dispensing)」または吸引に関しては「ASP」とも呼ばれる)に関係することが好ましい。関連した動作パラメータが、各々の場合に、吸引されるべき1つまたは複数のサンプルの体積と、サンプルの個数と、収容の速度と、搬送の速度であることが好ましい。この機能は、一定の量の液体の多重収容と全体量の搬送とのために使用される。この場合には、1つのプロセスにおけるピペット容器の多重充填のための対応はなされない。速度はすべてのサンプルに関して同一である。基本位置から開始して、ピペット器具が、オペレータ制御装置の第1のタイプの動作の結果としてそれぞれの部分体積を収容することが、実行中に行われることが好ましい。最後の部分体積が収容され終わると、ピペット器具が、オペレータ制御装置の第2のタイプの動作によって、ユーザによって確認されることを必要とすることが好ましい警告メッセージを出力することが好ましい。その次にオペレータ制御装置が第2の仕方で作動させられると、全体積が再び搬送される。第1または第2のタイプの動作のために、オペレータ制御装置が、少なくとも2つの操作ボタン、すなわち、「第1のタイプ」のオペレータ制御信号を制御装置に入力するためのボタンと、「第2のタイプ」のオペレータ制御信号を制御装置に入力するためのボタンとを有することが好ましい。オペレータ制御装置は、特に第1のタイプの動作のための第1の信号開始位置「ロッカーアップ(rocker up)」と第2のタイプの動作のための第2の信号開始位置「ロッカーダウン(rocker down)」との間で、特にピペット器具の縦軸線に対して垂直な軸線を中心として旋回させられることが可能な、ロッカー(rocker)を有するだろう。
【0029】
1つの動作モードが、サンプルの「希釈(diluting)」(Dil)(「希釈(dilution)」とも呼ばれる)に関係することが好ましい。関連した動作パラメータが、各々の場合に、サンプル体積と、気泡の体積と、希釈液の体積と、収容の速度と、搬送の速度であることが好ましい。最大希釈液体積=公称体積−(サンプル+気泡)である。この機能は、気泡による分離と全体量の搬送とを伴うサンプルの収容と希釈液の収容のために使用される。速度はすべての部分体積に関して同一である。基本位置から開始して、ピペット器具が、まず最初に希釈液体積を収容し、その次に気泡を収容し、最後にサンプルを収容することが、実行中に行われることが好ましい。各々の収容が、第1のタイプのオペレータ制御装置の動作によって別個に開始されることが好ましい。その次に全体量が一度に搬送される。
【0030】
1つの動作モードが、サンプルの「逐次的な分注(sequential dispensing)」(SeqD)に関係することが好ましい。関連した動作パラメータが、各々の場合に、サンプルの個数(5≦Nmax≦15、好ましくはNmax=10の厳格に規定された最大数Nmaxまでであることが好ましい)と、個別のサンプルの個別の体積と、収容の速度と、搬送の速度であることが好ましい。この機能は、Nmax個のユーザ選択可能な体積を逐次的に分注するために使用され、この場合には、ピペット容器の多重充填が想定されないことが好ましい。速度はすべてのサンプルに関して同一である。サンプルの個数が個別の体積の入力のための主要なパラメータであることが好ましい。体積が入力されると、ピペット器具の最大体積が超えられないかどうかをそのピペット器具が常に検査することを必要とすることが好ましく、場合によっては、警報メッセージが出力される。すべてのパラメータが入力され終わると、オペレータ制御装置が第1の仕方で動作させられ終わった時にピペット器具が全体積を収容し、および、オペレータ制御装置が第2の仕方で動作させられ終わった時にピペット器具がそれぞれの個別的な体積を搬送する。すべての更なるサイクルが通常の分注の形で生じることが好ましい。
【0031】
1つの動作モードが、サンプルの「逐次的な移液(sequential pipetting)」(SeqP)に関係することが好ましい。関連した動作パラメータが、各々の場合に、サンプルの個数(5≦Nmax≦15、好ましくはNmax=10の厳格に規定された最大数Nmaxまでであることが好ましい)と、個別のサンプルの個別の体積と、収容の速度と、搬送の速度であることが好ましい。この機能は、開始前にプログラムされておりかつ固定シーケンスを有する最大でNmax個のユーザ選択可能な体積をピペット移液するために使用される。この動作モードの簡単なオペレータ制御を可能にするために、速度はすべてのサンプルに関して同一であることが好ましい。あるいは、この代わりに、速度が異なる仕方で選択可能であることがある。この機能のサイクルはピペット移液のサイクルに一致する。以前に入力された体積が、プログラムされた順序で処理される。搬送の後に、オペレータ制御要素の動作(例えば、キーを押すこと)が、次のサンプルが収容されることが意図されているかどうか、または、その次のサンプルの前に、ピペット容器が依然として収容するサンプルの「噴出(blowout)」すなわち完全で安全な噴出が過剰の移動によって最初に行われる必要があるかどうか、および/または、ピペット容器が変更される必要があるかどうかを決定するために使用される。
【0032】
1つの動作モードが、サンプルの「逆ピペット移液(reverse pipetting)」(rPip)に関係することが好ましい。関連した動作パラメータが、各々の場合に、個別のサンプルの体積と、収容の速度と、搬送の速度と、カウンタの起動とであることが好ましい。この「rPip」機能の場合には、計量されるべき体積より多くが収容される。これは、ピストンが、噴出のために、すなわち、ピペット移液移動中のピストンの位置を超えていくピストンによる過剰な移動のために、ピストンが下方位置に達するまで、液体の収容の前にピストンを下方に動かすことによって、すなわち、第2のタイプの動作によって、すなわち、押されるキーまたは「ロッカー下降(rocker downward)」によって、実現される。体積の収容の開始時に、ピペット器具は噴出のための体積と選択された体積とを収容する。搬送方向における推進力の遊びを取り除くために、ピペット器具は、再び直ちに搬送される追加の動きを行う。これは分注と同じであるが、最高速度での排除運動の自動搬送を伴って生じることが好ましい。
【0033】
「rPip」動作モードの実行中に、最初に、オペレータ制御装置が第2の仕方で動作させられ、ピペット器具のピストンが噴出のために移動して下方位置で静止状態に留まることが、生じることが好ましい。第2に、オペレータ制御装置が第1の仕方で動作させられ、ピストンが噴出セクションを通過して移動し、および、ピペット移液体積のための動きを介して上方に移動する。第3に、オペレータ制御装置は第2の仕方で動作させられ、ピストンがピペット移液体積のための動きを介して下方に移動し、および、噴出の前に静止状態に留まる。第4に、オペレータ制御装置が再び第2の仕方で動作させられる。ピストンが噴出を生じさせ、下方位置で静止状態に留まる。「第4に」の代わりに、オペレータ制御装置が第1の仕方で動作させられる。ピストンがピペット移液の動きを介して上方に移動する。この「rPip」モードは、高い含有量のタンパク質を含む血漿、血清、または、他の液体をピペット移液することに特に適している。この「ピペット移液」モードは、水性溶液に特に適している。この「rPip」モードは、搬送先の容器への搬送時に気泡の発生を最小化するために湿潤剤を含む液体に特に適している。この液体は、特に、過剰な動き(噴出体積)を伴って収容される。この場合には、過剰な動きは、典型的には搬送体積の一部分ではなく、および、搬送先容器に搬送されないことが好ましい。特に同じサンプルが再び使用される場合には、この過剰な動きは先端部内に残る可能性がある。別の液体が使用される時には、過剰な動きおよび/または好ましくはピペット容器が取り除かれることが好ましい。
【0034】
動作パラメータセットが、所望のピペット移液プロセスを行うために制御プログラムを制御することが好ましい。この制御プログラムは、制御装置の電気回路の形でそれぞれに作られるだろうし、および/または、プログラムコードによって制御可能でありかつプログラム可能であることが好ましい制御装置を制御するのに適している実行可能なプログラムコードによって作られるだろう。
【0035】
ピペット器具が、ユーザによって入力されるパラメータ値を自動的に検査するように、かつ、このパラメータ値をそれぞれの動作パラメータに関する許容された範囲と比較するように、設計されていることが好ましい。ユーザによって入力されたパラメータ値が許容可能な範囲の外にある場合には、この入力は受け入れられないか、または、デフォルト値に設定され、このデフォルト値は、例えば、最小値、最大値、または、最後の受入可能な入力値であるだろう。
【0036】
電気制御装置が、ユーザがこのパラメータ値セットを選択し終えた後にパラメータ値セットの自動記憶を行うように設計されていることが好ましい。この条件に対する代案として、または、この条件に加えて、電気制御装置が、ピペット移液プロセスが少なくとも一度は完全に行われ終わったかまたは一度は厳密に行われ終わった後に、パラメータ値セットの自動記憶を行うように設計されていることが好ましい。履歴機能の実行のこれらの条件が、特に、ユーザによって変更された各々の動作パラメータセットが、偶発的に記憶されることがないことを確実なものにし、むしろ、例えば、不適正に入力された入力または排除された入力が履歴パラメータ値セットの定義の中に含まれないことを確実なものにする。このことが、履歴機能を有するピペット器具の使用をさらに効率的なものにする。
【0037】
オペレータ制御装置のオペレータ制御要素を一度は動作させることによってパラメータ値セットの自動記憶をユーザが確認しなければならないように、対応策がとられることもある。これとは別に、または、好ましくはこの確認オプションなしに、パラメータ値セットの自動記憶が、ユーザによるさらに別の干渉なしに行われることが特に好ましい。最小限のユーザのインタラクションが、履歴機能を有するピペット器具の使用を便利で効率的なものにする。
【0038】
ピペット器具が、ユーザにそれぞれに提供されておりかつユーザがそれぞれに選択することが可能であるN1個の履歴パラメータ値セットの少なくとも1つのコレクションを記憶するために使用されるように記憶装置に指示するように設計されていることが好ましい。特に、制御装置が、ディジタルデータ処理装置、特にCPUおよび/またはデータ記憶装置を有する場合には、このコレクションがファイルまたはファイル構成素として記憶されることが好ましい。このコレクションが、ピペット器具の特定の動作モードに関連付けられていることが好ましい。このコレクションの各パラメータセットが、同一の動作モードにおける異なるピペット移液プロセスを行うために使用されることが好ましい。履歴パラメータ値セットを有するこのコレクションは、さらに、動作モード履歴と呼ばれることも可能である。数N1が、数{1;50}の範囲から選択されることが好ましく、または、{2;50}の範囲から選択されることがより好ましく、または、{2;25}の範囲から選択されることが好ましく、または、{2;15}の範囲から選択されることが好ましく、または、{2;8}の範囲から選択されることが好ましい。数N1が最大数L1よりも小さいように制限されることが好ましく、この最大数L1は上限を限定する。このようにして、ユーザは、過剰に大きい個数の動作パラメータ履歴セットによって混乱させられることがないだろうし、および、ピペット器具の使用がより簡単である。L1は、好ましい範囲{5;50}、{5:25}、より好ましい範囲{5;15}または{8;12}から選択される数である。
【0039】
ピペット器具が、N1個の履歴パラメータ値セットのN2個のコレクションが記憶されるように指示するように設計されていることが好ましく、この場合に、パラメータ値セットの各コレクションは特定の動作モードに関連付けられており、および、ユーザはそれぞれにコレクションを提供され、および、ユーザはそれぞれにこのコレクションからパラメータ値セットを選択することが可能である。履歴パラメータ値セットの動作モード固有のコレクションの提供が、ピペット器具をより便利にし、かつ、使用の効率をより高める。好ましくは、オペレータ制御装置のオペレータ制御要素、特に、同一の制御要素、または、好ましくは別のオペレータ制御要素を、もう一度ユーザが操作することによる選択を後で可能にするために、ピペット器具がこの動作モードである時に、ユーザがオペレータ制御装置のオペレータ制御要素を一度は操作することによって、動作モードの動作モード履歴が表示されることが可能である。数N2が数{1;50}の範囲から選択されることが好ましく、または、{2;50}の範囲から選択されることがより好ましく、または、{2;25}の範囲から選択されることが好ましく、または、{2;15}の範囲から選択されることが好ましく、または、{2;8}の範囲から選択されることが好ましい。N2は50よりも大きいことが可能である。数N2が最大数L2よりも小さいように制限されることが好ましく、この最大数L2は上限を限定する。このようにして、ユーザは、過剰に大きい個数の動作パラメータの履歴セットによって混乱させられることがないだろうし、および、ピペット器具の使用がより簡単である。L2は、好ましい範囲{5;50}、{5;25}、より好ましい範囲{5;15}または{8;12}から選択される数である。
【0040】
この代わりに、特に混合動作モード履歴において、パラメータ値セットのコレクションが2つ以上の動作モードに関連付けられることが可能である。これによって実現されることが可能な効果が、最も新しくおいて使用されたピペット移液プロセスのすべて(少なくともM個)が、単一の混合コレクションにおける新規の選択のためにユーザに対して利用可能にされることが可能であるということである。
【0041】
ピペット器具が、ユーザ従属的なユーザプロファイルを提供するように設計されていることがあり、履歴機能がユーザ従属的な基礎にもとづいて適用され、および、少なくとも1つのユーザ従属的な動作モード履歴が各々のユーザプロファイルの下で自動的に記憶される。
【0042】
ピペット器具が、個別の履歴パラメータ値セット、および/または、N1個の履歴パラメータ値セット、および/または、N1個の履歴パラメータ値セットのN2個のコレクションが、追加的に記憶されることを可能にするように設計されていることが好ましい。これが、ユーザがこれを規定または開始することによって各々の場合にユーザの制御の下で実現されることが可能であることが好ましい。あるいは、この代わりに、これが、例えば、好ましくは提供されたバックアップ機能(特に「履歴バックアップ」とも呼ばれる)が行われる時に、半自動的または自動的に行われることが可能である。この履歴バックアップは、バックアップメモリ内に記憶されているピペット器具内に記憶されている履歴パラメータ値セットを含み、このバックアップメモリから履歴パラメータ値セットが随意にピペット器具に再び転送されることが可能であり、これは「履歴レストア(history restore)」とも呼ばれる。バックアップメモリはピペット器具内の内部メモリであるか、または、ピペット器具の外部メモリであるだろうし、および、特に、有線または無線データインタフェースによって接続されることが可能であることもある。このようにして、例えばユーザによってまたは工場内で作られた「履歴」パラメータ値セットまたはそのコレクションがユーザのピペット器具に遡及的に転送されるように、こうした履歴パラメータ値セットまたはそのコレクションを提供することが可能である。その次に、ユーザは、これらの機能を自分自身で有することなしに、他のユーザまたは工場からの履歴データから直接的に利益を得ることが可能である。こうした機能が、特に、例えば標準的な手順のために、多数のユーザによって動作モードが同じ仕方で使用されるピペット移液プロセスのために有利である。
【0043】
ピペット器具が、単一の履歴パラメータ値セット、および/または、N1個の履歴パラメータ値セット、および/または、N1個の履歴パラメータ値セットのN2個のコレクションからの少なくとも単一(または、複数の、または、各々の)パラメータが、ユーザによって変更されるように、および、特に、この仕方で変更されたデータが自動的に、または、ユーザの指示によって、記憶されるか、または、記憶されないように、設計されていることが好ましい。このことが、履歴パラメータ値セットがより柔軟に使用されることを可能にする。履歴パラメータ値セットのパラメータが変更された後に、この動作モードからのN1個の履歴パラメータ値セットのコレクションがある場合には、特にコレクションのためのこのN1個の履歴パラメータ値セットがユーザに対して表示されかつ選択のために利用可能である順序において変更があることが好ましい。最も新しく変更された履歴パラメータ値セットがN1個のパラメータ値セットのコレクションの先頭に置かれることが好ましく、最も古いパラメータ値セットがそのコレクションから排除されることが好ましい。
【0044】
ピペット器具が、ユーザに対して履歴パラメータ値セットのそれぞれのコレクションを表示するために使用されることが可能な表示装置を有することが好ましく、ユーザの要求に応じて、各々の場合に、履歴パラメータ値セットのコレクションがユーザに対して概要として(特にリストとして)表示され(この機能は「履歴パラメータ値セット表示」と呼ばれる)、および、特に、オペレータ制御装置上のオペレータ制御要素の動作の結果として表示され、および、ピペット器具が、ユーザが、このリストから所望のパラメータ値セットを選択し、これを動作パラメータセットとして設定することを可能にするように設計されていることが好ましく、この動作パラメータセットは、好ましくはオペレータ制御装置の単一の動作によって、ピペット移液プロセスが行われるように制御する。
【0045】
表示装置が、スクリーン、好ましくはカラーディスプレイであることが好ましい。このスクリーンは、入力機能性を有することがあり、および、特にタッチスクリーンであることがある。
【0046】
オペレータ制御装置が、可変的な機能を有する少なくとも1つのオペレータ制御要素を有することが好ましく、このオペレータ制御要素はソフトキーとも呼ばれる。オペレータ制御要素、特にソフトキーは、特にプログラム可能なオペレータ制御要素であることがあり、このオペレータ制御要素の機能は特にユーザによってプログラムされることが可能である。ソフトキーが、ピペット器具の選択された動作モードに依存している動作モード固有の機能を有することが好ましい。
【0047】
ピペット器具が、表示装置と、ピペット器具内に記憶されておりかつ好ましくはスクリーンを満たすように表示装置内に表示されることが可能である複数の少なくとも部分的に事前定義された表示ページとを有することが好ましく、この場合に、可変的機能を有するオペレータ制御要素は、表示された表示ページに基づいて、予め決められた位置にあることが好ましい表示ページ上に示され表示されているそれぞれに予め決められた機能を有する。この機能は、(好ましくは少なくとも1つの、好ましくは各々の、ピペット器具の動作モードにおいて、および/または、表示装置の少なくとも1つの表示ページ上において)、表示装置内の履歴パラメータ値セットの上述の表示機能である。このことは、履歴機能がユーザにとって容易にアクセス可能であることを意味する。
【0048】
ピペット器具および/または制御装置が、履歴パラメータ値セットの自動記憶の機能がユーザによって起動または停止させられるように設計されていることが好ましい。
【0049】
ソフトキー、好ましくは少なくとも1つのプログラム可能なオペレータ制御要素が、その動作が履歴パラメータ値セットのコレクションがユーザに対して表示されることを可能にするように、または、少なくとも1つの他の情報断片がユーザに対して表示されて動作モードの動作パラメータを説明する補助をすることを可能にするように、ユーザによってプログラムされることが可能であることが好ましい。この結果として、ユーザ自身が、そのユーザがこのソフトキーまたはプログラム可能なオペレータ制御要素を使用して履歴機能に対する迅速なアクセスのためにピペット器具を設定することを望むかどうか、または、そのユーザが異なる機能を履歴機能に関連付けることを望むかどうかを選択することが可能である。この履歴機能がユーザによって既に停止させられている時には、この履歴機能がアクセス不可能であることが好ましい。この履歴機能がユーザによって既に起動されている時には、この履歴機能がアクセス可能であることが好ましい。
【0050】
ピペット器具が表示装置と時間記録装置とを有し、この場合に、N1個のパラメータ値セットが時系列的に分類されることが可能であり、特に、最も新しく記憶された履歴パラメータ値セットが、リストの最初の位置に、特にリスト上の一番上の位置に、表示されることが可能であることが好ましい。この時間記録装置は水晶発振器を有するだろう。記憶装置がFIFOメモリ(先入れ先出し)の形態であることが好ましく、このことは、先に入力されたデータが再び先に排除される(特に、上書きされる)ということを意味する。この時間記録装置は、特に、制御装置の一部分であるだろう。
【0051】
ピペット器具が、例えば、サンプルの反復搬送、サンプルの反復吸引、または、動作モードの反復使用のような、反復プロセスの回数を計数するために使用されることが可能なカウンタ装置を有することが好ましい。このカウンタ装置は、カウンタとも呼ばれている。
【0052】
ピペット器具が表示装置と計数装置とを有し、この計数装置が特定の履歴パラメータ値セットの使用の回数N3をそれぞれに計数してそれをピペット器具内の記憶装置の中に記憶し、および、N1個のパラメータ値セットが数N3にしたがって分類され、特に、こうした分類された形式で表示されることが可能であり、および、最も大きい使用頻度N3を有する履歴パラメータ値セットが、リストの最初の位置に、特に、リスト中の一番上の位置に表示されることが好ましい。この計数装置はプログラムコードによって具体化され、および/または、カウンタを実現するための電気回路を有するだろう。この計数装置は、特に制御装置の一部分だろう。N3は、計数状態にしたがって、1以上の数であることが可能である。
【0053】
ピペット器具の少なくとも1つの動作モードにしたがって少なくとも1つの流体の研究室サンプルに対するピペット移液プロセスを制御するための、電気制御装置とオペレータ制御装置とを有する、電動ピペット器具、特に、発明的なピペット器具を動作させるための発明的な方法が、
− 動作パラメータセットがピペット器具のユーザによって規定され、この動作パラメータセットがそれぞれに動作モードに関連付けられ、および、それぞれに少なくとも1つの動作パラメータを含み、および、ユーザが、パラメータ値として動作パラメータの所望の値を選択することによって動作パラメータを規定し、および、このようにして、少なくとも1つのパラメータ値を有するパラメータ値セットを決定する段階と、
− ユーザによって決定されておりかつ動作モードに関する動作パラメータセットに関連付けられている少なくとも1つの動作パラメータ値セットが、ピペット器具内の電気記憶装置に、動作モードに関する少なくとも1つの履歴パラメータ値セットとして自動的に記憶される段階と、
− この動作モードに関する動作パラメータセットが変更され終わった後に、この動作モードに関する少なくとも1つの自動的に記憶された履歴パラメータ値セットが、少なくとも1つの同一のピペット移液プロセスの後続の制御のために再び提供される段階
とを含むことが好ましい。
【0054】
本発明による別の好ましい改善点が、ピペット器具とその好ましい改善点の説明に見出されることが可能である。
【0055】
本発明によるピペット器具と本発明による方法との別の好ましい改善点が、図面とその説明とに関連した以下の例示的な実施形態の説明にも見出されることが可能である。例示的な実施形態の同一の構成要素が、異なる説明がこれに与えられない限り、または、文脈が他の形で明示しない限り、基本的に、同一の照合番号によって示されている。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1図1は、本発明によるピペット器具の第1の例示的な実施形態の斜視図を示す。
図2a図2aは、第1の状態と第2の状態とにおける、図1からのピペット器具における記憶装置の記憶領域を概略的に示す。
図2b図2bは、第3の状態と第4の状態とにおける、図1からのピペット器具における記憶装置の記憶領域を概略的に示す。
図3図3(a)は、図1からのピペット器具のディスプレイ上に表示されている複数の表示可能な表示ページからの表示ページ、すなわち、「履歴オプション」表示ページを示し、履歴機能はオフにされている。図3(b)は、図3aからの「履歴オプション」表示ページを示し、履歴機能はオンにされている。
図4図4(a)は、ピペット器具の動作の「ピペット移液」動作モードが選択されかつ履歴機能が停止させられている時の、図1からのピペット器具のディスプレイ上に表示されている表示ページを示す。図4(b)は、ピペット器具の動作の「ピペット移液」動作モードが選択されかつ履歴機能が起動させられている時の、図1からのピペット器具のディスプレイ上に表示されている表示ページを示す。図4(c)は、ピペット器具の動作の「ピペット移液」動作モードが選択されかつ動作モード履歴がユーザによってすでに呼び出されている時の、図1からのピペット器具のディスプレイ上に表示されている「ピペット移液」動作モードの動作モード履歴からの表示ページを示す。
図5図5(a)は、図1からのピペット器具のディスプレイ上に表示されている複数の表示可能な表示ページからの表示ページ、すなわち、「特別」表示ページを示し、履歴機能はオフにされている。図5(b)は、図5(a)からの「特別」表示ページを示し、履歴機能はオンにされている。図5(c)は、ピペット器具の動作の「逐次的な分注」動作モードが選択されかつ動作モード履歴がユーザによってすでに呼び出されている時の、図1からのピペット器具のディスプレイ上に表示されている「逐次的な分注」動作モードの動作モード履歴からの表示ページを示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1は、ピペット器具1,すなわち、電動ピペット1の斜視図を示す。この電動ピペット1では、ピストンの動作が電気的に駆動される。ピペットの様々な動作モードにおける動作の始動が、ピペット1の内側の接続された記憶装置18(この場合にはフラッシュメモリ)を有する電気制御装置17によって電気的に制御される。このフラッシュメモリは少なくとも150000回の書込みサイクルを可能にし、このことは、ピペットの履歴機能がピペットの複数の寿命年数の全体にわたって特に確実に行われることが可能であるということを意味する。
【0058】
このピペットに関する動作パラメータと他の選択とが、オペレータ制御装置とピペットのディスプレイとによってユーザによって制御されることが可能である。このピペットは複数の電気的に制御されたピペット移液プログラムを記憶し、および、各々の動作モードがそれに関連したピペット移液プログラムを有することが好ましい。ピペット移液プログラムは、動作パラメータセットによって明示的に規定されることが可能である。規定された後では、ピペット移液プログラムは、ユーザによって起動されることが可能であり、および、ピペット器具によって自動的に開始される。
【0059】
ピペット1は下部シャフトセクション3と上部セクション4とを有する基本本体2を有し、上部セクション4は、特に、ディスプレイ5とオペレータ制御要素とを有する。シャフトセクション3はピペット器具の縦軸線Aに対して平行に延び、一方、上部セクション4は、軸線Aに対して傾斜して配置されており、かつ、軸線Bに対して平行に延びる。上部セクション4の傾斜配置は、ディスプレイ5が特に人間工学的に使用されることを可能にする。
【0060】
ピペット1は、保持トング(holding tongue)6を有する把持区域7を有し、この保持トング6は、ユーザが意図的にピペット1を保持している時に、ユーザの人差し指上に支持され、一方、把持区域7はユーザの掌の中に収まる。親指が特にリリースボタン8に到達することが可能であり、このリリースボタンは、軸線Aに沿って下方に押される時に、ばね取り付け式のリリーススリーブ9を下方に動かして、ピペット先端部10が上に嵌め込まれているピペット器具の連結コーン11からそのピペット先端部10をリリーススリーブ9が釈放することを生じさせる。あるいは、この代わりに、このリリース機構は電子的に駆動されることが可能である。ピペット1の上部セクション4の横面の各々が、電動ピペットのためのエネルギー貯蔵場所を形成する一体型の蓄電池を充電するために使用される金属接点突起19を有する。
【0061】
オペレータ制御装置(12、13、14a、14b)は、セレクタホイール12と、ロッカー13と、第1のコントロールボタン14aと、第2のコントロールボタン14bとを有する。
【0062】
円板状のセレクタホイール12は、特に上部セクション4の実質的に平らな前部に対して平行に、基本本体2上に回転自在に取り付けられている。セレクタホイール12の位置を認識するための装置が備えられており、この装置は、この場合には、ホールセンサを有し、このホールセンサは、基本本体に対するセレクタホイール12の相対的位置を無接触的に測定するために使用される。セレクタホイール12は、そのセレクタホイールに関する選択可能な位置の数に一致する幾つかの回り止めを有する。特に、これらの回り止めは、セレクタホイール12の選択された位置を示すための標識12aが、上部セクション4の前面上の基本本体上に恒久的に配置されている標識15に方向付けられることが可能であるような回り止めである。
【0063】
カラーディスプレイ5は、ユーザのための中央情報要素として使用される。カラーディスプレイ5は、特に、ピペット1の様々な動作モードを表示し、および、動作パラメータのパラメータ値を表示する。それぞれの表示ページが、第1の制御ボタン14aまたは第2の制御ボタン14bに関連付けられている機能も含む場合に、2つの区域5a、5bの各々が、現在表示中の表示ページ上のどの機能が第1の制御ボタン14aまたは第2の制御ボタン14bに関係付けられているかをユーザに知らせる情報断片を表示する。したがって、制御ボタンの各々が、可変的な機能を有するオペレータ制御要素の形であり、および、その表示された機能との組み合わせで、「ソフトキー」と呼ばれている。これについては後述する。
【0064】
ピペット器具が、ピペット器具の特定の動作モードが選択される時にソフトキーの様々な機能の間で交番するように設計されていることが好ましい。例えば、これは、ソフトキーをダブルクリックすることによって、または、例えば2秒間のような最小限の期間よりも長くソフトキーを押すことによって、実現されることが可能である。
【0065】
ディスプレイ上に表示されておりかつ動作モード固有のレイアウトを有する表示ページが、ピペット1の各々の動作モード毎に提供されることが好ましい。変更されることが可能な選択可能な動作パラメータまたは他のエントリが表示ページ上に提供されている時には、こうしたパラメータまたはエントリが、制御ロッカー13を使用して標識され、および、特に制御ボタン14aを使用して選択されることが可能であり、この場合には、制御ボタン14aは「選択」機能を有し、および、テキスト「選択」がディスプレイ内に位置5aに表示される。ロッカー13を操作することによって、動作パラメータのパラメータ値が変更されるか、または、選択されるか、または、エントリが変更される。
【0066】
ロッカー13は、縦軸線Aに対して垂直に配置されている旋回軸を中心として旋回自在であるように基本本体上に配置されている。ユーザが上部区域13aを押すと、ロッカー13の第1の機能が起動させられ、および、ユーザが下部区域13bを押すと、ロッカー13の第2の機能が起動させられる。ロッカーは、そのロッカーが操作されていない時に機能が起動させられないように取り付けられている。ロッカー13は、特に、ユーザによって上部区域13aが押されている最中にピペット先端部10の中にピペット移液されるようにサンプルを吸引するためのピペットの手動の動作モードにおいて使用され、および、さらには、下部区域13bがユーザによって押されている最中にピペット先端部10からサンプルを搬送するために使用される。
【0067】
ピペット1は様々な動作モードで動作させられることが可能であり、こうした動作モードは既に詳細に上述してある。第1の組の動作モードはセレクタホイール12によって直接的に選択されることが可能であり、および、第2の組の動作モードは表示ページによって選択されることが可能であり、この表示ページは、複数の選択可能なエントリを有する「特別」すなわち「Spc」によって示されており、各々のエントリは動作モードを記述する。
【0068】
ピペット1は、ユーザによって起動させられることが可能な履歴機能を有する。このことは、ピペットの履歴機能が起動させられる時に、動作モード固有の動作モード履歴が各々の動作モード毎に作成されるということを意味する。関連したソフトキー、この場合には14b/5bが、通常は、動作モード固有の表示ページが表示されている時に動作モード履歴を呼び出すためにユーザによって使用されることが可能である。
【0069】
ピペット1は、動作モード履歴のための適切な記憶領域を含む記憶装置を有する。
【0070】
図2aは、第1の状態と第2の状態とにおける、図1からのピペット器具内の記憶装置18の記憶領域を概略的に示す。記憶領域は、最大数Nmax=10(用途に応じて指定される)のエントリを記憶するために適しており、エントリは、動作モードの動作パラメータセットに準拠しているパラメータ値セットに対応する。図2aは、記憶領域がまだ最大レベルまで一杯になっていない場合に関しており、これは、記憶領域内の最大限の可能なエントリにいまだ達していないからである。これは、通常は、例えばピペットが最初に使用される期間において当てはまる。ボックス21が第1の状態における記憶領域を表し、および、ボックス22が第2の状態における記憶領域を表す。
【0071】
ピペット1は、動作モードの表示ページ上の関連した選択によってユーザによって指定され終わっている時(第1の条件)に、および、その後でユーザがこのパラメータ値セットを用いてピペット移液プロセスを行うことを完了させている時(第2の条件)に、パラメータ値セットを自動的に記憶する。2つの条件の一方が満たされない場合には、ユーザによって指定されたパラメータ値セットが動作モード履歴の中に登録されない。
【0072】
図2aにおける第2の状態21では、記憶領域内の動作モード履歴に明確に1つのエントリ「H1」がある。図2aにおける第2の状態22では、記憶領域内の動作モード履歴に明確に2つのエントリ「H2」と「H1」がある。エントリH1はこの動作モードに関する第1のパラメータ値セットを表し、および、エントリH2はこの動作モードに関する第2のパラメータ値セットを表し、H1とH2は少なくとも1つのパラメータ値において異なっており、すなわち、少なくとも1つの動作パラメータにおいて異なっている。動作モード履歴に関するエントリは、時系列的に分類された形で配置されており、最も新しいエントリが一番上に示されている。新たなエントリが作られると、以前のエントリが各々に自動的に1つのレベルだけ下方に移動する。最大数のエントリに達すると、記憶領域がFIFOメモリの仕方で動作することが好ましい。最も古いエントリがリストから削除され、新たなエントリが第1の位置を占め、一方、他の9つのエントリが自動的に1つのレベルだけ下方に移動する。この事例が図2bに示されている。
【0073】
図2bは、第3の状態と第4の状態における、図1からのピペット器具内の記憶装置の記憶領域を概略的に示す。第3の状態23では、記憶領域はエントリで完全に一杯であり、H10は最も新しいエントリであり、H1は最も古いエントリである。新たなエントリが自動的に入力されると、最も古いエントリH1は自動的に消去され、新たなエントリが第1の位置を占め、および、以前のエントリH9からH2が自動的に1つのレベルだけ下方に移動する。この場合には当てはまらないが、動作モード履歴のリストが、少なくとも部分的には、特定のエントリが使用される頻度、すなわち、パラメータ値セットを用いてピペット移液プロセスが行われる回数に基づいて分類されるように対応されていることが好ましい。この頻度は、特に、ピペット器具の使用の限定された期間、または、ピペット器具の使用の期間全体に関係するだろう。
【0074】
図3(a)は、図1からのピペット器具のディスプレイ上に表示されている複数の表示可能な表示ページからの表示ページ、すなわち、「履歴オプション」表示ページを示し、履歴機能はオフにされている。図示されている「履歴オプション」表示ページは、セレクタホイール12と「Opt」位置とによって、および、その後で、ロッカー13を使用してオプションのリストからそれを選択して、「選択」が割り当てられている制御ボタン14aを動作させることによって、到達されることが可能である。この表示ページは、上部の第1のタイトルバー31と、上部の第2のタイトルバー32と、より大きい中央の情報ボックス33と、下部のバー34とを有し、この下部のバー34は、この表示ページに基づいて2つのソフトキー14a、14bに現在割り当てられている機能34a、34bを特に提示する。上部タイトルバー31は、例えば、警報信号と他の信号をユーザに出力するために特に使用されるピペットの一体型スピーカが動作中であるか、および/または、どの音量で動作中であるかを表示するために使用される。上部タイトルバー31は、さらに、バッテリの充電状態も表示する。
【0075】
この「履歴オプション」表示ページがディスプレイ5に表示される時には、テキスト「ヘルプ」がディスプレイ5の区域5aに示され、および、テキスト「終了」がディスプレイ5の区域5bに示される。ロッカー13を操作することによって、ユーザは、履歴機能が停止させられているピペットの第1の状態(「履歴オフ」、図3(a))と、履歴機能が起動させられているピペットの第2の状態(「履歴オン」、図3(b))との間で交番することが可能である。現在の「終了」機能によってソフトキー14aを操作することによって、ユーザはオプションメニューの表示ページ(ここでは示されていない)に戻る。
【0076】
ユーザがこの仕方でピペット1の履歴機能を起動させ終わっている時には、ユーザは、このようにして、動作モード固有の表示ページがそれぞれにエントリ34b「履歴」を保持するように、ソフトキー14aの機能を同時にプログラムし終わっており、このことは、ユーザが、それぞれに、ソフトキー14bによってこの表示ページから開始する動作モード履歴の関連した動作モード固有の表示ページに到達することを意味する。履歴機能が停止させられている場合には、ソフトキー14bが、動作モード固有の表示ページ上に、割り当てられた機能「ヘルプ」を標準として有し、および、ユーザが、関連した動作モードの動作パラメータの説明を伴う表示ページをそれぞれに得るために、上記機能を使用することが好ましい。この意味において、ソフトキー14a、14bの各々は、ユーザによってプログラムされることが可能なオペレータ制御要素である。
【0077】
図4(a)は、ピペット器具の「ピペット移液」動作モードが選択されかつ履歴機能が停止させられている時の、図1からのピペット器具のディスプレイ上に表示されている動作モード固有の表示ページを示す。ソフトキー14aの機能は「編集」であり、これは、表示ページ内の選択可能なボックスが選択されて(ソフトキー14aの採用随意の「選択」機能)ロッカー13によって調整されることを可能にする。
【0078】
図4(b)は、ピペット器具の「ピペット移液」動作モードが選択されかつ履歴機能が起動させられている時の、図1からのピペット器具のディスプレイ上に表示されている動作モード固有の表示ページを示す。
【0079】
図4(c)は、ピペット器具の「ピペット移液」動作モードが選択されておりかつ動作モード履歴がユーザによってすでに呼び出されている時の、図1からのピペット器具のディスプレイ上に表示されている「ピペット移液」動作モードに関する動作モード履歴の動作モード固有の表示ページを示し、これは図4(b)と図4(c)から矢印によって表されている。上部の第2のタイトルバー32では、情報「履歴4」が表示され、これは、一番上から数えてリスト内の4番目の位置にある動作モード履歴からのエントリ、すなわち、動作モード履歴内の4番目に新しいエントリということを示している。この表示ページ上でロッカー13を操作することが、動作モード履歴内の(この場合に)最大10個のエントリの間で段階的に交番する。しかし、ソフトキー14aを操作することが、関連したパラメータ値セットを選択し、および、(図4(b)と同じ仕方で)再び動作モード固有の表示ページに戻し、このことが、関連したパラメータ値セットからのパラメータ値を示す。その次に、後続のピペット移液プロセスがこのパラメータ値セットを使用する。
【0080】
図5(a)は、図1からのピペット器具のディスプレイ上に表示されている複数の表示可能な表示ページからの動作モード固有の表示ページ、すなわち、「特別」表示ページを示し、履歴機能はオフにされている。この表示ページは、第2の組の動作モードを選択するために使用されることが可能である。特に、この表示ページは、履歴機能が起動させられている場合に、ソフトキー14b「履歴」を使用してそれぞれの動作モードに関連付けられている動作モード履歴を直接的に呼び出すために使用されることが可能である。そうでない場合には、下部バー34内の位置34bがヘルプ機能を提供し、および、ユーザは、選択された動作モードの動作パラメータに関する説明を得るために、このヘルプ機能を使用する。
【0081】
図5(b)は図5(a)からの「特別」表示ページを示し、履歴機能はオンにされている。
【0082】
図5(c)は、ピペット器具の「逐次的な分注」動作モードが選択されておりかつ動作モード履歴がユーザによってすでに呼び出されている時の、図1からのピペット器具のディスプレイ上に表示されている「逐次的な分注」動作モードに関する動作モード履歴に関する動作モード固有の表示ページを示す。上部の第2のタイトルバー32には、情報「履歴1」が表示されており、この情報は、一番上から数えてリストの最初の位置にある動作モード履歴からのエントリ、すなわち、動作モード履歴内の最も新しいエントリということを表す。この表示ページ上でロッカー13を操作することが、動作モード履歴内の(この場合に)最大10個のエントリの間で段階的に交番する。しかし、ソフトキー14aを操作することが、関連したパラメータ値セットを選択し、および、(図5(b)と同じ仕方で)再び動作モード固有の表示ページに戻し、このことが、関連したパラメータ値セットからのパラメータ値を示す。その次に、後続のピペット移液プロセスがこのパラメータ値セットを使用する。
【0083】
履歴機能オプションは、利便性が高い仕方で、以前に使用されたパラメータ値セットをユーザに自動的に提供する。したがって、この仕方で指定された動作パラメータセットに基づいたピペット移液プログラムに従う所望のピペット移液プロセスが、便利に選択されることが可能である。したがって、ユーザは、特に、プログラミングによってユーザが個別のピペット移液プログラムを作成し、命名し、記憶する時に特に必要とされる、多数の編集ステップを節減する。このオプションは、履歴機能に追加して、または、履歴機能とは無関係に、ピペット1のために設けられる。さらに、ユーザが、動作パラメータセットに関する特定のパラメータ値セットの選択と設定の後に、必要に応じて個別のパラメータを変更するというオプションも有することが好ましい。ピペット移液プログラムが、このように変更された履歴パラメータ値セットに基づいて一度行われた直後に、このように変更された履歴パラメータ値セットが、新たな履歴パラメータ値セットとして記憶される。
【符号の説明】
【0084】
1 電動ピペット器具
2 基本本体
3 下部シャフトセクション
4 上部セクション
5 ディスプレイ
7 把持区域
8 リリースボタン
9 リリーススリーブ
10 ピペット先端部
11 連結コーン
12 セレクタホイール
13 ロッカー
14a、14b 制御ボタン
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5