特許第6181401号(P6181401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6181401-二元冷凍装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181401
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】二元冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 7/00 20060101AFI20170807BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   F25B7/00 A
   F25B7/00 Z
   F25B1/00 396F
   F25B1/00 396D
   F25B1/00 396K
   F25B1/00 396G
   F25B1/00 396U
   F25B1/00 396T
   F25B1/00 396Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-72802(P2013-72802)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196868(P2014-196868A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】パナソニックヘルスケアホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 峻
(72)【発明者】
【氏名】湯澤 治郎
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−048563(JP,A)
【文献】 特開平05−239448(JP,A)
【文献】 特開平05−287263(JP,A)
【文献】 特開2004−177045(JP,A)
【文献】 特開2001−019944(JP,A)
【文献】 特開平08−067870(JP,A)
【文献】 特開2007−303792(JP,A)
【文献】 特表2012−526179(JP,A)
【文献】 特開2012−145302(JP,A)
【文献】 特開2004−286289(JP,A)
【文献】 特開2008−089220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 7/00
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温側冷凍回路と低温側冷凍回路を備え、前記低温側冷凍回路中の冷媒の凝縮を前記高温側冷凍回路中のカスケードコンデンサを通過する冷媒により行う二元冷凍装置において、
前記低温側冷凍回路中の冷媒として、エタン(R170)と二酸化炭素(R744)とを含有する冷媒組成物を使用し、
前記二酸化炭素(R744)を前記冷媒組成物に対して20質量%以下を加えて、さらに、オイルキャリアとして、n−ペンタンまたはプロパンを前記冷媒組成物の総質量に対して14質量%以下の割合で含有することを特徴とする二元冷凍装置。
【請求項2】
高温側冷凍回路と低温側冷凍回路を備え、前記低温側冷凍回路中の冷媒の凝縮を前記高温側冷凍回路中のカスケードコンデンサを通過する冷媒により行う二元冷凍装置において、
前記低温側冷凍回路中の冷媒として、エタン(R170)とパーフロロエタン(R116)とを混合した共沸混合物と、二酸化炭素(R744)と、を含有する冷媒組成物を使用し、
前記パーフロロエタン(R116)を前記冷媒組成物に対して50質量%以上60質量%以下とし、
前記二酸化炭素(R744)を前記冷媒組成物に対して20質量%以下を加えて、さらに、オイルキャリアとして、n−ペンタンまたはプロパンを前記冷媒組成物の総質量に対して14質量%以下の割合で含有することを特徴とする二元冷凍装置。
【請求項3】
前記 高温側冷凍回路中の冷媒として、ジフロロメタン(R32)、ペンタフロロエタン(R125)、1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)、1,1,3−トリフロロエタン(R143a)の冷媒群からなる非共沸混合物あるいは、それらの冷媒群に1,1,1,2,3−ペンタフロロペンテン(HFO−1234ze)を含むフッ化炭化水素混合冷媒を加えることを特徴とする請求項1または2記載の二元冷凍装置。
【請求項4】
前記高温側冷凍回路中の冷媒として、前記1,1,1,2,3−ペンタフロロペンテン(HFO−1234ze)の替わりに1,1,1,2−テトラフロロペンテン(HFO−1234yf)を含むフッ化炭化水素混合冷媒を加えることを特徴とする請求項1または2記載の二元冷凍装置。
【請求項5】
前記高温側冷凍回路中の冷媒に、オイルキャリアとしてn−ペンタンを前記フッ化炭化水素混合冷媒の総質量に対して6質量%以下の割合で含有する、
請求項3または4に記載の二元冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二元冷凍装置に関するものであり、さらに、詳しくは、地球温暖化係数(Global−warming potential:以下、GWPと称す)が小さく地球に優しい冷媒組成物であり、かつ−80℃という低温を達成でき、冷凍能力や他の性能面でも優れた性能を有する冷媒として使用できる冷媒組成物およびそれを使用した、実際に低温を達成できる二元冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍機の冷媒として用いられているものに、オゾン層を破壊する危険が大きい規制冷媒を使用することなく、−80℃という低温を達成でき、冷凍能力や他の性能面でもR503の代替冷媒として使用できる冷媒組成物およびそれを使用した二元冷凍装置が提案されている(特許文献1参照1)。
この冷媒組成物は、比熱比が高めのトリフルオロメタン(R23)を39重量%、比熱比が低めのヘキサフルオロエタン(R116)を61重量%混合した共沸混合物(R508A、沸点−85.7℃)からなる冷媒組成物あるいは、この共沸混合物と、n−ペンタンまたはプロパンとの混合物からなり、このn−ペンタンまたはプロパンを、トリフルオロメタンとヘキサフルオロエタンの総重量に対して14%以下の割合で混合した冷媒組成物を組成したものであり、オゾン層を破壊する危険が少なく、−80℃という低温を達成でき、冷凍能力や他の性能面でもR503の代替冷媒として使用できるものである。
【0003】
しかし、前記R508AおよびR508BのGWPは、それぞれ13200、13300と大きく、問題となっている。
二酸化炭素(R744)はGWP1と小さいが、圧力の上昇、吐出温度の上昇によるオイルの劣化やスラッジ発生の問題があるため、二酸化炭素に、プロパン、シクロプロパン、イソブタン、ブタンなどの炭化水素類を全体の30から70%程度混合した混合冷媒およびそれを用いた冷凍サイクル装置(特許文献2参照)が提案されている。
また、イソブタン40〜60%、残部がトリフロロメタン(R23)である混合冷媒(特許文献3参照)、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物にプロパンを65%以上混合した混合冷媒(特許文献4参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3244296号公報
【特許文献2】特開2005−15633号公報
【特許文献3】特許第5009530号公報
【特許文献4】特許第4085897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術はプロパンなどの炭化水素類は可燃性であり、かつ冷媒全体の30から70%程度混合しているので、爆発の危険性がある。
本発明の目的は、従来の問題を解決し、GWPが小さく地球に優しい冷媒組成物であって、かつCOPが高く、オイルの劣化やスラッジを引き起こすことがなく、n−ペンタンまたはプロパンをオイルキャリアとして使用すればオイルセパレータを使用するまでもなく圧縮機にオイルを戻すことができ、爆発の危険性がなく、−80℃という低温を達成でき、冷凍能力や他の性能面でも優れた性能を有する冷媒として使用できる冷媒組成物を使用した、実際に低温を達成できる二元冷凍装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために発明者は鋭意研究した結果、例えば、低温側冷媒回路に封入される冷媒として、地球温暖化係数(GWP)が3のエタン(R170)と地球温暖化係数(GWP)が12200のパーフロロエタン(R116)を混合した共沸混合物あるいはさらに地球温暖化係数(GWP)が1の二酸化炭素(R744)を20質量%以下混合した共沸混合物からなる冷媒組成物と、所定量以下のn−ペンタンまたはプロパンとの混合物を使用し、高温側冷媒回路に封入される冷媒として、地球温暖化係数(GWP)が6の1,1,1,2,3−ペンタフロロペンテン(HFO−1234ze)を含むフッ化炭化水素混合冷媒であって地球温暖化係数(GWP)が1500以下である冷媒組成物と、所定量以下のn−ペンタンとの混合物を使用することにより課題を解決できることを見いだし、本発明を成すに至った。
【0007】
前記課題を解決するための請求項1記載の発明は、高温側冷凍回路と低温側冷凍回路を備え、前記低温側冷凍回路中の冷媒の凝縮を前記高温側冷媒回路中のカスケードコンデンサを通過する冷媒により行う二元冷凍装置において、
前記低温側冷凍回路中の冷媒として、エタン(R170)とパーフロロエタン(R116)とを混合した共沸混合物を含有する冷媒組成物を使用し、
前記パーフロロエタン(R116)を前記冷媒組成物に対して50%以上60質量%以下を加えることを特徴とする二元冷凍装置である。
【0008】
請求項2記載の発明は、高温側冷凍回路と低温側冷凍回路を備え、前記低温側冷凍回路中の冷媒の凝縮を前記高温側冷媒回路中のカスケードコンデンサを通過する冷媒により行う二元冷凍装置において、
前記低温側冷凍回路中の冷媒として、エタン(R170)と二酸化炭素(R744)とを含有する冷媒組成物を使用し、
前記二酸化炭素(R744)を前記冷媒組成物に対して20質量%以下を加えることを特徴とする二元冷凍装置である。
【0009】
請求項3記載の発明は、高温側冷凍回路と低温側冷凍回路を備え、前記低温側冷凍回路中の冷媒の凝縮を前記高温側冷媒回路中のカスケードコンデンサを通過する冷媒により行う二元冷凍装置において、
前記低温側冷凍回路中の冷媒として、エタン(R170)とパーフロロエタン(R116)とを混合した共沸混合物と、二酸化炭素(R744)と、を含有する冷媒組成物を使用し、
前記パーフロロエタン(R116)を前記冷媒組成物に対して50質量%以上60質量%以下とし、
前記二酸化炭素(R744)を前記冷媒組成物に対して20質量%以下を加えることを特徴とする二元冷凍装置である。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の二元冷凍装置において、オイルキャリアとして、n−ペンタンまたはプロパンを前記冷媒組成物の総質量に対して14質量%以下の割合で含有することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、高温側冷凍回路と低温側冷凍回路を備え、前記低温側冷凍回路中の冷媒の凝縮を前記高温側冷媒回路中のカスケードコンデンサを通過する冷媒により行う二元冷凍装置において、
高温側冷凍回路中の冷媒として、ジフロロメタン(R32)、ペンタフロロエタン(R125)、1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)、1,1,3−トリフロロエタン(R143a)の冷媒群からなる非共沸混合物あるいは、それらの冷媒群に1,1,1,2,3−ペンタフロロペンテン(HFO−1234ze)を含むフッ化炭化水素混合冷媒を加えることを特徴とする二元冷凍装置である。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の二元冷凍装置において、高温側冷凍回路中の冷媒として、前期1,1,1,2,3−ペンタフロロペンテン(HFO−1234ze)の替わりに1,1,1,2−テトラフロロペンテン(HFO−1234yf)を含むフッ化炭化水素混合冷媒を加えることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項5記載の二元冷凍装置において、前記高温側冷凍回路中の冷媒に、オイルキャリアとしてn−ペンタンを前記フッ化炭化水素混合冷媒の総質量に対して6質量%以下の割合で含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1記載の発明は、高温側冷凍回路と低温側冷凍回路を備え、前記低温側冷凍回路中の冷媒の凝縮を前記高温側冷媒回路中のカスケードコンデンサを通過する冷媒により行う二元冷凍装置において、
前記低温側冷凍回路中の冷媒として、エタン(R170)とパーフロロエタン(R116)とを混合した共沸混合物を含有する冷媒組成物を使用し、
前記パーフロロエタン(R116)を前記冷媒組成物に対して50%以上60質量%以下を加えることを特徴とする二元冷凍装置であり、
地球温暖化係数(GWP)が3のエタン(R170)と地球温暖化係数(GWP)が12200のパーフロロエタン(R116)を混合した共沸混合物を用い、GWPが3のエタン(R170)の沸点は−88.6℃と低く、GWPが12200のパーフロロエタン(R116)の沸点は−78.1℃と低く、その共沸混合物の沸点は−88.8℃と低く、パーフロロエタン(R116)単独の場合よりGWPが半分以下と小さいので地球に優しく、−80℃という低温を達成でき、爆発の危険性がなく、冷凍能力や他の性能面でも優れた性能を有する、という顕著な効果を奏する。
【0015】
本発明の請求項2記載の発明は、高温側冷凍回路と低温側冷凍回路を備え、前記低温側冷凍回路中の冷媒の凝縮を前記高温側冷媒回路中のカスケードコンデンサを通過する冷媒により行う二元冷凍装置において、
前記低温側冷凍回路中の冷媒として、エタン(R170)と二酸化炭素(R744)とを含有する冷媒組成物を使用し、
前記二酸化炭素(R744)を前記冷媒組成物に対して20質量%以下を加えることを特徴とする二元冷凍装置であり、
GWPが3のエタン(R170)の沸点は−88.6℃と低く、GWPが12200のパーフロロエタン(R116)の沸点は−78.1℃と低く、その共沸混合物の沸点は−88.8℃と低く、パーフロロエタン(R116)単独の場合よりGWPが半分以下と小さいので地球に優しく、−80℃という低温を達成でき、冷凍能力や他の性能面でも優れた性能を有する上、二酸化炭素(R744)の添加量が20質量%以下と少ないので、吐出圧力や吐出温度が高くならず、したがってCOPが低下せず、オイルの劣化やスラッジを引き起こすことがなく、爆発の危険性がない、という顕著な効果を奏する。
【0016】
請求項3記載の発明は、高温側冷凍回路と低温側冷凍回路を備え、前記低温側冷凍回路中の冷媒の凝縮を前記高温側冷媒回路中のカスケードコンデンサを通過する冷媒により行う二元冷凍装置において、
前記低温側冷凍回路中の冷媒として、エタン(R170)とパーフロロエタン(R116)とを混合した共沸混合物と、二酸化炭素(R744)と、を含有する冷媒組成物を使用し、
前記パーフロロエタン(R116)を前記冷媒組成物に対して50質量%以上60質量%以下とし、
前記二酸化炭素(R744)を前記冷媒組成物に対して20質量%以下を加えることを特徴とする二元冷凍装置であり、
地球温暖化係数(GWP)が3のエタン(R170)と地球温暖化係数(GWP)が12200のパーフロロエタン(R116)を混合した共沸混合物を用い、GWPが3のエタン(R170)の沸点は−88.6℃と低く、GWPが12200のパーフロロエタン(R116)の沸点は−78.1℃と低く、その共沸混合物の沸点は−88.8℃と低く、パーフロロエタン(R116)単独の場合よりGWPが半分以下と小さいので地球に優しく、−80℃という低温を達成でき、爆発の危険性がなく、冷凍能力や他の性能面でも優れた性能を有する上、二酸化炭素(R744)の添加量が20質量%以下と少ないので、吐出圧力や吐出温度が高くならず、したがってCOPが低下せず、オイルの劣化やスラッジを引き起こすことがなく、爆発の危険性がない、という顕著な効果を奏する。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の二元冷凍装置において、オイルキャリアとして、n−ペンタンまたはプロパンを前記冷媒組成物の総質量に対して14質量%以下の割合で含有することを特徴とするものであり、
n−ペンタンまたはプロパンがオイルキャリアとして作用するためオイルセパレータを使用するまでもなく圧縮機にオイルを戻すことができ、n−ペンタンの添加量が14質量%以下と少ないので、爆発の危険性がない、という顕著な効果を奏する。
【0018】
本発明の請求項5記載の発明は、高温側冷凍回路と低温側冷凍回路を備え、前記低温側冷凍回路中の冷媒の凝縮を前記高温側冷媒回路中のカスケードコンデンサを通過する冷媒により行う二元冷凍装置において、
高温側冷凍回路中の冷媒として、ジフロロメタン(R32)、ペンタフロロエタン(R125)、1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)、1,1,3−トリフロロエタン(R143a)の冷媒群からなる非共沸混合物あるいは、それらの冷媒群に1,1,1,2,3−ペンタフロロペンテン(HFO−1234ze)を含むフッ化炭化水素混合冷媒を加えることを特徴とする二元冷凍装置であり、
地球温暖化係数(GWP)が6の1,1,1,2,3−ペンタフロロペンテン(HFO−1234ze)とジフロロメタン(R32)、ペンタフロロエタン(R125)、1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)などのフッ化炭化水素を含む混合冷媒は、GWPが1500以下であるので、GWPが小さく地球に優しく、吐出圧力や吐出温度が高くならず、COPが低下せず、オイルの劣化やスラッジを引き起こすことがなく、爆発の危険性がない、という顕著な効果を奏する。
【0019】
本発明の請求項6記載の発明は、請求項5記載の冷媒組成物において、前記1,1,1,2,3−ペンタフロロペンテン(HFO−1234ze)の替わりに1,1,1,2−テトラフロロペンテン(HFO−1234yf)を用いたことを特徴とするものであり、
HFO−1234zeの替わりにHFO−1234yfを用いても請求項5記載の冷媒組成物と同じ作用効果を得ることができる、というさらなる顕著な効果を奏する。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項5あるいは請求項6の冷媒組成物において、さらにn−ペンタンを冷媒組成物の総質量に対して6質量%以下の割合で混合してなることを特徴とするものであり、
n−ペンタンがオイルキャリアとして作用するためオイルセパレータを使用するまでもなく圧縮機にオイルを戻すことができ、n−ペンタンの添加量が6質量%以下と少ないので、爆発の危険性がない、というさらなる顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は本発明の冷媒組成物を封入してなる二元冷凍装置の冷媒回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づき本発明の実施例を詳述する。
図1は本発明の冷媒組成物を封入してなる二元冷凍装置の冷媒回路図である。S1は高温側冷媒サイクルを、また、S2は低温側冷媒サイクルを示している。
【0023】
高温側冷媒サイクルS1を構成する圧縮機1の吐出側配管2は補助凝縮器3に接続され、補助凝縮器3は圧縮機1のオイルクーラー4、補助凝縮器5、低温側冷媒サイクルS2を構成する圧縮機6のオイルクーラー7、凝縮機8、乾燥器9、キャピラリーチューブ10を順次経て、カスケードコンデンサ11に接続され、受液器12を経て吸込側配管13により圧縮機1に接続されている。14は各凝縮器3,5及び8の冷却用ファンである。
【0024】
低温側冷媒サイクルS2の圧縮機6の吐出側配管15は、オイルセパレータ16に接続され、そこで分離された圧縮機オイルは、リターン配管17にて圧縮機6に戻される。一方、冷媒は、配管18に流入して吸込側熱交換器19と熱交換した後、カスケードコンデンサ11内の配管20内を通過して凝縮し、乾燥器21、キャピラリーチューブ22を経て入口管23より蒸発器24に流入し、出口管25より出て吸込側熱交換器19を経て圧縮機6の吸込側配管26より圧縮機6に戻る構成である。27は膨張タンクであり、キャピラリーチューブ28を介して吸込側配管26に接続されている。
【0025】
高温側冷媒サイクルS1には、ジフロロメタン(R32)/ペンタフロロエタン(R125)/1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)共沸混合物(R407D)あるいはペンタフロロエタン(R125)/1,1,1−トリフロロエタン(R143a)/1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)共沸混合物(R404A)、あるいは、地球温暖化係数(Global−warming potential:GWP)が1500以下である冷媒組成物として、ジフロロメタン(R32)、ペンタフロロエタン(R125)、1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)、1,1,3−トリフロロエタン(R143a)の冷媒群に、1,1,1,2,3−ペンタフロロペンテン(HFO−1234ze、GWP6、沸点−19℃)を含むフッ化炭化水素混合冷媒を含む混合冷媒が封入される。沸点は大気圧で約−40℃であり、この混合冷媒が各凝縮器3,5及び8にて凝縮し、キャピラリーチューブ10にて減圧されてカスケードコンデンサ11に流入して蒸発する。ここで、カスケードコンデンサ11は−36℃程となる。
【0026】
GWPが3のエタン(R170)の沸点は−88.6℃と低く、GWPが12200のパーフロロエタン(R116)の沸点は−78.1℃と低く、その共沸混合物の沸点は−88.8℃と低い。
低温側冷媒サイクルS2には、GWPが3のエタン(R170)45質量%とGWPが12200のパーフロロエタン(R116)42質量%と二酸化炭素(R744)13質量%を混合した混合冷媒(GWP5119、沸点−85℃以下)とn−ペンタンを混合した冷媒組成物が封入される。ここで、n−ペンタンは、混合冷媒の総質量に対して14質量%以下(この例では、6.4質量%)の割合で混合して組成される。この結果、沸点が−85℃以下のかなり低温の冷媒組成物を封入することとなる。そして、圧縮機6から吐出された冷媒及び圧縮機オイルは、オイルセパレータ16に流入する。そこで、気相部分と液相部分とに分離され、オイルの大部分は液相であるため、リターン配管17より圧縮機6に戻れる。気相の冷媒とオイルは、配管18を通り吸込側熱交換器19と熱交換し、更に、カスケードコンデンサ11にて高温側冷媒サイクルS1内の冷媒の蒸発によって冷却されて凝縮する。その後、キャピラリーチューブ22にて減圧された後、蒸発器24に流入して蒸発する。この蒸発器24は、図示しない冷凍庫の壁面に熱交換関係に取り付けられて庫内を冷却する。ここで、蒸発器24での蒸発温度は−85℃以下に達する。
【0027】
このように構成された二元冷凍装置において、低温側冷媒サイクルS2に封入される前記冷媒組成物は、沸点は−85℃以下程度となることから、R508AおよびR508Bの代替冷媒として十分に冷凍能力を発揮できる。
【0028】
更に、前記冷媒組成物はオイルとの相溶性が悪いが、n−ペンタンを14重量%以下混合することにより解決できる。即ち、n−ペンタンは沸点が+36.07℃と高いが、圧縮機オイルとの相溶性が良好であり、n−ペンタンを14重量%の範囲で混合することにより、n−ペンタンにオイルを溶け込ませた状態で圧縮機まで帰還させることができ、圧縮機の油上がりによるロック等の弊害を防止できる。この結果、特にオイルセパレータ16にて完全にオイルを分離するまでもなく、圧縮機6にオイルを戻すことができる。ここで、n−ペンタンは沸点が高いため、あまり多量に混合すると蒸発温度が上昇して目的とする低温が得られないが、n−ペンタンを、14重量%以下の割合で混合することにより、蒸発温度を上昇させずしかもn−ペンタンが不燃域に維持しつつオイルを圧縮機へ帰還させることができる。
【0029】
このように、本実施例の二元冷凍装置によれば、オイル戻りを良好とし、爆発等の危険を伴うことなく、蒸発器にて−85℃以下程度の低温を達成することができ、規制冷媒を使用せずに血液保冷等の医療用フリーザーとして実用化できる。
【0030】
また、n−ペンタンは市販されており、フリーザー等で使用する場合には容易に入手でき、実用的である。
【0031】
尚、本実施例では二酸化炭素(R744)を20質量%以下混合した混合冷媒とn−ペンタンとの混合物にて説明したが、n−ペンタンの代わりに同様の割合で混合しても同様の効果が得られる。即ち、プロパンも圧縮機オイルとの相溶性が良好であり、プロパンを14重量%混合することにより、プロパンにオイルを溶け込ませた状態で圧縮機6まで帰還させることができ、圧縮機6の油上がりによるロック等の弊害を防止できる。ここで、プロパンは蒸発温度に与える影響はそれ程ないが、可燃性であるため、爆発の危険があり取扱に難点がある。しかし、プロパンの混合割合を14質量%以下とすることにより、プロパンを不燃域に維持することができ、爆発等の心配は無くなる。
【0032】
なお、上記実施形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮するものではない。又、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【実施例】
【0033】
次に実施例および比較例により本発明を詳しく説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
図1に示した二元冷凍装置の冷媒回路に本発明の下記の冷媒組成物を封入して運転し、二元冷凍装置の庫内温度および、蒸発器24入口、また出口温度を測定して冷却能力を評価した。
低温側冷媒組成物:
エタン(R170)にパーフロロエタン(R116)60質量%(共沸混合物)と冷媒組成物全体に対してn−ペンタン6.0質量%を混合した冷媒組成物。
高温側冷媒組成物:
ジフロロメタン(R32)/ペンタフロロエタン(R125)/1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)共沸混合物(R407D)あるいはペンタフロロエタン(R125)/1,1,1−トリフロロエタン(R143a)/1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)共沸混合物(R404A)、あるいは、ジフロロメタン(R32)、ペンタフロロエタン(R125)、1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)、1,1,3−トリフロロエタン(R143a)の冷媒群に、1,1,1,2,3−ペンタフロロペンテン(HFO−1234ze(E)、GWP6、沸点−19℃)を含むフッ化炭化水素混合冷媒であり、または、1,1,1,2−テトラフロロペンテン(HFO−1234yf)を含むフッ化炭化水素混合冷媒を加えた混合冷媒。
【0035】
(実施例2)
低温側冷媒組成物として下記の冷媒組成物を用いた以外は実施例1と同様にして運転し、二元冷凍装置の庫内温度および、蒸発器24入口、また出口温度を測定して冷却能力を評価した。
低温側冷媒組成物:
エタン(R170)に二酸化炭素(R744)を20質量%以下と冷媒組成物全体に対してn−ペンタン8.7質量%を混合した冷媒組成物。
【0036】
(実施例3)
低温側冷媒組成物として下記の冷媒組成物を用いた以外は実施例1と同様にして運転し、二元冷凍装置の庫内温度および、蒸発器24入口、また出口温度を測定して冷却能力を評価した。
低温側冷媒組成物:
パーフロロエタン(R116)に二酸化炭素(R744)を20質量%以下と冷媒組成物全体に対してn−ペンタン13.0質量%を混合した冷媒組成物。
【0037】
(実施例4)
低温側冷媒組成物として下記の冷媒組成物を用いた以外は実施例1と同様にして運転し、二元冷凍装置の庫内温度および、蒸発器24入口、また出口温度を測定して冷却能力およびCOPを評価した。
低温側冷媒組成物:
エタン(R170)にパーフロロエタン(R116)50質量%と二酸化炭素(R744)15.0質量%と冷媒組成物全体に対してn−ペンタン6.4質量%を混合した冷媒組成物。
【0038】
(比較例1)
低温側冷媒組成物としてエタン(R170)のみを使用し、冷媒組成物全体に対してn−ペンタン9.77質量%を混合した冷媒組成物を用いた以外は実施例1と同様にして運転し、二元冷凍装置の庫内温度および、蒸発器24入口、また出口温度を測定して冷却能力を評価した。
【0039】
(比較例2)
低温側冷媒組成物としてパーフロロエタン(R116)のみを使用し、冷媒組成物全体に対してn−ペンタン14.0質量%を混合した冷媒組成物を用いた以外は実施例1と同様にして運転し、二元冷凍装置の庫内温度および、蒸発器24入口、また出口温度を測定して冷却能力を評価した。
【0040】
実施例1は、エタン(R170)にパーフロロエタン(R116)を混合することで、その共沸効果によって冷却性能が向上した。その効果は、パーフロロエタン(R116)の質量%が50%以上60%以下にて得られ、パーフロロエタン(R116)の質量%が、15.3%、35.4%、52.6%、59.7%において、比較例1の結果と対比して、蒸発器24入口、また出口温度が低下し、二元冷凍装置の庫内温度が、−0.5℃、−1.2℃、−1.7℃,−1.8℃程低下した。その時の最大低下温度は−2.0℃程となった。例えば、比較例1の二元冷凍装置の庫内温度が−85℃の場合、−85.5℃、−86.2℃、−86.7℃、−86.8℃程となり、その時の最大低下温度は−87.0℃程となった。
実施例2は、エタン(R170)に二酸化炭素(R744)を混合することで、その高い熱伝達効果によって冷却性能が向上した。その効果は、二酸化炭素(R744)の質量%が20%以下において、比較例1の結果と対比して、蒸発器24入口、また出口温度が低下し、二元冷凍装置の庫内温度が、−0.9℃程低下した。その時の最大低下温度は−1.0℃程となった。
実施例3は、パーフロロエタン(R116)に二酸化炭素(R744)を混合することで、その高い熱伝達効果と、共沸作用と推定される効果によって冷却性能が向上した。その効果は、二酸化炭素(R744)の質量%が20%以下において、比較例2の結果と対比して、蒸発器24入口、また出口温度が低下し、二元冷凍装置の庫内温度が、−4.4℃程低下した。その時の最大低下温度は−4.5℃程となった。
実施例4は、実施例1〜3で証明したように、共沸効果および二酸化炭素(R744)の高い熱伝達効果によって冷却性能がさらに向上した。その効果は、二酸化炭素(R744)の質量%が20%以下において、比較例1の結果と対比して、蒸発器24入口、また出口温度が低下し、二元冷凍装置の庫内温度が、−2.3℃程低下した。その時の最大低下温度は−2.5℃程となった。この実施例4の形態では、エタン(R170)の特性である可燃性を、パーフロロエタン(R116)、および二酸化炭素(R744)を混合することで、その可燃特性を抑えることができる。また、パーフロロエタン(R116)はGWP値が高いため、エタン(R170)および二酸化炭素(R744)を混合することで、GWP値を抑えることができる。また、パーフロロエタン(R116)は比熱比が低いため、二酸化炭素(R744)の高圧特性における吐出温度の上昇を抑えることができる。よって、実施例4の形態は、本発明の目的を満足すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、高温側冷凍回路と低温側冷凍回路を備え、前記低温側冷凍回路中の冷媒の凝縮を前記高温側冷媒回路中のカスケードコンデンサを通過する冷媒により行う二元冷凍装置において、前記低温側冷凍回路中の冷媒として、エタン(R170)とパーフロロエタン(R116)とを混合した共沸混合物を含有する冷媒組成物を使用し、前記パーフロロエタン(R116)を前記冷媒組成物に対して50%以上60質量%以下を加えることを特徴とする二元冷凍装置であり、
地球温暖化係数(GWP)が3のエタン(R170)と地球温暖化係数(GWP)が12200のパーフロロエタン(R116)を混合した共沸混合物を用い、GWPが3のエタン(R170)の沸点は−88.6℃と低く、GWPが12200のパーフロロエタン(R116)の沸点は−78.1℃と低く、その共沸混合物の沸点は−88.8℃と低く、パーフロロエタン(R116)単独の場合よりGWPが半分以下と小さいので地球に優しく、−80℃という低温を達成でき、爆発の危険性がなく、冷凍能力や他の性能面でも優れた性能を有する、という顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0042】
S1 高温側冷媒サイクル
S2 低温側冷媒サイクル
1,6 圧縮機
11 カスケードコンデンサ
24 蒸発器
図1