【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、請求項1に記載されたワークの製造方法によって解決される。この方法のさらに有利な実施形態は、従属請求項の主題となっている。
【0009】
この点に関して、本発明は、特に
中心軸回りに回転する工具によるハード仕上げ、さらに詳細には、研削用工具(具体的には研削用ウォームホイール)を用いた創成研削、又は、ホーニング仕上げ用工具を用いたホーニング仕上げによって、
作用面のプロファイルが修正された歯形及び/又は
作用面にプロファイルが修正された表面構造を有するワークを製造する、ワークの製造方法であって、工具に
、上記工具によるハード仕上げの際の該工具の中心軸回りの特定のブレ及び/又は
該工具の中心軸回りの特定の偏心を与えることによって、該工具により
ハード仕上げされるワークの作用面上に、修正、特にプロファイル(輪郭)の修正、及び/又は、
プロファイルが修正された表面構造としての周期性を有する所定のうねり形状(定義されたうねり形状)を、該作用面への機械加工
(ハード仕上げ)と共に与えるようなワークの製造方法を含む。
【0010】
この点に関して、本発明に係るプロファイルを修正する方法は、特にワークの作用面上に所望のうねり形状を有する歯面を与えるために利用することができる。
【0011】
しかしながら、本発明に係るプロファイルの修正は、既に仕上げ処理が施されたワークの歯面に設けられた周期性を有するうねり形状を測定し、このうねり形状の修正、及び/又はさらなる機械加工
(ハード仕上げ)によるワークの修正を行うべく、本発明に係る方法に従って直接的に逆方向の修正を行って、望まれないうねり形状を補償することができる。
【0012】
この点に関して、本発明に従うと、
プロファイルが修正された歯形と
プロファイルが修正された表面構造とを有するワークの製造に関する第1の態様において、工具のバランス又はアンバランスに特定の設定を与えることによって、研削されるワークの作用面上に、周期性を有するうねり形状を持つ歯面が設けられる。この方法によって、機械加工
(ハード仕上げ)されたワークの表面形状が所望のものとなる。
【0013】
或いは、機械加工
(ハード仕上げ)されるワークに所望の表面形状を設けることができるような形状を研削用工具、又はホーニング仕上げ用工具の表面上に与えるように、これら工具のためのドレッシング用工具を制御することができる。
【0014】
特に、ハード仕上げ用工具のドレッシング及びプロファイリング(輪郭づけ)の際に、ドレッシング用工具を制御することによって、周期性を有する好ましいうねり形状をハード仕上げ用工具の表面上に設けることができる。このようにしてハード仕上げ用工具に設けられたうねり形状を用いることによって、研削/ホーニングされるワークの作用面(歯面)上に、所望の周期性を有するうねり形状が、該作用面への機械加工
(ハード仕上げ)と共に設けられる。
【0015】
特に、バランス/アンバランスを修正された工具、及び/又は、表面構造に関して修正された工具は、
プロファイルが修正された歯形及び
プロファイルが修正された表面構造を有する円筒状平歯車、又は斜歯歯車に対して研削又はホーニングを行うために適したものとなる。こうした修正を、歯車のハード仕上げ処理に対応するような、従来技術による修正処理を施した上に重畳することができる。このことは、例えばべべロイドギヤのような球形状又は円錐形状の歯車にも適用することができることを意味する。
【0016】
原則として、上記工具とは、従来技術として知られた方法によって、その表面構造がドレッシング及びプロファイリングされた研削用ウォームホイール、ホーニングリング、又は、外側に向けて歯部が設けられたホーニング仕上げ用工具を意味する。
【0017】
ここで、複数の理由によって、上記研削用工具をアンバランスな状態にすることができる。それ故、バランス/アンバランスを直接的に設定又は生成する手段も、複数考えることができる。アンバランスを引き起こす要因としては、例えば工具の取付部、工具のデザイン又はその構成、及び/又は、工具素材内部の密度差が可能性として考えられる。加えて、上記アンバランスは、工具の表面上に不均一に分散される冷却用潤滑油が受容容量に達した状態で、この工具を用いることによって生じることもある。
【0018】
概して、上記工具は、外部に設けられたバランシング装置によって、静的及び動的にバランスがとられる。バランスをとるために、工具の側方に隣接するように取り付けられたバランスウェイトが、所望のバランス状態に達するまで移動させられる。このバランシングは、工具の寸法に応じて1つ又は2つの平面上で行うことができる。
【0019】
加えて、上記工具には、運転終了後に施されるようなドレッシングが、一定数のワークに機械加工
(ハード仕上げ)を行った後に定期的に行われる。したがって、この工具は再度ドレッシングされなければならない。このために、工作機械内で精密なバランシングを行うべく、歯切装置又は工具の取付部に、NC制御を用いて調整できるバランシングヘッドが設けられる。
【0020】
バランシングの質に影響を及ぼし得る時間、又は、本発明に従った工具のバランシングの質を設定するために有効な時間が、こうした2種のバランシング方法/バランシング工程から定められる。
【0021】
新たな工具を備えた際に生じるアンバランスの原因は、工具の取付部の芯ずれにあると考えることもできる。なぜならば、マンドレルの受け部に対して、工具の孔径には通常、たとえ小さくとも余裕(隙間)があるからである。取付部の偏心は、主に静的なアンバランスに影響を及ぼす。整列した状態から生じる工具の振れ誤差(ブレ)は、工作機械内でその後に行われる第1のドレッシングによって取り除かれる。このドレッシングがバランシングの質に影響を与えるため、このアンバランスは、外部に設けられたバランシング装置によって修正されるのが好ましく、本発明に係るバランス設定のための例外的な用途に対してのみ利用される。
【0022】
上記のような状況は、研削用工具の配置に由来するアンバランスとは異なるものである。ここでは、バランス/アンバランスを直接的に設定するような、より良い可能性がある。
【0023】
上記工具の回転軸心の周囲には、らせん状に延びる歯部が設けられ得る。この工具のらせん状歯部の両端部(ピッチ端部)は、工具の幅及び工具モジュールに応じて、研削用ウォームホイールの外周部において、研削用ウォームホイールの回転軸心
(中心軸)方向から見て、該回転軸心
(中心軸)回りの角度で特定のオフセット角度をなすようにそれぞれ設けられている。上記ピッチ端部が0°のオフセット角度をなすようにそれぞれ設けられていれば、動的なアンバランスが生じ、180°のオフセット角度をなすようにそれぞれ設けられていれば、静的なアンバランスが生じる。上記ピッチ端部がその中間の角度をなすようにそれぞれ設けられていれば、静的なアンバランスと動的なアンバランスとが混在することとなる。この影響は単一のピッチ構造を有する研削用ウォームホイールを備えた場合にのみ適用される。
【0024】
従来は、円筒状の研削用ウォームホイールの有効ウォーム幅は、通常、ピッチ形状に応じて引き起こされる動的なアンバランスを最小とするように選ばれてきた。
【0025】
しかしながら、本発明に従うと、新たに工具を製造する際に上記幅を直接的に選ぶことによって、研削用ウォームホイールのピッチ端部を、研削用ウォームホイールの外周部において、研削用ウォームホイールの回転軸心
(中心軸)方向から見て、該回転軸心
(中心軸)回りの角度で互いに異なる角度位置に配置し、これにより研削用工具に系固有の(上記角度に固有の)基礎的で動的なバランス/アンバランスを与えることができる。
【0026】
これに代えて又は加えて、所望でかつ固有のアンバランスを与えるべく、研削装置上で上記
研削用ウォームホイールに対しバランスをとるようにすることができる。この目的のため、バランシングヘッドが研削装置又は工具取付部に設けられていれば有利であり、工作機械内で精密なバランシングを実行すべくNC制御によって調整することができる。
【0027】
この点に関して、工作機械上でのアンバランスの設定が、研削動作中に定期的に実行されることが有利である。この点に関して、定期的なドレッシング工程によって工具は絶えず変化しており、冷却用潤滑油を受けることによって研削動作中であってもバランスに影響が及んでしまうため、研削動作中であっても再度の釣り合わせが必要となるからであり、本発明の趣旨にかなっている。
【0028】
特に、上記基礎的なバランス/アンバランスに対する付加的で動的な“変更/置換”によって、研削装置上で行われる再バランシング中に、工具の構成に及ぶ影響の大小を直接的に操作することができる。
【0029】
ワークに所望の表面形状が機械加工
(ハード仕上げ)と共に形成されるように、又は望まれない表面形状の形成を防止するように、ドレッシング及びプロファイリング中に工具の表面を直接的に修正することによって、機械加工
(ハード仕上げ)されるワークに、周期性を有するうねり形状を形成する可能性が更に考えられる。
【0030】
こうした修正は、工具のブレを用いずに実行することもできるし、工具のブレと併せて実行することもできる。
【0031】
以下の記載において、添え字“1”は工具に関するものに用いられ、添え字“2”はワークに関するものに用いられる。
【0032】
歯車の歯面上に施される、望まれる修正は、ワークの第1方向(GC2)においては少なくとも部分的に一定値となる形成パターンを有し、かつ、ワークの第1方向(GC2)に対して垂直に延びる、ワークの第2方向においては関数f(x)で与えられる形成パターンを有するように施される。
【0033】
この点に関して、特に第1方向(GC2)と関数f(x)とを、例えばワークの所望の修正のために、又は、測定された望まれない修正を補償するために、予め定めることができる。
【0034】
この場合、本発明に従うと、工具の表面形状に、該工具の第1方向(GC1)では少なくとも部分的に一定値となるような形成パターンを有する修正を施して、これをワークの表面形状の修正を行うために用いることができる。
【0035】
好ましくは、工具の表面の修正(好ましくは、上記ワークの表面を修正するための、工具の表面の修正)は、工具の第1方向(GC1)に対して垂直に延びる、工具の第2方向においては、少なくとも部分的に上記ワークに用いた関数と同一のものが用いられて、任意の圧縮係数cでもって線形圧縮されたf(cx)によって与えられるように施される。
【0036】
この点に関して、第1の態様において、上記のようなワーク及び工具の形成パターンの形状は、形成パターン全域の内の局所的及び/又は部分的な領域においてのみ描かれるだけではなく、関数fの変数xを求める式を用いて、形成パターン全域に亘って描くこともできる。この場合、修正が一定値となるような線部のそれぞれが、形成パターン全域に亘って延びる直線を形成し、又は多少の違いはあれど近似的に直線を形成することができる。
【0037】
或いは、上記修正が一定値となる線がワーク及び/又は工具上で直線を形成せずに、むしろ曲線及び/又は互いに直線を形成するように延びていない複数の部分領域の集合とすることもできる。この場合、本発明に従うと、形成パターンは少なくとも局所的な1点では上記関数fの変数xを求める式で近似することが可能であり、各々の場合について局所的に、好ましくは上記線に沿って、又は上記部分領域において上記式で近似することが好ましい。この点に関して、関数fは、そうした線に沿った異なる領域のそれぞれに対して、異なる関数形を任意で有する。
【0038】
したがって、上記形成パターンは、本発明に係る式によって表される複数の部分領域から任意で構成されなければならない。
【0039】
ワークの表面形状として望まれる、表面の修正は、ワークの形成パターン中の少なくとも部分的な領域で、歯の幅方向の位置b2と該幅方向に対して垂直に延びる上記形成パターンの長さ方向の位置L2とを用いて定められ、上記歯車の歯面上で上記修正が一定値となるような上記ワークの第1方向GC2を角度ψ2で指定するとともに、ワークの第1方向GC2に対して垂直な方向に施される上記修正の波長をλ2と定義すると、上記波長λ2は、2πを上記関数fの周期性(波数:2π/λ2)で割ることによって得られ、上記修正は、上記ワークの第1方向GC2以外の他の全ての方向に対しては、上記式を用いて、
f((2π/λ2)・cos(ψ2)・L2−(2π/λ2)・sin(ψ2)・b2)
と記述される。
【0040】
この式は、ハード仕上げ処理で望まれないうねり形状が生じた場合にも適用され、この方法を用いることで、望まれないうねり形状を補償することができる。
【0041】
上記式において、fは、周期的である必要がない実関数である。例えば、うねり形状を形成するために、fとして正弦関数を選ぶことができる。角度ψ2は、上記修正が一定の値となる、歯面上での直線の方向(GC2)を定める。上記修正は、他の全ての方向を走る直線に沿って、fで定められる関数形を有する。
【0042】
各直線に沿ってその方向に応じた異なる圧縮が行われる。GC2に垂直な直線上で圧縮率は最大となる(うねり形状の場合、波長の大きさが最小となる)。
【0043】
係数2π/λ2が、GC2に垂直な直線に沿った修正の圧縮率を決定する。
【0044】
うねり形状に対しては、λ2がGC2に垂直な直線に沿った波長に対応する。歯幅が一定となる直線上での圧縮率は、
(2π/λ2)・cos(ψ2)
となって(うねり形状の場合、波長の大きさはλ2/cos(ψ2)となる)、形成パターンの長さが一定となる直線上での圧縮率は、
(2π/λ2)・sin(ψ2)
となる(うねり形状の場合、波長の大きさは、λ2/sin(ψ2)となる)。
【0045】
これらの式は、既に説明されているように、形成パターンの少なくとも局所的及び/又は部分的な領域に適用されるものであるが、とりわけ単純な場合には全域に亘って適用される。
【0046】
修正、より詳細には既に述べられたようなワークの修正に対応する修正を、転造ローラを用いて、工具(ウォーム、ホーニングホイール又はホーニングリング)にドレッシングを施すことによって、工具表面に施すことができる。この工具に対するドレッシングは、ドレッシングにおいて従来知られた運動学に基づいた、以下のa),b),c)及びd)に挙げる軸方向の動作に関する調整方法、
a)上記工具の回転軸
(中心軸)又は幅に応じて実行される、該工具から、該工具をドレッシングするドレッシング工具までの軸間隔の変更(送り込み)
b)上記工具の回転軸
(中心軸)又は幅に応じて実行される、該工具又は上記ドレッシング工具の軸方向送り量の変更(シフト)
c)上記工具の回転軸
(中心軸)又は幅に応じて実行される、該工具と上記ドレッシング工具との交差角の変更(旋回)
d)上記工具の回転軸
(中心軸)又は幅に応じて実行される、該工具の速度の変更
のうちの1つ以上を用いることによって実行可能である。
【0047】
この点に関して、より詳細には、上記転造ローラは、ドレッシングの際に工具の歯元から歯先にかけて接触することが可能であり、その結果、この工具を
中心軸回りに偏心させるような修正が、歯の高さ方向全体に亘って、1回のストロークで生じる。
【0048】
或いは、上記転造ローラは、ドレッシングの際に工具の歯元から歯先にかけての一部領域においてのみ接触することが可能であり、その結果、この工具を
中心軸回りに偏心させるような修正が、歯の高さ方向全体に亘って、ドレッシング用ローラの互いに異なる位置付けでもって、複数回のストローク(ドレッシング用ローラの工具軸方向の移動)で生じる。
【0049】
好ましくは、上記工具は、転造ローラによって
、中心軸(回転軸心)方向から見た形状が、真円から外れる(僅かに外れる)ようにドレッシングされる。工具を
、中心軸(回転軸心)方向から見た形状が、真円から外れるようにドレッシングすることによって、該工具に対し、該工具により機械加工
(ハード仕上げ)されるワークの作用面上
に周期性を有する所定のうねり形状を与えることを可能にする、
工具による機械加工(ハード仕上げ)の際の該工具の中心軸回りの特定のブレ及び/又は
該工具の中心軸回りの特定の偏心を与えることができる。
【0050】
上記工具に与えられた
、該工具の中心軸回りの上記特定の偏心によって、機械加工
(ハード仕上げ)されるワークの作用面上に、ワークの軸方向に対して斜めの研削によって、周期性を有する望ましいうねり形状を与えてもよい。
【0051】
上記ワークの表面を修正するた
めに使用される工具の表面の望ましい修正は、上記工具の形成パターン中の少なくとも部分的な領域で、歯の幅方向の位置b1と該幅方向に対して垂直に延びる上記形成パターンの長さ方向の位置L1とを用いて定められ、上記歯車の歯面上で上記修正が一定値となるような上記工具の第1方向GC1を角度ψ1で指定するとともに、上記工具の第1方向GC1に対して垂直な方向に施される上記修正の波長をλ1と定義すると、上記λ1は、2πを上記関数fの周期性(波数:2π/λ1)で割ることによって得られ、上記修正は、上記工具の第1方向GC1以外の他の全ての方向に対しては、
f((2π/λ1)・cos(ψ1)・L1−(2π/λ1)・sin(ψ1)・b1)
と記述される。
【0052】
歯先から歯元に至る形成経路(形成パターンの長さ方向の位置)Lと形成幅(歯幅方向の位置)bとの関係を示す図(
図5参照)によって示されるように、上記ドレッシング用工具と上記工具との接触線を直線で近似することによって、
f((2π/λ1)・cos(ψ1)・L1−(2π/λ1)・sin(ψ1)・b1)
と記述されるようなタイプの修正を、転造ローラによるドレッシングを用いて工具上に施すことができる。上述されたドレッシングにおける運動学を用いた調整によって、近似的にGC1に沿って位置しかつ同時にドレッシングされる全ての点に近似的に同一の効果をもたらすことができるため、上記直線がGC1(及び角度ψ1)を定める。上記接触線は、ドレッシング中、歯面に沿って、この歯面の幅方向へと移動する。
【0053】
上記工具の第1方向GC1が、ドレッシング用工具、特に転造ローラによる、上記工具へのドレッシング中の噛合線に一致することが好ましい。
【0054】
また、上記工具の第1方向GC1が、上記直線(G1)によって少なくとも部分的に近似されることが好ましい。
【0055】
対照的に、上記ドレッシング用工具と上記工具との接触線が直線から大きく外れていれば、上述の式は、この接触線中の局所的な領域、又は部分的な領域のみに適用される。したがって、上記形成パターンは、本発明に係る式によって記述される複数の部分領域から任意で構成されなければならない。
【0056】
f(−(2π/λ1)・sin(ψ1)・b1)
と記述される修正が工具上の接触線に沿って生じるように、ドレッシングにおける運動学が変更されているならば、望ましい修正が工具の歯面上に形成される。
【0057】
工具のドレッシングの際に、そうした修正を他の修正(例えば凸状)と重畳させることができる。
【0058】
2つのインボリュート平歯車が、それぞれの回転軸が交差するように噛み合っているならば、それぞれの歯面は互いに1点で接することになる。
【0059】
歯先から歯元に至る形成経路(形成パターンの長さ方向の位置)Lと形成幅(歯幅方向の位置)bとの関係を示す図中では、上記接触点はそれぞれ直線(G1又はG2)上を移動することになる。
【0060】
f((2π/λ1)・cos(ψ1)・L1−(2π/λ1)・sin(ψ1)・b1)
と記述される修正が工具に施されているならば、上述されたようにG1上の1点には関数fで記述される修正が施されることになる。この修正の圧縮率は、λ1及びψ1の値並びにG1の方向に依存する。
【0061】
G1上の各点は、該点における変形をG2上の対応する点に投影する。そのようして、G2に沿う、関数fを用いて記述される修正が、工具上に表れることになる。このときの圧縮率は、λ1及びψ1の値並びにG1及びG2の方向に依存する。
【0062】
上記方向は、ピッチ数/歯数,モジュール値,ねじれ角といった工具のマクロ形状、及び、工具及びドレッシング工具の相対軸方向送り量(シフト移動量)からの影響を受ける。こうしたパラメータを適切に選ぶことによって、ワークの所望の修正に対応するように、G1上での関数fの圧縮率を設定することができる。
【0063】
本発明によると、工具の形状(マクロ形状)、ドレッシング用工具の噛合線、ワークの軸方向送り量、工具のシフト移動量、及び圧縮係数cのうちの少なくとも1つが、特に、
研削用ウォームホイールによるワーク
の創成研削の際に、上記ワークと上記工具との接触点が上記工具上で移動する線G1上で施される、上記工具の修正が、上記接触点が上記ワーク上で移動する線G2上で施される、上記ワークの所望の修正に一致するように選択される。
【0064】
このことは、機械加工(研削)の際に、ワークと工具とが互いに接触する点において、線G1及びG2上での関数fの変数xが同じ位相を有するように、本発明に係る方法における上記パラメータを選択することが求められるということを意味する。
【0065】
この点に関して、より詳細には、本発明によると、工具の形状(マクロ形状)及びドレッシング用工具の噛合線を予め定めることによって、それに応じてワークの軸方向送り量、工具のシフト移動量、及び圧縮係数cのうちの少なくとも1つを選択することができる。
【0066】
この点に関して、特に好ましくは、加工作業は、ワークの軸方向送り量でもって実行される。このワークの軸方向送り量は、通常は機械加工
(研削)に応じて予め定められる。これに対し、工具のシフト移動量及び/又は圧縮係数cは、本発明による上述された条件を満たすように選択される。
【0067】
この点に関して、ワーク回転に関する軸方向送り定数の値、及び/又は、工具回転に関するシフト移動定数の値を選択することができる。
【0068】
加工工程の間、ワークのそれぞれの歯は、工具の同一のピッチ/歯に何度も繰り返し噛み合うことになる。この点に関して、軸方向送りに応じて、互いに異なる箇所が連続的に接触し合う。それぞれの噛み合い箇所上で、ウォーム上の修正が、歯車の所望の修正に一致することが保証されなければならない。この目的のためには、その直後に続く最初の噛み合わせについてこれが保証されていれば足る。この目的のため、工具の形状(マクロ形状)及び軸方向送り量を再調整することができる。
【0069】
それ故、より詳細には、本発明に従うと、工具の形状、ドレッシング用工具の噛合線、ワークの軸方向送り量、工具のシフト移動量、及び圧縮係数cのうちの少なくとも1つを、機械加工を経て工具及びワークに施される修正が、工具の同一のピッチを用いてワークの同一の歯を研削する際に、その接触点が工具及びワーク上を移動する線G1及びG2に沿って互いに一致するように選択することもできる。上記線G1及びG2は、上記ワークの軸方向送り量、及び、必要に応じて上記線G1及びG2に対する上記工具のシフト移動量によって変更される。
【0070】
この点に関して、好ましくは、工具の形状(マクロ形状)及びドレッシング用工具の噛合線を予め定めることによって、それに応じて、ワークの軸方向送り量、工具のシフト移動量、及び圧縮係数cのうちの少なくとも1つを選択する。
【0071】
加えて、特に好ましくは、更にワークの軸方向送り量を予め定めることによって、それに応じて、工具のシフト移動量及び圧縮係数cの少なくとも一方を選択する。
【0072】
ハード仕上げとしての、創成研削又はホーニング仕上げにおいて、工具の形成パターンとワークの形成パターンとの間には数学的に記述できる線形相関が存在するため、この相関関係を用いることによって、既に詳細に亘って述べられたような機械加工
(ハード仕上げ)のための工程パラメータを数学的に決定することができる。
【0073】
この点に関して、本発明は更に、ワークの所望の修正についてのデータ入力のための入力機能と、工具の形状(マクロ形状)、ドレッシング用工具の噛合線、ワークの軸方向送り量、工具のシフト移動量、及び圧縮係数cのうちの少なくとも1つを、
工具のドレッシング中及び/又は工具によるワークへの機械加工
(ハード仕上げ)中に、工具とワークとの接触点が工具上で移動する線G1上で施される、工具の修正が、この接触点がワーク上で移動する線G2上で施される、ワークの所望の修正に一致するように定めるための機能とを有するコンピュータプログラムを備える。
【0074】
この点に関して、より詳細には、コンピュータプログラムを歯切装置にインストールするに適したものとすることができるし、或いは、この歯切装置にインストールすることができる。特に、上記コンピュータプログラムによって定められるパラメータを、工具のドレッシング及び/又は
工具によるワークの機械加工
(ハード仕上げ)の際に、歯切装置を直接的に制御するために使用することができる。
【0075】
しかしながら、上記コンピュータプログラムを外部のコンピュータにインストールすることもできる。この場合、コンピュータプログラムが、歯切装置を制御するために使用できるデータの出力機能を備えていれば有利となる。
【0076】
この点に関して、より詳細には、本発明に係る方法に関する上述の機能を実施できるように上記プログラムは設定される。
【0077】
この点に関して、より詳細には、上記入力機能によって、修正が一定値となるワークの第1方向(GC2)、及び/又は、この第1方向(GC2)に対して垂直に延びる、ワークの第2方向に沿って実行される修正の度合いを定める関数f(x)についてのデータの入力が可能となる。
【0078】
工具のマクロ形状、ドレッシング用工具の噛合線、ワークの軸方向送り量、及び工具のシフト移動量のうちの少なくとも1つについてのデータ、特に好ましくは、工具のマクロ形状及びドレッシング用工具の噛合線、さらに任意で工具の軸方向送り量についてのデータの入力が、上記入力機能によって可能となっていれば一層有利となる。
【0079】
この点に関して、入力されたデータに基づき、工具のシフト移動量、及び圧縮係数cの少なくとも一方がコンピュータプログラムによって計算されることが好ましい。
【0080】
このようにして設定又は修正された工具によってワークは機械加工
(ハード仕上げ)され、そのプロファイル(輪郭)に所望のうねり形状が設けられる。或いは、ワークに設けられた望まれないうねり形状を計測し、必要に応じて、上記工程を逆に実行することで、該望まれないうねり形状を修正することもできる。ワークの軸方向又は軸方向に対して斜めの研削によってワークを加工することができる。ホーニング仕上げの際には、従来技術による機械加工を利用することができる。
【0081】
本発明に係る修正が施される工具として、一条ねじ状工具及び多条ねじ状工具の両方を検討することができる。この点に関して、より詳細には、上記工具は研削用ウォームホイール又はホーニング仕上げ用工具である。
【0082】
本発明の第1の態様、すなわちアンバランスの利用と、第2の態様、すなわち工具の
中心軸回りの特定の偏心との両方が組み合わされて使用される一般的な場合の使用例について、以下に提示することとする。
【0083】
ワークの軸方向の研削の際には、ワークの回転軸に対して平行、又は近似的に平行に位置するように工具の動作が生じる。この点に関して、本発明に係る工具を用いて機械加工
(ハード仕上げ)された歯面には、幅方向に対してはほぼ同一のプロファイルとなるうねり形状が設けられる。このようにして歯面に設けられたうねり形状は、歯元及び歯先に対して平行に延びるように形成される。
【0084】
更に上記工具が工具軸方向にシフトもされれば、斜めの研削によって、噛み合い条件に応じて、ワークの幅方向に亘って歯面上で斜めに傾斜するように、歯面の修正又はうねり形状を設けることもできる。その傾斜の度合いは、(ワークの回転移動又はその反対の回転と共に)シフト方向によって決定することができる。
【0085】
したがって、本発明に係る方法は、
ワークの作用面を周期性を有する形状に修正するための所望のアライメント(ワークと工具とのアライメント)を定める工程と、該アライメントを得るために、研削用工具を、該修正が与えられるワークの軸方向に沿って連続的に動作させること、及び、上記研削用工具を上記ワークに対して接線方向にシフトさせることの少なくとも一方を行う工程とを更に備えることができる。
【0086】
本発明の更なる実施形態において、好ましくは、上記斜めの研削(工具の軸方向における工具のシフト移動)によって、ワークに歯面プロファイルの修正又はうねり形状を与えるべく、工具に、
該工具の中心軸回りに偏心するようにドレッシングを施すこともできる。こうした工具は、工作機械上でのバランシングによって、工具の回転動作から振動が生じないように設定することができる。或いは、上記バランシングを利用することによって、工具表面の偏心動作に加えて更に工具の微小移動を誘起するように設定することもできる。
【0087】
この点に関して、上記工具に対して
、該工具の中心軸回りに偏心させるドレッシングは、上記工具の角度位置にほぼ依存して上記ドレッシング工具を上記工具へ向けて送ることで実行されるか、又は、上記工具の角度位置にほぼ依存して上記工具を上記ドレッシング工具へ向けて送ることで実行される。現在のところ、ドレッシング中の工具の速度は、通常、実際の機械加工中の速度よりも低いため、送り込み動作自体が、ワークへ向けた工具の径方向の送り込みによる機械加工中に生じることになっていれば、工具に対する軸方向への送り込みについての動的需要はそれほど高くない。この点に関して、この径方向の送り込み動作は,工具の角度位置に応じて制御されなければならないことになる。
【0088】
工具の1つの歯面のみにドレッシングを施す際には、工具に軸方向への動作を追加することによって送り込み動作を与えることが考えられる。この送り込み動作は工具の角度位置に応じて実行される。
【0089】
しかしながら、原則として、高度に動的な研削装置を備えた場合、円形にドレッシングされた研削用工具を径方向へと動作させることによって、ワークに、
工具の中心軸回りに偏心するようにドレッシングされた研削用工具の工具表面部の移動に対応する移動を生じさせることも考えられる。必要に応じて、径方向への第1の送り込み軸に固定された、高度に動的な第2の送り込み軸を加えることによって、これらの径方向への動作を生成するために利用することもできる。
【0090】
本発明に係る方法は、
ワークの作用面を周期性を有する形状に修正す
るための所望の振幅の大きさを定める工程と、該修正が与えられるワークを製造するための
研削用工具のドレッシングの際に、該
研削用工具に、アンバランス、
該研削用工具の中心軸回りの偏心及び修正のうちの少なくとも1つを直接的に設定する工程とを更に備えることができる。
【0091】
この点に関して、歯面に設けられた構造又はうねり形状の振幅がマイクロメートルの範囲にあることから、アンバランスによる送り込み動作の大きさもマイクロメートルの範囲にある。
【0092】
この点に関して、修正された周期性を有する形状の好ましい振幅は、7マイクロメートル以下であり、特に1マイクロメートル以上5マイクロメートル以下が好ましい。
【0093】
この点に関して、更に有利とするために、本発明に係る方法に使用される工具にドレッシング又はアンバランスを施すことによって誘起される
、該工具の中心軸回りの特定の偏心の振幅は、2マイクロメートル以上20マイクロメートル以下であり、特に3マイクロメートル以上15マイクロメートル以下となる。
【0094】
本発明に係る方法は、
ワークの作用面を周期性を有する形状に修正するための所望の周波数を定める工程と、該修正が与えられるワークを製造するための工具(研削用工具)の噛合角(噛合圧力角)αn0を修正する工程とを更に備えることができる。
【0095】
本発明は、少なくとも部分的な領域において
、中心軸(回転軸心)方向から見た形状が、真円から外れる(僅かに外れる)ようにドレッシングされた、本発明に係る方法を実行するための工具を更に備える。この点に関して、この工具は、少なくとも2つの異なる機械加工領域を備えることができる。特に、これら領域のうち少なくとも1つの領域は荒加工領域であり、残りの少なくとも1つの領域は、
中心軸(回転軸心)方向から見た形状が、真円から外れるようにドレッシングされた仕上げ領域である。
【0096】
本発明は、本発明に係る方法を実行するための研削用ウォームホイールを更に備えており、この研削用ウォームホイールの回転軸心
(中心軸)方向両端に位置する、らせん状歯部の両端部のそれぞれが、研削用ウォームホイールの外周部において、研削用ウォームホイールの回転軸心
(中心軸)方向から見て、該回転軸心
(中心軸)回りの角度で互いに異なる角度位置に配置されていることを特徴としている。
【0097】
本発明は、バランシング、及び/又は、工具に対する、
該工具の中心軸回りに偏心させるドレッシングを行うための本発明に係る方法、特に上述された関数を用いた工具へのドレッシングを行うための本発明に係る方法を実行するための歯切装置を更に備える。その上、この歯切装置は、本発明に係る方法を用いてワークを製造するために適切なものとすることができる。特に好ましくは、歯切装置上で、全ての方法を相互に連携するように実行することができる。
【0098】
この点に関して、上記歯切装置は、周期性を有する形状に修正するための所望の振幅を予め決定するための入力機能と、歯面に修正を施すために必要なアンバランス及び/又は
上記偏心を決定するとともに、ハード仕上げ処理(ワークの研削)によってワークに望ましい修正を与えるべく、上記決定の結果を設定する制御機能とを備えることができる。
【0099】
上記歯切装置は、上記機能に代えて又は加えて、所望のアンバランス及び/又は
上記偏心を予め決定するための入力機能と、機械加工(ワークの研削)によってワークに所望の修正を与えるべく、工具に所望のアンバランスを設定する制御機能とを備えることができる。
【0100】
この点に関して、より詳細には、上記歯切装置は、工具に所望のアンバランスを設定することが可能なバランシング機能を備えることができる。
【0101】
上記歯切装置は、上記機能に代えて又は加えて、
中心軸回りに偏心するようにドレッシングされた工具を用いてワークに所望の修正を施すための機能を備えることができる。
【0102】
上記歯切装置は、上記機能に代えて又は加えて、噛合角αn0、及び/又は噛合角αn0の修正を予め決定するための入力機能と、ワークを研削するための工具上で、所望の噛合角αn0を設定する制御機能とを備えることができる。
【0103】
本発明は、工具の回転角に応じて工具のワークへの噛み合い深さを設定するような機械加工
(ハード仕上げ)機能を有する歯切装置を更に備える。
【0104】
研削用工具(特に研削用ウォームホイール)を用いた創成研削により上記ワークを製造する場合、上記研削用工具(研削用ウォームホイール)の上記ワークへの噛み合い深さを、該ワークの機械加工
(創成研削)中に、上記研削用工具(研削用ウォームホイール)の回転角に応じて変化させることが有利である。
【0105】
本発明は、ハード仕上げ用工具、特に研削用ウォームホイー
ルにドレッシングを施すためのドレッシング用工具を有する歯切装置を更に備え、有利とするために、この歯切装置は、
研削用ウォームホイールの回転角に応じて、ドレッシング用工具の
研削用ウォームホイールへの噛み合い深さを設定し、
研削用ウォームホイールに、
中心軸回りに偏心するようなドレッシングを施す(真円から外れたドレッシングを行う)ドレッシング調整機能を備える。
【0106】
上記ワークに施される修正は、該ワークの表面上の望まれない寸法誤差及び/又は望まれないうねり形状を取り除くために施すことができ、特に、工作機械の動特性のばらつき、該工作機械の動特性、及び不十分なバランシングのうちの少なくとも1つによって、上記ワークの表面上の望まれない寸法誤差及び/又は望まれないうねり形状を取り除くために施すことができる。