(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181409
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】作業車輌
(51)【国際特許分類】
B60K 20/06 20060101AFI20170807BHJP
B62D 1/20 20060101ALI20170807BHJP
B60K 20/00 20060101ALI20170807BHJP
B60K 20/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
B60K20/06
B62D1/20
B60K20/00 F
B60K20/02 D
B60K20/02 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-89525(P2013-89525)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-213614(P2014-213614A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】内田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 利宣
【審査官】
高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−227224(JP,A)
【文献】
特開2003−301934(JP,A)
【文献】
特開2004−114964(JP,A)
【文献】
特開昭58−136522(JP,A)
【文献】
特開平09−301005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/00−20/08
B62D 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシャフトの先端に取付けられたステアリングホイールと、前記ステアリングシャフトを覆うステアリングコラムと、該ステアリングコラムの外周を覆うコラムカバーと、前進、中立及び後進位置に切換え可能な前後進切換えレバーと、該前後進切換えレバーの位置を検出する前後進位置検出部と、を備えた作業車輌において、
前記ステアリングコラムの下部に前記前後進位置検出部を内蔵する検出部ケースを配置し、
前記前後進切換えレバーは、前記ステアリングホイールの近傍に配置されるグリップと、該グリップと前記前後進位置検出部とを連繋する連繋部材と、を備え、
前記連繋部材は、前記コラムカバー内に収納された中間部と、該中間部の上方にて前記コラムカバーから突出して前記グリップに連結する上部と、前記中間部の下方にて前記コラムカバーから突出して前記検出部ケースの外方に突出した前記前後進位置検出部のアームに連結する下部と、を有し、
前記ステアリングコラムの上部にレバーガイドを固定し、
該レバーガイドは、前記前後進切換えレバーを前進、中立及び後進位置に案内するガイド部と、前記グリップの操作範囲の外周を覆うガードバーと、を有してなる、
ことを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
前記グリップは、前記ステアリングホイールと反対側に湾曲した薄肉平板形状に形成され、前記ステアリングホイールを握った手の指にて操作されてなる、
請求項1記載の作業車輌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車輌に係り、詳しくは、運転操作部の前後進切換えレバー及びその周辺構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタ等の作業車輌では、例えばローダ作業時にはローダ操作と共に前進後進を頻繁に切換える必要があり、一般に、左手でステアリングホイールと前後進切換えレバーを持ち替えつつ操作し、右手でローダ操作具を操作していた。そのため、ステアリングホイールと前後進切換えレバーの持ち替え操作が簡便に行えるように、従来、ステアリングコラム上部に前後進切換えレバーを取付け、ステアリングホイールの下方に前後進切換えレバーのグリップを配置したものが案出されている(特許文献1参照)。また、前後進切換えレバーの前進、中立及び後進といった変速位置を検出するマイクロスイッチを、スイッチケースに内蔵したものが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−194689号公報
【特許文献2】特開平11―120867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載のものは、前後進切換えレバーのレバーストロークが大きく、かつそのグリップが作業者の手全体で握り操作するような形状となっており、操作性が良くないという問題があった。また、前後進切換えレバーの基部に配置され、該前後進切換えレバーの変速位置を検出するマイクロスイッチ等の検出装置が、ステアリングコラムの上部に固定されており、ステアリングコラムを覆うコラムカバーが該検出装置の分ステアリングコラムと直交する方向に膨出して形成され、該膨出部がハンドル操作を阻害すると共に意匠性が良くないという問題があった。
【0005】
更に、特許文献1記載のものは、防水・防塵対策が格別採られているわけでなく、特許文献2記載のもののように、スイッチケースでマイクロスイッチを覆って保護するものが推奨される。しかしながら、マイクロスイッチをスイッチケースに内蔵するものは、比較的大型となり、該スイッチケースを特許文献1記載のもののようにステアリングコラムの上部に固定すると、よりコラムカバーの膨出部分が大きくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、前後進切換えレバーの前後進位置検出部をケースに内蔵してステアリングコラムの下部に配置すると共に、前後進切換えレバーのグリップをステアリングホイールを握りながら操作できるように構成し、もって上述した課題を解決した作業車輌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ステアリングシャフト(16)の先端に取付けられたステアリングホイール(11)と、前記ステアリングシャフト(16)を覆うステアリングコラム(17)と、該ステアリングコラム(17)の外周を覆うコラムカバー(19)と、前進、中立及び後進位置に切換え可能な前後進切換えレバー(12)と、該前後進切換えレバー(12)の位置を検出する前後進位置検出部(29)と、を備えた作業車輌(1)において、
前記ステアリングコラム(17)の下部に前記前後進位置検出部(29)を内蔵する検出部ケース(27)を配置し、
前記前後進切換えレバー(12)は、前記ステアリングホイール(11)の近傍に配置されるグリップ(35)と、該グリップ(35)と前記前後進位置検出部(29)とを連繋する連繋部材(36)と、を備え、
前記連繋部材(36)は、前記コラムカバー(19)内に収納された中間部(36a)と、該中間部(36a)の上方にて前記コラムカバー(19)から突出して前記グリップ(35)に連結する上部(36b)と、前記中間部(36a)の下方にて前記コラムカバー(19)から突出して前記検出部ケース(27)の外方に突出した前記前後進位置検出部(29)のアームに連結する下部(36c)と、を有
し、
前記ステアリングコラム(17)の上部にレバーガイド(24)を固定し、
該レバーガイド(24)は、前記前後進切換えレバー(12)を前進、中立及び後進位置に案内するガイド部(24a)と、前記グリップ(35)の操作範囲の外周を覆うガードバー(24b)と、を有してなる、
ことを特徴とする。
【0008】
例えば
図7を参照して、前記グリップ(35)は、前記ステアリングホイール(11)と反対側に湾曲した薄肉平板形状に形成され、前記ステアリングホイール(11)を握った手の指にて操作されてなる。
【0010】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、何ら本発明の構成を限定するものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明は、前後進位置検出部をステアリングコラムの下部に配置すると共に、連繋部材の中間部をコラムカバー内に収めたので、前後進位置検出部及び連繋部材がハンドル操作の邪魔にならず操作性を向上でき、かつコラムカバーが一方に膨出することなくすっきりとしたデザインで構成でき意匠性を向上できる。また、前後進位置検出部を検出部ケース内に収納したので、防塵・防水性を向上できる。
また、グリップの操作範囲の外周を覆うガードバーによって、誤ってグリップに手が当たって誤操作してしまうことを防止でき、安全性を向上できる。また、ガイド部とガードバーを一体にして、簡単に構成することができる。
【0012】
請求項2に係る本発明は、グリップがステアリングホイールを握った作業者の指先に馴染むように形成され、作業者は、手の平でステアリングホイールを握り、同時に指でグリップを操作することができ、操作性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明を適用したトラクタを示す全体斜視図。
【
図4】ステアリングコラム及びその周辺部を示す正面図。
【
図5】コラムカバーを取り外した状態のステアリングコラム及びその周辺部を示す正面図。
【
図7】そのグリップを示す図であって、(a)は上方から視た斜視図、(b)は下方から視た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。本発明を適用したトラクタ1(作業車輌)は、
図1に示すように、前輪2及び後輪3により支持される走行機体5と、該走行機体5の後部に昇降自在に連結されたロータリ耕耘装置等の作業機(不図示)と、を備え、上記走行機体5を前進走行させながら、作業機によって耕耘作業等の各種作業を行なう。
【0016】
上記走行機体5は、前後方向に延びる車台6を備えており、該車台6の前部に取付けられて、エンジンルームを覆うボンネット7と、該ボンネット7の後方に配置され、キャビン9に覆われる運転操作部10と、を有している。該キャビン9の左右側方には、開閉自在に支持されたドア9aが取付けられており、作業者が該ドア9aを開閉して、キャビン9内に出入りできるようになっている。
【0017】
上記運転操作部10は、
図2に示すように、上記走行機体5を操向操作するステアリングホイール11と、走行用変速装置を前進、後進及び中立状態に切換え操作する前後進切換えレバー12と、各種操作するタッチボタンスイッチ13と、各種メータ類を表示するメータパネル15と、不図示の運転座席、ブレーキペダル、クラッチペダル、各種作業機レバー等を有している。上記ステアリングホイール11は、回転自在に支持されたステアリングシャフト16の先端に取付けられて回転可能となっており、該ステアリングシャフト16は、ステアリングコラム17によって覆われ保護されている(
図5参照)。
【0018】
該ステアリングコラム17は、更に凹凸の少ない箱型形状のコラムカバー19によってその外周が覆われ、該コラムカバー19は、上記ステアリングホイール11の前方に配置されるパネルバイザー20と、運転座席に着座した作業者の足元正面を覆うパネルリアカバー21と、によってその周囲が覆われている。上記パネルバイザー20は、上記メータパネル15の上方及び側方を覆う庇部20aを有し、該庇部20aによって日差しから上記メータパネル15を保護して、視認性を良くしている。
【0019】
上記ステアリングコラム17内のステアリングシャフト16は、
図3ないし
図6に示すように、ユニバーサルジョイント22を介して不図示のパワーステアリング装置の入力軸に接続されている。上記ステアリングコラム17は、上記走行機体5に固定されたコラム支持部材23に支持軸を中心として前後に傾動調節可能に取付けられ、これにより作業者の体格に合わせてステアリングホイール11を前後に移動させるチルト機構を構成している。また、上記ステアリングコラム17の下部に取付けられた取付ブラケット25と上記コラム支持部材23との間には、スプリング26が張設されており、該スプリング26が上記ステアリングホイール11等の重力に抗して付勢することで、チルト機構によるステアリングホイール11の前後位置調節を楽な力で行えるようになっている。
【0020】
上記ステアリングコラム17の上部には、レバーガイド24が固定されており、該レバーガイド24は、上記前後進切換えレバー12を前進、中立及び後進位置に案内するガイド部24aと、上記前後進切換えレバー12のグリップ35の操作範囲外周を覆うガードバー24bと、を有している。上記ガイド部24aは、T字状に形成されたガイド穴28を有しており、上記前後進切換えレバー12は、上記ガイド穴28に遊嵌されて、操作範囲が規定されている。具体的には、該ガイド穴28の機体前方側が前進位置、機体後方側が後進位置となり、これら前進位置及び後進位置の中間(
図6参照)が中立位置となる。上記ガードバー24bは、上記前後進切換えレバー12のこれら前進、中立及び後進位置における、上記グリップ35の操作範囲を覆うようにU字状に形成され、誤って上記グリップ35に手が当たって誤操作してしまうことを防止し、安全性を向上する。
【0021】
上記ステアリングコラム17の下部には、上記取付ブラケット25を介してスイッチケース27(検出部ケース)が固定されており、該スイッチケース27には、上記前後進切換えレバー12の前進、中立及び後進位置を検出するマイクロスイッチ29(前後進位置検出部)が内蔵されている。該スイッチケース27により、電気的な動作をするマイクロスイッチ29は防水・防塵対策が取られ、不具合を防止している。
【0022】
上記マイクロスイッチ29からは、
図6に示すように、上記スイッチケース27の外方にアーム30が突出しており、該アーム30は、上記スイッチケース27の規制部31の長穴31aによって、機体前後方向の回動角度が規制されている。上記アーム30の先端には、U字状のブラケット32が固定されており、該ブラケット32の内方には、軸33が回転自在に支持されている。そして、上記軸33には、該軸33と直交する方向に延びる連繋部材36が固定され、該連繋部材36は、上記グリップ35と共に上記前後進切換えレバー12を構成している。したがって、上記連繋部材36の先端に固定される上記グリップ35は、上記軸33を中心に揺動自在となり、上記マイクロスイッチ29は、上記軸33、ブラケット32及びアーム30を介して、上記ガイド穴28及び上記長穴31aの規制範囲で、上記グリップ35の機体前後方向の回動角度、すなわち前進、中立及び後進位置を認識可能となる。上記マイクロスイッチ29の検出結果は、不図示の制御部に信号として送られ、該制御部が、ミッションケース内の変速装置に指示を送る。なお、上記前後進切換えレバー12は、前進、中立及び後進の操作位置が作業者に分かりやすいように、デテント機構を設けてもよい。
【0023】
上記連繋部材36は、上記コラムカバー19内に収納される中間部36aと、該中間部36aの上方にて上記コラムカバー19から突出して上記グリップ35に連結する上部36bと、上記中間部36aの下方にて上記コラムカバー19から突出して上記アーム30に連結する下部36cと、を有している。すなわち、上記アーム30から上記軸33,ブラケット32を介して、上記下部36cが立ち上がり、上記ステアリングコラム17に近接するようにして上記中間部36aが上記コラムカバー19内を上方に延び、上記上部36bがクランク状に屈曲して、上記ステアリングホイール11の下方近傍に配置された上記グリップ35に連結する(
図4参照)。
【0024】
上記グリップ35は、
図7に示すように、上記ステアリングホイール11と反対側に湾曲した薄肉平板形状に形成されると共に、その上面にそれぞれ前進、中立及び後進を意味するF、N及びRの文字が彫られている。これら文字は、作業者が上記グリップ35の操作方向を認識しやすいように設けられたものであり、彫形成されたものに限定されず、例えばシール等でもよい。上記グリップ35の底面かつ上記連繋部材36との接続部分35aと反対側には、凸部35bが設けられており、該凸部35bに指を引掛けることで、指のみで上記前後進切換えレバー12の前進、中立及び後進位置への切換え操作が可能となっている。
【0025】
本実施の形態は、以上のような構成からなるので、作業者は、ステアリングホイール11を操作してトラクタ1の操向操作を行う。その際、片手(本実施の形態では左手)でステアリングホイール11を握りながら、同時にその指で前後進切換えレバー12のグリップ35を操作する。
【0026】
停止時に前後進切換えレバー12が中立位置(N)となっている場合には、グリップ35の凸部35bに指を引掛けて、まずグリップ35を軸33を中心に上方に回動させる。すると、連繋部材36の上部36bが、ガイド穴28内を機体右方(ステアリングホイール11方向)に移動し、機体前後方向に移動可能となる。この状態で、走行機体5を前進させたい場合には、凸部35bに引掛けた指でグリップ35を機体前方に操作する。該グリップ35の機体前後方向の移動量は、ステアリングコラム17の下部に配置されたマイクロスイッチ29が、アーム30を介して検出し、制御部によって変速指令が出される。走行機体5を後進させたい場合には、同様にして、グリップ35を機体後方に操作する。片手でステアリングホイール11を操作しつつ、前後進切換えレバー12のグリップ35を操作可能なので、操作性が良く、特に、前進後進の切換え操作の多いローダ作業等においては、ステアリングホイール11と前後進切換えレバー12のグリップ35とを持ち替えることなく、作業者の操作負担を減少することができる。
【0027】
また、スイッチケース27に内蔵されたマイクロスイッチ29をステアリングコラム17の下部に配置すると共に、連繋部材36の中間部36aをコラムカバー19内に収めたので、これらマイクロスイッチ29及び連繋部材36がステアリングホイール11の操作に邪魔にならず操作性を向上でき、コラムカバー19をすっきりとしたデザインで構成でき、意匠性を向上できる。また、スイッチケース27によって電気的に前後進検出レバー12の操作位置を検出するので、前後進検出レバーからワイヤ等で油圧切換えバルブを操作する機械的なものに比して、操作ストロークが小さく、かつ操作力が小さくて済み、指先のみによって前後進検出レバー12を操作できる。
【0028】
なお、本発明は、トラクタに限らず、コンバインやハーベスタ等の他の作業車輌に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 作業車輌(トラクタ)
11 ステアリングホイール
12 前後進切換えレバー
16 ステアリングシャフト
17 ステアリングコラム
19 コラムカバー
24 レバーガイド
24a ガイド部
24b ガードバー
27 検出部ケース(スイッチケース)
29 前後進位置検出部(マイクロスイッチ)
35 グリップ
36 連繋部材
36a 中間部
36b 上部
36c 下部