特許第6181412号(P6181412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トプコンの特許一覧

<>
  • 特許6181412-簡易距離計 図000002
  • 特許6181412-簡易距離計 図000003
  • 特許6181412-簡易距離計 図000004
  • 特許6181412-簡易距離計 図000005
  • 特許6181412-簡易距離計 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181412
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】簡易距離計
(51)【国際特許分類】
   G01C 7/04 20060101AFI20170807BHJP
   G01C 5/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   G01C7/04
   G01C5/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-91127(P2013-91127)
(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公開番号】特開2014-215110(P2014-215110A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 薫
(72)【発明者】
【氏名】弥延 聡
(72)【発明者】
【氏名】古平 純一
【審査官】 三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−042758(JP,A)
【文献】 特開2005−030779(JP,A)
【文献】 特開2011−149854(JP,A)
【文献】 特開2009−132237(JP,A)
【文献】 特開2012−048942(JP,A)
【文献】 特開平09−033559(JP,A)
【文献】 特開昭63−262505(JP,A)
【文献】 特開2001−153883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00− 1/14
5/00−15/14
G01B 3/00− 3/08
3/11− 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、該フレームの前後に配設した少なくとも2つの車輪と、それぞれの車輪の回転を検出する少なくとも2つの回転検出器と、演算制御部と、前記フレームに設けられた傾斜検出手段とを有し、前記回転検出器により前記車輪の回転量を取得し、前記傾斜検出手段により前記回転量に対応させた前記フレームの傾斜を取得し、
前記演算制御部は、前記回転検出器の検出結果に基づき測定した移動距離と前記傾斜検出手段の検出結果とに基づき移動した軌跡及び比高を演算し、
前記演算制御部は、前記回転検出器の検出結果に基づき車輪間での回転偏差を演算する様構成したことを特徴とする簡易距離計。
【請求項2】
方位センサを更に具備する請求項1の簡易距離計。
【請求項3】
前記演算制御部は、前記回転偏差が予め設定した許容値を超えた場合には、再測定を行う警告を発する様構成した請求項1の簡易距離計。
【請求項4】
前記演算制御部は、前記フレームに設けられた請求項1〜請求項3の内いずれかに記載の簡易距離計。
【請求項5】
端末装置を更に具備し、前記演算制御部は前記端末装置に設けられた請求項1〜請求項3の内いずれかに記載の簡易距離計。
【請求項6】
前記傾斜検出手段は、2種類の傾斜センサから構成され、2種類の内一方は絶対水平を検出し、他方は前記一方の傾斜センサが検出した絶対水平からの偏差を検出する様構成した請求項1〜請求項5の内いずれかに記載の簡易距離計。
【請求項7】
前記他方の傾斜センサは、加速度センサである請求項6の簡易距離計。
【請求項8】
前記加速度センサからの出力信号の内、高周波分を抽出し正負逆転した信号を作成し、該正負逆転した信号を前記出力信号に合算する請求項7の簡易距離計。
【請求項9】
前記加速度センサを少なくとも2つ設け、一つの前記加速度センサからの出力信号の内、高周波分を抽出し正負逆転した信号を作成し、該正負逆転した信号を他の前記加速度センサからの出力信号に合算し、前記フレームの傾斜を検出する請求項8の簡易距離計。
【請求項10】
前記回転検出器からの信号に基づき加速度が算出され、該加速度に基づき前記加速度センサの検出結果を補正する請求項7〜請求項9の内いずれかに記載の簡易距離計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は距離及び比高を簡便に測定する簡易距離計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土木工事に於ける出来高管理や横断測量に際し、一般的に使用されている方法としてはトータルステーションを用いた測量が挙げられる。
【0003】
トータルステーションを用いた測量では、高精度の測量が可能であるが、又測量場所から離れた位置にトータルステーションを設置しなければならないので、場所的な制約があり、又セッティングに時間が掛り、測量にも作業時間が掛る。更に、複数の作業者が必要となる等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−294312号公報
【特許文献2】特開2013−29470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は斯かる実情に鑑み、場所の制約を受けることなく而も簡便に測量が行える様にした簡易距離計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、フレームと、該フレームの前後に配設した少なくとも2つの車輪と、該車輪の回転を検出する回転検出器と、前記フレームに設けられた傾斜検出手段とを有し、前記回転検出器により前記車輪の回転量を取得し、前記傾斜検出手段により前記回転量に対応させた前記フレームの傾斜を取得する様構成した簡易距離計に係るものである。
【0007】
又本発明は、方位センサを更に具備する簡易距離計に係るものである。
【0008】
又本発明は、演算制御部を更に具備し、前記回転検出器の検出結果に基づき測定した移動距離と前記傾斜検出手段の検出結果とに基づき移動した軌跡及び比高を演算する簡易距離計に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記演算制御部は、前記フレームに設けられた簡易距離計に係るものである。
【0010】
又本発明は、端末装置を更に具備し、前記演算制御部は前記端末装置に設けられた簡易距離計に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記傾斜検出手段は、2種類の傾斜センサから構成され、2種類の内一方は絶対水平を検出し、他方は前記一方の傾斜センサが検出した絶対水平からの偏差を検出する様構成した簡易距離計に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記他方の傾斜センサは、加速度センサである簡易距離計に係るものである。
【0013】
又本発明は、前記加速度センサからの出力信号の内、高周波分を抽出し正負逆転した信号を作成し、該正負逆転した信号を前記出力信号に合算する簡易距離計に係るものである。
【0014】
又本発明は、前記加速度センサを少なくとも2つ設け、一つの前記加速度センサからの出力信号の内、高周波分を抽出し正負逆転した信号を作成し、該正負逆転した信号を他の前記加速度センサからの出力信号に合算し、前記フレームの傾斜を検出する簡易距離計に係るものである。
【0015】
更に又本発明は、前記回転検出器からの信号に基づき加速度が算出され、該加速度に基づき前記加速度センサの検出結果を補正する簡易距離計に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フレームと、該フレームの前後に配設した少なくとも2つの車輪と、該車輪の回転を検出する回転検出器と、前記フレームに設けられた傾斜検出手段とを有し、前記回転検出器により前記車輪の回転量を取得し、前記傾斜検出手段により前記回転量に対応させた前記フレームの傾斜を取得する様構成したので、場所の制約を受けることなく而も簡便に距離測定と走行面の傾斜測定を同時に行える。
【0017】
又本発明によれば、方位センサを更に具備するので、所望の方向の距離測定と走行面の傾斜測定を行うことができる。
【0018】
又本発明によれば、演算制御部を更に具備し、前記回転検出器の検出結果に基づき測定した移動距離と前記傾斜検出手段の検出結果とに基づき移動した軌跡及び比高を演算するので、トータルステーションの様な高価な装置を用いることなく、且つ測定場所の制約を受けることなく簡便に距離測定と比高の測定を同時に行える。
【0019】
又本発明によれば、前記傾斜検出手段は、2種類の傾斜センサから構成され、2種類の内一方は絶対水平を検出し、他方は前記一方の傾斜センサが検出した絶対水平からの偏差を検出する様構成したので、広範囲の傾斜測定が高い信頼性で行える。
【0020】
又本発明によれば、前記加速度センサからの出力信号の内、高周波分を抽出し正負逆転した信号を作成し、該正負逆転した信号を前記出力信号に合算するので、走行中の振動が傾斜測定に影響することが排除される。
【0021】
又本発明によれば、前記加速度センサを少なくとも2つ設け、一つの前記加速度センサからの出力信号の内、高周波分を抽出し正負逆転した信号を作成し、該正負逆転した信号を他の前記加速度センサからの出力信号に合算し、前記フレームの傾斜を検出するので、走行中の振動が傾斜測定に影響することが排除される。
【0022】
更に又本発明によれば、前記回転検出器からの信号に基づき加速度が算出され、該加速度に基づき前記加速度センサの検出結果を補正するので、簡易距離計走行開始、停止時に発生する加速度が傾斜測定に及す影響を排除することができる等の優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例に係る簡易距離計の斜視図である。
図2】該簡易距離計に用いられるデータ処理装置の概略構成図である。
図3】該簡易距離計により比高を測定する場合の説明図である。
図4】加速度センサからの信号から振動成分を除去する場合の説明図である。
図5】本発明の他の実施例に係る簡易距離計を示し、該簡易距離計が3輪車である場合の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0025】
図1に於いて、本発明の実施例に係る簡易距離計1について説明する。
【0026】
フレーム2の前後に前走行輪3、後走行輪4が設けられ、前記前走行輪3は該前走行輪3と一体に回転する回転軸を介して前記フレーム2に支持され、前記後走行輪4は該後走行輪4と一体に回転する回転軸を介して前記フレーム2に支持されている。前記前走行輪3、前記後走行輪4は同径であり、又直径は既知となっている。
【0027】
前記前走行輪3の回転軸に回転検出器としての前エンコーダ5が設けられ、前記前走行輪3の回転は前記前エンコーダ5により検出され、前記後走行輪4の回転軸に回転検出器としての後エンコーダ6が設けられ、該後エンコーダ6により前記後走行輪4の回転が検出される様になっている。尚、前記前エンコーダ5、前記後エンコーダ6はいずれか一方のみでもよい。
【0028】
前記フレーム2の上面には、進行方向にのみ揺動自在に、手押し棒7が設けられている。又、前記フレーム2の側面には、データ処理装置8(後述)が設けられている。
【0029】
以下、図2により前記データ処理装置8について説明する。
【0030】
該データ処理装置8は防水構造となっており、防水構造のユニットケース9に演算制御部11、傾斜センサ12、加速度センサ13、方位センサ14、通信部(通信モジュール)15、電源16等が収納される構造となっている。更に、前記演算制御部11は、CPUで代表される演算部17、記憶部18、入出力部19等で構成されている。
【0031】
前記傾斜センサ12、前記加速度センサ13は傾斜検出手段を構成し、前記傾斜センサ12は絶対水平を高精度で検出し、前記加速度センサ13は、例えばメムスセンサであり、前記傾斜センサ12が検出した水平からの相対的な傾斜を検出する。又前記加速度センサ(以下、メムスセンサと称す)13は、3軸方向の傾斜を検出可能であると共に、前記傾斜センサ12より応答速度が速く、更に広範囲の傾斜を検出可能となっている。
【0032】
前記傾斜センサ12、前記メムスセンサ13、前記方位センサ14が検出した結果は、前記前エンコーダ5、前記後エンコーダ6が検出した回転量に関連づけて前記演算制御部11に入力される。
【0033】
前記通信部15は、取得したデータ及び演算した結果を、表示部22を有する端末装置21、例えばPDA、PC等に無線通信する。又、前記端末装置21は、市販の携帯電話等で代用することもできる。
【0034】
前記記憶部18には、演算プログラム、通信制御プログラム、入出力制御プログラム等が格納され、前記演算部17は前記プログラムを運用して、各種演算処理、データ処理を実行し、又データを前記端末装置21に送信する。
【0035】
前記電源16は、前記演算制御部11、前記通信部15に必要な電力を供給する。又、前記電源16としては充電可能な電池、或は交換可能な電池が用いられる。
【0036】
前記前エンコーダ5で検出された前記前走行輪3の回転角(該前走行輪3の回転に関する情報)、及び前記後エンコーダ6で検出された前記後走行輪4の回転角(該後走行輪4の回転に関する情報)は、それぞれ前記演算制御部11に入力される。
【0037】
以下、本実施例に係る簡易距離計1の作用について説明する。
【0038】
前記簡易距離計1を走行させると、前記前走行輪3、前記後走行輪4が回転し、回転量は、それぞれ前記前エンコーダ5、前記後エンコーダ6により検出され、検出結果は前記演算制御部11に入力される。
【0039】
該演算制御部11は、両エンコーダ5,6の検出結果に基づき前記前走行輪3、前記後走行輪4の回転量を演算し、更に得られた回転量及び両車輪の直径から、移動距離を演算する。更に、前記傾斜センサ12の検出結果から、水平面を走行したか、斜面を走行したかが判断される。又、前記演算制御部11は前記両エンコーダ5,6の検出結果、前記傾斜センサ12の検出結果に基づき比高を演算する。
【0040】
前記傾斜センサ12が水平を検出した状態での走行であると、移動距離は水平移動距離となる。又、前記傾斜センサ12が傾斜を検出した状態での走行であると、移動は斜面を移動したことになり、前記傾斜センサ12が検出した傾斜角と前記簡易距離計1の移動距離により、水平方向の移動距離と移動中の高さ変化が求められる。更に、測量後のデータにより、測量中の前記簡易距離計1の軌跡と、比高が求められる。
【0041】
従って、測定したい2点間を前記簡易距離計1を走行させることで、或は測定したい測線に沿って前記簡易距離計1を走行させることで、距離と比高が測定できる。
【0042】
更に、前記傾斜センサ12が検出する傾斜角が、移動と共に変化する場合がある。例えば、道路の横断測量を行う場合、道路の断面は雨水を排水する為に中央が高く、路側に向って下り傾斜している。この為、前記簡易距離計1で横断測量を行った場合、前記傾斜センサ12は、測定開始時に傾斜を検出し、検出する傾斜は漸次減少し、道路中央で水平を検出し、更に道路中央を越えると逆方向の傾斜を検出する。
【0043】
前記演算制御部11は、前記前エンコーダ5、前記後エンコーダ6からの検出結果に基づき微小時間単位で移動量を演算し、更に前記傾斜センサ12からの検出結果に基づき傾斜角を求め、微小時間単位での移動量と傾斜角に基づき得られる水平移動量と比高とをそれぞれ、積分することで、傾斜を有する面での水平移動距離と比高とを求めることができる。尚、微小時間単位で移動量を演算し、更に前記傾斜センサ12からの検出結果に基づき傾斜角を求め、リアルタイムで比高の変化量を求めることで、測定面が平面でなく凹凸がある曲面であっても測定が可能である。
【0044】
尚、前記簡易距離計1の傾斜が、前記傾斜センサ12の検出範囲を超える場合は、前記メムスセンサ13によって傾斜が検出される。該メムスセンサ13が検出する傾斜は、前記傾斜センサ12によって検出された高精度の水平を基準としているので、前記メムスセンサ13の検出精度の信頼性は高い。
【0045】
尚、斜面を走行させた場合の、比高の測定を図3に示している。
【0046】
図3中、Dは前記前走行輪3、前記後走行輪4の直径、更にθは微小時間での前記前走行輪3、前記後走行輪4の回転角、Vは前記傾斜センサ12が検出する傾斜角を示している。
【0047】
前記簡易距離計1の移動距離LはΣ(Dθ/2)、比高HはΣ(DθsinV/2)で表される。
【0048】
前記演算制御部11で演算(測定)した移動距離、比高は、前記通信部15を介して前記端末装置21に送信され、前記表示部22に表示される。
【0049】
次に、前記演算制御部11は、前記前エンコーダ5と前記後エンコーダ6との信号の偏差を常時演算しており、前記前エンコーダ5と前記後エンコーダ6との偏差が生じた場合、いずれか一方の車輪が走行面から離反したか、或は一方の車輪がスリップしたか、或は一方の車輪が障害物により正常な回転が妨げられたことになる。この場合、前記前エンコーダ5、前記後エンコーダ6の検出結果に基づき演算した移動距離の信頼性が低下する。
従って、この場合、両車輪間で回転偏差が発生したことを前記端末装置21に送信し、前記表示部22に表示させる。作業者は、前記表示部22の表示内容により、測定を続行するか或は再測定を行うか等を判断することができる。
【0050】
尚、前記演算制御部11に予め許容値を設定し、該演算制御部11は、偏差が許容値を超えた場合には再測定を行う警告を発する様にしてもよい。
【0051】
又、前記方位センサ14の検出結果に基づき、進行方向を監視することもできる。前記簡易距離計1が蛇行して移動した場合等では、前記方位センサ14の検出結果に基づき蛇行を修正することができる。
【0052】
又、測線が所定の方位に設定された場合では、前記方位センサ14の検出結果、即ち前記簡易距離計1の進行方向を、前記端末装置21に送信し、前記表示部22に表示させれば、作業者は設定された方位に前記簡易距離計1を移動させることができる。
【0053】
尚、前記演算制御部11を前記簡易距離計1に設けたが、前記端末装置21に前記演算制御部11の機能を持たせてもよい。この場合、前記傾斜センサ12、前記メムスセンサ13、前記方位センサ14、前記前エンコーダ5、前記後エンコーダ6の検出結果を、前記通信部15を介して前記端末装置21に送信し、該端末装置21で前記簡易距離計1の移動距離の演算、移動軌跡の演算、比高の演算を行ってもよい。
【0054】
次に、測定する地面の表面は滑らかとは限らない。従って、前記簡易距離計1を走行させることで該簡易距離計1が振動する。振動は、加速度として前記傾斜センサ12、前記メムスセンサ13に作用するので、傾斜の検出結果に影響を及ぼす可能性がある。又、前記簡易距離計1を移動、停止する場合にも加速度が作用し、この移動、停止時の加速度も傾斜の検出結果に影響を及ぼす可能性がある。
【0055】
以下、走行時の振動、移動停止時の加速度の影響を排除することについて説明する。
【0056】
先ず、走行時の振動について説明する。
【0057】
前記メムスセンサ13を傾斜検出用と振動排除用の2つ設ける。尚、2つの前記メムスセンサ13は、できるだけ近くに、又好ましくは一体に設け、検出する振動が同等となる様にする。
【0058】
図4(A)中、曲線mは、前記傾斜検出用のメムスセンサ13が出力する信号であり、図中、0は水平を検出した際の出力であり、vのレベルの信号(図中1点鎖線)は、傾斜に対応した信号である。
【0059】
前記簡易距離計1を走行させた場合、走行面の傾斜が急激に変化することはなく、走行面の傾斜の変化に対応する信号レベル変化は極めて小さく、又変化も極めて緩やかである。従って、所定時間、例えば数秒単位では、走行面の傾斜に対応したレベル変化、振動は殆どなく、図示の如く直流成分として殆ど差支えない。
【0060】
従って、走行時に見られる振動波形は殆どが、走行に伴う振動(傾斜検出の信号と対比して高周波振動と称す)として差支えない。
【0061】
次に、前記振動排除用のメムスセンサ13からは、前記傾斜検出用のメムスセンサ13と同様の信号(m)が出力される。前記両メムスセンサ13,13の信号は、前記演算制御部11に入力される。該演算制御部11では、前記振動排除用のメムスセンサ13から高周波成分だけ抽出し、上下逆転した(+と−とを逆転させた)信号nを作成する。前記信号nは、図4(B)中、曲線nで表される。
【0062】
前記信号nを前記信号mに合算することで、高周波成分が相殺され、傾斜を検出する信号vのみが得られる。
【0063】
尚、前記振動排除用のメムスセンサ13を省略し、前記傾斜検出用のメムスセンサ13から得られる信号から高周波成分のみの信号を取得し、該高周波成分を正負逆転させ、正負逆転させた信号を元の信号、即ち前記傾斜検出用のメムスセンサ13が出力する信号に合算してもよい。
【0064】
次に、移動停止時の加速度の影響を排除することについて説明する。
【0065】
前記前走行輪3、前記後走行輪4の回転角は、前記前エンコーダ5、前記後エンコーダ6により検出され、検出結果は常時前記演算制御部11に入力されている。
【0066】
該演算制御部11は、前記前エンコーダ5、前記後エンコーダ6の少なくとも、いずれか一方の検出結果を微分して、加速度(回転数変化率)を演算する。演算された加速度が所定の値より大きくなった場合に、演算された加速度に基づき前記加速度センサ13が検出した傾斜角の補正を行う。
【0067】
図5は他の実施例を示しており、該他の実施例では簡易距離計1を前輪25、左輪26、右輪27の3輪車とし、各車輪25,26,27を独立して回転自在とし、各車輪25,26,27の回転軸にそれぞれエンコーダ28,29,30を取付け、該エンコーダ28,29,30により前記車輪25,26,27の回転数を個別に検出する様にしたものである。
【0068】
前記エンコーダ29,30により、前記左輪26、前記右輪27の回転数を個別に検出することで、前記簡易距離計1が方向変換した場合に、内外輪差から方向変換の状態が検出できる。更に、前記方位センサ14が検出する方位と、内外輪差との比較で、前記方向変換の検出状態の信頼性が向上する。
【0069】
又、前記左輪26、前記右輪27のいずれかが、跳ねる等し、地表から離れた場合でも、前記エンコーダ29,30からの信号を連続的に監視することで、前記エンコーダ29,30からの出力信号の比較に基づき、接地していると判断されたエンコーダからの信号を取得することで、精度の高い距離測定を実行できる。
【符号の説明】
【0070】
1 簡易距離計
2 フレーム
3 前走行輪
4 後走行輪
5 前エンコーダ
6 後エンコーダ
8 データ処理装置
9 ユニットケース
11 演算制御部
12 傾斜センサ
13 メムスセンサ
14 方位センサ
15 通信部
16 電源
17 演算部
18 記憶部
19 入出力部
21 端末装置
22 表示部
図1
図2
図3
図4
図5