特許第6181413号(P6181413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181413
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】庇先端部構造及び庇構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 7/02 20060101AFI20170807BHJP
   E04F 10/08 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   E04B7/02 501D
   E04F10/08
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-93633(P2013-93633)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-214521(P2014-214521A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 伸武
(72)【発明者】
【氏名】一柳 裕昭
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−126956(JP,A)
【文献】 特開2012−241355(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0005732(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 7/02
E04F 10/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体から張り出す庇本体の先端部に設けられる庇先端部構造であって、
下り傾斜状に形成される傾斜本体部と
記傾斜本体部に対向して設けられる下板部と、を備え
前記傾斜本体部には、前記傾斜本体部の傾斜方向に交差する凸条部が設けられており、当該凸条部の延在方向のいずれかの位置には、切欠き部が設けられていることを特徴とする庇先端部構造。
【請求項2】
前記傾斜本体部の下り先端部に滑らかに連結されて円弧状に下る曲面部と、
前記曲面部の下端部から下方に延在する前面部と、を更に備え、
前記下板部は、前記曲面部又は前記前面部に連結されており、少なくとも前記前面部の下端部は前記下板部よりも下方に突出していることを特徴とする請求項1に記載の庇先端部構造。
【請求項3】
前記曲面部の曲率半径は、2〜6mmとされていることを特徴とする請求項2に記載の庇先端部構造。
【請求項4】
躯体から張り出して設けられる庇構造であって、
前記躯体の表面から張り出して設けられ、基端部から先端部にかけて下り傾斜状に形成された上面部を有する庇本体と、前記庇本体の先端部に連結される庇先端部材と、を備え、
前記庇先端部材は、
下り傾斜状に形成される傾斜本体部と
記傾斜本体部に対向して設けられる下板部と、を有し
前記庇本体は、前記上面部の先端部から下方に突出する鼻隠し部を備え、
前記庇先端部材は、前記鼻隠し部の上端部に取り付けられ、前記庇本体の上面部に連結された第1の水切り材と、前記鼻隠し部の下端部に取り付けられた第2の水切り材とを有することを特徴とする庇構造。
【請求項5】
前記庇先端部材は、
前記傾斜本体部の下り先端部に滑らかに連結されて円弧状に下る曲面部と、
前記曲面部の下端部から下方に延在する前面部と、を更に有し、
前記下板部は、前記曲面部又は前記前面部に連結されており、少なくとも前記前面部の下端部は前記下板部よりも下方に突出していることを特徴とする請求項4に記載の庇構造。
【請求項6】
前記第1の水切りの先端部は、前記第2の水切りの先端部よりも前記躯体から離れる側に突出して設けられていることを特徴とする請求項4又は5に記載の庇構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅建物の窓や玄関等に設けられる庇の先端部構造及び庇構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雨水の吹き込み等を回避する目的で建物の窓上や玄関上に庇を設けることがある。このような庇の構造として、例えば特許文献1及び2に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された庇の構造では、庇の上面が外側へ向かって下がるように傾斜し、下面は水平に延び、当該上面及び下面の先端部同士を連結する端面は、垂直に延びている。特許文献2に記載された庇構造では、庇先端部となる板材端部が曲面状に湾曲形成されると共に、板材端部の小口面が居室側に向けて上り傾斜状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−113287号公報
【特許文献2】特開2013−36253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、庇の上面に振り落ちた雨水は、庇の先端部から下方に滴下乃至流下する。上記特許文献1に記載の庇構造では、上面に沿って外方へ雨水が流れ、端面を伝わって下方へ落ちるが、端面と下面との間の角部で下面に回り込んでしまい、広い下面を伝って建物側へ移動してしまう虞がある。一方、上記特許文献2に記載の庇構造では、このような問題には対応できるものの、庇の先端部を一枚の板材により形成するため、強度が弱いのみならず、当該庇先端部を見上げた時に曲面部の裏側等が見えてしまい、美感を損なう虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、水切り性能を確保しつつ、美感を損なわない庇先端部構造及び庇構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る庇先端部構造は、躯体から張り出す庇本体の先端部に設けられる庇先端部構造であって、下り傾斜状に形成される傾斜本体部と傾斜本体部に対向して設けられる下板部と、を備え、傾斜本体部には、傾斜本体部の傾斜方向に交差する凸条部が設けられており、当該凸条部の延在方向のいずれかの位置には、切欠き部が設けられている
【0007】
本発明の庇先端部構造では、傾斜本体部が下り傾斜状に形成されているので、当該傾斜本体部上の水は、下り先端部に向けて重力落下することとなる。傾斜本体部の下方を下板部が覆うことになるので、下方から当該先端部を見上げた際の美感が維持される。また、傾斜本体部に凸条部が設けられることとなるので、傾斜本体部を流下する雨水は、当該凸条部の凸部に一度流下を塞き止められることとなる。当該凸条部の両側部の少なくとも一方には、切欠き部が設けられているので、当該切欠き部を通じて雨水が流れることとなる。これにより、雨水が落下する範囲を狭めて水切りを行うことができる。以上より、水切り性能を確保しつつ、美感を損なわない庇先端部構造を提供することができる。
【0008】
また、曲面部の曲率半径は、2〜6mmとされていることが好ましい。このように構成することで、より速やかな雨水の落下を図ることができる。
【0009】
また、庇先端部構造は、傾斜本体部の下り先端部に滑らかに連結されて円弧状に下る曲面部と、曲面部の下端部から下方に延在する前面部と、を更に備え、下板部は、曲面部又は前面部に連結されており、少なくとも前面部の下端部は下板部よりも下方に突出していることが好ましい。傾斜本体部上の水は、下り先端部にて曲面部に沿って下方に向けて流下して前面部に至り、当該前面部の下端部から落下することとなる。この際、当該前面部の下端部は下板部よりも下方に突出しているので、当該下端部に至った水滴は下板部側に回り込むことなく速やかに落下することとなる。
【0010】
本発明の庇構造は、躯体から張り出して設けられる庇構造であって、躯体の表面から張り出して設けられ、基端部から先端部にかけて下り傾斜状に形成された上面部を有する庇本体と、庇本体の先端部に連結される庇先端部材と、を備え、庇先端部材は、下り傾斜状に形成される傾斜本体部と傾斜本体部に対向して設けられる下板部と、を有し、庇本体は、上面部の先端部から下方に突出する鼻隠し部を備え、庇先端部材は、鼻隠し部の上端部に取り付けられ、庇本体の上面部に連結された第1の水切り材と、鼻隠し部の下端部に取り付けられた第2の水切り材とを有する
【0011】
本発明の庇構造では、庇本体の先端部に連結される庇先端部材を備え、当該庇先端部材の傾斜本体部が、下り傾斜状に形成されているので、当該傾斜本体部上の水は、下り先端部に向けて重力落下することとなる。このような庇先端部材が、庇本体の先端部に連結されるので、庇本体の上面部に降りかかる雨水等を良好に流下させることができる。また、傾斜本体部の下方を下板部が覆うことになるので、下方から当該先端部を見上げた際の美感が維持される。庇本体の上面部に連結された第1の水切り材により、庇本体の上面部に降りかかる雨水等を良好に流下させることができる。また、鼻隠し部の下端部に取り付けられた第2の水切り材により、鼻隠し部を流下する雨水を第2の水切り材から流下させることができる。以上より、水切り性能を確保しつつ、美感を損なわない庇構造を提供することができる。
【0012】
また、庇先端部材は、傾斜本体部の下り先端部に滑らかに連結されて円弧状に下る曲面部と、曲面部の下端部から下方に延在する前面部と、を更に有し、下板部は、曲面部又は前面部に連結されており、少なくとも前面部の下端部は下板部よりも下方に突出していることが好ましい。傾斜本体部上の水は、下り先端部にて曲面部に沿って下方に向けて流下して前面部に至り、当該前面部の下端部から落下することとなる。この際、当該前面部の下端部は下板部よりも下方に突出しているので、当該下端部に至った水滴は下板部側に回り込むことなく速やかに落下することとなる。
【0013】
また、第1の水切り材の先端部は、第2の水切り材の先端部よりも躯体から離れる側に突出して設けられていることが好ましい。これによれば、第1の水切り材から落下する雨水は第2の水切り材上に落下することなく、第2の水切り材の前方を通過する。よって、速やかな排水処理がなされることとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水切り性能を確保しつつ、美感を損なわない庇先端部構造及び庇構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る庇構造の斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る庇構造の分解斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る庇構造の上面図である。
図4図3のIV−IV線に沿った断面図である。
図5図4中の第1の水切り材付近を拡大して示す断面図である。
図6】第1の水切り材の斜視図である。
図7】第1の水切り材の平面図である。
図8】第1の水切り材の底面図である。
図9】第1の水切り材の右側面図である。
図10】第1の水切り材の左側面図である。
図11】第1の水切り材の正面図である。
図12】第1の水切り材の背面図である。
図13図11のXIII−XIII線に沿った断面図である。
図14図9のXIV−XIV線に沿った断面図である。
図15】本発明の第2実施形態に係る庇構造の斜視図である。
図16図15中の第1の水切り材付近を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る庇先端部構造及び庇構造の実施形態を説明する。一般に、庇は、建物の窓や出入り口などの開口の上に取り付けられ、日よけや雨よけ用として機能する小型の片流れ屋根である。本実施形態に係る庇構造1は、躯体Xから張り出すように設けられて庇として機能する構造体を広く意図している。以下では、入隅部Bと出隅部Cとを備えた建物の庇構造1を例に説明する。なお、躯体とは、建物の主要な構造体、または骨組みを意味する。以下の実施形態では、躯体Xは、基礎、基礎上に立設された柱、及び柱同士に渡された梁などを備える。
【0017】
[第1実施形態]
本実施形態に係る建物Aは、工業化住宅(「規格化住宅」ともいう)であり、例えば、躯体Xに取り付けられた外壁2を備える。外壁2としては、例えば、耐火性や断熱性、更に、作業性を考慮して軽量気泡コンクリート(ALC)パネルなどの外壁パネルが用いられる。
【0018】
図1及び図3に示されるように、建物Aは、入隅部Bと出隅部Cとを備えている。入隅部Bは直交する二つの外壁2a,2bが入り合って形成される部分であり、室外側から見て凹状となる角部分である。出隅部Cは直交する二つの外壁2a,2cが出合って形成される部分であり、室外側から見て凸状となる角部分である。庇構造1は、外壁面(躯体表面)2dに沿って設けられており、たとえば入隅部Bから出隅部Cにかけて設けられ、更に、出隅部Cを跨ぎ、方向を変えて延在する。庇構造1の入隅部B側の端1aは、外壁2bの外壁面2dに当接して閉鎖された端部を形成し、反対側の端1bは、外壁2cの外壁面2dに当接することなく、開放された端部を形成する。
【0019】
最初に庇構造1の概要を説明する。図1図2、及び図4に示されるように、庇構造1は、躯体Xに固定された複数のアーム部3と、アーム部3に支持された庇本体4とを備えている。アーム部3は板状の部材であり、基端部にはフランジ部3aが設けられている。フランジ部3aは、H形鋼からなる梁6のウェブ部6aに固定されている。また、アーム部の先端部3bは、外壁2a,2cを貫通して外方に突出している。アーム部3の先端部3b同士は、断面C字状の鼻先金物5によって互いに連結されている。
【0020】
庇本体4は、複数の庇ユニット7を横並びに連結することで形成される。各庇ユニット7は、外壁面2dから突き出たアーム部3に被さるように載置され、少なくとも二つのアーム部3によって支持されている。また、庇本体4は、躯体X側の基端部から先端部にかけて下り傾斜状に形成された上面部8を備えており、上面部8には、その先端部9から下方に突出する鼻隠し部11が設けられている。上面部8上に落下した雨水は、先端部9側に向けて流下する。
【0021】
庇本体4の先端部9には、庇先端部材20が連結されている。すなわち、庇先端部材20は、躯体Xから張り出す庇本体4の先端部9に設けられる庇先端部構造10を成している。庇先端部材20は、鼻隠し部11の上端部11aに取り付けられ、庇本体4の上面部8に揃うように連接された第1の水切り材21と、鼻隠し部11の下端部11bに取り付けられた第2の水切り材22とを有する。第1の水切り材21は、複数の庇ユニット7の連結部分7aを跨ぐように配置された横長の部材であり、複数の庇ユニット7の先端側の連結部分7aは第1の水切り材21によって目隠しされる。庇本体4の上面部8を伝って流下した雨水は、第1の水切り材21によって水切りされる。第1の水切り材21の先端部21aは、第2の水切り材22の先端部22aよりも、躯体Xの外壁面2dから離れる側すなわち前方に突出して設けられている。
【0022】
第2の水切り材22は、第1の水切り材21と同様に、複数の庇ユニット7の先端側の連結部分7aを目隠しする。また、第2の水切り材22は、鼻隠し部11の下端部11bに取り付けられており、鼻隠し部11を流下する雨水を受けて流下させる。第2の水切り材22によって、水切りの効果を高めることができる。
【0023】
次に、第1の水切り材21の構成について、詳細に説明する。図5図4中の第1の水切り材21付近を拡大して示す断面図、図6は第1の水切り材21の斜視図、図7は第1の水切り材21の平面図、図8は第1の水切り材21の底面図、図9は第1の水切り材21の右側面図、図10は第1の水切り材21の左側面図、図11は第1の水切り材21の正面図、図12は第1の水切り材21の背面図、図13図11のXIII−XIII線に沿った断面図、図14図9のXIV−XIV線に沿った断面図である。
【0024】
図5に示されるように、庇本体4における先端部9の上部には、段部12及び水平板部13が連接されている。また、庇本体4における鼻隠し部11は、その上端部11aにて連接される前壁部15及び水平板部16を有している。水平板部13の一部と水平板部16の一部とは、重ね合わされている。
【0025】
第1の水切り材21は、金属等により一体的に形成される横長の部材であり(図6参照)、第1の水切り材21の短尺方向を躯体Xから張り出される方向として、庇本体4の鼻隠し部11の上端部11aに取り付けられている。第1の水切り材21の長尺方向の長さは、連結された複数の庇ユニット7における先端部9側の合計長さ、あるいは先端部9を複数つなげた長さに等しく、配置される庇ユニット7の個数によって、例えば600mm〜3600mmの範囲において適宜変更可能である。第1の水切り材21は連結部分7aを跨ぐように配置されるので、最も目立つ庇ユニット7の先端部9側を目隠しし、庇本体4全体として一体感を持たせる機能を有する。複数の第1の水切り材21が設けられる場合には、複数の第1の水切り材21は、先端部9に沿って横方向に並べられる。なお、図7図12では、長さ600mmの第1の水切り材21を図示している。
【0026】
第1の水切り材21は、傾斜本体部23と、曲面部24と、前面部25と、下板部26と、を備える。傾斜本体部23は、立ち上がり状の第1の当接部23aを有し、この第1の当接部23aが、庇本体4の段部12に当接している。傾斜本体部23には、第1の当接部23aを起点として、段部12側を基端に略水平に延在する水平面23bと、水平面23bに連接され、段部12側を基端に下り傾斜する傾斜面23cと、傾斜面23cの先端に位置する下り先端部23dと、が形成されている。傾斜面23cは、水平面23bに比して、躯体Xから張り出される方向に長く延在し、その傾斜角は、庇本体4の上面部8と略同じ傾斜角とされている。庇本体4の上面部8を伝い、上面部8に連接される段部12側へ流下した雨水等の水は、段部12に当接する第1の当接部23a、水平面23b、及び傾斜面23c上をさらに伝って、下り先端部23dに向けて重力落下することとなる。
【0027】
第1の当接部23aと水平面23bとの連接部分には、庇本体4の水平板部13に載置される第1の脚部23eが形成されている。傾斜面23cの基端側には、鼻隠し部11の水平板部16に載置される第2の脚部23fが形成されている。第1の脚部23e及び第2の脚部23fがそれぞれ載置された状態で、水平面23bの上面から例えばビス30等で固定されることにより、第1の水切り材21が鼻隠し部11の上端部11aに取り付けられる。なお、本実施形態では、傾斜面23cの中央から下り先端部23dに亘り、複数の突起23gが下板部26に向かって設けられている。
【0028】
曲面部24は、傾斜本体部23における下り先端部23dに滑らかに連結され、凸円弧状に下り、前面部25に滑らかに連結されている。曲面部24の曲率半径は、例えば2〜6mmとされ、最も好ましくは4mmである。傾斜本体部23の傾斜面23c上を重力落下してきた水は、第1の水切り材21の先端部21aで曲面部24に沿って下方に向けて流下する。
【0029】
前面部25は、曲面部24の下端部に連結されて、略鉛直方向に延在している。前面部25の下端部25cは、例えば円弧状に形成される丸端部25aと、丸端部25aに連接される傾斜端部25bと、を有している。丸端部25aは、前面部25の下端において鼻隠し部11から離れた外縁側に形成されている。傾斜端部25bは、丸端部25aから鼻隠し部11側に向かって上り傾斜状に形成されている。曲面部24に沿って下方に向けて流下してきた水は、前面部25に至り、下端部25cから落下することとなり、水切りがなされる。
【0030】
下板部26は、傾斜本体部23に対向して設けられ、水平状である。下板部26は、第1の水切り材21の前面部25に連結され、第1の水切り材21の強度を高めている。下板部26は、前面部25における下端部25cよりも、傾斜本体部23に近い上方の位置で連結されている。すなわち、第1の水切り材21の前面部25における下端部25cは、下板部26よりも下方に突出している。よって、下端部25cに至った水滴は、下板部26側に回り込むことなく速やかに落下することとなる。なお、第1の水切り材21の下板部26は、前面部25でなく曲面部24に連結されてもよい。
【0031】
また、下板部26は、鼻隠し部11の前面部15に当接する第2の当接部26aを有し、曲面部24又は前面部25に連結された位置から第2の当接部26aに向かって延在している。よって、傾斜本体部23の下方を下板部26が覆うことになるので、下方から第1の水切り材21を見上げた際の美感が維持される。
【0032】
なお、傾斜本体部23の傾斜面23cと下板部26との間には、支持板27が設けられている。また、第1の水切り材21は、傾斜本体部23の傾斜面23c、曲面部24、前面部25、下板部26及び支持板27が連結されることにより、躯体Xから張り出される方向と直交する長尺方向に延びる貫通孔28を有している。また、第1の水切り材21の端面は、右側面及び左側面で略対称の形状とされ(図9及び図10参照)、図13に示される断面と同じ形状を呈している。
【0033】
次に、第2の水切り材22について、図4を参照して説明する。図4に示されるように、第1の水切り材22は、鼻隠し部11の下端部11bに取り付けられ、傾斜本体部43と、曲面部44と、前面部45と、下板部46と、を備える。傾斜本体部43は、躯体Xから張り出される方向に広がる斜面を有している。鼻隠し部11を流下する雨水等の水は、傾斜本体部43の有する斜面上を伝い、重力落下していく。
【0034】
曲面部44は、傾斜本体部43に滑らかに連結され、凸円弧状に下り、前面部45に滑らかに連結されている。曲面部44の曲率半径は、例えば2〜6mmとされている。傾斜本体部43の傾斜面上を重力落下してきた水は、第2の水切り材22の先端部22aで曲面部44に沿って下方に向けて流下する。
【0035】
前面部45は、曲面部44の下端部に連結されて、略鉛直方向に延在している。曲面部44に沿って下方に向けて流下し、前面部45に至った水は、前面部45の下端部から落下することとなり、水切りがなされる。
【0036】
下板部46は、傾斜本体部43に対向して設けられ、水平状である。下板部46は、第2の水切り材22の前面部45に連結され、第2の水切り材22の強度を高めている。下板部46は、前面部45の下端部よりも傾斜本体部43に近い上方の位置で連結されている。すなわち、第2の水切り材22における前面部45の下端部は、下板部46よりも下方に突出している。よって、前面部45の下端部に至った水滴は、下板部46側に回り込むことなく速やかに落下することとなる。
【0037】
以上、本実施形態に係る庇構造1によれば、第1の水切り材21の傾斜本体部23が下り傾斜状に形成されているので、当該傾斜本体部23上の水は、下り先端部23dに向けて重力落下することとなる。そして、当該下り先端部23dにて曲面部24に沿って下方に向けて流下して前面部25に至り、当該前面部25の下端部25cから落下することとなる。この際、当該前面部25の下端部25cは下板部26よりも下方に突出しているので、当該下端部25cに至った水滴は下板部26側に回り込むことなく速やかに落下することとなる。このように、前面部25の下端部25cに至った水滴は、下り先端部23dにて滞留することなく速やかに落下することとなる。その結果、下り先端部23dに水滴が付着したまま溜まり、その後蒸発することを繰り返すことに起因する当該下り先端部23dへの埃等の付着を抑制し、かかる速やかな雨水の流下状態を長期に亘って維持することができる。そして、このような第1の水切り材21が、庇本体4の先端部9に連結されるので、庇本体4の上面部8に降りかかる雨水等を良好に流下させることができる。また、第1の水切り材21は、複数の庇ユニット7の連結部分7aを跨ぐように配置された横長の部材であり、複数の庇ユニット7の先端側の連結部分7aは第1の水切り材21によって目隠しされる。このため、庇本体4において最も目立つ先端部9側の形状が一体的に形成され、庇本体4全体として一体感を持った外観とすることができる。また、傾斜本体部23の下方を下板部26が覆うことになるので、下方から当該先端部9を見上げた際の美感が維持される。以上より、水切り性能を確保しつつ、美感を損なわない庇構造1を提供することができる。
【0038】
また、第1の水切り材21の曲面部24の曲率半径が、2〜6mmとされている。ここで、曲率半径が小さすぎると曲面部がほとんどなく、縁部にて水滴の表面張力が発揮され、結果として雨水が付着して滞留してしまう。一方、曲率半径が大きすぎると、曲面部での雨水の接触面積が増加し、付着力が大きくなって流下速度が低下し、結果として雨水の付着につながる虞がある。本実施形態においては、上述のように曲率半径が2〜6mmとされているので、雨水の付着を抑制でき、より速やかな雨水の落下を図ることができる。また、下板部26が曲面部24又は前面部25に連結されることとなるので、第1の水切り材21の強度向上が図られる。
【0039】
また、鼻隠し部11の下端部11bに取り付けられた第2の水切り材22により、前壁部15を流下する雨水を第2の水切り材22から流下させることができる。
【0040】
また、第1の水切り材21の先端部21aは、第2の水切り材22の先端部22aよりも躯体から離れる側に突出して設けられているので、第1の水切り材21から落下する雨水は第2の水切り材22上に落下することなく、速やかな排水処理がなされることとなる。
【0041】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。図15は本発明の第2実施形態に係る庇構造の斜視図、図16図15中の第1の水切り材121付近を拡大して示す断面図である。
【0042】
図15及び図16に示すように、本実施形態における庇構造100は、第1の水切り材121を備え、当該第1の水切り材121は、上記第1実施形態における第1の水切り21と同様、第1の水切り材121の短尺方向を躯体Xから張り出される方向として、庇本体4の鼻隠し部11の上端部11aに取り付けられている。また、第1の水切り材121は、傾斜本体部23と、曲面部24と、前面部25と、下板部26と、を備え、これらの各構成は上記第1の実施形態と同様である。
【0043】
本実施形態における第1の水切り材121が上記第1の実施形態における第1の水切り材21と異なる点は、傾斜本体部23の傾斜方向に交差する凸条部122と、当該凸条部122の延在方向における側部に切欠き部123が設けられている点である。
【0044】
凸条部122は、傾斜本体部23における傾斜面23cの上面において直立に形成される凸部122aを有している。当該凸部122aは、傾斜面23cの傾斜方向に対し直交する方向に、庇ユニット7における先端部9側に略平行に延在している。傾斜本体部23を流下する雨水は、凸条部122の凸部122aに一度流下を塞き止められることとなる。
【0045】
凸部122aが延在する長さは傾斜本体部23の長尺方向の長さより短く、傾斜本体部23の長尺方向端部には切欠き部123が設けられている。凸条部122の凸部122aに一度塞き止められた雨水は、当該切欠き部123を通じて流下することとなる。これにより、傾斜本体部23の下り先端部23dにおいて雨水が流下する範囲を狭めて水切りを行うことができる。
【0046】
以上、本実施形態においても、第1実施形態同様、水切り性能を確保しつつ、美感を損なわない庇構造100を提供することができる。さらに、本実施形態に係る庇構造100によれば、傾斜本体部23を流下する雨水は、凸条部122の凸部122aに一度流下を塞き止められることとなる。凸条部122の延在方向における側部には、切欠き部123が設けられているので、当該切欠き部123を通じて雨水が流れることとなる。これにより、傾斜本体部23の下り先端部23dにおいて雨水が流下する範囲を狭めて水切りを行うことができる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0048】
例えば、庇本体4における先端部9の上部に連接された水平板部13と、庇本体4における鼻隠し部11が有する水平板部16とは、一体的に形成されていてもよい。
【0049】
また、凸条部122の凸部122aの延在方向は、雨水を塞き止める機能を有する限り、庇ユニット7の先端部9側と平行でなくてもよい。例えば、切欠き部123に向かって雨水が流下しやすいように、切欠き部123から離れた側を庇ユニット7の先端部9側に近づけ、切欠き部123側に向かうほど庇ユニット7の先端部9側から遠ざかるように形成してもよい。また、切欠き部123は、凸条部122の延在方向における側部の一方だけに限らず、両側部に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1,100…庇構造、4…庇本体、8…庇本体の上面部、9…庇本体の先端部、10…庇先端部構造、11…鼻隠し部、11a…鼻隠し部の上端部、11b…鼻隠し部の下端部、20…庇先端部材、21,121…第1の水切り材、21a…第1の水切りの先端部、22…第2の水切り材、22a…第2の水切りの先端部、23…傾斜本体部、23d…傾斜本体部の下り先端部、24…曲面部、25…前面部、25c…前面部の下端部、26…下板部、122…凸条部、123…切欠き部、X…躯体。

図1
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