特許第6181431号(P6181431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181431
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20170807BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20170807BHJP
   C08J 9/06 20060101ALI20170807BHJP
   B29D 30/06 20060101ALN20170807BHJP
【FI】
   B60C11/00 D
   B60C1/00 A
   C08J9/06CEQ
   !B29D30/06
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-118553(P2013-118553)
(22)【出願日】2013年6月5日
(65)【公開番号】特開2014-234127(P2014-234127A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 典大
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−142843(JP,A)
【文献】 特開2003−292667(JP,A)
【文献】 特開平7−258469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
B60C 1/00
C08J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡ゴム層をトレッド部に用いた空気入りタイヤであって、発泡ゴム層のトレッド内部の平均気泡径が、トレッド表面部よりも小さいことを特徴とする空気入りタイヤ。
(但し、環状に形成されたトレッド部と、該トレッド部の両側に連なる一対のサイドウォール部およびビード部とを有する空気入りタイヤであって、前記トレッド部が、踏面部に複数のブロック列を含むトレッドパターンを有し、かつ、タイヤ半径方向外側からキャップゴム層とベースゴム層とを積層してなる二層構造を有する空気入りタイヤにおいて、前記ブロックが、タイヤ軸方向に対し傾きを持って、ショルダー部両側区域においては周方向隣接ブロック間で互いに略並行に、タイヤ幅方向に延びる複数本のサイプを有し、前記キャップゴム層がアルミナ入り筒状独立気泡を、前記ベースゴム層が球状独立気泡を、それぞれ含み、かつ、該ベースゴム層のショアA硬度が、該キャップゴム層のショアA硬度より大きいことを特徴とする空気入りタイヤを除く。)
【請求項2】
発泡ゴム層の気泡の平均気泡径が、トレッド表面部では40〜100μm、内部では5〜40μmであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
トレッド表面部がタイヤ表面から中心方向に5〜10mm、トレッド内部が表面部最下部から中心方向に1〜7.5mmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
加硫工程における加硫圧力が、1.4〜5.0MPaであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
発泡ゴム層に使用するゴム組成物が、160℃における加硫速度曲線(JIS K 6300「未加硫ゴムの試験方法」に準じる)のトルクの最小値(ML)と最大値(MH)の差(MH−ML)をMEとしたときの、ML+0.1MEに到達する時間t10(分)が2.5分以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
上記発泡ゴムが熱分解型発泡剤を用いて製造されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記発泡剤が、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキソビスベンゼンスルホニルヒドラジド、または、炭酸水素ナトリウムであることを特徴とする、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記発泡ゴム層の表面部および内部を総合した下記式:
発泡率=(加硫ゴムにおける固相部の密度/加硫ゴムの密度−1)×100%
で計算される発泡率が10〜50%であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ゴム層をトレッド部に有する空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の低燃費化のため、タイヤの軽量化を行うことが要求されているため、タイヤの軽量化の手段として、トレッド部に発泡ゴム層を有する空気入りタイヤが製造、市販されている。トレッド部に使用した発泡ゴムの気泡が、水の膜を取り除き、路面との接地を安定化させる。この発泡ゴムは、ソリッドゴムに熱分解型発泡剤を添加し、加硫することで得ることができ、加硫のための熱源がゴムの外側にあることから、外部から順に加硫が進むことにより、表面部の気泡が細かく、内部の気泡が大きくなる。これは、表面部ではゴムの加硫が発泡より先行することにより粘度が上昇し、気泡の発生が抑制され、内部では発泡が加硫よりも先行するため粘度が低いまま発泡が進行し、気泡が大きく成長できるためである(特許文献1および非特許文献1)。
【0003】
しかしながら、表面部の気泡が細かくなって、発泡ゴムの特長である吸水効果による濡れた路面での制動性能(ウエット制動性能)が十分に発揮できないといった問題点がある。また、全体の気泡径を大きくすることは可能であるが、大きな気泡径はゴムの貯蔵弾性率G’を低下させるため、高速走行するにあたって十分な操縦安定性を確保することが困難である。
【0004】
また、特許文献2には、内側部分よりも、外側部分の発泡率が高いトレッドゴムが開示されている。しかしながら、タイヤ半径方向の外側を内側よりも高い温度で加熱し発泡させるものである。したがって、外側部分に細かい気泡が多数存在し、ウエット制動性能が十分に発揮できないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−31231号公報
【特許文献2】特開2010−274785号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】秋葉光雄他、日本ゴム協会誌、Vol.74、386−391.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、発泡による軽量化効果を損なうことなく、吸水によるウエット制動性能、操縦安定性を高度に両立できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、タイヤのトレッド部に発泡ゴム層を有するタイヤについて検討したところ、発泡ゴム層の表面部の平均気泡径を大きくし、内部の平均気泡径を小さくすれば、軽量化を確保したうえで、吸水性によるウエット制動性能、操縦安定性を高い次元で両立できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、発泡ゴム層をトレッド部に用いた空気入りタイヤであって、発泡ゴム層のトレッド内部の平均気泡径が、トレッド表面部よりも小さいことを特徴とする空気入りタイヤに関する。
【0010】
発泡ゴム層の気泡の平均気泡径が、トレッド表面部では40〜100μm、内部では5〜40μmであることが好ましい。
【0011】
トレッド表面部がタイヤ表面から中心方向に5〜10mm、トレッド内部が表面部最下部から中心方向に1〜7.5mmであることが好ましい。
【0012】
加硫工程における加硫圧力が、1.4〜5.0MPaであることが好ましい。
【0013】
発泡ゴム層に使用するゴム組成物が、160℃における加硫速度曲線(JIS K 6300「未加硫ゴムの試験方法」に準じる)のトルクの最小値(ML)と最大値(MH)の差(MH−ML)をMEとしたときの、ML+0.1MEに到達する時間t10(分)が2.5分より遅いことが好ましい。
【0014】
上記発泡ゴムが熱分解型発泡剤を用いて製造されることが好ましい。
【0015】
前記発泡剤が、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキソビスベンゼンスルホニルヒドラジド、または、炭酸水素ナトリウムであることが好ましい。
【0016】
前記発泡ゴム層の表面部および内部を総合した下記式:
発泡率=(加硫ゴムにおける固相部の密度/加硫ゴムの密度−1)×100%
で計算される発泡率が10〜50%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発泡ゴム層の発泡の平均気泡径を、トレッド表面部よりトレッド内部のほうを小さくすることによって、吸水性を確保することができ、濡れた路面での制動距離(ウエット制動距離)を短くすることができる。また、内部の気泡を微細気泡にすることで、貯蔵弾性率G’の低下を抑えることができ、高速走行での操縦安定性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の空気入りタイヤは、発泡ゴム層をトレッド部に用いた空気入りタイヤであって、発泡ゴム層のトレッド内部の平均気泡径が、トレッド表面部よりトレッド内部のほうが小さいことを特徴とする。
【0019】
トレッド部に用いた発泡ゴム層の平均気泡径は、トレッド表面部では40〜100μmが好ましく、50〜70μmがより好ましい。40μm未満では、十分な吸水効果が得られず、濡れた路面での制動性能が十分に得られにくくなる傾向がある。平均気泡径が100μmを超えると、耐摩耗性が悪化し、夏用タイヤとしての摩耗性能を確保できなくなる傾向がある。一方、トレッド内部では5〜40μmが好ましく、20〜40μmがより好ましい。40μmを超えると、貯蔵弾性率G’が低下し、十分な操縦安定性が確保できなくなる傾向がある。5μm未満では、発泡率が小さくなり、十分な軽量化効果を得ることができにくくなる傾向がある。
【0020】
ここで、トレッド表面部とはタイヤ表面から中心方向に5〜10mm、トレッド内部とは表面部最下部からタイヤ中心方向に1〜7.5mmの部位であることが好ましい。表面部の厚みが5mm未満であると、走行による摩耗により、内部の微細気泡が早期に現れ、十分な制動距離を得ることができなくなる傾向にある。また、トレッド表面部の厚みが10mmを超え、かつ/または、内部層の厚みが1mm未満では、走行するにあたり、十分な操縦安定性を確保することができなくなる傾向にある。そして、内部の厚みが10mm以上となると、表面層厚さを確保できず、十分な軽量化効果を得ることができなくなる傾向にある。
【0021】
所望のトレッド表面部の平均気泡径を得るために、発泡ゴム層を形成するゴム組成物において、160℃における加硫速度曲線(JIS K 6300「未加硫ゴムの試験方法」に準じる)のトルクの最小値(ML)と最大値(MH)の差(MH−ML)をMEとしたときの、ML+0.1MEに到達する時間(スコーチタイム)t10(分)が、2.5〜3.5分が好ましく、2.8〜3.2分がより好ましい。t10を2.5分以上にすると、加硫が開始し粘度が上昇するまでに発泡反応を開始させ、表面部の気泡を大きくすることができる。t10が2.5分未満であると、加硫が発泡よりも早く起こるため、表面部に大粒径の気泡を得ることができなくなる傾向がある。また、t10を3.5分以下にすることで、生産性を確保することができ、3.5分を超えると、生産性が落ちる傾向にある。
【0022】
スコーチタイムt10は、たとえば加硫促進剤である1,3−ジフェニルグアニジン(ノクセラーD)の配合量によって制御することができる。スコーチタイムt10を2.5〜3.5分にするには、たとえば、1,3−ジフェニルグアニジン(ノクセラーD)をゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜1.0質量部、より好ましくは0.2〜0.8質量部配合すればよい。
【0023】
さらに、所望のトレッド内部の平均気泡径を得るために、タイヤ用ゴム組成物の加硫工程において、加硫圧力を1.4〜5.0MPaにすることが好ましく、1.5〜3.0MPaがより好ましい。加硫圧力を1.4MPa以上にすることで、内部における気泡成長を抑制することができ、かつ、内部の熱周りが表面部よりも遅いことから、加硫反応が発泡よりも先行し、微細な気泡を生成させることができる。加硫圧力が1.4MPa未満であると、この気泡成長抑制の効果が十分でなく、内部でも大粒径の気泡が発生し、所望の気泡構造を得ることができない。ただし、加硫圧力が5.0MPaを超えると、金型にかかる圧力が高くなり、金型が圧力に耐え切れず安全上の問題が起こり易くなる傾向にある。
加硫温度は特に限定されないが、140〜180℃が好ましく、150〜170℃がより好ましい。
【0024】
発泡ゴム層は、熱分解型発泡剤を用いて製造することが好ましい。熱分解型発泡剤は、不活性ガスなどによるマイクロセルラーなどの発泡剤と比べ、加硫後のゴム組成物の物性に影響を与える残滓を生じ難いので、物性に悪影響を与え難いという特徴がある。
【0025】
熱分解型発泡剤としては、とくに限定されないが、たとえばアゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキソビスベンゼンスルホニルヒドラジド、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。とくに、アゾジカルボンアミド、4,4’−オキソビスベンゼンスルホニルヒドラジド、および炭酸水素ナトリウムでは、加硫後のゴム組成物の物性に影響を与える残滓を生じ難くする傾向がある。これらの発泡剤は単独でも、複数のものを組み合わせて使用することもできる。
【0026】
熱分解型発泡剤の配合量は、とくに限定されないが、ゴム成分100質量部に対して3〜8質量部が好ましく、4〜7質量部がより好ましい。8質量部を超えると、発泡倍率が50%を超え、3質量部未満では、発泡倍率が10%未満となる傾向がある。
【0027】
前記発泡ゴムの表面部および内部を総合した下記式:
発泡率=(加硫ゴムにおける固相部の密度/加硫ゴムの密度−1)×100%
で算出される発泡率が10〜50%であることが好ましく、20〜40%であることがより好ましい。発泡率が10〜50%であることで、軽量化と操縦安定性、耐摩耗性、および耐久性とを、両立することができる。一方、発泡率が10%未満であると、軽量化の効果が小さくなり、50%を超えると、操縦安定性、耐摩耗性、および耐久性が低下する傾向がある。
【0028】
本発明で使用するゴム組成物が含有するゴム成分としては特に限定されず、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴムが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐亀裂成長性の改善効果が高いという点から、SBR、BRが好ましく、SBR及びBRの併用がより好ましい。
【0029】
SBR、BRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0030】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは55質量%以上である。また、SBRの含有量は、100質量%であってもよいが、好ましくは90質量%以下である。上記範囲内であれば、本発明の効果が良好に得られる。
【0031】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。また、BRの含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。上記範囲内であれば、本発明の効果が良好に得られる。
【0032】
ゴム成分100質量%中のSBR及びBRの合計含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記範囲内であれば、本発明の効果が良好に得られる。
【0033】
本発明に使用するゴム組成物は、ゴム成分以外にゴム組成物の製造に一般に使用される添加剤を適宜配合することができる。添加剤としては、公知のものを用いることができ、硫黄などの加硫剤;チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤などの加硫促進剤;ステアリン酸、酸化亜鉛などの加硫活性化剤;有機過酸化物;カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどの充填剤;伸展油、滑剤などの加工助剤;老化防止剤;カップリング剤を例示することができる。
【0034】
発泡の形状については、とくに限定されるものではない。発泡ゴム層のトレッド内部の平均気泡径が、トレッド表面部よりも小さいことによって、操縦安定性が要求される夏用タイヤにも適用することができるようになり、また、発泡の吸水効果により、多少の雪道であれば走行可能となる。
【0035】
本発明の空気入りタイヤは、ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じてゴム成分に各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのトレッドの形状に合わせて押し出し加工する。タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、トレッド部材を、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して発泡させ、本発明の空気入りタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0036】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0037】
以下に実施例及び比較例で用いた各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:日本ゼオン(株)製のNipol 1502(スチレン量:23.5質量%) 80質量部
BR:宇部興産(株)製のハイシスBR150B 20質量部
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(チッ素吸着比表面積(NSA):125m/g) 20質量部
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3(チッ素吸着比表面積(NSA):175m/g) 80質量部
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド) 5質量部
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン) 3質量部
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸 5質量部
オイル:出光興産(株)製のミネラルオイルPW−380 10質量部
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号 2質量部
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス 2質量部
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄 2質量部
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3−ジフェニルグアニジン) 0.1〜1.5質量部
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド) 2質量部
発泡剤:永和化成工業(株)製のネオセルボンN#1000SW(4,4’−オキソビスベンゼンスルホニルヒドラジド、平均粒径14μm) 5質量部
【0038】
(実施例1〜12および比較例1〜2)
表1および2に示すジフェニルグアニジンの配合量に従って1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で3分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、50℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を、表1および2に示す加硫圧力でトレッド形状に成形して、他のタイヤ部材と貼り合わせ、170℃で15分間加硫することにより、各実施例および比較例のタイヤ(タイヤサイズ 195/65R15)を作製した。得られたタイヤを用いて、以下の評価を行った。評価結果を表1および2に示す。
【0039】
<平均気泡粒径>
得られたタイヤよりトレッドのブロックを切り出し、厚み方向にスライスしたものを、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM/フィリップ社製XL30 ESEM)で気泡を観察した。観察した気泡の直径を気泡径とし、1mm×1mmの範囲内にある全ての気泡について、円相当径を算出し、全ての円相当径の算術平均値を算出することで、トレッド表面部および内部それぞれで平均気泡粒径を測定した。
【0040】
<操縦安定性>
得られたタイヤを15×6JJのアルミホイールリムにリム組みし、かつ内圧210kPa(前後同一)を充填して、排気量2000ccの国産FF車の4輪に装着するとともに、テストコース内をドライバー1名乗車で走行して官能評価した。実施例1を100とする指数で評価した。数値が大きいほど良好である。
【0041】
<ウエット制動性能>
得られたタイヤを15×6JJのアルミホイールリムにリム組みし、かつ内圧210kPa(前後同一)を充填して、排気量2000ccの国産FF車の4輪に装着するとともに、テストコース内をドライバー1名で、湿潤アスファルト路面にて、初速度100km/hからの制動距離を測定した。そして、実施例1のウェットグリップ性能指数を100とする指数で評価した。評価は、以下に示す計算式により、各配合のウエット制動性能(ウエットグリップ性能)を指数表示した。数値が大きいほどウェット制動性能に優れることを示す。
(ウェット制動性能指数)=(実施例1の制動距離)/(各配合の制動距離)×100
【0042】
<耐摩耗性>
得られたタイヤを15×6JJのアルミホイールリムにリム組みし、かつ内圧210kPa(前後同一)を充填して、排気量2000ccの国産FF車の4輪自動車に装着し、一般道を走行した後、6ヶ月後の残溝を計測し、実施例1を100とする100点法で指数にて著した。数値が大きいほど良好である。
【0043】
<重量>
供試タイヤを水平な状態に固定した重量計に乗せ測定した。実施例1を100としたときの指数で示す。数値が大きいほど軽量化できており、良好である。
重量指数=実施例1の重量/各実施例または比較例の重量×100%
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
実施例1〜12のタイヤでは比較例1および2のタイヤと比較して、操縦安定性およびウエット制動性能において高い次元で発揮できている。とくに、実施例1〜7のタイヤでは、耐摩耗性および重量においても高い次元で発揮できている。