(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材層/プライマー層/環状ポリオレフィン樹脂コート層が少なくともこの順に積層されてなる積層体であって、該プライマー層が、不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1〜10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体から得られる塗膜であり、
かつ、環状ポリオレフィン樹脂コート層の密着性を、JIS K5400−8.5(碁盤目試験)に準じ評価した際の、碁盤目100枡中の環状ポリオレフィン樹脂コート層の剥離しなかった升数が、70枡以上であることを特徴とする積層体。
架橋剤が、多価オキサゾリン化合物、多価カルボジイミド化合物及び多価ヒドラジド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2記載の積層体。
基材層が、ポリエステル樹脂基材、ポリカーボネート樹脂基材、ポリメタクリル酸メチル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂及びセルロースエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の積層体。
不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1〜10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂を含む水性分散体を基材層にコートして、プライマー層を形成する工程と、環状ポリオレフィン樹脂を含有するコート剤を該プライマー層の上にコートして環状ポリオレフィン樹脂コート層を形成する工程とを、具備することを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の積層体における基材層は、使用する用途や目的などに応じて任意で選択されるものである。基材層の材料としては、例えば、金属、ガラス、樹脂、ゴム、木材、合成紙、紙など材料が挙げられる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂、ポリグリコール酸樹脂やポリ乳酸樹脂などのポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66やナイロン46などのポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、環状オレフィンポリマー(COP)や環状オレフィンコポリマー(COC)などの環状ポリオレフィン樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂などのアクリル樹脂、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートなどのセルロースエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ABS樹脂などが挙げられる。これらは単独でも複数の複合体であってもよい。これらの中でも、プライマー層との密着性や透明性などの観点から、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、セルロースエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂の場合はなかでもポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート樹脂がより好ましい。セルロースエステル樹脂の場合はなかでもセルローストリアセテートが好ましい。
【0014】
なお、本発明の積層体を光学フィルムに用いる場合は、基材層は透明な材料より選定することが好ましく、基材層の全光線透過率としては、80〜97%の範囲が好ましい。
【0015】
基材層の形態としては、特に限定されないが、フィルム、成形体、繊維、織物、編物、不織布などが挙げられる。汎用性や取り扱い性、光学特性を考慮すると、厚さ1〜200μmのフィルム形状とすることが好ましい。中でも、熱可塑性樹脂からなるフィルムが好ましい。なお、フィルムとしては、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、製法も限定されない。
【0016】
基材層には、予め表面活性化処理がなされていても構わない。表面活性化処理としては、例えば、コロナ放電処理、フレームプラズマ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理、オゾン処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、薬品処理、溶剤処理などが挙げられ、簡便さと接着効果のバランスからコロナ放電処理が好ましい。
【0017】
本発明の積層体におけるプライマー層は、不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1〜10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体から得られる塗膜である。本発明ではこのプライマー層を、基材層と環状ポリオレフィン樹脂コート層との間に設けることによって、本発明の効果を発現させることができる。なお、プライマーとは一般に下塗りのことを意味し、本発明においても、環状ポリオレフィン樹脂コート層の下塗りである。
【0018】
酸変性ポリオレフィン樹脂の主成分であるオレフィン成分は特に限定されないが、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜6のアルケンが好ましく、これらの混合物を用いてもよい。中でも、環状ポリオレフィン樹脂コート層との密着性を高める観点から、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテンなどの炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、エチレン、プロピレンがさらに好ましく、エチレンが最も好ましい。
【0019】
本発明において、酸変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸成分により酸変性されたポリオレフィン樹脂である。不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸、クロトン酸などのほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミドなどが挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸が密着性や環状ポリオレフィン樹脂コート層のひび割れ抑制効果の観点から好ましく、特にアクリル酸、(無水)マレイン酸が好ましい。また、不飽和カルボン酸成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は特に限定されない。共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。なお、「(無水)〜酸」とは、「〜酸又は無水〜酸」を意味する。すなわち、(無水)マレイン酸とは、マレイン酸又は無水マレイン酸を意味する。
【0020】
酸変性ポリオレフィン樹脂における不飽和カルボン酸成分の含有量は、0.1〜10質量%であることが必要であり、0.2〜8質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましく、1〜5質量%であることがさらに好ましく、2〜4質量%であることが特に好ましい。不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1質量%未満の場合は、密着性が低下したり、水性分散体に加工することが困難であり、一方、含有量が10質量%を超える場合は、密着性や環状ポリオレフィン樹脂コート層のひび割れ抑制効果、耐水性が低下する傾向がある。
【0021】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、基材層や環状ポリオレフィン樹脂コート層との十分な密着性を得るため、環状ポリオレフィン樹脂をコートする際の塗れ性を向上させるために、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有していることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステル化物が好ましい。(メタ)アクリル酸エステル成分の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。この中で、入手の容易さと接着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがより好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。(なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜又はメタクリル酸〜」を意味する。
【0022】
酸変性ポリオレフィン樹脂における(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は、密着性や塗れ性の点から、0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、2〜18質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が0.1質量%未満の場合は、密着性が低下する傾向にあり、25質量%を超える場合は環状ポリオレフィン樹脂コート層のひび割れ抑制効果や耐水性が低下する傾向がある。また、(メタ)アクリル酸エステル成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
【0023】
酸変性ポリオレフィン樹脂の具体例としては、エチレン−アクリル酸エチル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル−(無水)マレイン酸共重合体などのエチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−(無水)マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−(無水)マレイン酸共重合体などが挙げられ、中でもエチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体が最も好ましい。共重合体の形態はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などのいずれでもよいが、入手が容易という点でランダム共重合体、グラフト共重合体が好ましい。
【0024】
なお、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体は、例えば、英国特許第2091745号明細書、米国特許第4617366号明細書及び米国特許第4644044号明細書などに記載された方法を参照することで、当業者であれば容易に製造することができる。
【0025】
酸変性ポリオレフィン樹脂の分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR)は、密着性や環状ポリオレフィン樹脂コート層のひび割れ抑制効果の観点から0.01〜300g/10分の範囲が好ましく、0.1〜200g/10分がより好ましく、0.5〜100g/10分がさらに好ましく、1〜70g/10分が特に好ましい。メルトフローレートが300g/10分を超える場合は、環状ポリオレフィン樹脂コート層のひび割れ抑制効果が低下する傾向にあり、0.01g/10分未満の場合は、密着性が低下する傾向にあたり、樹脂を高分子量化する際の製造面において制約を受ける。
【0026】
本発明において、酸変性ポリオレフィン樹脂は水性分散体として利用することが必要である。ここで、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体について説明する。本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂は、水性媒体中に分散させることで水性分散体に加工することが可能である。分散させる方法としては、自己乳化法や強制乳化法など公知の分散方法を採用すればよい。
【0027】
酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体としては、水性媒体中で酸変性ポリオレフィン樹脂の不飽和カルボン酸成分を塩基性化合物によって中和することで得られるアニオン性の水性分散体とすることが、接着性の観点から好ましい。
【0028】
酸変性ポリオレフィン樹脂を水性分散化させる際に用いる水性媒体は、水又は、水を含む液体からなる媒体であり、分散安定化に寄与する中和剤や水溶性の有機溶媒などが含まれていてもよい。水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチルなどのエステル類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチルなどが挙げられる。なお、これら有機溶媒は2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、沸点が140℃以下の揮発性の水溶性有機溶媒を用いることが、プライマー層形成後の残存量を少なくできる点で好ましい。具体的には、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどが好ましい。
【0029】
また、酸変性ポリオレフィン樹脂の不飽和カルボン酸成分を中和するのに用いる塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの有機アミン、アルカリ金属などが挙げられる。なお、塩基性化合物は2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、沸点が140℃以下の揮発性の塩基性化合物を用いることが、プライマー層形成後の残存量を少なくできる点で好ましい。具体的には、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンなどが好ましい。
【0030】
なお、酸変性ポリオレフィン樹脂を水性分散化させる際には、不揮発性分散助剤を実質的に添加しないことが好ましい。本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂は、不揮発性分散助剤の使用を排除するものではないが、不揮発性分散助剤を用いずとも、水性媒体中に安定的に分散することができる。この様な不揮発性分散助剤を実質的に含有しない酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を用いことで、本発明におけるプライマー層は不揮発性分散助剤を実質的に含有せずとも得られることができる。よって、本発明におけるプライマー層は不揮発性分散助剤を実質的に含有しないことが好ましい。
【0031】
ここで、「水性分散化助剤」とは、水性分散体の製造において、水性分散化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。
【0032】
「不揮発性分散助剤を実質的に含有しない」とは、こうした助剤を、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体の製造時に用いず、その結果得られる積層体中のプライマー層がこの助剤を含有しないことを意味する。したがって、こうした水性分散化助剤は、含有量がゼロであることが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体中の不揮発性成分(固形分)に対して3質量%以下、好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%未満程度含まれていても差し支えない。
【0033】
本発明でいう不揮発性分散助剤としては、例えば、後述する乳化剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子などが挙げられる。
【0034】
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0035】
保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類及びその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体及びその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%を超えて含有するカルボキシル基含有ポリマー及びその塩、ポリイタコン酸及びその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物等が挙げられる。
【0036】
酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体における酸変性ポリオレフィン樹脂の数平均粒子径は、密着性や分散安定性の観点から0.5μm以下であることが好ましく、0.01〜0.4μmの範囲であることがより好ましく、0.02〜0.3μmが特に好ましく、0.03〜0.2μmがさらに好ましく、0.04〜0.1μmが最も好ましい。
【0037】
酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体のpHは、分散安定性の観点からpH7〜12の範囲であることが好ましく、pH8〜11がより好ましい。
【0038】
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体は、プライマー層を形成した際、密着性や環状ポリオレフィン樹脂コート層のひび割れ抑制効果などを一層高める目的で、架橋剤や酸変性ポリオレフィン樹脂以外の樹脂(以下「他の樹脂」と示す)を含有していることが好ましい。なお架橋剤と他の樹脂はそれぞれ単独でも両者を併用して用いてもかまわない。
【0039】
本発明において、架橋剤とは、酸変性ポリオレフィン樹脂と反応することで酸変性ポリオレフィン樹脂の架橋構造を形成することが可能な化合物のことである。具体的には、酸変性ポリオレフィン樹脂が含有する官能基と反応可能な官能基を分子中に複数個含有する化合物などが挙げられる。より具体的には、多価オキサゾリン化合物、多価カルボジイミド化合物、多価ヒドラジド化合物、多価メラミン化合物、多価イソシアネート化合物、多価尿素化合物、多価エポキシ化合物、多価アミン化合物などが挙げられ、これらの架橋剤は組み合わせて使用してもよい。これらの架橋剤の中でも、密着性や環状ポリオレフィン樹脂コート層のひび割れ抑制効果などをより高める観点から、多価オキサゾリン化合物、多価カルボジイミド化合物、多価ヒドラジド化合物が好ましい。なお、架橋剤は低分子量化合物であってもポリマータイプのものでも構わない。
【0040】
本発明において、架橋剤は、後述するように水溶液又は水性分散体として利用することが好ましい。すなわち、架橋剤は、水溶性又は水分散性を有した水性であることが好ましい。架橋剤を水溶液又は水性分散体に加工する方法は、特に限定されず、公知の方法が採用できる。
【0041】
多価オキサゾリン化合物の水溶液又は水性分散体としては、例えば日本触媒社製の「エポクロス(登録商標)」などがあり、多価カルボジイミド化合物の水溶液又は水性分散体としては、例えば日清紡ケミカル社製の「カルボジライト(登録商標)」などがある。いずれも市販のものを用いることが可能である。
【0042】
架橋剤は、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体において酸変性ポリオレフィン樹脂の総量100質量部に対し0.1〜30質量部の範囲で含有されていることが好ましく、0.2〜20質量部の範囲がより好ましく、0.3〜10質量部の範囲が特に好ましく、0.5〜5質量部の範囲がさらに好ましい。架橋剤が前記範囲を外れた場合は、密着性や環状ポリオレフィン樹脂コート層のひび割れ抑制の効果が悪化する場合がある。
【0043】
他の樹脂としては、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、アクリルシリコン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、エチレン−アミノアクリルアミド共重合体、エチレン−アミノアクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデン、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−アミノアルキルマレイミド共重合体、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン系エラストマー、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、変性ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素含有樹脂、ポリエチレンイミン、UV硬化型樹脂などが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、密着性や環状ポリオレフィン樹脂コート層のひび割れ抑制の観点から、ポリウレタン樹脂が好ましい。こられ他の樹脂を添加する際は、これらを水性分散体又は水溶液としたものを使用することが好ましい。
【0044】
ポリウレタン樹脂としては、主鎖中にウレタン結合を含有する高分子であり、例えばポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応で得られるものである。
【0045】
ポリウレタン樹脂を構成するポリオール化合物としては、特に限定されず、例えば、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの低分子量グリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの低分子量ポリオール類、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド単位を有するポリオール化合物、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類などの高分子量ジオール類、ビスフェノールAやビスフェノールFなどのビスフェノール類、ダイマー酸のカルボキシル基を水酸基に転化したダイマージオールなどが挙げられる。
【0046】
一方、ポリイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族及び脂環族の公知ジイソシアネート類の1種または2種以上の混合物を用いることができる。ジイソシアネート類の具体例としては、トリレンジジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート、及びこれらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。中でも密着性向上の点から、イソシアネート化合物はイソホロンジイソシアネートが好ましい。また、ジイソシアネート類には、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシアネート類を用いてもよい。
【0047】
本発明におけるポリウレタン樹脂は、溶液又は水性分散体として利用することが好ましい。よって、ポリウレタン樹脂は水溶性又は水分散性であることが好ましい。ポリウレタン樹脂は水性媒体への分散性の点から陰イオン性基を有していることが好ましい。陰イオン性基とは水性媒体中で陰イオンとなる官能基のことであり、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基などである。この中でもカルボキシル基を有していることが好ましい。
【0048】
ポリウレタン樹脂に陰イオン性基を導入するには、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基などを有するポリオール成分を用いればよい。カルボキシル基を有するポリオール化合物としては、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸、N,N−ジヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−カルボキシル−プロピオンアミドなどが挙げられる。
【0049】
また、ポリウレタン樹脂は鎖長延長剤を用いて適宜、分子量を調整することもできる。こうした化合物としては、イソシアネート基と反応することができるアミノ基や水酸基などの活性水素を2個以上有する化合物が挙げられ、例えば、ジアミン化合物、ジヒドラジド化合物、グリコール類を用いることができる。
【0050】
ジアミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジアミンなどが挙げられる。その他、N−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N−3−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類及びダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミンなども挙げられる。さらに、グルタミン酸、アスパラギン、リジン、ジアミノプロピオン酸、オルニチン、ジアミノ安息香酸、ジアミノベンゼンスルホン酸などのジアミン型アミノ酸類も挙げられる。
【0051】
ジヒドラジド化合物としては、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシンジヒドラジドなどの2〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪族ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジドなどの不飽和ジヒドラジド、炭酸ジヒドラジド、カルボジヒドラジド、チオカルボジヒドラジドなどが挙げられる。
【0052】
グリコール類としては、前述のポリオール類から適宜選択して用いることができる。
【0053】
本発明におけるポリウレタン樹脂としては、密着性や環状ポリオレフィン樹脂コート層のひび割れ抑制効果などをより良好とする観点から、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂又はポリエステル型ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0054】
ポリウレタン樹脂を水溶液又は水性分散体として利用する場合、水溶液又は水性分散体に加工する方法としては、特に限定されず公知の方法が採用できる。
【0055】
他の樹脂の添加量は、目的に応じて適宜設計すればよいが、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体において酸変性ポリオレフィン樹脂の総量100質量部に対し対して、0.1〜300質量部であることが好ましく、3〜200質量部であることがより好ましく、5〜100質量部であることが特に好ましい。
【0056】
さらに、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体には、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を添加してもかまわない。添加剤としては、無機微粒子、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、触媒、光触媒、UV硬化剤、濡れ剤、浸透剤、柔軟剤、増粘剤、分散剤、撥水剤、帯電防止剤、老化防止剤、加硫促進剤、シランカップリング剤などの各種薬剤、顔料あるいは染料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ガラス繊維などを添加してもよい。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
無機微粒子としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化チタンなどの金属微粒子や金属酸化物、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、雲母、タルク、擬ベーマイト、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウムなどの無機粒子が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0058】
無機微粒子の平均粒子径としては、水性分散体の分散安定性の面から0.0005〜100μmが好ましく、0.005〜10μmがより好ましい。
【0059】
本発明におけるプライマー層は、上記のような酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体を基材層にコートして得られる塗膜である。詳しくは、基材層の少なくとも一部に、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体をコートした後、コートした水性分散体中の水性媒体の一部又は全てを乾燥により気化させることで得られる塗膜である。
【0060】
水性分散体のコート及び乾燥方法としては、公知の方法、例えば、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法などにより基材層表面に均一に水性分散体をコートし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理又は乾燥のための加熱処理に供することにより、水性媒体の一部又は全てを気化させ均一な塗膜、すなわちプライマー層を基材層表面に密着させて形成することができる。乾燥温度は特に限定されないが、40〜150℃の範囲で良好に乾燥することができる。乾燥の際は、水性媒体の全てを気化させることが、密着性やや環状ポリオレフィン樹脂コート層のひび割れ抑制の観点から好ましい。
【0061】
プライマー層の厚みとしては、0.01〜5μmの範囲が好ましく、0.05〜4μmの範囲がより好ましく、0.1〜3μmの範囲が特に好ましく、0.2〜2μmの範囲がさらに好ましい。0.01μm未満の場合は、環状ポリオレフィン樹脂をコートする際の塗れ性が悪化する傾向にあり、5μmを超えても効果はかわらずコスト的に不利となる。
【0062】
以上のような方法で得られるプライマー層は、通常、透明性を有している。
【0063】
次に、本発明における環状ポリオレフィン樹脂コート層について説明する。環状ポリオレフィン樹脂としては、分子内に環状オレフィン成分を有する樹脂のことであり、環状オレフィン成分を開環重合して得られる重合体、又は環状オレフィン成分とα−オレフィン成分を共重合した重合体、これらの水素化物等をなどが挙げられる。具体的には、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、ノルボルネン構造を有する単量体とα−オレフィンの付加共重合体、ジシクロペンタジエン単量体とα−オレフィンの付加共重合体や、これらの水素化物などが挙げられる。また、環状ポリオレフィン樹脂は、コート剤への加工のし易さや密着性を向上させる観点から、不飽和カルボン酸やその誘導体などの極性基を共重合成分として含有しても構わない。
【0064】
環状ポリオレフィン樹脂としては、特開昭51−80400号公報、特公昭57−8815号公報、特開昭60−26024号公報、特開昭60−168708号公報、特開昭62−252406号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特開平1−168725号公報、特開平1−190726号公報、特開平2−133413号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報、特開平4−63807号公報、特開平4−202277号公報、特開平5−339327号公報、特開平5−9223号公報、特開平05−043834号公報、特開平6−271628号公報、特開平7−253315号公報、特開平8−134794号公報、特開平10−120768号公報、特開平11−43566号公報、特開2000−26635号公報、特開2000−44869号公報、特開2001−98026号公報、特開2004−51949号公報、特開2004−156048号公報、ヨーロッパ特許出願公開(A)第203799号明細書、同第407870号明細書、同第283164号明細書、同第156464号など記載されたものが挙げられる。
【0065】
環状ポリオレフィン樹脂の分子量やメルトフローレート(MFR)、軟化点、ガラス転移温度などの特性は、目的とする性能を考慮して適宜設計すればよい。
【0066】
環状ポリオレフィン樹脂の市販品としては、「ARTON」(JSR社製)、「ZEONOR」、「ZEONEX」(以上、日本ゼオン社製)、「OPTOREZ」(日立化成工業社製)、「APEL」(三井化学社製)、「TOPAS」(ポリプラスチックス社製)などが挙げられる。
【0067】
環状ポリオレフィン樹脂は、溶剤や場合によっては水などのからなる媒体に溶解や分散させることで環状ポリオレフィン樹脂を含有するコート剤に加工することが可能である。環状ポリオレフィン樹脂をコート剤に加工する方法は、特に限定されず公知の方法が採用できる。
【0068】
本発明における、環状ポリオレフィン樹脂を含有するコート剤には、媒体中に環状ポリオレフィン樹脂以外の成分が、本発明の効果を損なわない範囲で含有されてあっても構わない。環状ポリオレフィン樹脂以外の成分としては、環状ポリオレフィン樹脂以外の樹脂成分、架橋剤成分、塩基性化合物、酸性化合物、無機微粒子、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、触媒、光触媒、UV硬化剤、濡れ剤、浸透剤、柔軟剤、増粘剤、分散剤、撥水剤、帯電防止剤、老化防止剤、加硫促進剤、シランカップリング剤などの各種薬剤、顔料あるいは染料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ガラス繊維などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
本発明における環状ポリオレフィン樹脂コート層は、基材層表面に形成されたプライマー層の上に、環状ポリオレフィン樹脂をコートすることで得られるコート層のことである。環状ポリオレフィン樹脂をコートする方法としては、環状ポリオレフィン樹脂を溶融させて押出しコートする方法や、環状ポリオレフィン樹脂を含有するコート剤をコートした後、コートしたコート剤中の媒体の一部又は全てを乾燥により気化させる方法などが挙げられる。本発明においては、後者の、環状ポリオレフィン樹脂を含有するコート剤をコートした後に乾燥する方法が、加工性や薄膜のコート層が得られるなどの観点から好ましい。
【0070】
なお、環状ポリオレフィン樹脂を含有するコート剤としては、溶剤に溶解または分散した溶剤系コート剤、水系媒体に溶解または分散した水系コート剤いずれかであることが好ましい。
【0071】
環状ポリオレフィン樹脂を含有するコート剤のコート及び乾燥方法としては、公知の方法、例えば、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法などにより、基材層表面に設けられたプライマー層の上に均一に水性分散体をコートし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理又は乾燥のための加熱処理に供することにより、媒体の一部又は全てを気化させ、均一なコート層、すなわち環状ポリオレフィン樹脂コート層を基材層表面のプライマー層に密着させて形成することができる。乾燥温度は特に限定されないが、40〜150℃の範囲で良好に乾燥することができる。
【0072】
環状ポリオレフィン樹脂コート層の厚みとしては、0.1〜30μmの範囲が好ましく、0.5〜20μmの範囲がより好ましく、1〜10μmの範囲が特に好ましく、1〜5μmの範囲が最も好ましい。0.1μm未満の場合は、塗れ性が悪化する場合があり、30μmを超えた場合は、プライマー層との密着性が悪化する場合や、使用環境でのコート層のひび割れが発生し易くなる傾向などがある。
【0073】
上記のように本発明の積層体の製造方法としては、不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1〜10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂を含む水性分散体を基材層にコートして、プライマー層を形成する工程と、環状ポリオレフィン樹脂を含有するコート剤を該プライマー層の上にコートして、環状ポリオレフィン樹脂コート層を形成する工程とを、具備する方法を採用することが好ましい。
【0074】
本発明の積層体は、基材層/プライマー層/環状ポリオレフィン樹脂コート層が少なくともこの順に積層されてなる積層体であるが、使用目的や用途に応じて、その他の層を積層してあっても構わない。また、本願明細書において、「基材層/プライマー層/環状ポリオレフィン樹脂コート層が少なくともこの順に積層されてなる」との記載は、各層をかかる相対的な位置関係で積層することのみを意味するものであって、各層の間に別の層や表面処理が入ることを妨げるものではない。
【0075】
本発明の積層体の用いる用途としては、光学フィルや包装材料、日用雑貨、自動車、建築、太陽電池などさまざまな用途で用いることが可能である。中でも、本発明における環状ポリオレフィン樹脂コート層は透明性に優れる特徴を有しているため、光学フィルムに好ましく用いることが可能である。光学フィルムに用いる際は、基材層としては透明なフィルムを採用することが好ましい。ここで本発明における光学フィルムとは、透明性が要求される産業資材用フィルムのことであり、主に液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等などの表示装置の最表面またはその内側に使用されるフィルムであり、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、視野角拡大等の光学補償フィルムなどを含む。
【0076】
本発明の積層体を光学フィルムとして用いる場合は、積層体のJIS K7361に準じて測定した全光線透過率が80〜97%の範囲であることが好ましく、85〜95%の範囲がより好ましく、90〜94%の範囲が特に好ましい。80%未満であると光学フィルムとしては透明性に問題があり、97%を超えるものは各構成材料の製造が困難になる。
【0077】
本発明の積層体は、環状ポリオレフィン樹脂コート層の密着性に優れている。環状ポリオレフィン樹脂コート層の密着性は、JIS K5400−8.5(碁盤目試験)に準じて評価する。具体的には、碁盤目試験にあたり、まず、環状ポリオレフィン樹脂コート層の表面に、1mm間隔の升目を100枡作製する。次に、その上にセロハンテープを貼り付け、セロハンテープを剥がす。このとき、環状ポリオレフィン樹脂コート層が剥離しなかった升数を数え、これを密着性の指標とする。本発明では、剥離しなかった升の数が70枡以上であることが好ましく、80枡以上であることがより好ましく、90枡以上であることが特に好ましく、95枡以上であることがさらに好ましく、100枡であることが最も好ましい。
【実施例】
【0078】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0079】
1.変性ポリオレフィン樹脂の特性
(1)モノマー組成
1H−NMR分析装置(日本電子社製、ECA500、500MHz)より求めた。テトラクロロエタン(d
2)を溶媒とし、120℃で測定した。
(2)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210:1999記載の方法に準じて、190℃、2160g荷重で測定した。
【0080】
2.コート剤の特性
(1)塗れ性
各実施例において、環状ポリオレフィン樹脂を含有するコート剤をコートした際の、コート剤のはじきの度合いを目視で観察し下記の指標で評価した。
○:全くはじきがなかった。
△:一部にはじきがあった。
×:全面ではじきがあった。
【0081】
3.積層体の特性
(1)環状ポリオレフィン樹脂コート層の密着性
JIS K5400−8.5(碁盤目試験)に準じ、積層体の環状ポリオレフィン樹脂コート層側に、カッターナイフで1mm×1mmの升目を100枡作り、その上にセロハンテープ(ニチバン社製TF−12)を貼り付けた後、セロハンテープを引き剥がし、100枡中で、環状ポリオレフィン樹脂コート層の剥離しなかった升目の数を調べた。試験は5回実施し5回の平均値で評価した。
(2)全光線透過率(%)
濁度計(曇り度計)NDH2000(日本電色工業(株)製)を用いてK7361に準じて、積層体の環状ポリオレフィン樹脂コート層側から光を入射して、積層体厚み方向の全光線透過率を測定した。試験は5回実施し5回の平均値で評価した。
(3)環状ポリオレフィン樹脂コート層のひび割れ
作製直後の積層体(サイズ:150mm×250mmの長方形)20枚を40℃のインキュベーターに入れ、30日間静置した。その後、積層体を取り出し、環状ポリオレフィン樹脂コート層の状態を目視で観察した。環状ポリオレフィン樹脂コート層に一部でもひび割れが確認された積層体の枚数を調べた。以上を使用環境での環状ポリオレフィン樹脂コート層のひび割れとした。
【0082】
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を、下記の方法で製造した。
【0083】
<エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体の水性分散体製造>
英国特許第2091745号明細書、米国特許第4617366号明細書及び米国特許第4644044号明細書に記載された方法をもとに、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体であるPO1、PO2及びPO3を製造した。PO1、PO2及びPO3のモノマー構成及び特性を表1に示す。次いで、撹拌機とヒーターを備えた1リットル容ガラス容器に、上記で得られたPO1、PO2またはPO3を100g、イソプロパノールを100g、2−ジメチルアミノエタノールを5g、蒸留水を295g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに120分間撹拌し分散化させた。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、ヒーターの電源を切り約40℃まで冷却したところで、イソプロパノールを添加して水性分散体の固形分濃度を10質量%となるように調整し、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、乳白色の均一なPO1、PO2またはPO3の水性分散体を得た。
【0084】
以下、PO1の水性分散体を「E−1」と、PO2の水性分散体を「E−2」と、PO3の水性分散体を「E−3」と示す。E−1中の、PO1の数平均粒子径は0.07μmであり、E−2中の、PO2の数平均粒子径は0.07μmであり、E−3中の、PO3の数平均粒子径は0.07μmであった。なお、本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体の数平均粒子径は、マイクロトラック粒度分布計(日機装株式会社製、UPA150、MODEL No.9340、動的光散乱法)を用い、樹脂の屈折率を1.50として求めた。
【0085】
<エチレン−プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体の水性分散体製造>
国際公開第2004/104090号に記載された方法をもとに、エチレン−プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体であるPO4を製造した。PO4のモノマー構成及び特性を表1に示す。次いで、撹拌機とヒーターを備えた1リットル容ガラス容器に、上記で得られたPO4を75g、テトラヒドロフランを150g、2−ジメチルアミノエタノールを8g、蒸留水を267g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を130℃に保ってさらに120分間撹拌し分散化させた。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、ヒーターの電源を切り約40℃まで冷却したところで、イソプロパノールを添加して水性分散体の固形分濃度を10質量%となるように調整し、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、乳白色の均一なPO4の水性分散体を得た。以下、PO4の水性分散体を「E−4」と示す。E−4中の、PO4の数平均粒子径は0.12μmであった。
【0086】
<エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の水性分散体製造>
エチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製、ニュクレルN0903HC、以下、N0903HCと称す)、エチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製、ニュクレルAN42115C、以下、AN42115Cと称す)、エチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製、ニュクレルN1560、以下、N1560と称す)、エチレン−アクリル酸共重合体(ダウ・ケミカル社製、プリマコール5990、以下、5990と示す)を用いて、下記の方法によりそれらの水性分散体を製造した。N0903HC、AN42115C、N1560、5990のモノマー構成及び特性を表1に示す。
【0087】
(N0903HC、AN42115Cの水性分散体製造)
撹拌機とヒーターを備えた1リットル容ガラス容器に、N0903HCまたはAN42115Cを75g、n−プロパノールを175g、2−ジメチルアミノエタノールを20g、蒸留水を230g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を150℃に保ってさらに120分間撹拌し分散化させた。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、ヒーターの電源を切り約40℃まで冷却したところで、イソプロパノールを添加して水性分散体の固形分濃度を10質量%となるように調整し、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、乳白色の均一なN0903HCまたはAN42115Cの水性分散体を得た。以下、N0903HCの水性分散体を「E−5」と、AN42115Cの水性分散体を「E−6」と示す。E−5中の、N0903HCの数平均粒子径は0.18μmであり、E−2中の、AN42115Cの数平均粒子径は0.20μmであった。
【0088】
(N1560、5990の水性分散体製造)
撹拌機とヒーターを備えた1リットル容ガラス容器に、N1560または5990を75g、イソプロパノールを50g、2−ジメチルアミノエタノールを7g、蒸留水を368g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を130℃に保ってさらに120分間撹拌し分散化させた。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、ヒーターの電源を切り約40℃まで冷却したところで、イソプロパノールを添加して水性分散体の固形分濃度を10質量%となるように調整し、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、乳白色の均一なN1560または5990の水性分散体を得た。以下、N1560の水性分散体を「E−7」と、5990の水性分散体を「E−8」と示す。E−7中の、N1560の数平均粒子径は0.05μmであり、E−7中の、5990の数平均粒子径は0.04μmであった。
【0089】
使用した酸変性ポリオレフィン樹脂の特性を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
<ポリウレタン樹脂の水性分散体製造>
攪拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた反応器に、数平均分子量1970のポリテトラメチレングリコールを345g、イソホロンジイソシアネートを77.8g、ジブチルチンジラウレートを0.03g仕込み、80℃で2時間反応させた。次いでこの反応液を50℃まで冷却した後、3−ジメチルアミノプロパノールを11.7g、トリエチルアミンを8.85g、アセトンを177g質量部添加し、3時間反応させた。さらに、この反応液にアセトンを175g加えて30℃まで冷却し、イソホロンジイソシアネート13.4g、モノエタノ−ルアミン1.07g、イソプロパノール87.9g、水1039gからなる混合液を加えて高速攪拌し10分経ったところで、イソプロパノールを添加して水性分散体の固形分濃度を10質量%となるように調整し、ポリエーテル型のポリウレタン樹脂の水性分散体を得た。以下、この水性分散体を「U−1」と示す。
【0092】
<環状ポリオレフィン樹脂の溶剤系コート剤製造>
6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレンに、重合触媒としてトリエチルアルミニウムの15質量%シクロヘキサン溶液100g、トリエチルアミン50g、及び四塩化チタンの20質量%シクロヘキサン溶液100gを添加して、シクロヘキサン中で開環重合し、得られた開環重合体をニッケル触媒で水素添加して樹脂溶液を得た。この樹脂溶液をイソプロピルアルコール中で凝固させ、乾燥し、粉末状の環状ポリオレフィン樹脂を得た。この樹脂の数平均分子量は39,000、水素添加率は99.7%、ガラス転移温度は142℃であった。次いでこの環状ポリオレフィン樹脂を濃度20重量%になるようにキシレンに溶解し、酸化防止剤(イルガノックル1010、チバガイギー製)を樹脂に対して0.025質量%、レベリング剤(フロラードFC−430、住友スリーエム製)を溶液に対して150ppm添加して環状ポリオレフィン樹脂の溶剤系コート剤を得た。以下、このコート剤を「Y−1」と示す。
【0093】
<環状ポリオレフィン樹脂の水系コート剤製造>
数平均分子量が19000、質量平均分子量が44000、ガラス転移温度が150°C、水素添加率が99.9%であり、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5 .1
7,10]−ドデカ−3−エン(TCD)と、トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3,7−ジエン(DCP、ジシクロペンタジエンともいう)との質量比が85/15であるTCD/DCP開環共重合体水素添加物125gに、トルエン1リットルを加えて溶解した。このTCD/DCP開環共重合体水素添加物/トルエン溶液500gに、蒸留水500g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.44gを添加し、ホモミキサーを用いて回転数10000rpmで15分間撹拌、混合した。次いで、カルボキシメチルセルロース0.72gを添加してさらに撹拌した。この撹拌された液をエバポレータで減圧蒸留して、トルエン及び一部の水を蒸留することにより、固形分濃度を20質量%に調整し、環状ポリオレフィン樹脂の水性分散体である水系コート剤を得た。以下、この水系コート剤を「Y−2」と示す。
【0094】
<実施例1>
酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体としてE−1を用い、基材層として光学用ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚さ100μm、全光線透過率は92%、以下「PET」と示す)を用い、環状ポリオレフィン樹脂を含有するコート剤としてY−1を用いた。
【0095】
酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体を、基材層の一方の面に、乾燥後の塗膜の厚さが1μmとなるようにコートし、100℃で1分間乾燥しプライマー層を形成した。次いで、環状ポリオレフィン樹脂を含有するコート剤を、基材層のプライマー層面に、乾燥後のコート層の厚さが10μmとなるようにコートし、100℃で3分間乾燥し環状ポリオレフィン樹脂コート層を形成し積層体を得た。
【0096】
<実施例2〜6、比較例6、7>
酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体として、E−1に代えて表2に示した水性分散体を用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0097】
<実施例7、8>
プライマー層の厚みを、表2に示した厚みにした以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0098】
<実施例9>
基材層として、PETに代えて光学用ポリカーボネート樹脂フィルム(厚さ100μm、全光線透過率は90%、以下「PC」と示す)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0099】
<実施例10>
基材層として、PETに代えて光学用ポリメタクリル酸メチル樹脂フィルム(厚さ125μm、全光線透過率は93%、以下「PMMA」と示す)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0100】
<実施例11>
基材層として、PETに代えて光学用環状オレフィンポリマーフィルム(厚さ125μm、全光線透過率は92%、以下「COP」と示す)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0101】
<実施例12>
基材層として、PETに代えて光学用セルローストリアセテートフィルム(厚さ80μm、全光線透過率は93%、以下「TAC」と示す)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0102】
<実施例13、14>
環状ポリオレフィン樹脂コート層の厚みを、表2に示した厚みにした以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0103】
<実施例15>
環状ポリオレフィン樹脂を含有するコート層として、Y−1に代えてY−2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0104】
<実施例16>
酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体として、E−1に代えて以下の方法で調整した水性分散体を用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0105】
水性分散体の調整:E−1の含有する酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部にたいして、架橋剤として多価オキサゾリン化合物水溶液(日本触媒社製、エポクロスWS700、オキサゾリン基含有アクリル樹脂の水溶液、固形分濃度25質量%、以下、「WS700」と示す)の固形分が5質量部となるように、E−1とWS700とを混合し、これを、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体とした。
【0106】
<実施例17>
多価オキサゾリン化合物水溶液に代えて多価カルボジイミド化合物水溶液(日清紡ケミカル社製、カルボジライトV−02−L2、カルボジイミド基含有樹脂の水溶液、固形分濃度40質量%、以下、「V02L2」と略す〕を用いた以外は、実施例16と同様の方法で積層体を得た。
【0107】
<実施例18>
多価オキサゾリン化合物水溶液に代えて多価ヒドラジド化合物水溶液(アジピン酸ジヒドラジドの水溶液、固形分濃度8質量%、以下、「ADH」と略す〕を用いた以外は、実施例16と同様の方法で積層体を得た。
【0108】
<実施例19〜22>
基材層として、PETに代えて表2に示した基材層を用いた以外は、実施例16と同様の方法で積層体を得た。
【0109】
<実施例23、24>
環状ポリオレフィン樹脂コート層の厚みを、表2に示した厚みにした以外は、実施例16と同様の方法で積層体を得た。
【0110】
<実施例25>
環状ポリオレフィン樹脂を含有するコート層として、Y−1に代えてY−2を用いた以外は、実施例16と同様の方法で積層体を得た。
【0111】
<実施例26、27>
プライマー層の厚みを、表2に示した厚みにした以外は、実施例16と同様の方法で積層体を得た。
【0112】
<実施例28>
酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体として、E−1に代えて以下の方法で調整した水性分散体を用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0113】
水性分散体の調整:E−1の含有する酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部にたいして、ポリウレタン樹脂としてポリエーテル型のポリウレタン樹脂の水性分散体U−1の固形分が10質量部となるように、E−1とU−1とを混合し、これを酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体とした。
【0114】
<実施例29〜32>
基材層として、PETに代えて表2に示した基材層を用いた以外は、実施例28と同様の方法で積層体を得た。
【0115】
<実施例33、34>
環状ポリオレフィン樹脂コート層の厚みを、表2に示した厚みにした以外は、実施例28と同様の方法で積層体を得た。
【0116】
<実施例35>
環状ポリオレフィン樹脂を含有するコート層として、Y−1に代えてY−2を用いた以外は、実施例28と同様の方法で積層体を得た。
【0117】
<実施例36、37>
プライマー層の厚みを、表2に示した厚みにした以外は実施例28と同様の方法で積層体を得た。
【0118】
<比較例1>
基材層としてPETを用い、環状ポリオレフィン樹脂を含有するコート剤としてY−1を用いた。
【0119】
Y−1を、基材層の一方の面に、乾燥後の塗膜の厚さが10μmとなるようにコートし、100℃で3分間乾燥し環状ポリオレフィン樹脂コート層を形成し積層体を得た。即ち、プライマー層を有していない積層体である。
【0120】
<比較例2〜5>
基材層として、PETに代えて表2に示した基材層を用いた以外は、比較例1と同様の方法で積層体を得た。即ち、プライマー層を有していない積層体である。なお、PMMAを用いた比較例3では、環状ポリオレフィン樹脂を含有するコート剤をコートした際に、全面ではじきが発生し、環状ポリオレフィン樹脂コート層が形成できなかった。よって、積層体の評価を実施しなかった。
【0121】
<比較例8>
酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体として、E−1に代えて以下の方法で調整した水性分散体を用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0122】
水性分散体の調整:E−8の含有する酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部にたいして、架橋剤としてWS700の固形分が5質量部となるように、E−8とWS700とを混合しこれを、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体とした。
【0123】
<比較例9>
酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体として、E−1に代えて以下の方法で調整した水性分散体を用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0124】
水性分散体の調整:E−8の含有する酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部にたいして、ポリウレタン樹脂としてU−1の固形分が10質量部となるように、E−8とU−1とを混合しこれを、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体とした。
【0125】
実施例1〜37、比較例1〜9で得られた積層体の評価結果を表2に示した。
【0126】
【表2】
【0127】
実施例1〜37の結果のように、プライマー層が不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1〜10質量%である酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体から得られる塗膜である積層体は、環状ポリオレフィン樹脂コート層の密着性やひび割れ抑制効果に優れていた。さらに、積層体製造の際の環状ポリオレフィン樹脂のコート剤の塗れ性も優れていた。また積層体は、光学フィルム適正を有した透明性であった。
【0128】
実施例16〜37では、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体に架橋剤やポリウレタン樹脂が添加されていたためより密着性に優れる結果であった。
【0129】
対して比較例では、環状ポリオレフィン樹脂のコート剤の塗れ性や密着性に劣っていた。比較例8、9の結果から、不飽和カルボン酸成分の含有量が本発明で規定する範囲を満足しない酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を用いた場合、架橋剤やポリウレタン樹脂を添加しても性能向上は確認されなかった。