(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、例えば血液、尿、髄液、或いは組織等の検体に対して各種の検査を行う手順を自動化した装置である。自動分析装置は同時に大量の検査が可能であり、病院、検査機関等において広く利用され作業性の向上に大きく貢献している。
【0003】
自動分析装置は、液体を使用する機構を多く備える。例えば自動分析装置は、検体と試薬を反応させるための反応容器、反応容器に検体や試薬を分注するためのプローブ、及び、検体と試薬を撹拌するための撹拌子等を、洗浄水或いは洗浄液にて洗浄する洗浄機構を備える。自動分析装置の筐体内には、洗浄機構が洗浄に使用する洗浄水或いは洗浄液を流すための管路及びポンプが配置される。
【0004】
このように、自動分析装置は洗浄水或いは洗浄液等の液体を使用するため、筐体内で液漏れを生じることがある。液漏れが発生した場合、漏液により金属部分の腐食や駆動部分の故障が起きる危険がある。さらに、漏液が筐体外に漏れると検査室の床を濡らすうえに、発見が遅れれば階下の装置に多大な影響を与える危険性もある。
このような事情から、筐体の外への液漏れを確実に検知し、迅速に対応することが求められる。
【0005】
また、液体の通る管路及びポンプは筐体内の広域に渡るため、特定の箇所だけでなく広域における漏液検知が必要となる。
【0006】
広域の漏液検知を行う従来技術としては、漏液をセンサに導く導液路を設けることにより少ない数の漏液センサで広域の漏液を検知する方法がある。(例えば、特許文献1)
【発明を実施するための形態】
【0012】
いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態における自動分析装置1の要部構成を
図1に示す。自動分析装置1は、入力インターフェイス2、コントローラ3、分析機構4、データ処理装置5、記憶装置6、出力装置7、洗浄装置8、及び、漏液検出部9を備える。
【0013】
入力インターフェイス2は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネル等を備える。入力インターフェイス2は、各種のコマンド、検査項目毎の分析条件、被検体情報、或いは被検試料毎に測定する検査項目等を指定するための操作者による操作を受ける。
【0014】
コントローラ3は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリ等を含む。コントローラ3は、メモリが記憶するプログラムをCPUにより実行することで、自動分析装置1の各部の制御に関する処理、及び、データの処理を実現する。
【0015】
分析機構4は、被検試料又は種々の検査項目に応じた標準試料等のサンプルと、種々の検査項目に応じた試薬との混合液の透光特性を測定する。分析機構4は、標準試料に関する測定結果を表した標準試料データや被検試料に関する測定結果を表した被検試料データを出力する。
【0016】
データ処理装置5は、入力インターフェイス2の操作により指定された分析条件及び検査項目等に従って標準試料データや被検試料データを処理し、分析データを生成する。
【0017】
記憶装置6は、例えばHDD(Hard Disk Drive)或いはSSD(Solid State Device)等を含む。記憶装置6は、データ処理装置5が生成した分析データ等を記憶する。
【0018】
出力装置7は、例えばプリンタ、ディスプレイ、及び、スピーカを含む。出力装置7は、上記プリンタによる用紙への印刷或いは上記ディスプレイへの表示により、記憶装置6が記憶する分析データ等を出力する。また、出力装置7は、エラー音及び操作音等をスピーカに発生させる。
【0019】
分析機構4は、第1試薬庫10、第2試薬庫11、反応ディスク12、ディスクサンプラ13、第1試薬アーム14、第2試薬アーム15、サンプルアーム16、撹拌アーム17、及び、測光ユニット18を備える。
【0020】
第1試薬庫10は、試薬容器20を回動可能に保持するラック10aを収納する。第2試薬庫11は、試薬容器21を回動可能に保持するラック11aを収納する。試薬容器20は、サンプルに含まれる検査項目毎の成分と反応する第1試薬を収容する。試薬容器21は、第1試薬と対をなす第2試薬を収容する。
【0021】
反応ディスク12は、円周上に等間隔で配列された状態の複数の反応容器22を、上記の円周に沿って回転移動可能に保持する。反応容器22は、サンプル及び第1試薬を混合した第1の混合液や、サンプル、第1試薬及び第2試薬を混合した第2の混合液を収容する。
【0022】
ディスクサンプラ13は、回動可能であり、その回動軸の周りに多数の試料容器23を保持する。試料容器23は、サンプルを収容する。
【0023】
第1試薬アーム14は、第1試薬プローブ14aを回動及び上下動可能に保持する。第1試薬プローブ14aは、第1試薬の分注を分析サイクル毎に行う。なお、第1試薬の分注とは、試薬容器20から第1試薬を吸引し、吸引した第1試薬を反応容器22へと吐出することである。
【0024】
第2試薬アーム15は、第2試薬プローブ15aを回動及び上下動可能に保持する。第2試薬プローブ15aは、第2試薬の分注を分析サイクル毎に行う。なお、第2試薬の分注とは、試薬容器21から第2試薬を吸引し、吸引した第2試薬を反応容器22へと吐出することである。
【0025】
サンプルアーム16は、サンプルプローブ16aを回動及び上下動可能に保持する。サンプルプローブ16aは、サンプルの分注を分析サイクル毎に行う。なお、サンプルの分注とは、試料容器23からサンプルを吸引し、吸引したサンプルを反応容器22へと吐出することである。
【0026】
撹拌アーム17は、撹拌子17aを回動及び上下動可能に保持する。撹拌アーム17は、撹拌子17aを回動させることにより、反応容器22内に収容された第1の混合液又は第2の混合液を撹拌する。
【0027】
測光ユニット18は、測光位置に在る反応容器22に光を照射し、その反応容器22に収容された混合液の透光特性を測定する。測光ユニット18が測定する透光特性は、一般的には吸光度である。測光ユニット18は、測光位置に在る反応容器22に標準試料を含む混合液が収容されている際に測定した吸光度から標準試料データを生成する。また、測光ユニット18は、測光位置に在る反応容器22に被検試料を含む混合液が収容されている際に測定した吸光度から被検試料データを生成する。測光ユニット18は、標準試料データ又は被検試料データをデータ処理装置5に出力する。
【0028】
洗浄装置8は、反応容器22、第1試薬プローブ14a、第2試薬プローブ15a、サンプルプローブ16a及び撹拌子17aの内壁及び外壁を、洗浄水或いは洗浄液にて洗浄する。
【0029】
漏液検出部9について説明する。
漏液検出部9は、自動分析装置1の内部にて発生する液漏れを検出する。漏液検出部9による検出対象の液漏れは、例えば上記洗浄装置8にて使用される洗浄水或いは洗浄液の液漏れを含む。
【0030】
漏液検出部9の要部構成の一例を
図2に示す。漏液検出部9は、第1管路101、第2管路102、第3管路103、受皿110、漏液センサ120、排出路130、第1分岐路141、第2分岐路142、第3分岐路143、及び、漏液チェッカ150を備える。
【0031】
図2においては、自動分析装置1の筐体200を漏液検出部9と共に示している。筐体200は、内部に仕切部材210を備える。仕切部材210は、筐体200の内部を複数のエリアA1,A2,A3に仕切る。
【0032】
第1管路101はエリアA1に接続され、第2管路102はエリアA2に接続され、第3管路103はエリアA3に接続される。仕切部材210による仕切りは、必ずしも完全な空間的分離を意味するものではない。当該仕切部材210は、少なくともエリアA1にて発生した漏液が第1管路101に流れ、エリアA2にて発生した漏液が第2管路102に流れ、エリアA3にて発生した漏液が第3管路103に流れるようにエリアA1〜A3を定義するものであれば、如何なる形態であってもよい。
【0033】
受皿110は、第1管路101、第2管路102及び第3管路103から流れ出る漏液を受ける。漏液センサ120は、受皿110上に設定された検知位置において漏液を検知する。漏液センサ120としては、例えば試片に電流を流して電気抵抗を測定し、当該試片に漏液が付着した際に生じる電気抵抗の変化を以って漏液を検知する構成を採用できる。漏液センサ120の検知位置は、例えば受皿110の上面における重力方向の最底部分に設定すればよい。
【0034】
排出路130は、受皿110が受けた漏液を、例えば検査室に設けられた廃液口に排出する。
【0035】
漏液チェッカ150は、複数のセル151,152,153と、浮子151a,152a,153aと、筐体154とを備える。各セル151〜153は、液体を貯留可能な透明の容器である。浮子151aはセル151に収容され、浮子152aはセル152に収容され、浮子153aはセル153に収容される。浮子151a〜153aは、それぞれ各セル151〜153に液体が流入した際に浮力によって浮き上がる。筐体154は、各セル151〜153を収容する。筐体154は、透明の部材にて形成された窓部を備える。この窓部を介して外部からセル151〜153を視認することが可能である。
【0036】
第1分岐路141は、第1管路101から分岐し、セル151に接続される。第2分岐路142は、第2管路102から分岐し、セル152に接続される。第3分岐路143は、第3管路103から分岐し、セル153に接続される。
【0037】
エリアA1にて液漏れが発生した場合、漏液が第1管路101に流れる。第1管路101を流れる漏液は、第1分岐路141を通ってセル151に流入し、浮子151aが浮き上がる。
【0038】
エリアA2にて液漏れが発生した場合、漏液が第2管路102に流れる。第2管路102を流れる漏液は、第2分岐路142を通ってセル152に流入し、浮子152aが浮き上がる。
【0039】
エリアA3にて液漏れが発生した場合、漏液が第3管路103に流れる。第3管路103を流れる漏液は、第3分岐路143を通ってセル153に流入し、浮子153aが浮き上がる。
【0040】
図2においては、エリアA2にて液漏れが発生し、浮子152aが浮き上がった状態を示している。
【0041】
このように、漏液チェッカ150は、第1管路101、第2管路102及び第3管路103のうち、漏液が流れている管路に対応するエリアを識別可能に報知するエリア報知部として機能する。
【0042】
漏液センサ120は、漏液を検知した場合、検知信号をコントローラ3に出力する。コントローラ3は、検知信号の入力を受けたことに応じて、出力装置7により液漏れの発生を報知する。例えばコントローラ3は、出力装置7を構成するディスプレイに液漏れの発生を知らせるメッセージを表示させ、出力装置7に含まれるスピーカに警告音を発生させる。コントローラ3は、図示せぬ通信装置を介して、外部のシステムに液漏れの発生を通知してもよい。
【0043】
このように、コントローラ3及び出力装置7等は、漏液センサ120が漏液を検知した場合に液漏れの発生を報知する液漏報知部として機能する。
【0044】
ここで、仕切部材210の一態様について説明する。
図3は、仕切部材210の一態様を示す模式図である。筐体200は、背面カバー201を開閉可能な箱状を成す。筐体200の底部202の下方には、床面に対して筐体200を支持する複数の脚部材203が設けられる。脚部材203により、床面と底部202の外表面との間に空間ができる。筐体200内には、分析機構4及び洗浄装置8等を駆動するための駆動部、コントローラ3、データ処理装置5及び記憶装置6等を含む制御部、電源装置、及び、洗浄装置8で使用する洗浄水或いは洗浄液等の液体が流れる管路やポンプ等が収納される。
【0045】
仕切部材210としての3つの仕切枠210a,210b,210cが底部202の上面に設けられる。仕切枠210a,210b,210cは、いずれも矩形状であり、一列に密接して配置される。仕切枠210a,210b,210cと底部202の上面との接触部分は、液体が漏れないように連結されている。仕切枠210aの上方がエリアA1となり、仕切枠210bの上方がエリアA2となり、仕切枠210cの上方がエリアA3となる。すなわち、エリアA1にて液漏れが発生した場合には漏液の全て或いは大部分が仕切枠210a内に落下し、エリアA2にて液漏れが発生した場合には漏液の全て或いは大部分が仕切枠210b内に落下し、エリアA3にて液漏れが発生した場合には漏液の全て或いは大部分が仕切枠210c内に落下する。
【0046】
第1管路101は、例えば底部202の仕切枠210aにて囲われた領域内に接続される。これにより、エリアA1からの漏液が第1管路101に流れる。
【0047】
第2管路102は、例えば底部202の仕切枠210bにて囲われた領域内に接続される。これにより、エリアA2からの漏液が第2管路102に流れる。
【0048】
第3管路103は、例えば底部202の仕切枠210cにて囲われた領域内に接続される。これにより、エリアA3からの漏液が第3管路103に流れる。
【0049】
なお、漏液チェッカ150に第1管路101、第2管路102及び第3管路103を流れる漏液を取り込む必要があるため、漏液チェッカ150は、底部202の上面よりも低い位置に設ける必要がある。
図3においては、漏液チェッカ150を底部202の下面側に設けた例を示している。受皿110、漏液センサ120、及び、排出路130に関しても、例えば底部202の下面側に設ければよい。
【0050】
以上説明した本実施形態の自動分析装置1においては、液漏れが発生した場合に漏液チェッカ150を確認することで、エリアA1〜A3のいずれに発生源が所在するかを容易に特定できる。したがって、自動分析装置1の修理や点検を行う作業者は、液漏れの発生源を迅速に特定して処置を施すことが可能となる。
【0051】
また、自動分析装置1においては、漏液センサ120が漏液を検知した際に、出力装置7が液漏れの発生を報知する。したがって、自動分析装置1の周囲に所在する者に液漏れの発生を気付かせることができる。
【0052】
このように本実施形態においては、液漏れの発生及び漏液が発生したエリアを報知するに当たり、電気的な構成要素としては1つの漏液センサ120を用いれば足りる。したがって、例えばエリアA1〜A3毎に漏液センサ120を使用する場合に比べ、電気的な構成要素を減らし、自動分析装置1の製造コスト及びメンテナンスコストを低減することが可能となる。
【0053】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。
本実施形態は、漏液検出部9の構成において第1の実施形態と相違する。特に説明を加えない構成は、第1の実施形態と同様である。第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
本実施形態に係る漏液検出部9の要部構成の一例を
図4に示す。漏液検出部9は、第1管路101a、第2管路102a、第3管路103a、受皿110、漏液センサ120、排出路130、及び、漏液チェッカ150を備える。第1管路101aはエリアA1に接続され、第2管路102aはエリアA2に接続され、第3管路103aはエリアA3に接続される。
【0055】
漏液チェッカ150は、筐体154の内部に、第1管路101b、第2管路102b、第3管路103b、第1分岐路141、第2分岐路142、第3分岐路143、複数のセル151〜153、及び、浮子151a〜153aを備える。さらに、漏液チェッカ150は、筐体154に第1コネクタ161、第2コネクタ162、第3コネクタ163、及び、排出口170を備える。
【0056】
第1分岐路141は、第1管路101bから分岐し、セル151に接続される。第2分岐路142は、第2管路102bから分岐し、セル152に接続される。第3分岐路143は、第3管路103bから分岐し、セル153に接続される。
【0057】
第1管路101bの一端は第1コネクタ161に接続され、第2管路102bの一端は第2コネクタ162に接続され、第3管路103bの一端は第3コネクタ163に接続される。第1コネクタ161、第2コネクタ162及び第3コネクタ163は、漏液チェッカ150の下方において合流し、排出口170に接続される。
【0058】
第1管路101aの一端は第1コネクタ161に着脱自在であり、第2管路102aの一端は第2コネクタ162に着脱自在であり、第3管路103aの一端は第3コネクタ163に着脱自在である。
【0059】
漏液チェッカ150は、第1管路101a、第2管路102a及び第3管路103aと第1コネクタ161、第2コネクタ162及び第3コネクタ163とをそれぞれ接続することで自動分析装置1に装着される。受皿110は、漏液チェッカ150を自動分析装置1に装着した状態において排出口170の直下に位置するように設ける。
【0060】
さらに、自動分析装置1に装着された漏液チェッカ150は、第1管路101a、第2管路102a及び第3管路103aと第1コネクタ161、第2コネクタ162及び第3コネクタ163との接続を解除することで取り外される。
【0061】
本実施形態のように、漏液検出部9に含まれる管路の大部分を漏液チェッカ150と一体化し、自動分析装置1に対して着脱自在とすることで、漏液検出部9のメンテナンスや漏液チェッカ150の交換が容易となる。
その他、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0062】
(変形例)
いくつかの変形例を示す。
各実施形態では、3つのエリアA1〜A3に筐体200内を仕切る場合を示したが、より多数、或いは2つのみのエリアに仕切ってもよい。エリアの数を変更する場合には、その数と同数のセルを設け、各エリアからの漏液が対応するセルに流れ込むように管路を設計すればよい。
【0063】
エリアは、
図3を用いて説明したように横方向に並びで設定するのではなく、縦方向に並べて設定してもよい。この場合にあっては、例えば各エリアの底部に上方が開口したトレイ状の仕切部材210を縦方向に並べて配置し、各仕切部材210に落下した漏液が対応するセル及び漏液センサに到達するように管路を設計すればよい。
【0064】
自動分析装置1の筐体200の底部202に傾斜を設けることで漏液を漏液検出部9の各管路に流し分けてもよい。例えば
図3を用いて説明したように横並びの3つのエリアA1〜A3を設定する場合、仕切枠210a,210b,210cを設けずに、仕切枠210a,210b,210cが配置された位置を頂部として、各エリアA1〜A3の下方に1つずつ所在する3点に向けて窪む傾斜を筐体200の底部202に設ける。さらに、この3点にそれぞれ第1管路101、第2管路102及び第3管路103を接続する。このようにすれば、各エリアA1〜A3からの漏液が対応するセルに流れ込む。この変形例においては、底部202が仕切部材210としての役割を担う。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。