特許第6181448号(P6181448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メディカルシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6181448-自動分析装置及び洗浄装置 図000002
  • 特許6181448-自動分析装置及び洗浄装置 図000003
  • 特許6181448-自動分析装置及び洗浄装置 図000004
  • 特許6181448-自動分析装置及び洗浄装置 図000005
  • 特許6181448-自動分析装置及び洗浄装置 図000006
  • 特許6181448-自動分析装置及び洗浄装置 図000007
  • 特許6181448-自動分析装置及び洗浄装置 図000008
  • 特許6181448-自動分析装置及び洗浄装置 図000009
  • 特許6181448-自動分析装置及び洗浄装置 図000010
  • 特許6181448-自動分析装置及び洗浄装置 図000011
  • 特許6181448-自動分析装置及び洗浄装置 図000012
  • 特許6181448-自動分析装置及び洗浄装置 図000013
  • 特許6181448-自動分析装置及び洗浄装置 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181448
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】自動分析装置及び洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   G01N35/10 F
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-146373(P2013-146373)
(22)【出願日】2013年7月12日
(65)【公開番号】特開2015-17935(P2015-17935A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】山内 茂哉
【審査官】 渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/016506(WO,A1)
【文献】 特開2012−008123(JP,A)
【文献】 特開2001−133466(JP,A)
【文献】 特表2013−511721(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0227771(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注のためのプローブ又は撹拌のための撹拌子と、
洗浄水又は洗浄液の流量を第1流量及びこの第1流量よりも大きい第2流量の間で調整する流量調整部と、
前記洗浄水又は前記洗浄液を吐出する吐出口を有し、前記洗浄水又は前記洗浄液が前記第1流量で流れるとき、前記プローブ又は前記撹拌子の外壁を洗浄するための第1形状の吐出流を前記吐出口から所定位置に向けて吐出し、前記洗浄水又は前記洗浄液が前記第2流量で流れるとき、前記プローブ又は前記撹拌子の外壁に付着した液滴を除去するための第2形状の吐出流を前記吐出口から前記所定位置に向けて吐出するノズルと、
を備える自動分析装置。
【請求項2】
前記第1形状は、棒状部分を含み、前記第2形状は、薄膜部分を含む、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記ノズルの先端部は、可撓性材料にて形成され、前記吐出口は、前記先端部に形成された複数の孔部と、これら複数の孔部を繋ぐスリットとを含み、
前記洗浄水又は前記洗浄液が前記第1流量で流れるとき、前記複数の孔部から前記洗浄水又は前記洗浄液が流れ出て棒状部分を含む前記第1形状の吐出流が形成され、前記洗浄水又は前記洗浄液が前記第2流量で流れるとき、前記先端部における前記スリットの周囲が撓んで前記スリットが開き、前記スリットから前記洗浄水又は前記洗浄液が流れ出て薄膜部分を含む前記第2形状の吐出流が形成される、
請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記プローブ又は前記撹拌子を、前記第2形状が含む薄膜部分と交わる方向に移動させる移動機構をさらに備える、
請求項2又は3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
洗浄水又は洗浄液の流量を第1流量及びこの第1流量よりも大きい第2流量の間で調整する流量調整部と、
前記洗浄水又は前記洗浄液を吐出する吐出口を有し、前記洗浄水又は前記洗浄液が前記第1流量で流れるとき、分注のためのプローブ又は撹拌のための撹拌子の外壁を洗浄するための第1形状の吐出流を前記吐出口から所定位置に向けて吐出し、前記洗浄水又は前記洗浄液が前記第2流量で流れるとき、前記プローブ又は前記撹拌子の外壁に付着した液滴を除去するための第2形状の吐出流を前記吐出口から前記所定位置に向けて吐出するノズルと、
を備える洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自動分析装置及び洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、例えば血液、尿、髄液、或いは組織等の検体に対して各種の検査を行う手順を自動化した装置である。自動分析装置は同時に大量の検査が可能であり、病院、検査機関等において広く利用され作業性の向上に大きく貢献している。
【0003】
自動分析装置は、検体や試薬を反応管に分注するためのプローブ、及び、反応管に分注された検体と試薬とを撹拌するための撹拌子を備える。プローブ及び撹拌子は、使用毎に外壁を洗浄する必要がある。
【0004】
プローブ及び撹拌子の外壁を洗浄した後において外壁に洗浄水或いは洗浄液の液滴が付着していると、その液滴が次の使用時に反応管内の検体及び試薬を希釈し、正確な分析が妨げられる。したがって、外壁の洗浄に際しては、液滴が残らないようにするための手段を講じる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−8123号公報
【特許文献2】特開2012−167998号公報
【特許文献3】特開2012−220436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、自動分析装置が備えるプローブ及び撹拌子の外壁を、液滴を残すことなく洗浄することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態における自動分析装置は、分注のためのプローブ又は撹拌のための撹拌子と、流量調整部と、ノズルとを備える。上記流量調整部は、洗浄水又は洗浄液の流量を第1流量及びこの第1流量よりも大きい第2流量の間で調整する。上記ノズルは、上記洗浄水又は上記洗浄液を吐出する吐出口を有し、上記洗浄水又は上記洗浄液が上記第1流量で流れるとき、上記プローブ又は上記撹拌子の外壁を洗浄するための第1形状の吐出流を上記吐出口から所定位置に向けて吐出し、上記洗浄水又は上記洗浄液が上記第2流量で流れるとき、上記プローブ又は上記撹拌子の外壁に付着した液滴を除去するための第2形状の吐出流を上記吐出口から前記所定位置に向けて吐出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態における自動分析装置の要部構成を示す図。
図2】同実施形態における洗浄装置の要部構成を示す図。
図3】同実施形態におけるサンプルプローブの外観斜視図。
図4図3におけるX−X断面図。
図5】同実施形態における洗浄ノズルを先端部側から見た斜視図。
図6】同実施形態における洗浄ノズルの三面図。
図7】同実施形態における洗浄ノズルから吐出される第1形状の吐出流の模式図。
図8】同実施形態における洗浄ノズルから吐出される第2形状の吐出流の模式図。
図9】同実施形態における洗浄装置による洗浄の工程を説明するための図。
図10】第2の実施形態における洗浄ノズルの先端部の形状を表す模式図。
図11】同実施形態における洗浄ノズルから吐出される第1形状の吐出流の模式図。
図12】同実施形態における洗浄ノズルから吐出される第2形状の吐出流の模式図。
図13】第3の実施形態における洗浄ノズル及び洗浄槽の断面等を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態における自動分析装置1の要部構成を図1に示す。自動分析装置1は、入力インターフェイス2、コントローラ3、分析装置4、データ処理装置5、記憶装置6、出力装置7、及び、洗浄装置8を備える。
【0010】
入力インターフェイス2は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネル等を備える。入力インターフェイス2は、各種のコマンド、検査項目毎の分析条件、被検体情報、或いは被検試料毎に測定する検査項目等を指定するための操作者による操作を受ける。
【0011】
コントローラ3は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリ等を含む。コントローラ3は、メモリが記憶するプログラムをCPUにより実行することで、自動分析装置1の各部の制御に関する処理、及び、データの処理を実現する。
【0012】
分析装置4は、被検試料又は種々の検査項目に応じた標準試料等のサンプルと、種々の検査項目に応じた試薬との混合液の透光特性を測定する。分析装置4は、標準試料に関する測定結果を表した標準試料データや被検試料に関する測定結果を表した被検試料データを出力する。
【0013】
データ処理装置5は、入力インターフェイス2の操作により指定された分析条件及び検査項目等に従って標準試料データや被検試料データを処理し、分析データを生成する。
【0014】
記憶装置6は、例えばHDD(Hard Disk Drive)或いはSSD(Solid State Device)等を含む。記憶装置6は、データ処理装置5が生成した分析データ等を記憶する。
【0015】
出力装置7は、例えばプリンタ及びディスプレイを含む。出力装置7は、上記プリンタによる用紙への印刷或いは上記ディスプレイへの表示により、記憶装置6が記憶する分析データ等を出力する。
【0016】
分析装置4は、第1試薬庫10、第2試薬庫11、反応ディスク12、ディスクサンプラ13、第1試薬アーム14、第2試薬アーム15、サンプルアーム16、撹拌アーム17、容器洗浄ユニット18、及び、測光ユニット19を備える。
【0017】
第1試薬庫10は、試薬容器20を回動可能に保持するラック10aを収納する。第2試薬庫11は、試薬容器21を回動可能に保持するラック11aを収納する。試薬容器20は、サンプルに含まれる検査項目毎の成分と反応する第1試薬を収容する。試薬容器21は、第1試薬と対をなす第2試薬を収容する。
【0018】
反応ディスク12は、円周上に等間隔で配列された状態の複数個の反応容器22を、上記の円周に沿って回転移動可能に保持する。反応容器22は、サンプル及び第1試薬を混合した第1の混合液や、サンプル、第1試薬及び第2試薬を混合した第2の混合液を収容する。
【0019】
ディスクサンプラ13は、回動可能であり、その回動軸の周りに多数の試料容器23を保持する。試料容器23は、サンプルを収容する。
【0020】
第1試薬アーム14は、第1試薬プローブ14aを回動及び上下動可能に保持する。第1試薬プローブ14aは、第1試薬の分注を分析サイクル毎に行う。なお、第1試薬の分注とは、試薬容器20から第1試薬を吸引し、吸引した第1試薬を反応容器22へと吐出することである。
【0021】
第2試薬アーム15は、第2試薬プローブ15aを回動及び上下動可能に保持する。第2試薬プローブ15aは、第2試薬の分注を分析サイクル毎に行う。なお、第2試薬の分注とは、試薬容器21から第2試薬を吸引し、吸引した第2試薬を反応容器22へと吐出することである。
【0022】
サンプルアーム16は、サンプルプローブ16aを回動及び上下動可能に保持する。サンプルプローブ16aは、サンプルの分注を分析サイクル毎に行う。なお、サンプルの分注とは、試料容器23からサンプルを吸引し、吸引したサンプルを反応容器22へと吐出することである。
【0023】
撹拌アーム17は、撹拌子17aを回動及び上下動可能に保持する。撹拌アーム17は、撹拌子17aを回動させることにより、反応容器22内に収容された第1の混合液又は第2の混合液を撹拌する。
【0024】
各アーム14〜17は、プローブ或いは撹拌子を移動させる移動機構としての機能を実現する。
【0025】
容器洗浄ユニット18は、洗浄ノズル、乾燥ノズル及び保持部材を含む。洗浄ノズルは、反応容器22内の第1の混合液又は第2の混合液を吸引するとともに反応容器22内を洗浄するための洗浄液を吐出する。乾燥ノズルは、反応容器22内を乾燥する。保持部材は、洗浄ノズル及び乾燥ノズルを上下移動可能に保持する。
【0026】
測光ユニット19は、測光位置に在る反応容器22に光を照射し、その反応容器22に収容された混合液の透光特性を測定する。測光ユニット19が測定する透光特性は、一般的には吸光度である。測光ユニット19は、測光位置に在る反応容器22に標準試料を含む混合液が収容されている際に測定した吸光度から標準試料データを生成する。また、測光ユニット19は、測光位置に在る反応容器22に被検試料を含む混合液が収容されている際に測定した吸光度から被検試料データを生成する。測光ユニット19は、標準試料データ又は被検試料データをデータ処理装置5に出力する。
【0027】
洗浄装置8について説明する。
洗浄装置8は、例えば第1試薬プローブ14a、第2試薬プローブ15a、サンプルプローブ16a、及び、撹拌子17aのそれぞれに対して設けられる。洗浄装置8は、対応するプローブ或いは撹拌子を洗浄する。
【0028】
一例として、サンプルプローブ16aを洗浄するための洗浄装置8の要部構成を図2に示す。洗浄装置8は、タンク80、ポンプ81、洗浄ノズル82、洗浄槽83、及び、排出管84を備える。
【0029】
タンク80は、給水源から供給される洗浄水を貯留する。ポンプ81は、タンク80内の洗浄水を洗浄ノズル82に送り出す。ポンプ81は、例えばコントローラ3の制御の下で回転数を変更することにより、洗浄ノズル82に送る洗浄水の流量を調整することができる。すなわち、ポンプ81は、流量調整部として機能する。
【0030】
洗浄ノズル82は、タンク80から供給される洗浄水を洗浄槽83内に吐出する。
【0031】
洗浄槽83は、洗浄ノズル82が吐出した洗浄水を受ける。洗浄槽83にサンプルプローブ16aが挿入された状態で、洗浄ノズル82から洗浄水が吐出されると、当該洗浄水によりサンプルプローブ16aが洗浄される。
【0032】
排出管84は、洗浄槽83が受けた洗浄水を、例えば自動分析装置1が備える廃液タンクに排出する。
【0033】
洗浄ノズル82、洗浄槽83、排出管84、及び、サンプルプローブ16aの外観斜視図を図3に示す。さらに、図3におけるX−X断面図を図4に示す。
【0034】
洗浄槽83は、上方及び下方が開口した中空の円筒形状を有する。サンプルプローブ16aは、サンプルアーム16の動作により、洗浄槽83の上方の開口から洗浄槽83の内部に挿脱される。洗浄槽83の下方の開口に排出管84が取り付けられる。
【0035】
洗浄ノズル82は、先端部100が洗浄槽83の内部に突出するように洗浄槽83の側壁を貫通して設けられる。洗浄ノズル82は、ポンプ81から送られる洗浄水が流れる流路101を内部に備える。
【0036】
洗浄ノズル82の詳細について説明する。
洗浄ノズル82を先端部100側から見た斜視図を図5に示す。また、洗浄ノズル82の三面図を図6に示す。
【0037】
先端部100は、外力を受けて変形可能な軟質性の材料、例えばゴムにて形成される。先端部100は、2つの円形の小孔102,103と、これら小孔102,103の間に切れ込みを入れて形成したスリット104とを備える。小孔102,103及びスリット104は、洗浄水を吐出する吐出口を構成する。
【0038】
小孔102,103及びスリット104は、いずれも流路101に接続されている。流路101は、先端部100の手前で先細る。これにより、小孔102,103及びスリット104から吐出される洗浄水の流速が増す。
【0039】
先端部100から吐出される洗浄水の形状は、流路101を流れる洗浄水の流量Qに応じて変化する。特に、流量Qがスリット104を押し開けることが不可能な大きさの場合と、押し開けることが可能な大きさの場合とで、先端部100から吐出される洗浄水の形状が大きく異なる。
【0040】
スリット104を押し開けることが可能な場合と、不可能な場合とを隔てる流量QをQsと定義する。この流量Qsは、実験的或いは理論的に導出すればよい。さらに、流量Qsよりも小さい流量Q1(Q1<Qs)と、流量Qsよりも大きい流量Q2(Qs<Q2)とを定義する。
【0041】
流路101を流量Q1で洗浄水が流れる場合に先端部100から吐出される洗浄水の模式図を図7に示す。この場合、スリット104は開かない。したがって、小孔102,103から2本の吐出流が生じる。2本の吐出流は、小孔102,103から離れるに連れて空間的に拡散し、やがて合流して棒状の流れとなる。以下、このような吐出流の形状を第1形状と呼ぶ。さらに、第1形状の吐出流を、吐出流F1と呼ぶ。
【0042】
流路101を流量Q2で洗浄水が流れる場合に先端部100から吐出される洗浄水の模式図を図8に示す。この場合、スリット104が開く。したがって、小孔102,103から2本の吐出流が生じるとともに、スリット104から薄膜状の吐出流が生じる。流量Q2が比較的大きいために、当該吐出流の速度は速い。そのため、流量Q1の場合のように2本の吐出流が合流することなく、薄膜にて接続された状態で拡散する。以下、このような吐出流の形状を第2形状と呼ぶ。さらに、第2形状の吐出流を、吐出流F2と呼ぶ。
【0043】
図9を用いて洗浄装置8によりサンプルプローブ16aを洗浄する工程を説明する。洗浄装置8による洗浄の工程は、主に4つの工程(a),(b),(c),(b)を含む。
【0044】
工程(a)において、コントローラ3がサンプルアーム16を駆動し、サンプルプローブ16aを洗浄槽83内に移動させる。
【0045】
工程(b)において、コントローラ3がポンプ81を所定の回転数で駆動し、流路101に流量Q1で洗浄水を流す。このとき、第1形状の吐出流F1が洗浄ノズル82の先端部100から生じる。吐出流F1において小孔102,103から吐出された2本の吐出流が合流した棒状部分は、ある程度の太さを持つ。この棒状部分によってサンプルプローブ16aの外壁が全体的に洗浄される。
【0046】
工程(c)において、コントローラ3がポンプ81の回転数を上げ、流路101に流量Q2で洗浄水を流す。このとき、第2形状の吐出流F2が洗浄ノズル82の先端部100から生じる。吐出流F2の薄膜部分がサンプルプローブ16aの外壁に衝突する。
【0047】
工程(d)において、コントローラ3がサンプルアーム16を駆動し、サンプルプローブ16aを洗浄槽83内から上昇させる。このとき、速度の速い吐出流F2の薄膜部分により、工程(b)においてサンプルプローブ16aの外壁に付着した液滴が除去される。
【0048】
なお、第1試薬プローブ14a、第2試薬プローブ15a、及び、撹拌子17aに対して設けられた洗浄装置8に関しても、図2図8を用いて説明した構成を備え、図9を用いて説明した工程で洗浄を行う。
【0049】
本実施形態の作用について説明する。
本実施形態にて開示した他に、プローブ或いは撹拌子を洗浄して液滴を除去する方法としては、例えば以下の(1)〜(4)が考えられる。
【0050】
(1)プローブ或いは撹拌子をノズルが吐出する洗浄水或いは洗浄液にて洗浄するとともに、この洗浄水或いは洗浄液を洗浄槽に溜める。プローブ或いは撹拌子が洗浄槽に溜まった洗浄水或いは洗浄液に浸った状態から、ゆっくりとプローブ或いは撹拌子を洗浄槽から引き上げることにより、プローブ或いは撹拌子の外壁に付着した液滴を表面張力にて拭い去る。
【0051】
(2)ノズルから斜め下方に向けて洗浄水或いは洗浄液を吐出し、これによって生じる吐出流をプローブ或いは撹拌子に対して斜め上方から当て、吐出流が途切れた際に吐出流が落下する勢いでプローブ或いは撹拌子の外壁に付着した液滴を拭い去る。
【0052】
(3)ノズルから斜め上方に向けて洗浄水或いは洗浄液を吐出し、これによって生じる吐出流を、落下に転じた後にプローブ或いは撹拌子に対して斜め上方から当て、吐出流が途切れた際に吐出流が落下する勢いでプローブ或いは撹拌子の外壁に付着した液滴を拭い去る。
【0053】
(4)プローブ或いは撹拌子をノズルが吐出する洗浄水或いは洗浄液にて洗浄するとともに、プローブ或いは撹拌子の周囲の空気を勢いよく吸引することで、プローブ或いは撹拌子の外壁に付着した液滴を吸い取る。または、プローブ或いは撹拌子の外壁に勢いよく空気を吹き付けて、外壁に付着した液滴を吹き飛ばす。
【0054】
上記(1)の方法においては、洗浄水或いは洗浄液を洗浄槽に一時的に溜めるための構造が必要である。また、洗浄槽に溜まった洗浄水或いは洗浄液が清浄でなければ、プローブ或いは撹拌子の汚れを十分に除去できない。洗浄槽に溜まった洗浄水或いは洗浄液が清浄であったとしても、次第に洗浄槽内に汚れが沈着する可能性がある。また、液滴を除去するためにプローブ或いは撹拌子をゆっくりと引き上げる時間が必要となるため、洗浄のサイクルタイムが長くなる。
【0055】
上記(2)(3)の方法においては、吐出流が途切れた際に発生する液滴がプローブ或いは撹拌子の外壁に付着する可能性がある。
【0056】
上記(4)の方法においては、空気を吸引するための機構や、空気を吹き付けるための機構が必要となる。これらの機構は複雑であるため、コストアップの要因となる。
【0057】
一方、本実施形態における洗浄装置8は、洗浄ノズル82に送る洗浄水の流量を調整することにより、各プローブ14a,15a,16a及び撹拌子17aの外壁の洗浄及び液滴の除去を実施する。したがって、上記(1)〜(4)の方法に関して述べた事態は生じない。
【0058】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。
本実施形態は、洗浄ノズル82の先端部100の形状において第1の実施形態と相違する。他の構成は、第1の実施形態と同様である。第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
図10は、本実施形態における洗浄ノズル82の先端部100の形状を表す模式図である。先端部100は、2つの小孔201,202と、これら小孔201,202の間に切れ込みを入れて形成したスリット203とを備える。小孔201,202及びスリット203は、洗浄水を吐出する吐出口を構成する。図示したように、小孔201,202は略円形であるが、小孔201がスリット203の下方へと僅かに突出し、小孔202がスリット203の上方へと僅かに突出している。
【0060】
本実施形態において、流路101を流量Q1で洗浄水が流れる場合に先端部100から吐出される洗浄水の模式図を図11に示す。この場合、スリット203は開かない。したがって、小孔201,202から2本の吐出流が生じ、これらの吐出流はやがて合流する。このように形成される吐出流を吐出流F1´と呼ぶ。吐出流F1´は、第1形状と同様の形状を有する。但し、小孔201,202がそれぞれスリット203の下方及び上方に僅かに突出しているため、吐出流F1´は、図11において2つの矢印で示す方向に回転する。
【0061】
本実施形態において、流路101を流量Q2で洗浄水が流れる場合に先端部100から吐出される洗浄水の模式図を図12に示す。この場合、スリット203が開く。したがって、小孔201,202から2本の吐出流が生じるとともに、スリット203から薄膜状の吐出流が生じる。このように形成される吐出流を吐出流F2´と呼ぶ。吐出流F2´は、第2形状と同様の形状を有する。吐出流F2´も、吐出流F1´と同じく図12において2つの矢印で示す方向に回転する。流量Q2は流量Q1に比べて大きいため、先端部100からの距離に対する吐出流F2´の回転角度は、吐出流F1´の当該回転角度に比べて小さい。プローブ或いは撹拌子を洗浄する際に吐出流F2´の薄膜部分がプローブ或いは撹拌子の外壁に衝突するように、流量Q2を調整するか、先端部100とプローブ或いは撹拌子との距離を調整すればよい。
【0062】
本実施形態のように、洗浄時の吐出流を回転させることで、洗浄装置8による各プローブ14a,15a,16a及び撹拌子17aの洗浄力が向上する。
【0063】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。
本実施形態は、1つの洗浄槽83に対して洗浄ノズル82を2つ設ける点で、第1の実施形態と相違する。他の構成は、第1の実施形態と同様である。第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
図13は、本実施形態における洗浄装置8が備える2つの洗浄ノズル82、洗浄槽83、及び、排出管84の断面と、サンプルプローブ16aとを示す図である。各洗浄ノズル82は、サンプルプローブ16aを挟んで先端部100が向かい合うように、洗浄槽83に取り付ける。各洗浄ノズル82は、いずれもポンプ81に接続される。
【0065】
洗浄に際しては、先ず各洗浄ノズル82の流路101に流量Q1で洗浄水を送る。このとき、各洗浄ノズル82の先端部100から第1形状の吐出流F1が発生する。サンプルプローブ16aの外壁は、2方向からの吐出流F1によって、万遍なく洗浄される。
【0066】
その後、各洗浄ノズル82の流路101に流量Q2で洗浄水を送る。このとき、各洗浄ノズル82の先端部100から第2形状の吐出流F2が発生する。サンプルプローブ16aの外壁には、2方向から吐出流F2の薄膜部分が衝突する。この状態でサンプルプローブ16aを引き上げると、サンプルプローブ16aの外壁に付着した液滴が万遍なく除去される。
【0067】
第1試薬プローブ14a、第2試薬プローブ15a、及び、撹拌子17aに対する洗浄装置8についても本実施形態と同様の構成を採用することができる。
【0068】
本実施形態のように、2つの洗浄ノズル82を設けることで、各プローブ14a,15a,16a及び撹拌子17aの外壁を万遍なく洗浄でき、さらには外壁に付着した液滴を除去することができる。
【0069】
(変形例)
いくつかの変形例を示す。
洗浄装置8においては、洗浄水ではなく洗浄のための成分を加えた洗浄液を用いてもよい。
【0070】
第1形状は、プローブ或いは撹拌子の外壁を洗浄するのに適した形状であれば、各実施形態にて開示した形状に限られない。また、第2形状は、プローブ或いは撹拌子の外壁に付着した液滴を除去するのに適した形状であれば、各実施形態にて開示した形状に限られない。さらには、第1形状及び第2形状に相当する機能が得られるならば、洗浄ノズル82の吐出口の形状は、各実施形態にて開示した形状に限られない。
【0071】
プローブ或いは撹拌子を洗浄する際及び洗浄槽83から引き上げる際に、長手方向を軸としてプローブ或いは撹拌子を回転させてもよい。このようにすれば、第3の実施形態のように2つの洗浄ノズル82を設けなくとも、プローブ或いは撹拌子の外壁を万遍なく洗浄でき、さらには外壁に付着した液滴を万遍なく除去できる。
【0072】
第3の実施形態における各洗浄ノズル82の吐出口の双方或いはいずれか一方の形状として、第2の実施形態にて開示した形状を採用してもよい。
【0073】
洗浄装置8は、3つ以上の洗浄ノズル82を備えてもよい。洗浄装置8に複数の洗浄ノズル82を設ける場合にあっては、各洗浄ノズル82を段違いで配置してもよい。
【0074】
洗浄ノズル82に機械的な機構を設け、この機構を動作させることで先端部100からの吐出流の形状を第1形状と第2形状との間で切り替えてもよい。当該機構としては、例えば先端部100の近傍における流路101内に電気的に駆動可能な可動片を設け、この可動片の動作により先端部100付近の流路形状を変えることで、吐出流の形状を切り替える方法を採用し得る。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1…自動分析装置、4…分析装置、8…洗浄装置、14a,15a…試薬プローブ、16a…サンプルプローブ、17a…撹拌子、80…タンク、81…ポンプ、82…洗浄ノズル、83…洗浄槽、84…排出管、100…先端部、101…流路、102,103…小孔、104…スリット、F1…吐出流、F2…吐出流。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13