(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181451
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/74 20060101AFI20170807BHJP
B29C 45/78 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
B29C45/74
B29C45/78
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-155548(P2013-155548)
(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公開番号】特開2015-24574(P2015-24574A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】特許業務法人オーパス国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091694
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 守
(72)【発明者】
【氏名】井上 玲
(72)【発明者】
【氏名】塩見 浩一
【審査官】
長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−001613(JP,A)
【文献】
特開2012−006276(JP,A)
【文献】
特開2010−083090(JP,A)
【文献】
特開2001−038784(JP,A)
【文献】
特開2006−027031(JP,A)
【文献】
実開昭61−095511(JP,U)
【文献】
実開昭58−190122(JP,U)
【文献】
実開昭59−107221(JP,U)
【文献】
特開平10−006385(JP,A)
【文献】
特開2009−148900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 47/00−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にスクリューが設けられると共に外周に複数の加熱ヒータが装着された筒状の加熱シリンダと、
該加熱シリンダの先端に装着され金型のキャビティに溶融樹脂を射出する射出ノズルと、
前記複数の加熱ヒータのそれぞれの外側を囲む、前記加熱ヒータのそれぞれに対応して設けた複数の保温カバーと、
該保温カバーの内部にエアーを供給し前記加熱ヒータを冷却することにより前記加熱シリンダの高温化を抑制する温度調整手段と、を備えた射出成形機における温度制御方法であって、
前記複数の加熱ヒータのそれぞれの温度を測定する温度測定手段を設け、
該温度測定手段により測定された前記加熱ヒータの温度が、予め設定された設定温度よりも、0.4℃〜1.0℃高温になったとき、
制御手段が前記温度調整手段のPID制御を行い、前記0.4℃〜1.0℃高温になった前記加熱ヒータの温度を、該加熱ヒータに対して予め設定された設定温度に近づくよう制御することを特徴とする射出成形機における温度制御方法。
【請求項2】
前記0.4℃〜1.0℃は、0.5℃であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機における温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型閉された金型のキャビティに加熱シリンダで溶融された樹脂を射出する射出成形機に関し、特に熱可塑性樹脂を溶融する加熱シリンダの外側に保温カバーを備えた射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から用いられている一般的な射出成形機においては、加熱シリンダ内に原料である粒状の熱可塑性樹脂(ペレット)を送り、加熱シリンダ内に設けられた進退可能なスクリューにより樹脂を溶融しながらスクリュー先端のノズル側に送り出し、スクリューの先端側に設けられた射出ノズルから金型装置のキャビティに溶融樹脂を射出させ、キャビティ内で溶融樹脂を冷却させ固化させた後、金型装置を開き、突出しピンなどにより金型に張り付いている成形物を金型から外すことにより、成形体が成形されている。
【0003】
このようなプラスチックなどの成形体を成形する射出成形機においては、その構成を大別すると概ね、型締ユニットと射出ユニットから構成されており、型締ユニットにおいては、一般的に固定金型と可動金型とからなる金型が備えられており、トグル機構若しくは直圧方式などの型締を可能とする可動手段によって、固定金型に対し可動金型を進退させることで、金型の型開閉が行われる。
【0004】
前述した金型の型締時に形成されるキャビティに、粒状の樹脂であるペレットを溶融樹脂として供給する際には前述した射出ユニットが用いられ、この射出ユニットには、駆動源たるモータなどの駆動手段が備えられ、モータの回転力をプーリやベルトなどを介して順次伝達させ、回転運動を直線運動に変換するボールネジ機構などにより、加熱シリンダ内のスクリューを回転させることにより溶融樹脂を搬送させながら計量を行った後、スクリューが前進されることで型締された金型のキャビティに溶融樹脂が射出される。
【0005】
ところで、前述した加熱シリンダには、加熱シリンダ内に供給されてきたペレットを加熱溶融するための加熱ヒータが設けられており、この加熱ヒータが加熱されることで加熱シリンダは200℃〜300℃ほどの高温に加熱されることで前述したペレットが溶融されるのだが、加熱された加熱シリンダが放熱により温度低下しないよう保温したりするために、加熱シリンダの外側にはこれを囲うようにして保温カバーが設けられているものがある。
【0006】
上記技術に関連するものとして、特許文献1には、加熱シリンダの外周面に保温カバーを設けた射出成形機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−115015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1における保温カバーの設けられた加熱シリンダは、外気を導入すると共に導入された空気の排気を行う気流発生手段を備えており、これにより、加熱シリンダの温度を急速に下降させるとのことであるが、高品質な成形体を製造するためには、加熱シリンダの温度を所定温度に一定に保つなどの細やかな温度制御が必要であり、さらには、
加熱シリンダの温度の制御を行うだけではなく消費電力の低減が望まれている。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、加熱シリンダの外側に加熱ヒータを覆う保温カバーを備え、該保温カバー内にエアーを供給して加熱シリンダの温度制御を行う射出成形機において、PID制御により加熱ヒータの温度を細やかに制御することで、高品質な成形体を製造することを可能にすると共に消費される電力の無駄を抑制した射出成形機における温度制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本射出成形機における温度制御方法の発明は、
内部にスクリューが設けられると共に外周に複数の加熱ヒータが装着された筒状の加熱シリンダと、
該加熱シリンダの先端に装着され金型のキャビティに溶融樹脂を射出する射出ノズルと、
前記複数の加熱ヒータのそれぞれの外側を囲む、前記加熱ヒータのそれぞれに対応して設けた複数の保温カバーと、
該保温カバーの内部にエアーを供給し前記加熱ヒータを冷却することにより前記加熱シリンダの高温化を抑制する温度調整手段と、を備えた射出成形機における温度制御方法であって、
前記複数の加熱ヒータのそれぞれの温度を測定する温度測定手段を設け、
該温度測定手段により測定された前記加熱ヒータの温度が、予め設定された設定温度よりも、0.4℃〜1.0℃高温になったとき、
制御手段が前記温度調整手段のPID制御を行い、前記0.4℃〜1.0℃高温になった前記加熱ヒータの温度を、該加熱ヒータに対して予め設定された設定温度に近づくよう制御することを特徴とする
。
【0011】
さらに、本射出成形機における温度制御方法の発明は、
前記0.4℃〜1.0℃は
、0.5℃であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱ヒータの温度が、当該加熱ヒータに対して予め設定された設定温度よりも、0.4℃〜1.0℃(好ましくは0.5℃)高くなったとき、制御手段が温度調整手段のPID制御を行い、保温カバー内部へエアーを供給することで加熱ヒータの冷却を行い、冷却された加熱ヒータの温度が予め設定された温度に達するとエアーの供給が停止される。すなわち、加熱ヒータに対する細やかな温度制御は、当該加熱ヒータに設定されている設定温度よりも、実測値が0.4℃〜1.0℃(好ましくは0.5℃)高温になったときに、これを条件としてPID制御が実行され、それにより、予め設定されている各加熱ヒータの設定値に対する実測値のバラつきを抑制することが可能となり、ひいては高品質な成形体を製造することが可能となる。
【0013】
さらに、PID制御により、加熱ヒータが予め設定されている温度に近づくよう細やかに制御されることで、単なる加熱ヒータのオン/オフ制御とは異なり、無駄な電力消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一例の射出成形機に構成される射出ユニットを示す概略構成図である。
【
図2】設定温度を225℃としたときの、第1の加熱ヒータの温度(℃)を折れ線で、第1の加熱ヒータの標準偏差(℃)を棒グラフで示している。なお、Aは第1の加熱ヒータには未通電状態で、第1の保温カバーの内部にエアーを供給した場合を示し、Bは第1の加熱ヒータの設定温度の+0.3℃で、第1の保温カバーの内部にエアーを供給して第1の加熱ヒータを冷却した場合を示し、Cは第1の加熱ヒータの設定温度の+0.4℃で、第1の保温カバーの内部にエアーを供給して第1の加熱ヒータを冷却した場合を示し、Dは第1の加熱ヒータの設定温度の+0.5℃で、第1の保温カバーの内部にエアーを供給して第1の加熱ヒータを冷却した場合を示し、Eは第1の加熱ヒータの設定温度の+1.0℃で、第1の保温カバーの内部にエアーを供給して第1の加熱ヒータを冷却した場合を示し、Fは第1の加熱ヒータの設定温度の+1.5℃で、第1の保温カバーの内部にエアーを供給して第1の加熱ヒータを冷却した場合を示している。
【
図3】設定温度を215℃としたときの、第2の加熱ヒータの温度(℃)を折れ線で、第2の加熱ヒータの標準偏差(℃)を棒グラフで示している。なお、Aは第2の加熱ヒータには未通電状態で、第2の保温カバーの内部にエアーを供給し
た場合を示し、Bは第2の加熱ヒータの設定温度の+0.3℃で、第2の保温カバーの内部にエアーを供給して第2の加熱ヒータを冷却した場合を示し、Cは第2の加熱ヒータの設定温度の+0.4℃で、第2の保温カバーの内部にエアーを供給して第2の加熱ヒータを冷却した場合を示し、Dは第2の加熱ヒータの設定温度の+0.5℃で、第2の保温カバーの内部にエアーを供給して第2の加熱ヒータを冷却した場合を示し、Eは第2の加熱ヒータの設定温度の+1.0℃で、第2の保温カバーの内部にエアーを供給して第2の加熱ヒータを冷却した場合を示し、Fは第2の加熱ヒータの設定温度の+1.5℃で、第2の保温カバーの内部にエアーを供給して第2の加熱ヒータを冷却した場合を示している。
【
図4】設定温度を200℃としたときの、第3の加熱ヒータの温度(℃)を折れ線で、第3の加熱ヒータの標準偏差(℃)を棒グラフで示している。なお、Aは第3の加熱ヒータには未通電状態で、第3の保温カバーの内部にエアーを供給した場合を示し、Bは第3の加熱ヒータの設定温度の+0.3℃で、第3の保温カバーの内部にエアーを供給して第3の加熱ヒータを冷却した場合を示し、Cは第3の加熱ヒータの設定温度の+0.4℃で、第3の保温カバーの内部にエアーを供給して第3の加熱ヒータを冷却した場合を示し、Dは第3の加熱ヒータの設定温度の+0.5℃で、第3の保温カバーの内部にエアーを供給して第3の加熱ヒータを冷却した場合を示し、Eは第3の加熱ヒータの設定温度の+1.0℃で、第3の保温カバーの内部にエアーを供給して第3の加熱ヒータを冷却した場合を示し、Fは第3の加熱ヒータの設定温度の+1.5℃で、第3の保温カバーの内部にエアーを供給して第3の加熱ヒータを冷却した場合を示している。
【
図5】設定温度を190℃としたときの、第4の加熱ヒータの温度(℃)を折れ線で、第4の加熱ヒータの標準偏差(℃)を棒グラフで示している。なお、Aは第4の加熱ヒータには未通電状態で、第4の保温カバーの内部にエアーを供給した場合を示し、Bは第4の加熱ヒータの設定温度の+0.3℃で、第4の保温カバーの内部にエアーを供給して第4の加熱ヒータを冷却した場合を示し、Cは第4の加熱ヒータの設定温度の+0.4℃で、第4の保温カバーの内部にエアーを供給して第4の加熱ヒータを冷却した場合を示し、Dは第4の加熱ヒータの設定温度の+0.5℃で、第4の保温カバーの内部にエアーを供給して第4の加熱ヒータを冷却した場合を示し、Eは第4の加熱ヒータの設定温度の+1.0℃で、第4の保温カバーの内部にエアーを供給して第4の加熱ヒータを冷却した場合を示し、Fは第4の加熱ヒータの設定温度の+1.5℃で、第4の保温カバーの内部にエアーを供給して第4の加熱ヒータを冷却した場合を示している。
【
図6】Aは第1〜第4の加熱ヒータには未通電状態で第1〜第4の保温カバーの内部にエアーを供給した場合の消費電力量を示し、Bは第1〜第4の加熱ヒータの設定温度の+0.3℃で、第1〜第4の保温カバーの内部にエアーを供給して第1〜第4の加熱ヒータを冷却した場合の消費電力量を示し、Cは第1〜第4の加熱ヒータの設定温度の+0.4℃で、第1〜第4の保温カバーの内部にエアーを供給して第1〜第4の加熱ヒータを冷却した場合の消費電力量を示し、Dは第1〜第4の加熱ヒータの設定温度の+0.5℃で、第1〜第4の保温カバーの内部にエアーを供給して第1〜第4の加熱ヒータを冷却した場合の消費電力量を示し
、Eは第1〜第4の加熱ヒータの設定温度の+
1.0℃で、第1〜第4の保温カバーの内部にエアーを供給して第1〜第4の加熱ヒータを冷却した場合の消費電力量を示し、Fは第1〜第4の加熱ヒータの設定温度の+1.5℃で、第1〜第4の保温カバーの内部にエアーを供給して第1〜第4の加熱ヒータを冷却した場合の消費電力量を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を
図1〜
図6により以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施形態において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【0016】
図1に示す本発明の一例の射出成形機に構成される射出ユニット1には、筒型の加熱シリンダ10、加熱シリンダ10の先端に装着した射出ノズル11、加熱シリンダ10の内部に回転可能に設けられた図示しないスクリュー、原料である粒状の樹脂(ペレット)が投入されるホッパ12、上部にホッパ12が設けられ前部に加熱シリンダ10の基端部が装着されたホッパブロック13、予め設定された設定値等に基づき、射出ユニット1の各種動作制御を行う制御手段14等が構成されており、加熱シリンダ10の内部に設けられたスクリューが回転されると、ホッパ12により加熱シリンダ10の後部へ供給された樹脂は、射出ノズル11の設けられた加熱シリンダ10の先端側へ送り出されるようになっており、加熱シリンダ10内に供給されてこの加熱シリンダ10内で加熱された溶融樹脂は、図示しない、計量用モータ等からなる回転駆動手段によりスクリューが回転されることにより計量された後、図示しない、射出用モータ、ボールネジ機構等からなる進退駆動手段によりスクリューが前進されることで金型のキャビティへ所定量の溶融樹脂が射出される。
【0017】
加熱シリンダ10の外周には、当該加熱シリンダ10の前方から後方に向かって順に、第1の加熱ヒータ15A、第2の加熱ヒータ15B、第3の加熱ヒータ15C、第4の加熱ヒータ15Dが装着されている。第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15Dは所定間隔を空けて加熱シリンダ10の周方向に巻き付けられるようにして装着されており、これら第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15
Dが高温に加熱されることで、加熱シリンダ10が高温化されその内部に供給された樹脂が溶融される。
【0018】
また、第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15Dの外側には、当該第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15Dのそれぞれに対応して、第1〜第4の保温カバー16A〜16Dが設けられている。そして、これら第1〜第4の保温カバー16A〜16Dは、第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15Dが外部に露出しないよう囲うようにして設けられている。
【0019】
第1〜第4の保温カバー16A〜16Dのそれぞれには、エアー供給口としての第1〜第4のエアカプラー17A〜17Dが設けられている。そして、第1〜第4のエアカプラー17A〜17D、第1〜第4のエアカプラー17A〜17Dに連結された第1〜第4のエアー供給管18A〜18Dを通じて、温度調整手段たるエアー供給手段19から第1〜第4の保温カバー16A〜16D内部にエアーが供給され、第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15Dが温度調整(冷却)されることにより、加熱シリンダ10の温度調整(冷却)が行われる。
【0020】
また、第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15Dには、温度測定手段たる第1〜第4の温度センサー20A〜20Dが設けられており、これにより、第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15Dの温度(実測値)が測定される。
【0021】
射出ユニット1を動作させたときの実験結果について以下に説明する。なお、射出ユニット1を動作させたときの各種条件は、前記「図面の簡単な説明」の
図2〜6の説明に記載した通りであるため、ここではその説明を省略するが、
図2〜5のグラフにおける数値を一覧として纏めたものを下記表1に示す。
【0022】
【表1】
図6に示すように、A〜Fの条件における消費電力を比較すると、Aが最も消費電力量が多く、A〜Fの順に消費電力量は徐々に少なくなっていることから、消費電力量の観点から省電力化を図れる順位をつけると、F、E、D、C、B、Aの順になる。
【0023】
その一方で、
図2〜5のグラフ及び表1の実験結果をみると、第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15Dにおいて、予め設定された設定温度よりも、実測値が0.4℃〜1.0℃(0.4℃以上、1.0℃以下)のときに、エアーが供給されるC、D、Eの条件のときが、設定温度に対する実測値のバラツキが小さいことがわかる。すなわち、
図2〜
図5の温度のバラツキや標準偏差を考慮すると共に、省電力化にも貢献できる好ましい条件は、前記C、D、Eであるという結果が得られ、さらに最も好ましい条件はDであるとする結果を見出すことができた。
【0024】
以上のような本実施形態における射出成形機における温度制御方法によれば、内部にスクリューが設けられると共に外周に複数の加熱ヒータ(第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15D)が装着された筒状の加熱シリンダ10と、該加熱シリンダ10の先端に装着され金型のキャビティに溶融樹脂を射出する射出ノズル11と、複数の加熱ヒータ(第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15D)のそれぞれの外側を囲む、加熱ヒータ(第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15D)のそれぞれに対応して設けた複数の保温カバー(第1〜第4の保温カバー16A〜16D)と、該保温カバー(第1〜第4の保温カバー16A〜16D)の内部にエアーを供給し前記加熱ヒータ(第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15D)を冷却することにより加熱シリンダ10の高温化を抑制する温度調整手段たるエアー供給手段19と、を備えた射出成形機における温度制御方法であって、複数の加熱ヒータ(第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15D)のそれぞれの温度を測定する温度測定手段(第1〜第4の温度センサー20A〜20D)を設け、該温度測定手段(第1〜第4の温度センサー20A〜20D)により測定された加熱ヒータ(第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15D)の温度が、予め設定された設定温度よりも、0.4℃〜1.0℃(より好ましくは0.5℃)高温になったとき、制御手段14がエアー供給手段19のPID制御を行い、前記0.4℃〜1.0℃高温になった加熱ヒータ(第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15D)の温度を、該加熱ヒータ(第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15D)に対して予め設定された設定温度に近づくよう制御する。
【0025】
以上により、第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15Dの全てやその何れかの温度が、当該加熱ヒータに対して予め設定された設定温度よりも、0.4℃〜1.0℃(より好ましくは0.5℃)高温になったとき、制御手段14がエアー供給手段19のPID制御を行い、高温になった加熱ヒータに対応する保温カバー内部へエアーを供給することでその加熱ヒータの冷却を行い、冷却された加熱ヒータの温度が予め設定された温度に達するとエアーの供給が停止される。すなわち、加熱ヒータに対する細やかな温度制御は、当該加熱ヒータに設定されている設定温度よりも、実測値が0.4℃〜1.0℃(好ましくは0.5℃)高温になったときに、これらを条件としてPID制御が実行され、それにより、予め設定されている第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15Dの設定値に対する実測値のバラつきを抑制することが可能となり、ひいては高品質な成形体を製造することが可能となる。
【0026】
さらに、PID制御により、第1〜第4の加熱ヒータ15A〜15Dが予め設定されている温度に近づくよう細やかに制御されることで、従来の単なる加熱ヒータのオン/オフ制御とは異なり、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0027】
以上、本実施形態の一例を詳述したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、本実施形態においては、加熱ヒータに対しエアーを供給して冷却するが、エアーとしては空気だけではく、それ以外の気体であってもよく、適宜選定してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 射出ユニット
10 加熱シリンダ
11 射出ノズル
12 ホッパ
13 ホッパブロック
14 制御手段
15A〜15D 第1〜第4の加熱ヒータ
16A〜16D 第1〜第4の保温カバー
17A〜17D 第1〜第4のエアカプラー
18A〜18D 第1〜第4のエアー供給管
19 エアー供給手段(温度調整手段)
20A〜20D 第1〜第4の温度センサー(温度測定手段)