(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リグニンを原料とする炭素微粒子の含有量が、結着樹脂100質量部に対して1質量部以上15質量部以下である、請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、
工程1:ポリエステルを含有する結着樹脂と、リグニンを原料とする炭素微粒子を溶融混練して樹脂混合物を得る工程、並びに
工程2:工程1で得られた樹脂混合物を粉砕し、分級する工程
を含む方法であって、リグニンを原料とする炭素微粒子を用いている点に大きな特徴を有しており、本発明の方法により、耐熱保存性に優れたトナーを、生産性よく得ることができる。その理由は定かではないが、次のように考えられる。
【0011】
トナーに広く用いられているカーボンブラックは樹脂中でフィラー効果を発現するため、粉砕工程における粉砕圧が上昇する。しかし、本発明で使用するリグニンを原料とする炭素微粒子は、一般的に粒子径がカーボンブラックに比べ大きいため、フィラー効果を生じにくい。その結果、同じ樹脂を用いたカーボンブラック含有トナーに比べて、リグニンを原料とする炭素微粒子を含有したトナーの方がより低い粉砕圧で粉砕しやすい。
【0012】
また、リグニンを原料とする炭素微粒子は体積抵抗が低く、静電凝集を起こしにくいので、粉砕機や分級機中で粉砕された粒子間の凝集が抑制される。そのため、繰り返し粉砕する必要がなくなるため、過大な粉砕圧を要する必要がなく、また、微粉の発生が低減され、粉砕収率が向上する。
【0013】
一方、リグニンを原料とする炭素微粒子はリグニンの熱分解により合成されるため、微粒子表面はある程度酸化されていると考えられる。そのため、スチレンアクリル樹脂に比べ、極性の高いポリエステル樹脂中の方が分散性がよく、その結果、トナー粒子の静電凝集が抑制され、耐熱保存性が向上するものと考えられる。
【0014】
[リグニンを原料とする炭素微粒子]
本発明において、リグニンを原料とする炭素微粒子は、リグニンを主要成分とする有機物原料の溶液を、微小液滴化し、その微小液滴を乾燥することにより微粒子を調製し、その微粒子を300℃〜1200℃の範囲で熱分解して製造される炭素微粒子であることが好ましい(特開2009−155199号の[請求項1])。本発明の方法に用いるにあたっては、焼成物は粉砕し分級されたものが好ましい。
【0015】
リグニンを原料とする炭素微粒子の市販品としては、「リグニンブラック」(大王製紙社製)等が挙げられる。
【0016】
リグニンを原料とする炭素微粒子の体積中位粒径は、工程2における樹脂混合物の粉砕効率を向上させる観点、トナーの生産性を向上させる観点、低温定着性を向上させる観点、及び画像濃度を向上させる観点から、1.0μm以上が好ましく、5.0μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。また、トナーの生産性を向上させる観点から、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。
【0017】
リグニンを原料とする炭素微粒子の最大径は、トナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。
【0018】
リグニンを原料とする炭素微粒子の比表面積は、トナーの生産性を向上させる観点から、2〜1000m
2/gであることが好ましく、5〜800m
2/gであることがより好ましく、200〜700m
2/gであることがさらに好ましい。
【0019】
リグニンを原料とする炭素微粒子の含有量は、トナーの生産性を向上させる観点、耐熱保存性を向上させる観点、及び画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、4質量部以上がよりさらに好ましい。また、工程2における樹脂混合物の粉砕効率を向上させる観点から、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下がさらに好ましく、8質量部以下がよりさらに好ましい。
【0020】
[着色剤]
着色剤としては、前述のリグニンを原料とする炭素微粒子のみを着色剤として用いてもよいが、トナー用着色剤として用いられる染料、顔料等のすべてを併用することができる。黒色トナーを得る場合、入手が容易な点から、カーボンブラックを併用してもよい。
【0021】
カーボンブラックを併用する場合、カーボンブラックの含有量は、画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましい。また、工程2における樹脂混合物の粉砕効率を向上させる観点、及び経済的な観点から、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
【0022】
着色剤の含有量は、リグニンを原料とする炭素微粒子の含有量とあわせて、トナーの生産性、耐熱保存性、及び画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、4質量部以上がよりさらに好ましい。また、工程2における樹脂混合物の粉砕効率を向上させる観点、及び経済的な観点から、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下がさらに好ましく、8質量部以下がよりさらに好ましい。
【0023】
カーボンブラックを併用する場合、リグニンを原料とする炭素微粒子とカーボンブラックの質量比(リグニンを原料とする炭素微粒子/カーボンブラック)は、画像濃度を向上させる観点、工程2における樹脂混合物の粉砕効率を向上させる観点、及び経済的な観点から、1/1〜20/1が好ましく、2/1〜15/1がより好ましく、2.5/1〜10/1がさらに好ましい。
【0024】
[結着樹脂]
本発明に用いる結着樹脂は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、ポリエステルを含有することが好ましい。ポリエステルの含有量は、結着樹脂中、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%がよりさらに好ましく、100質量%がよりさらに好ましい。結着樹脂として、低温定着性の効果が損なわれない範囲において、ポリエステル以外の他の樹脂が含有されていてもよい。他の結着樹脂としては、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。
【0025】
本発明に用いるポリエステルは、2価以上のアルコールからなるアルコール成分と2価以上のカルボン酸化合物からなるカルボン酸成分とを重縮合することにより得られる。
【0026】
2価のアルコール成分としては、主鎖炭素数2〜12の脂肪族ジオール、芳香族ジオール、脂環式ジオール等が挙げられる。
主鎖炭素数2〜12の脂肪族ジオールとしては、具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1.9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール等が挙げられる。主鎖炭素数は、トナーの生産性及び低温定着性を向上させる観点から、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜8、さらに好ましくは3〜6であり、第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する炭素数3又は4の脂肪族ジオールがよりさらに好ましい。具体的には、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオールが挙げられ、トナーの生産性及び低温定着性を向上させる観点から、1,2-プロパンジオール及び2,3-ブタンジオールが好ましく、1,2-プロパンジオールがより好ましい。
【0029】
(式中、R
1O及びOR
1はオキシアルキレン基であり、R
1はエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0030】
脂環式ジオールとしては、水素添加ビスフェノールA又はそれらの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物が挙げられる。
【0031】
3価以上のアルコールとしては、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜10の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。具体的には、ソルビトール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0032】
2価のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数3〜30、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数3〜10のジカルボン酸、及びそれらの酸無水物、炭素数1〜3のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、芳香族ジカルボン酸化合物及び脂肪族ジカルボン酸化合物が挙げられる。芳香族ジカルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸化合物としては、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等が挙げられる。炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸の具体例としては、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等が挙げられる。これらのなかでもトナーの生産性及び低温定着性を向上させる観点から、フマル酸、テレフタル酸、ドデセニルコハク酸及びその酸無水物から選ばれる少なくとも1種が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
【0033】
3価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数4〜30、好ましくは炭素数4〜20、より好ましくは炭素数4〜10の3価以上の多価カルボン酸、及びそれらの酸無水物、炭素数1〜3のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)等が挙げられる。なかでもトナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、トリメリット酸及びその酸無水物が好ましく、トリメリット酸無水物がより好ましい。
【0034】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0035】
ポリエステルにおけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステルの酸価を低減する観点から、0.70〜1.10が好ましく、0.75〜1.00がより好ましい。
【0036】
アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で重縮合させて製造することができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.5質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。重合禁止剤を使用する場合の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
【0037】
ポリエステルは、結晶性ポリエステル、非晶質ポリエステルのいずれも使用することができ、両者を混合して用いることもできる。トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、非晶質ポリエステルを用いることが好ましい。
【0038】
ここで、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6〜1.4、好ましくは0.7〜1.2、より好ましくは0.9〜1.2であり、非晶質樹脂は1.4を超えるか、0.6未満の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。最高ピーク温度は、軟化点との差が20℃以内であれば融点とし、軟化点との差が20℃を超える場合はガラス転移に起因するピークとする。
【0039】
ポリエステルの軟化点は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性、及び生産性を向上させる観点から、70℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、105℃以上がさらに好ましく、115℃以上がよりさらに好ましい。また、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、140℃以下がさらに好ましく、135℃以下がよりさらに好ましい。
【0040】
ポリエステルの軟化点は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
【0041】
ポリエステルのガラス転移温度は、トナーの低温定着性、生産性、及び耐熱保存性を向上させる観点から、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。また、85℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、75℃以下がさらに好ましい。ガラス転移温度は、非晶質樹脂に特有の物性である。
【0042】
ポリエステルのガラス転移温度は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比等によって制御することができる。
【0043】
ポリエステルの酸価は、トナーの帯電性を向上させる観点、及び添加剤の分散性を向上させる観点から、50mgKOH/g以下が好ましく、30mgKOH/g以下がより好ましく、20mgKOH/g以下がさらに好ましく、10mgKOH/g以下がよりさらに好ましい。
【0044】
ポリエステルの酸価は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
【0045】
本発明では、トナーの低温定着性、生産性、及び耐熱保存性を向上させる観点から、結着樹脂としてポリエステルを2種以上用いてもよい。
【0046】
ポリエステルを2種以上用いる場合は、結着樹脂全体としての軟化点が、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性、及び生産性を向上させる観点から、上記範囲内であることが好ましい。すなわち、70℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、105℃以上がさらに好ましく、115℃以上がよりさらに好ましい。また、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、140℃以下がさらに好ましく、135℃以下がよりさらに好ましい。結着樹脂全体の軟化点は、加重平均、すなわち、それぞれの軟化点と含有割合の積の和により求めることができる。
【0047】
なお、本発明において、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0048】
本発明のトナーは、さらに、離型剤、荷電制御剤等を含有していてもよい。
【0049】
[離型剤]
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、合成エステルワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いられていてもよい。これらの中でも、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、パラフィンワックス、合成エステルワックス、及びカルナウバワックスが好ましく、カルナウバワックスがより好ましい。
【0050】
離型剤の含有量は、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましく、2.0質量部以上がよりさらに好ましい。また、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、10質量部以下が好ましく、8.0質量部以下がより好ましく、6.0質量部以下がさらに好ましく、4.0質量部以下がよりさらに好ましい。
【0051】
離型剤の融点は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、95℃以下がさらに好ましく、90℃以下がよりさらに好ましい。また、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましく、80℃以上がよりさらに好ましい。
【0052】
[荷電制御剤]
荷電制御剤として、負帯電性荷電制御剤、正帯電性荷電制御剤のいずれも用いることができる。
【0053】
負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ニトロイミダゾール誘導体、ベンジル酸ホウ素錯体等が挙げられる。含金属アゾ染料としては、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-28」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業社製)、「T-77」、「アイゼンスピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)等が挙げられる。サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体としては、例えば「ボントロンE-81」、「ボントロンE-82」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業社製)等が挙げられる。ベンジル酸ホウ素錯体としては、例えば、「LR-147」(日本カーリット社製)等が挙げられる。これらの中では、トナーの帯電安定性を向上させる観点から、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体が好ましい。
【0054】
サリチル酸化合物の金属錯体としては、例えば、式(II):
【0056】
(式中、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立して水素原子、直鎖又は分枝鎖状の炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基、Mはクロム、亜鉛、カルシウム、ジルコニウム又はアルミニウム、mは2以上の整数、nは1以上の整数を示す)
で表される化合物が挙げられる。
【0057】
式(II)において、R
3は水素原子が好ましく、R
2及びR
4は分岐鎖状のアルキル基が好ましくは、tert-ブチル基がより好ましい。
【0058】
式(II)で表される化合物の市販品としては、「ボントロンE-81」(R
3:水素原子、R
2及びR
4:tert-ブチル基、Y:クロム、オリヱント化学工業社製)、「ボントロンE-84」(R
3:水素原子、R
2及びR
4:tert-ブチル基、Y:亜鉛、オリヱント化学工業社製)、「ボントロンE-88」(R
3:水素原子、R
2及びR
4:tert-ブチル基、Y:アルミニウム、オリヱント化学工業社製)、「ボントロンE-304」(R
3:水素原子、R
2及びR
4:tert-ブチル基、Y:亜鉛、オリヱント化学工業社製)、「TN-105」(R
3:水素原子、R
2及びR
4:tert-ブチル基、Y:ジルコニウム、保土谷化学工業社製)等が挙げられる。これらの中では、トナーの帯電安定性を向上させる観点から「ボントロンE-84」「ボントロンE-304」(オリヱント化学工業社製)が好ましい。
【0059】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。ニグロシン染料としては、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業社製)等が挙げられる。トリフェニルメタン系染料としては、例えば3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料が挙げられる。4級アンモニウム塩化合物としては、例えば「ボントロンP-51」、「ボントロンP-52」(以上、オリヱント化学工業社製)、「TP-415」(保土谷化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PXVP435」「COPY CHARGE PSY」(以上、クラリアント社製)等が挙げられる。ポリアミン樹脂としては、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業社製)等が挙げられる。イミダゾール誘導体としては、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成社製)等が挙げられる。
【0060】
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、また、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。
【0061】
本発明では、トナー材料として、さらに、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜含有していてもよい。
【0062】
<トナーの製造方法>
本発明のトナーは、以下の工程1及び2を含む方法により製造する。
工程1:結着樹脂と、リグニンを原料とする炭素微粒子とを含む成分を溶融混練して樹脂混合物を得る工程
工程2:工程1で得られた樹脂混合物を粉砕し、分級する工程
【0063】
工程1は、密閉式ニーダー、一軸もしくは二軸の混練機、連続式オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができるが、二軸混練機で行うのが好ましい。二軸混練機とは、二本の混練軸をバレルが覆い隠す閉鎖型の混練機であり、リグニンを原料とする炭素微粒子や着色剤、離型剤、及び荷電制御剤の結着樹脂中での分散性を向上させる観点から、軸が同方向に回転できるタイプが好ましい。市販品としては、トナーの生産性を向上させる観点から、高速での二軸の噛み合わせが良好な、池貝鉄工社製二軸押出機PCMシリーズが好ましい。
【0064】
トナー原料は、あらかじめヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。
【0065】
二軸混練機での溶融混練は、バレル設定温度(押出機内部壁面の温度)、二軸の軸回転の周速、及び原料供給速度を調整することで行う。バレル設定温度は、リグニンを原料とする炭素微粒子や着色剤、離型剤、及び荷電制御剤の結着樹脂中での分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び生産性を向上させる観点から、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。また、140℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。
【0066】
二軸の軸回転の周速は、リグニンを原料とする炭素微粒子や着色剤、離型剤、及び荷電制御剤の結着樹脂中での分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び生産性を向上させる観点から、0.1m/sec以上が好ましく、また、1m/sec以下が好ましい。
【0067】
二軸混練機への原料供給速度は、使用する混練機の許容能力と、上記のバレル設定温度及び軸回転の周速に応じて適宜調整する。
【0068】
工程2は、工程1で得られた樹脂混合物を粉砕し、分級する工程である。工程1で得られた樹脂混合物は、1〜3mmの厚さに圧延しながら40℃以下に冷却した後、粉砕工程、分級工程を行うことが好ましい。
【0069】
粉砕工程は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、樹脂混合物を、0.1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに所望の粒径に微粉砕してもよい。
【0070】
粉砕工程に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式ジェットミル、衝突板式ジェットミル、回転式機械式ミル等が挙げられる。粉砕効率の観点から、流動層式ジェットミル、及び衝突板式ジェットミルを用いることが好ましく、衝突板式ジェットミルを用いることがより好ましい。
【0071】
本発明の製造方法は、リグニンを原料とする炭素微粒子を含有することで、粉砕工程においてより低い粉砕圧で粉砕しやすいという特徴を有する。粉砕圧は、微粉の発生を抑制しトナーの生産性を向上する観点から、0.45MPa以下が好ましく、0.40MPa以下がより好ましく、また、0.20MPa以上が好ましい。
【0072】
分級工程に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕工程と分級工程を繰り返してもよい。
【0073】
工程2で得られるトナー母粒子の体積中位粒径(D
50)は、トナーの画像品質を向上させる観点から、3μm以上が好ましく、4μm以上がより好ましく、6μm以上がさらに好ましい。また、15μm以下が好ましく、12μm以下がより好ましく、9μm以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D
50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0074】
本発明のトナーの製造方法において、トナーの帯電性や流動性、及び転写性を向上させる観点から、粉砕、分級工程後、得られたトナー粒子(トナー母粒子)をさらに外添剤と混合する工程を含むことが好ましい。具体的には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、及び酸化亜鉛等の無機粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられる。2種以上を併用してもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであるのがより好ましい。
【0075】
外添剤の個数平均粒径は、トナーの帯電性、流動性、及び転写性を向上させる観点から、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましく、また、250nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、90nm以下がさらに好ましい。
【0076】
外添剤の含有量は、トナーの帯電性、流動性、及び転写性を向上させる観点から、外添剤で処理する前のトナー母粒子100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましい。また、5質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。
【0077】
トナー母粒子と外添剤との混合には、回転羽根等の攪拌具を備えた混合機を用いることが好ましく、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速混合機が好ましく、ヘンシェルミキサーがより好ましい。
【0078】
本発明の方法により得られるトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
【0079】
また、定着方式も特に限定されないが、オイルレス定着方式の画像形成装置も好適に用いることができる。なお、オイルレス定着とは、オイル供給装置を備えていないヒートロール定着装置を有する定着器を用いる方法である。オイル供給装置とは、オイルタンクを有し、定量的にオイルをヒートロール表面に塗布する機構を有する装置の他、オイルを予め含浸させたロールをヒートロールに接触させるような機構を有する装置等を含む。
【実施例】
【0080】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(島津製作所社製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0081】
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/minで0℃まで冷却しそのまま1分間静止させた。その後、昇温速度50℃/minで測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば融点とする。
【0082】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し測定した。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0083】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0084】
〔リグニンを原料とする炭素微粒子及びカーボンブラックの比表面積〕
「Micrometrics FlowSorb III」(島津製作所社製)を用いて、下記条件でBET比表面積を測定する。
・サンプル量:0.01〜0.03g
・脱気条件:40℃、10分間
・吸着ガス:窒素ガス
【0085】
〔リグニンを原料とする炭素微粒子及びカーボンブラックの体積中位粒径〕
測定機:レーザー回折/散乱式粒径測定装置「マスターサイザー2000」(マルバーン社製)
測定方法:アイソパーG(エクソンモービル社製)30mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、試料分散液を調製する。測定用セルにアイソパーGを投入した後、前記試料分散液を加え、散乱強度が5〜15%になる濃度で、粒子屈折率1.58(虚数部0.1)、分散媒屈折率1.42の条件にて体積中位粒径(D
50)を測定する。
【0086】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度をワックスの融点とする。
【0087】
〔外添剤の個数平均粒径〕
走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの平均値を個数平均粒径とする。
【0088】
〔トナーの体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5質量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させる。
分散条件:前記分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mlに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D
50)を求める。
【0089】
樹脂製造例1〔樹脂A、B〕
表1に示す無水トリメリット酸を除く原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、室温から180℃まで2時間かけて昇温した後、180℃から210℃まで10℃/hrで昇温した。その後210℃で反応率が90%に到達するまで反応させた。無水トリメリット酸を添加し、210℃、常圧(101.3kPa)にて1時間反応させた後、20kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させ、ポリエステルを得た。得られたポリエステルの物性を表1に示す。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
【0090】
樹脂製造例2〔樹脂C〕
表1に示す無水トリメリット酸を除く原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、室温から200℃まで2時間かけて昇温した後、200℃から230℃まで10℃/hrで昇温した。その後230℃で反応率が90%に到達するまで反応させた。無水トリメリット酸を添加し、210℃、20kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させ、ポリエステルを得た。得られたポリエステルの物性を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
樹脂製造例3〔樹脂D〕
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5L容の四つ口フラスコにキシレン1000gを入れ、窒素雰囲気下にて125℃で攪拌しつつ、表2に示す原料モノマー及び重合開始剤の混合物を、滴下ロートから2時間かけて滴下した。さらに125℃で1時間保持した後、150℃で1時間還流を行った。その後反応系内を、200℃、8.0kPaに保持し、2時間かけてキシレンを除去し、スチレンアクリル樹脂を得た。得られたスチレンアクリル樹脂の物性を表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
後述の実施例、比較例に用いたリグニンを原料とする炭素微粒子、カーボンブラックの体積中位粒径(D
50)、比表面積を、表3に示す。
【0095】
【表3】
【0096】
実施例1〜4及び比較例1〜6
(実施例3、4は参考例である)
表4に示す所定量の結着樹脂、着色剤、負帯電性荷電制御剤「ボントロン E-304」(オリエント化学工業社製)0.5質量部、離型剤「WAX-C1」(加藤洋行社製、カルナウバワックス 融点:84℃)2.0質量部をヘンシェルミキサーにて1分間混合した。得られた混合物を同方向回転二軸押出機「PCM-30」(池貝鉄工社製、軸の直径 2.9cm、軸の断面積 7.06cm
2)を使用して、バレル設定温度 100℃、軸回転数 200r/min(軸の回転の周速 0.30m/sec)にて、原料供給速度 10kg/hrの条件で混練を行い、混練吐出物を直ちにシート化しつつ25℃まで冷却した。
【0097】
得られたシート化物を、ハンマーミル(ホソカワミクロン社製)で1.0mm以下まで粗粉砕した。得られた粗粉砕物を衝突板式ジェットミル粉砕機IDS-2型(日本ニューマチック社製)にて、粗粉砕物の供給速度 4.0kg/hrの条件で、微粉砕後の体積中位粒径(D
50)が6.5μmになる様に粉砕圧を調整して微粉砕を行った。この時の粉砕圧の結果を表4に示す。
【0098】
その後、DSX-2型気流分級機(日本ニューマチック社製)にて分級し、体積中位粒径(D
50)が7.0μmのトナー母粒子を得た。
【0099】
下式(1)により粉砕分級収率を算出し、生産性の指標とした。値が大きいほど生産性に優れる。結果を表4に示す。
【0100】
[粉砕分級収率]= ([得られたトナー母粒子量]/[投入粗粉砕物の合計量]) ×100 (1)
【0101】
得られたトナー母粒子 500gと、疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル社製、個数平均粒径:16nm)10gを5Lヘンシェルミキサー(日本コークス工業社製)に投入し、回転数3700r/min、180秒攪拌し、目開き100μmのふるいで分級して粗粉を取り除いてトナーを得た。
【0102】
試験例1〔低温定着性〕
未定着画像を取れる様に改造した、プリンター「MicroLine 5400」(沖データ社製)にトナーを充填し、3×4cm角のベタ画像の未定着画像を印刷した。オイルレス定着方式の「MicroLine 3010」(沖データ社製)を改造した外部定着装置(定着ロールの回転速度を188mm/secに設定し、定着装置中の定着ロール温度を可変にした装置)にて、定着ロールの温度を100℃から230℃まで5℃ずつ上昇させながら、各温度でこの未定着画像の定着処理を行い、定着画像を得た。各定着温度で得られた画像を、500gの荷重をかけた砂消しゴム(品番LION ER502R)で5往復擦り、擦り前後の画像濃度比率([擦り後の画像濃度/擦り前の画像濃度]×100)が最初に90%を超える温度を最低定着温度とし、低温定着性の指標とした。値が小さいほど低温定着性に優れる。結果を表4に示す。
【0103】
試験例2〔耐熱保存性〕
20ml容のポリビンに、トナー4gを入れ、ポリビンの蓋をあけた状態で、55℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽に入れ、48時間保存した。放置後のトナーの凝集度を以下のとおり測定し、耐熱保存性の指標とした。この数値が小さいほど、耐熱保存性に優れる。結果を表4に示す。
【0104】
〔凝集度〕
凝集度は、パウダーテスタ(ホソカワミクロン社製)を用いて測定する。
3つの異なる目開きの篩いを、上段150μm、中段75μm、下段45μmの順でセットし、一番上に前記トナーを4g載せ、1mmの振動幅で60秒間振動させる。振動後、篩い上に残ったトナー量を測定し、下記の計算式を用いて凝集度の計算を行う。
【0105】
【数1】
【0106】
【表4】
【0107】
以上の結果より、比較例1〜6と対比して、実施例1〜4のトナーは、低温定着性を維持しつつ耐熱保存性に優れていることが分かる。また、生産性にも優れることが分かる。
結着樹脂として同じ組成のポリエステルを含有する実施例1と比較例1を比較すると、リグニンを原料とする炭素微粒子を含有する実施例1では粉砕圧が0.34MPa、収率93%であるのに対し、カーボンブラックを含有する比較例1では粉砕圧が0.50MPa、収率71%であり、実施例1の方が0.16MPa低い圧力で粉砕できており、収率も22%向上している。同様に、実施例2と比較例2、及び実施例3と比較例3とを比較した場合にも、リグニンを原料とする炭素微粒子を含有する実施例の方が、カーボンブラックを含有する比較例よりも低い粉砕圧で収率がよい。一方、結着樹脂としてスチレンアクリル樹脂を含有する比較例4と5を比較すると、リグニンを原料とする炭素微粒子を含有する比較例4では粉砕圧が0.34MPa、収率63%であるのに対し、カーボンブラックを含有する比較例5では粉砕圧が0.40MPa、収率59%であり、低い粉砕圧で粉砕できるものの、収率が低く、リグニンを原料とする炭素微粒子を含有することによる収率の向上も小さいことがわかる。