(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181470
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】フットカバー
(51)【国際特許分類】
A41B 11/10 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
A41B11/10 B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-175732(P2013-175732)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-45097(P2015-45097A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】濱口 晋
【審査官】
北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−297652(JP,A)
【文献】
実開昭58−176904(JP,U)
【文献】
特開平11−335905(JP,A)
【文献】
実公昭43−029135(JP,Y1)
【文献】
特開2005−350796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 11/00 − 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、足底部、側辺部、踵部および前記爪先を覆う爪先部で形成され、
前記足底部に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部を設け、
前記開口部の上縁の少なくとも一部に伸縮性細幅生地を設け、
前記足底部と前記踵部とが1枚の生地で構成され、前記踵部に足幅方向に沿った縫い目を備えず、
前記側辺部と前記爪先部とが1枚の生地で構成され、
2枚の生地を縫着して構成されていることを特徴とするフットカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用するとパンプス(履き口である甲部分が大きく開いている主として婦人用の靴)等の靴の内側に隠れて見えなくなるフットカバーに関し、特に、歩行等の動作によっても脱げたり位置ずれすることが少ないフットカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
素足にパンプス等の靴を履くことが、ファッションとして定着している。この場合、パンプスと足裏とが直接接していると、足に発生した汗により靴の中が蒸れてしまい不快感がある。
そこで、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、着用時にパンプスから露出することのないよう履き口が大きくカットされた薄手のフットカバーが提案されている。このフットカバーを着用してパンプスを履けば、外観上、素足にパンプスを履いているように見え、足裏とパンプスとの間にはフットカバーが介しているため、汗によって靴の中が蒸れてしまうことを防止することができる。
【0003】
なお、このような足装着具を、本明細書ではフットカバーと記載するが、ソックスカバー、インナーソックス、ヌードソックス、カバーソックス等と記載される場合もある。
このようなフットカバーはパンプスから露出しないよう履き口が大きくカットされているため、歩行中の摩擦等によって履き位置がずれたり、脱げたりすすることがある。一方、履き口を小さくしてしまうとパンプスから露出してしまう。このような問題点に鑑みて開発されたフットカバーが、以下の先行技術文献に開示されている。
【0004】
特開平10−292206号公報(特許文献1)は、歩行時におけるパンプスとフットカバーとの摩擦によってフットカバーが素足から脱げてしまったり、パンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを防止するために、踵当接部内面に摩擦付与体を取り付けたフットカバーを開示する。
実用新案登録第3165733号公報(特許文献2)は、特許文献1に開示されたフットカバーの開口部の周縁に沿ってゴム紐を設けたのでは、ゴム紐が足に食い込むため、足にゴム紐の型が付いてしまったり、痛みを感じたり、履き心地が良くないという問題があったことに鑑み、開口部の周縁に沿って平ゴムを設けて一面が足に接するようにした帯状伸縮部を形成したフットカバーを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−292206号公報
【特許文献2】実用新案登録第3165733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたフットカバーの摩擦付与体だけでは十分でない場合があり、この場合には、歩行時、パンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりする。特許文献2に開示された平ゴムでは、開口部の周縁の全体に亘って平ゴムを設けているため(平ゴムの伸縮性にもよるが)、フットカバーを履くときに開口部が十分に開かないで履きにくい場合があることに加えて、特許文献1に開示されたフットカバーと同じく、パンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりする問題もある。
【0007】
特に、従来のフットカバーにおいて、足底部と踵部とを別々の生地で構成してそれらの生地が縫製されている場合、縫い目が踵に引っ掛かってしまうことがあり、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりする問題がある。
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、フットカバーを履くときに開口部が十分に開いて履きやすく、かつ、歩行時およびパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが(特に踵の部分から)脱げてしまったり履き位
置がずれてしまったりすることがないフットカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るフットカバーは以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係るフットカバーは、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、足底部、側辺部、踵部および前記爪先を覆う爪先部で形成され、前記足底部に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部を設け、前記開口部の上縁の少なくとも一部に伸縮性細幅生地を設け、前記足底部と前記踵部とが1枚の生地で構成され、前記踵部に足幅方向に沿った縫い目を備えないことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記踵部は、前記足底部の踵側において足底から立ち上がる鉛直方向に延設され、前記側辺部の踵側と前記踵部とが、前記鉛直方向に沿って踝の方向へ向いた縫い目により縫着するように構成することができる。
さらに好ましくは、前記側辺部と前記爪先部とが1枚の生地で構成され、2枚の生地を縫着して構成することができる。
【0010】
さらに好ましくは、前記踵部の上縁に、前記伸縮性細幅生地よりも緊締力の大きい伸縮部を備えるように構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフットカバーによれば、フットカバーを履くときに開口部が十分に開いて履きやすく、かつ、歩行時およびパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが(特に踵の部分から)脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることがないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係るフットカバーの全体斜視図である。
【
図2】
図1のフットカバーを裏返した全体斜視図である。
【
図3】
図1のフットカバーを踵後方から見た背面図である。
【
図4】
図3のフットカバーを裏返した背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係るフットカバーを、図面に基づき詳しく説明する。なお、フットカバーの構造には様々なものがあり、本発明は特定の構造に限定されるものではなく、後述する特徴を備えたものであれば、どのようなフットカバーの構造であっても、フットカバーを構成する生地の種類、生地の型紙およびその縫製がどのようなものであっても構わない。そのため、以下に示すフットカバーの構造自体は単なる例示でしかない。なお、いずれのフットカバーを形成する生地も伸縮性生地である。
【0014】
図1および
図2に本発明の実施の形態に係るフットカバー100の斜視図を、
図3および
図4にこのフットカバー100を踵後方から見た背面図を、それぞれ示す。
図1は、フットカバー100の全体斜視図であって、
図2はこのフットカバー100を裏返した全体斜視図であって、
図3は、このフットカバー100を踵後方から見た背面図であって、
図4は、このフットカバー100を裏返した背面図であって、
図1−
図4のいずれの図も着用者の足Fにフットカバー100を着用している状態を想定している。すなわち、本発明の実施の形態に係るフットカバー100は、パンティストッキング等の伸縮性生地で形成されているために、このように想定して図示しない場合には縮んだ状態となり、形状を理解することが困難なため、上述のように想定している。
【0015】
このフットカバー100は、着用者の足Fの爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーである。このフットカバー100は、着用時にパンプスから露出することのないよう履き口である開口部が大きくカットされた薄手の伸縮性生地(パンティストッキング等の生地)で形成されている。
フットカバー100は、爪先部102A、足底部104A、側辺部102Bおよび踵部104Bで形成されている。そして、足底部104Aに対して上下反対側に足を出し入れするための開口部が設けられている。この開口部を形成する爪先部102Aおよび側辺部102Bの上縁の少なくとも一部に、伸縮性細幅生地116が設けられている。このフッ
トカバー100においては、後述する踵伸縮部118の部分を除いて、開口部の全周の亘って伸縮性細幅生地116が設けられている。なお、このように開口部の全周(踵伸縮部118の部分を除く)ではなく、爪先部102Aの上側の後縁には伸縮性細幅生地116を設けないようにしても構わない。
【0016】
そして、特徴的であるのは、爪先部102Aと側辺部102Bとが1枚の第1の生地102により構成され、足底部104Aと踵部104Bとが1枚の第2の生地104により構成され、これら2枚の生地が縫着されてこのフットカバー100が構成されている点と、踵の部分に足幅方向に沿った縫い目を備えない点とである。さらに詳しくは、踵部104Bは、足底部104Aの踵側において足底から立ち上がる鉛直方向に延設されて構成されており、側辺部102Bの踵側と踵部104Bとが、鉛直方向に沿って踝(くるぶし)Mの方向へ向いた縫い目である踵縫着部106Cにより縫着されている。
【0017】
また、このフットカバー100は、上述したように、第1の生地102および第2の生地104の2枚の生地を縫着して構成されている。さらに詳しくは、第1の生地102の爪先部102Aの足底側と第2の生地104の足底部104Aとは爪先縫着部106Aにより、第1の生地102の側辺部102Bの足底側と第2の生地104の足底部104Aとは側辺縫着部106Bにより、第1の生地102の側辺部102Bの踵側と第2の生地104の踵部104Bとは踵縫着部106Cにより、それぞれ縫着されて、フットカバー100を形成している、そして、これらの爪先縫着部106A、側辺縫着部106Bおよび踵縫着部106Cは、1本の縫着部106で構成されているので製造工程を簡略化できるので好ましい。
【0018】
このようにこのフットカバー100においては、足底部104Aと踵部104Bとが1枚の第2の生地104で構成しているために、従来のフットカバーのように足底部と踵部とが別々の生地で縫製されている場合に発生する縫い目が踵に引っ掛かって歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりする問題を回避することができる。
【0019】
さらに、このフットカバー100においては、踵部104Bの上縁に伸縮性細幅生地116よりも緊締力の大きい踵伸縮部118を備える。この踵伸縮部118は、踵伸縮縫着部108により踵部104Bに縫着されている。この踵伸縮部118により、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時において、踵伸縮部118は、踵の部分からこのフットカバー100が脱げてしまうことを防止している。この踵伸縮部118は、たとえば、伸縮性細幅生地116よりも細い形状のゴム紐で構成されており、その緊締力は伸縮性細幅生地116よりも大きく、踵の上方の部分をしっかりと締めて、踵の部分からこのフットカバー100が脱げてしまうことを防止している。
【0020】
さらに、踵部104Bにおいて、足Fが接する側(内側)には、シリコン樹脂等の薄い透明のシートで形成された踵部滑り止めを設けることも好ましい。これにより、足Fの踵との密着性を高めてフットカバー100が足Fの踵の部分からずれることをさらに防止することができる。なお、この踵部滑り止めは、本発明に係るフットカバーにおいて必須の構成ではない。
【0021】
さらに、足底部104Aにおいて、足Fが接する側と反対側(パンプスを履いたときにパンプスの内底に接する側)には、シリコン樹脂等の薄いシートで形成された足底部滑り止めを設けることも好ましい。これにより、パンプスの内底との密着性を高めてパンプス内におけるフットカバー100の位置がずれることを防止できる。なお、この足底部滑り止めも、本発明に係るフットカバーにおいて必須の構成ではない。
【0022】
なお、伸縮性細幅生地116は、爪先部102Aおよび側辺部102Bを構成する第1の生地102、ならびに、足底部104Aおよび踵部104Bを形成する第2の生地104のいずれかと同じ生地で形成されていても構わないし、これらの第1の生地102ならび第2の生地104のいずれとも異なる生地で形成されていても構わない。
このフットカバー100においては、爪先部102Aおよび側辺部102Bを構成する第1の生地102、ならびに、足底部104Aおよび踵部104Bを形成する第2の生地104が同じ生地で形成されており、伸縮性細幅生地116がこれらの生地と同じ共生地
である。すなわち、このフットカバー100は、全て同じ伸縮性生地で形成されている。なお、このフットカバー100において、伸縮性細幅生地116は、第1の生地102に、熱プレス装置により接合されている。
【0023】
また、フットカバー100において、このフットカバー100を形成する、第1の生地102(爪先部102Aおよび側辺部102B)ならびに第2の生地104(足底部104Aおよび踵部104B)が同じ生地とは限らず、伸縮性細幅生地116がこれらのいずれの生地とも異なるか、または、これらのいずれかの生地と同じであっても構わない。すなわち、このフットカバー100は、第1の生地102(爪先部102Aおよび側辺部102B)ならびに第2の生地(足底部104Aおよび踵部104B)は同じ生地であっても異なる生地であってもよく、伸縮性細幅生地116はこれらの第1の生地102および第2の生地104と異なる伸縮性生地であっても同じ伸縮性生地であっても構わない。
【0024】
以上のようにして、本実施の形態に係るフットカバー100によると、足底部104Aと踵部104Bとが1枚の第2の生地104で構成しているために、従来のフットカバーのように足底部と踵部とが別々の生地で縫製されている場合に発生する問題である、縫い目が踵に引っ掛かって歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりする問題、を回避することができる。さらに、このフットカバー100によると、踵部104Bの上縁に伸縮性細幅生地116よりも緊締力の大きい踵伸縮部118を備えるために、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時に踵の部分からフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりする問題を回避することができる。
【0025】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、素足で履くフットカバーに好適であり、フットカバーを履くときに開口部が十分に開いて履きやすく、かつ、歩行時およびパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが(特に踵の部分から)脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることがない点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0027】
100 フットカバー
102 第1の生地
102A 爪先部
102B 側辺部
104 第2の生地
104A 足底部
104B 踵部
106 縫着部
106A 爪先縫着部
106B 側辺縫着部
106C 踵縫着部
108 踵伸縮縫着部
116 伸縮性細幅生地
118 踵伸縮部
F 足
M 踝