(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記負荷要求電圧は、前記下限値以上の範囲において、前記車両駆動用電動機および前記インバータの電力損失が最小化される前記出力電圧に設定される、請求項10記載の電源システム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(電力変換器の回路構成)
図1は、本発明の実施の形態1に従う電力変換器を含む電源システムの構成を示す回路図である。
【0023】
図1を参照して、電源システム5は、複数の直流電源10aおよび10bと、負荷30と、電力変換器50とを備える。
【0024】
本実施の形態において、直流電源10aおよび10bの各々は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池のような二次電池、あるいは、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等の出力特性に優れた直流電圧源要素により構成される。直流電源10aおよび直流電源10bは、「第1の直流電源」および「第2の直流電源」にそれぞれ対応する。
【0025】
電力変換器50は、直流電源10aおよび10bと、電力線20との間に接続される。電力変換器50は、負荷30と接続された電力線20上の直流電圧(以下、出力電圧VHとも称する)を電圧指令値VH*に従って制御する。すなわち、電力線20は、直流電源10aおよび10bに対して共通に設けられる。
【0026】
負荷30は、電力変換器50の出力電圧VHを受けて動作する。電圧指令値VH*は、負荷30の動作に適した電圧に設定される。さらに、負荷30は、回生発電等によって、直流電源10a,10bの充電電力を発生可能に構成されてもよい。
【0027】
電力変換器50は、スイッチング素子S1〜S4と、リアクトルL1,L2とを含む。本実施の形態において、スイッチング素子としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるい
は電力用バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子S1〜S4に対しては、逆並列ダイオードD1〜D4が配置されている。また、スイッチング素子S1〜S4は、制御信号SG1〜SG4にそれぞれ応答して、オンオフを制御することが可能である。すなわち、スイッチング素子S1〜S4は、制御信号SG1〜SG4がハイレベル(以下、Hレベル)のときにオンする一方で、ローレベル(以下、Lレベル)のときにオフする。
【0028】
スイッチング素子S1は、電力線20およびノードN1の間に電気的に接続される。リアクトルL2は、ノードN1と直流電源10bの正極端子との間に接続される。スイッチング素子S2はノードN1およびN2の間に電気的に接続される。リアクトルL1はノードN2と直流電源10aの正極端子との間に接続される。
【0029】
スイッチング素子S3は、ノードN2およびN3の間に電気的に接続される。ノードN3は、直流電源10bの負極端子と電気的に接続される。スイッチング素子S4は、ノードN3および接地配線21の間に電気的に接続される。接地配線21は、負荷30および、直流電源10aの負極端子と電気的に接続される。
【0030】
図1から理解されるように、電力変換器50は、直流電源10aおよび直流電源10bの各々に対応して昇圧チョッパ回路を備えた構成となっている。すなわち、直流電源10aに対しては、スイッチング素子S1,S2を上アーム素子とする一方で、スイッチング素子S3,S4を下アーム素子とする電流双方向の第1の昇圧チョッパ回路が構成される。同様に、直流電源10bに対しては、スイッチング素子S1,S4を上アーム素子とする一方で、スイッチング素子S2,S3を下アーム素子とする電流双方向の第2の昇圧チョッパ回路が構成される。
【0031】
そして、第1の昇圧チョッパ回路によって、直流電源10aおよび電力線20の間に形成される電力変換経路と、第2の昇圧チョッパ回路によって、直流電源10bおよび電力線20の間に形成される電力変換経路との両方に、スイッチング素子S1〜S4が含まれる。
【0032】
制御装置40は、たとえば、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを内蔵した電子制御ユニット(ECU)により構成されて、当該メモリに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、各センサによる検出値を用いた演算処理を行なうように構成される。あるいは、制御装置40の少なくとも一部は、電子回路等のハードウェアにより所定の数値・論理演算処理を実行するように構成されてもよい。
【0033】
制御装置40は、負荷30への出力電圧VHを制御するために、スイッチング素子S1〜S4のオンオフを制御する制御信号SG1〜SG4を生成する。なお、
図1では図示を省略しているが、直流電源10aの電圧(以下、Vaと表記する)および電流(以下、Iaと表記する)、直流電源10bの電圧(以下、Vbと表記する)および電流(以下、Ibと表記する)、ならびに、出力電圧VHの検出器(電圧センサ,電流センサ)が設けられている。さらに、直流電源10aおよび10bの温度(以下、TaおよびTbと表記する)の検出器(温度センサ)についても配置することが好ましい。これらの検出器の出力は、制御装置40へ与えられる。
【0034】
図1の構成において、スイッチング素子S1〜S4は、「第1のスイッチング素子」〜「第4のスイッチング素子」にそれぞれ対応し、リアクトルL1およびL2は、「第1のリアクトル」および「第2のリアクトル」にそれぞれ対応する。
【0035】
図2は、負荷30の構成例を示す概略図である。
図2を参照して、負荷30は、たとえば電動車両の走行用電動機を含むように構成される。負荷30は、平滑コンデンサCHと、インバータ32と、モータジェネレータ35と、動力伝達ギヤ36と、駆動輪37とを含む。
【0036】
モータジェネレータ35は、車両駆動力を発生するための走行用電動機であり、たとえば、複数相の永久磁石型同期電動機で構成される。モータジェネレータ35の出力トルクは、減速機や動力分割機構によって構成される動力伝達ギヤ36を経由して、駆動輪37へ伝達される。駆動輪37に伝達されたトルクにより電動車両が走行する。また、モータジェネレータ35は、電動車両の回生制動時には、駆動輪37の回転力によって発電する。この発電電力は、インバータ32によってAC/DC変換される。この直流電力は、電源システム5に含まれる直流電源10a,10bの充電電力として用いることができる。
【0037】
モータジェネレータの他にエンジン(図示せず)が搭載されたハイブリッド自動車では、このエンジンおよびモータジェネレータ35を協調的に動作させることによって、電動車両に必要な車両駆動力が発生される。この際には、エンジンの回転による発電電力を用いて直流電源10a,10bを充電することも可能である。
【0038】
このように、電動車両は、走行用電動機を搭載する車両を包括的に示すものであり、エンジンおよび電動機により車両駆動力を発生するハイブリッド自動車と、エンジンを搭載しない電気自動車および燃料電池車との両方を含むものである。
【0039】
負荷30(モータジェネレータ35)の動作は、電動車両の走行状態(代表的には車速)およびドライバ操作(代表的には、アクセルペダルおよびブレーキペダルの操作)に応じて、必要な車両駆動力または車両制動力が得られるように制御される。すなわち、負荷30の動作指令(たとえば、モータジェネレータ35のトルク指令値)は、電動車両の走行制御によって設定される。当該走行制御は、制御装置40(
図1)とは別個の上位ECUによって実行されることが好ましい。
【0040】
(電力変換器の動作モード)
電力変換器50は、直流電源10a,10bと電力線20との間での直流電力変換の態様が異なる複数の動作モードを有する。
【0041】
図3には、電力変換器50が有する複数の動作モードが示される。
図3を参照して、動作モードは、スイッチング素子S1〜S4の周期的なオンオフ制御に伴って直流電源10aおよび/または10bの出力電圧を昇圧する「昇圧モード(B)」と、スイッチング素子S1〜S4のオンオフを固定して直流電源10aおよび/または10bを電力線20と電気的に接続する「直結モード(D)」とに大別される。
【0042】
昇圧モードには、直流電源10aおよび10bと電力線20との間で並列なDC/DC変換を行なう「パラレル昇圧モード(以下、PBモード)」と、直列接続された直流電源10aおよび10bと電力線20との間でDC/DC変換を行なう「シリーズ昇圧モード(以下、SBモード)」とが含まれる。PBモードは、特許文献2での「パラレル接続モード」に対応し、SBモードは、特許文献2での「シリーズ接続モード」に対応する。
【0043】
さらに、昇圧モードには、直流電源10aのみを用いて電力線20との間でDC/DC変換を行なう「直流電源10aによる単独モード(以下、aBモード)」と、直流電源10bのみを用いて電力線20との間でDC/DC変換を行なう「直流電源10bによる単独モード(以下、bBモード)」とが含まれる。aBモードでは、直流電源10bは、出力電圧VHが直流電源10bの電圧Vbよりも高く制御されている限りにおいて、電力線20と電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。同様に、bBモードでは、直流電源10aは、出力電圧VHが直流電源10aの電圧Vaよりも高く制御されている限りにおいて、電力線20と電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。
【0044】
昇圧モードに含まれる、PBモード、SBモード、aBモードおよびbBモードの各々では、電力線20の出力電圧VHは、電圧指令値VH*に従って制御される。これらの各モードにおけるスイッチング素子S1〜S4の制御については後述する。
【0045】
直結モードには、直流電源10aおよび10bを電力線20に対して並列に接続した状態を維持する「並列直結モード(以下、PDモード)」と、直流電源10aおよび10bを電力線20に対して直列に接続した状態を維持する「シリーズ直結モード(以下、SDモード)」とが含まれる。
【0046】
PDモードでは、スイッチング素子S1,S2,S4をオンに固定する一方で、スイッチング素子S3がオフに固定される。これにより、出力電圧VHは、直流電源10a,10bの出力電圧Va,Vb(厳密にはVa,Vbのうちの高い方の電圧)と同等となる。Va,Vb間の電圧差は直流電源10a,10bに短絡電流を生じさせるので、当該電圧差が小さいときに限定して、PDモードを適用することができる。
【0047】
SDモードでは、スイッチング素子S2,S4がオフに固定される一方で、スイッチング素子S1,S3がオンに固定される。これにより、出力電圧VHは、直流電源10a,10bの出力電圧Va,Vbの和に従って一意に決まる(VH=Va+Vb)。
【0048】
さらに、直結モードには、直流電源10aのみを電力線20と電気的に接続する「直流電源10aの直結モード(以下、aDモード)」と、直流電源10bのみを電力線20と電気的に接続する「直流電源10bの直結モード(以下、bDモード)」とが含まれる。
【0049】
aDモードでは、スイッチング素子S1,S2がオンに固定される一方で、スイッチング素子S3,S4がオフに固定される。これにより、直流電源10bは電力線20から切り離された状態となり、出力電圧VHは、直流電源10aの電圧Vaと同等となる(VH=Va)。aDモードでは、直流電源10bは、電力線20と電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。なお、Vb>Vaの状態でaDモードを適用すると、スイッチング素子S2を介して直流電源10bから10aに短絡電流が生じる。このため、aDモードの適用には、Va>Vbが必要条件となる。
【0050】
同様に、bDモードでは、スイッチング素子S1,S4がオンに固定される一方で、スイッチング素子S2,S3がオフに固定される。これにより、直流電源10aは電力線20から切り離された状態となり、出力電圧VHは、直流電源10bの電圧Vbと同等となる(VH=Vb)。bDモードでは、直流電源10aは、電力線20と電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。なお、Va>Vbの状態でbDモードを適用すると、ダイオードD2を介して直流電源10aから10bに短絡電流が生じる。このため、bDモードの適用には、Vb>Vaが必要条件となる。
【0051】
直結モードに含まれる、PDモード、SDモード、aDモードおよびbDモードの各々では、電力線20の出力電圧VHは、直流電源10a,10bの電圧Va,Vbに依存して決まるため、直接制御することができなくなる。このため、直結モードに含まれる各モードでは、出力電圧VHが負荷30の動作に適した電圧に設定できなくなることにより、負荷30での電力損失が増加する可能性がある。
【0052】
一方で、直結モードでは、スイッチング素子S1〜S4がオンオフされないため、電力変換器50の電力損失が大幅に抑制される。したがって、負荷30の動作状態によっては、直結モードの適用によって、負荷30の電力損失増加量よりも電力変換器50での電力損失減少量が多くなることにより、電源システム5全体での電力損失が抑制できる可能性がある。
【0053】
図3において、SDモードは、電力変換器50における「直列直結モード」に相当し、aBモード、bBモードおよびPBモードの各々は、電力変換器50における「電圧制御モード」に相当する。また、PBモードは「第1のモード」に対応し、SBモードは「第2のモード」に対応し、SDモードは「第3のモード」に対応する。さらに、aBモードおよびbBモードは「第4のモード」に対応し、aDモードおよびbDモードは「第5のモード」に対応し、PDモードは「第6のモード」に対応する。
【0054】
図4は、直流電源10a,10bを異なる種類の電源で構成した場合における両直流電源の特性の一例を示す概念図である。
図4には、横軸にエネルギ、縦軸に電力をプロットした、いわゆるラゴンプロットが示される。一般的に、直流電源の出力パワーおよび蓄積エネルギはトレードオフの関係にあるため、高容量型のバッテリでは高出力を得ることが難しく、高出力型のバッテリでは蓄積エネルギを高めることが難しい。
【0055】
したがって、直流電源10a,10bは、一方が、蓄積エネルギが高い、いわゆる高容量型の電源で構成されるのに対して、他方が、出力パワーが高い、いわゆる高出力型の電源で構成されることが好ましい。このようにすると、高容量型の電源に蓄積されたエネルギを平準的に長期間使用する一方で、高出力型の電源をバッファとして使用して、高容量型の電源による不足分を出力することができる。
【0056】
図4の例では、直流電源10aが高容量型の電源で構成される一方で、直流電源10bは高出力型の電源で構成される。したがって、直流電源10aの動作領域110は、直流電源10bの動作領域120と比較して、出力可能な電力範囲が狭い。一方で、動作領域120は、動作領域110と比較して、蓄積可能なエネルギ範囲が狭い。
【0057】
負荷30の動作点101では、高パワーが短時間要求される。たとえば、電動車両では、動作点101は、ユーザのアクセル操作による急加速時に対応する。これに対して、
負荷30の動作点102では、比較的低パワーが長時間要求される。たとえば、電動車両では、動作点102は、継続的な高速定常走行に対応する。
【0058】
動作点101に対しては、主に、高出力型の直流電源10bからの出力によって対応することができる。一方で、動作点102に対しては、主に、高容量型の直流電源10aからの出力によって対応することができる。これにより、電動車両では、高容量型のバッテリに蓄積されたエネルギを長時間に亘って使用することによって、電気エネルギによる走行距離を延ばすことができるとともに、ユーザのアクセル操作に対応した加速性能を速やかに確保することができる。
【0059】
このように、種類および容量の異なる直流電源を組み合わせることにより、各直流電源の特性を活かして、システム全体で有効に蓄積エネルギを使用することができる。ただし、直流電源10a,10bの組み合わせはこの例に限定されるものではなく、同種および/または同容量の直流電源(蓄電装置)によって構成することも可能である。
【0060】
また、直流電源がバッテリによって構成される場合には、低温時に出力特性が低下する可能性や、高温時に劣化進行を抑制するために充放電が制限される可能性がある。特に、電動車両では、搭載位置の差異によって、直流電源10a,10bの間に温度差が発生するケースも生じる。したがって、電源システム5では、直流電源10a,10bの動作状態(特に温度)に応じて、あるいは、上述したような負荷30の要求に応じて、いずれか一方の直流電源のみを使用した方が、効率的であるケースが存在する。上述したような、直流電源10a,10bの一方のみを使用するモード(aBモード,bBモード,aDモード,bDモード)を設けることによって、これらのケースに対応することができる。
【0061】
すなわち、本実施の形態1に従う電力変換器50では、直流電源10a,10bおよび/または負荷30の動作状態に応じて、
図3に示した、複数の動作モードのうちのいずれかの動作モードが選択される。動作モードを選択するための処理の詳細については、後程説明する。
【0062】
(各動作モードでの回路動作)
次に、各動作モードにおける電力変換器50の回路動作を説明する。まず、直流電源10aおよび10bと電力線20との間で並列なDC/DC変換を行なうPBモードでの回路動作について、
図5〜
図8を用いて説明する。
【0063】
(PBモードにおける回路動作)
図5および
図6に示されるように、スイッチング素子S4またはS2をオンすることによって、直流電源10aおよび10bを電力線20に対して並列に接続することができる。ここで、並列接続モードでは、直流電源10aの電圧Vaと直流電源10bの電圧Vbとの高低に応じて等価回路が異なってくる。
【0064】
図5(a)に示されるように、Vb>Vaのときは、スイッチング素子S4をオンすることにより、スイッチング素子S2,S3を介して、直流電源10aおよび10bが並列に接続される。このときの等価回路が
図5(b)に示される。
【0065】
図5(b)を参照して、直流電源10aおよび電力線20の間では、スイッチング素子S3のオンオフ制御によって、下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。同様に、直流電源10bおよび電力線20の間では、スイッチング素子S2,S3を共通にオンオフ制御することによって、昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。
【0066】
一方、
図6(a)に示されるように、Va>Vbのときには、スイッチング素子S2をオンすることにより、スイッチング素子S3,S4を介して、直流電源10aおよび10bが並列に接続される。このときの等価回路が
図6(b)に示される。
【0067】
図6(b)を参照して、直流電源10bおよび電力線20の間では、スイッチング素子S3のオンオフ制御によって、下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。同様に、直流電源10aおよび電力線20の間では、スイッチング素子S3,S4を共通にオンオフ制御することによって、昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。
【0068】
次に、
図7および
図8を用いて、電力変換器50のPBモードにおける昇圧動作について詳細に説明する。
【0069】
図7には、PBモードにおける直流電源10aに対するDC/DC変換(昇圧動作)が示される。
【0070】
図7(a)を参照して、スイッチング素子S3,S4のペアをオンし、スイッチング素子S1,S2のペアをオフすることによって、リアクトルL1にエネルギを蓄積するため
の電流経路350が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
【0071】
これに対して、
図7(b)を参照して、スイッチング素子S3,S4のペアをオフするとともに、スイッチング素子S1,S2のペアをオンすることによって、リアクトルL1の蓄積エネルギを直流電源10aのエネルギとともに出力するための電流経路351が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
【0072】
スイッチング素子S3,S4のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S1,S2の少なくとも一方がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1,S2のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S3,S4の少なくとも一方がオフされている第2の期間とを交互に繰返すことにより、
図7(a)の電流経路350および
図7(b)の電流経路351が交互に形成される。
【0073】
この結果、スイッチング素子S1,S2のペアを等価的に上アーム素子とし、スイッチング素子S3,S4のペアを等価的に下アーム素子とする昇圧チョッパ回路が、直流電源10aに対して構成される。
図7に示されるDC/DC変換動作では、直流電源10bへの電流流通経路がないため、直流電源10aおよび10bは互いに非干渉である。すなわち、直流電源10aおよび10bに対する電力の入出力を独立に制御することが可能である。
【0074】
このようなDC/DC変換において、直流電源10aの電圧Vaと、電力線20の出力電圧VHとの間には、下記(1)式に示す関係が成立する。(1)式では、スイッチング素子S3,S4のペアがオンされる期間のデューティ比をDaとする。
【0075】
VH=1/(1−Da)・Va …(1)
図8には、PBモードにおける直流電源10bに対するDC/DC変換(昇圧動作)が示される。
【0076】
図8(a)を参照して、スイッチング素子S2,S3のペアをオンし、スイッチング素子S1,S4のペアをオフすることによって、リアクトルL2にエネルギを蓄積するための電流経路360が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
【0077】
これに対して、
図8(b)を参照して、スイッチング素子S2,S3のペアをオフするとともに、スイッチング素子S1,S4のペアをオンすることによって、リアクトルL2の蓄積エネルギを直流電源10bのエネルギとともに出力するための電流経路361が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
【0078】
スイッチング素子S2,S3のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S1,S4の少なくとも一方がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1,S4のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S2,S3の少なくとも一方がオフされている第2の期間とを交互に繰返すことにより、
図8(a)の電流経路360および
図8(b)の電流経路361が交互に形成される。
【0079】
この結果、スイッチング素子S1,S4のペアを等価的に上アーム素子とし、スイッチング素子S2,S3のペアを等価的に下アーム素子とする昇圧チョッパ回路が、直流電源10bに対して構成される。
図8に示されるDC/DC変換動作では、直流電源10aを含む電流経路がないため、直流電源10aおよび10bは互いに非干渉である。すなわち、直流電源10aおよび10bに対する電力の入出力を独立に制御することが可能である。
【0080】
このようなDC/DC変換において、直流電源10bの電圧Vbと、電力線20の出力電圧VHとの間には、下記(2)式に示す関係が成立する。(2)式では、スイッチング素子S2,S3のペアがオンされる期間のデューティ比をDbとする。
【0081】
VH=1/(1−Db)・Vb …(2)
また、
図7および
図8から理解されるように、PBモードでは、スイッチング素子S1〜S4に、直流電源10aと電力線20との間のDC/DC変換による電流と、直流電源10bおよび電力線20の間でのDC/DC変換による電流との両方が流れる。
【0082】
したがって、両者の電力変換によって流れる電流が、各スイッチング素子において逆方向である場合、たとえば、
図7(a)における電流経路350と、
図8(b)における電流経路361とが同時に形成されている場合には、両電流経路の電流が打ち消し合うため、スイッチング素子S4の通過電流は小さくなる。このような現象により、PBモードでは、スイッチング素子S1〜S4における損失は、単独の直流電源を用いてDC/DC変換を実行するaBモードまたはbBモードと比較して小さくできる場合がある。
【0083】
図9には、PBモードにおけるスイッチング素子の制御動作例を説明するための波形図が示される。
図9には、直流電源10aのPWM制御に用いられるキャリア波CWaと、直流電源10bのPWM制御に用いられるキャリア波CWbとは、同一周波数かつ同一位相であるときの例が示される。
【0084】
図9を参照して、たとえば、PBモードでは、特許文献2に記載されるように、直流電源10aおよび10bの一方の出力を、出力電圧VHの電圧偏差ΔVH(ΔVH=VH*−VH)を補償するように制御(電圧制御)するとともに、直流電源10aおよび10bの他方の出力を、電流IaまたはIbの電流偏差を補償するように制御(電流制御)することができる。この際に、電流制御の指令値(Ia*またはIb*)は、当該電源の入出力電力を制御するように設定することができる。
【0085】
一例として、直流電源10bの出力を電圧制御する一方で、直流電源10aの出力を電流制御するようにすると、デューティ比Daは電流偏差ΔIa(ΔIa=Ia*−Ia)に基づいて演算される一方で、デューティ比Dbは、電圧偏差ΔVH(ΔVH=VH*−VH)に基づいて演算される。
【0086】
直流電源10aの出力を制御するためのデューティ比Daと、キャリア波CWaとの電圧比較に基づいて、制御パルス信号SDaが生成される。同様に、直流電源10bの出力を制御するためのデューティ比Dbと、キャリア波CWbとの比較に基づいて制御パルス信号SDbが生成される。制御パルス信号/SDa,/SDbは、制御パルス信号SDa,SDbの反転信号である。
【0087】
図10に示されるように、制御信号SG1〜SG4は、制御パルス信号SDa(/SDa)およびSDb(/SDb)の論理演算に基づいて設定される。
【0088】
スイッチング素子S1は、
図7および
図8の昇圧チョッパ回路の各々で上アーム素子を形成する。したがって、スイッチング素子S1のオンオフを制御する制御信号SG1は、制御パルス信号/SDaおよび/SDbの論理和によって生成される。この結果、スイッチング素子S1は、
図7の昇圧チョッパ回路(直流電源10a)の上アーム素子および、
図8の昇圧チョッパ回路(直流電源10b)の上アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
【0089】
スイッチング素子S2は、
図7の昇圧チョッパ回路では上アーム素子を形成し、
図8の昇圧チョッパ回路では下アーム素子を形成する。したがって、スイッチング素子S2のオンオフを制御する制御信号SG2は、制御パルス信号/SDaおよびSDbの論理和によって生成される。これにより、スイッチング素子S2は、
図7の昇圧チョッパ回路(直流電源10a)の上アーム素子および、
図8の昇圧チョッパ回路(直流電源10b)の下アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
【0090】
同様にして、スイッチング素子S3の制御信号SG3は、制御パルス信号SDaおよびSDbの論理和によって生成される。これにより、スイッチング素子S3は、
図7の昇圧チョッパ回路(直流電源10a)の下アーム素子および、
図8の昇圧チョッパ回路(直流電源10b)の下アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。また、スイッチング素子S4の制御信号SG4は、制御パルス信号SDaおよび/SDbの論理和によって生成される。これにより、スイッチング素子S4は、
図7の昇圧チョッパ回路(直流電源10a)の下アーム素子および、
図8の昇圧チョッパ回路(直流電源10b)の上アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
【0091】
PBモードでは、制御信号SG2およびSG4が相補のレベルに設定されているので、スイッチング素子S2およびS4は相補的にオンオフされる。これにより、
図5に示したVb>Vaのときの動作と、
図6に示したVa>Vbの動作とが、自然に切替えられる。さらに、スイッチング素子S1,S3が相補にオンオフされることにより、直流電源10a,10bについて、デューティ比Da,Dbに従った直流電力変換が実行できる。
【0092】
再び
図9を参照して、制御信号SG1〜SG4は、
図10に示された論理演算式に従って、制御パルス信号SDa(/SDa)およびSDb(/SDb)に基づいて生成される。制御信号SG1〜SG4に従ってスイッチング素子S1〜S4をオンオフすることにより、リアクトルL1を流れる電流I(L1)およびリアクトルL2を流れる電流I(L2)が制御される。電流I(L1)は直流電源10aの電流Iaに相当し、電流I(L2)は直流電源10bの電流Ibに相当する。
【0093】
このように、PBモードでは、直流電源10a,10bと電力線20との間で並列に直流電力を入出力するDC/DC変換を実行した上で、出力電圧VHを電圧指令値VH*に制御することができる。さらに、電流制御の対象となる直流電源の電流指令値に応じて、当該直流電源の入出力電力を制御することができる。
【0094】
PBモードでは、負荷30の入出力電力(以下、負荷電力PLとも称する)に対する、電流制御される直流電源からの入出力電力による不足分が、電圧制御される直流電源から入出力されることになる。このため、電流制御での電流指令値の設定によって、直流電源間での電力分配比率を間接的に制御することが可能となる。なお、以下では、電力Pa,Pb、直流電源10a,10b全体が電力線20に対して入出力する総電力PH(PH=Pa+Pb)、および負荷電力PLは、各直流電源10a,10bの放電時および負荷30の力行動作時の電力値を正値で表し、各直流電源10a,10bの充電時および負荷30の回生動作時の電力値を負値で表すこととする。
【0095】
なお、以下では、電力Pa,Pb、総電力PHおよび負荷電力PLは、各直流電源10a,10bの放電時および負荷30の力行動作時の電力値を正値で表し、各直流電源10a,10bの充電時および負荷30の回生動作時の電力値を負値で表すこととする。
【0096】
(aBモードおよびbBモードにおける回路動作)
直流電源10a,10bの一方のみを用いる昇圧モード(aBモード,bBモード)における回路動作は、
図7および
図8における回路動作と共通する。
【0097】
aBモードにおいては、
図7(a),(b)に示すスイッチング動作によって、直流電源10bを不使用とする一方で、直流電源10aおよび電力線20(負荷30)の間で双方向のDC/DC変換が実行される。したがって、aBモードでは、直流電源10aの出力を制御するためのデューティ比Daに基づく制御パルス信号SDaに従って、スイッチング素子S1〜S4が制御される。
【0098】
具体的には、
図7(a),(b)に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子を構成するスイッチング素子S3およびS4は、制御パルス信号SDaに従って共通にオンオフ制御される。同様に、昇圧チョッパ回路の上アーム素子を構成するスイッチング素子S1およびS2は、制御パルス信号/SDaに従って共通にオンオフ制御される。
【0099】
同様に、bBモードにおいては、
図8(a),(b)に示すスイッチング動作によって、直流電源10aを不使用とする一方で、直流電源10bおよび電力線20(負荷30)の間で双方向のDC/DC変換が実行される。したがって、bBモードでは、直流電源10bの出力を制御するためのデューティ比Dbに基づく制御パルス信号SDbに従って、スイッチング素子S1〜S4が制御される。
【0100】
具体的には、
図8(a),(b)に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子を構成するスイッチング素子S2およびS3は、制御パルス信号SDbに従って共通にオンオフ制御される。同様に、昇圧チョッパ回路の上アーム素子を構成するスイッチング素子S1およびS4は、制御パルス信号/SDbに従って共通にオンオフ制御される。
【0101】
(直結モードにおける回路動作)
直結モードでは、
図3に従ってスイッチング素子S1〜S4のオンオフを固定することによって、PDモード、SDモード、aDモードおよびbDモードの各々を実現できることが理解される。
【0102】
(SBモードにおける回路動作)
次に、SBモードでの回路動作を、
図11および
図12を用いて説明する。
【0103】
図11(a)に示されるように、スイッチング素子S3をオン固定することによって、直流電源10aおよび10bを電力線20に対して直列に接続することができる。このときの等価回路が
図11(b)に示される。
【0104】
図11(b)を参照して、SBモードでは、直列接続された直流電源10aおよび10bと電力線20との間では、スイッチング素子S2,S4を共通にオンオフ制御することによって、昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、スイッチング素子S2,S4のオフ期間にオンされることによって、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。また、オン固定されたスイッチング素子S3により、リアクトルL1をスイッチング素子S4と接続する配線15が等価的に形成される。
【0105】
次に、
図12を用いて、SBモードにおけるDC/DC変換(昇圧動作)を説明する。
図12(a)を参照して、直流電源10aおよび10bを直列接続するためにスイッチング素子S3がオン固定される一方で、スイッチング素子S2,S4のペアがオンし、スイッチング素子S1がオフされる。これにより、リアクトルL1,L2にエネルギを蓄積するための電流経路370,371が形成される。この結果、直列接続された直流電源10a,10bに対して、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
【0106】
これに対して、
図12(b)を参照して、スイッチング素子S3をオン固定したままで、
図12(a)とは反対に、スイッチング素子S2,S4のペアがオフし、スイッチング素子S1がオンされる。これにより、電流経路372が形成される。電流経路372により、直列接続された直流電源10a,10bからのエネルギと、リアクトルL1,L2に蓄積されたエネルギとの和が電力線20へ出力される。この結果、直列接続された直流電源10a,10bに対して、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
【0107】
スイッチング素子S3がオン固定された下で、スイッチング素子S2,S4のペアがオンされる一方でスイッチング素子S1がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1がオンされる一方でスイッチング素子S2,S4がオフされている第2の期間とを交
互に繰返すことにより、
図12(a)の電流経路370,371および
図12(b)の電流経路372が交互に形成される。
【0108】
SBモードのDC/DC変換では、直流電源10aの電圧Va、直流電源10bの電圧Vb、および、電力線20の出力電圧VHの間には、下記(3)式に示す関係が成立する。(3)式では、スイッチング素子S2,S4のペアがオンされる第1の期間のデューティ比をDcとする。
【0109】
VH=1/(1−Dc)・(Va+Vb) …(3)
ただし、VaおよびVbが異なるときや、リアクトルL1,L2のインダクタンスが異なるときには、
図12(a)の動作終了時におけるリアクトルL1,L2の電流値がそれぞれ異なる。したがって、
図12(b)の動作への移行直後には、リアクトルL1の電流の方が大きいときには電流経路373を介して差分の電流が流れる。一方、リアクトルL2の電流の方が大きいときには電流経路374を介して、差分の電流が流れる。
【0110】
図13には、SBモードにおけるスイッチング素子の制御動作例を説明するための波形図が示される。
【0111】
SBモードでは、特許文献3に記載されるように、出力電圧VHの電圧偏差ΔVH(ΔVH=VH*−VH)を補償するように、(3)式のデューティ比Dcが演算される。そして、キャリア波CWとデューティ比Dcとの電圧比較に基づいて、制御パルス信号SDcが生成される。制御パルス信号/SDcは、制御パルス信号SDcの反転信号である。SBモードでは、直流電圧(Va+Vb)と、出力電圧VHとの間のDC/DC変換が、
図10に示された昇圧チョッパ回路によって実行される。
【0112】
図14に示されるように、制御信号SG1〜SG4は、制御パルス信号SDc(/SDc)の論理演算に基づいて設定することができる。
【0113】
制御パルス信号SDcは、昇圧チョッパ回路の下アーム素子を構成するスイッチング素子S2,S4のペアの制御信号SG2,SG4とされる。同様に、昇圧チョッパ回路の上アーム素子を構成するスイッチング素子S1の制御信号SG1は、制御パルス信号/SDcによって得られる。この結果、下アーム素子を構成するスイッチング素子S2,S4のペアがオンされる期間と、上アーム素子を構成するスイッチング素子S1がオンされる期間とが相補的に設けられる。
【0114】
SBモードでは、直流電源10aおよび10bが直列接続された状態で、電力線20(負荷30)との間で双方向のDC/DC変換が実行される。したがって、直流電源10aの電力Paおよび直流電源10bの電力Pbを直接制御することができない。すなわち、直流電源10a,10bの電力Pa,Pbの比は、電圧Va,Vbの比によって、下記(4)式に従って自動的に決まる。
【0115】
Pa:Pb=Va:Vb …(4)
なお、直流電源10a,10bの電力の和(Pa+Pb)によって負荷30へ入出力される供給されることは、PBモードと同様である。
【0116】
(動作モードの選択)
以下に、本実施の形態に従う電力変換器制御における動作モードの選択処理について詳細に説明する。
【0117】
図15には、
図3に示した各動作モードにおける、直流電源10a,10b間での電力配分の制御可否および出力電圧VHの設定可能範囲が示される。
【0118】
図15を参照して、PBモードでは、電流制御対象となる直流電源での電流指令値の設定により、直流電源10a,10b間の電力分配比kを制御することができる。なお、電力分配比kは、総電力PH(PH=Pa+Pb)に対する直流電源10aの電力Paの比で定義される(k=Pa/PH)。すなわち、PBモードでは、0〜1.0の範囲内で任意の値に、電力分配比kを設定することができる。なお、PBモードでは、出力電圧VHは、電圧VaおよびVbの最大値であるmax(Va,Vb)から、出力電圧VHの制御上限値である上限電圧VHmaxまでの範囲内で制御することができる(max(Va,Vb)≦VH≦VHmax)。なお、max(Va,Vb)について、Va>Vbのときはmax(Va,Vb)=Vaであり、Vb>Vaのときはmax(Va,Vb)=Vbである。また、上限電圧VHmaxは、部品の耐圧等を考慮して定められる上限値である。
【0119】
SBモードでは、電力分配比kは、(4)式に示したように、電圧Va,Vbによって自動的に決まるため、各直流電源10a,10bの電力Pa,Pbを独立に制御することはできない。また、出力電圧VHは(Va+Vb)よりも低く設定することができない。SBモードでは、出力電圧VHは、(Va+Vb)から上限電圧VHmaxまでの範囲内で制御することができる(Va+Vb<VH≦VHmax)。
【0120】
aBモードでは、直流電源10aのみが使用されるので電力分配比k=1.0に固定される。そして、式(1)のデューティ比Daに基づいて
図8に示した昇圧チョッパ回路を制御することにより、出力電圧VHは、max(Va,Vb)から上限電圧VHmaxまでの範囲内で制御することができる(max(Va,Vb)<VH≦VHmax)。
【0121】
bBモードでは、直流電源10bのみが使用されるため、電力分配比k=0に固定される。そして、式(2)のデューティ比Dbに基づいて
図8に示した昇圧チョッパ回路を制御することにより、出力電圧VHは、max(Va,Vb)からVHmaxの範囲内で制御することができる(max(Va,Vb)<VH≦VHmax)。
【0122】
PDモードでは、直流電源10aおよび10bが並列に電力線20に対して接続される。このため、電力分配比kは、直流電源10aおよび10bの内部抵抗に依存して一意に決まるので、各直流電源10a,10bの電力Pa,Pbを独立に制御することはできない。具体的には、直流電源10aの内部抵抗Raおよび直流電源10bの内部抵抗Rbを用いると、k=Rb/(Ra+Rb)となる。また、VH=Va(VH=Vb)に固定されるため、電圧指令値VH*に応じて出力電圧VHを制御することはできない。なお、上述のように、PDモードは、電圧VaおよびVbの電圧差が小さいときに限定して適用することができる。
【0123】
SDモードでは、直流電源10aおよび10bが直列に電力線20に対して電気的に接続される。このため、出力電圧VH=Va+Vbに固定される。すなわち、電圧指令値VH*に応じて出力電圧VHを制御することはできない。また、電力分配比kは、SBモードと同様に、電圧VaおよびVbに従って自動的に決まるため、任意には制御できない。
【0124】
aDモードの適用時には、上述のようにVa>Vbが条件であるため、直流電源10bが電力線20から切り離される一方で、直流電源10aが電力線20に対して接続される。このため、出力電圧VH=Vaに固定される。また、電力供給は直流電源10aからのみ実行されるので、電力分配比k=1.0に固定される。
【0125】
同様に、bDモードの適用時には、上述のようにVb>Vaが条件であるため、直流電源10aが電力線20から切り離される一方で、直流電源10bが電力線20に対して接続される。このため、出力電圧VH=Vbに固定される。また、電力供給は直流電源10bからのみ実行されるので、電力分配比k=0に固定される。
【0126】
図15から理解されるように、各動作モードにおいて、電力変換器50が出力可能な出力電圧VHの範囲が異なる。また、上述のように、PBモードでは直流電源10a,10bの間での電力配分が制御可能である。一方、その他のSBモード、SDモード、aBモード、bBモード、aDモード、bDモードおよびPDモードでは、直流電源10a,10bの間での電力配分が任意には制御できない。
【0127】
ここで、負荷30へ供給される出力電圧VHは、負荷30への動作状態に応じて、一定電圧以上に設定することが必要となる。
図2に例示するように、負荷30が、モータジェネレータ35を含んで構成される場合には、インバータ32の直流リンク側電圧に相当する出力電圧VHが、モータジェネレータ35のコイル巻線(図示せず)に生じる誘起電圧以上であることが必要である。
【0128】
また、モータジェネレータ35が出力可能なトルク範囲は、出力電圧VHに応じて変化する。具体的には、出力電圧VHを高くすると出力可能なトルクも大きくなる。したがって、たとえば、出力電圧VHは、電動車両の走行制御によって定められたトルク指令値に相当するトルクをモータジェネレータ35が出力可能な電圧範囲とすることが必要である。
【0129】
これらの観点から、負荷30の動作状態(
図2の構成例では、モータジェネレータ35のトルクおよび回転数)に応じて、負荷30を動作指令値に従って動作させるための、出力電圧VHの最小値に相当する負荷最低電圧VHminを予め定めることができる。したがって、負荷要求電圧VHrqは、負荷最低電圧VHminに対応させて定めることができる。
【0130】
さらに、モータジェネレータ35のトルク制御において、同一トルクを出力する際の電流位相は、インバータ32の直流リンク電圧(出力電圧VH)によって変化する。また、モータジェネレータ35での電流振幅に対する出力トルクの比、すなわち、モータ効率は、電流位相に応じて変化する。したがって、モータジェネレータ35のトルク指令値が設定されると、当該トルク指令値に対応させて、モータジェネレータ35での効率が最大、すなわち、モータジェネレータ35での電力損失が最小となる最適な電流位相、および、この最適な電流位相を実現するための出力電圧VHを定めることができる。
【0131】
このように、出力電圧VHに応じて、モータジェネレータ35およびインバータ32における電力損失、すなわち負荷損失Pldが変化することが理解される。したがって、負荷要求電圧VHrqは、VHrq≧VHminの範囲で、負荷30での効率をさらに考慮して定めることが好ましい。
【0132】
これらの要素を考慮して、負荷30の動作状態および動作指令値(たとえば、トルク指令値)に対応させて、出力電圧VHに関する負荷要求電圧VHrqを予め設定することができる。上述のように、少なくともVHrq≧VHminは保障されているので、電力変換器50は、VH≧VHrqの範囲に出力電圧VHを制御することにより、負荷30の動作を確保することができる。負荷損失Pldをさらに考慮して負荷要求電圧VHrqが定められている場合には、VH=VHrqとすれば、負荷30での損失を抑制することができるものとする。
【0133】
このように、負荷30の動作指令値に応じて設定された負荷要求電圧VHrqの範囲に依存して、VH≧VHrqを実現できる動作モード、すなわち、適用可能な動作モードが異なることが理解される。
【0134】
図16には、負荷要求電圧VHrqの電圧範囲VR1〜VR3の定義が示される。
図17には、各電圧範囲における動作モードの選択を説明するための図表が示される。
【0135】
図16を参照して、負荷要求電圧VHrqは、電圧範囲VR1(VHrq≦max(Va,Vb)、VR2(max(Va,Vb)<VHrq≦Va+Vb)および、VR3(Va+Vb<VHrq≦VHmax)のいずれかに設定される。
【0136】
電力変換器50は、max(Va,Vb)よりも低い電圧を出力することができないため、負荷要求電圧VHrqが電圧範囲VR1内であるときには、出力電圧VHを負荷要求電圧VHrqと一致させることができない。したがって、電圧範囲VR1では、VH≧VHrqの範囲でなるべくVHをVHrqに近付けるため、aDモード、bDモードおよびPDモードのいずれかを選択することが好ましい。
【0137】
なお、上述のように、電圧Va,Vbの関係に応じて、適用可能な動作モードも異なる。すなわち、Va>Vbのときには、aDモードのみが適用可能である一方で、bDモードおよびPDモードを適用することができない。同様に、Vb>Vaのときには、bDモードのみが適用可能である一方で、aDモードおよびPDモードを適用することができない。これに対して、VaおよびVbの電圧差が小さく、Va=Vbとみなせる場合には、aDモード、bDモードおよびPDモードを適用することが可能である。
【0138】
昇圧モードに属するaBモード、bBモードおよびPBモードでは、出力電圧VHは、max(Va,Vb)〜VHmaxの範囲内であれば、電圧指令値VH*に従って制御することができる。一方で、SBモードでは、出力電圧VHを(Va+Vb)より低く制御することができない。すなわち、出力電圧VHは、(Va+Vb)〜VHmaxの範囲内であれば、電圧指令値VH*に従って制御することができる。
【0139】
電圧範囲VR2では、上述した各動作モードでの出力電圧VHの制御可能範囲に照らして、aBモード、bBモードおよびPBモードを選択することができる。これらの動作モードの適用時には、VH*=VHrqとすることにより、出力電圧VHを負荷要求電圧VHrqと一致させることが可能である。一方で、aDモード、bDモードおよびPDモードは、適用することができない。
【0140】
さらに、SDモードは、VH≧VHrqの条件を満たすため、電圧範囲VR2において適用可能である。SDモードでは、出力電圧VH(VH=Va+Vb)を負荷要求電圧VHrqに一致させることはできないが、電力変換器50での損失が大幅に抑制される。このため、電源システム5全体の損失については、aBモード、bBモードおよびPBモードの適用時よりも抑制できる可能性がある。したがって、SDモードについても、電圧範囲VR2での適用可能な動作モード群に含めることができる。
【0141】
電圧範囲VR3では、上述した各動作モードでの出力電圧VHの制御可能範囲に照らして、PBモード、SBモード、aBモード、bBモードおよびPBモードが、適用可能な動作モード群として選択される。これらの動作モードの適用時には、VH*=VHrqとすることにより、出力電圧VHを負荷要求電圧VHrqと一致させることが可能である。一方で、各直結モード(aDモード、bDモード、PDモードおよびSDモード)は、適用することができない。
【0142】
このように、負荷要求電圧VHrqに関連する出力電圧VH(VH≧VHrq)と、電圧Va,Vbとの間の関係に応じて、選択可能な動作モードが異なってくる。その中で、動作モードは、電源システム5全体の損失を抑制するように選択することが好ましい。
【0143】
図17および
図18には、出力電圧VHの変化に対する電源システムの損失特性を説明するための概念図が示される。なお、
図17には、負荷電力PLが比較的大きい領域での特性が示される一方で、
図18には、比較的負荷電力PLが小さい領域での損失特性が示される。
【0144】
図17および
図18の横軸には、電力変換器50の出力電圧VHが示され、縦軸には電源システムの損失が示される。
図17および
図18には、負荷30の動作点(モータジェネレータ35の回転数およびトルク)、すなわち、負荷電力PLが同一である下での出力電圧VHの変化に対する電源システムの損失の特性が示される。
【0145】
図17を参照して、電力変換器50の電力損失(以下、コンバータ損失Pcvとも称する)は、VH≦max(Va,Vb)の電圧範囲では、aDモード、bDモードまたはPDモードの適用により抑制される。VH>max(Va,Vb)の電圧範囲では、出力電圧VHの上昇に応じて昇圧比が大きくなるため、コンバータ損失Pcvが増大する。
【0146】
VH=Va+Vbのときには、SDモードの適用により、コンバータ損失Pcvは特異的に減少する。VH>(Va+Vb)の電圧範囲では、SBモードを適用することができるが、出力電圧VHの上昇に応じてコンバータ損失Pcvが増大する。上述のように、SBモードでは、電力変換器50での昇圧比が小さくなるため、PBモード、aBモードおよびbBモードの適用時と比較して、コンバータ損失Pcvを抑制することができる。ただし、SBモードにおけるコンバータ損失Pcvは、SDモード使用時のコンバータ損失Pcvよりは大きい。
【0147】
上述のように、負荷30での損失を考慮して負荷要求電圧VHrqを設定することにより、VH=VHrqのときに、負荷30での電力損失(以下、単に負荷損失Pldとも称する)は最小となる。負荷損失Pldは、
図2の構成例では、インバータ32およびモータジェネレータ35の電力損失の和に対応する。したがって、電圧指令値VH*=VHrqと設定することにより、負荷損失Pldを抑制しつつ、負荷30の動作を確保するように、出力電圧VHを制御することができる。このように、負荷電力PLが比較的大きい領域では、上述の負荷最低電圧VHminと比較すると、VHrq>VHminとなる。
【0148】
ただし、VH=Va+Vbのときにコンバータ損失Pcvを大幅に減少できるため、VH=VHrqに制御しても、電源システム5のトータル損失Ptlは最小にならない可能性がある。ここで、トータル損失Ptlは、コンバータ損失Pcvおよび負荷損失Pldの和に対応する。
【0149】
図18を参照して、電源システム5は、負荷電力PLが小さい領域では、出力電圧VHの上昇に従って、コンバータ損失Pcvおよび負荷損失Pldの両方が上昇するような損失特性を有する。このため、出力電圧VHが低いほどトータル損失Ptlも小さいため、負荷30を動作させることが可能な電圧範囲の最小値を、負荷要求電圧VHrqに設定することが好ましい。したがって、負荷電力PLが比較的小さい領域では、VHrq=VHminに設定される。
【0150】
図18に示されるように、負荷要求電圧VHrqと(Va+Vb)との差が大きい場合には、SDモードを強制的に適用することでコンバータ損失Pcvが減少しても、出力電圧VHが(Va+Vb)まで上昇することによる負荷損失Pldの上昇の方が大きくなることがある。この場合には、SDモードを強制的に適用すると、電源システム5の効率が低下してしまう。
【0151】
このように、VH≧VHrqの領域において、SDモードを選択した場合にトータル損失Ptlが最小となるか否かは、直流電源10a,10bの電圧の和(Va+Vb)および負荷30の状態によって変わることが理解される。したがって、本実施の形態による電源システムでは、(Va+Vb)および負荷状態に基づいて、SDモードを強制的に選択すべきか否かを判断する制御(以下、「SDモード選択制御」とも称する)を実行することとする。
【0152】
図19は、SDモードを選択したときにトータル損失が最小となる動作領域を説明するための概念図である。
【0153】
図19を参照して、横軸には負荷電力PLが示され、縦軸には電圧差ΔVHrqが示される。
【0154】
図20には、電圧差ΔVHrqの定義を説明するための概念図が示される。
図20を参照して、電圧差ΔVHrqは、直流電源10a,10bの出力電圧の和Va+Vbから負荷要求電圧VHrqを差引くことによって求められる。すなわち、ΔVHrq=(Va+Vb)−VHrqで示される。
【0155】
図19には、SDモードを選択したときに、トータル損失Ptlが最小となる動作点105がプロットされている。すなわち、
図19に示された各動作点105において、SDモードを選択したときのトータル損失Ptlが、他の動作モードを選択したときのトータル損失Ptlが小さいことを意味する。
【0156】
負荷電力PLが同一であっても、モータジェネレータ35の回転数およびトルクの組合せが変化すると、電源システム5での電力損失は異なる。このため、同一の負荷電力PLに対して、複数の動作点105が示されることになる。
【0157】
図19から理解されるように、負荷電力PLが小さい領域では、SDモードの適用が有利となるΔVHrqの領域が比較的狭くなっている。これは、
図18で説明したように、低負荷領域では、出力電圧VHが負荷要求電圧VHrq(VHmin)から離れることによって負荷損失Pldが増加するデメリットが、SDモードを選択することによってコンバータ損失Pcvが低減するメリットを上回る傾向にあるからである。
【0158】
これに対して、負荷電力PLが大きい領域では、
図17で説明したように、コンバータ損失Pcvの低減効果が拡大することから、電圧差ΔVHrqが大きい領域でも、SDモードを選択することによって、トータル損失Ptlを低下できていることが理解される。
【0159】
図19に示された動作点105の分布に従って、電圧差ΔVHrqおよび負荷電力PLの二次元平面上で、SDモードを強制的に選択することがシステム効率上で有利である動作領域を画定するための判定ライン107を予め定めることができる。
【0160】
これにより、電圧差ΔVHrqと、判定ライン107上の判定電圧との比較によって、SDモードを選択すべきか否かを判定可能であることが理解できる。言い換えると、判定電圧は、判定ライン107上において、負荷電力PLに対して一意に予め定めることができる。
【0161】
図21は、本実施の形態に従う電源システムにおけるSDモード選択制御のための制御構成を示す機能ブロック図である。なお、
図21を始めとする各機能ブロック図に記載された各機能ブロックは、制御装置40によるハードウェア処理および/またはソフトウェア処理によって実現されるものとする。
【0162】
図21を参照して、VHrq設定部500は、負荷30の動作状態および動作指令値に応じて、負荷要求電圧VHrqを設定する。
図2の構成例のように、負荷30がモータジェネレータ35を含む場合には、モータジェネレータ35の回転数およびトルク指令値に基づいて、負荷要求電圧VHrqを決定することができる。あるいは、負荷30の動作状態として、モータジェネレータ35が搭載された電動車両の動作状態(車速、アクセル開度等)を用いて負荷要求電圧VHrqを設定することも可能である。VHrq設定部500によって、「設定手段」の機能が実現される。
【0163】
上述のように、負荷要求電圧VHrqは、モータジェネレータ35がトルク指令値に従ったトルクを出力可能な出力電圧VHの最低電圧VHmin以上に設定される。さらに、負荷要求電圧VHrqは、VHrq≧VHminの範囲内で、モータジェネレータ35およびインバータ32での損失の和(負荷損失Pld)が最小となる領域に対応して設定することが好ましい。
【0164】
SDモード選択部510は、負荷状態と、負荷要求電圧VHrqと、電圧Va,Vbに基づいて、SD選択フラグFsdを生成する。負荷状態には、負荷電力指令値PL*が含まれる。負荷電力指令値PL*は、負荷30が動作指令に従って動作した場合の負荷電力PLに相当する。たとえば、負荷電力指令値PL*は、モータジェネレータ35の回転数およびトルク指令値から求めることができる。
【0165】
特性マップ520は、負荷電力PLと判定電圧Vtとの対応関係を記憶する。上述のように、判定電圧Vtは、
図19に示した、判定ライン107に従って設定することができる。
【0166】
SDモード選択部510は、電圧Va,Vbの和(Va+Vb)と、負荷要求電圧VHrqとを比較する。そして、SDモード選択部510は、Va+Vb>VHrqのときには、負荷電力指令値PL*に対応した判定電圧Vtを特性マップ520から読み出すとともに、電圧差ΔVHrq=(Va+Vb)−VHrqを演算する。
【0167】
SDモード選択部510は、さらに、電圧差ΔVHrqと、負荷電力に応じた判定電圧Vtとを比較して、ΔVHrq<Vtのときには、SD選択フラグFsdをオンする。
図19の特性に照らして、SDモードの選択によってVH=Va+Vbとしても、コンバータ損失Pcvの低下の効果が大きいためトータル損失Ptlが低減すると判断されるからである。
【0168】
一方、SDモード選択部510は、ΔVHrq≧Vtのときには、SD選択フラグFsdをオフする。SDモードの選択によって、VH=Va+Vbとすると、負荷損失Pldの増大の影響が大きく、トータル損失Ptlが増加すると判断されるからである。
【0169】
このように、電圧Va+Vbおよび負荷状態に応じて、SDモードの選択によって電源システム5のトータル損失Ptlを低下できるか否かを予測して、SDモードの選択を指定することができる。なお、負荷状態として、負荷電力PLに応じて、SDモード選択可否の判定値(判定電圧Vt)を設定する例を説明したが、負荷電力PLとは異なるパラメータに応じて、当該判定値を設定することも可能である。
【0170】
あるいは、モータジェネレータ35の動作状態(トルク,回転数等)ならびに出力電圧VHから負荷損失Pldを算出するための損失推定マップと、電力変換器50の動作状態(PH,Va,Vb,VH等)から動作モード毎のコンバータ損失Pcvを算出するための損失推定マップとを予め準備して、当該損失推定マップを用いて、SDモード選択部510によるSDモードの選択可否を判定することも可能である。たとえば、VH=Va+Vb(SDモード選択時)の場合および、VH=VHrq(aBモード、bBモードおよびPBモード選択時)の場合のそれぞれについて、損失推定マップを用いて負荷損失Pldおよびコンバータ損失Pcvの和としてトータル損失Ptlを推定するとともに、VH=Va+Vbとした方がトータル損失Ptlが低いときに、SD選択フラグFsdをオンすることができる。
【0171】
図22は、SDモード選択部510によってSDモードの選択が指示されたときの動作モード切換の好ましい態様を説明するため概念的な波形図である。
【0172】
図22を参照して、時刻t1以前においては、SD選択フラグFsdがオフされるような負荷状態であり、SDモード以外の動作モード、たとえば、PBモード、abモードまたはbBモードが選択されている。これらの動作モードの適用時には、出力電圧VHは、電圧指令値VH*に従って制御されている。
【0173】
時刻t1において、負荷30の動作状態に応じて、SDモード選択部510がSD選択フラグFsdをオンする。しかしながら、時刻t1の時点では、出力電圧VHと、(Va+Vb)との電圧差が大きい。したがって、この時点で直ちに動作モードをSDモードに切換えると、大きな電流が生じるおそれがある。
【0174】
したがって、時刻t1においてSD選択フラグFsdがオンされると、電圧指令値VH*は、徐々に(Va+Vb)に近づけるように変化される。これにより、出力電圧VHと(Va+Vb)との差が小さくなってから、時刻t2において、電圧制御可能な動作モードからSDモードへの切換えが実行される。
【0175】
図23は、SDモード選択部による選択結果を反映した動作モード選択のための制御構成を示す機能ブロック図である。
【0176】
図23を参照して、動作モード選択部600は、負荷状態、負荷要求電圧VHrqおよび、SD選択フラグFsdに基づいて、動作モードの選択結果を示すモード選択信号MDを生成する。
【0177】
動作モード選択部600は、VHrq設定部500(
図21)からの負荷要求電圧VHrqと、負荷状態(たとえば、負荷電力指令値PL*を含む)と、直流電源10a,10bの動作状態(電源状態)と、直流電源]10a,10bの状態(電源状態)と、SDモード選択部510からのSD選択フラグFsdとに基づいて動作モードを選択する。
【0178】
動作モード選択部600は、SD選択フラグFsdのオフ時には、負荷要求電圧VHrqが
図16に示した電圧範囲VR1〜VR3のいずれにあるかに応じて、電源システム5全体の効率が向上するように考慮して、動作モードを選択する。
【0179】
一方で、動作モード選択部600は、SD選択フラグFsdがオンされている場合には、現在の出力電圧VHと(Va+Vb)との差(|VH−(Va+Vb)|)が基準値Veよりも小さいことを条件に、SDモードを選択するようにモード選択信号MDを生成する。なお、基準値Veは、出力電圧VHと(Va+Vb)とが略等しいことを検出するためのものである。たとえば、SDモードへの移行によって出力電圧VHが変化しても、電力変換器50ないし負荷30内に過電流が生じないような電圧差に対応させて、基準値Veを設定することができる。
【0180】
電圧指令生成部610は、モード選択信号MD、負荷要求電圧VHrqおよびSD選択フラグFsdに基づいて、電圧指令値VH*を設定する。電圧指令生成部610は、動作モードに応じて電圧指令値VH*を設定する。基本的には、スイッチング制御による出力電圧制御が実行されるPBモード、SBモード、aBモードおよびbBモードでは、電圧指令値VH*は、負荷要求電圧VHrqに従って設定される。一方、SDモード、PDモード、aDモードおよびbBモードでは、
図3に示されるように、出力電圧VHは、電圧Vaおよび/またはVbによって一意的に決まる。したがって、これらの直結モードでは、電圧指令値VH*は、各モードでの電圧Vaおよび/またはVbに従った電圧値に設定することができる。
【0181】
さらに、電圧指令生成部610は、SDモード以外の動作モードが選択されている場合に、SD選択フラグFsdがオンされると、電圧指令値VH*を(Va+Vb)へ向けて徐々に変化させる。これにより、
図22の時刻t1〜t2間に示したように、SD選択フラグFsdのオンに応じて電圧指令値VH*が変化するのに応じて、出力電圧VHは(Va+Vb)へ向けて変化する。
【0182】
動作モード選択部600は、出力電圧VHが(Va+Vb)に近付いてから、動作モード選択部600は、電力変換器50の動作モードを、電圧制御可能な動作モード(PBモード、aBモードまたは、bBモード)からSDモードへ切換える。この結果、トータル損失Ptlを低減されるためのSDモードへの切換に際して、電力変換器50ないし負荷30に過大な電流が生じることを回避できる。
【0183】
以上説明したように、本実施の形態による電源システムによれば、負荷30の状態に応じて適切に、コンバータ損失Pcvの低減効果が大きいSDモードを選択することによって、トータル損失Ptlが最小となるように電力変換器50の動作モードを選択することができる。この結果、電源システム5に独特のSDモード(直列直結モード)を適切に活用して、電源システム5を高効率で動作させることが可能となる。
【0184】
[変形例]
上述のように、SDモードでは、電力変換器50の電力損失(コンバータ損失Pcv)が大幅に低減される一方で、直流電源10a,10bの電力を直接制御することができなくなる。したがって、電源システム5の効率面からはSDモードが選択されるべき場面であっても、直流電源10a,10bを保護する観点からは、SDモードの選択が不適当であるケースが考えられる。
【0185】
図24は、本実施の形態の変形例に従うSDモード選択制御を説明するための機能ブロック図である。
【0186】
図24を参照して、実施の形態の変形例に従うSDモード選択制御では、
図21に示した制御構成に対して、SDモード禁止部550がさらに設けられる。SDモード禁止部550は、負荷状態(負荷電力指令値PL*を含む)および電源状態に基づいて、SD禁止フラグPsdを生成する。
【0187】
なお、直流電源10a,10bの電源状態は、電圧Va,Vb(またはSOCa,SOCb)、ならびに、直流電源10a,10bの電力上限値Pamax,Pbmaxおよび電力下限値Pamin,Pbminを含む。
【0188】
電力上限値Pamax,Pbmaxは、直流電源10a,10bの放電電力の上限値をそれぞれ示しており、0または正に設定される。電力上限値=0に設定されたときは、直流電源からの放電が禁止されることを意味する。たとえば、電力上限値Pamaxは、直流電源10aの状態(SOCa、Ta,Ia,Va)に基づいて設定することができる。電力上限値Pbmaxについても、Pamaxと同様に、直流電源10bの状態(SOCb、Tb,Ib,Vb)に基づいて設定することができる。
【0189】
電力下限値Pamin,Pbminは、直流電源10a,10bの充電電力の上限値をそれぞれ示しており、0または負に設定される。電力下限値=0に設定されたときは、直流電源の充電が禁止されることを意味する。たとえば、電力下限値Paminは、直流電源10aの状態(SOCa,Ta,Ia,Va)に基づいて設定される。電力下限値Pbminについても、Paminと同様に、直流電源10bの状態(SOCb、Tb,Ib,Vb)に基づいて設定することができる。
【0190】
SDモード禁止部550がSD禁止フラグPsdをオンすると、SDモード選択部510は、負荷30の動作状態にかかわらず、SD選択フラグFsdをオフに維持する。すなわち、SDモードの選択が禁止される。
【0191】
図25は、SDモード禁止部550による制御処理を説明するためのフローチャートである。たとえば、
図25に示されたフローチャートに従う制御処理が制御装置40によって実行されることにより、
図24に示したSDモード禁止部550の機能が実現される。
【0192】
図25を参照して、制御装置40は、ステップS100により、負荷電力指令値PL*および直流電源10a,10bの電圧Va,Vbを読込む。そして、制御装置40は、SDモード選択時における直流電源10aの電力Pa(SD)および直流電源10bの電力Pb(SD)を算出する。Pa(SD)およびPb(SD)は、式(4)に基づいて、下記(5),(6)式に従って算出することができる。
【0193】
Pa(SD)=PL*・Va/(Va+Vb) …(5)
Pb(SD)=PL*・Vb/(Va+Vb) …(6)
制御装置40は、ステップS110では、ステップS100で算出されたPa(SD)が、直流電源10aの電力上限値Pamax〜電力下限値Paminの範囲内であるか否かを判定する。Pamin≦Pa(SD)≦Pamaxであるときには、S110がYES判定とされる一方で、そうでないときにはS110はNO判定とされる。
【0194】
制御装置40は、ステップS120では、ステップS100で算出されたPb(SD)が直流電源10bの電力上限値Pbmax〜電力下限値Pbminの範囲内であるか否かを判定する。Pbmin≦Pb(SD)≦Pbmaxであるときには、S120がYES判定とされる一方で、そうでないときにはS120はNO判定とされる。
【0195】
さらに、制御装置40は、ステップS130では、直流電源10a,10bのSOCa,SOCbの上下限マージンが十分であるかどうかを判定する。たとえば、上下限マージンは、SOCa,SOCbのそれぞれについての制御上限値および制御下限値と、現在のSOCa,SOCbとの差分が、所定の基準値よりも大きいか否かによって判定することができる。当該差分が基準値よりも大きいとS130はYES判定とされ、そうでないときには、S130はNO判定とされる。
【0196】
制御装置40は、ステップS110〜S130のすべてがYES判定であるときには、ステップS140に処理を進めてSD禁止フラグPsdをオフする。これにより、SDモード選択部510によるSDモードの選択が可能となる。
【0197】
これに対して、制御装置40は、ステップS110〜S130の少なくともいずれかがNO判定であるときには、ステップS150に処理を進めて、SD禁止フラグPsdをオンする。この場合には、SDモード選択部510におけるSDモードの選択が禁止されることになる。
【0198】
本実施の形態の変形例に従うSDモード選択制御によれば、直流電源10aまたは10bにおいて、充電電力もしくは放電電力が大きいとき、または、SOCが上昇もしくは低下したときには、高効率である一方で直流電源毎の電力を制御できないSDモードが選択されることを回避できる。これにより、電源システム5を高効率で動作させるための本実施の形態に従うSDモード選択制御を、直流電源10a,10bを適切に保護しながら実現することが可能となる。
【0199】
なお、本実施の形態では、2個の直流電源10a,10bと、共通の電力線20との間でDC/DC変換を実行する電力変換器50を例示したが、本発明の適用は、このような場合に限定されるものではない。たとえば、3個以上の直流電源と電力線との間に電力変換器が配置された電源システムの構成に対しても、3以上の複数個の直流電源のうちの、大容量の直流電源および小容量の直流電源との間での充放電によって、同様の電圧調整制御を適用することが可能である。
【0200】
電圧変換器の構成についても、SDモードと同様に、複数の直列電源が電力線に対して直列に接続される状態が維持される動作モードを有するとともに、当該動作モード以外において複数の直流電源の充放電を個別に制御可能であれば、電力変換器50とは異なる回路構成を適用することも可能である。
【0201】
さらに、負荷30は、電力変換器によって制御される直流電圧によって動作する機器であれば、任意の機器によって構成できる点について確認的に記載する。すなわち、本実施の形態では、電動車両の走行用電動機を含むように負荷30が構成される例を説明したが、本発明の適用はこのような負荷に限定されるものではない。
【0202】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。