特許第6181478号(P6181478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181478
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/12 20060101AFI20170807BHJP
   C08L 25/06 20060101ALI20170807BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20170807BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C08L71/12
   C08L25/06
   C08L23/08
   C08L53/02
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-178214(P2013-178214)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-44962(P2015-44962A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】坂田 稔
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−126515(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/161134(WO,A1)
【文献】 特開昭58−164634(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/129407(WO,A1)
【文献】 特開2008−274039(JP,A)
【文献】 特開2013−133384(JP,A)
【文献】 特開2013−040288(JP,A)
【文献】 特開2001−139798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂、又はポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン樹脂との混合樹脂:70〜96質量%と、
(b)エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体:40〜2質量%と、
(c)数平均分子量が6.2万以上であり、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体及び/又は当該ブロック共重合体の水添物:2〜20質量%と、
を、含み、
前記(c)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体及び/又は当該ブロック共重合体の水添物中の、芳香族ビニル化合物の結合量が、30〜50質量%であり、 前記ブロック共重合体中の共役ジエン化合物における全結合量に対して1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量の合計量が占める割合が20〜45%である、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記(b)エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体のMFR(ASTM−D3159)が、10〜40g/10分である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
縮合リン酸エステル系難燃剤を、さらに含有する、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、電気絶縁性に優れていることに加え、耐熱性、耐加水分解性及び難燃性が良好であることから、家電、OA機器、及び自動車部品等に使用されている。
また、近年においては、これら電気絶縁性、耐熱性、耐加水分解性、及び難燃性等の特性に加え、用途に応じて摺動性、耐薬品性、及び耐グリース性が要求されるようになってきている。
このような要求に応じて、従来においては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂を添加し、ポリフェニレンエーテル系樹脂に高い摺動性、耐薬品性、及び耐グリース性を付与した樹脂組成物が知られている。
しかし、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂はいずれも融点が低いことから、前記樹脂組成物は、加工性は優れているものの、十分な耐熱性が得られていないという問題を有している。
【0003】
従来においては、さらに、ポリフェニレンエーテル系樹脂にポリテトラフルオロエチレンを添加し、摺動性を付与した樹脂組成物についても開示がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
また、ポリテトラフルオロエチレンは、ポリフェニレンエーテル樹脂中に分散させることが困難であることから、これをフィブリル状にしてポリフェニレンエーテル樹脂中に分散させる技術についての開示もなされている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−235011号公報
【特許文献2】特開平11−5879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示されている技術のように、ポリフェニレンエーテル樹脂中にフィブリル状で分散したポリテトラフルオロエチレンからなる樹脂は流動性が極めて低く、加工性が悪いという問題を有している。
かかる問題を解決すべく、電子線により架橋させたポリテトラフルオロエチレンをポリフェニレンエーテル樹脂中に添加する方法についても検討がなされているが、非常にコスト高であるという問題を有している。
【0006】
上述したように、従来においては、ポリフェニレンエーテル系樹脂の耐熱性、加工性を維持しつつ、摺動性及び耐薬品性の改良に関して市場の要求するレベルを満足する樹脂組成物が得られていない。
【0007】
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑み、耐熱性、加工性に優れ、かつ摺動性、耐薬品性、及び耐衝撃性についても良好なポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリフェニレンエーテル系樹脂、又はポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン樹脂との混合樹脂に、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と、特定のブロック共重合体とを特定量含有させることにより、耐熱性、加工性を維持しつつ、摺動性、耐薬品性及び耐衝撃性に優れているポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0009】
〔1〕
(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂、又はポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン樹脂との混合樹脂:70〜96質量%と、
(b)エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体:40〜2質量%と、
(c)数平均分子量が6.2万以上であり、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体及び/又は当該ブロック共重合体の水添物:2〜20質量%と、
を、含み、
前記(c)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体及び/又は当該ブロック共重合体の水添物中の、芳香族ビニル化合物の結合量が、30〜50質量%であり、 前記ブロック共重合体中の共役ジエン化合物における全結合量に対して1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量の合計量が占める割合が20〜45%である、
樹脂組成物。
〔2〕
前記(b)エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体のMFR(ASTM−D3159)が、10〜40g/10分である、前記〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕
縮合リン酸エステル系難燃剤を、さらに含有する、前記〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた耐熱性、加工性を維持しつつ、摺動性、耐薬品性及び耐衝撃性にも優れているポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
〔樹脂組成物〕
本実施形態の樹脂組成物は、
(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂、又はポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン樹脂との混合樹脂:58〜96質量%と、
(b)エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体:40〜2質量%と、
(c)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体及び/又は当該ブロック共重合体の水添物:2〜20質量%と、
を、含む樹脂組成物である。
【0013】
以下、本実施形態の樹脂組成物の構成成分について説明する。
((a)ポリフェニレンエーテル系樹脂又はポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン樹脂との混合樹脂)
本実施形態の樹脂組成物は、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂又はポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン樹脂との混合樹脂を含有する(以下、(a)成分と記載する場合がある。)。
すなわち、本実施形態の樹脂組成物は、(a)成分として、ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下、PPEと記載する場合がある。)又はポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン樹脂との混合樹脂を含有する。
ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有することにより、本実施形態の樹脂組成物は、優れた難燃性、耐熱性を有する。
PPEは、下記(式1)で表される結合単位を含む。
PPEは、ホモ重合体であってもよく、共重合体であってもよい。
【0014】
【化1】
【0015】
前記(式1)中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ、水素、ハロゲン、炭素数1〜7までの第一級又は第二級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基又は少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択されるいずれかであり、互いに同一でも異なっていてもよい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、加工時の流動性、靭性及び耐薬品性の観点から、0.5g/dlの濃度のクロロホルム溶液を用いて、30℃の条件下で測定した還元粘度が、0.15〜2.0(dl/g)の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.20〜1.0(dl/g)の範囲であり、さらに好ましくは0.3〜0.7(dl/g)の範囲である。
【0016】
前記PPEとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。特に、樹脂組成物としたときの靭性と剛性のバランス、入手のし易さの観点から、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)がより好ましい。
【0017】
前記PPEは、公知の方法により製造することができる。
PPEの製造方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、米国特許第3306874号記載の第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合する方法、その他、米国特許第3306875号、同第3257357号、同第3257358号、特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報、及び同63−152628号公報等に記載されている方法が挙げられる。
【0018】
本実施形態においては、(a)成分として、ポリフェニレン系エーテル系樹脂にポリスチレン樹脂を混合した混合樹脂を用いることができる。
PPEにポリスチレン樹脂を添加することにより、耐熱性と流動性等を、添加量を変えるだけで設計できる効果が得られる。
ポリスチレン樹脂としては、以下に限定されるものではないが、スチレン系化合物の単独重合体、2種以上のスチレン系化合物の共重合体、及びこれらスチレン系化合物の重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体を粒子状に分散させたゴム変性スチレン樹脂等が挙げられる。
ポリスチレン樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン樹脂との混合樹脂において、PPE/ポリスチレン樹脂の構成比は、耐熱性と流動性の観点から、PPEとポリスチレン樹脂との合計を100質量%としたとき、ポリスチレン樹脂が1〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜90質量%、さらに好ましくは5〜85質量%、さらにより好ましくは10〜80質量%である。
【0019】
本実施形態の樹脂組成物における(a)成分の含有量は、難燃性、耐熱性の観点から58〜96質量%であり、好ましくは70〜96質量%、より好ましくは75〜96質量%である。
【0020】
((b)エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)
本実施形態の樹脂組成物は、(b)エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(以下、(b)成分と記載する場合がある。)を含有する。
本実施形態の樹脂組成物における(b)エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体の含有量は、優れた摺動性、耐薬品性を得る観点から、40〜2質量%であり、40〜5質量%であることが好ましく、35〜10質量%であることがより好ましい。
【0021】
(b)エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ダイキン工業(株)のネオフロン(登録商標)ETFE EP―506、旭硝子(株)のフルオンLM−ETFE(登録商標)LM−720AP、LM−730AP、LM−740APが挙げられる。
【0022】
(b)成分のMFR値は、10〜40g/10分が好ましく、より好ましくは13〜37g/10分であり、さらに好ましくは15〜35g/10分である。
(b)成分のMFR値が10〜40g/10分であると、(b)成分を樹脂組成物中に均一に、かつ微分散させることができる。このため、樹脂組成物の摺動性や耐薬品性を高めるために十分な量の(b)エチレン−テトラフロロエチレン共重合体を含有させても、良好な加工性が得られる。
(b)成分のMFR値は、後述する実施例に記載するように、ASTM−D3159に記載された方法により測定することができる。
【0023】
(b)成分のMFRを10〜40g/10分に調整するためには、例えば、(b)成分の分子量を制御したり、原料のエチレンとテトラフルオロエチレンの比を調整したりすることが有効である。
【0024】
((c)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体及び/又は当該ブロック共重合体の水添物)
本実施形態の樹脂組成物は、(c)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体及び/又は当該ブロック共重合体の水添物(以下、(c)ブロック共重合体、(c)成分と記載する場合がある。)を含有する。
(c)成分は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とを共重合して得られるブロック共重合体及び/又は当該ブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体である。
(c)成分は、上述した(a)成分と(b)成分との混和剤として機能し、かつ本実施形態の樹脂組成物に靱性を付与する観点から、大きな効果を奏する。
【0025】
(c)成分としては、芳香族ビニル化合物重合体ブロックをA、共役ジエン化合物重合体ブロックをBとした時、以下に限定されるものではないが、例えば、A−B、A−B−A、B−A−B−A、(A−B−)4−Si、A−B−A−B−A等の構造を有するブロック共重合体が挙げられる。なお当該ブロック共重合体の水添物も含む。
【0026】
(c)成分は、(a)成分と(b)成分の混和性の観点から芳香族ビニル化合物の結合量が、30〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜45質量%、さらに好ましくは30〜40質量%である。
(c)成分における芳香族ビニル化合物の結合量を、30〜50質量%に調整する方法としては、原料の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の比を調整する方法が挙げられる。
(c)成分中の芳香族ビニル化合物の結合量は、赤外分光光度計などにより測定することができる。
【0027】
なお、前記(c)成分を構成するブロック構造において、前記芳香族ビニル化合物重合体ブロックAとは、芳香族ビニル化合物のホモ重合体ブロック又は芳香族ビニル化合物を50質量%を超え、好ましくは70質量%以上含有する芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックである。
また、前記(c)成分を構成するブロック構造において、前記共役ジエン化合物重合体ブロックBとは、共役ジエン化合物のホモ重合体ブロック又は共役ジエン化合物を50質量%を超え、好ましくは70質量%以上含有する共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体ブロックである。
前記芳香族ビニル化合物重合体ブロックAと、前記共役ジエン化合物重合体ブロックBとが上記構造を有していることにより、本実施形態の樹脂組成物において、優れた混和性と靭性付与の効果が得られる。
これらの芳香族ビニル化合物重合体ブロックA、共役ジエン化合物重合体ブロックBは、それぞれの重合体ブロックにおける分子鎖中の共役ジエン化合物又は芳香族ビニル化合物の分布が、ランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加又は減少するもの)、一部ブロック状のいずれであってもよく、また、これらの任意の組み合わせであってもよい。前記芳香族ビニル化合物重合体ブロックA及び前記共役ジエン化合物重合体ブロックBが(c)成分中にそれぞれ2個以上ある場合は、各重合体ブロックはそれぞれ同一構造であってもよく、異なる構造であってもよい。
【0028】
(c)成分を構成する芳香族ビニル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレン、ジフェニルエチレン等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でもスチレンが好ましい。
(c)成分を構成する共役ジエン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。
【0029】
(c)成分中の共役ジエン化合物重合体ブロックBは、当該ブロックにおける結合形態のミクロ構造を任意に選択することができる。
共役ジエン化合物は、隣接するモノマーと1,2−ビニル結合、3,4−ビニル結合、または1,4−共役結合で結合しうる。従って、当該ブロックにおける1,2−ビニル結合量、3,4−ビニル結合量、及び1,4−共役結合量の合計量を全結合量とする。
このとき、混和性の観点から、共役ジエン化合物の全結合量に対して1,2−ビニル結合量及び3,4−ビニル結合量の合計量が占める割合は20〜45%であることが好ましく、より好ましくは25〜40%であり、さらに好ましくは30〜40%である。
例えば、(c)成分中にブタジエンを主体とする重合体ブロックを有する場合、当該ブタジエン部における全結合量に対して1,2−ビニル結合量が占める割合、さらに、(c)成分中にイソプレンを主体とする重合体ブロックを有する場合、当該イソプレン部における全結合量に対して1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量の合計量が占める割合が、20〜45%であることが好ましく、より好ましくは25〜45%、さらに好ましくは30〜40%である。
(c)成分における共役ジエン化合物の全結合量に対して1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量の合計量が占める割合を、上記数値範囲に調整する方法としては、重合条件の変更やビニル結合促進剤等の調整が挙げられる。
(c)成分中の共役ジエン化合物の全結合量に対する1,2−ビニル結合量、3,4−ビニル結合量が占める割合は、赤外分光光度計、核磁気共鳴装置(NMR)、赤外分光光度計などにより測定することができる。
【0030】
(c)成分の数平均分子量は、樹脂との混和と耐衝撃性付与の観点から、5,000〜1,000,000が好ましく、より好ましくは20,000〜500,000であり、さらに好ましくは30,000〜300,000である。
(c)成分の分子量分布〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定しポリスチレン換算した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比〕は、樹脂との混和と耐衝撃性付与の観点から10以下が好ましく、8以下がより好ましく、5以下がさらに好ましい。
【0031】
さらに、(c)成分の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状のいずれであってもよく、これらの任意の組み合わせであってもよい。
なお、(c)成分としてのブロック共重合体の水添物は、上述したブロック共重合体の共役ジエン化合物重合体ブロックBの脂肪族系二重結合に対して、水素添加反応を実施することにより得られる。
(c)成分としてのブロック共重合体の水添物における脂肪族系二重結合の水素添加率は、加工時の熱安定性や耐衝撃性の観点から、20%を超えることが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上である。
かかる水素添加率は、例えば核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて測定することができる。
【0032】
本実施形態の樹脂組成物における(c)成分の含有量は、混和性、耐衝撃性及び機械的物性の観点から、(a)〜(c)成分の合計を100質量%としたとき、2〜20質量%とし、より好ましくは5〜20質量%、さらに好ましくは5〜15質量%である。
【0033】
(c)成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)ブロック共重合体、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)ブロック共重合体等が挙げられ、さらに芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物としてはSEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)ブロック共重合体、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)ブロック共重合体が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
(縮合リン酸エステル系難燃剤)
本実施形態の樹脂組成物は、特に難燃性が必要な用途に適用する場合、(a)成分に、縮合リン酸エステル系難燃剤をさらに含有させることが好ましい。
この縮合燐酸エステル系難燃剤は、上述した(a)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂の助難燃効果と相まって、本実施形態の樹脂組成物に対する難燃性付与に大きな効果を奏する。
【0035】
縮合燐酸エステル系難燃剤は、例えば、下記一般式(式2)により表される燐酸エステル及び/又はその縮合物である。
【0036】
【化2】
【0037】
(式2)中、R11、R12、R13及びR14は、各々水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール置換アルキル基、アリール基、ハロゲン置換アリール基、及びアルキル置換アリール基からなる群より選ばれるいずれかを表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Xはアリーレン基を表す。
nは0〜5の整数である。
なお、異なるn値を有するリン酸エステルの縮合物である場合、前記nはそれらの平均値を表す。
【0038】
n=0である場合は、(式2)の化合物は、燐酸エステル単量体を示す。
代表的な燐酸エステル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート等が挙げられる。
縮合物としては、通常nは1〜5の値を取り得るが、好ましくは平均値で1〜3である。
また、樹脂に混練した時の難燃性、耐熱性の観点から、前記(式2)中、R11、R12、R13及びR14のうち少なくとも一つがアリール基であることが好ましく、より好ましくはR11、R12、R13及びR14の全てがアリール基である。
樹脂に混練した時の難燃性、耐熱性の観点から、好ましいアリール基としては、フェニル、キシレニル、クレジル又はこれらのハロゲン化誘導体が挙げられる。
また、好ましいXのアリーレン基としては、レゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビフェノール又はこれらのハロゲン化誘導体からそれぞれ2個の水酸基が脱離した残基が挙げられる。
代表的な縮合型の燐酸エステル化合物としては、以下に限定されるものではないが、レゾルシノール・ビスフェニルホスフェート化合物、ビスフェノールA−ポリフェニルホスフェート化合物、ビスフェノールA−ポリクレジルホスフェート化合物等が挙げられる。
【0039】
本実施形態の樹脂組成物における縮合燐酸エステル系難燃剤の含有量は、難燃性、耐熱性、機械的物性の観点から、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂と縮合燐酸エステル系難燃剤との合計を100質量%としたとき、40〜2質量%が好ましく、より好ましくは30〜2質量%であり、さらに好ましくは25〜2質量%である。この縮合燐酸エステル系難燃剤の含有量が2質量%以上であれば十分な難燃性を発揮させ易く、40質量%以下であれば耐熱性、耐衝撃性を悪化させない点で好ましい。
【0040】
(その他の成分)
本実施形態の樹脂組成物は、上述した成分の他に、樹脂組成物の摺動性又は耐薬品性を損なわない範囲で、必要に応じてその他の成分を含有してもよい。
このようなその他の成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酸化防止剤、金属不活性化剤、難燃剤(上述した縮合リン酸エステル系難燃剤以外の有機リン酸エステル系化合物、ポリリン酸アンモニウム系化合物、シリコーン系難燃剤等)、可塑剤(低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、耐候(光)性改良剤、スリップ剤、無機または有機の充填材や強化材(ポリアクリロニトリル繊維、アラミド繊維等)、各種着色剤、離型剤等が挙げられる。
【0041】
〔樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の樹脂組成物は、上述した(a)〜(c)成分、さらに必要に応じて縮合リン酸エステル系難燃剤、その他の成分を溶融混練することにより製造することができる。
溶融混練を行う溶融混練機としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機を含む多軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練機が挙げられるが、特に、混練性の観点から、二軸押出機が好ましい。具体的には、WERNER&PFLEIDERER社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズ等が挙げられる。
【0042】
押出機を用いた好ましい製造方法を以下に述べる。
押出機のL/D(バレル有効長/バレル内径)は、20以上60以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは30以上50以下である。
押出機は原料の流れ方向に対し、上流側に第1原料供給口、これより下流に第1真空ベント、その下流に第2原料供給口を設け(必要に応じて、さらに第3、第4原料供給口を設け)、さらにその下流に第2真空ベントを設けたものが好ましい。特に、第1真空ベントの上流にニーディングセクションを設け、第1真空ベントと第2原料供給口の間にニーディングセクションを設け、また第2〜第4原料供給口と第2真空ベントの間にニーディングセクションを設けたものがより好ましい。
【0043】
前記第2〜第4原料供給口への原材料供給方法は、特に限定されるものではないが、押出機第2〜第4原料供給口の開放口よりの単なる添加供給よりも、押出機サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて供給する方法が安定して供給できるため好ましい。
特に、原料に粉体が多く含まれ、樹脂の熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減したい場合は、押出機サイドから供給する強制サイドフィーダーを用いた方法がより好ましく、強制サイドフィーダーを第2〜第4原料供給口に設け、これら原料の粉体を分割して供給する方法がさらに好ましい。
また、液状の原材料を添加する場合は、プランジャーポンプ、ギアポンプ等を用いて押出機中に添加する方法が好ましい。
そして、押出機第2〜第4原料供給口の上部開放口は、同搬する空気を抜くため開放とすることもできる。
樹脂組成物の溶融混練工程における溶融混練温度、スクリュー回転数に関しては、特に限定されるものではないが、通常、溶融混練温度を260〜350℃とし、スクリュー回転数を100〜1200rpmとする。
【0044】
さらに、樹脂の酸素存在下における熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減化させる場合、各原材料の押出機への添加経路、具体的にはストックタンク→配管→リフィルタンクを保有した重量式フィーダー→配管→供給ホッパー→二軸押出機の個々の工程ラインの酸素濃度を1.0体積%未満に保持することが好ましい。このような低い酸素濃度を維持するために、不活性ガスを気密性を高めた個々の工程ラインに導入する方法が有効である。通常、窒素ガスを導入して酸素濃度1.0体積%未満に維持する。
【0045】
上述した樹脂組成物の製造方法は、パウダー状の(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を使用して本実施形態の樹脂組成物を、二軸押出機を用いて製造する際に、二軸押出機のスクリューにおける残留物を劇的に低減化する効果をもたらし、さらには上述した製造方法で得られた樹脂組成物において、黒点異物や炭化物等の発生を低減化する効果をもたらす。
【0046】
本実施形態の樹脂組成物の具体的な製造方法としては、各原料供給口の酸素濃度を1.0体積%未満に制御した押出機を用い、かつ下記1〜4の方法を実施することが好ましい。
1.上記した(a)成分及び(c)成分を溶融混練し、次いで(b)成分を供給し溶融混練を行う方法。
2.(a)成分を溶融混練し、次いで(b)成分及び(c)成分を添加し溶融混練を行う方法。
3.(a)成分及び(b)成分を溶融混練し、次いで(c)成分を添加し、溶融混練を行う方法。
4.(a)成分〜(c)成分の全量を溶融混練を行う方法。
特に、前記1の製造方法で得られる樹脂組成物は、上記2〜4の製造方法で得られる樹脂組成物と比較して、(a)成分〜(c)成分が各々優れた均一分散形態をとることができ、これらの配合効果を最も顕著に発現させ、樹脂の熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減化させることができ、摺動性、耐薬品性に優れた樹脂組成物が得られるため、より好ましい。
【0047】
〔成形品〕
本実施形態の樹脂組成物を成形することにより所望の成形品が得られる。
成形方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、射出成形、金属インモールド成形、アウトサート成形、押出成形、シート成形、フィルム成形、熱プレス成形、回転成形、積層成形等の成形方法が挙げられる。本実施形態の樹脂組成物の成形品は、光学機器機構部品、光源ランプ周り部品、金属フィルム積層基板用シート又はフィルム、ハードディスク内部部品、光ファイバー用コネクタフェルール、プリンター部品、コピー機部品、自動車ラジエタータンク部品等の自動車エンジンルーム内部品や自動車ランプ部品等の成形品として広く使用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
実施例及び比較例に用いた物性の測定方法を以下に示す。
((1)エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体のMFR)
ASTM−D3159に記載された方法により測定を行った。
((2)エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体の比重)
ISO−1183記載の方法で測定を行った。
((3)樹脂組成物のMFR)
JIS−K7210に準拠し、温度250℃、荷重98Nの条件でMFRを測定した。
((4)摩擦係数)
JIS K7139試験片を用いて、往復動摩擦摩耗試験機(東洋精密(株)製、商品名「AFT−15MS型」)により、荷重0.5kg、線速度60mm/sec、往復距離10mmの条件下、環境温度23℃で10000回の往復試験を行い、10000回目の摩擦係数を測定した。
相手材料としては、SUS球(SUS304、R=2.5mm)を用いた。
((5)耐薬品性)
JIS K7139試験片をベンディングバーに取り付け、0.3%のひずみを与えたまま試験片表面に商品名ダフニパンチオイル(出光興産(株)社製)をしみ込ませた布を接触させ、1時間後の試験片表面におけるクラックの発生状況を観察し、以下の基準で評価した。
<耐薬品性の評価基準>
1時間後に短冊が完全に破断した場合:×
1時間後の短冊の表面に微細のクラックが発生した場合:△
1時間後の短冊の表面にクラックが発生しなかった場合:○
((6)シャルピー衝撃強さ)
JIS K7111−1に準拠し測定した。
((7)荷重たわみ温度)
JIS K7191−1に準拠し測定した。
((8)難燃性(UL−94))
UL94(米国Under Writers Laboratories Incで定められた規格)の垂直燃焼試験方法に従って、1サンプル当たりそれぞれ5本ずつ試験を行った。
【0050】
実施例及び比較例に用いた原材料を以下に示す。
<(a)成分:ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン樹脂>
(a1):2,6−キシレノールを酸化重合して得た還元粘度0.55(dl/g)のPPE
(a2):ハイインパクトポリスチレン(PSジャパン社製 ポリスチレンH9405)/ポリスチレン(PSジャパン社製 ポリスチレン680)=15/20(質量比)のドライブレンド物
【0051】
芳香族縮合燐酸エステル(CR−741:大八化学工業(株)社製)
【0052】
<(b)成分のエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体>
(b1):エチレン−テトラフロロエチレン共重合体(商品名フルオン(登録商標)LM−720AP:旭硝子(株)社製)
(b2):エチレン−テトラフロロエチレン共重合体(商品名フルオン(登録商標)LM−730AP:旭硝子(株)社製)
(b3):エチレン−テトラフロロエチレン共重合体(商品名フルオン(登録商標)LM−740AP:旭硝子(株)社製)
(b4):エチレン−テトラフロロエチレン共重合体(商品名ネオフロン(登録商標)ETFE EP−610:ダイキン工業(株)社製)
(b5): エチレン−テトラフロロエチレン共重合体(商品名ネオフロン(登録商標)ETFE EP−546:ダイキン工業(株)社製)
【0053】
<(c)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物ブロック共重合体>
(c1):ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンのブロック構造を持ち、赤外分光光度計で測定した結合スチレン量が35%、赤外分光光度計で測定した1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が40%、数平均分子量が70000のブロック共重合体。
(c2):前記(c1)を水素添加したブロック共重合体で、ポリブタジエン部の水素添加率が99.3%の水添ブロック共重合体。
(c3):ポリスチレン−水素添加されたポリイソプレン−ポリスチレンのブロック構造を持ち、赤外分光光度計で測定した結合スチレン量が33%、赤外分光光度計で測定した水素添加前の1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が43%、数平均分子量が62000、ポリイソプレン部の水素添加率が98.1%の水添ブロック共重合体。
(c4):ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンのブロック構造を持ち、赤外分光光度計で測定した結合スチレン量が48%、赤外分光光度計で測定した1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が22%、数平均分子量が80000のブロック共重合体。
(c5):ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンのブロック構造を持ち、赤外分光光度計で測定した結合スチレン量が36%、赤外分光光度計で測定した1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が15%、数平均分子量が100000のブロック共重合体。
(c6):ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンのブロック構造を持ち、赤外分光光度計で測定した結合スチレン量が25%、赤外分光光度計で測定した水素添加前の1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が39%、数平均分子量が51000、ポリブタジエン部の水素添加率が99.2%の水添ブロック共重合体。
(c7):ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンのブロック構造を持ち、赤外分光光度計で測定した結合スチレン量が40%、赤外分光光度計で測定した水素添加前の1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が49%、数平均分子量が88000、ポリブタジエン部の水素添加率が99.3%の水添ブロック共重合体。
(c8):ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンのブロック構造を持ち、赤外分光光度計で測定した結合スチレン量が53%、赤外分光光度計で測定した水素添加前の1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が41%、数平均分子量が62000、ポリブタジエン部の水素添加率が99.4%の水添ブロック共重合体。
【0054】
<(d)その他成分>
(d1):低密度ポリエチレン(商品名サンテック(登録商標)LD M2004:旭化成ケミカルズ(株)社製)
(d2):高密度ポリエチレン(商品名サンテック(登録商標)HD F371 :旭化成ケミカルズ(株)社製)
(d3):ポリテトラフロロエチレン(商品名ポリフロン(登録商標)FA−500:ダイキン工業(株)社製)
【0055】
前記(b)成分の所定の特性を測定し、前記原材料を用いて実施例1〜20及び比較例1〜9の樹脂組成物を製造し、かつ特性評価を行った。
【0056】
〔実施例1〜8、参考例9〜13、実施例14、参考例15、実施例16〜20〕、〔比較例1〜9〕
はじめに、実施例1〜8、参考例9〜13、実施例14、参考例15、実施例16〜20、比較例4〜6、及び比較例8、9において用いた(b)成分であるエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体のMFR、及び比重を、上述した方法(1)、(2)の方法により測定した。
次に、二軸押出機ZSK−40(WERNER&PFLEIDERER社製)を用い、原料の流れ方向に対し、上流側に第1原料供給口、これより下流に第2原料供給口、及び第3原料供給口を設け、さらにその下流に真空ベントを設けた。
また、第2供給口への原材料供給は、押出機上部開放口からギアポンプを用いて行い、第3原料供給口への供給は、押出機サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて行った。 上記のように設定した押出機を用い、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン樹脂との混合樹脂、(b)エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、(c)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体又はその水添物を、下記表1〜表3に示す組成で配合し、押出温度250〜320℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量80kg/時間の条件にて溶融混練し、樹脂組成物のペレットを製造した。
前記ペレットを用いて前記樹脂組成物のMFRを(3)に示す方法により測定した。
さらに、この樹脂組成物のペレット、及び前記原料(b2)のそれぞれを用いて、220〜320℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度60〜90℃の条件でJIS K7152−1及びK7313−2に準拠し、引張強さ・引張伸び測定用のJIS K7139試験片を製造した。このJIS K7139試験片を用いて、前記(4)摩擦係数、及び前記(5)耐薬品性を測定した。
次に、JIS K7139試験片を製造し、シャルピー衝撃強度測定用試験片、荷重たわみ温度測定用試験片を得し、それぞれ(6)シャルピー衝撃強度、(7)荷重たわみ温度を測定した。
また、難燃性試験片としては、同上の射出成形条件にて長さ127mm、幅12.7mm、厚み1.6mmの試験片を成形し、UL94に準拠し、垂直燃焼試験を行い(8)難燃性(UL94)を評価した。
これらの測定及び評価結果を下記表1、表2及び表3に示した。
また、原料(b2)については、表2中に参考例1として特性を示した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
表1〜表3に示すように、実施例1〜20の樹脂組成物は、耐熱性、加工性に優れ、摺動性、耐薬品性及び耐衝撃性にも優れていることが分かった。さらに、難燃剤を添加した場合、難燃性も優れることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の樹脂組成物は、コンパクトディスク・リードオンリーメモリ(CD−ROM)、デジタルバーサタイルディスク・リードオンリーメモリ(DVD−ROM)、コンパクトディスク・レコーダブル(CD−R)、デジタルバーサタイルディスク・レコーダブル・−R規格(DVD−R)、デジタルバーサタイルディスク・レコーダブル・+R規格(DVD+R)、コンパクトディスク・リライタブル(CD−RW)、デジタルバーサタイルディスク・リライタブル・−R規格(DVD−RW)、デジタルバーサタイルディスク・リライタブル・+R規格(DVD+RW)、デジタルバーサタイルディスク・ランダムアクセスメモリ(DVD−RAM)等のシャーシーやキャビネット、光ピックアップスライドベース等の光学機器機構部品、光源ランプ周り部品、金属フィルム積層基板用シート又はフィルム、ハードディスク内部部品、光ファイバー用コネクタフェルール、レーザービームプリンター内部部品、インクジェットプリンター内部部品、コピー機内部部品、自動車ラジエタータンク部品等の自動車エンジンルーム内部品、自動車ランプ部品等の材料として、産業上の利用可能性を有している。