【文献】
P. P. Stang et al,Vector Iterative Pre-Distortion: An Auto-calibration Method for Transmit Arrays, Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med. 17,2009年 4月,#396
【文献】
M. G. Zanchi et al,Frequency Offset Cartesian Feedback Control System for MRI Power Amplifier,Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med. 17,2009年 4月,#399
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置および送信制御方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るMRI装置1のz構成例を示すブロック図である。
【0011】
静磁場磁石110は、中空の円筒形状に形成され、図示しない静磁場電源から供給される電流により内部の空間に一様な静磁場を発生する。例えば、静磁場磁石110は、永久磁石や超伝導磁石等により構成される。傾斜磁場コイル120は、中空の円筒形状に形成され、内部の空間に傾斜磁場を発生する。具体的には、傾斜磁場コイル120は、静磁場磁石110の内側に配置され、後述する傾斜磁場電源11から電流の供給を受けて傾斜磁場を発生する。
【0012】
RFコイル130は、静磁場磁石110の開口部内で被検体Pに対向するように配設された送受信兼用のコイルであり、送信部13からRFパルスの供給を受けてRF磁場を発生する。また、RFコイル130は、励起によって被検体Pの水素原子核から放出される磁気共鳴信号を受信して受信部14に与える。
【0013】
RFコイル130は、送信部13により制御されて、マルチチャンネルでRF磁場を発生させる。例えば、RFコイル130は、QD(Quadrature Detection)コイル、サドルコイル、バードケージ(Birdcage)コイル等である。以下の説明では、RFコイル130が4つの送信チャンネルCH1、CH2、CH3、CH4によってRF磁場を発生させる場合の例について示す。
【0014】
寝台装置141は、被検体Pが載置される天板142を有し、被検体Pが載置された天板142をRFコイル130の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台装置141は、長手方向が静磁場磁石110の中心軸と平行になるように設置される。
【0015】
傾斜磁場電源11は、傾斜磁場コイル120に電流を供給する。寝台制御部12は、後述する制御部260による制御のもと、寝台装置141を制御する装置であり、寝台装置141を駆動して、天板142を長手方向および上下方向に移動させる。
【0016】
計算機システム200は、MRI装置1の全体制御や、MR信号データの収集、画像再構成等を行う。
【0017】
インタフェース部210は、シーケンス制御部15との間で送受される各種信号の入出力を制御する。例えば、インタフェース部210は、シーケンス制御部15に対してシーケンス情報を送信し、シーケンス制御部15からMR信号データを受信する。また、インタフェース部210は、MR信号データを受信した場合に、受信したMR信号データを記憶部250に格納する。また、インタフェース部210は、送信部13からフィードバック情報を受信した場合に、受信したフィードバック情報を制御部260に入力する。
【0018】
入力部220は、操作者から各種操作や情報入力を受け付け、マウスやトラックボール等のポインティングデバイスやキーボード等を有し、表示部230と協働することによって、各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)をMRI装置1の操作者に対して提供する。表示部230は、後述する制御部260による制御のもと、画像データ等の各種の情報を表示する。表示部230としては、液晶表示器等の表示デバイスが利用可能である。
【0019】
画像再構成部240は、記憶部250に記憶されたMR信号データに対して、フーリエ変換等の再構成処理を行うことによってMRI画像を再構成し、再構成したMRI画像を記憶部250に格納する。
【0020】
記憶部250は、インタフェース部210により受信されたMR信号データや、画像再構成部240によって格納されるMRI画像や、MRI装置1において用いられるその他のデータを記憶する。また、本実施形態における記憶部250は、RFコイル130の送信チャンネルCH1に送信するRFパルスと送信チャンネルCH2に送信するRFパルスとの位相差や、双方のRFパルスのパワー(振幅)等に関する送信条件を記憶する。なお、記憶部250は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスクなどである。
【0021】
制御部260は、上述した各部を制御することによってMRI装置1を総括的に制御する。例えば、制御部260は、入力部220を介して操作者から入力される撮像条件に基づいてシーケンス実行データを生成し、生成したシーケンス実行データをシーケンス制御部15に送信することでMRI装置1によるスキャンを制御する。なお、制御部260は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などの電子回路である。
【0022】
図2は、送信部13、受信部14、複数の送信チャンネルCH1〜4および受信コイル16の関係の一例を示す説明図である。
【0023】
送信部13は、シーケンス制御部15により制御されて、ラーモア周波数に対応するRFパルスをRFコイル130に送信する。具体的には、送信部13は、振幅位相制御部31、RFアンプ32を有する。
【0024】
振幅位相制御部31は、送信パルス生成部33、および管理部34を有する。
【0025】
送信パルス生成部33は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部を有し、管理部34に制御されて各送信チャンネルCH1〜4に入力するためのRFパルスをチャンネルごとに振幅および位相を調整しつつ生成する。
【0026】
発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波信号を発生する。位相選択部は、発生した高周波信号の位相を選択する。周波数変換部は、位相選択部から出力された高周波信号の周波数を変換する。振幅変調部は、周波数変換部から出力された高周波信号の振幅を例えばsinc関数に従って変調する。振幅変調部から出力された高周波信号は、RFアンプ32により増幅される。
【0027】
管理部34は、送信パルス生成部33を制御することにより送信チャンネルのそれぞれについて独立に振幅および位相を制御する。
【0028】
具体的には、管理部34は、受信部14から受けた各送信チャンネルに対応するRF磁場の振幅の測定結果にもとづいて、目標の振幅を有するRF磁場が放射されるよう各送信チャンネルに入力するRFパルスの振幅を制御する。また、管理部34は、受信部14から受けたRF磁場の位相の測定結果にもとづいて送信チャンネル間の位相差を求める。そして、送信パルス生成部33を制御することにより、求めた送信チャンネル間の位相差にもとづいて、送信チャンネル間のRF磁場の位相差が目標の位相差となるよう各送信チャンネルに入力するRFパルスの位相を制御する。
【0029】
たとえば、送信チャンネルCH1とCH2との間に30度の位相差を設ける場合を考える。まず、管理部34は、送信チャンネルCH1に対して適当なRFパルスを入力して受信部14からこのRFパルスに対応するRF磁場の位相の測定結果を受ける。次に、管理部34は、送信チャンネルCH2に対して送信チャンネルCH1とは30度位相がずれたRFパルスを入力して受信部14からこのRFパルスに対応するRF磁場の位相の測定結果を受ける。
【0030】
そして、管理部34は、測定されたRF磁場の位相差を求め、測定されたRF磁場の位相差と所望した位相差30度との差に応じて、測定されるRF磁場の位相差が30度に近づくよう送信チャンネルCH2に対して入力するRFパルスの位相を調整する。
【0031】
受信部14は、受信コイル16により検出されたRF磁場にもとづいてMR信号データを生成するMR信号生成部を有し、生成したMR信号データをシーケンス制御部15を介して計算機システム200に送信する。
【0032】
受信コイル16は、送信チャンネルに対するRFパルスの入力と同時に受信を行う。送信コイルによるRF磁場強度は、受信コイル16で直接受信するには大きすぎる場合がある。このため、管理部34は、受信コイル16の破損を防ぐよう、受信コイル16をデカップリング(非常に弱いカップリング)状態にする。弱いカップリング状態であっても、受信コイル16はRF磁場を受けてわずかながらRF磁場に応じた出力を行う。このわずかな出力を用いて、受信部14はRF磁場の振幅と位相の測定を行う。
【0033】
なお、受信コイル16は送信チャンネルに対するRFパルスの入力と同時に受信を行うため、受信専用に用いられるコイルが好ましい。すなわち、RFパルスが入力される送信コイルが本実施形態に係る受信コイルを兼用することは好ましいとは言えないが、RFパルスが入力されない送信受信兼用コイルを本実施形態に係る受信コイルとして用いることには問題はない。また、送信チャンネルに対するRFパルスの入力と同時に受信を行う受信コイル16は、被検体Pに配置するとよい。
【0034】
図3は、フェーズドアレイコイル161aおよび162aの一構成例を示す図である。
図3には被検体Pに2つのフェーズドアレイコイル161aおよび161bが配置される場合の例について示した。
【0035】
送信チャンネルに対するRFパルスの入力と同時に受信を行う受信コイル16としては、たとえば被検体Pに配置されたフェーズドアレイコイル161aまたは162aをなす複数のコイル要素161bまたは162bの一部または全部を用いることができる。
【0036】
図3に示す例では、フェーズドアレイコイル161aおよび162aはそれぞれ、4×4の16個のコイル要素161bおよび162bにより構成される。以下の説明では、送信チャンネルに対するRFパルスの入力と同時に受信を行う受信コイル16としてフェーズドアレイコイル161aをなす複数のコイル要素161bの一部を用いる場合の例について説明する。また、被検体Pの幅方向に並ぶ4個のコイル要素161bにより構成される組は、それぞれコイルセクションSct11、Sct12、Sct13、Sct14と呼ぶものとする。
【0037】
受信コイル16は、コイル要素単位や、コイルセクション単位、または受信チャンネル単位でユーザによりまたは自動的に設定される。ここで、各コイル要素の出力は同相合成、反相合成、QD合成、アンチQD合成などの分配合成を施され、これらの分配合成出力はそれぞれ異なる受信チャンネルに接続されているものとする。具体的には、受信部14の図示しない分配合成部が、コイル要素161bおよび162bやRFコイル130から受けたMR信号の合成処理および切換を行って対応する受信系回路(受信チャンネル)に出力する。すなわち、受信部14は、所望の複数のコイル要素161bおよび162bを用いて撮影部位に応じた感度分布を形成して様々な撮影部位からのMR信号を受信できるように構成されている。
【0038】
フェーズドアレイコイルを用いる場合、画像化のためのMRデータを受信するコイル(以下、適宜画像化用コイルという)と、送信チャンネルに対するRFパルスの入力と同時に受信を行う受信コイル16(以下、適宜振幅位相測定用コイルという)とは、同一であってもよいし異なっていてもよい。また、フェーズドアレイコイルを用いる場合、画像化用コイルおよび振幅位相測定用コイルの少なくとも一方をユーザによって入力部220を介して選択されてもよい。
【0039】
以下の説明では、受信コイル16とは、厳密には振幅位相測定用コイルを指すものとする。当然ながら、画像化用コイルと振幅位相測定用コイルが同一である場合には、受信コイル16は画像化用コイルを兼ねる。
【0040】
いま、画像化用コイルとして、ユーザが入力部220を介してセクションSct12およびSct13を設定した場合の例について考える。もちろん、このときユーザは受信チャンネルを選択することにより画像化用コイルを選択してもよい。この例では、振幅位相制御部31は、このセクションSct12およびSct13を受信コイル16(振幅位相測定用コイル)として設定してもよい。また、画像化用コイルは、ユーザにより設定された撮影対象部位に応じて自動設定されてもよい。
【0041】
また、画像化用コイルと振幅位相測定用コイルとは異なっていてもよく、この例では、振幅位相制御部31は振幅位相測定用コイルとして、たとえば同一フェーズドアレイコイル161aの他のセクションSct11およびSct14を自動設定してもよいし、画像化用コイルと一部重複するようにたとえばセクションSct11およびSct12を自動設定してもよいし、全部重複するようにセクションSct11、12、13および14を自動設定してもよい。また、この例において、受信コイル16(振幅位相測定用コイル)は、自動設定されるのではなくユーザによってさらに入力部220を介して手動設定されてもよい。
【0042】
一方、ユーザによって受信コイル16(振幅位相測定用コイル)のみが設定されてもよい。たとえばユーザによって入力部220を介してセクションSct12およびSct13が受信コイル16(振幅位相測定用コイル)として設定されるとともに画像化用コイルが設定されない場合、振幅位相制御部31は画像化用コイルとして、振幅位相測定用コイルと同一のセクションSct12およびSct13を画像化用コイルとして設定してもよいし、上記例と同様に振幅位相測定用コイルと一部または全部重複するように設定してもよい。
【0043】
また、受信部14は、受信コイル16により検出されたRF磁場の振幅および位相を測定し、振幅位相制御部31に与える。
【0044】
具体的には、受信部14は、MR信号処理部41を有する。MR信号処理部41は、MR信号生成部のほか、検波用信号生成部42、ミキサ43および振幅位相測定部44を有する。
【0045】
図4は、受信部14により測定されるRF磁場の位相に含まれる成分について説明するための概念図である。
【0046】
検波用信号生成部42は、送信パルス生成部33により生成されるRFパルスの位相成分Φtxと同一の位相成分を有するよう、検波用ローカル信号Φloを生成する。
【0047】
ミキサ43は、受信コイル16により検出されたある送信チャンネルに入力されたRFパルスΦtxに応じたRF磁場と、検波用ローカル信号との差分を出力する。
【0048】
振幅位相測定部44は、管理部34に制御されて、受信コイル16により検出されたRF磁場の振幅および位相を測定し、振幅位相制御部31に与える。
【0049】
振幅位相制御部31の管理部34は、振幅位相測定部44から受けた各送信チャンネルの振幅および位相にもとづいて、各送信チャンネルから放射されるRF磁場の振幅が送信チャンネルごとに目標の振幅となるように、かつ送信チャンネル間の位相差が目標の位相差となるように、各送信チャンネルに入力するRFパルスの振幅および位相を制御する。
【0050】
また、振幅位相制御部31およびMR信号処理部41は、RFパルスの振幅および位相の制御およびRF磁場の振幅および位相の測定を被検体Pのプリスキャン中または本スキャン中に行なってもよいほか、MRI装置1の据付時に行なってもよいし、定期点検時や保守作業時に行なってもよい。プリスキャン中または本スキャン中に行う場合は、送信部13からRFコイル130に送信されるRFパルスの位相差を動的に補正してもよい。また、測定された送信チャンネルごとの振幅や位相を表示部230に表示させることによりユーザに現状を容易に把握させることができるとともに、ユーザによる入力部220を介した振幅や位相の指示を支援することができる。
【0051】
なお、目標の振幅および目標の位相差は、振幅位相制御部31の図示しない記憶部や計算機システム200の記憶部250にあらかじめ記憶されたものを用いてもよいし、入力部220を介してユーザから指定されてもよいし、ネットワークを介して与えられてもよい。
【0052】
また、管理部34は、振幅と位相の測定の再現性を保持するため、複数の送信チャンネルのそれぞれについて高周波磁場の放射時刻と受信コイル16を介した高周波磁場の計測時刻との差の時間が同一となるよう、複数の送信チャンネルのそれぞれに高周波パルスを入力する時刻およびMR信号処理部41による位相測定時刻とを制御する。検波用ローカル信号Φloは、送信パルス生成部33により生成されるRFパルスの位相成分Φtxと同一の位相成分を有する。このため、振幅位相測定部44による測定時に生じるオフセットを測定間で同じにすることができ、測定の再現性を保持することができる。
【0053】
したがって、たとえば最初に送信チャンネルCH1の測定を行い、次にCH2の測定を行うといったように、送信チャンネルごとに別々のタイミングで測定を行なう場合であっても、測定間のデータを比較することが可能となる。
【0054】
図4に示すように、受信コイル16により検出されるRF磁場の位相は、送信チャンネルに入力されたRFパルスの位相Φtxに対し、送信コイルおよびRF信号の伝送経路による位相ずれΦcoilと、被検体Pの存在によるインピーダンス変化に応じた位相ずれΦkと、その他の位相ずれΦ0と、が加わったものである。
【0055】
したがって、
図4に示すようにミキサ43から出力される信号の位相はΦcoil+Φk+一定であり、送信コイル、送信信号伝送経路、被検体Pのインピーダンスを全て反映したものとなる。
【0056】
また、MR信号処理部41は、MR信号データを生成するMR信号生成部を有し、生成したMR信号データをシーケンス制御部15を介して計算機システム200に送信する。なお、受信部14は、静磁場磁石110や傾斜磁場コイル120などを備える架台装置側に備えられていてもよい。
【0057】
なお、送信部13の管理部34や振幅位相測定部44などの機能は、コンピュータのROMなどの記憶媒体に記憶された送信制御プログラムに従ってコンピュータのCPUにより実現されてもよい。この場合、コンピュータとして計算機システム200を用い、コンピュータのCPUとして制御部260を用いてもよい。
【0058】
シーケンス制御部15は、計算機システム200から送信されるシーケンス情報にもとづいて傾斜磁場電源11、送信部13および受信部14を駆動することで、被検体Pのスキャンを行う。そして、シーケンス制御部15は、傾斜磁場電源11、送信部13および受信部14を駆動して被検体Pをスキャンした結果、受信部14からMR信号データが送信されると、このMR信号データを計算機システム200へ転送する。
【0059】
なお、シーケンス情報とは、傾斜磁場電源11が傾斜磁場コイル120に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部13がRFコイル130に送信する高周波信号の強さや高周波信号を送信するタイミング、受信部14がMR信号を検出するタイミング等、スキャンを行うための手順を時系列に沿って定義した情報である。
【0060】
また、送信部13によって送信されるRFパルスの振幅および位相は、計算機システム200によって制御されてもよい。この場合、計算機システム200の制御部260が送信制御プログラムに従って少なくとも管理部34および振幅位相測定部44として機能する。たとえば、被検体Pのプリスキャン中または本スキャン中に、送信部13からRFコイル130に送信されるRFパルスの位相差を動的に補正する場合、送信部13によって送信されるRFパルスの振幅および位相は、シーケンス制御部15を介して計算機システム200によって制御されてもよい。
【0061】
次に、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1および送信制御方法の動作の一例について説明する。
【0062】
振幅位相制御部31によるRFパルスの振幅および位相の補正は、プレスキャンや本スキャンとは別に行ってもよいし、プレスキャン中や本スキャン中に行ってもよい。まず、RFパルスの振幅および位相の補正をプレスキャンや本スキャンとは別に行う場合の手順の一例について説明する。
【0063】
図5は、振幅位相測定にもとづくRFパルスの振幅および位相の補正をプレスキャンや本スキャンとは別に行う場合の手順の一例を示すフローチャートである。
【0064】
プレスキャンや本スキャンの実行前にRFパルスの振幅および位相の補正を行う場合は、たとえば
図5に示すように、事前にプレスキャンとして振幅位相測定を行なうことで各送信チャンネルに入力されるRFパルスを目標の振幅および位相としておく。たとえば、送信チャンネル間の振幅差、位相差が重要となるプレスキャン(たとえばRFパワー(RFレベル、以下RFLという)の測定など)を行う場合は、このRFL測定用のプレスキャンの事前に、プレスキャンとして振幅位相測定を行なっておくことで各送信チャンネルに入力されるRFパルスを目標の振幅および位相としておくことが望ましい。
【0065】
図5に示す手順は、ユーザにより入力部220を介してプレスキャンまたは本スキャンの実行開始指示を受けてスタートとなる。また、以下の説明では受信コイル16がフェーズドアレイコイル161aをなす複数のコイル要素161bの一部により構成される場合の例について示す。
【0066】
まず、ステップS1において、振幅位相制御部31は、ユーザから入力部220を介して指示されてまたは実行開始指示を受けたスキャンの内容に応じて、受信コイル16を設定する。また、実行開始指示を受けたスキャンが本スキャンなどの画像生成を伴うスキャンである場合には、振幅位相制御部31はユーザにより入力部220を介して指示されてまたは実行開始指示を受けたスキャンの内容に応じて、画像化用コイルを受信コイル16と同一または異なるコイルに設定する。
【0067】
次に、ステップS2において、プレスキャンとして振幅位相測定を行う。具体的には、振幅位相制御部31が、各送信チャンネルに対して所定の振幅および位相を有するRFパルスを入力する。受信コイル16はデカップリング状態でこのRFパルスに応じたRF磁場を検知し、検知したRF磁場に応じた信号を出力する。そして、MR信号処理部41は、受信コイル16の出力にもとづいて振幅および位相を測定する。なお、この測定は送信チャンネルごとに順番に行うとよい。
【0068】
つぎに、振幅位相制御部31は、振幅および位相の測定結果にもとづいて、送信チャンネル間の位相差が目標の位相差に近づくよう、RFパルスの振幅および位相を補正する(ステップS3)。この結果、振幅位相制御部31から各送信チャンネルに入力されるRFパルスは、対応するRF磁場の振幅および位相差が目標の値に近づくよう補正されたものとなる。
【0069】
次に、ステップS4において、振幅位相制御部31は、RFL測定を実行すべきか否かを判定する。はじめてステップS3を実行する場合、この判定は手順のスタート時に受けた実行開始指示の内容にもとづいて行われる。また、ステップS9から戻ってきた場合、この判定はステップS9における補正指示の内容にもとづいて行われる。なお、いずれの場合であっても、あらかじめステップS3の実行後にはRFL測定用プレスキャンを実行すべき旨が設定されていた場合など、RFL測定用プレスキャンを実行すべき場合はステップS5に進む。一方、RFL測定用プレスキャンを実行せずともよい場合はステップS7に進む。
【0070】
次に、ステップS5において、シーケンス制御部15は、送信チャンネル間の振幅差、位相差が重要となるプレスキャン(たとえばRFL測定)を行う。
【0071】
このように、送信チャンネル間の振幅差、位相差が重要となるプレスキャンを行う場合、その前にRFパルスの振幅および位相の測定をプレスキャンとして組み込んでおけば、RFパルスの振幅および位相を補正しておくことで、より正確なプレスキャン結果を得ることができる。
【0072】
次に、ステップS6において、シーケンス制御部15は、手順のスタート時に受けた実行開始指示の内容にもとづいて本スキャンを実行すべきか否かを判定する。本スキャンを実行する場合はステップS8に進む。一方、本スキャンを実行せずともよい場合はステップS9に進む。
【0073】
他方、ステップS4でRFL測定用プレスキャンを実行せずともよいと判定されると、ステップS7において、シーケンス制御部15は、手順のスタート時に受けた実行開始指示の内容にもとづいて本スキャンを実行すべきか否かを判定する。本スキャンを実行する場合はステップS8に進む。一方、本スキャンを実行せずともよい場合はステップS9に進む。
【0074】
次に、ステップS8において、シーケンス制御部15は、ステップS1で振幅位相制御部31により設定された画像化用コイルを用い、ステップS3で振幅および位相を補正されたRFパルスを各送信チャンネルに入力して本スキャンを実行する。
【0075】
次に、ステップS9において、制御部260は、ユーザにより再度各送信チャンネルに入力されるRFパルスの振幅および位相を補正すべき旨の指示があったか、または続けてスキャンを実行すべき指示がありかつB1の変動要因があったか否かを判定する。B1の変動要因とは、たとえば続けて実行されるスキャンにおいて設定されたRF磁場の振幅または位相の設定値(目標値)が現在と異なる値に変更されることのほか、コイルの変更や撮影対象部位の変更などがあげられる。
【0076】
ユーザにより再度各送信チャンネルに入力されるRFパルスの振幅および位相を補正すべき旨の指示があったか、または続けてスキャンを実行すべき指示がありかつB1の変動要因があった場合は、ステップS2に戻る。一方、ユーザにより再度各送信チャンネルに入力されるRFパルスの振幅および位相を補正すべき旨の指示がなく、かつ、続けてスキャンを実行すべき指示がないまたはB1の変動要因がない場合は、一連の手順は終了となる。
【0077】
なお、ユーザにより再度各送信チャンネルに入力されるRFパルスの振幅および位相を補正すべき旨の指示があってステップS9からステップS2に戻った場合であってB1変動要因があった場合には、RFレベルも変化していることが多いためRFL測定用プレスキャン(ステップS5)を実行することが好ましい。
【0078】
以上の手順により、補正したRFパルスの振幅および位相の補正を用いてプレスキャンや本スキャンを行うことができる。
【0079】
なお、ステップS2で測定用に送信チャンネルに与えられるRFパルスは、連続波または矩形波を用いるとよい。連続波または矩形波を用いてk空間を一様の周波数、位相で埋めることにより短時間の測定で精度を上げることができる。
【0080】
なお、ステップS9からステップS2に戻った場合であって、B1磁場に係る諸条件に変更がない場合には(たとえばユーザにより再度各送信チャンネルに入力されるRFパルスの振幅および位相を補正すべき旨の指示があった場合など)、ステップS2の振幅位相測定結果は補正後のRFパルスの振幅および位相により生成されるRF磁場の検証目的に用いることができる。したがって、ステップS9でNOと判定された場合であっても、補正後のRFパルスの振幅および位相により生成されるRF磁場を観測する目的でステップS2の振幅位相測定を実行してもよい。
【0081】
続いて、RFパルスの振幅および位相の補正をプレスキャン中や本スキャン中に行う場合の手順の一例について説明する。
【0082】
図6は、本スキャン中に振幅位相測定を行う場合の手順の一例を示すタイミングチャートである。
【0083】
RF磁場が照射されると、受信コイル16はデカップリング状態でこのRF磁場に応じた信号を出力する。MR信号処理部41はこの受信コイル16の出力に応じてRF磁場の振幅および位相を測定し、振幅位相制御部31に与える。
【0084】
その後、受信コイル16は管理部34により制御されてカップリング状態に移行し、被検体Pからの受信エコーを受信する。MR信号処理部41はこの受信コイル16に受信された受信エコーに応じてMR信号を生成する。
【0085】
図6に示すように、本スキャン中やプレスキャン中であっても、RF磁場の送信と同時に直接にRF磁場を受信コイル16(ただしデカップリングモードであることが好ましい)で受信することにより、通常の受信エコーデータの収集と振幅位相測定とを共存させることができる。
【0086】
本実施形態に係るMRI装置1は、複数の送信チャンネルを有し、ピックアップコイルを用いることなく、すなわち従来のMRI装置と同様のハードウエア構成により、正確に各送信チャンネルに入力されるRFパルスの振幅および位相を調整することができる。このため、各送信チャンネルから放射されるRF磁場(B1)を最適化することができる。
【0087】
また、MRI装置1によれば、RFパルスの信号伝送経路全体による影響や被検体Pによる影響を考慮してRFパルスの振幅および位相を調整することができる。
【0088】
また、簡便に振幅位相測定および制御を行うことができるため、装置の経時的な劣化にともなう影響による位相ずれ等であっても、簡単に補正することができる。したがって、たとえば1年ごとの定期点検時に本実施形態に係る振幅位相測定および制御を行うことで、経時的な劣化による影響を極めて容易かつ的確に補正することができる。
【0089】
また、各送信チャンネルから放射されるRF磁場の振幅および位相を測定して補正することができるため、位相ずれを防ぐための精密なコイル調整を必要としない。
【0090】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。