(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の統合アンテナ装置においては、複数のアンテナが互いに近接している場合、良好なアイソレーション特性を得ることができなくなる虞がある。したがって、従来の統合アンテナ装置では、良好なアイソレーション特性を得るためには、複数のアンテナを互いに離間させる必要がある。このため、従来の統合アンテナ装置では、良好なアイソレーション特性を得つつ、統合アンテナ装置を小型化することは困難であった。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好なアイソレーション特性を得ることが可能な、小型の統合アンテナを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るアンテナ装置は、ベースと、前記ベースをグラウンドとして使用する逆Fアンテナであって、前記ベースの表面と対向する平面上に放射素子を有する第1のアンテナと、前記第1のアンテナの放射素子と同一面上に放射素子を有する第2のアンテナと、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間において、前記ベースの表面に立設された第1の遮蔽板と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、第1のアンテナと第2のアンテナとの間において、第1のアンテナから第2のアンテナ方向に放射された電波を、第1の遮蔽板によって遮蔽することができる。特に、第1のアンテナと第2のアンテナとの間の隙間に、遮蔽板を立設させる構成を採用しているため、第1のアンテナと第2のアンテナとの間隔を広げることなく、第2のアンテナに対する第1のアンテナの放射の影響を抑制することができる。すなわち、上記構成によれば、統合アンテナを大型化することなく、良好なアイソレーション特性を得ることができる。さらに、上記構成によれば、第1の遮蔽板を設けるだけといった簡単な構成により、比較的低コストで、上記第1のアンテナの放射の影響を抑制することができる。
【0008】
上記アンテナ装置において、前記第2のアンテナは、円偏波受信用アンテナであり、前記アンテナ装置は、前記ベースの表面に立設された第2の遮蔽板をさらに備え、前記第1の遮蔽板および前記第2の遮蔽板は、前記第2のアンテナを間に挟んで、互いに対称的な位置に配置されていることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、第2のアンテナの周囲において、第1の遮蔽板と第2の遮蔽板とが互いに対称的に配置されるため、第2のアンテナにおける放射パターンの偏り(最大利得方向の傾き)を抑制することができる。特に、円偏波受信用アンテナは、地平面に対して垂直な方向に最大利得が得られることが好ましいとされるため、このような放射パターンの偏りを抑制する構成が有用である。
【0010】
上記アンテナ装置において、前記第1のアンテナの放射素子および前記第2のアンテナの放射素子と同一面上に放射素子を有する第3のアンテナをさらに備え、前記第2の遮蔽板は、前記第2のアンテナと前記第3のアンテナとの間において、前記ベースの表面に立設されていることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、さらに、第3のアンテナを実装しつつ、第3のアンテナの放射による影響(または、第3のアンテナに対する放射の影響)を抑制することができる。
【0012】
上記アンテナ装置において、前記第1の遮蔽板の上端部の高さ位置は、前記第1のアンテナの放射素子および前記第2のアンテナの放射素子との同一面の高さ以上であることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、第1のアンテナから第2のアンテナ方向に放射された電波の遮蔽度を高めることができるため、第2のアンテナに対する第1のアンテナの放射の影響の抑制効果を高めることができる。
【0014】
上記アンテナ装置において、前記第1の遮蔽板には、前記ベースの表面と交わる方向に切り欠かれたスリットが、前記ベースの表面に沿って複数並べて形成されていてもよい。
【0015】
上記構成によれば、特定の周波数帯域における、第1のアンテナの送信波が第2のアンテナに及ぼす影響(アイソレーション特性)を、より良好なものへと調整することができる。特に、各スリットの幅、および、隣り合うスリットの間隔を適切に調整することにより、第2のアンテナの動作帯域におけるアイソレーション特性を、より良好なものへと調整することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、良好なアイソレーション特性を得ることが可能な、小型の統合アンテナを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置について説明する。なお、本書において、「水平」(または「平行」)との表現は、対象物に対して概ね水平(または平行)であればよく、少なくとも対象物に沿っていればよいことを意図したものであり、したがって、厳密な水平(または「平行」)状態から多少の傾きを有していたとしても、「水平」(または「平行」)の概念に含まれる。同様に、「垂直」との表現は、対象物に対して概ね垂直であればよく、少なくとも対象物と交わる方向に沿っていればよいことを意図したものであり、したがって、厳密な垂直状態から多少の傾きを有していたとしても、「垂直」の概念に含まれる。さらに、本書において、「同一」との表現は、対象物に対して概ね同一であればよく、したがって、厳密に同一な状態から多少のズレが生じていたとしても、「同一」の概念に含まれる。
【0019】
〔第1実施形態〕
初めに、
図1〜
図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る統合アンテナ装置100Aについて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る統合アンテナ装置100Aの構成を示す外観斜視図である。
図2は、
図1に示す統合アンテナ装置100Aの上面図である。
図3は、
図2に示す統合アンテナ装置100AのA−A断面図である。
【0020】
本実施形態の統合アンテナ装置100Aは、1つの逆Fアンテナ(直線偏波送信用のアンテナ)および2つのループアンテナ(円偏波受信用のアンテナ)が、一枚のベース(後述するベース101)上に統合されたアンテナ装置であり、例えば、自動車用のアンテナ装置として、自動車のルーフ部に装着される。
図1に示すように、統合アンテナ装置100Aは、ベース101と、第1のアンテナ110と、第2のアンテナ120と、第1の遮蔽板130と、を備えている。
図1に示すように、統合アンテナ装置100Aは、上記3つのアンテナがベース101上に立体的に配置された構成を有しており、特に、上記逆Fアンテナ(第1のアンテナ110)が立体的な形状を有しているため、当該逆Fアンテナによる平面占有面積が小さく、これにより、装置全体の小型化が実現されている。
【0021】
(ベース101)
ベース101は、その表面上に各構成部材(第1のアンテナ110、第2のアンテナ120、第1の遮蔽板130)が配置される、板状部材である。ベース101は、後述する第1のアンテナ110のグラウンド板として機能するように、導電性を有する材料(例えば、銅、アルミニウムなどの金属)が用いられる。
【0022】
(第1のアンテナ110)
第1のアンテナ110は、水平面と垂直面とが組み合わされた立体的な形状を有する逆Fアンテナであり、LTE(Long Term Evolution)アンテナとして機能する。LTEアンテナの動作帯域は、例えば、698〜960MHz、1427〜1510MHz、1710〜2690MHzである。第1のアンテナ110は、その一部分(後述する第1の部分112A)が支持板104の表面上に実装されている。支持板104は、ベース101の表面に対して平行な(すなわち、水平な)板状部材である。支持板104は、ベース101の表面に立設された支柱105によって、その裏側が支持されている。本実施形態では、支持板104の材料としてアクリル樹脂を用いているが、これに限らない。
【0023】
(第2のアンテナ120)
第2のアンテナ120は、平面状の2つのループアンテナが同一基板上に統合されたものである。上記2つのループアンテナのうち、一のループアンテナはGPSアンテナ(動作周波数:1575.42MHz)として機能し、他のループアンテナはSDARS(Satellite Digital Audio Radio Service)アンテナ(動作帯域:2320〜2345MHz)として機能する。第2のアンテナ120は、平板状を有しており、支持板102の表面上に実装されている。支持板102は、ベース101の表面に対して平行な(すなわち、水平な)板状部材である。支持板102は、ベースの表面に立設された支柱103によって、その裏側が支持されている。本実施形態では、支持板102の材料としてアクリル樹脂を用いているが、これに限らない。なお、ベース101と支持板102との間に形成されている空間には、他の構成部材(例えば、各アンテナにて生成された電気信号を増幅するためのアンテナ回路)が設けられてもよい。これにより、ベース101上のスペースを有効に利用することができ、アンテナ装置のさらなる小型化が可能となる。
【0024】
(第1のアンテナ110の具体的な構成)
図1に示すように、第1のアンテナ110は、アンテナ基板111と、当該アンテナ基板111の表面上に形成されたアンテナパターン112とを備えて構成されている。アンテナ基板111には、例えば、薄板状の誘電体フィルム(例えば、ポリイミドフィルム)が用いられる。アンテナパターン112には、例えば、薄膜状の導体箔(例えば、銅箔)が用いられる。アンテナパターン112は、第1の部分112A、第2の部分112B、第3の部分112C、および、第4の部分112Dを有する。
【0025】
第1の部分112Aは、ベース101の表面に対して平行な部分であり、支持板102の表面上に実装されている部分である。また、第1の部分112Aは、第2のアンテナの放射素子と同一平面上に形成されている部分である。第4の部分112Dは、ベース101の表面に対して平行な部分であり、ベース101の表面上に実装されている部分である。第1の部分112Aおよび第4の部分112Dは、互いに平行である。
【0026】
第2の部分112Bおよび第3の部分112Cは、ベース101の表面に対して垂直な部分であり、第1の部分112Aの縁部と第4の部分112Dの縁部との間に形成されている部分である。このうち、第2の部分112Bは、その上縁部が第1の部分112Aの縁部と連結されており、その下縁部が第4の部分112Dの縁部と連結されている。一方、第3の部分112Cは、その上縁部が第1の部分112Aの縁部と連結されているが、その下縁部は第4の部分112Dの縁部と連結されていない。すなわち、
図1に示すように、第3の部分112Cの下縁部と、第4の部分112Dとの間には隙間が生じている。この隙間を挟んで、第3の部分112Cおよび第4の部分112Dの各々に、逆Fアンテナの給電点が設けられる。例えば、同軸ケーブルの内側導体が、第3の部分112Cの給電点(図示省略)に接続され、同軸ケーブルの外側導体が、第4の部分112Dの給電点(図示省略)に接続される。なお、
図1に示す例では、第1の部分112Aの裏面のみが、支持板102によって支持されているが、第2の部分112Bおよび第3の部分112Cの裏面も、支持板等によって支持されてもよい。
【0027】
このように構成されたアンテナパターン112は、第1の部分112Aおよび第3の部分112Cが、逆Fアンテナの放射素子として機能し、第4の部分112Dが、逆Fアンテナのグラウンドとして機能し、第2の部分112Bが、逆Fアンテナの短絡部として機能する。なお、第4の部分112Dは、ベース101の表面上に面接触しているため、当該ベース101は、第1のアンテナ110のグラウンドとして機能する。
【0028】
上述した第1のアンテナ110の立体的な形状は、例えば、平面状のアンテナ基板111の表面に対し、第1の部分112A、第2の部分112B、第3の部分112C、および、第4の部分112Dを一体的に形成した後、各部の境界部分(第1の部分112Aと第2の部分112Bとの境界部分、第1の部分112Aと第3の部分112Cとの境界部分、および、第3の部分112Cと第4の部分112Dとの境界部分)を山折りに折り曲げることにより、形成することができる。
【0029】
(第2のアンテナ120の具体的な構成)
図2に示すように、第2のアンテナ120は、アンテナ基板121と、当該アンテナ基板121の表面上に形成されたアンテナパターン122A,122B,123A,123Bとを備えて構成されている。上記アンテナ基板121には、例えば、薄板状の誘電体フィルム(例えば、ポリイミドフィルム)が用いられる。上記各アンテナパターンには、例えば、薄膜状の導体箔(例えば、銅箔)が用いられる。
【0030】
アンテナパターン122Aおよびアンテナパターン122Bは、上述のSDARSアンテナを構成する。
図2に示すように、アンテナパターン122Aは、概ね楕円形の環状を成しており、ループアンテナの放射素子として機能する。アンテナパターン122Bは、アンテナパターン122Aの周囲を取り囲むような、概ね矩形状を有しており、ループアンテナの無給電素子として機能する。
【0031】
一方、アンテナパターン123Aおよびアンテナパターン123Bは、上述のGPSアンテナを構成する。アンテナパターン123Aは、アンテナパターン122Bの周囲を取り囲むような、概ね矩形の環状を成しており、ループアンテナの放射素子として機能する。アンテナパターン123Bは、アンテナパターン123Aの周囲を取り囲むような形状を有しており、ループアンテナの無給電素子として機能する。
【0032】
本実施形態では、アンテナパターン123Bは、2本の帯状の導体箔からなる。上記2本の導体箔のうち、一の導体箔は、上記アンテナパターン123Aがなす四角形の左辺(図中x軸負側の辺)および下辺(図中y軸負側の辺)に沿った、直角に折れ曲がるL字形状をなしている。一方、他の導体箔は、上記四角形の右辺(図中x軸正側の辺)および上辺(図中y軸正側の辺)に沿った、直角に折れ曲がるL字形状をなしている。
【0033】
なお、上述の各ループアンテナにおいて、上記無給電素子は、放射素子から離隔されており、無給電素子と放射素子との間には、直流的な導通がない。無給電素子を設けたことにより、ループアンテナの入力インピーダンスを変化させ、インピーダンス整合を図ることが可能となっている。また、無給電素子を設けたことにより、ループアンテナにおけるゲインの集中を緩和し、ゲインの集中に起因する受信障害(例えば、衛星が天頂以外の方向に位置する場合や、アンテナ形成面を水平に保てなかった場合に生じる受信障害)を抑制することが可能となっている。
【0034】
(第1の遮蔽板130)
本実施形態の統合アンテナ装置100Aにおいて、注目すべきは、第1の遮蔽板130が設けられている点である。第1の遮蔽板130は、第1のアンテナ110と第2のアンテナ120とを互いに遮蔽するように、第1のアンテナ110と第2のアンテナ120との間において、ベース101の表面上に垂直に立設されている板状部材である。第1の遮蔽板130には、導電性を有する材料(例えば、銅、アルミニウムなどの金属)が用いられる。
【0035】
図2に示すように、統合アンテナ装置100Aを上方(図中z軸正方向)から見たとき、第2のアンテナ120は、矩形状を成しており、第1のアンテナ110は、第2のアンテナ120の外側において、第2のアンテナ120の左辺および下辺に沿って、直角に折れ曲がるL字状を成している。このように、第1のアンテナ110が第2のアンテナ120に近接していると、第2のアンテナ120が、第1のアンテナ110の放射の影響を受けて、良好なアイソレーション特性が得られなくなる虞がある。
【0036】
そこで、本実施形態の統合アンテナ装置100Aは、第1のアンテナ110と第2のアンテナ120との間に、第1のアンテナ110と第2のアンテナ120とを互いに遮蔽するための第1の遮蔽板130が設けられている。具体的には、第1の遮蔽板130は、
図2に示すように、第1のアンテナ110と第2のアンテナ120との間において、第1のアンテナ110と第2のアンテナ120とを互いに遮蔽するように、第2のアンテナ120の左辺および下辺に沿って、直角に折れ曲がるL字状を成して配置されている。
【0037】
特に、本実施形態の第1の遮蔽板130は、
図3に示すように、その上端の高さ位置が、第1のアンテナ110のアンテナ形成面(第1の部分112Aの形成面)、および、第2のアンテナ120のアンテナ形成面(アンテナパターン122A,122B,123A,123Bの形成面)と同一である。このように、第1の遮蔽板130は、その上端の高さ位置が、少なくとも、上記第1のアンテナ110のアンテナ形成面および上記第2のアンテナ120のアンテナ形成面にまで達していることが好ましい。
【0038】
上記の構成により、本実施形態の統合アンテナ装置100Aは、第1のアンテナ110と第2のアンテナ120との間において、第1のアンテナ110から放射された電波を、第1の遮蔽板130によって遮蔽することができ、これにより、第1のアンテナ110と第2のアンテナ120との間隔を広げることなく、第2のアンテナ120に対する第1のアンテナ110の放射の影響を抑制することができる。すなわち、統合アンテナ装置100Aを大型化することなく、良好なアイソレーション特性を得ることができる。特に、本実施形態の統合アンテナ装置100Aは、板状の第1の遮蔽板130を設けるだけといった簡単な構成により、比較的低コストで、上記第1のアンテナ110の放射の影響を抑制することができる。
【0039】
〔変形例〕
図4は、本実施形態の統合アンテナ装置100Aにおける、第1の遮蔽板130の変形例を示す図である。
図4に示すように、第1の遮蔽板130は、横方向(ベース101の表面に沿った方向)に並んでいる、複数のスリット(縦方向(ベース101の表面に交わる方向)に切り欠かれた部分)が形成されていてもよい。すなわち、第1の遮蔽板130は、
図4に示すような櫛状を成していてもよい。このように第1の遮蔽板130にスリットを設けることにより、特定の周波数帯域における、第1のアンテナ110の送信波が第2のアンテナ120に及ぼす影響(アイソレーション特性)を、より良好なものへと調整することができる。各スリットの幅W1、及び、隣り合うスリットの間隔W2は、シミュレーション結果等に基づいて、好適な値に調整されることが好ましい。例えば、各スリットの幅W1、および、隣り合うスリットの間隔W2を適切に調整することにより、GPSアンテナの動作周波数(1575.42MHz)におけるアイソレーション特性を、より良好なものへと調整することができる。なお、スリットの形状は、上述したような縦方向に延伸する形状に限らない。
【0040】
〔第2実施形態〕
次に、
図5を参照して、本発明の第2実施形態に係る統合アンテナ装置100Bについて説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る統合アンテナ装置Bの上面図である。第2実施形態の統合アンテナ装置100Bは、さらに第2の遮蔽板140を備える点で、第1実施形態の統合アンテナ装置100Aと異なる。
【0041】
(第2の遮蔽板140)
第2の遮蔽板140は、第1の遮蔽板130と同様に、ベース101の表面上に垂直に立設されている板状部材である。また、第2の遮蔽板140は、第1の遮蔽板130と同様に、導電性を有する材料(例えば、銅、アルミニウムなどの金属)が用いられる。
【0042】
図5に示すように、統合アンテナ装置100Bを上方(図中z軸正方向)から見たとき、第2の遮蔽板140は、第2のアンテナ120を間に挟んで、第1の遮蔽板130に対して対称的(点対称)に配置されている。具体的には、第2の遮蔽板140は、
図5に示すように、第2のアンテナ120の外側において、第2のアンテナ120を外部から遮蔽するように、第2のアンテナ120の右辺および上辺に沿って、直角に折れ曲がるL字状を成して配置されている。
【0043】
特に、第2の遮蔽板140は、第1の遮蔽板130と同様に、その上端の高さ位置が、第1のアンテナ110のアンテナ形成面(第1の部分112Aの形成面)、および、第2のアンテナ120のアンテナ形成面(アンテナパターン122A,122B,123A,123Bの形成面)と同一である。このように、第2の遮蔽板140は、その上端の高さ位置が、少なくとも、上記第1のアンテナ110のアンテナ形成面および上記第2のアンテナ120のアンテナ形成面にまで達していることが好ましい。
【0044】
上記構成により、第2実施形態に係る統合アンテナ装置100Bは、第2のアンテナ120の周囲において、第1の遮蔽板130と第2の遮蔽板140とが互いに対称的に配置されるため、第2のアンテナ120における放射パターンの偏りを抑制することができる。
【0045】
〔第3実施形態〕
次に、
図6を参照して、本発明の第3実施形態に係る統合アンテナ装置100Cについて説明する。
図6は、本発明の第3実施形態に係る統合アンテナ装置Cの上面図である。第3実施形態の統合アンテナ装置100Cは、さらに第3のアンテナ150を備える点で、第2実施形態の統合アンテナ装置100Bと異なる。
【0046】
(第3のアンテナ150)
第3のアンテナ150の構成および機能は、第1のアンテナ110と同様である。すなわち、第3のアンテナ150は、水平面と垂直面とが組み合わされた立体的な形状を有する逆Fアンテナであり、LTEアンテナとして機能する。但し、第3のアンテナ150は、第1のアンテナ110と対称的な形状を有している。
図6に示すように、統合アンテナ装置100Cを上方(図中z軸正方向)から見たとき、第3のアンテナ150は、第2のアンテナ120の外側において、第2のアンテナ120の右辺および上辺に沿って、直角に折れ曲がるL字状を成している。このように、第3のアンテナ150が第2のアンテナ120に近接していると、第2のアンテナ120が、第3のアンテナ150の放射の影響を受けて、良好なアイソレーション特性が得られなくなる虞がある。
【0047】
そこで、本実施形態の統合アンテナ装置100Cは、第3のアンテナ150と第2のアンテナ120との間に、第3のアンテナ150と第2のアンテナ120とを互いに遮蔽するための第2の遮蔽板140が設けられている。具体的には、第2の遮蔽板140は、
図6に示すように、第3のアンテナ150と第2のアンテナ120との間において、第3のアンテナ150と第2のアンテナ120とを互いに遮蔽するように、第2のアンテナ120の右辺および上辺に沿って、直角に折れ曲がるL字状を成して配置されている。
【0048】
上記の構成により、本実施形態の統合アンテナ装置100Cは、第3のアンテナ150と第2のアンテナ120との間において、第3のアンテナ150から放射された電波を、第2の遮蔽板140によって遮蔽することができ、その結果、第1のアンテナ110および第2のアンテナ120に対する、第3のアンテナ150の放射の影響を抑制することができる。加えて、第3のアンテナ150に対する、第1のアンテナ110の放射の影響を抑制することができる。特に、本実施形態の統合アンテナ装置100Cは、板状の第2の遮蔽板140を設けるだけといった簡単な構成により、比較的低コストで、上記第3のアンテナ150による放射の影響、および、上記第3のアンテナ150に対する放射の影響を抑制することができる。
【0049】
すなわち、本実施形態の統合アンテナ装置100Cは、第1の遮蔽板130および第2の遮蔽板140を設けたことにより、受信用のアンテナである第2のアンテナ120において、送信用のアンテナである第1のアンテナ110の放射の影響と、送信用のアンテナである第3のアンテナ150の放射の影響との各々を、抑制することができる。
【0050】
なお、本実施形態において、第3のアンテナ150は、LTEアンテナ以外のアンテナであってもよい。また、第3のアンテナ150は、送信用のアンテナであってもよく、受信用のアンテナであってもよい。例えば、第3のアンテナ150に、受信用のアンテナであるDAB−Lアンテナ(動作帯域:1452〜1498MHz)を用いてもよい。この場合、受信用のアンテナである第2のアンテナ120および第3のアンテナ150の双方において、送信用のアンテナである第1のアンテナ110からの放射の影響を抑制することができる。反対に、第3のアンテナ150に、送信用のアンテナを用いた場合、受信用のアンテナである第2のアンテナ120において、送信用のアンテナである第1のアンテナ110および第3のアンテナ150の双方からの放射の影響を抑制することができる。
【0051】
〔実施例〕
本実施例では、上述した統合アンテナ装置100A,Bを用いて、下記実施例1〜4、および、下記比較例のそれぞれについて実施した。
【0052】
(実施例1)
第1の遮蔽板130 :あり
第2の遮蔽板140 :なし
第1の遮蔽板130のスリット:なし
(実施例2)
第1の遮蔽板130 :あり
第2の遮蔽板140 :なし
第1の遮蔽板130のスリット:あり
(実施例3)
第1の遮蔽板130 :あり
第2の遮蔽板140 :あり
第1の遮蔽板130のスリット:なし
第2の遮蔽板140のスリット:なし
(実施例4)
第1の遮蔽板130 :あり
第2の遮蔽板140 :あり
第1の遮蔽板130のスリット:あり
第2の遮蔽板140のスリット:あり
(比較例)
第1の遮蔽板130 :なし
第2の遮蔽板140 :なし
なお、本実施例において統合アンテナ装置に適用した各種条件は以下のとおりである。
【0053】
第2のアンテナ120と、第1の遮蔽板130との間隔:5mm
第1のアンテナ110と、第1の遮蔽板130との間隔:5mm
各スリットの幅W1 :1mm
隣り合うスリットの間隔W2 :1mm
(検証1)
上記実施例1、2、および上記比較例のそれぞれについて、第2のアンテナ120(GPSアンテナ)のアイソレーション特性S21(第1のアンテナ110の送信波が第2のアンテナ120に及ぼす影響)を測定した。
図7は、本実施例における、第2のアンテナ120のアイソレーション特性(挿入損失)S21の大きさの周波数依存性を表すグラフである。
【0054】
図7から、第1の遮蔽板130を設けた場合(上記実施例1、2)のほうが、第1の遮蔽板130を設けない場合(上記比較例)よりも、略全ての周波数帯域において、アイソレーション特性S21の大きさが低く抑えられており、すなわち、良好なアイソレーション特性が得られることがわかる。
【0055】
また、GPSアンテナの動作周波数(1575.42MHz)においては、第1の遮蔽板130にスリットを設けた場合(上記実施例2)のほうが、第1の遮蔽板130にスリットを設けない場合(上記実施例1)よりも、アイソレーション特性S21の大きさが低く抑えられており、すなわち、より良好なアイソレーション特性が得られることがわかる。
【0056】
(検証2)
上記実施例1〜4、および上記比較例のそれぞれについて、GPSアンテナの動作周波数である1575.42MHzにおける、第2のアンテナ120(GPSアンテナ)の放射パターンを測定した。
図8〜10は、1575.42MHzにおける第2のアンテナ120の放射パターンを示すグラフである。それぞれ、統合アンテナ装置100を上方から見たときに、第2のアンテナ120の中心を通り、且つ、第2のアンテナ120の上辺および下辺と平行なxz面における、右旋円偏波(RHCP:Right Handed Circularly Polarized Wave)と、左旋円偏波(LHCP:Left Handed Circularly Polarized Wave)とに関する放射パターンを示す。
【0057】
図8は、本実施例(比較例)における、第2のアンテナ120の放射パターンを示すグラフである。
図8に示すように、第1の遮蔽板130および第2の遮蔽板140を設けない場合、第2のアンテナ120の放射パターンにおいて、最大利得方向に殆ど偏りが生じていない。
【0058】
図9(a)は、本実施例(実施例1)における、第2のアンテナ120の放射パターンを示すグラフである。
図9(b)は、本実施例(実施例3)における、第2のアンテナ120の放射パターンを示すグラフである。
図9(a)に示すように、第1の遮蔽板130のみを設けた場合、第2のアンテナ120の放射パターンにおいて、最大利得方向に偏りが生じている。一方、
図9(b)に示すように、第1の遮蔽板130および第2の遮蔽板140の双方を設けた場合、第2のアンテナ120の放射パターンにおいて、最大利得方向の偏りが殆ど生じない。
【0059】
図10(a)は、本実施例(実施例2)における、第2のアンテナ120の放射パターンを示すグラフである。
図10(b)は、本実施例(実施例4)における、第2のアンテナ120の放射パターンを示すグラフである。
図10(a)に示すように、スリットを有する第1の遮蔽板130のみを設けた場合、第2のアンテナ120の放射パターンにおいて、最大利得方向に偏りが生じている。一方、
図10(b)に示すように、それぞれがスリットを有する、第1の遮蔽板130および第2の遮蔽板140の双方を設けた場合、第2のアンテナ120の放射パターンにおいて、最大利得方向に殆ど偏りが生じない。
【0060】
本実施例により、遮蔽板を設けることにより、良好なアイソレーション特性を得られることが確認された。また、遮蔽板にスリットを設けることにより、特定の周波数帯域において、より良好なアイソレーション特性を得られることが確認された。また、遮蔽板を対称的に設けることにより、円偏波受信用アンテナにおける最大利得方向の傾きを抑制できることが確認された。
【0061】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0062】
例えば、第1のアンテナ110は、少なくともベースをグラウンドとして使用する逆Fアンテナであればよく、LTE用アンテナ以外のアンテナであってもよい。また、第1のアンテナ110は、少なくとも第2のアンテナ120のアンテナ形成面と同一平面上に放射素子を有していればよく、その構成(例えば、アンテナ基板の形状、アンテナパターンの形状、ベースへの実装方法)は、実施形態に示したものに限らない。
【0063】
また、第2のアンテナ120は、少なくとも円偏波受信用アンテナであればよく、GPS用アンテナおよびSDARSアンテナ以外のアンテナであってもよい。また、第2のアンテナ120は、少なくとも第1のアンテナ110のアンテナ形成面と同一平面上に放射素子を有していればよく、その構成(例えば、アンテナ基板の形状、アンテナパターンの形状、ベースへの実装方法)実施形態に示したものに限らない。