(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181506
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】コークス炉炉蓋の燃焼用ガス吹込装置及び吹込方法
(51)【国際特許分類】
C10B 25/06 20060101AFI20170807BHJP
C10B 21/20 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
C10B25/06
C10B21/20
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-215618(P2013-215618)
(22)【出願日】2013年10月16日
(65)【公開番号】特開2015-78294(P2015-78294A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小脇 幸男
(72)【発明者】
【氏名】横手 孝輔
【審査官】
齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−048973(JP,A)
【文献】
特開平07−258643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B25/00−24
C10B21/20−26
C10B43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の各炭化室の両側開口部に設置した炉蓋に形成され、炭化室と連通するガス通路に、燃焼用ガスを吹き込むコークス炉炉蓋の燃焼用ガス吹込装置であって、
各炉蓋に、燃焼用ガスを前記ガス通路に吹き込むための燃焼用ガス吹込手段を設けると共に、コークス炉の移動機械に、前記燃焼用ガス吹込手段への自動脱着機構を有する燃焼用ガス供給手段を設けており、
前記燃焼用ガス供給手段は、燃焼用ガスの供給源と、当該供給源に接続された複数本のガス供給配管とを有し、前記自動脱着機構が前記ガス供給配管を炉蓋に向けて進退させることにより、当該ガス供給配管先端のガス供給口を前記燃焼用ガス供給手段のガス受口に脱着するコークス炉炉蓋の燃焼用ガス吹込装置。
【請求項2】
前記燃焼用ガス吹込手段は、前記燃焼用ガス供給手段から供給される燃焼用ガスを貯留するガスタンクと、当該ガスタンクから供給される燃焼用ガスを前記ガス通路に吹き込む吹込配管とを有する請求項1に記載のコークス炉炉蓋の燃焼用ガス吹込装置。
【請求項3】
前記移動機械に、複数の燃焼用ガス供給手段を設けた請求項1又は2に記載のコークス炉炉蓋の燃焼用ガス吹込装置。
【請求項4】
各炉蓋に設けた閂と各炭化室側に設けた閂受との係合解除及び再係合を検知する検知手段を設け、
前記検知手段が係合解除を検知したときに前記燃焼用ガス供給手段を前記燃焼用ガス吹込手段に接続し、前記検知手段が再係合を検知したときに前記燃焼用ガス供給手段を前記燃焼用ガス吹込手段から外すように、前記自動脱着機構を制御する制御手段を設けた請求項1から3のいずれかに記載のコークス炉炉蓋の燃焼用ガス吹込装置。
【請求項5】
前記移動機械は、押出機及びガイド車である請求項1から4のいずれかに記載のコークス炉炉蓋の燃焼用ガス吹込装置。
【請求項6】
前記押出機はn室ピッチで炭化室からコークスを排出するように制御されており、前記押出機及び前記ガイド車に設けた前記燃焼用ガス供給手段が、同時にn室以上の炭化室の炉蓋の燃焼用ガス吹込手段に燃焼用ガスを供給可能である請求項5に記載のコークス炉炉蓋の燃焼用ガス吹込装置。
【請求項7】
コークス炉の各炭化室の両側開口部に設置した炉蓋に形成され、炭化室と連通するガス通路に、燃焼用ガスを吹き込むコークス炉炉蓋の燃焼用ガス吹込方法であって、
各炉蓋に、燃焼用ガスを前記ガス通路に吹き込むための燃焼用ガス吹込手段を設けると共に、コークス炉の移動機械である押出機及びガイド車に、前記燃焼用ガス吹込手段への自動脱着機構を有する燃焼用ガス供給手段を設け、
前記燃焼用ガス供給手段は、燃焼用ガスの供給源と、当該供給源に接続された複数本のガス供給配管とを有し、前記自動脱着機構は前記ガス供給配管を炉蓋に向けて進退させることにより、当該ガス供給配管先端のガス供給口を前記燃焼用ガス供給手段のガス受口に脱着するものであり、
前記押出機により炭化室からコークスを排出するときに、前記自動脱着機構により前記燃焼用ガス供給手段を前記燃焼用ガス吹込手段に接続するコークス炉炉蓋の燃焼用ガス吹込方法。
【請求項8】
前記押出機をn室ピッチで炭化室からコークスを排出するよう制御し、前記押出機により炭化室からコークスを排出するときに、同時にn室以上の炭化室の炉蓋の燃焼用ガス吹込手段に前記燃焼用ガス供給手段を接続する請求項7に記載のコークス炉炉蓋の燃焼用ガス吹込方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の各炭化室の両側開口部に設置した炉蓋に形成され、炭化室と連通するガス通路に、燃焼用ガスを吹き込むコークス炉炉蓋の燃焼用ガス吹込装置及び吹込方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、コークス炉は、炉体の下部に蓄熱室が配置されるとともに、その上部に燃焼室と炭化室とが交互に配列されてなり、炭化室の上部に設けた装入口から石炭を装入し、燃焼室からの伝熱により炭化室内(炉内)で石炭を乾留しコークスを製造する。炭化室内に装入された石炭の乾留が終了すると、各炭化室の両側の開口部に設置した炉蓋を開放する。次いで、一側の開口部側に配置された押出機によって炭化室内のコークスを他側の開口部から排出し、ガイド車を介してコークス乾式消火設備(CDQ)用のバケットもしくは消火車に回収する。
【0003】
このようにコークス炉においては、コークスの排出の都度、炉蓋が開放され、また、乾留中も炉蓋は外気に晒されるので、特に炭化室の両側開口部近傍において熱放散が大きくなる。したがって、炭化室の両側開口部近傍では、中央部より乾留(コークス化)が遅れることが避けられない。
【0004】
その対策の一つとして、炉蓋に加熱機能を持たせるため、炉蓋に形成したガス通路に燃焼用ガス(空気又は酸素)を吹き込む技術が知られている。例えば特許文献1には、コークス炉で石炭を乾留する際に発生するコークス炉ガスを炉蓋に形成したガス通路へ導入し、乾留中に燃焼用ガスを吹き込んでコースク炉ガスを燃焼させ、炭化室の両側開口部(窯口部)の石炭の乾留を促進する方法において、燃焼用ガスをコークス炉の炉頂より炉蓋に導き、炉高方向の任意の複数位置からガス通路へ吹き込む技術が開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1の技術では炉蓋外から炉蓋に燃焼用ガスを導く必要があり、そのためのガス配管は、炭化室からコークスを排出するために炉蓋を開放及び閉止する度毎に炉蓋と脱着する必要がある。例えば、炭化室が100室あり各炭化室から24時間毎にコークスを排出する場合、14.4分間毎に脱着が必要である。特許文献1の技術ではガス配管の脱着にワンタッチ脱着機構を採用しているものの、その脱着には作業者の操作が必要であり、その労力は多大である。
【0006】
一方、特許文献2には、上記特許文献1と同様の方法において、燃焼用空気を炭化室の両側開口部(コークス炉窯口部)のソールプレート部より炉蓋に形成したガス通路へ吹き込む技術が開示されている。しかし、通常、炉蓋とソールプレートとの間には30〜80mm程度の隙間が開いており、石炭の装入時にこの隙間に石炭が入り込むことから、特許文献2のようにソールプレート部にガス配管を設けると、その石炭によりガス配管が閉塞しやすくなり、メンテナンスを頻繁に行う必要がある。また、ガス配管に石炭が入り込んだ状態で燃焼用ガスが供給されると、その燃焼用空気は炉内のコークス炉ガスを燃焼させるのではなく、石炭を燃焼させることになり、炉底部を傷めるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−48973号公報
【特許文献2】特開平8−283735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、コークス炉の各炭化室の両側開口部に設置した炉蓋に形成したガス通路に燃焼用ガスを吹き込むにあたって、多大な労力をかけることなく、かつメンテナンスを頻繁に行う必要もなく、燃焼用ガスを吹き込むことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、コークス炉の各炭化室の両側開口部に設置した炉蓋に形成され、炭化室と連通するガス通路に、燃焼用ガスを吹き込むコークス炉炉蓋の燃焼用ガス吹込装置であって、各炉蓋に、燃焼用ガスを前記ガス通路に吹き込むための燃焼用ガス吹込手段を設けると共に、コークス炉の移動機械に、前記燃焼用ガス吹込手段への自動脱着機構を有する燃焼用ガス供給手段を設けて
おり、前記燃焼用ガス供給手段は、燃焼用ガスの供給源と、当該供給源に接続された複数本のガス供給配管とを有し、前記自動脱着機構が前記ガス供給配管を炉蓋に向けて進退させることにより、当該ガス供給配管先端のガス供給口を前記燃焼用ガス供給手段のガス受口に脱着するコークス炉炉蓋の燃焼用ガス吹込装置が提供される。
【0010】
このように、コークス炉の移動機械に、炉蓋に設けた燃焼用ガス吹込手段への自動脱着機構を有する燃焼用ガス供給手段を設けることで、両手段の脱着を多大な労力をかけることなく実施でき、また、石炭による閉塞の問題も生じないので、メンテナンスを頻繁に行う必要もない。
【0011】
本発明の燃焼用ガス吹込装置において、前記燃焼用ガス吹込手段は、前記燃焼用ガス供給手段から供給される燃焼用ガスを貯留するガスタンクと、当該ガスタンクから供給される燃焼用ガスを前記ガス通路に吹き込む吹込配管とを有するものとすることができる。このように、炉蓋側にガスタンクを設けることで、燃焼用ガス供給手段が接続されていないときでも、必要に応じ連続して燃焼用ガスを炉蓋のガス通路へ吹き込むことができる。
【0012】
また、本発明の燃焼用ガス吹込装置では、前記移動機械に、複数の燃焼用ガス供給手段を設けることができる。これにより、複数の燃焼用ガス吹込手段に同時に燃焼用ガスを供給することができ、上述のとおりガスタンクを設ける場合は、そのガスタンクの容量を小さくできる。
【0013】
更に、本発明の燃焼用ガス吹込装置において前記燃焼用ガス供給手段は、燃焼用ガスの供給源と、当該供給源に接続されたガス供給配管とを有し、前記自動脱着機構が前記ガス供給配管を炉蓋に向けて進退させることにより、当該ガス供給配管先端のガス供給口を前記燃焼用ガス供給手段のガス受口に脱着する構成と
している。このような構成とすることで、燃焼用ガス供給手段と燃焼用ガス吹込手段との脱着をより簡単に行うことができる。また
、前記供給源に前記ガス供給配管を複数本接続
しているので、複数の燃焼用ガス吹込手段に同時に燃焼用ガスを供給することができる。
【0014】
本発明の燃焼用ガス吹込装置では、各炉蓋に設けた閂と各炭化室側に設けた閂受との係合解除及び再係合を検知する検知手段を設け、前記検知手段が係合解除を検知したときに前記燃焼用ガス供給手段を前記燃焼用ガス吹込手段に接続し、前記検知手段が再係合を検知したときに前記燃焼用ガス供給手段を前記燃焼用ガス吹込手段から外すように、前記自動脱着機構を制御する制御手段を設けることができる。このような構成にすると、炉蓋を開放して炭化室からコークスを排出するタイミングで、定期的に燃焼用ガス供給手段から燃焼用ガス吹込手段に燃焼用ガスを供給できる。また、このような定期的な燃焼用ガスの供給を全自動で行うことができる。
【0015】
本発明において燃焼用ガス供給手段を設けるコークス炉の移動機械としては、押出機及びガイド車を利用できる。ここで、押出機は一般的にn室ピッチで炭化室からコークスを排出するように制御されている。この場合、押出機及びガイド車に設けた燃焼用ガス供給手段は、同時にn室以上の炭化室の炉蓋の燃焼用ガス吹込手段に燃焼用ガスを供給可能な構成とすることができる。そうすれば、炭化室からコークスを排出するタイミングで、定期的に燃焼用ガス供給手段から同時に複数の燃焼用ガス吹込手段に燃焼用ガスを供給できる。
【0016】
本発明の他の観点によれば、コークス炉の各炭化室の両側開口部に設置した炉蓋に形成され、炭化室と連通するガス通路に、燃焼用ガスを吹き込むコークス炉炉蓋の燃焼用ガス吹込方法であって、各炉蓋に、燃焼用ガスを前記ガス通路に吹き込むための燃焼用ガス吹込手段を設けると共に、コークス炉の移動機械である押出機及びガイド車に、前記燃焼用ガス吹込手段への自動脱着機構を有する燃焼用ガス供給手段を設け、
前記燃焼用ガス供給手段は、燃焼用ガスの供給源と、当該供給源に接続された複数本のガス供給配管とを有し、前記自動脱着機構は前記ガス供給配管を炉蓋に向けて進退させることにより、当該ガス供給配管先端のガス供給口を前記燃焼用ガス供給手段のガス受口に脱着するものであり、前記押出機により炭化室からコークスを排出するときに、前記自動脱着機構により前記燃焼用ガス供給手段を前記燃焼用ガス吹込手段に接続するコークス炉炉蓋の燃焼用ガス吹込方法が提供される。この場合、押出機はn室ピッチで炭化室からコークスを排出するよう制御し、前記押出機により炭化室からコークスを排出するときに、同時にn室以上の炭化室の炉蓋の燃焼用ガス吹込手段に前記燃焼用ガス供給手段を接続するようにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のとおり本発明によれば、コークス炉の各炭化室の両側開口部に設置した炉蓋に形成したガス通路に燃焼用ガスを吹き込むにあたって、多大な労力をかけることなく、かつメンテナンスを頻繁に行う必要もなく、燃焼用ガスを吹き込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施例による燃焼用ガス吹込装置の構成を概念的に示す平面図である。
【
図2】
図1の燃焼用ガス吹込装置を適用したコース炉の炭化室の構成を示す概略縦断面図である。
【
図4】自動脱着機構により脱着される燃焼用ガス供給手段(ガス供給配管)と燃焼用ガス供給手段(ガスタンク)との接続部分の構成例を示す。
【
図5】燃焼用ガス吹込手段から炉蓋のガス通路に向かう燃焼用ガスの流路の構成例を示す。
【
図7】コークス炉の炭化室において、石炭の装入からコークスの排出まで間(24時間)の炭化室の内圧(炉内圧)及びガス発生量の変化と、燃焼用ガスの吹込のタイミングの一例を概念的に示す。
【
図8A】自動脱着機構を自動的に動作させる機構を示す(炉蓋を取り外す前の状態)。
【
図8B】自動脱着機構を自動的に動作させる機構を示す(コークス排出のために炉蓋を取り外した状態)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施例による燃焼用ガス吹込装置の構成を概念的に示す平面図、
図2は、
図1の燃焼用ガス吹込装置を適用したコース炉の炭化室の構成を示す概略縦断面図である。
【0022】
先に説明したとおりコークス炉は、炉体の下部に蓄熱室が配置されるとともに、その上部に燃焼室と炭化室とが交互に配列されてなる。
図1では燃焼室を省略して示しており、複数(実施例では100室)の炭化室10が炉長方向に配列され、各炭化室10の両側開口部には炉蓋20が設置されている。また、これらの炭化室10の両側には、コークス炉の移動機械である押出機30及びガイド車40が炉長方向に移動可能に配置されている。押出機30及びガイド車40は周知のとおり、押出機30の押出ラム31による炭化室10からのコークスの排出動作に合わせて相互に同調して移動する。
【0023】
図2に示すように、各炭化室10の両側開口部に設置される炉蓋20の内側(炭化室10側)には、炭化室10に連通するガス通路21が炉高方向に伸びるように形成されている。そして、各炉蓋20には、そのガス通路21に燃焼用ガス(空気又は酸素)を吹き込むための燃焼用ガス吹込手段50が設けられている。燃焼用ガス吹込手段50は、後述する燃焼用ガス供給手段60から供給される燃焼用ガスを貯留するガスタンク51と、当該ガスタンク51から供給される燃焼用ガスをガス通路21に吹き込む吹込配管52とを有する。ガスタンク51は炉蓋20の上下の閂22間に収まる大きさ(約500L以下)とされている。吹込配管52は一又は複数本設けられ、その先端に吹込ノズルが設けられている。本実施例では吹込配管52は2本設けている。吹込配管52から吹き込まれた燃焼用ガスは、ガス通路21内で炉内ガス(コークス炉ガス)と燃焼反応し、燃焼ガスはコークス炉の上昇管11から炉外に排出される。
【0024】
図1に示すように、押出機30及びガイド車40に燃焼用ガス供給手段60を設けている。燃焼用ガス供給手段60は、上述した燃焼用ガス吹込手段50への自動脱着機構を有する。本実施例において燃焼用ガス供給手段60は、燃焼用ガスの供給源であるコンプレッサ61と、このコンプレッサ61にレシーバタンク62を介して接続された複数本(本実施例では5本)のガス供給配管63とを有し、後述するとおり、自動脱着機構がガス供給配管63を炉蓋20に対して進退させることにより、ガス供給配管63先端のガス供給口を燃焼用ガス供給手段50(ガスタンク51)のガス受口に脱着する。
【0025】
図3は自動脱着機構の一例を示す。同図の自動脱着機構はラック・ピニオン機構70を使用したもので、ガス供給配管63の先端側をラック71に固定し、ピニオン72を駆動させることでガス供給配管63を炉蓋20に対して進退させる。このときガス供給配管63はフレキシブル式あるいは伸縮式とすることで、問題なく炉蓋20に対して進退させることができる。なお、自動脱着機構は、
図3のようなラック・ピニオン機構に限定されず、油圧又は空圧シリンダ機構やリンク機構などを使用することができる。
【0026】
図4は、自動脱着機構により脱着される燃焼用ガス供給手段60(ガス供給配管63)と燃焼用ガス吹込手段50(ガスタンク51)との接続部分の構成例を示す。
図4において、ガス供給配管63先端のガス供給口63a及びガスタンク51のガス受口51aにはそれぞれ逆止弁81、82がスプリング81a、82aを介して設けられている。これにより、ガス供給配管63とガスタンク51とが接続されていないときは、ガス供給口63a及びガス受口51aは、逆止弁81及び82により閉止される。また、ガス供給口63a側の逆止弁81には作動ロッド81bがガス供給口63aから突出するように設けられている。したがって、上述した自動脱着機構により、ガス供給配管63のガス供給口63aをガスタンク51のガス受口51aに接続すると、
図4に示すように作動ロッド81bが逆止弁82に突き当たることにより、各逆止弁81、82が移動してガス流路が形成される。一方、自動脱着機構により、ガス供給配管63のガス供給口63aをガスタンク51のガス受口51aから外すと、ガス供給口63a及びガス受口51aは、逆止弁81及び82により閉止される。
【0027】
図5は、燃焼用ガス吹込手段50から炉蓋のガス通路21に向かう燃焼用ガスの流路の構成例を示す。
図5において、燃焼用ガス吹込手段50のガスタンク51からガス通路21に向かう燃焼用ガスの流路(吹込配管52)には、減圧弁53及び逆止弁54が設けられている。逆止弁54は燃焼用ガスの吹込時に炭化室側(炉内)から炉内ガスが逆流するのを防止するために設けており、その逆止圧は例えば2kPa程度とする。
【0028】
次に、本実施例の燃焼用ガス吹込装置の動作を、
図6を参照しつつ説明する。以下の説明では、コークス炉が100室の炭化室を有する場合を想定する。また、コークス炉では、隣接する炭化室を冷やさないようにし、効率良くコークスを生産するために、炭化室からのコークスの排出を炉長方向において一定の間隔(ピッチ)を開けて行うのが一般的であり、本実施例では5室ピッチでコークスを排出し、かつ各炭化室からは24時間間隔でコークスを排出する場合を想定する。なお、
図6には、
図1に示したコークス炉の移動機械のうち押出機30のみを示すが、ガイド車40は押出機30と同調して移動し、押出機30と同様の動作をする。
【0029】
図6(a)は、6番目の炭化室からコークスを排出している状態を示す。このとき、押出機30に設けた燃焼用ガス供給手段60の5本のガス供給配管63から、1〜5番目の炭化室の炉蓋20に設けたガスタンク51に燃焼用ガスを供給する。具体的には、このコークス排出のタイミングで
図3に示した自動脱着機構により各ガス供給配管63を前進させ、
図4に示したようにガス供給配管63のガス供給口63aをガスタンク51のガス受口51aに接続する。
【0030】
6番目の炭化室からのコークスの排出が終了し、押出ラム31が初期位置に戻ったら、上述の自動脱着機構により各ガス供給配管63を後退させ、ガス供給配管63のガス供給口63aをガスタンク51のガス受口51aから外す。その後、押出機30は
図6(b)に示すように、次にコークスを排出する11番目の炭化室に向けて移動する。
【0031】
押出機30が11番目の炭化室に到達すると、
図6(c)に示すように当該11番目の炭化室におけるコース排出のタイミングで、押出機30に設けた燃焼用ガス供給手段60の5本のガス供給配管63から、6〜10番目の炭化室の炉蓋20に設けたガスタンク51に燃焼用ガスを供給する。
【0032】
このような
図6(a)〜
図6(c)の動作を繰り返し、5室ピッチでの炭化室からのコークス排出のタイミングで、5室単位で各炭化室の炉蓋20に設けたガスタンク51に燃焼用ガスを供給する。これにより、炭化室1室あたり石炭の装入からコークスの排出まで間(24時間)に、そのガスタンク51に燃焼用ガスを5回供給することができる。すなわち、n室ピッチで炭化室からコークスを排出する場合、そのコークス排出のタイミングで同時にn室以上の炭化室の炉蓋の燃焼用ガス吹込手段50(ガスタンク51)に燃焼用ガスを供給可能とすることにより、炭化室1室あたり石炭の装入からコークスの排出まで間に、その燃焼用ガス吹込手段50に燃焼用ガスを必要に応じてn回以上供給することができる。
【0033】
燃焼用ガス吹込手段50による燃焼用ガスの吹込は、
図5で説明したガス流路により行う。すなわち、ガスタンク51出側の吹込配管52に設けた減圧弁53により燃焼用ガスを例えば5kPa以下に減圧し、吹込配管52先端の吹込ノズルから炉蓋のガス通路21へ燃焼用ガスを吹き込む。本実施例において吹込配管52は
図2に示したように2本設けており、吹込流量は合計で例えば0.4〜4m
3/hである。
【0034】
ここで、具体的な吹込流量は炭化室の仕様等に合わせて変化させるが、仮にガスタンク51の充填圧を9気圧、減圧弁53による減圧後の圧力を2.5kPaとし、直径2.2mmの吹込配管52を用いて吹き込むとすると、燃焼用ガスの吹込流量は0.9m
3/hとなり、ガスタンク51の容量を500Lとすると、5時間でガスタンク51が空となる。なお、燃焼用ガスとガス通路21内の炉内ガス(コークス炉ガス)との反応熱量をできる限り多くするため、基本的にはガスタンク51に充填した燃焼用空気は次の充填直前までに吹込切るように設定する。本実施例では、炭化室が100室あり、稼動率100%で稼働しているとすると、各ガスタンク51には4.8時間に1回燃焼用ガスを供給することとなり、ガスタンク51が空になることはない。ただし、操業条件によっては、炉内(ガス通路21)への燃焼用ガスの吹込は途切れてもよい。
【0035】
図7は、コークス炉の炭化室において、石炭の装入からコークスの排出まで間(24時間)の炭化室の内圧(炉内圧)及びガス発生量の変化と、燃焼用ガスの吹込のタイミングの一例を概念的に示す。同図に示すように、炭化室における石炭の乾留初期の段階ではガス発生量が多く炉内圧も高い。この時期に炉内(ガス通路21)に燃焼用ガスを吹き込むと、当該炭化室からのガスリークを誘発するおそれがある。したがって、
図7に示す例では、石炭の装入後、5時間経過した時から燃焼用ガスを吹き込むようにしている。
【0036】
ただし、
図7の例はあくまで一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。本発明において燃焼用ガスを連続的に吹き込むことは必須ではなく、例えば
図6(a)及び
図6(c)に示すコークス排出の時期だけに燃焼用ガスを吹き込むようにしてもよい。この場合、ガスタンク51は省略可能である。
【0037】
次に、
図6(a)及び
図6(c)で説明したコークス排出のタイミングで、自動脱着機構を自動的に動作させる機構について説明する。
図8A及び
図8Bはその機構の一例を示す(以下、この機構を「実施例機構」という。)。この実施例機構は、各炉蓋20に設けた閂22と各炭化室側に設けた閂受12との係合解除及び再係合を検知し、これにより自動脱着機構を制御するようにしたものである。なお、
図8Aは炉蓋20が炭化室の両側開口部に設置されている状態、すなわち炉蓋20を取り外す前の状態を示し、
図8Bはコークス排出のために炉蓋20を取り外した状態を示す。また、
図8A及び
図8Bにおいてそれぞれ上段は炉蓋20近傍の構成を示し、下段はそのときの押出機30の動作状況を示している。
【0038】
図2に概念的に示したように炉蓋20には上下に閂22が設けられている。この閂22は、
図8Aに示すように、炉蓋20の本体に対して圧縮スプリング23を介して取り付けられており、常時は圧縮スプリング23の反発力により炭化室側の閂受12に係合している、これにより、炭化室の両側開口部が炉蓋20により確実に閉止される。
【0039】
一方、押出機30には閂プッシャー32が設けられている。なお、
図8A及び
図8Bの下段において閂プッシャー32は省略している。また、
図8A及び
図8Bには示していないが、
図1に示すガイド車40にも同様に閂プッシャーが設けられている。押出機30及びガイド車40における閂プッシャーの動作は同じであるので、以下では押出機30を例に説明する。
【0040】
閂プッシャー32は炉蓋20に対して進退可能に設けられており、
図8Bに示すように閂プッシャー32を前進させると、閂プッシャー32が閂22に突き当たり、圧縮スプリング23の反発力に抗して閂22を押し込む。そうすると、閂22と閂受12との係合が解除され、そのまま炉蓋20を上方に移動させると炭化室の両側開口部が開放され、その後、
図8Bに示すように押出ラム31によりコークスの排出を行う。
【0041】
コークスの排出が完了したら、炭化室の両側開口部の位置まで炉蓋20を下降させる。その後、閂プッシャー32を後退させる。そうすると、
図8Aに示すように閂22と閂受12とが再係合し、炭化室の両側開口部が炉蓋20で閉止される。
【0042】
実施例機構では、閂22と閂受12との係合解除及び再係合を検知する検知手段としてリミットスイッチ33を設けている。リミットスイッチ33は閂プッシャー32の基端側に配置されており、
図8Bのように、閂プッシャー32が前進し閂22と閂受12との係合が解除されるとオフとなり、
図8Aに示すように、閂プッシャー32が後退し閂22と閂受12とが再係合するとオンになる。そして実施例機構では、リミットスイッチ33がオフとなったときに、
図3で説明した自動脱着機構を作動させ、燃焼用ガス供給手段60のガス供給配管63を燃焼用ガス吹込手段50のガスタンク51に接続し、燃焼用ガスを供給する。また、リミットスイッチ33がオンになったときに、再び自動脱着機構を作動させ、燃焼用ガス供給手段60のガス供給配管63を燃焼用ガス吹込手段50のガスタンク51から外す。
【0043】
このように、リミットスイッチ33のオン・オフの信号を利用して自動脱着機構を上述のように制御する制御手段(図示省略)を設けることで、
図6(a)〜
図6(c)で説明したコークス排出のタイミングに合わせた燃焼用ガス吹込装置(自動脱着機構)の動作を、人手を介さずに全自動で行うことができる。
【0044】
なお、実施例機構では、閂22と閂受12との係合解除及び再係合を検知する検知手段としてリミットスイッチ33を使用したが、これに限定されるものではなく、他の検知手段を使用できることは当業者に自明である。
【符号の説明】
【0045】
10 炭化室
11 上昇管
12 閂受
20 炉蓋
21 ガス通路
22 閂
30 押出機(コークス炉の移動機械)
31 押出ラム
40 ガイド車(コークス炉の移動機械)
50 燃焼用ガス吹込手段
51 ガスタンク
51a ガス受口
52 吹込配管
53 減圧弁
54 逆止弁
60 燃焼用ガス供給手段
61 コンプレッサ(供給源)
62 レシーバタンク
63 ガス供給配管
63a ガス供給口
70 ラック・ピニオン機構(自動脱着機構)
71 ラック
72 ピニオン
81 逆止弁
81a スプリング
81b 作動ロッド
82 逆止弁
82a スプリング