(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来のアンテナでは、アンテナエレメントの一端がノイズ源である回路GNDに短絡されており、回路GNDノイズがアンテナエレメントに重畳するという問題がある。それを回避するために、アンテナエレメントを回路GNDと完全に開放とすると、ダイポールアンテナとして作動し、電波を受信できない方向が生じてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、ノイズの抑制が可能でかつ放射特性を向上させることができるアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための形態」欄において用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【0008】
上記「発明が解決しようとする課題」において述べた問題を解決するためになされた発明は、給電部(60)、第1エレメント(10)、第2エレメント(20)、第3エレメント(30)及び第4エレメント(40)を備えたアンテナ(1)である。
【0009】
給電部(60)は、GND(62)及び電力供給部(64)からなるものであり、第1エレメント(10)は、給電部(60)のGND(62)と接続され、無線回路のGNDと同一平面上に、無線回路のGNDと電気的に分離して配置された、所定の面積を有するアンテナエレメントである。
【0010】
また、第2エレメント(20)は、一端が第1エレメント(10)に接続され、他端が開放終端であり、無線回路のGNDと同一平面上に配置された、所定の電気長を有するアンテナエレメントである。
【0011】
第3エレメント(30)は、一端が給電部(60)の電力供給部(64)に接続され、該電力供給部(64)が接続された一端を下として、第1エレメント(10)の占める領域内に、第1エレメント(10)に対し略垂直に配置された、所定の高さを有するアンテナエレメントである。
【0012】
また、第4エレメント(40)は、一端が第3エレメント(30)の他端と接続され、他端が開放終端であり、第1エレメント(10)と略平行、かつ、第2エレメント(20)の第1エレメント(10)に接続されている一端と他端とを結ぶ線と略直角に配置された、所定の電気長を有するアンテナエレメントである。
【0013】
このようなアンテナ(1)は、上記のような第1エレメント(10)〜第4エレメント(40)で構成されており、アンテナ(1)と無線回路のGND(72)との間は、空間的及び電気的にアイソレーションが確保されるため、無線回路のGND(72)から重畳してくるノイズに対しては、平衡型のダイポール構造となる。
【0014】
したがって、アンテナ1に無線回路のGND(72)のノイズが重畳することがなくなるので、ノイズの抑制が可能となる。
また、ノイズに対しては平衡型のダイポールアンテナの特性を示すとともに、送受信する電波に対しては、モノポール型のアンテナとしても作動するようになるので、放射特性を向上させることができる。
【0015】
また、第1エレメント(10)の面積は、請求項2に記載のように、第3エレメント(30)の高さを半径とする円の面積以上であると、アンテナ(1)の利得が最大となる。
また、請求項3に記載のように、第2エレメント(20)、第3エレメント(30)及び第4エレメント(40)の電気長の合計の長さが、送受信する電波の波長の1/2であるとアンテナ(1)の利得が最大となる。
【0016】
ところで、アンテナ(1)の方位特性を変化したい場合には、請求項4に記載のように、一端が第4エレメント(40)に接続され、他端が容量素子(52)を介して第1エレメント(10)に接続された第5エレメント(50)を備えていると、容量素子(52)の容量の大きさによって、アンテナ(1)の方位特性を変化させることができる。
【0017】
したがって、請求項5に記載のように、容量素子(52)を可変容量キャパシタとすると、アンテナ(2)の方位特性を容易に変更することができる。
ところで、車載アンテナには種々のものがあり、そのうちキーレスエントリーシステムでは、一般に受信機は車室内に搭載される。また、受信アンテナは、ダイポールやモノポールのような電界アンテナが用いられる。
【0018】
しかし、車室内では到来波のマルチパスにより定在波が形成され、電界の山、谷が生じる。そのため、電界の谷の位置に受信アンテナが位置すると、いわゆるNull状態となり、通信性能が著しく悪化する。
【0019】
そのようなNull状態を改善する方法としては、一般的に空間ダイバーシティや偏波ダイバーシティが用いられるが、いずれの方法も受信機は大型化する。
そこで、電界の定在波が谷のときに磁界の定在波が山となるという電波の性質に着目し、電界と磁界を別々に受信することでNullを電界と磁界の相互で補間できるようになる。また、電界と磁界はセットで到来するため、それぞれのアンテナを離して配置する必要もないため、受信機を小型化することが期待できる。
【0020】
しかし、従来技術では、同一のGND上に電界アンテナと磁界アンテナとを構成しているため、両アンテナ間のアイソレーションを確保することが困難である。ところが、電界アンテナと磁界アンテナ間のアイソレーションを確保しないと、電界アンテナと磁界アンテナ指向性は同一となるため、期待しているNull補間効果は得られない。
【0021】
したがって、結局は、両アンテナを空間的に離隔して配置したり、アイソレーションを確保するための回路(平衡不平衡変換回路など)を追加したりすることによりアイソレーションを確保している(例えば、特開2007−124182号公報参照)。
【0022】
ところが、電界アンテナのGNDと磁界アンテナのGNDとを平衡不平衡変換回路で分離すると、平衡不平衡変換回路が必要となるので、その分各アンテナを近接配置することができず小型化に限界があるという問題がある。また、平衡不平衡変換回路を必要とする分コスト高となるという問題もある。
【0023】
そこで、請求項6に記載のように、第1〜第4エレメントのうち少なくとも1つのエレメントの1辺に近接対向して配置され、キャパシタ(51)を介してループを構成するとともに、GND(72)及び第1〜第4エレメントと電気的に分離した無給電ループアンテナ(100)を備えるようにするとよい。
【0024】
このようにすると、平衡不平衡変換回路を設けることなく、電界アンテナ(GND及び第1〜第4エレメントで構成されるアンテナ)と磁界アンテナ(無給電ループアンテナ(100)のGNDを分離でき、GNDを介しての相互干渉を防止することができる。
【0025】
なお、ここで「第1〜第4エレメントのうち少なくとも1つのエレメントの1辺に近接対向して配置」とは、GND及び第1〜第4エレメントで構成される電界アンテナの各エレメントと無給ループアンテナ(100)の互いの磁界が鎖交する距離内に配置することを意味している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
[第1実施形態]
(アンテナ1の構成)
図1は、本発明が適用されたアンテナ1の概略の構成を示す図である。
図1に示すようにアンテナ1は、給電部60、第1エレメント10、第2エレメント20、第3エレメント30及び第4エレメント40を備えており、それらが1つの基板70上に設けられている。
【0028】
給電部60は、送受信する電波をアンテナ1に入出力するための部分であり、GND62及び電力供給部64からなっており、GND62と電力供給部64の間に、無線回路から送信電波を入力したり、GND62と電力供給部64の間から無線回路に受信電波を出力したりすることにより、送受信電波を入出力する。
【0029】
第1エレメント10は、給電部60のGND62と接続され、アンテナ1が接続される無線回路のGND72と同一平面上に、無線回路のGND72と電気的に分離して配置されている正方形の平板状のアンテナエレメントである。
【0030】
図1において、第1エレメント10は、正方形であるが、特に正方形である必要はなく、第1エレメント10の面積が、第3エレメント30の高さを半径とする円の面積以上であれば、その形状は正方形でなくとも、基板製造時の種々の条件や制約に合わせて、例えば、円形状としてもよい。
【0031】
第2エレメント20は、短辺と長辺を有する長方形の平板状のアンテナエレメントであり、無線回路のGND72と同一平面上に配置されている。また、その一端(一方の短辺)が第1エレメント10に接続され、他端(他方の短辺)が開放終端となっている。
【0032】
第3エレメント30は、バー状のアンテナエレメントの一端が給電部60の電力供給部64に接続され、その電力供給部64が接続された一端を下(第1エレメント側)として、第1エレメント10の占める領域内に、第1エレメント10に対し略垂直に配置されている。
【0033】
第4エレメント40は、バー状のアンテナエレメントの一端が第3エレメント30の他端(上端)と接続され、他端が開放終端であり、第1エレメント10と略平行、かつ、第2エレメント20の第1エレメント10に接続されている一端と他端とを結ぶ線と略直角に配置されている。
【0034】
また、第2エレメント20の長辺の電気長、第3エレメント30の高さ方向の電気長及び第4エレメント40の長手方向の電気長の合計は、アンテナ1で送受信する電波の波長の1/2となっている。
【0035】
また、基板70には、平板状の、無線回路のGND72が設けられている。この無線回路のGND72と第1エレメント10及び第2エレメント20との間には、無線回路のGND72と第1エレメント10及び第2エレメント20とを電気的に分離するようにギャップが設けられている。
【0036】
さらに、基板70の無線回路のGND72上に、IC74が搭載されており、これが伝導性のノイズ源となっている。
(アンテナ1の特徴)
次に、
図2に基づき、アンテナ1の効果について説明する。
図2は、ノイズ源となるIC74(
図1参照)から、433.9[MHz]近傍のノイズが発生している場合の従来技術のアンテナとアンテナ1の性能を示したものである。
【0037】
図2(a)では、横軸が周波数を、縦軸がノイズレベルを示しており、
図2(a)において、「A」に示すグラフが従来技術のアンテナにおけるノイズを示し、「B」に示すグラフがアンテナ1におけるノイズを示している。
【0038】
図2(a)に示すように、従来技術のアンテナに比べ、ノイズ源であるIC74からアンテナ1に重畳する伝導ノイズが抑制されていることが分かる。
これは、アンテナ1は、第1エレメント10〜第4エレメント40で構成される平衡型のダイポール構造となるため、アンテナ1と無線回路のGND72との間は、空間的及び電気的にアイソレーションが確保されるためである。
【0039】
また、
図2(b)に示すように、第1エレメント10の面積が1256[mm
2]、つまり、第1エレメント10の面積が、第2エレメント20の電気長20[mm]を半径とする面積以上であれば、Z軸方向の電界が強く形成されることが分かる。
【0040】
これは、第1エレメント10に所定の面積が確保されるため、第1エレメント10と第4エレメント40との間で容量結合が発生し、Z軸方向の電界が強く形成されるからである。
【0041】
その結果、
図2(c)に「C」で示すように、従来技術によるアンテナでは、3軸方向(X,Y,Z方向)の電界を形成できず、不感方向が生じていたのに対し、アンテナ1では、
図2(c)中に「D」で示すように、3軸方向に電界が形成され、不感方向が改善される。
【0042】
つまり、アンテナ1は、ノイズ源(IC74)に対しては、平衡型のアンテナとして作動して、ノイズの重畳を抑制する働きをするとともに、モノポール型のような不平衡アンテナの作動を取り入れることで、放射特性と向上させるアンテナ構造となっているのである。
【0043】
また、第1エレメント10の面積が、第3エレメント30の高さを半径とする円の面積以上であるため、アンテナ1の利得が最大となるようになっている。
さらに、第2エレメント20、第3エレメント30及び第4エレメント40の電気長の合計の長さが、送受信する電波の波長の1/2であるので、アンテナ1の利得が最大となるようになっている。
[第2実施形態]
(アンテナ2の構成)
次に、第1実施形態のアンテナ1に、第5エレメント50を追加した第2実施形態のアンテナ2の構成について、
図3に基づき説明する。
【0044】
図3に示すように、アンテナ2は、第1実施形態にけるアンテナ1の第1エレメント10〜第4エレメント40に加え、第5エレメント50を備えている。
第5エレメント50は、L字形状のアンテナエレメントの長辺端が第4エレメント40に接続され、短辺端が可変容量キャパシタ52を介して第1エレメント10に接続されている。
(アンテナ2の特徴)
以上のような構成を有するアンテナ2では、可変容量キャパシタ52の容量の大きさによって、アンテナ2の方位特性を変化させることができる。
【0045】
つまり、アンテナ2の送受信周波数を433[MHz]とし、可変容量キャパシタ52の容量を1[pF]とすると、
図4(a)に示すように、第1エレメント10と第5エレメント50との間で368[Ω]のアイソレーションが確保され、
図4(a)のアンテナ2の電流は、
図4(a)中に矢印で示すように、第3エレメント30と第4エレメント40に集中する。
【0046】
つまり、アンテナ2は、ダイポールアンテナとして作動し、
図4(b)に示すように、第1実施形態におけるアンテナ1と同様の効果(ノイズ抑制、放射特性)を得ることができる(従来のアンテナの放射特性を
図4(b)中「A」で、アンテナ2の放射特性を「B」で示す)。
【0047】
一方、可変容量キャパシタ52の容量を50[pF]とすると、第1エレメント10と第5エレメント50は、ほぼ導通状態(7[Ω])となり、アンテナ2に流れる電流は、
図4(c)中に矢印で示すように、第5エレメント50に集中する。つまり、ダイポールアンテナの一部にループアンテナを構成したような電流分布となる。
【0048】
つまり、可変容量キャパシタ52の容量を変化させることにより、
図4(d)中に「C」で示すように、アンテナ2の電波の主放射方向を変化させることができる。
また、
図3に示すように、可変容量キャパシタ52の容量を電子回路80により、例えば、アンテナ2の受信電圧を電圧検出回路82でモニターしながら、A/D変換器84でデジタル値に変換し、制御回路86で、その受信電圧が最大となるような容量値にするなど、アクティブに制御することにより、アンテナ2の放射特性を常に最適なものとすることができる。
[第3実施形態]
(アンテナ3,4の構成)
次に、
図5に基づき第3実施形態におけるアンテナ3及びアンテナ4の構成について説明する。
図5は、第3実施形態のアンテナ3及びアンテナ4の概略の構成を示す図である。
【0049】
図5(a)に示すように、アンテナ3は、第1実施形態のアンテナ1とループアンテナ100とを備えている。
ループアンテナ100は、ループエレメント102とコンデンサ104とを備えている。
【0050】
ループエレメント102は、導体が略長方形に形成されており、長手方向の一辺(底辺)の中央部分が切り欠かれて、空間的に分離されており、その部分にコンデンサ104が直列に接続されている。
【0051】
そして、ループアンテナ100は、その長手方向をアンテナ1の第4エレメント40の方向に一致させ、かつ、第4エレメント40に近接させて配置してある。
なお、ループアンテナ100は、第4エレメント40以外に、第1エレメント10、第2エレメント20の平面に平行に近接させてもよいし、第3エレメント30の方向とループアンテナ100の長手方向又は短手方向が一致するように近接させてもよい。
【0052】
また、「近接させ配置する」とは、アンテナ1の第1エレメント10〜第4エレメント40とループアンテナ100の互いの磁界が鎖交する距離内に配置することを意味している。
【0053】
また、
図5(b)に示すように、アンテナ4は、第2実施形態のアンテナ2を基本とする電界アンテナとループアンテナ100とを備えている。
ここで、アンテナ4においてはは、基本とするアンテナ2の第4エレメント40の中央部分と先端部分から、基板70方向に(第3エレメント30と同じように垂直方向に)、第41エレメント41及び第42エレメント42が設けられている。
【0054】
また、ループアンテナ100は、アンテナ3のループアンテナ100と同じアンテナであり、配置されている位置もアンテナ3と同じである。
なお、ここで「第1〜第4エレメントのうち少なくとも1つのエレメントの1辺に近接対向して配置」とは、GND及び第1〜第4エレメント10〜40で構成される電界アンテナの各エレメントと無給ループアンテナ(100)の互いの磁界が鎖交する距離内に配置することを意味している。
(アンテナ3,4の特徴)
次に、上記のような構成を有するアンテナ3及びアンテナ4の特徴について説明する。アンテナ3,4において、アンテナ1,2は、いわゆる電界アンテナであり、ループアンテナ100は、いわゆる磁界アンテナである。
【0055】
電界アンテナであるアンテナ3,4と磁界アンテナであるループアンテナ100を
図5に示すように近接させると、電界アンテナであるアンテナ3,4の指向性におけるNullと磁界アンテナであるループアンテナ100の指向性におけるNullを相互補間することができる。
【0056】
したがって、平衡不平衡変換回路を設けることなく、電界アンテナ(GND及び第1〜第4エレメントで構成されるアンテナ1,2)と磁界アンテナ(無給電ループアンテナ(100)のGNDを分離でき、GNDを介しての相互干渉を防止することができる。
【0057】
このような特徴の具体例を、
図6に示す。
図6は、アンテナ4の特性を示している。アンテナ4では、第4エレメント40のインダクタ成分とループアンテナ100との間が磁気結合され、
図6(a)に示すように2共振化される。
【0058】
この2つの共振点のうち一方の共振点(
図6(b)中、421[MHz]の周波数の点)は、アンテナ2(電界アンテナ)による共振点であり、他方の共振点(
図6(b)中、382[MHz]の周波数の点)は、ループアンテナ100(磁界アンテナ)による共振である、
また、
図6(b)に示すように、周波数421[MHz]においてアンテナ2に多くの電流分布が見られ、また、周波数382[MHz]においてループアンテナ100に多くの電流分布が見られ、それぞれ共振していること、つまり、それぞれの周波数で良好な送受信が可能となっていることが分かる。
[第4実施形態]
次に、
図7に基づき、第3実施形態におけるアンテナ4の電界アンテナであるアンテナ2と磁界アンテナであるループアンテナ100とを切り替えるようにしたアンテナ5について説明する。
図7は、第4実施形態におけるアンテナ5の概略の構成と指向性を示す図である。
【0059】
アンテナ5は、
図7(a)に示すように、第3実施形態のアンテナ4の第1エレメント10の部分に、受信回路12、スイッチ14、第1整合回路16及び第2整合回路18が設けられている。
【0060】
受信回路12は、アンテナ4を構成する電界アンテナであるアンテナ2及び磁界アンテナであるループアンテナ100において受信した電波を受信するための回路である。
スイッチ14は、第1整合回路16及び第2整合回路18と受信回路12の間に設けられ、制御回路86(
図3参照)からの信号により、第1整合回路16(つまりアンテナ2)と第2整合回路18(つまりループアンテナ100)のいずれか又は両方を選択して受信回路12に接続するための高周波スイッチである。
【0061】
第1整合回路16は、スイッチ14を介してアンテナ2を受信回路12に接続する場合に、アンテナ2と受信回路12との間の高周波の反射等を防止するなど、電気的整合のための高周波回路である。
【0062】
第2整合回路18は、スイッチ14を介してループアンテナ100を受信回路12に接続する場合に、ループアンテナ100と受信回路12との間の高周波の反射等を防止するなど、電気的整合のための高周波回路である。
(アンテナ5の特徴)
以上のような構成のアンテナ5では、制御回路86からの信号によりアンテナ4とループアンテナ100のいずれか又はその両方を選択できる。つまり、第1整合回路16及び第2整合回路18を適切に選択することで、電界アンテナ(アンテナ2)と磁界アンテナ(ループアンテナ100)とを所定の周波数で動作可能とすることができる。
【0063】
アンテナ5を、周波数433[MHz]で作動させたときの平面内の指向性を
図7(b),(c)に示す。アンテナ5において、ループアンテナ100単体の指向性、つまり、磁界アンテナとして作動させた場合の指向性は
図7(b)に示すようになり、アンテナ2単体の指向性、つまり、電界アンテナとして作動させた場合の指向性は
図7(c)に示すようになる。
【0064】
そして、アンテナ5を、433[MHz]で作動させた場合の指向性を
図8に示す。
図8(a)において、図の中心は、アンテナ5を搭載した車両の位置であり、円グラフの周囲の数字は,車両正面を0度として0〜360度の位相を示している。
【0065】
また、薄い実線(
図8(a)において「A」で示す)は、ループアンテナ100を作動させない場合(つまり、スイッチ14で第2整合回路18を選択しない場合)のアンテナ5の指向性を示し、濃い実線(
図8(a)において「B」で示す)は、ループアンテナ100を作動させた場合(つまり、スイッチ14で第1整合回路16及び第2整合回路18の両方を選択した場合)のアンテナ5の指向性を示している。また、
図8(b)は、
図8(a)に対応するNull点での位相差を示している。
【0066】
さらに、
図8(c)には、
図8(a),(b)中の丸付き数字に対する位相差の値を示している。
図8(a),(b)に示すように、電界型アンテナ(アンテナ2)で生じるNullが磁界型アンテナ(ループアンテナ100)の指向性により補間できている。また、そのときの位相は、それぞれ90度ずれており、電界と磁界とを受信できることがわかる。
[第5実施形態]
次に、
図9及び
図10に基づき、第5実施形態のアンテナ6について説明する。
図9(a)に示すように、アンテナ6は、アンテナ200とループアンテナ300とを備えている。
【0067】
アンテナ200は、電界アンテナであり、第1実施形態のアンテナ1の第4エレメント40の先端に第3エレメント30と平行、つまり、第1エレメント10に垂直方向に、基板70までの長さを有する第202エレメント202が設けられている。
【0068】
ループアンテナ300は、
図9(a)に示すように、門形(コの字)の形状であり、基板70に対して垂直方向に設けられた2本の第301エレメント301及び第302エレメント302と、第301エレメント301と第302エレメント302を上端で結合する第303エレメント303を備えている。
【0069】
アンテナ6の一部(ランド304部分)の拡大図である
図9(b)に示すように、アンテナ200は、基板70のGND72端部から、コンデンサなどのキャパシタ(
図9(b)では、コンデンサ204)を介して基板GND72に電気的に接続されている。
【0070】
そして、第301エレメント301の下端は第1エレメント10上に電気的に短絡状態となるように設置され、第302エレメント302の下端とアンテナ200の第202エレメント202とが導電性の材料で形成されたランド304で接続されている。
(アンテナ6の特徴)
以上のような構成のアンテナ6の周波数312[MHz]における電流ベクトルを
図10(a)に示す、
図10(a)に示すように、磁界アンテナであるループアンテナ300に多くの電流分布があること、つまり、ループアンテナ300が共振していることが分かる。
【0071】
また、
図10(b)に、周波数433[MHz]に対するアンテナ1とアンテナ6の指向性を示す。
図10(b)において、薄い実線(
図10(b)中に「B」で示す)がアンテナ1の指向性を示し、濃い実線(
図10(b)中に「A」で示す)がアンテナ6の指向性を示す。
図10(b)に示すように、アンテナ1に比べ、アンテナ6では、指向性が改良されていることが分かる。
【0072】
また、アンテナ1の全周平均利得が−10.5[dBi]であるのに対し、アンテナ6の全周平均利得が−8.9[dBi]となっており、このことからも、アンテナ1に比べ、アンテナ6では、送受信特性が改良されていることが分かる。
【0073】
さらに、
図11に、アンテナ6を車載した場合のアンテナの誘起電力の特性を示す。
図11に濃い実線(
図11中「A」で示す)でアンテナ6の特性を示し、薄い実線(
図11中「B」で示す)でアンテナ1(電界アンテナ)の特性を示す。
図11の破線の円で囲った部分に示すように、3箇所でNull点が改善されていることが分かる。
(その他の実施形態)
図12(a)に、第3実施形態のアンテナ4のループアンテナ100を複数(
図12(a)では2つ)重ねて設置したアンテナ7を示す。また、
図12(b)に第2実施形態のアンテナ2の第4エレメント40と第5エレメント50のそれぞれに各1個のループアンテナ100を並列に近接配置したアンテナ8を示す。
【0074】
図13(a)に第3実施形態のアンテナ3を構成するアンテナ1の第1エレメント10、第2エレメント20及び基板GNDを一体化して、モノポール型の電界アンテナとしたアンテナ3aを示す。
【0075】
このようなアンテナ3aであっても、モノポール型電界アンテナと磁界アンテナであるループアンテナ100により、GNDノイズの影響を受けにくく、指向性のよいアンテナとすることができる。
【0076】
図13(b)に第5実施形態のアンテナ6を構成するアンテナ200の第1エレメント10、第2エレメント20及び基板GNDを一体化して、電界アンテナとしたアンテナ6aを示す。
【0077】
このようなアンテナ6aであっても、電界アンテナと磁界アンテナであるループアンテナ100により、GNDノイズの影響を受けにくく、指向性のよいアンテナとすることができる。