(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、モータの第1実施形態を
図1〜
図12に従って説明する。
図1及び
図2に示すように、ブラシレスモータ1は、回転軸(図示せず)に固着されたロータ2と、そのロータ2の外側に配置され図示しないモータハウジングに固着された環状のステータ3とを有している。なお、図示しない回転軸は、同じく図示しないモータハウジングに取着した軸受にて回転可能に支持されている。
【0031】
(ロータ2)
図4及び
図5に示すように、ロータ2は、第1及び第2ロータコア11,21、界磁磁石31、第1及び第2環状補助磁石41,51を有している。
【0032】
(第1ロータコア11)
図3及び
図5に示すように、第1ロータコア11は、円板状に形成された電磁鋼板よりなる第1ロータコアベース14を有している。第1ロータコアベース14の中央位置には、回転軸(図示せず)を貫通し固着するための貫通穴11aが形成されている。
【0033】
また、第1ロータコアベース14の外周面14cには、等間隔に12個の同一形状をした第1ロータ側爪状磁極15が、径方向外側に突出されその先端が屈曲して軸方向第2ロータコア21側に延出形成されている。
【0034】
図3に示すように、第1ロータ側爪状磁極15において、第1ロータコアベース14の外周面14cから径方向外側に突出した部分は、その板厚(軸線方向の長さ)を第1ロータコアベース14の板厚(軸線方向の長さ)より厚く形成し、第1段差部15dとしている。この第1段差部15dは、第2ロータコア21側に厚くなるように形成されていて、反第2ロータコア21側の水平な面(以下、第1背面15mという)が第1ロータコアベース14の反対向面14bと面一となっている。
【0035】
また、第1段差部15dの径方向内側に形成された第1段差面15eは、軸線方向から見て、図示しない回転軸の中心軸線Oを中心として第1ロータコアベース14の外周面14cと同心円をなす円弧面である。
【0036】
そして、第1段差部15dの径方向外側端から軸方向第2ロータコア21側に第1磁極部15fが延出形成されることによって第1ロータ側爪状磁極15が形成される。第1段差部15dと第1磁極部15fからなる第1ロータ側爪状磁極15の周方向端面15a,15bは、共に平坦面であって、先端に向かうほど互いに近づくようになっている。
【0037】
つまり、第1段差部15dを軸方向から見たときの形状は径方向外側にいくほど幅狭になる台形形状になるとともに、第1磁極部15fを径方向から見たときの形状は先端にいくほど幅狭になる台形形状になる。
【0038】
第1ロータ側爪状磁極15の第1磁極部15fは軸直交方向断面が扇形状に形成されていて、その第1磁極部15fの径方向の外側面15j及び内側面15kは、軸線方向から見て、中心軸線Oを中心として第1ロータコアベース14の外周面14cと同心円をなす円弧面である。
【0039】
また、各第1ロータ側爪状磁極15の周方向の角度、即ち、周方向端面15a,15b間が回転軸(図示せず)の中心軸線Oとなす角度は、隣り合う第1ロータ側爪状磁極15と第1ロータ側爪状磁極15の間の隙間の角度より小さく設定されている。
【0040】
(第2ロータコア21)
図5に示すように、第2ロータコア21は、第1ロータコア11と同一材質及び同一形状であって、円板状に形成された電磁鋼板よりなる第2ロータコアベース24の中央位置には、回転軸(図示せず)を貫通し固着するための貫通穴21aが形成されている。
【0041】
また、第2ロータコアベース24の外周面には、等間隔に12個の同一形状をなした第2ロータ側爪状磁極25が、径方向外側に突出されその先端が屈曲して軸方向第1ロータコア11側に延出形成されている。
【0042】
図3に示すように、第2ロータ側爪状磁極25において、第2ロータコアベース24の外周面24cから径方向外側に突出した部分は、その板厚(軸線方向の長さ)を第2ロータコアベース24の板厚(軸線方向の長さ)より厚く形成し、第2段差部25dとしている。この第2段差部25dは、第1ロータコア11側に厚くなるように形成されていて、反第1ロータコア11側の水平な面(以下、第2背面25mという)が第2ロータコアベース24の反対向面24bと面一となっている。
【0043】
また、第2段差部25dの径方向内側に形成された第2段差面25eは、軸線方向から見て、中心軸線Oを中心として第2ロータコアベース24の外周面24cと同心円をなす円弧面である。
【0044】
そして、第2段差部25dの径方向外側端から軸方向第1ロータコア11側に第2磁極部25fが延出形成されることによって第2ロータ側爪状磁極25が形成される。第2段差部25dと第2磁極部25fからなる第2ロータ側爪状磁極25の周方向端面25a,25bは、共に平坦面であって、先端に向かうほど互いに近づくようになっている。
【0045】
つまり、第2段差部25dを軸方向から見たときの形状は径方向外側にいくほど幅狭になる台形形状になるとともに、第2磁極部25fを径方向から見たときの形状は先端にいくほど幅狭になる台形形状になる。
【0046】
第2ロータ側爪状磁極25の第2磁極部25fは軸直交方向断面が扇形状に形成されていて、その第2磁極部25fの径方向の外側面25j及び内側面25kは、軸線方向から見て、中心軸線Oを中心として第1ロータコアベース14の外周面14cと同心円をなす円弧面である。
【0047】
また、各第2ロータ側爪状磁極25の周方向の角度、即ち、周方向端面25a,25b間が回転軸(図示せず)の中心軸線Oとなす角度は、隣り合う第2ロータ側爪状磁極25と第2ロータ側爪状磁極25の間の隙間の角度より小さく設定されている。
【0048】
そして、第2ロータコア21は、第1ロータコア11に対して、第2ロータコア21の第2ロータ側爪状磁極25が、軸方向から見てそれぞれ第1ロータコア11の第1ロータ側爪状磁極15間に位置するように配置固定されるようになっている。このとき、第2ロータコア21は、第1ロータコア11と第2ロータコア21との軸方向の間に界磁磁石31が配置されるように、第1ロータコア11に対して組み付けられる。
【0049】
(界磁磁石31)
図5に示すように、界磁磁石31は、本実施形態では、フェライト磁石よりなる円板状の永久磁石であって、その中央位置に回転軸(図示せず)を貫通する貫通穴32が形成されている。そして、界磁磁石31の一方の側面33が、第1ロータコアベース14の対向面14aと、界磁磁石31の他方の側面34が、第2ロータコアベース24の対向面24aとそれぞれ当接し、界磁磁石31は第1ロータコア11と第2ロータコア21との間に挟持固定される。
【0050】
界磁磁石31の外径は、第1及び第2ロータコアベース14,24(外周面14c,24c)の外径と一致するように設定されている。
従って、第1ロータコアベース14と第2ロータコアベース24とで界磁磁石31を挟持するとき、
図3に示すように、各第1及び第2ロータ側爪状磁極15,25の第1及び第2段差部15d,25dの第1及び第2段差面15e,25eが、界磁磁石31の外周面35に当接する。
【0051】
また、界磁磁石31の厚さ(軸線方向の長さ)は、予め定めた厚さに設定されている。本実施形態では、
図3に示すように、第1及び第2ロータ側爪状磁極15,25は、その先端面15c,25cが、それぞれ第1及び第2ロータコアベース14,24の対向面14a,24aと面一となる長さにした。
【0052】
そして、界磁磁石31は、
図3に示すように、軸方向に磁化(着磁)されていて、第1ロータコア11側をN極、第2ロータコア21側をS極となるように磁化されている。従って、この界磁磁石31によって、第1ロータコア11の第1ロータ側爪状磁極15はN極(第1磁極)として機能し、第2ロータコア21の第2ロータ側爪状磁極25はS極(第2磁極)として機能する。
【0053】
このように構成された、ロータ2は、界磁磁石31を用いた、所謂ランデル型構造のロータとなる。そして、ロータ2は、N極となる第1ロータ側爪状磁極15と、S極となる第2ロータ側爪状磁極25とが周方向に交互に配置され磁極数が24極(極数対が12個)のロータとなる。
【0054】
(第1環状補助磁石41)
図4及び
図5に示すように、第1ロータコア11の反第2ロータコア21側には、第1環状補助磁石41が固着されている。
【0055】
詳述すると、
図3及び
図5に示すように、第1ロータコア11の各第1ロータ側爪状磁極15において、第1段差部15dの反第2ロータコア21側の水平な第1背面15mと円弧面よりなる第1磁極部15fの外側面15jとが交差するエッジは、断面直角2等辺3角形状に切り欠いて第1連結面f1が形成されている。ここで、断面直角2等辺3角形において斜辺を挟んだ2辺の長さは、第1ロータコアベース14の軸方向の厚さと一致させている。そして、各第1ロータ側爪状磁極15に形成された第1連結面f1は、外側面15jが円弧面であることから、中心軸線Oを中心とした円錐状の面に形成されている。
【0056】
第1環状補助磁石41は、これら各第1ロータ側爪状磁極15の第1連結面f1に対して接着材にて接着固定されている。
図3及び
図5に示すように、第1環状補助磁石41は、円環状に形成したフェライト磁石よりなる永久磁石である。第1環状補助磁石41は、上記したエッジを断面直角2等辺3角形に切り欠いた時と同じ断面形状である断面直角2等辺3角形状であって、断面直角2等辺3角形の斜辺が第1環状補助磁石41の内側面41aを形成している。
【0057】
従って、第1環状補助磁石41の内側面41aは、中心軸線Oを中心とした円錐状の面に形成されている。そして、第1環状補助磁石41の内側面41aが、所定のピッチで各第1ロータ側爪状磁極15の第1連結面f1に対して接着材にて接着固定される。
【0058】
第1環状補助磁石41が各第1ロータ側爪状磁極15に接着固定されたとき、第1環状補助磁石41の径方向外側面41bは、第1磁極部15fの外側面15jと面一になる。また、第1環状補助磁石41の軸方向外側面41cは、第1段差部15dの反第2ロータコア21側の水平な第1背面15mと面一になる。
【0059】
また、このとき、周方向において第1ロータ側爪状磁極15と第1ロータ側爪状磁極15の間に相対配置された第2磁極部25fの先端面25cは、第1環状補助磁石41の径方向外側面41bと内側面41aが交差するエッジ部分と当接するようになっている。
【0060】
図6に示すように、第1環状補助磁石41は、周方向に第1ロータ側爪状磁極15と第2ロータ側爪状磁極25の数(24個)だけ等分割されてなる24個の第1磁石部42が形成されている。
【0061】
そして、
図7に示すように、第1環状補助磁石41は、第1磁石部42と第1磁石部42との各境界が、それぞれ各第1ロータ側爪状磁極15の第1磁極部15fの周方向中心位置又は各第2ロータ側爪状磁極25の第2磁極部25fの周方向中心位置と一致するように、第1ロータコア11に対して配置される。
【0062】
図6及び
図7に示すように、このように配置された第1環状補助磁石41は、各第1磁石部42において周方向に磁化(着磁)されているとともに、各第1磁石部42において第1磁極部15f側がN極、第2磁極部25f側がS極となるように磁化(着磁)されている。
【0063】
つまり、各第1ロータ側爪状磁極15の第1磁極部15fの基端部分は、それぞれ各第1磁石部42のN極が配置される。また、各第2ロータ側爪状磁極25の第2磁極部25fの先端部分は、それぞれ各第1磁石部42のS極が配置される。
【0064】
これによって、N極の第1磁極部15fの基端部分からS極の第2磁極部25fの先端部分への漏れ磁束(短絡磁束)は低減する。
(第2環状補助磁石51)
図4及び
図5に示すように、第2ロータコア21の反第1ロータコア11側には、第2環状補助磁石51が固着されている。
【0065】
詳述すると、
図3及び
図5に示すように、第2ロータコア21の各第2ロータ側爪状磁極25において、第2段差部25dの反第1ロータコア11側の水平な第2背面25mと円弧面よりなる第2磁極部25fの外側面25jとが交差するエッジは、断面直角2等辺3角形状に切り欠いて第2連結面f2が形成されている。ここで、断面直角2等辺3角形において斜辺を挟んだ2辺の長さは、第2ロータコアベース24の軸方向の厚さと一致させている。そして、各第2ロータ側爪状磁極25に形成された第2連結面f2は、外側面25jが円弧面であることから、中心軸線Oを中心とした円錐状の面に形成されている。
【0066】
第2環状補助磁石51は、これら各第2ロータ側爪状磁極25の第2連結面f2に対して接着材にて接着固定されている。
図3及び
図5に示すように、第2環状補助磁石51は、環状に形成したフェライト磁石よりなる永久磁石である。第1環状補助磁石41は、上記したエッジを断面直角2等辺3角形に切り欠いた時と同じ断面形状である断面直角2等辺3角形状であって、断面直角2等辺3角形の斜辺が第2環状補助磁石51の内側面51aを形成している。
【0067】
従って、第2環状補助磁石51の内側面51aは、中心軸線Oを中心とした円錐状の面に形成されている。そして、第2環状補助磁石51の内側面51aが、所定のピッチで各第2ロータ側爪状磁極25の第2連結面f2に対して接着材にて接着固定される。
【0068】
第2環状補助磁石51が各第2ロータ側爪状磁極25に接着固定されたとき、第2環状補助磁石51の径方向外側面51bは、第2磁極部25fの外側面25jと面一になる。また、第2環状補助磁石51の軸方向外側面51cは、第2段差部25dの反第1ロータコア11側の水平な第2背面25mと面一になる。
【0069】
また、このとき、周方向において第2ロータ側爪状磁極25と第2ロータ側爪状磁極25の間に相対配置された第1磁極部15fの先端面15cは、第2環状補助磁石51の径方向外側面51bと内側面51aが交差するエッジ部分と当接するようになっている。
【0070】
図6に示すように、第2環状補助磁石51は、周方向に第1ロータ側爪状磁極15と第2ロータ側爪状磁極25の数(24個)だけ等分割されてなる24個の第2磁石部52が形成されている。
【0071】
そして、
図7に示すように、第2環状補助磁石51は、第2磁石部52と第2磁石部52との各境界が、それぞれ各第2ロータ側爪状磁極25の第2磁極部25fの周方向中心位置又は各第1ロータ側爪状磁極15の第1磁極部15fの周方向中心位置と一致するように、第2ロータコア21に対して配置される。
【0072】
図6及び
図7に示すように、このように配置された第2環状補助磁石51は、各第2磁石部52において周方向に磁化(着磁)されているとともに、各第2磁石部52において第1磁極部15f側がN極、第2磁極部25f側がS極となるように磁化(着磁)されている。
【0073】
つまり、各第2ロータ側爪状磁極25の第2磁極部25fの基端部分は、それぞれ各第2磁石部52のS極が配置される。また、各第1ロータ側爪状磁極15の第1磁極部15fの先端部分は、それぞれ各第2磁石部52のN極が配置される。
【0074】
これによって、N極の第1磁極部15fの先端部分からS極の第2磁極部25fの基端部分への漏れ磁束(短絡磁束)は低減する。
(スタータ3)
ロータ2の径方向外側に配置されたステータ3は、
図8及び
図9に示すように、第1及び第2ステータコア61,71とコイル部81を有している。
【0075】
(第1ステータコア61)
図9に示すように、第1ステータコア61は、電磁鋼板よりなる円環板状の第1ステータコアベース64を有している。円環板状の第1ステータコアベース64は、その外周部を第2ステータコア71側に屈曲形成して第1ステータ側円筒壁64eが形成されている。第1ステータ側円筒壁64eの環状の先端面64fは、第2ステータコア71と対峙するようになっている。第1ステータ側円筒壁64eの軸線方向の長さは、各相のロータの軸線方向の長さの半分の長さである。
【0076】
その第1ステータコアベース64の内周面64dには、等間隔に12個の第1ステータ側爪状磁極65が、径方向内側に突出されその先端が軸方向第2ステータコア71側に屈曲形成されている。
【0077】
ここで、第1ステータ側爪状磁極65において、第1ステータコアベース64の内周面64dから径方向内側に突出した部分を第1ステータ側基部65gといい、軸方向に屈曲された先端部分を第1ステータ側磁極部65hという。そして、第1ステータ側磁極部65hが屈曲形成される以前の第1ステータ側爪状磁極65は、軸方向から見たとき、先端に向かうほど先細となる台形形状に形成されている。
【0078】
つまり、第1ステータ側基部65gを軸方向から見たときの形状は径方向内側にいくほど幅狭になる台形形状になるとともに、第1ステータ側磁極部65hを径方向から見たときの形状は先端にいくほど幅狭になる台形形状になる。そして、第1ステータ側基部65gと第1ステータ側磁極部65hからなる第1ステータ側爪状磁極65の周方向端面65a,65bは、共に平坦面であって、先端に向かうほど互いに近づくことになる。
【0079】
これによって、第1ステータ側基部65gを径方向から見た軸線方向に切断した断面の断面積は、径方向内側に向かうほどその断面積が小さくなる。また、第1ステータ側磁極部65hを軸方向から見た径方向に切断した断面の断面積は、先端側に向かうほどその断面積が小さくなる。
【0080】
なお、軸方向に屈曲形成された第1ステータ側磁極部65hは軸直交方向断面が扇形状に形成されていて、その径方向の外側面65j及び内側面65kは、軸線方向から見て、中心軸線Oを中心として第1ステータコアベース64の内周面64dと同心円をなす円弧面である。
【0081】
各第1ステータ側爪状磁極65の第1ステータ側基部65gの周方向の角度、即ち、周方向端面65a,65bの基端部間が回転軸(図示せず)の中心軸線Oとなす角度は、隣り合う第1ステータ側爪状磁極65の第1ステータ側基部65gに基端間の隙間の角度より小さく設定されている。
【0082】
(第2ステータコア71)
図9に示すように、第2ステータコア71は、第1ステータコアベース64と同一材質及び同形状の電磁鋼板よりなる円環板状の第2ステータコアベース74を有している。円環板状の第2ステータコアベース74は、その外周部を第1ステータコア61側に屈曲形成して第2ステータ側円筒壁74eが形成されている。第2ステータ側円筒壁74eの環状の先端面74fは、第1ステータ側円筒壁64eの先端面64fと対峙するようになっている。第2ステータ側円筒壁74eの軸線方向の長さは、各相のロータの軸線方向の長さの半分の長さである。
【0083】
その第2ステータコアベース74の内周面74dには、等間隔に12個の第2ステータ側爪状磁極75が、径方向内側に突出されその先端が軸方向第1ステータコア61側に屈曲形成されている。
【0084】
ここで、第2ステータ側爪状磁極75において、第2ステータコアベース74の内周面74dから径方向内側に突出した部分を第2ステータ側基部75gといい、軸方向に屈曲された先端部分を第2ステータ側磁極部75hという。そして、第2ステータ側磁極部75hが屈曲形成される以前の第2ステータ側爪状磁極75は、軸方向から見たとき、先端に向かうほど先細となる台形形状に形成されている。
【0085】
つまり、第2ステータ側基部75gを軸方向から見たときの形状は径方向内側にいくほど幅狭になる台形形状になるとともに、第2ステータ側磁極部75hを径方向から見たときの形状は先端にいくほど幅狭になる台形形状になる。そして、第2ステータ側基部75gと第2ステータ側磁極部75hからなる第2ステータ側爪状磁極75の周方向端面75a,75bは、共に平坦面であって、先端に向かうほど互いに近づくことになる。
【0086】
これによって、第2ステータ側基部75gを径方向から見た軸線方向に切断した断面の断面積は、径方向内側に向かうほどその断面積が小さくなる。また、第2ステータ側磁極部75hを軸方向から見た径方向に切断した断面の断面積は、先端側に向かうほどその断面積が小さくなる。
【0087】
なお、軸方向に屈曲形成された第2ステータ側磁極部75hは軸直交方向断面が扇形状に形成されていて、その径方向の外側面75j及び内側面75kは、軸線方向から見て、中心軸線Oを中心として第2ステータコアベース74の内周面74dと同心円をなす円弧面である。
【0088】
各第2ステータ側爪状磁極75の第2ステータ側基部75gの周方向の角度、即ち、周方向端面75a,75bの基端部間が回転軸(図示せず)の中心軸線Oとなす角度は、隣り合う第2ステータ側爪状磁極75の第2ステータ側基部75gに基端間の隙間の角度より小さく設定されている。
【0089】
つまり、このように形成されることによって、第2ステータコア71の形状は、第1ステータコア61と同一形状となる。そして、第1ステータ側円筒壁64eの先端面64fと第2ステータ側円筒壁74eの先端面74fとを当接させ、かつ、各第2ステータ側爪状磁極75が、軸方向から見てそれぞれ第1ステータ側爪状磁極65間に位置するように、第1及び第2ステータコア61,71を配置固定する。
【0090】
このとき、
図3に示すように、第1ステータ側爪状磁極65は、その第1ステータ側磁極部65hの先端面65cが第2ステータコアベース74の対向面74aと面一となる位置に設定している。同様に、第2ステータ側爪状磁極75は、その第2ステータ側磁極部75hの先端面75cが第1ステータコアベース64の対向面64aと面一となる位置に設定している。
【0091】
ちなみに、第1及び第2ステータコアベース64,74の対向面64a,74a、第1及び第2ステータ側円筒壁64e,74eの内周面、及び、第1及び第2ステータ側磁極部65h,75hの外側面65j,75jで区画される断面四角形状の環状空間が形成される。そして、
図3に示すように、その断面四角形状の環状空間にコイル部81(環状巻線82)が配置され固定される。
【0092】
(コイル部81)
コイル部81は、
図9に示すように、環状巻線82を有し、その環状巻線82が前記環状空間に巻回されている。そして、環状巻線82に単相の交流電流を流すことによって、第1及び第2ステータ側爪状磁極65,75をその時々で互いに異なる磁極に励磁する。
【0093】
このように構成された、ステータ3は、第1及び第2ステータコア61,71間の環状巻線82にて第1及び第2ステータ側爪状磁極65,75をその時々で互いに異なる磁極に励磁する24極の所謂ランデル型(クローポール型)構造のステータとなる。
【0094】
次に、上記のように構成したブラシレスモータ1の作用について説明する。
今、ステータ3に環状巻線82に単相交流電流流すと、ステータ3に回転磁界が発生し、ロータ2が回転駆動される。
【0095】
このとき、第1ロータコア11の反第2ロータコア21側に、第1環状補助磁石41を固着した。第1環状補助磁石41は、等分割された24個の各第1磁石部42間の境界が、それぞれ各第1磁極部15fの周方向中心位置又は各第2磁極部25fの周方向中心位置と一致するように、第1ロータコア11に対して配置されている。
【0096】
そして、第1環状補助磁石41は、各第1磁石部42において周方向に磁化されているとともに、各第1磁石部42において第1磁極部15f側をN極、第2磁極部25f側をS極となるように磁化されている。
【0097】
従って、界磁磁石31にてN極となる各第1磁極部15fの基端部分に、第1環状補助磁石41の各第1磁石部42のN極がそれぞれ配置され、界磁磁石31にてS極となる各第2磁極部25fの先端部分に、第1環状補助磁石41の各第1磁石部42のS極がそれぞれ配置される。
【0098】
その結果、第1環状補助磁石41の各第1磁石部42によって、N極の第1磁極部15fの基端部分からS極の第2磁極部25fの先端部分への漏れ磁束(短絡磁束)は低減する。
【0099】
同様に、第2ロータコア21の反第1ロータコア11側に、第2環状補助磁石51が固着した。第2環状補助磁石51は、等分割された24個の各第2磁石部52間の境界が、それぞれ各第2磁極部25fの周方向中心位置又は各第1磁極部15fの周方向中心位置と一致するように、第2ロータコア21に対して配置されている。
【0100】
そして、第2環状補助磁石51は、各第2磁石部52において周方向に磁化されているとともに、各第2磁石部52において第2磁極部25f側をS極、第1磁極部15f側をN極となるように磁化されている。
【0101】
従って、界磁磁石31にてS極となる各第2磁極部25fの基端部分に、第2環状補助磁石51の各第2磁石部52のS極がそれぞれ配置され、界磁磁石31にてN極となる各第1磁極部15fの先端部分に、第2環状補助磁石51の各第2磁石部52のN極がそれぞれ配置される。
【0102】
その結果、第2環状補助磁石51の各第2磁石部52によって、N極の第1磁極部15fの先端部分からS極の第2磁極部25fの基端部分への漏れ磁束(短絡磁束)は低減する。
【0103】
このように、第1及び第2ロータコア11,21に、それぞれ漏れ磁束(短絡磁束)を低減させる第1及び第2環状補助磁石41,51を固着したことから、ブラシレスモータ1の出力アップを図ることができる。
【0104】
ここで、本第1実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を固着したブラシレスモータ1の出力と第1及び第2環状補助磁石41,51を設けてないブラシレスモータ1の出力との比較検証を行った。ここでは、ブラシレスモータ1の出力の要素である誘起電圧を実験で求めて、
図10に示す結果を得た。
【0105】
図10の誘起電圧特性線Lkは、第1及び第2環状補助磁石41,51を設けてないブラシレスモータの誘起電圧曲線である。
図10の誘起電圧特性線L1は、本実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を設けたブラシレスモータ1の誘起電圧曲線である。
【0106】
これからも明らかなように、本実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を設けたブラシレスモータ1の方が、第1及び第2環状補助磁石41,51を設けてないブラシレスモータよりも、最大値において約10%も誘起電圧が高くなることがわかった。
【0107】
つまり、第1及び第2環状補助磁石41,51がブラシレスモータ1の出力アップに寄与することがわかる。
次に、上記第1実施形態の効果を以下に記載する。
【0108】
(1)上記実施形態によれば、第1環状補助磁石41の各第1磁石部42によって、N極の第1磁極部15fの基端部分からS極の第2磁極部25fの先端部分への漏れ磁束(短絡磁束)を低減させることができ、ブラシレスモータ1の出力アップを図ることができる。
【0109】
(2)本実施形態によれば、第2環状補助磁石51の各第2磁石部52によって、N極の第1磁極部15fの先端部分からS極の第2磁極部25fの基端部分への漏れ磁束(短絡磁束)を低減させることができ、ブラシレスモータ1の出力アップを図ることができる。
【0110】
(3)本実施形態によれば、第1ロータコア11に固着した第1環状補助磁石41において、第2ロータ側爪状磁極25と対峙する各第1磁石部42を、その第2磁極部25fの先端面25cに当接させたので、漏れ磁束(短絡磁束)をより低減させることができる。
【0111】
(4)本実施形態によれば、第2ロータコア21に固着した第2環状補助磁石51において、第1ロータ側爪状磁極15と対峙する各第2磁石部52を、その第1磁極部15fの先端面15cに当接させたので、漏れ磁束(短絡磁束)をより低減させることができる。
【0112】
(5)本実施形態によれば、第1及び第2環状補助磁石41,51は、環状体であることから、一度に各第1及び第2ロータ側爪状磁極15,25の外周部に連結固着でき、第1及び第2ロータコア11,21への組み付けが簡単となる。しかも、第1及び第2環状補助磁石41,51は、環状体であることから、ロータ2の回転に伴う遠心力によって径方向に飛び出す虞はない。
【0113】
(6)本実施形態によれば、各第1ロータ側爪状磁極15において、第1段差部15dの水平な第1背面15mと第1磁極部15fの外側面15jとが交差するエッジを、断面直角2等辺3角形状に切り欠いて第1連結面f1を形成した。そして、その第1連結面f1に、断面直角2等辺3角形状の第1環状補助磁石41を固着した。このとき、第1環状補助磁石41の径方向外側面41bを第1磁極部15fの外側面15jと面一にするとともに、第1環状補助磁石41の軸方向外側面41cを第1段差部15dの第1背面15mと面一にした。
【0114】
同様に、各第2ロータ側爪状磁極25において、第2段差部25dの水平な第2背面25mと第2磁極部25fの外側面25jとが交差するエッジを、断面直角2等辺3角形状に切り欠いて第2連結面f2を形成した。そして、その第2連結面f2に、断面直角2等辺3角形状の第2環状補助磁石51を固着した。このとき、第2環状補助磁石51の径方向外側面51bを第2磁極部25fの外側面25jと面一にするとともに、第2環状補助磁石51の軸方向外側面51cを第2段差部25dの第2背面25mと面一にした。
【0115】
これによって、第1及び第2環状補助磁石41,51を設けることによって、ロータ2の全体形状が軸方向及び径方向に大型化することはない。即ち、ロータ2の小型化を図ることができる。
【0116】
なお、
図11に示すように、第1実施形態において、ホールICからなる磁気検出器91を、第1環状補助磁石41に対して一定の間隔を開けて対峙するように、図示しないモータハウジングに設けてロータ2(モータ1)の回転位置、回転数等の回転検出を行うようにしてもよい。
【0117】
詳述すると、磁気検出器91は、第1環状補助磁石41がロータ2とともに回転する時、第1環状補助磁石41の各第1磁石部42が前方を通過するようにモータハウジングに配置されている。
【0118】
そして、ロータ2の回転に伴って、磁気検出器91は、その前方を通過する各第1磁石部42の漏れ磁束を検出し、その検出信号を図示しない制御回路に出力する。図示しない制御回路は、磁気検出器91からの検出信号に基づいてロータ2の回転角(回転位置)を算出するとともに回転数を算出する。
【0119】
図12は、本第1実施形態のブラシレスモータ1に設けた第1環状補助磁石41の漏れ磁束を検出する磁気検出器91の検出波形B1と、第1及び第2環状補助磁石41,51を設けてないブラシレスモータ1の漏れ磁束を検出する磁気検出器91の検出波形Bkを示す。
図12から明らかなように、第1実施形態の第1環状補助磁石41の漏れ磁束を検出する検出波形B1の方が、その変化幅が大きい。従って、高精度の回転検出が可能になるとともに、第1環状補助磁石41が回転角や回転数の検出のための被検出部材を兼用するため、部品点数の削減を図ることができる。
【0120】
(第2実施形態)
以下、モータの第2実施形態を
図13〜
図16に従って説明する。
本実施形態は、第1実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51の各第1及び第2ロータ側爪状磁極15,25に対する周方向の相対位置と、その第1及び第2磁石部42,52のその磁化方向が相異する。そのため、説明の便宜上、相異する部分について詳細に説明する。
【0121】
図13に示すように、周方向に24個の第1磁石部42が形成された第1環状補助磁石41は、第1磁石部42と第1磁石部42との各境界が、それぞれ各第1ロータ側爪状磁極15と各第2ロータ側爪状磁極25の周方向中間位置と一致するように、第1ロータコア11に対して配置される。
【0122】
そして、第1環状補助磁石41の各第1磁石部42は、第1実施形態と相異して、軸方向に磁化(着磁)されている。詳述すると、第1ロータ側爪状磁極15と対峙する第1磁石部42は、軸方向において第1ロータコア11側がS極、第2ロータコア21側がN極になるように着磁磁化される。また、第2ロータ側爪状磁極25と対峙する第1磁石部42は、軸方向において第1ロータコア11側がN極、第2ロータコア21側がS極になるように磁化される。
【0123】
これによって、第1磁極部15fの基端部分から第2磁極部25fの先端部分への漏れ磁束は低減する。
一方、
図13に示すように、周方向に24個の第2磁石部52が形成された第2環状補助磁石51は、第2磁石部52と第2磁石部52との各境界が、それぞれ各第1ロータ側爪状磁極15と各第2ロータ側爪状磁極25の周方向中間位置と一致するように、第1ロータコア11に対して配置される。
【0124】
そして、第2環状補助磁石51の各第2磁石部52は、第1実施形態と相異して、軸方向に磁化(着磁)されている。詳述すると、第2ロータ側爪状磁極25と対峙する第2磁石部52は、軸方向において第2ロータコア21側がN磁、第1ロータコア11側がS極になるように着磁磁化される。また、第1ロータ側爪状磁極15と対峙する第2磁石部52は、軸方向において第2ロータコア21側がS極、第1ロータコア11側がN極になるように磁化される。
【0125】
これによって、第1磁極部15fの先端部分から第2磁極部25fの基端部分への漏れ磁束は低減する。
次に、上記のように構成したブラシレスモータ1の作用について説明する。
【0126】
第1環状補助磁石41の各第1磁石部42を軸方向に磁化した。そして、第1ロータ側爪状磁極15と対峙する第1磁石部42は、軸方向において第1ロータコア11側がS極、第2ロータコア21側がN極になるように磁化されている。また、第2ロータ側爪状磁極25と対峙する第1磁石部42は、軸方向において第1ロータコア11側がN極、第2ロータコア21側がS極になるように磁化されている。
【0127】
従って、第1環状補助磁石41の各第1磁石部42によって、N極の第1磁極部15fの基端部分からS極の第2磁極部25fの先端部分への漏れ磁束(短絡磁束)は低減される。
【0128】
一方、第2環状補助磁石51の各第2磁石部52を軸方向に磁化した。そして、第2ロータ側爪状磁極25と対峙する第2磁石部52は、軸方向において第2ロータコア21側がN磁、第1ロータコア11側がS極になるように磁化されている。また、第1ロータ側爪状磁極15と対峙する第2磁石部52は、軸方向において第2ロータコア21側がS極、第1ロータコア11側がN極になるように磁化されている。
【0129】
従って、第2環状補助磁石51の各第2磁石部52によって、N極の第1磁極部15fの先端部分からS極の第2磁極部25fの基端部分への漏れ磁束(短絡磁束)は、低減する。
【0130】
このように、第1及び第2ロータコア11,21に、それぞれ漏れ磁束(短絡磁束)を低減させる第1及び第2環状補助磁石41,51を固着したことから、ブラシレスモータ1の出力アップを図ることができる。
【0131】
ここで、本第2実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を固着したブラシレスモータ1の出力と第1及び第2環状補助磁石41,51を設けてないブラシレスモータ1の出力との比較検証を行った。ここでは、第1実施形態と同様に、ブラシレスモータ1の出力の要素である誘起電圧を実験で求めて、
図14に示す結果を得た。
【0132】
図14の誘起電圧特性線Lkは、第1及び第2環状補助磁石41,51を設けてないブラシレスモータの誘起電圧曲線である。
図14の誘起電圧特性線L2は、本第2実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を設けたブラシレスモータ1の誘起電圧曲線である。
【0133】
これからも明らかなように、本実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を設けたブラシレスモータ1の方が、第1及び第2環状補助磁石41,51を設けてないブラシレスモータよりも、最大値において約7%も誘起電圧が高くなることがわかった。
【0134】
つまり、本実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51がブラシレスモータ1の出力アップに寄与することがわかる。
上記第2実施形態は、第1実施形態の効果で記載した(5)と(6)の効果に加えて以下の効果を有する。
【0135】
(1)本実施形態によれば、第1環状補助磁石41の各第1磁石部42によって、N極の第1磁極部15fの基端部分からS極の第2磁極部25fの先端部分への漏れ磁束(短絡磁束)を低減させることができ、ブラシレスモータ1の出力アップを図ることができる。
【0136】
(2)本実施形態によれば、第2環状補助磁石51の各第2磁石部52によって、N極の第1磁極部15fの先端部分からS極の第2磁極部25fの基端部分への漏れ磁束(短絡磁束)を低減させることができ、ブラシレスモータ1の出力アップを図ることができる。
【0137】
(3)本実施形態によれば、第1ロータコア11に固着した第1環状補助磁石41において、第2ロータ側爪状磁極25と対峙する各第1磁石部42を、その第2磁極部25fの先端面25cに当接させたので、漏れ磁束(短絡磁束)をより低減させることができる。
【0138】
(4)本実施形態によれば、第2ロータコア21に固着した第2環状補助磁石51において、第1ロータ側爪状磁極15と対峙する各第2磁石部52を、その第1磁極部15fの先端面15cに当接させたので、漏れ磁束(短絡磁束)をより低減させることができる。
【0139】
なお、
図15に示すように、第2実施形態において、ホールICからなる磁気検出器91を、第1環状補助磁石41に対して一定の間隔を開けて対峙するように、図示しないモータハウジングに設けてロータ2(モータ1)の回転位置、回転数等の回転検出を行うようにしてもよい。
【0140】
詳述すると、磁気検出器91は、第1環状補助磁石41がロータ2とともに回転する時、第1環状補助磁石41の各第1磁石部42が前方を通過するようにモータハウジングに配置されている。
【0141】
そして、ロータ2の回転に伴って、磁気検出器91は、その前方を各第1磁石部42が通過する際の各第1磁石部42の漏れ磁束を検出し、その検出信号を図示しない制御回路に出力する。図示しない制御回路は、磁気検出器91からの検出信号に基づいてロータ2の回転角(回転位置)を算出するとともに回転数を算出する。
【0142】
図16は、本第2実施形態のブラシレスモータ1に設けた第1環状補助磁石41の漏れ磁束を検出する磁気検出器91の検出波形B2と、第1及び第2環状補助磁石41,51を設けてないブラシレスモータ1の漏れ磁束を検出する磁気検出器91の検出波形Bkを示す。
図16から明らかなように、第2実施形態の第1環状補助磁石41の漏れ磁束を検出する検出波形B2の方が、より矩形波形になる。従って、より高精度の回転検出が可能になるとともに、第1環状補助磁石41が回転角や回転数の検出のための被検出部材を兼用するため、部品点数の削減を図ることができる。
【0143】
(第3実施形態)
以下、モータの第3実施形態を
図17及び
図18に従って説明する。
本実施形態は、第1実施形態で説明した第1及び第2環状補助磁石41,51の各第1及び第2磁石部42,52とその磁化方向が相異する。そのため、説明の便宜上、相異する部分について詳細に説明する。
【0144】
第1環状補助磁石41は、第1実施形態と同様に、周方向に24個の第1磁石部42が形成されている。第1環状補助磁石41は、第1実施形態と同様に、第1磁石部42と第1磁石部42との各境界が、それぞれ各第1ロータ側爪状磁極15の第1磁極部15fの周方向中心位置又は各第2ロータ側爪状磁極25の第2磁極部25fの周方向中心位置と一致するように、第1ロータコア11に対して配置される。
【0145】
図17に示すように、各第1磁石部42は周方向に磁化されている。詳述すると、第1実施形態と相異して、各第1磁石部42は、周方向において第1磁極部15f側がS極、第2磁極部25f側がN極となるように磁化(着磁)されている。
【0146】
つまり、各第1ロータ側爪状磁極15の第1磁極部15fの基端部分は、各第1磁石部42のS極がそれぞれ配置される。また、各第2ロータ側爪状磁極25の第2磁極部25fの先端部分は、各第1磁石部42のN極がそれぞれ配置される。
【0147】
これによって、第1実施形態とは反対に、N極の第1磁極部15fの基端部分からS極の第2磁極部25fの先端部分への漏れ磁束(短絡磁束)を増加させている。
一方、
図17に示すように、各第2磁石部52は周方向に磁化されている。詳述すると、第1実施形態と相異して、各第2磁石部52は、周方向において第1磁極部15f側がS極、第2磁極部25f側がN極となるように磁化(着磁)されている。
【0148】
つまり、各第2ロータ側爪状磁極25の第2磁極部25fの基端部分は、各第2磁石部52のN極がそれぞれ配置される。また、各第1ロータ側爪状磁極15の第1磁極部15fの先端部分は、各第2磁石部52のS極がそれぞれ配置される。
【0149】
これによって、第1実施形態とは反対に、N極の第1磁極部15fの先端部分からS極の第2磁極部25fの基端部分への漏れ磁束(短絡磁束)を増加させている。
次に、上記のように構成したブラシレスモータ1の作用について説明する。
【0150】
第1環状補助磁石41おいて各第1磁石部42は、第1磁極部15f側をS極、第2磁極部25f側をN極となるように磁化されている。これによって、界磁磁石31にてN極となる各第1磁極部15fの基端部分に、各第1磁石部42のS極がそれぞれ配置され、界磁磁石31にてS極となる各第2磁極部25fの先端部分に、各第1磁石部42のN極がそれぞれ配置される。
【0151】
その結果、第1環状補助磁石41の各第1磁石部42によって、N極の第1磁極部15fの基端部分からS極の第2磁極部25fの先端部分への漏れ磁束(短絡磁束)は増加する。
【0152】
一方、第2環状補助磁石51において各第2磁石部52は、第2磁極部25f側をN極、第1磁極部15f側をS極となるように磁化されている。これによって、界磁磁石31にてS極となる各第2磁極部25fの基端部分に、各第2磁石部52のN極がそれぞれ配置され、界磁磁石31にてN極となる各第1磁極部15fの先端部分に、各第2磁石部52のS極がそれぞれ配置される。
【0153】
その結果、第2環状補助磁石51の各第2磁石部52によって、N極の第1磁極部15fの先端部分からS極の第2磁極部25fの基端部分への漏れ磁束(短絡磁束)は増加する。
【0154】
このように、第1及び第2ロータコア11,21に、それぞれ漏れ磁束(短絡磁束)を増加させる第1及び第2環状補助磁石41,51を固着したことから、ブラシレスモータ1の回転数を上げることができる。
【0155】
つまり、本第3実施形態のブラシレスモータ1は、漏れ磁束(短絡磁束)を積極的に増加させることによって、ロータ2の第1及び第2ロータ側爪状磁極15,25において、所謂、弱め界磁効果を発生させて、第1実施形態のブラシレスモータ1よりも回転数を上げることができる。
【0156】
ここで、本第3実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を固着したブラシレスモータ1の出力と第1実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を固着したブラシレスモータ1の出力との比較検証を行った。ここでは、ブラシレスモータ1の出力の要素である誘起電圧を実験で求めて、
図18に示す結果を得た。
【0157】
図18の誘起電圧特性線L1は、第1実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を設けたブラシレスモータの誘起電圧曲線である。
図18の誘起電圧特性線L3は、本第3実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を設けたブラシレスモータ1の誘起電圧曲線である。
【0158】
これからも明らかなように、本実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を設けたブラシレスモータ1の方が、第1実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を設けたブラシレスモータ1と比較して、弱め界磁効果によって最大値において約21%も誘起電圧が小さくできることがわかる。
【0159】
上記第3実施形態は、第1実施形態の効果で記載した(5)と(6)の効果に加えて以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、第1環状補助磁石41の各第1磁石部42によって、N極の第1磁極部15fの基端部分からS極の第2磁極部25fの先端部分への漏れ磁束(短絡磁束)を増加させることができ、ブラシレスモータ1を高回転数で駆動させることができる。
【0160】
(2)本実施形態によれば、第2環状補助磁石51の各第2磁石部52によって、N極の第1磁極部15fの先端部分からS極の第2磁極部25fの基端部分への漏れ磁束(短絡磁束)を増加させることができ、ブラシレスモータ1を高回転数で駆動させることができる。
【0161】
(3)本実施形態によれば、第1ロータコア11に固着した第1環状補助磁石41において、第2ロータ側爪状磁極25と対峙する各第1磁石部42を、その第2磁極部25fの先端面25cに当接させたので、漏れ磁束(短絡磁束)をより増加させることができる。
【0162】
(4)本実施形態によれば、第2ロータコア21に固着した第2環状補助磁石51において、第1ロータ側爪状磁極15と対峙する各第2磁石部52を、その第1磁極部15fの先端面15cに当接させたので、漏れ磁束(短絡磁束)をより増加させることができる。
【0163】
(第4実施形態)
以下、モータの第4実施形態を
図19〜
図22に従って説明する。
本実施形態は、第2実施形態で説明した第1及び第2環状補助磁石41,51の各第1及び第2磁石部42,52とその磁化方向が相異する。そのため、説明の便宜上、相異する部分について詳細に説明する。
【0164】
図19に示すように、第1環状補助磁石41は、第2実施形態と同様に、各第1磁石部42を軸方向に磁化した。そして、第2実施形態と相異して、第1ロータ側爪状磁極15と対峙する第1磁石部42は、軸方向において第1ロータコア11側がN極、第2ロータコア21側がS極になるように磁化した。また、第2ロータ側爪状磁極25と対峙する第1磁石部42は、軸方向において第1ロータコア11側がS極、第2ロータコア21側がN極になるように磁化した。
【0165】
従って、第1環状補助磁石41の各第1磁石部42によって、N極の第1磁極部15fの基端部分からS極の第2磁極部25fの先端部分への漏れ磁束(短絡磁束)は増加する。
【0166】
一方、
図19に示すように、第2環状補助磁石51は、第2実施形態と同様に、各第2磁石部52を軸方向に磁化した。そして、第2実施形態と相異して、第2ロータ側爪状磁極25と対峙する第2磁石部52を、軸方向において第2ロータコア21側がS磁、第1ロータコア11側がN極になるように磁化した。また、第1ロータ側爪状磁極15と対峙する第2磁石部52を、軸方向において第2ロータコア21側がN極、第1ロータコア11側がS極になるように磁化した。
【0167】
従って、第2環状補助磁石51の各第2磁石部52によって、N極の第1磁極部15fの先端部分からS極の第2磁極部25fの基端部分への漏れ磁束(短絡磁束)は増加する。
【0168】
次に、上記のように構成したブラシレスモータ1の作用について説明する。
第1環状補助磁石41において、第1ロータ側爪状磁極15と対峙する第1磁石部42は、軸方向において第1ロータコア11側がN極、第2ロータコア21側がS極になるように磁化されている。また、第2ロータ側爪状磁極25と対峙する第1磁石部42は、軸方向において第1ロータコア11側がS極、第2ロータコア21側がN極になるように磁化されている。
【0169】
従って、第1環状補助磁石41の各第1磁石部42によって、N極の第1磁極部15fの基端部分からS極の第2磁極部25fの先端部分への漏れ磁束(短絡磁束)は増加する。
【0170】
一方、第2環状補助磁石51において、第2ロータ側爪状磁極25と対峙する第2磁石部52は、軸方向において第2ロータコア21側がS磁、第1ロータコア11側がN極になるように磁化されている。また、第1ロータ側爪状磁極15と対峙する第2磁石部52は、軸方向において第2ロータコア21側がN極、第1ロータコア11側がS極になるように磁化されている。
【0171】
従って、第2環状補助磁石51の各第2磁石部52によって、N極の第1磁極部15fの先端部分からS極の第2磁極部25fの基端部分への漏れ磁束(短絡磁束)は、増加する。
【0172】
このように、第1及び第2ロータコア11,21に、それぞれ漏れ磁束(短絡磁束)を積極的に増加させる第1及び第2環状補助磁石41,51を固着したことから、ブラシレスモータ1の回転数を上げることができる。
【0173】
つまり、本第4実施形態のブラシレスモータ1は、漏れ磁束(短絡磁束)を積極的に増加させることによって、ロータ2の第1及び第2ロータ側爪状磁極15,25において、所謂、弱め界磁効果を発生させて、第2実施形態のブラシレスモータ1よりも回転数を上げることができる。
【0174】
ここで、本第4実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を固着したブラシレスモータ1の出力と第2実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を固着したブラシレスモータ1の出力との比較検証を行った。ここでは、ブラシレスモータ1の出力の要素である誘起電圧を実験で求めて、
図20に示す結果を得た。
【0175】
図20の誘起電圧特性線L2は、第2実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を設けたブラシレスモータの誘起電圧曲線である。
図20の誘起電圧特性線L4は、本第4実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を設けたブラシレスモータ1の誘起電圧曲線である。
【0176】
これからも明らかなように、本実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を設けたブラシレスモータ1の方が、第2実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51を設けたブラシレスモータ1と比較して、弱め界磁効果によって最大値において約13%も誘起電圧が小さくできることがわかる。
【0177】
上記第4実施形態は、第1実施形態の効果で記載した(5)と(6)の効果に加えて以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、第1環状補助磁石41の各第1磁石部42によって、N極の第1磁極部15fの基端部分からS極の第2磁極部25fの先端部分への漏れ磁束(短絡磁束)を増加させることができ、ブラシレスモータ1を高回転数で駆動させることができる。
【0178】
(2)本実施形態によれば、第2環状補助磁石51の各第2磁石部52によって、N極の第1磁極部15fの先端部分からS極の第2磁極部25fの基端部分への漏れ磁束(短絡磁束)を増加させることができ、ブラシレスモータ1を高回転数で駆動させることができる。
【0179】
(3)本実施形態によれば、第1ロータコア11に固着した第1環状補助磁石41において、第2ロータ側爪状磁極25と対峙する各第1磁石部42を、その第2磁極部25fの先端面25cに当接させたので、漏れ磁束(短絡磁束)をより増加させることができる。
【0180】
(4)本実施形態によれば、第2ロータコア21に固着した第2環状補助磁石51において、第1ロータ側爪状磁極15と対峙する各第2磁石部52を、その第1磁極部15fの先端面15cに当接させたので、漏れ磁束(短絡磁束)をより増加させることができる。
【0181】
なお、
図21に示すように、第4実施形態において、ホールICからなる磁気検出器91を、第1環状補助磁石41に対して一定の間隔を開けて対峙するように、図示しないモータハウジングに設けてロータ2(モータ1)の回転位置、回転数等の回転検出を行うようにしてもよい。
【0182】
詳述すると、磁気検出器91は、第1環状補助磁石41がロータ2とともに回転する時、第1環状補助磁石41の各第1磁石部42が前方を通過するようにモータハウジングに配置されている。
【0183】
そして、ロータ2の回転に伴って、磁気検出器91は、その前方を各第1磁石部42が通過する際の各第1磁石部42の漏れ磁束を検出し、その検出信号を図示しない制御回路に出力する。図示しない制御回路は、磁気検出器91からの検出信号に基づいてロータ2の回転角(回転位置)を算出するとともに回転数を算出する。
【0184】
図22は、本第4実施形態のブラシレスモータ1に設けた第1環状補助磁石41の漏れ磁束を検出する磁気検出器91の検出波形B4と、第2実施形態の第1環状補助磁石41の漏れ磁束を検出する磁気検出器91の検出波形B2を示す。
図22から明らかなように、第4実施形態の第1環状補助磁石41の漏れ磁束を検出する検出波形B4の方が、より変化の幅が大きい矩形波形になる。従って、より高精度の回転検出が可能になるとともに、第1環状補助磁石41が回転角や回転数の検出のための被検出部材を兼用するため、部品点数の削減を図ることができる。
【0185】
上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
○上記各実施形態の第1及び第2環状補助磁石41,51は、断面直角2等辺3角形であったが、断面直角3角形や、断面4角形等であったりしてもよい。
【0186】
○上記実施形態では、第1ステータ側爪状磁極65と第2ステータ側爪状磁極75を周方向に交互に配置したランデル型のステータ3の内側に配置したロータ2からなるブラシレスモータ1であった。
【0187】
これを、ランデル型でないステータに対して、各実施形態のロータ2を内側に配置したモータに応用してもよい。
○上記実施形態の単相のブラシレスモータ1を、軸方向に3個積層して3相ブラシレスモータMに応用してもよい。つまり、
図23に示すように、3相ブラシレスモータMは、3個のブラシレスモータ1、即ち、上からU相モータ部Mu、V相モータ部Mv、W相モータ部Mwを順番に積層したものである。
【0188】
そして、
図24に示すように、3相ブラシレスモータMの3相ロータ2Mは、3個の単相のロータ2、即ち、上からU相ロータ2u、V相ロータ2v、W相ロータ2wを順番に積層する。
【0189】
一方、
図25に示すように、3相ブラシレスモータMの3相ステータ3Mは、3個の単相のステータ3、即ち、上からU相ステータ3u、V相ステータ3v、W相ステータ3wを順番に積層する。そして、U相ステータ3uには3相電流のうちU相電流を流し、V相ステータ3vには3相電流のうちV相電流を流し、W相ステータ3wには3相電流のうちW相電流を流す。
【0190】
なお、3相ロータ2Mにおいて、U相ロータ2u、V相ロータ2v及びW相ロータ2wを機械角で5度(電気角で60度)ずつずらして積層して配置してもよい。
詳述すると、
図24に示すように、V相ロータ2vは、U相ロータ2uに対して、U相ロータ2uから見て回転軸の中心軸線Oを中心として反時計回り方向に機械角で5度(電気角で60度)ずらして回転軸に固着する。W相ロータ2wは、V相ロータ2vに対して、V相ロータ2vから見て回転軸の中心軸線Oを中心として反時計回り方向に機械角で5度(電気角で60度)をずらして回転軸に固着する。
【0191】
同様に、3相ステータ3Mにおいて、U相ステータ3u、V相ステータ3v及びW相ステータ3wを機械角で5度(電気角で60度)ずつずらして積層して配置してもよい。
詳述すると、
図25に示すように、V相ステータ3vは、U相ステータ3uに対して、U相ステータ3uから見て中心軸線Oを中心として時計回り方向に機械角で5度(電気角で60度)ずらしてモータハウジングに固着する。W相ステータ3wは、そのV相ステータ3vに対して、V相ステータ3vから見て時計回り方向に機械角で5度(電気角で60度)ずらしてモータハウジングに固着する。
【0192】
なお、3相モータにおいても、同様に、ランデル型でない3相用のステータに対して、各実施形態のロータ2を応用して構成した3相用のロータ2Mを内側に配置した3相モータに応用してもよい。
【0193】
○上記各実施形態では、第1及び第2ロータコア11,21の第1及び第2ロータ側爪状磁極15,25の数を12個としたが、その数を適宜変更して実施してもよい。同様に、第1及び第2ステータコア61,71の第1及び第2ステータ側爪状磁極65,75の数を12個としたが、その数を適宜変更して実施してもよい。ことは勿論である。
【0194】
○上記各実施形態では、界磁磁石31や、第1及び第2環状補助磁石41,51をフェライト磁石で形成したが、例えばネオジム磁石等、その他の永久磁石で実施してもよい。勿論、これら各種の永久磁石を適宜組み合わせて実施してもよい。
【0195】
○上記各実施形態では、第1環状補助磁石41を第2磁極部25fの先端面25cと当接させるとともに、第2環状補助磁石51を第1磁極部15fの先端面15cと当接させて実施したが、これを近接対向配置させて実施してもよい。
【0196】
○上記各実施形態では、モータ1の回転検出に際して、磁気検出器91は第1環状補助磁石41の第1磁石部42を検知するようにしたが、磁気検出器91を第2環状補助磁石51の第2磁石部52を検知するように実施してもよい。
【0197】
○上記第3実施形態では、磁気検出器91よるモータ1の回転検出を説明しなかったが、第1実施形態と同様に行うことによって、モータ1の回転検出が行えることは勿論である。