特許第6181563号(P6181563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181563
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/64 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   B60N2/64
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-9929(P2014-9929)
(22)【出願日】2014年1月22日
(65)【公開番号】特開2015-137021(P2015-137021A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 啓史
(72)【発明者】
【氏名】島田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】辻 泰裕
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭63−43250(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00−2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションおよびシートバックを備えた乗物用シートであって、
前記シートバックが、シートバック本体部と、シートバック本体部の側方に設けたシートバックサイド部とを含み、
前記シートバックサイド部は、その下部に設けた第1取付部を介して乗物の機体またはシートクッションに固定されるとともに、当該第1取付部と異なる位置に、前記機体またはシートクッションに当接することで前記シートバックサイド部の回転を規制する回転規制部を備えたことを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記回転規制部は、前記第1取付部に対して左右方向に離れた位置に設けたことを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記回転規制部は、前記シートバックサイド部の下部から下方に突出する突部であり、当該突部の少なくとも一部は、上下方向において前記シートクッションが設けられた範囲内に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記突部の後面に補強部を設けたことを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記シートバックサイド部は、乗員に対向する面を有する本体部と、当該本体部の下端から後方に延びるフランジ部とを含み、
前記回転規制部が当該フランジ部に設けられたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記フランジ部は、前記回転規制部と前記第1取付部とを連結することを特徴とする請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記シートバックサイド部は、前記本体部と前記フランジ部とをつなぐように延びる補強リブを備えることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記補強リブのうち、少なくとも1つが前記回転規制部と前記第1取付部との間に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記シートバックサイド部の上部には、前記シートバックサイド部を前記機体またはシートバックに固定するための第2取付部が設けられ、
前記回転規制部が、前記第1取付部と前記第2取付部とを結ぶ仮想線から外れた位置に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記回転規制部が、前記第1取付部よりも左右方向の外側に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションおよびシートバックを備えた乗物用シートに関し、より詳細には、シートバックが、シートバック本体部と、シートバック本体部の側方に設けたシートバックサイド部とを含む乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートバックサイド部の下部に設けた取付部を車体またはリアシートに取り付けることで、シートバックサイド部を固定する構造が知られている(特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−43250公報
【特許文献2】特公昭58−174027公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したシートバックサイド部は、その下部が取付部の1点で車体またはリアシートに取り付けられているために、シートバックサイド部に乗員からの荷重が加わるとシートバックサイド部の下部がぐらついてしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明は、乗員からの荷重を受けた場合でもシートバックサイド部がぐらつくことがなく、安定して乗員を保持することができる乗物用シートを提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、シートバックサイド部の剛性を高めて、より一層安定して乗員を保持することができる乗物用シートを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決する本発明は、シートクッションおよびシートバックを備えた乗物用シートであって、前記シートバックが、シートバック本体部と、シートバック本体部の側方に設けたシートバックサイド部とを含み、前記シートバックサイド部は、その下部に設けた第1取付部を介して乗物の機体またはシートクッションに固定されるとともに、当該第1取付部と異なる位置に、前記機体またはシートクッションに当接することで前記シートバックサイド部の回転を規制する回転規制部を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1取付部と異なる位置に回転規制部を設けたことにより、乗員からの荷重を受けた場合でもシートバックサイド部がぐらつくことがなく、安定して乗員を保持することができる。
【0009】
前記した乗物用シートにおいて、前記回転規制部は、前記第1取付部に対して左右方向に離れた位置に設けることが望ましい。
【0010】
シートバックサイド部は、荷重を受けると、第1取付部を中心に回転しようとするが、第1取付部に対して左右方向に離れた位置に回転規制部を設けたことにより、シートバックサイド部の回転を規制しやすくなる。
【0011】
また、前記した乗物用シートにおいて、前記回転規制部は、前記シートバックサイド部の下部から下方に突出する突部であり、当該突部の少なくとも一部は、上下方向において前記シートクッションが設けられた範囲内に位置することが望ましい。
【0012】
この構成によれば、荷重を受けてシートバックサイド部が第1取付部を中心に回転しようとすると、突部がシートクッションに当接することでシートバックサイド部の回転を規制することができるので、突部を設けるという簡単な構成により、シートバックサイド部の回転規制を実現できる。
【0013】
また、前記回転規制部を前記シートバックサイド部の下部から下方に突出する突部とする構成において、前記突部の後面に補強部を設けることが望ましい。
【0014】
この構成によれば、突部の後面に設けた補強部により回転規制部の剛性を向上させる一方、シートクッションと当接する突部の前面では、補強部(例えば、補強リブ)によるシートクッションの変形を抑制することができる。
【0015】
また、前記した乗物用シートにおいて、前記シートバックサイド部は、乗員に対向する面を有する本体部と、当該本体部の下端から後方に延びるフランジ部とを含み、前記回転規制部が当該フランジ部に設けられていることが望ましい。
【0016】
この構成によれば、本体部の下端から屈曲して延びるフランジ部に回転規制部を設けることで、回転規制部の剛性を向上させて変形を抑制することができる。
【0017】
また、前記シートバックサイド部が本体部の下端から後方に延びるフランジ部を備えた構成において、前記フランジ部は、前記回転規制部と前記第1取付部とを連結することが望ましい。
【0018】
この構成によれば、フランジ部により回転規制部と第1取付部の剛性を向上させることできる。
【0019】
また、前記シートバックサイド部が本体部の下端から後方に延びるフランジ部を備えた構成において、前記シートバックサイド部は、前記本体部と前記フランジ部とをつなぐように延びる補強リブを備えることが望ましい。
【0020】
この構成によれば、補強リブによりフランジ部の剛性を向上させ、本体部に対する回転規制部と第1取付部のぐらつきを抑制することができるので、シートバックサイド部のぐらつきをなくし、より一層安定して乗員を保持することができる。
【0021】
また、前記シートバックサイド部が本体部とフランジ部とをつなぐように延びる補強リブを備えた構成において、前記補強リブのうち、少なくとも1つが前記回転規制部と前記第1取付部との間に設けられていることが望ましい。
【0022】
この構成によれば、荷重を受けて変形し易い箇所である回転規制部と第1取付部との間の部分を補強リブで補強することにより、シートバックサイド部をより一層安定して固定することができる。
【0023】
また、前記した乗物用シートにおいて、前記シートバックサイド部の上部には、前記シートバックサイド部を前記機体またはシートバックに固定するための第2取付部が設けられ、前記回転規制部が、前記第1取付部と前記第2取付部とを結ぶ仮想線から外れた位置に設けられていることが望ましい。
【0024】
この構成によれば、第1取付部と第2取付部とを結ぶ仮想線から外れた位置に回転規制部を設けたことにより、シートバックサイド部の回転軸線から外れた位置で回転を規制することになるため、より効果的にシートバックサイド部の回転を規制することができる。
【0025】
また、前記した乗物用シートにおいて、前記回転規制部が、前記第1取付部よりも左右方向の外側に設けられていることが望ましい。
【0026】
この構成によれば、乗員からの荷重を受け易い左右方向の外側に回転規制部を設けることで、より効果的にシートバックサイド部の回転を規制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、第1取付部と異なる位置に回転規制部を設けたことにより、乗員からの荷重を受けた場合でもシートバックサイド部がぐらつくことがなく、安定して乗員を保持することができる。
【0028】
シートバックサイド部は、荷重を受けると第1取付部を中心に回転しようとするが、本発明によれば、第1取付部に対して左右方向に離れた位置に回転規制部を設けたことにより、シートバックサイド部の回転を規制しやすくなる。
【0029】
本発明によれば、荷重を受けてシートバックサイド部が第1取付部を中心に回転しようとすると、上下方向においてシートクッションが設けられた範囲内に位置する突部が、シートクッションに当接することでシートバックサイド部の回転を規制することができるので、突部を設けるという簡単な構成により、シートバックサイド部の回転規制を実現できる。
【0030】
本発明によれば、突部の後面に設けた補強部(例えば、補強リブ)により回転規制部の剛性を向上させる一方、シートクッションと当接する突部の前面では、補強リブによるシートクッションの変形を抑制することができる。
【0031】
本発明によれば、本体部の下端から屈曲して延びるフランジ部に回転規制部を設けることで、回転規制部の剛性を向上させて変形を抑制することができる。
【0032】
本発明によれば、フランジ部が回転規制部と第1取付部とを連結することで、回転規制部と第1取付部の剛性を向上させることができる。
【0033】
本発明によれば、本体部とフランジ部をつなぐように延びる補強リブによりフランジ部の剛性を向上させ、本体部に対する回転規制部と第1取付部のぐらつきを抑制することができるので、シートバックサイド部のぐらつきをなくし、より一層安定して乗員を保持することができる。
【0034】
本発明によれば、荷重を受けて変形し易い箇所である回転規制部と第1取付部との間の部分を少なくとも1つの補強リブで補強することにより、シートバックサイド部をより一層安定して固定することができる。
【0035】
本発明によれば、第1取付部と第2取付部とを結ぶ仮想線から外れた位置に回転規制部を設けたことにより、シートバックサイド部の回転軸線から外れた位置で回転を規制することになるため、より効果的にシートバックサイド部の回転を規制することができる。
【0036】
本発明によれば、乗員からの荷重を受け易い左右方向の外側に回転規制部を設けることで、より効果的にシートバックサイド部の回転を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施形態に係る車両用リアシートの斜視図である。
図2】シートバックサイド部の表皮材を取り除いた車両用リアシートを後方より見た部分破断斜視図である。
図3図2に示す車両用リアシートからシートクッションを取り外して車体フレームを露出させた状態を示す要部拡大図である。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図3のV-V線に沿った断面図である。
図6】シートバックサイド部本体を前から見た図(a)と、後ろから見た図(b)である。
図7】シートバックサイド部本体の後面を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、乗物用シートの一例としての車両用リアシート1は、自動車の後部座席に使用されるシートであり、シートクッション2と、シートバック6と、ヘッドレスト8とを主に備えている。
【0039】
なお、本明細書において、前後、左右および上下は、車両用リアシート1に着座した乗員を基準とする。
【0040】
シートクッション2は、乗員が着座するための部材である。図4および図5に示すように、シートクッション2は、シートクッションフレーム(図示せず)をウレタンフォームなどのクッション材からなるシートクッションパッド3で被覆し、さらにその外側に合成皮革や布地などからなる表皮材4を被せることで構成されている。
シートクッション2は、図示しないボルトにより、機体の一例としての車体フレームFRに固定される。
【0041】
図1に示すように、シートバック6は、シートクッション2に着座した乗員の上半身を支持する部材であり、乗員の背中部分と対向するシートバック本体部10と、シートバック本体部10の左右側方に設けられたシートバックサイド部20とから構成されている。
【0042】
シートバック本体部10は、シートバックフレーム(図示せず)をウレタンフォームなどのクッション材からなるシートバックパッド(図示せず)で被覆し、さらにその外側に合成皮革や布地などからなる表皮材を被せることで構成されている。
シートバック本体部10は、乗員の背中の肩口から腰部に亘る部分と接触する接触面12が左右に1つずつ設けられ、2つの接触面12の間の中央部には、収納位置と使用位置との間で回動自在に構成されたアームレスト14が設けられている。アームレスト14を収納位置に格納すると、車両用リアシート1を3人掛けのシートとして使用することができる。
シートバック本体部10は、図示しないボルトにより車体フレームFRに固定される。
【0043】
シートバックサイド部20は、シートクッション2に着座した乗員の肩口から腰部にかけての側面側を支持するため、シートバック本体部10の接触面12よりも前方に張り出しており、その左右方向の幅が前方にいくにつれ徐々に狭くなっている。
【0044】
シートバックサイド部20は、図4および図5に示すように、フレームを構成する樹脂製のシートバックサイド部本体22と、シートバックサイド部本体22の外側を覆う、合成皮革や布地などからなる表皮材23とで構成されている。
さらに、図2および図3に示すように、シートバックサイド部本体22の下端部には、シートバックサイド部20の下部を車体フレームFRに固定するための第1取付部30と、後述する回転規制部40とが設けられ、シートバックサイド部本体22の上端部には、シートバックサイド部20の上部を車体フレームFRに固定するための第2取付部28が設けられている。第1取付部30には、タッピングボルトBTを挿通させるための取付孔36が形成されている(図6(b)参照)。一方、第2取付部28は、下方に突出した係合部により、車体フレームFRに対して係合可能となっている(図2および図6(b)参照)。なお、第1取付部30と同様、タッピングボルトBTを挿通させるための取付孔を第2取付部28の係合部に形成してもよい。
シートバックサイド部20は、第2取付部28を車体フレームFRに係合させた状態で、第1取付部30にタッピングボルトBTを挿通させて、車体フレームFRに対して締め付けることで固定される(図2および図4参照)。
【0045】
次に、図6および図7を参照して、本発明の特徴部分を構成するシートバックサイド部本体22について詳述する。
【0046】
図6(a)および図6(b)に示すように、シートバックサイド部本体22は、上部から下部にかけて徐々に左右方向の幅が広くなるとともに、左右内側から外側にいくにつれ徐々に前方に張り出す形状を有している。そして、シートバックサイド部本体22は、乗員に対向する前面24が平滑面として形成される。
シートバックサイド部本体22は、車体フレームFRに固定した状態で上下方向の中央部のぐらつきを抑制するため、シートバックサイド部本体22の後面26から突出し、車体フレームFRと当接する突起50,52を備えている。さらに、シートバックサイド部本体22の後面26には、補強部の一例として複数の補強リブ54,56,58が設けられている。
【0047】
図6(b)に示すように、シートバックサイド部本体22の後面26には、複数の補強リブ54が垂直方向に設けられ、水平方向にも複数の補強リブ56が補強リブ54と交差して設けられている。
また、シートバックサイド部本体22は、その下端から屈曲して延びるフランジ部60を備え、複数の補強リブ58が、シートバックサイド部本体22の後面26とフランジ部60とをつなぐように設けられている。
【0048】
シートバックサイド部本体22の下端には、シートバックサイド部本体22を車体フレームFRに固定するための第1取付部30が設けられている。
第1取付部30は、フランジ部60から斜め下方に突出している。図6(a)および図6(b)に示すように、第1取付部30の外面32は後側を向いており、第1取付部30の内面34は前側を向いている。さらに、第1取付部30は、その下端部付近で前方かつ内側に屈曲していることで、車体フレームFRに取り付けるための取付面35が形成されている。取付面35には、タッピングボルトBTを挿通するための取付孔36が設けられている。
【0049】
第1取付部30では、フランジ部38が、外面32の縁から内面34側に取付面35の先端部分まで延びている。
また、図6(a)に示すように、第1取付部30の内面34には、補強リブ39が垂直方向および水平方向に設けられている。
さらに、図7に示すように、複数の補強リブ58のうちの少なくとも1つ(本実施形態では2つ)の補強リブ58aが、シートバックサイド部本体22の後面26からフランジ部60を超えて延び、シートバックサイド部本体22とフランジ部60と第1取付部30の外面32とをつないでいる。そして、複数の補強リブ58のうちの少なくとも1つ(本実施形態では1つ)の補強リブ58bが、回転規制部40と第1取付部30との間に設けられている。
このように、第1取付部30は、外周部分に取付面35の先端部分まで延びるフランジ部38を設けるとともに、内面34の補強リブ39と、外面32の補強リブ58aとを設けたことにより、第1取付部30の剛性を高め、シートバックサイド部本体22と車体フレームFRとの取り付け部分における剛性を向上させている。
【0050】
図6に示すように、回転規制部40は、シートバックサイド部本体22の下端で第1取付部30とは異なる位置に設けられ、乗員から荷重を受けた際にシートバックサイド部20の回転を規制する部材である。
具体的には、回転規制部40は、シートバックサイド部本体22のフランジ部60から下方に突出する突部として形成され、第1取付部30に対して左右方向に離れた位置、より詳細には、第1取付部30よりも左右方向の外側に設けられるとともに、上下方向においてシートクッション2が設けられた範囲(図5の高さ範囲H)内に位置している。さらに、図6(b)に示すように、回転規制部40は、第1取付部30と第2取付部28とを結ぶ仮想線LNから外れた位置に設けられている。
【0051】
図5に示すように、回転規制部40は、その前面42がシートクッション2の後部側面に押し付けられた状態で当接しており、その後面44が車体フレームFR(詳細には、リア側のホイールハウスの上部)から少し間隔を空けた状態で設けられている。回転規制部40がシートクッション2に押し付けられていることで、シートバックサイド部20の左右のぐらつきが抑制されており、乗員がシートバックサイド部20に寄りかかった場合にも、違和感を感じることがない。そして、シートバックサイド部20のうち、第1取付部30よりも左右方向内側の部分に乗員からの荷重が掛かったときには、回転規制部40がシートクッション2の後部側面に規制されるので、シートバックサイド部20は殆ど動かない。一方、シートバックサイド部20のうち、第1取付部30よりも左右方向外側の部分に乗員からの大きな荷重が掛かったときには、回転規制部40の後面44が車体フレームFRに当接することでシートバックサイド部20の回転を規制する。
【0052】
図6に示すように、シートクッション2に対向する回転規制部40の前面42は、平滑面として形成され、回転規制部40の後面44は、補強リブ46が垂直方向に設けられている。このように、回転規制部40の後面44のみに補強リブ46を設けたことにより、回転規制部40の剛性を高めるとともに、補強リブ46によってシートクッション2が変形することを抑制することができる。
【0053】
また、回転規制部40は、シートバックサイド部本体22の下端における左右方向の端部ではなく、左右の幅方向中央部に設けられている。仮に、回転規制部40がシートバックサイド部本体22の下端における左右方向の端部、つまり、下端の角部付近に設けられていると、シートバックサイド部本体22に被せる表皮材23に、この回転規制部40を露出させるためのスリットを設けなければならず、表皮材23の強度が低下するおそれがある。しかしながら、本実施形態においては、回転規制部40は、シートバックサイド部本体22の下端における左右方向の端部から離れて設けられているので、引っ張る力が掛かり易い表皮材23の角部付近にスリットを設ける必要がないため、表皮材23が変形し難く、表皮材23取付けの作業性も向上する。
また、シートバックサイド部本体22の下端の角部付近には、ハーネスHN(図7参照)等の他部材が配置されるため、回転規制部40を左右の幅方向中央部に設けることで、ハーネスHN等の他部材との干渉を避けつつ、ハーネスHNと第1取付部30との間に回転規制部40を配置することができる。
【0054】
以上に述べた車両用リアシート1では、以下のような効果を得ることができる。
シートバックサイド部20は、シートバックサイド部本体22の下端に設けた第1取付部30を介して車体フレームFRに固定されるとともに、第1取付部30と異なる位置に、シートクッション2に当接(荷重によっては車体フレームFRにも当接)することでシートバックサイド部20の回転を規制する回転規制部40を備えたことにより、乗員から荷重を受けた場合でもシートバックサイド部がぐらつくことがなく、安定して乗員を保持することができる。
【0055】
シートバックサイド部20は、乗員から荷重を受けると、第1取付部30を中心に回転しようとするが、第1取付部30に対して左右方向に離れた位置に回転規制部40を設けたことにより、シートバックサイド部20の回転を規制しやすくなる。
【0056】
回転規制部40は、シートバックサイド部20の下部から下方に突出する突部であり、当該突部の少なくとも一部が、上下方向においてシートクッション2が設けられた範囲(高さ範囲H)内に位置することにより、荷重を受けてシートバックサイド部20が第1取付部30を中心に回転しようとすると、突部がシートクッション2に当接することでシートバックサイド部20の回転を規制することができるので、突部を設けるという簡単な構成により、シートバックサイド部20の回転規制を実現できる。
【0057】
回転規制部40は、突部の後面44のみに設けた補強リブ46により剛性を向上させる一方、シートクッション2と当接する突部の前面42では、補強リブによるシートクッション2の変形を抑制することができる。
【0058】
シートバックサイド部20は、乗員に対向する面(前面24)を有するシートバックサイド部本体22と、シートバックサイド部本体22の下端から後方に延びるフランジ部60とを含み、回転規制部40がフランジ部60に設けられているので、シートバックサイド部本体22の下端から屈曲して延びるフランジ部60に回転規制部40を設けることで、回転規制部40の剛性を向上させて変形を抑制することができる。
【0059】
フランジ部60が回転規制部40と第1取付部30とを連結することにより、回転規制部40と第1取付部30の剛性を向上させることできる。
【0060】
シートバックサイド部本体22とフランジ部60とをつなぐように延びる補強リブ58を備えたことにより、フランジ部60の剛性を向上させ、シートバックサイド部本体22に対する回転規制部40と第1取付部30のぐらつきを抑制することができるので、シートバックサイド部20のぐらつきをなくし、より一層安定して乗員を保持することができる。
【0061】
複数の補強リブ58のうち、少なくとも1つの補強リブ58bが回転規制部40と第1取付部30との間に設けられているので、荷重を受けて変形し易い箇所である回転規制部40と第1取付部30との間の部分を補強リブ58bで補強することにより、シートバックサイド部20をより一層安定して固定することができる。
【0062】
シートバックサイド部20を車体フレームFRに固定するための第2取付部28が、シートバックサイド部本体22に設けられ、回転規制部40が、第1取付部30と第2取付部28とを結ぶ仮想線LNから外れた位置に設けられているので、シートバックサイド部20の回転軸線から外れた位置で回転を規制することになるため、より効果的にシートバックサイド部20の回転を規制することができる。
【0063】
回転規制部40が第1取付部30よりも左右方向の外側に設けられているので、乗員からの荷重を受け易い左右方向の外側に回転規制部40を設けることで、より効果的にシートバックサイド部20の回転を規制することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0065】
前記実施形態では、シートバックサイド部本体22が、機体の一例としての車体フレームFRに固定されているが、機体は金属製のボディに限らず、当該ボディに固定された樹脂製の部材であってもよい。
また、シートバックサイド部本体22は、シートバック6とシートクッション2に固定してもよい。特許文献1および2に開示されたリアシートのように、シートクッションが前後にスライドしてシートバックの角度を変えられる構成においては、シートバックサイド部本体22は、第1取付部30をシートクッション2に、第2取付部28をシートバック6に固定することが望ましい。
【0066】
前記実施形態では、シートバックサイド部本体22は、回転規制部40の前面42がシートクッション2に押し付けられた状態で当接し、回転規制部40の後面44が車体フレームFRから間隔を空けた状態で車体フレームFRに固定されているが、乗員から荷重を受けた際にシートバックサイド部20の回転を規制できる構成であれば、回転規制部40とシートクッション2および車体フレームFRとの位置関係は、上述した実施形態の位置関係に限定されない。
例えば、回転規制部40をシートクッション2および車体フレームFRから僅かに間隔を空けた位置に配置し、シートバックサイド部20が乗員からの荷重を受けて僅かに回転すると、回転規制部40がシートクッション2または車体フレームFRのいずれかに当接することで、シートバックサイド部20の回転を規制する構成とすることも可能である。
また、回転規制部40をシートクッション2と車体フレームFRに挟まれた状態で保持し、回転規制部40がシートクッション2および車体フレームFRの両方に当接することで、シートバックサイド部20の回転を規制する構成とすることも可能である。
【0067】
前記実施形態では、シートバックサイド部本体22の下部に設けた第1取付部30と回転規制部40を、シートバックサイド部本体22の下端に設けたフランジ部60から突出させているが、第1取付部と回転規制部をシートバックサイド部本体22の下部から直接下方に突出させることも可能である。
【0068】
前記実施形態では、補強部として補強リブ39,46,54,56,58を設けたが、補強部は補強リブに限定されるものではない。例えば、第1取付部30、回転規制部40、シートバックサイド部本体22の各部材のうち、強度が必要な部分を局部的に肉厚にした肉厚部を設けることも可能である。
【0069】
前記実施形態では、シートバックサイド部本体22と、第1取付部30と、回転規制部40は、樹脂材料から構成されるため、これらを一体成形することが望ましい。しかしながら、例えば、第1取付部30および/または回転規制部40を金属製として、樹脂製のシートバックサイド部本体22に組み付ける構成とすることも可能である、
【0070】
前記実施形態では、乗物用シートの一例として、車両用リアシート1について説明したが、本発明は車両用リアシートに限らず、その他の乗物用シート、例えば、トラックのフロントシートや、鉄道車両、船舶、航空機等のシートに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 車両用リアシート
2 シートクッション
4 シートバック
10 シートバック本体部
20 シートバックサイド部
22 シートバックサイド部本体
24 前面
26 後面
28 第2取付部
30 第1取付部
40 回転規制部
58 補強リブ
58a 補強リブ
58b 補強リブ
60 フランジ部
FR 車体フレーム
H 高さ範囲
LN 仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7