【実施例】
【0046】
a)まず、本実施例のシート厚み計測装置の構成について説明する。
図1に示すように、本実施例のシート厚み計測装置1は、セラミックグリーンシート3を水中及び水の外において所定方向に搬送するとともに、搬送中のセラミックグリーンシート3の厚みを測定する装置である。
【0047】
このシート厚み計測装置1は、水を溜めることができる容器5と、水が入れられた容器5の重量を測定する重量測定装置7と、容器5内及び容器5外に配置されてセラミックグリーンシート3を搬送する複数のローラ9と、液中のセラミックグリーンシート3の近傍に配置された超音波発生装置11と、液面(水面)の高さを測定する液面高さセンサ13と、液面高さセンサ13の測定位置の液面の周囲に配置された枠体15と、容器5内に水を補給する水補給装置17とを備えている。
【0048】
以下、各構成について説明する。
前記容器5は、上方に長方形の開口部5aを有する直方体形状の容器(例えばステンレス製の箱)であって、平面視で例えば縦300mm×横600mm(
図1の左右方向)の寸法を有しており、その深さは、例えば4000mmである。
【0049】
つまり、この容器5は、開口部5aが(平面視で)短冊状で幅が狭く、且つ、深さが大きな板状の容器であり、開口部5aの4辺の長さの合計(X)と深さ(Y)との割合は、深さ(Y)は辺の合計(X)の2倍以上である。
【0050】
前記重量測定装置7は、容器5の底面より広い上面を有しており、その上面に配置された物体の重さを量る重量計である。
前記ローラ9は、セラミックグリーンシート3の搬送経路に沿って配置されている円柱状の回転部材である。このローラ9は、セラミックグリーンシート3を搬送経路に沿って(同図の矢印方向に)搬送可能なように、セラミックグリーンシート3の一方の面に沿って、又は、セラミックグリーンシート3を挟むように各所に配置されている。
【0051】
なお、各ローラ9は、セラミックグリーンシート3を所定方向に搬送するために、ローラ用モータ10(
図4参照)等によって回転駆動されるように構成されている。また、回転駆動されるローラ9は、全部でなくともよく、セラミックグリーンシート3を搬送可能な範囲で適宜選択することができる。
【0052】
詳しくは、第1〜第3ローラ9a〜9cは、容器5より上方の
図1の左側にて、セラミックグリーンシート3を水平方向に搬送するように、水平方向に沿って配置されている。
第4ローラ9dは、容器5の上方にて、セラミックグリーンシート3の両側に配置された一対のローラである。なお、セラミックグリーンシート3は、この第4ローラ9dから水中に向かって垂直に搬送される。
【0053】
第5〜第9ローラ9e〜9iは、水中にて並列に配置された各一対のローラであり、これらのローラ9e〜9iによって、セラミックグリーンシート3は、水中で上下方向に蛇行するようにして搬送される。なお、第5、第7、第9ローラ9e、9g、9iが、水中における底部に配置され、第6、第8ローラ9f、9hが、水中における上部に配置されている。
【0054】
第10ローラ9jは、容器5の上方にて、セラミックグリーンシート3の両側に接するように配置された一対の絞りローラである。なお、セラミックグリーンシート3は、第9ローラ9iから第10ローラ9jに向かって、垂直に引き出される。
【0055】
第11〜第13ローラ9k〜9mは、容器5より上方の
図1の右側にて、セラミックグリーンシート3を水平方向に搬送するように、水平方向に沿って配置されている。
前記超音波発生装置11は、水中にて発生する超音波によって、セラミックグリーンシート3の表面に付着した気泡を除去するために装置である。この超音波発生装置11は、第4ローラ9dと第5ローラ9eとの間の水中において、セラミックグリーンシート3を(厚み方向にて)挟むように、セラミックグリーンシート3に沿って一対配置されている。
【0056】
前記液面高さセンサ13は、液面に垂直にレーザ光を照射し、その反射光によって液面に高さを計測する周知の距離センサである。なお、液面高さセンサ13としては、これ以外に、例えば超音波によって液面の高さを計測する超音波センサ、フロートの位置によって液面の高さを計測するフロート式液面センサなど、周知の液面高さセンサを使用することができる。
【0057】
前記枠体15は、例えば平面視が正方形の(上部が開放され、下部に貫通孔15aが形成された)箱状の部材であり、その(上下方向における)中央部に液面がくるように配置されている。これによって、枠体15の外側の液面が波によって変動しても、枠体15内の液面の変動を低減できる。
【0058】
前記水補給装置17は、容器5内に水を供給する装置であり、水を送るポンプ21と、ポンプ21から容器5の上方に到る管路19とを備えている。
b)次に、シート厚みの測定対象であるセラミックグリーンシート3について説明する。
【0059】
セラミックグリーンシート3は、例えばAl
2O
3(アルミナ)を主成分とする未焼成の粘土状のシートである。このセラミックグリーンシート3は、長尺の帯状であり、その幅は200mm、厚みはほぼ1mm程度である。
【0060】
図1に示すように、セラミックグリーンシート3は、同図左側から水平方向に右側に向かって搬送される。なお、この際に、セラミックグリーンシート3のキャリアテープ23が剥離される。
【0061】
そして、水平方向に搬送されたセラミックグリーンシート3は、第4ローラ9d等に案内されて、水面に対して垂直に水中に導入され(
図2参照)、第5〜第9ローラ9e〜9iにて5回180度向きを変更されて(折れ曲がって)、第10ローラ9j等にて、水面から垂直に空気中に取り出され(
図2参照)、その後、第11〜第13ローラ9k〜9mに案内されて、水平に搬送される。
【0062】
このセラミックグリーンシート3は、例えば下記の方法で製造される。
まず、Al
2O
3粉末92質量%(平均粒径0.5μm)に、フラックスとしてCaO、MgO、SiO
2の合計で8質量%を加えた100部にして、解膠剤0.5部、ブチラール樹脂8部、DBP(ジブチルフタレート)3部、エタノール200部、トルエン200部を加えた材料を調整する。
【0063】
そして、この材料を、ポットミル内にて、15時間混合して十分に解粒された泥しょう(スラリー)とし、
図3に示すように、スラリーを周知のドクターブレード法によって、キャリアテープ23上に流し込み、乾燥させて、(キャリアテープ23が貼り付けられた)セラミックグリーンシート3を作製する。
【0064】
c)次に、シート厚み計測装置1の電気的構成について説明する。
図4に示すように、本実施例のシート厚み計測装置1は、セラミックグリーンシート3の厚みの計測等を行うために、電子制御装置25を備えている。この電子制御装置25は、周知のマイクロコンピュータやメモリ等を備えており、各種の演算や制御などを行う装置である。
【0065】
また、電子制御装置25には、液面高さセンサ13、ローラ用モータ10、ポンプ21、超音波発生装置11が接続されている。そして、液面高さセンサ13から電子制御装置22へは、液面の高さを示す信号が出力され、電子制御装置25からローラ用モータ10、ポンプ21、超音波発生装置11へは、それらを駆動するために信号が出力される。
【0066】
この電子制御装置25では、後述するように、セラミックグリーンシート3の平均厚みの算出の処理や、水が減少した場合の水の補給の制御や、超音波発生装置11の動作の制御等を行う。
【0067】
d)次に、シート厚み計測装置1を用いたシート厚み計測方法について説明する。
<シート厚みの測定原理>
セラミックグリーンシート3を水中に入れると、水中に入れた体積分に対応して液面が上昇する。ここで、セラミックグリーンシート3の幅(W)と水中の搬送経路に沿った長さ(L)と液面に上昇による水の増加量(ΔV)が分かると、下記式(1)によって、セラミックグリーンシート3の厚み(平均厚み)(T)を求めることができる。
【0068】
T=ΔV/WL ・・・(1)
なお、WLが、セラミックグリーンシート3の面積(片面の面積)Sである。
<セラミックグリーンシート3の平均厚みの算出の処理>
次に、上述した原理に基づいて、電子制御装置25にて行われるセラミックグリーンシート3の平均厚み(T)の算出の処理について説明する。
【0069】
図5のフローチャートに示すように、セラミックグリーンシート3が水中に入れられている状態において、まず、ステップ(S)100にて、液面高さセンサ13からの信号に基づいて、液面の高さ(H2)を求める。
【0070】
続くステップ110では、前記セラミックグリーンシート3が水中に入れられているときの液面の高さH2と、セラミックグリーンシート3が水中に入れられていないときの液面の高さH1(初期値)とから、液面の高さの増加量ΔH(=H2−H1)を算出する。
【0071】
なお、初期値の液面の高さH1は、予め測定しておいて、そのデータを電子制御装置25のメモリに記憶しておく。
続くステップ120では、前記液面の増加量ΔHと、容器5の(平面視での)縦横の寸法から得られる面積Mとから、水の増加量ΔV(=ΔH×M)を算出する。
【0072】
続くステップ130では、前記式(1)に基づいて、前記水の増加量(ΔV)と、セラミックグリーンシート3の幅(W)と、水中のセラミックグリーンシート3の長さ(L)とから、セラミックグリーンシート3の平均厚み(T)を算出する。即ち、水の増加量(ΔV)を面積(S)(=WL)で割って、セラミックグリーンシート3の平均厚み(T)を算出し、一旦本処理を終了する。
【0073】
ここで、水中のセラミックグリーンシート3の長さ(L)については、液面の高さが変動すると若干変動するが、その変動量は搬送経路全体の長さから比べると僅かであるので、無視してもよい。つまり、前記長さ(L)としては、セラミックグリーンシート3が水中に入れられていない場合の搬送経路の長さ(L0)を採用できる。
【0074】
なお、より精度を高める場合には、水中における正確な搬送経路を採用することもできる。具体的には、前記搬送経路(L0)に、液面の高さの変動量(ΔH)の2倍(2ΔH)を加えた値を、水中に入れられている場合の搬送経路の長さとして採用できる。
【0075】
また、平均厚みを計測するタイミングについては、例えば1秒間隔などの所定時間(一定時間)毎を採用できる。つまり、移動速度が同じであれば(例えば10mm/sec)、一定時間毎に計測を行うことによって、一定距離(例えば10mm)毎にシート厚みを計測することができる。
【0076】
更に、このシート厚みの複数(例えば10回)の計測データから、その平均値を求めることにより、所定長さにおける平均的な厚みを求めることができる。
また、前記複数のデータ毎(例えば10個のデータ)から、例えば移動平均を求めることによって、シートの厚みの変化を把握することができる。
【0077】
e)次に、シート厚み計測装置1にて行われるその他の制御処理について説明する。
<水の補給の制御>
液面高さセンサ13によって、液面の高さを計測し、その液面の高さが所定値(又は所定範囲)となるように、ポンプ21を作動させて、容器5内に水を供給する。
【0078】
なお、目標とする液面の高さとしては、枠体15の内部において、枠体15の底部が液面から露出せず、且つ、水が容器5から溢れない範囲(更に若干の余裕を持った範囲)を設定することができる。
【0079】
<超音波発生装置11の動作の制御>
セラミックグリーンシート3を液中に入れるとともに、ローラ9を回転させた場合には、超音波発生装置11を駆動させることができる。
【0080】
f)次に、本実施例の効果について説明する。
・本実施例では、セラミックグリーンシート3を容器5内の水中にいれ、そのときの液面の高さの変化量(ΔH)から水の増加量(ΔV)を求める。そして、この水の増加量(ΔV)とセラミックグリーンシート3の幅(W)及び水中の搬送経路の長さ(L)(従って面積(S))とから、セラミックグリーンシート3の平均厚み(T)を求めることができる。
【0081】
例えば前記
図7(a)に示す形状のセラミックグリーンシート3の厚みを測定した場合には、
図6に例示するように(但し特定の測定ポイントは無い)、例えば「(T1+T2)/2」のような値の平均厚み(T)を求めることができる。
【0082】
よって、従来のように、測定ポイントによるシート厚みの変化に影響されることなく、(水中の)セラミックグリーンシート3の全体的な平均厚みを好適に求めることができる。しかも、測定ポイントの違いによる管理値の誤判定を抑制することができる。
【0083】
従って、この平均厚みが得られたセラミックグリーンシート3を用いることにより、所望の寸法精度の例えば積層体などの製品を好適に製造することができる。詳しくは、本実施例では、セラミックグリーンシート3の平均厚みが分かるので、セラミック層の電気的特性(インピーダンス)を所望の範囲に収めることができ、よって、製品の歩留まりが高まるという利点がある。
【0084】
・また、本実施例では、液面高さセンサ13の測定位置の液面の周囲(平面視での周囲)を囲むように、枠体15を配置しているので、枠体15の外側に波があっても、枠体15の内部の液面の高さが変動することを抑制できる。
【0085】
・更に、本実施例では、容器5内などでセラミックグリーンシート3を所定方向に移動させながら、非接触でシート厚みを測定している。
これにより、セラミックグリーンシート3を連続的に製造している途中でシート厚みを測定することができるので、作業能率が大きく向上する。つまり、シート厚み計測装置1を、製造装置におけるラインに組み込むことができるので、従来のような抜き取り検査が不要であるという利点がある。
【0086】
また、本実施例では、セラミックグリーンシート3を移動させながら連続的にシート厚みを計測できるので、移動方向に沿ったシート厚みの変化を連続的に検知することができる。更に、移動途中にシート厚みを複数回測定してその平均値(又は移動平均)を求めることによって、全体としてのシート厚みの状態を把握することもできる。
【0087】
・本実施例では、液中にてセラミックグリーンシート3を屈曲して配置できるので、容器3をコンパクトにすることができる。また、セラミックグリーンシート3を屈曲して配置することにより、液中に十分な長さのセラミックグリーンシート3を配置することができるので、シート厚みを一層精度良く求めることができる。
【0088】
・本実施例では、セラミックグリーンシート3を液面に対して垂直となるように配置するので、セラミックグリーンシート3が水に入れられる場合や水から取り出される場合に、液面が波立ちにくく、よって、液面の高さを精度良く求めることができる。
【0089】
・本実施例では、セラミックグリーンシート3が水から取り出された箇所に、絞りローラである第10ローラ9jが配置されているので、セラミックグリーンシート3の表面に付着した水を拭って液中に戻すことができる。これによって、容器5内の水量の変化を最小限に抑えることができる。
【0090】
・本実施例では、水中において、セラミックグリーンシート3の周囲に、セラミックグリーンシート3の表面に付着した泡を除去する超音波発生装置11を配置している。よって、超音波発生装置11によって、セラミックグリーンシート3の表面に付着した泡(気泡)を効率良く除去することができるので、シート厚みを精度良く求めることができる。
【0091】
・本実施例では、重量測定装置7によって(水を含む)容器5の重量を測定し、その重量に変化がある場合には、ポンプ21を駆動して、水を補給することができる。これによって、水の減少等によりシート厚みの測定精度が低下することを抑制できる。
【0092】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。