特許第6181569号(P6181569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181569シート厚み計測装置及びシート厚み計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181569
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】シート厚み計測装置及びシート厚み計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 13/06 20060101AFI20170807BHJP
   G01B 21/08 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   G01B13/06
   G01B21/08
   G01B21/08 101
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-18647(P2014-18647)
(22)【出願日】2014年2月3日
(65)【公開番号】特開2015-145825(P2015-145825A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村松 正樹
【審査官】 池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−260121(JP,A)
【文献】 特開平03−205505(JP,A)
【文献】 実開昭62−115105(JP,U)
【文献】 米国特許第04292536(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00− 7/34,
11/00−13/24,
21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの厚みを計測するシート厚み計測装置において、
前記シートを入れる液を溜める容器と、
前記液中に前記シートを入れることによって増加した液量(ΔV)を求める液量検知手段と、
前記液中の前記シートの面積(S)を求める面積算出手段と、
前記増加した液量(ΔV)を前記液中の前記シートの面積(S)で割って、前記シートの厚み(T)を求める厚み算出手段と、
を備えたことを特徴とするシート厚み計測装置。
【請求項2】
前記シートは、セラミックグリーンシートであることを特徴とする請求項1に記載のシート厚み計測装置。
【請求項3】
前記シートは、所定幅の帯状の部材であり、前記面積算出手段は、前記シートの幅(W)と前記液中の前記シートの長さ(L)とから、前記液中の前記シートの面積(S)を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート厚み計測装置。
【請求項4】
前記液量検知手段は、液面高さセンサによって得られた、前記シートを前記液に入れる前と後との液面の高さの変化から、前記増加した液量(ΔV)を求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート厚み計測装置。
【請求項5】
前記液面高さセンサの測定位置の液面の周囲を囲むように、波の影響を低減する枠体を備えたことを特徴とする請求項4に記載のシート厚み計測装置。
【請求項6】
前記シートを、前記液中にて所定方向に移動させる移動機構を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート厚み計測装置。
【請求項7】
前記液中にて、前記シートを屈曲させて所定方向に搬送するローラを備えたことを特徴とする請求項6に記載のシート厚み計測装置。
【請求項8】
前記シートを前記液に入れる箇所及び前記液から出す箇所の少なくとも一方において、前記シートと前記液の表面とが垂直となるように、前記シートを搬送するローラを配置したことを特徴とする請求項6又は7に記載のシート厚み計測装置。
【請求項9】
前記シートが前記液から取り出された箇所に、前記シートの表面に付着した前記液を拭って前記液中に戻す絞りローラを備えたことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のシート厚み計測装置。
【請求項10】
前記液中において、前記シートの周囲に、該シートの表面に付着した泡を除去する超音波発生装置を配置したことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のシート厚み計測装置。
【請求項11】
前記液が入れられた容器の重量を測定する重量測定装置と、
前記容器に前記液を補充する液補充装置と、
前記重量測定装置によって測定された前記液を含む容器の重量の変化に基づいて、該液の減少による変化量を補充するように、前記液補充装置を駆動する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のシート厚み計測装置。
【請求項12】
シートの厚みを計測するシート厚み計測方法において、
容器内の液中にシートを入れ、該シートを入れることによって増加した液量(ΔV)を測定する第1工程と、
前記液中の前記シートの面積(S)を求める第2工程と、
前記増加した液量(ΔV)を前記液中の前記シートの面積(S)で割って、前記シートの厚み(T)を求める第3工程と、
を有することを特徴とするシート厚み計測方法。
【請求項13】
前記シートは、セラミックグリーンシートであることを特徴とする請求項12に記載のシート厚み計測方法。
【請求項14】
前記シートを、前記液中にて所定方向に移動させながら、前記シートの厚みを測定することを特徴とする請求項12又は13に記載のシート厚み計測方法。
【請求項15】
前記液中にて、前記シートを屈曲させて配置することを特徴とする請求項14に記載のシート厚み計測方法。
【請求項16】
前記シートを前記液に入れる場合及び前記液から出す場合の少なくとも一方において、前記シートと前記液の表面とが垂直となるように前記シートを配置したことを特徴とする請求項14又は15に記載のシート厚み計測方法。
【請求項17】
前記液中において、超音波によって、前記シートの表面に付着した泡を除去することを特徴とする請求項12〜16のいずれか1項に記載のシート厚み計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばセラミックグリーンシート等のシートの厚みを計測するシート厚み計測装置及びシート厚み計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種のシートの厚みを計測する技術として、レーザ光を利用した厚みセンサなどの非接触式タイプの測定器や、マイクロメータなどを利用した接触式タイプの測定器が知られている。
【0003】
例えば、シートをステージ上に載置し、シートの上方より接触針を接触させ、その接触針の位置からシート厚みを測定する接触式タイプの測定器が知られている。
また、シートをU字型のマイクロメータで挟み、シートにスピンドルを接触させて、シート厚みを測定する接触式タイプの測定器が知られている。
【0004】
更に、シートを開口部を有するステージ上に載置し、シートの上方及び(開口部の)下方に配置したレーザ距離計からシートにレーザ光を照射して、シート厚みを測定する非接触式タイプの測定器が知られている(特許文献1、2参照)。
【0005】
また、シートをステージより距離(空間)をあけて保持し、シートの上方及び下方に配置したレーザ距離計からシートにレーザ光を照射して、シート厚みを測定する非接触式タイプの測定器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−296732号公報
【特許文献2】特開平8−233541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の測定器の場合には、接触針やマイクロメータが接触した箇所や、レーザ光が照射された箇所など、シートの特定の位置(測定ポイント)における厚みしか計測できないので、シート全体の平均的な厚みが分からないという問題があった。
【0008】
詳しくは、例えば図7(a)に示すように、幅方向における中央部分が長手方向に沿って厚みが大きな凸(峰状)となっている帯状のシートの場合には、測定ポイントが幅方向における端部のS1のときには、シート厚みがT1と小さくなる。そのため、例えば図7(b)に示すように、シート厚みが下限管理値よりも小さな値(許容範囲外)となることがある。
【0009】
一方、測定ポイントが凸部のS2のときには、シート厚みが(両測定ポイントS1、S2の差だけ)大きなT3(=T1+T2)となる。その場合には、例えば上下限管理値の間の値(許容範囲内)となることがある。
【0010】
つまり、測定ポイントによっては、シート厚みの測定値が、管理値を満たさない値となったり逆に管理値を満たす値となることがあり、シートの厚みの状態(特にシート厚みの平均値)を十分に把握できないという問題があった。
【0011】
また、レーザ光を使用する測定器の場合には、シートの材料によってレーザ光の吸収率や反射率が異なるので、図7(c)に示すように、シートの種類によって測定値がばらつき、精度良くシート厚みを計測できないという問題があった。
【0012】
このように、従来技術では、シートの厚みを十分に把握できないことがあるので、場合によっては、測定されたシート厚みが実際とは異なる厚みのシートを用いて、例えば積層体などの製品が製造される可能性があり、その結果、製品の寸法精度や性能が十分でないおそれがあった。
【0013】
特に、シートがセラミックグリーンシートの場合には、そのシート厚みが異なると、セラミックグリーンシートから製造されるセラミック層の電気的特性(例えばインピーダンス)が変化するので、製造歩留まりが悪くなるという問題があった。
【0014】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、シート厚みの平均的な値を容易に求めることができるシート厚み計測装置及びシート厚み計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明は、第1態様(シート厚み計測装置)として、シートの厚みを計測するシート厚み計測装置において、前記シートを入れる液を溜める容器と、前記液中に前記シートを入れることによって増加した液量(ΔV)を求める液量検知手段と、前記液中の前記シートの面積(S)を求める面積算出手段と、前記増加した液量(ΔV)を前記液中の前記シートの面積(S)で割って、前記シートの厚み(T)を求める厚み算出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
液中にシートを入れると、液中のシートの体積分だけ容器内の液が(見かけ上)増加する(例えば液面が増加する)。従って、増加した液量をシートの面積で割ることによって、シートの厚み(平均厚み)を求めることができる。
【0017】
このように、本第1態様では、従来のように、測定ポイントによるシート厚みの変化に影響されることなく、(液中部分の)シートの全体的な平均厚みを好適に求めることができる。しかも、測定ポイントの違いによる管理値の誤判定を抑制することができる。
【0018】
よって、この平均厚みが得られたシートを用いることにより、所望の寸法精度の例えば積層体などの製品を好適に製造することができる。
また、レーザ光を用いてシートの厚みを求める測定器の場合には、シートの材料によってレーザ光の吸収率や反射率が異なるので、シートの種類によっては、精度良くシート厚みを計測できないことがあるが、本第1態様では、レーザ光ではなく増加した液量に基づいて、シート厚みを求めることができるので、シートの種類によらず、好適にシート厚みを求めることができる。
【0019】
なお、前記液としては、シート表面に液体残渣が残りにくい揮発性の液体(例えば水、アルコールなど)が望ましい。
前記液量検知手段としては、増加した液量を直接又は間接的に検出できるセンサと、そのセンサからの信号に基づいて液量を算出する処理を行う装置(例えばマイクロコンピュータ等の電子制御装置)が挙げられる。
【0020】
例えば、前記センサとしては、液面の高さを検出できる各種の液面高さセンサを採用できる。また、シートを入れると液面の高さが変化する場合には、液面の変化から(容器の形状が既知の場合には)増加した液量を算出することがえきる。
【0021】
面積算出手段としては、液中におけるシートの配置(例えばシートの幅や長さ)から面積を算出する電子制御装置が挙げられる。また、予め液面に高さに応じて算出された面積のデータを電子制御装置のメモリに記憶しておき、そのメモリから読み出す装置が挙げられる。なお、簡易的には、液面の高さを所定値(例えばシートを入れる前の液面の高さ)とした場合のシートの面積を固定値として記憶して利用してもよい。
【0022】
厚み算出手段としては、増加した液量を液中のシートの面積で割る演算を行うことができる電子制御装置が挙げられる。
(2)本発明は、第2態様として、前記シートは、セラミックグリーンシートであることを特徴とする。
【0023】
本第2態様は、本発明が好適に適用できるシートの種類を例示している。
セラミックグリーンシートの場合には、シート厚みの平均値が異なると、セラミックグリーンシートから製造されるセラミック層の例えば電気的特性(例えばインピーダンス)が変化するので、製造歩留まりが悪くなるが、本第2態様では、シートの平均厚みが分かるので、所定のシート厚みのセラミックグリーンシートを用いることにより、セラミック層の例えば電気的特性を所望の範囲に収めることができる。これによって、製品の歩留まりが高まるという利点がある。
【0024】
(3)本発明は、第3態様として、前記シートは、所定幅の帯状の部材であり、前記面積算出手段は、前記シートの幅(W)と前記液中の前記シートの長さ(L)とから、前記液中の前記シートの面積(S)を求めることを特徴とする。
【0025】
本第3態様では、シートは所定幅の帯状の部材であるので、シートの幅と液中のシートの長さとから、容易にシートの面積を求めることができる。
(4)本発明は、第4態様として、前記液量検知手段は、液面高さセンサによって得られた、前記シートを前記液に入れる前と後との液面の高さの変化から、前記増加した液量を求めることを特徴とする。
【0026】
本第4態様では、液面高さセンサによって、(シートが液外にある場合と液中にある場合とで変化する)液面の変化量を求めることができるので、その液面の変化量から(容器の形状が既知である場合には)増加した液量を求めることができる。
【0027】
(5)本発明は、第5態様として、前記液面高さセンサの測定位置の液面の周囲を囲むように、波の影響を低減する枠体を備えたことを特徴とする。
本第5態様では、液面高さセンサの測定位置の液面の周囲(平面視での周囲)を囲むような枠体を備えているので、枠体の外側に波があっても、枠体の内部の液面の高さが変動することを抑制できる。
【0028】
(6)本発明は、第6態様として、前記シートを、前記液中にて所定方向に移動させる移動機構を備えたことを特徴とする。
従来では、シート厚みを測定する場合には、シートの抜き取り測定が必要であったが、本第6態様では、シートを移動させながらシート厚みを測定できる。よって、シートを連続的に製造している途中でシート厚みを測定することができるので、作業能率が大きく向上する。
【0029】
つまり、本第6態様では、シート厚み計測装置を、製造装置におけるラインに組み込むことができるので、従来のような抜き取り検査が不要であるという利点がある。
また、本第6態様では、例えば回転駆動されるローラ等によって、シートを液中にて所定方向に移動させることができるので、シートの厚みを移動方向に沿って連続的に求めることができる。よって、移動途中にシートの厚みを複数回測定してその平均値を求めることによって、全体としてのシートの厚みの状態や、移動方向に沿った厚みの変化を把握することができる。
【0030】
(7)本発明は、第7態様として、前記液中にて、前記シートを屈曲させて所定方向に搬送するローラを備えたことを特徴とする。
本第7態様では、液中にてシートを屈曲して配置できるので、容器をコンパクトにすることができる。これにより、液中にシートを多く配置することができるので、シート厚みを一層精度良く求めることができる。
【0031】
(8)本発明は、第8態様として、前記シートを前記液に入れる箇所及び前記液から出す箇所の少なくとも一方において、前記シートと前記液の表面とが垂直となるように、前記シートを搬送するローラを配置したことを特徴とする。
【0032】
本第8態様では、液面に対してシートが垂直となるように配置されるので、液面が波立ちにくく、よって、液面の高さを精度良く求めることができる。
(9)本発明は、第9態様として、前記シートが前記液から取り出された箇所に、前記シートの表面に付着した前記液を拭って前記液中に戻す絞りローラを備えたことを特徴とする。
【0033】
本第9態様では、シートが液から取り出された箇所に、絞りローラが配置されているので、シートの表面に付着した液を拭って液中に戻すことができる。これによって、液量の変化を最小限に抑えることができる。
【0034】
(10)本発明は、第10態様として、前記液中において、前記シートの周囲に、該シートの表面に付着した泡を除去する超音波発生装置を配置したことを特徴とする。
本第10態様では、超音波発生装置によって、シートの表面に付着した泡(気泡)を除去することができる。これによって、シート厚みを精度良く求めることができる。
【0035】
(11)本発明は、第11態様として、前記液が入れられた容器の重量を測定する重量測定装置と、前記容器に前記液を補充する液補充装置と、前記重量測定装置によって測定された前記液を含む容器の重量の変化に基づいて、該液の減少による変化量を補充するように、前記液補充装置を駆動する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0036】
本第11態様では、重量測定装置によって(液を含む)容器の重量を測定し、その重量に変化がある場合には、液補充装置(例えばポンプ)を駆動して、液の減少を補うように液を補給することができる。これによって、液の減少等によるシート厚みの測定精度の低下を抑制することができる。
【0037】
なお、この制御手段は、マイコン等の電子制御装置によって実現できる。
(12)本発明は、第12態様(シート厚み計測方法)として、シートの厚みを計測するシート厚み計測方法において、容器内の液中にシートを入れ、該シートを入れることによって増加した液量(ΔV)を測定する第1工程と、前記液中の前記シートの面積(S)を求める第2工程と、前記増加した液量(ΔV)を前記液中の前記シートの面積(S)で割って、前記シートの厚み(T)を求める第3工程と、を有することを特徴とする。
【0038】
本第12態様は、前記第1態様と同様な効果を奏する。
(13)本発明は、第13態様として、前記シートは、セラミックグリーンシートであることを特徴とする。
【0039】
本第13態様は、前記第2態様と同様な効果を奏する。
(14)本発明は、第14態様として、前記シートを、前記液中にて所定方向に移動させながら、前記シートの厚みを測定することを特徴とする。
【0040】
本第14態様は、前記第6態様と同様な効果を奏する。
(15)本発明は、第15態様として、前記液中にて、前記シートを屈曲させて配置することを特徴とする。
【0041】
本第15態様は、前記第7態様と同様な効果を奏する。
(16)本発明は、第16態様として、前記シートを前記液に入れる場合及び前記液から出す場合の少なくとも一方において、前記シートと前記液の表面とが垂直となるように前記シートを配置したことを特徴とする。
【0042】
本第16態様は、前記第8態様と同様な効果を奏する。
(17)本発明は、第17態様として、前記液中において、超音波によって、前記シートの表面に付着した泡を除去することを特徴とする。
【0043】
本第17態様は、前記第10態様と同様な効果を奏する。
なお、泡を除去する方法としては、超音波発生装置以外に、例えばローラ等でシートの表面に接触して泡を除去する方法等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】実施例のシート厚み計測装置の全体構成を示す説明図である。
図2】実施例のシート厚み計測装置に入れられるセラミックグリーンシートを示す斜視図である。
図3】測定対象であるセラミックグリーンシートの製造方法を示す説明図である。
図4】シート厚み計測装置の電気的構成を示すブロック図である。
図5】電子制御装置にて実施されるシート厚み測定の手順を示すフローチャートである。
図6】実施例におけるシート厚みを例示するグラフである。
図7】(a)は従来技術における測定ポイントを示す説明図、(b)は測定ポイントとシート厚みとの関係を示すグラフ、(c)レーザ光を用いた測定器の場合の測定ポイントとシート厚みとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
次に、本発明を実施するための形態(実施例)として、シート厚み計測装置及びそのシート厚み計測装置を用いてシートの厚みを計測するシート厚み計測方法について説明する。なお、以下の実施例では、シートとしてセラミックグリーンシートを例に挙げて説明する。
【実施例】
【0046】
a)まず、本実施例のシート厚み計測装置の構成について説明する。
図1に示すように、本実施例のシート厚み計測装置1は、セラミックグリーンシート3を水中及び水の外において所定方向に搬送するとともに、搬送中のセラミックグリーンシート3の厚みを測定する装置である。
【0047】
このシート厚み計測装置1は、水を溜めることができる容器5と、水が入れられた容器5の重量を測定する重量測定装置7と、容器5内及び容器5外に配置されてセラミックグリーンシート3を搬送する複数のローラ9と、液中のセラミックグリーンシート3の近傍に配置された超音波発生装置11と、液面(水面)の高さを測定する液面高さセンサ13と、液面高さセンサ13の測定位置の液面の周囲に配置された枠体15と、容器5内に水を補給する水補給装置17とを備えている。
【0048】
以下、各構成について説明する。
前記容器5は、上方に長方形の開口部5aを有する直方体形状の容器(例えばステンレス製の箱)であって、平面視で例えば縦300mm×横600mm(図1の左右方向)の寸法を有しており、その深さは、例えば4000mmである。
【0049】
つまり、この容器5は、開口部5aが(平面視で)短冊状で幅が狭く、且つ、深さが大きな板状の容器であり、開口部5aの4辺の長さの合計(X)と深さ(Y)との割合は、深さ(Y)は辺の合計(X)の2倍以上である。
【0050】
前記重量測定装置7は、容器5の底面より広い上面を有しており、その上面に配置された物体の重さを量る重量計である。
前記ローラ9は、セラミックグリーンシート3の搬送経路に沿って配置されている円柱状の回転部材である。このローラ9は、セラミックグリーンシート3を搬送経路に沿って(同図の矢印方向に)搬送可能なように、セラミックグリーンシート3の一方の面に沿って、又は、セラミックグリーンシート3を挟むように各所に配置されている。
【0051】
なお、各ローラ9は、セラミックグリーンシート3を所定方向に搬送するために、ローラ用モータ10(図4参照)等によって回転駆動されるように構成されている。また、回転駆動されるローラ9は、全部でなくともよく、セラミックグリーンシート3を搬送可能な範囲で適宜選択することができる。
【0052】
詳しくは、第1〜第3ローラ9a〜9cは、容器5より上方の図1の左側にて、セラミックグリーンシート3を水平方向に搬送するように、水平方向に沿って配置されている。
第4ローラ9dは、容器5の上方にて、セラミックグリーンシート3の両側に配置された一対のローラである。なお、セラミックグリーンシート3は、この第4ローラ9dから水中に向かって垂直に搬送される。
【0053】
第5〜第9ローラ9e〜9iは、水中にて並列に配置された各一対のローラであり、これらのローラ9e〜9iによって、セラミックグリーンシート3は、水中で上下方向に蛇行するようにして搬送される。なお、第5、第7、第9ローラ9e、9g、9iが、水中における底部に配置され、第6、第8ローラ9f、9hが、水中における上部に配置されている。
【0054】
第10ローラ9jは、容器5の上方にて、セラミックグリーンシート3の両側に接するように配置された一対の絞りローラである。なお、セラミックグリーンシート3は、第9ローラ9iから第10ローラ9jに向かって、垂直に引き出される。
【0055】
第11〜第13ローラ9k〜9mは、容器5より上方の図1の右側にて、セラミックグリーンシート3を水平方向に搬送するように、水平方向に沿って配置されている。
前記超音波発生装置11は、水中にて発生する超音波によって、セラミックグリーンシート3の表面に付着した気泡を除去するために装置である。この超音波発生装置11は、第4ローラ9dと第5ローラ9eとの間の水中において、セラミックグリーンシート3を(厚み方向にて)挟むように、セラミックグリーンシート3に沿って一対配置されている。
【0056】
前記液面高さセンサ13は、液面に垂直にレーザ光を照射し、その反射光によって液面に高さを計測する周知の距離センサである。なお、液面高さセンサ13としては、これ以外に、例えば超音波によって液面の高さを計測する超音波センサ、フロートの位置によって液面の高さを計測するフロート式液面センサなど、周知の液面高さセンサを使用することができる。
【0057】
前記枠体15は、例えば平面視が正方形の(上部が開放され、下部に貫通孔15aが形成された)箱状の部材であり、その(上下方向における)中央部に液面がくるように配置されている。これによって、枠体15の外側の液面が波によって変動しても、枠体15内の液面の変動を低減できる。
【0058】
前記水補給装置17は、容器5内に水を供給する装置であり、水を送るポンプ21と、ポンプ21から容器5の上方に到る管路19とを備えている。
b)次に、シート厚みの測定対象であるセラミックグリーンシート3について説明する。
【0059】
セラミックグリーンシート3は、例えばAl23(アルミナ)を主成分とする未焼成の粘土状のシートである。このセラミックグリーンシート3は、長尺の帯状であり、その幅は200mm、厚みはほぼ1mm程度である。
【0060】
図1に示すように、セラミックグリーンシート3は、同図左側から水平方向に右側に向かって搬送される。なお、この際に、セラミックグリーンシート3のキャリアテープ23が剥離される。
【0061】
そして、水平方向に搬送されたセラミックグリーンシート3は、第4ローラ9d等に案内されて、水面に対して垂直に水中に導入され(図2参照)、第5〜第9ローラ9e〜9iにて5回180度向きを変更されて(折れ曲がって)、第10ローラ9j等にて、水面から垂直に空気中に取り出され(図2参照)、その後、第11〜第13ローラ9k〜9mに案内されて、水平に搬送される。
【0062】
このセラミックグリーンシート3は、例えば下記の方法で製造される。
まず、Al23粉末92質量%(平均粒径0.5μm)に、フラックスとしてCaO、MgO、SiO2の合計で8質量%を加えた100部にして、解膠剤0.5部、ブチラール樹脂8部、DBP(ジブチルフタレート)3部、エタノール200部、トルエン200部を加えた材料を調整する。
【0063】
そして、この材料を、ポットミル内にて、15時間混合して十分に解粒された泥しょう(スラリー)とし、図3に示すように、スラリーを周知のドクターブレード法によって、キャリアテープ23上に流し込み、乾燥させて、(キャリアテープ23が貼り付けられた)セラミックグリーンシート3を作製する。
【0064】
c)次に、シート厚み計測装置1の電気的構成について説明する。
図4に示すように、本実施例のシート厚み計測装置1は、セラミックグリーンシート3の厚みの計測等を行うために、電子制御装置25を備えている。この電子制御装置25は、周知のマイクロコンピュータやメモリ等を備えており、各種の演算や制御などを行う装置である。
【0065】
また、電子制御装置25には、液面高さセンサ13、ローラ用モータ10、ポンプ21、超音波発生装置11が接続されている。そして、液面高さセンサ13から電子制御装置22へは、液面の高さを示す信号が出力され、電子制御装置25からローラ用モータ10、ポンプ21、超音波発生装置11へは、それらを駆動するために信号が出力される。
【0066】
この電子制御装置25では、後述するように、セラミックグリーンシート3の平均厚みの算出の処理や、水が減少した場合の水の補給の制御や、超音波発生装置11の動作の制御等を行う。
【0067】
d)次に、シート厚み計測装置1を用いたシート厚み計測方法について説明する。
<シート厚みの測定原理>
セラミックグリーンシート3を水中に入れると、水中に入れた体積分に対応して液面が上昇する。ここで、セラミックグリーンシート3の幅(W)と水中の搬送経路に沿った長さ(L)と液面に上昇による水の増加量(ΔV)が分かると、下記式(1)によって、セラミックグリーンシート3の厚み(平均厚み)(T)を求めることができる。
【0068】
T=ΔV/WL ・・・(1)
なお、WLが、セラミックグリーンシート3の面積(片面の面積)Sである。
<セラミックグリーンシート3の平均厚みの算出の処理>
次に、上述した原理に基づいて、電子制御装置25にて行われるセラミックグリーンシート3の平均厚み(T)の算出の処理について説明する。
【0069】
図5のフローチャートに示すように、セラミックグリーンシート3が水中に入れられている状態において、まず、ステップ(S)100にて、液面高さセンサ13からの信号に基づいて、液面の高さ(H2)を求める。
【0070】
続くステップ110では、前記セラミックグリーンシート3が水中に入れられているときの液面の高さH2と、セラミックグリーンシート3が水中に入れられていないときの液面の高さH1(初期値)とから、液面の高さの増加量ΔH(=H2−H1)を算出する。
【0071】
なお、初期値の液面の高さH1は、予め測定しておいて、そのデータを電子制御装置25のメモリに記憶しておく。
続くステップ120では、前記液面の増加量ΔHと、容器5の(平面視での)縦横の寸法から得られる面積Mとから、水の増加量ΔV(=ΔH×M)を算出する。
【0072】
続くステップ130では、前記式(1)に基づいて、前記水の増加量(ΔV)と、セラミックグリーンシート3の幅(W)と、水中のセラミックグリーンシート3の長さ(L)とから、セラミックグリーンシート3の平均厚み(T)を算出する。即ち、水の増加量(ΔV)を面積(S)(=WL)で割って、セラミックグリーンシート3の平均厚み(T)を算出し、一旦本処理を終了する。
【0073】
ここで、水中のセラミックグリーンシート3の長さ(L)については、液面の高さが変動すると若干変動するが、その変動量は搬送経路全体の長さから比べると僅かであるので、無視してもよい。つまり、前記長さ(L)としては、セラミックグリーンシート3が水中に入れられていない場合の搬送経路の長さ(L0)を採用できる。
【0074】
なお、より精度を高める場合には、水中における正確な搬送経路を採用することもできる。具体的には、前記搬送経路(L0)に、液面の高さの変動量(ΔH)の2倍(2ΔH)を加えた値を、水中に入れられている場合の搬送経路の長さとして採用できる。
【0075】
また、平均厚みを計測するタイミングについては、例えば1秒間隔などの所定時間(一定時間)毎を採用できる。つまり、移動速度が同じであれば(例えば10mm/sec)、一定時間毎に計測を行うことによって、一定距離(例えば10mm)毎にシート厚みを計測することができる。
【0076】
更に、このシート厚みの複数(例えば10回)の計測データから、その平均値を求めることにより、所定長さにおける平均的な厚みを求めることができる。
また、前記複数のデータ毎(例えば10個のデータ)から、例えば移動平均を求めることによって、シートの厚みの変化を把握することができる。
【0077】
e)次に、シート厚み計測装置1にて行われるその他の制御処理について説明する。
<水の補給の制御>
液面高さセンサ13によって、液面の高さを計測し、その液面の高さが所定値(又は所定範囲)となるように、ポンプ21を作動させて、容器5内に水を供給する。
【0078】
なお、目標とする液面の高さとしては、枠体15の内部において、枠体15の底部が液面から露出せず、且つ、水が容器5から溢れない範囲(更に若干の余裕を持った範囲)を設定することができる。
【0079】
<超音波発生装置11の動作の制御>
セラミックグリーンシート3を液中に入れるとともに、ローラ9を回転させた場合には、超音波発生装置11を駆動させることができる。
【0080】
f)次に、本実施例の効果について説明する。
・本実施例では、セラミックグリーンシート3を容器5内の水中にいれ、そのときの液面の高さの変化量(ΔH)から水の増加量(ΔV)を求める。そして、この水の増加量(ΔV)とセラミックグリーンシート3の幅(W)及び水中の搬送経路の長さ(L)(従って面積(S))とから、セラミックグリーンシート3の平均厚み(T)を求めることができる。
【0081】
例えば前記図7(a)に示す形状のセラミックグリーンシート3の厚みを測定した場合には、図6に例示するように(但し特定の測定ポイントは無い)、例えば「(T1+T2)/2」のような値の平均厚み(T)を求めることができる。
【0082】
よって、従来のように、測定ポイントによるシート厚みの変化に影響されることなく、(水中の)セラミックグリーンシート3の全体的な平均厚みを好適に求めることができる。しかも、測定ポイントの違いによる管理値の誤判定を抑制することができる。
【0083】
従って、この平均厚みが得られたセラミックグリーンシート3を用いることにより、所望の寸法精度の例えば積層体などの製品を好適に製造することができる。詳しくは、本実施例では、セラミックグリーンシート3の平均厚みが分かるので、セラミック層の電気的特性(インピーダンス)を所望の範囲に収めることができ、よって、製品の歩留まりが高まるという利点がある。
【0084】
・また、本実施例では、液面高さセンサ13の測定位置の液面の周囲(平面視での周囲)を囲むように、枠体15を配置しているので、枠体15の外側に波があっても、枠体15の内部の液面の高さが変動することを抑制できる。
【0085】
・更に、本実施例では、容器5内などでセラミックグリーンシート3を所定方向に移動させながら、非接触でシート厚みを測定している。
これにより、セラミックグリーンシート3を連続的に製造している途中でシート厚みを測定することができるので、作業能率が大きく向上する。つまり、シート厚み計測装置1を、製造装置におけるラインに組み込むことができるので、従来のような抜き取り検査が不要であるという利点がある。
【0086】
また、本実施例では、セラミックグリーンシート3を移動させながら連続的にシート厚みを計測できるので、移動方向に沿ったシート厚みの変化を連続的に検知することができる。更に、移動途中にシート厚みを複数回測定してその平均値(又は移動平均)を求めることによって、全体としてのシート厚みの状態を把握することもできる。
【0087】
・本実施例では、液中にてセラミックグリーンシート3を屈曲して配置できるので、容器3をコンパクトにすることができる。また、セラミックグリーンシート3を屈曲して配置することにより、液中に十分な長さのセラミックグリーンシート3を配置することができるので、シート厚みを一層精度良く求めることができる。
【0088】
・本実施例では、セラミックグリーンシート3を液面に対して垂直となるように配置するので、セラミックグリーンシート3が水に入れられる場合や水から取り出される場合に、液面が波立ちにくく、よって、液面の高さを精度良く求めることができる。
【0089】
・本実施例では、セラミックグリーンシート3が水から取り出された箇所に、絞りローラである第10ローラ9jが配置されているので、セラミックグリーンシート3の表面に付着した水を拭って液中に戻すことができる。これによって、容器5内の水量の変化を最小限に抑えることができる。
【0090】
・本実施例では、水中において、セラミックグリーンシート3の周囲に、セラミックグリーンシート3の表面に付着した泡を除去する超音波発生装置11を配置している。よって、超音波発生装置11によって、セラミックグリーンシート3の表面に付着した泡(気泡)を効率良く除去することができるので、シート厚みを精度良く求めることができる。
【0091】
・本実施例では、重量測定装置7によって(水を含む)容器5の重量を測定し、その重量に変化がある場合には、ポンプ21を駆動して、水を補給することができる。これによって、水の減少等によりシート厚みの測定精度が低下することを抑制できる。
【0092】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
【符号の説明】
【0093】
1…シート厚み計測装置
3…セラミックグリーンシート
5…容器
7…重量測定装置
9、9a、9b、9c、9d、9e、9f、9g、9h、9i、9j、9k、9l、9m…ローラ
13…液面高さセンサ
15…枠体
17…水補給装置
21…ポンプ
25…電子制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7