特許第6181572号(P6181572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181572静電チャック用の接着シート及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181572
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】静電チャック用の接着シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/00 20060101AFI20170807BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20170807BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20170807BHJP
   C09J 11/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C09J7/00
   H01L21/68 R
   C09J201/00
   C09J11/00
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-25378(P2014-25378)
(22)【出願日】2014年2月13日
(65)【公開番号】特開2015-151441(P2015-151441A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦
(72)【発明者】
【氏名】森 智史
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−083862(JP,A)
【文献】 特開平05−347352(JP,A)
【文献】 特開2008−140823(JP,A)
【文献】 特開2000−007758(JP,A)
【文献】 特開平07−228669(JP,A)
【文献】 特開2012−099561(JP,A)
【文献】 特開2013−228748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/00
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着用電極が設けられた吸着支持部材とベース部材との接合に用いられる静電チャック用の接着シートであって、
該接着シートは、1又は複数の半硬化接着層を有しており、
該半硬化接着層は、少なくとも光開始剤及び熱開始剤を含有する硬化性樹脂接着剤に光を照射し、該硬化性樹脂接着剤を前記光開始剤により硬化させて半硬化状態としたものであることを特徴とする静電チャック用の接着シート。
【請求項2】
前記半硬化接着層の厚みは、100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック用の接着シート。
【請求項3】
前記半硬化接着層は、前記硬化性樹脂接着剤に対し面露光及び線露光の少なくとも一方により光を照射して形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電チャック用の接着シート。
【請求項4】
前記接着シートは、複数の前記半硬化接着層を積層してなり、該各半硬化接着層には、厚み方向に貫通する抜き孔が形成されており、前記複数の半硬化接着層は、すべて同じ形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電チャック用の接着シート。
【請求項5】
前記半硬化接着層には、フィラーが含有されており、該フィラーは、前記抜き孔の内壁面に露出していないことを特徴とする請求項4に記載の静電チャック用の接着シート。
【請求項6】
前記半硬化接着層間には、該半硬化接着層よりも熱伝導率の低い樹脂層が存在することを特徴とする請求項4又は5に記載の静電チャック用の接着シート。
【請求項7】
吸着用電極が設けられた吸着支持部材とベース部材との接合に用いられる静電チャック用の接着シートの製造方法であって、
少なくとも光開始剤及び熱開始剤を含有する硬化性樹脂接着剤に光を照射し、該硬化性樹脂接着剤を前記光開始剤により硬化させた半硬化状態の半硬化接着層を形成する接着層形成工程を有し、
該接着層形成工程を1又は複数回行うことにより、前記接着シートを形成することを特徴とする静電チャック用の接着シートの製造方法。
【請求項8】
前記接着層形成工程では、厚みが100μm以下となるように前記半硬化接着層を形成することを特徴とする請求項7に記載の静電チャック用の接着シートの製造方法。
【請求項9】
前記接着層形成工程では、前記硬化性樹脂接着剤を液滴吐出手段により吐出させて所定の形状に塗布し、その後、塗布した前記硬化性樹脂接着剤に光を照射して前記半硬化接着層を形成することを特徴とする請求項7又は8に記載の静電チャック用の接着シートの製造方法。
【請求項10】
前記接着層形成工程では、前記硬化性樹脂接着剤の所定の部分に光を照射し、該硬化性樹脂接着剤における光を照射した部分に前記半硬化接着層を形成することを特徴とする請求項7又は8に記載の静電チャック用の接着シートの製造方法。
【請求項11】
前記接着層形成工程では、前記硬化性樹脂接着剤に対し面露光及び線露光の少なくとも一方により光を照射することを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の静電チャック用の接着シートの製造方法。
【請求項12】
吸着用電極が設けられた吸着支持部材とベース部材とを備えた静電チャックの製造方法であって、
請求項7〜11のいずれか1項に記載の接着シートの製造方法により接着シートを形成する接着シート形成工程と、
前記吸着支持部材と前記ベース部材との間に前記接着シートを配設した後、該接着シートを加熱し、該接着シートを前記熱開始剤により硬化させ、前記吸着支持部材と前記ベース部材とを接合する接合工程とを有することを特徴とする静電チャックの製造方法。
【請求項13】
前記接着シート形成工程では、前記ベース部材上に前記接着シートを形成することを特徴とする請求項12に記載の静電チャックの製造方法。
【請求項14】
セラミック材と金属材とが1又は複数の硬化接着層を介して貼り合わされたセラミック−金属貼り合わせ体を用いてなる静電チャックであって、
前記硬化接着層は、少なくとも光開始剤及び熱開始剤を含有する硬化性樹脂接着剤からなることを特徴とする静電チャック
【請求項15】
前記硬化接着層は、シート状であることを特徴とする請求項14に記載の静電チャック
【請求項16】
前記硬化接着層には、厚み方向に貫通する抜き孔が形成されており、また前記硬化接着層には、フィラーが含有されており、該フィラーは、前記抜き孔の内壁面に露出していないことを特徴とする請求項14又は15に記載の静電チャック
【請求項17】
前記セラミック材と前記金属材とが複数の前記硬化接着層を介して貼り合わされており、該硬化接着層間には、該硬化接着層よりも熱伝導率の低い樹脂層が存在することを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の静電チャック
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体ウェハの固定等に用いられる静電チャック用の接着シート及びその製造方法、静電チャックの製造方法、及び静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置では、半導体ウェハ(例えばシリコンウェハ)に対してドライエッチング(例えばプラズマエッチング)等の処理が行われている。このドライエッチング等の加工精度を高めるためには、半導体ウェハを確実に固定しておく必要がある。そのため、半導体ウェハを固定する固定手段として、静電引力によって半導体ウェハを固定する静電チャックが知られている。
【0003】
静電チャックとしては、例えば、金属製のベース部材と、セラミック絶縁体に吸着用電極を設けた吸着支持部材とを備えたものがある。ベース部材と吸着支持部材とは、接着シート等の接着剤を用いて接合されている。そして、静電チャックは、吸着用電極に電圧を印加させた際に生じる静電引力を用いて、半導体ウェハを吸着支持部材の吸着面に吸着して支持できるよう構成されている。
【0004】
静電チャック用の接着シートの製造方法として、例えば、特許文献1には、剥離可能なフィルム上に接着剤を塗布し、その接着剤を半硬化させて接着シートを作製する方法が開示されている。また、特許文献2には、作製した接着シートを所定の形状となるように切断、打ち抜き等によって加工する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−80335号公報
【特許文献2】特表2011−508419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1では、クリアランスを調整したステンレス製の2本のロールの間を通し、加熱することで半硬化状態のシリコーン系接着性シートを作製している。そのため、一度にたくさんの接着シートを作製する場合、大型の装置が必要となり、高コストとなる。
【0007】
また、静電チャックやそれに用いられる接着シートは、外形形状が円形であったり、半導体ウェハを冷却する冷却用ガスの供給通路となる冷却用ガス供給路(貫通孔)を有していたりする。そのため、前記特許文献2のように、作製した接着シートを静電チャックの外形形状や貫通孔に合わせて切断、打ち抜き等によって加工すると、除去した部分の材料が無駄となり、材料歩留まりが低下する。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、製造が容易であり、材料歩留まりが高く、均質性に優れた静電チャック用の接着シート及びその製造方法、静電チャックの製造方法、及び静電チャックを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様である静電チャック用の接着シートは、吸着用電極が設けられた吸着支持部材とベース部材との接合に用いられる静電チャック用の接着シートであって、該接着シートは、1又は複数の半硬化接着層を有しており、該半硬化接着層は、少なくとも光開始剤及び熱開始剤を含有する硬化性樹脂接着剤に光を照射し、該硬化性樹脂接着剤を前記光開始剤により硬化させて半硬化状態としたものであることを特徴とする。
【0010】
本発明の接着シートは、少なくとも光開始剤及び熱開始剤を含有する硬化性樹脂接着剤に光を照射し、その硬化性樹脂接着剤を光開始剤により硬化させて半硬化状態とした1又は複数の半硬化接着層により構成されている。すなわち、接着シートは、半硬化状態であるため、流動を抑制でき、厚みのばらつきが少ないものとなる。これにより、静電チャックの面内温度ばらつき(被吸着物を吸着する吸着支持部材の吸着面の温度ばらつき)を低減できる。
【0011】
また、接着シートは、半硬化状態であり流動を抑制できるため、静電チャックの複雑な形状(例えば外形形状、貫通孔等)に合わせた形状とすることができる。また、流動を抑制できるため、作業性に優れたものとなる。すなわち、例えば吸着支持部材やベース部材の側面に硬化性樹脂接着剤が付着することがなくなり、側面を正確な形状に保つことができ、半導体製造装置への組み付けが容易となる。また、例えば貫通孔に硬化性樹脂接着剤が入ることがなくなるため、貫通孔が狭くなることや閉塞することを防止でき、良好な静電チャックを得ることができる。
【0012】
また、接着シートにフィラーが含有されている場合には、流動の抑制によってフィラーの沈降を防止できる。そのため、接着シートは、その特性が厚み方向で変化することのない、均質性に優れたものとなる。
【0013】
本発明の第2の態様である静電チャック用の接着シートの製造方法は、吸着用電極が設けられた吸着支持部材とベース部材との接合に用いられる静電チャック用の接着シートの製造方法であって、少なくとも光開始剤及び熱開始剤を含有する硬化性樹脂接着剤に光を照射し、該硬化性樹脂接着剤を前記光開始剤により硬化させた半硬化状態の半硬化接着層を形成する接着層形成工程を有し、該接着層形成工程を1又は複数回行うことにより、前記接着シートを形成することを特徴とする。
【0014】
本発明の接着シートの製造方法は、前述のとおり、半硬化接着層を形成する接着層形成工程を有しており、その接着層形成工程を1又は複数回行うことにより、接着シートを形成する。そのため、静電チャック用の接着シートを1枚ずつ容易に作製できる。これにより、従来のような大型な製造装置が不要となり、接着シートの製造が容易となる。
【0015】
また、静電チャックの複雑な形状(例えば外形形状、貫通孔等)に合わせた接着シートを容易かつ精度良く作製できるため、形成した接着シートに対して切断、打ち抜き等の加工を行う必要がなくなる。これにより、材料の無駄をなくすことができ、材料歩留まりを高めることができる。また、製造工程を短縮し、コスト低減が可能となる。また、半硬化接着層を精度良く形成できるため、均質性に優れた接着シートを得ることができる。
【0016】
本発明の第3の態様である静電チャックの製造方法は、吸着用電極が設けられた吸着支持部材とベース部材とを備えた静電チャックの製造方法であって、前記本発明の接着シートの製造方法により接着シートを形成する接着シート形成工程と、前記吸着支持部材と前記ベース部材との間に前記接着シートを配設した後、該接着シートを加熱し、該接着シートを前記熱開始剤により硬化させ、前記吸着支持部材と前記ベース部材とを接合する接合工程とを有することを特徴とする。
【0017】
本発明の静電チャックの製造方法は、前述のとおり、接着シート形成工程と接合工程とを有している。そして、接着シート形成工程では、上述の接着シートの製造方法により接着シートを形成する。そのため、製造が容易であり、材料歩留まりが高く、均質性に優れた接着シートを得ることができる。また、接合工程では、この接着シートを加熱して熱開始剤により硬化させ、吸着支持部材とベース部材とを接合する。そのため、両者を容易かつ精度良く接合できる。
【0018】
本発明の第4の態様である静電チャックは、セラミック材と金属材とが1又は複数の硬化接着層を介して貼り合わされたセラミック−金属貼り合わせ体を用いてなる静電チャックであって、前記硬化接着層は、少なくとも光開始剤及び熱開始剤を含有する硬化性樹脂接着剤からなることを特徴とする。
【0019】
本発明の静電チャック(即ちセラミック−金属貼り合わせ体(以下、適宜、貼り合わせ体という)を用いてなる静電チャック)では、セラミック材と金属材とを貼り合わせる接着層(硬化接着層)を、光開始剤を含み露光により硬化させることができる接着層にすることで、通常の熱硬化型接着剤と比べ熱開始剤の添加量を減らすことができる。これにより、低温もしくは室温での硬化反応を遅くできるため、硬化性樹脂接着剤の使用可能期間を延ばすことができる。また、光開始剤と露光によりパターンを形成することで、解像度を高めることができ、複雑な形状のセラミック材や金属材であってもそれらの形状に合わせた接着層を形成できる。
【0020】
また、製造工程において、半硬化状態の硬化接着層を介してセラミック材と金属材とを貼り合わせ、その貼り合わせ体を別の場所に搬送する場合には、セラミック材及び金属材の位置ずれを生じさせることなく、容易に貼り合わせ体を搬送できる。半硬化状態の硬化接着層は、液体とは異なり、流動性がないためである。
【0021】
さらに、セラミック材(吸着支持部材)や金属材(ベース部材)の上に硬化性樹脂接着剤を塗布した後、露光により半硬化させることで、接合界面に気泡のない貼り合わせ体を得ることができる。硬化反応が完了した粘着シートを張り付ける場合と比較して、液体の接着剤(硬化性樹脂接着剤)を塗布する方が気泡を挟みにくいためである。よって、貼り合わせ体が静電チャックの場合、気泡により熱伝達が妨げられることがなくなり、温度ばらつきを少なくできる。
【0023】
このように、本発明によれば、製造が容易であり、材料歩留まりが高く、均質性に優れた静電チャック用の接着シート及びその製造方法、静電チャックの製造方法、及び静電チャックを提供できる。
【0024】
前記静電チャック用の接着シートにおいて、前記半硬化接着層の厚みは、100μm以下であることが好ましい。この場合には、半硬化接着層の厚みを薄くすることにより、例えば、光が照射される面(露光面)とその反対側の面との露光量の差による影響を小さくできる。これにより、半硬化接着層(接着シート)は、均質性に優れたものとなる。なお、半硬化接着層の厚みは、硬化性樹脂接着剤を半硬化させて層を形成できる程度の厚み(例えば数μm)以上とすればよい。
【0025】
また、前記半硬化接着層は、前記硬化性樹脂接着剤に対し面露光及び線露光の少なくとも一方により光を照射して形成されたものであってもよい。この場合には、均質性に優れた半硬化接着層を形成できる。これにより、接着シートは、均質性に優れたものとなる。
【0026】
また、前記接着シートは、複数の前記半硬化接着層を積層してなり、該各半硬化接着層には、厚み方向に貫通する抜き孔が形成されており、前記複数の半硬化接着層は、すべて同じ形状であってもよい。この場合には、接着シートに対して切断、打ち抜き等の加工を行う必要がなくなり、材料歩留まりを高めることができる。
【0027】
また、前記半硬化接着層には、フィラーが含有されており、該フィラーは、前記抜き孔の内壁面に露出していないことが好ましい。この場合には、接着シート(半硬化接着層)に含まれるフィラーが抜き孔の内壁面から脱落して汚れの原因となることを防止できる。なお、フィラーとしては、無機粒子や樹脂粒子を用いることができる。無機粒子としては、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、アルミノシリケート、マイカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭化珪素、窒化アルミニウム等を用いることができる。樹脂粒子としては、例えば、シリコーン樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子、アクリル樹脂粒子等を用いることができる。
【0028】
また、前記半硬化接着層間には、該半硬化接着層よりも熱伝導率の低い樹脂層が存在してもよい。この場合には、接着シートの積層方向への熱伝導を抑制できる。これにより、例えば、吸着支持部材にヒータ等を設けた場合、吸着支持部材からベース部材への熱伝導を抑制でき、吸着支持部材の昇温性や均熱性を高めることができる。また、消費電力の低減も可能となる。なお、樹脂層は、半硬化接着層の樹脂成分と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、樹脂層としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリル酸やメタクリル酸等の二重結合を含むカルボン酸と多価アルコールのエステル化合物、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂等を用いることができる。
【0029】
前記静電チャック用の接着シートの製造方法において、前記接着層形成工程では、厚みが100μm以下となるように前記半硬化接着層を形成することが好ましい。この場合には、半硬化接着層の厚みを薄くすることにより、例えば、光が照射される面(露光面)とその反対側の面との露光量の差による影響を小さくできる。これにより、均質性に優れた半硬化接着層(接着シート)を得ることができる。なお、半硬化接着層の厚みは、硬化性樹脂接着剤を半硬化させて層を形成できる程度の厚み(例えば数μm)以上とすればよい。
【0030】
また、前記接着層形成工程では、前記硬化性樹脂接着剤を液滴吐出手段により吐出させて所定の形状に塗布し、その後、塗布した前記硬化性樹脂接着剤に光を照射して前記半硬化接着層を形成してもよい。この場合には、例えば、液滴吐出装置のインクジェットノズル等の液滴吐出手段を用いることにより、必要な部分に必要な量の硬化性樹脂接着剤を塗布し、所定の形状の半硬化接着層を容易かつ精度良く形成できる。これにより、作製した接着シートに対して切断、打ち抜き等の加工を行う必要がなくなり、材料歩留まりを高めることができる。また、余分な硬化性樹脂接着剤を除去する工程が不要となるため、製造工程の簡素化も可能となる。
【0031】
また、前記接着層形成工程では、前記硬化性樹脂接着剤の所定の部分に光を照射し、該硬化性樹脂接着剤における光を照射した部分に前記半硬化接着層を形成してもよい。この場合には、余分な(光を照射しなかった部分の)硬化性樹脂接着剤を除去することで、所定の形状の接着シートを容易かつ精度良く形成できる。これにより、作製した接着シートに対して切断、打ち抜き等の加工を行う必要がなくなる。また、除去した硬化性樹脂接着剤を再利用できるため、材料歩留りを高めることができる。
【0032】
また、前記接着層形成工程では、前記硬化性樹脂接着剤に対し面露光及び線露光の少なくとも一方により光を照射してもよい。例えば、面露光の場合には、硬化性樹脂接着剤に広範囲で光を照射できるため、硬化性樹脂接着剤を迅速かつ均一に硬化(半硬化)させることができる。また、線露光の場合には、硬化性樹脂接着剤にピンポイントで光を照射できるため、複雑な形状にも対応でき、半硬化接着層(接着シート)の形状変更(設計変更)が容易となる。
【0033】
前記静電チャックの製造方法において、前記接合工程では、前記吸着支持部材と前記ベース部材との間に配設する前記接着シートが1枚であってもよいし、複数枚であってもよい。
【0034】
また、前記接着シート形成工程では、前記ベース部材上に前記接着シートを形成してもよい。この場合には、ベース部材上に直接接着シートを形成することにより、製造工程の簡素化が可能となる。
【0035】
また、前記硬化性樹脂接着剤は、光硬化性と熱硬化性を同時に備えることが必要であり、光で反応を開始する光開始剤と、熱で反応を開始する熱開始剤と、それぞれの開始剤により重合・硬化する材料(モノマー)とを含有する。
【0036】
光開始剤としては、例えば、光ラジカル開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤等が挙げられ、特定波長の光により、それぞれラジカル、酸、塩基を発生することで硬化反応を開始する。また、これらの光開始剤には、硬化速度を適切に保つため、増感剤や硬化遅延剤を加えても良い。
【0037】
光ラジカル開始剤を用いる場合の利点は、酸性化合物や塩基性化合物による重合阻害を受けず、光酸発生剤のように腐食性の強い物質を生じないことである。ラジカル重合性の化合物には、重合性のアクリル基、メタクリル基等の二重結合を有する化合物がある。
【0038】
光酸発生剤を用いる場合の利点は、大気中や接着剤中に存在する酸素による硬化阻害がないことである。また、硬化する材料として硬化収縮が小さく、接着性に優れたエポキシ化合物やオキセタン化合物を使用できる点と、光反応の感度が高いため、パターン精度が良いことである。
【0039】
光塩基発生剤を用いる場合の利点は、大気中や接着剤中に存在する酸素による硬化阻害がないことである。また、硬化する材料として硬化収縮が小さく、接着性に優れたエポキシ化合物やオキセタン化合物を使用できる点と、下地に塩基性の官能基を含む樹脂シート、例えばポリアミド樹脂シート等を使用できることである。
【0040】
また、熱開始剤は、光開始剤により半硬化された接着シートをさらに硬化し、接着性を発現するために用いる。熱開始剤は、光開始剤と同じ系統の開始剤を選択することが好ましい。すなわち、光ラジカル発生剤を用いた場合は熱ラジカル開始剤を、光酸発生剤を用いた場合は熱酸発生剤を、光塩基発生剤を用いた場合は熱塩基発生剤を使用することが好ましい。モノマーを共通にでき、硬化反応を確実に進めることができるためである。
【0041】
なお、前記硬化性樹脂接着剤において、光開始剤(光ラジカル開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤等)、増感剤、熱開始剤(熱ラジカル開始剤、熱酸発生剤、熱塩基発生剤等)、光開始剤や熱開始剤により重合・硬化する材料(モノマー)としては、従来公知のものを用いることができる。
【0042】
また、前記硬化性樹脂接着剤に含まれる光開始剤と熱開始剤とは、同一の材料であってもよい。すなわち、前記硬化性樹脂接着剤に含まれる光開始剤が熱開始剤としての効果(熱硬化)を発揮することがあってもよいし、熱開始剤が光開始剤としての効果(光硬化)を発揮することがあってもよい。
【0043】
また、前記硬化性樹脂接着剤に光を照射して半硬化状態の半硬化接着層を形成し、これを積層して接着シートを形成する方法としては、例えば、3次元プリンタを用いることができ、造形方式としては、例えば、光造形方式、インクジェット方式等を選択できる。
【0044】
また、前記静電チャックにおいて、前記硬化接着層は、シート状であってもよい。この場合には、厚さばらつきの低減のほか、セラミック−金属張り合わせ体を静電チャックとして用いたときの表面温度の均一性向上、表面の平坦性の向上等の効果がある。なお、ここでの表面とは、被吸着物を吸着する吸着面のことをいう。
【0045】
また、前記硬化接着層には、厚み方向に貫通する抜き孔が形成されており、また前記硬化接着層には、フィラーが含有されており、該フィラーは、前記抜き孔の内壁面に露出していないことが好ましい。この場合には、フィラーが使用中に脱落し、装置等を汚染することを防止できる。また、フィラーによりセラミック材、金属材、接続端子等を傷つけることがなくなる。
【0046】
また、前記セラミック材と前記金属材とが複数の前記硬化接着層を介して貼り合わされており、該硬化接着層間には、該硬化接着層よりも熱伝導率の低い樹脂層が存在してもよい。この場合には、セラミック−金属張り合わせ体を静電チャックとして用いたときの表面温度の均一性の向上や消費電力の低下が可能になる。
【0047】
また、前記硬化接着層は、前記硬化性樹脂接着剤に光を照射し、該硬化性樹脂接着剤を前記光開始剤により硬化させたものであってもよい。この場合には、光照射によりパターニングできるため、材料のロスを防ぐことができる。
【0048】
また、前記硬化接着層は、前記硬化性樹脂接着剤に光を照射し、該硬化性樹脂接着剤を前記光開始剤により硬化させて半硬化状態とした後、さらに加熱して硬化状態としたものであってもよい。この場合には、半硬化の工程を経ることで接着工程を簡略化できる。また、次の工程での硬化収縮を小さくできるため、硬化収縮により生じるひずみを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】静電チャックの構造を示す斜視図である。
図2】静電チャックの構造を示す断面図である。
図3】(a)は吸着支持部材の下面を示す平面図であり、(b)はベース部材の上面を示す平面図である。
図4】(a)は接合層を示す平面図であり、(b)は(a)のA−A線矢視断面図である。
図5】(a)はテーブル上に硬化性樹脂接着剤を塗布した状態を示す説明図であり、(b)は硬化性樹脂接着剤に光を照射して半硬化接着層を形成する様子を示す説明図であり、(c)は複数の半硬化接着層を積層した接着シートを示す説明図である。
図6】(a)は接着シートを示す平面図であり、(b)は(a)のB−B線矢視断面図である。
図7】(a)はベース部材上に接着シートを配置する様子を示す説明図であり、(b)は接着シート上に吸着支持部材を配置する様子を示す説明図であり、(c)は吸着支持部材とベース部材との間に接着シートを配置する様子を示す説明図である。
図8】半硬化接着層間に樹脂層を配置した接着シートを示す説明図である。
図9】(a)は硬化性樹脂接着剤の所定領域に光を照射する様子を示す説明図であり、(b)は硬化性樹脂接着剤に光を照射して形成した半硬化接着層を示す説明図であり、(c)は複数の半硬化接着層を積層した接着シートを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(実施形態1)
まず、本実施形態の接着シートが用いられる静電チャックについて説明する。
【0051】
図1図2に示すように、静電チャック1は、被吸着物である半導体ウェハ8を吸着保持するためのものであり、金属製のベース部材3と、ベース部材3上に配置された吸着支持部材2とを備えている。ベース部材3と吸着支持部材2とは、両者の間に配設された接合層4により接合されている。以下、吸着支持部材2側を上側、ベース部材3側を下側として説明する。
【0052】
同図に示すように、吸着支持部材2は、円形板状を呈している。吸着支持部材2の上面は、半導体ウェハ8を吸着する吸着面201である。また、吸着支持部材2は、電気絶縁性のセラミック絶縁体20を有している。セラミック絶縁体20は、複数のセラミック層(図示略)を積層して構成されている。各セラミック層は、アルミナを主成分とするアルミナ質焼結体からなる。
【0053】
セラミック絶縁体20の内部には、吸着用電極21が配設されている。吸着用電極21は、電極用接続端子(図示略)を介して電極用電源(図示略)に接続されている。吸着用電極21は、直流高電圧が印加されることで静電引力を発生し、この静電引力によって半導体ウェハ8を吸着支持部材2の吸着面201に吸着して固定する。吸着用電極21は、タングステンやモリブデンからなる。
【0054】
また、セラミック絶縁体20の内部には、ヒータ(発熱体)22が配設されている。ヒータ22は、吸着用電極21よりもベース部材3側において、略同一平面上に渦巻き状に配置されている。ヒータ22は、ヒータ用接続端子(図示略)を介してヒータ用電源(図示略)に接続されている。
【0055】
同図に示すように、ベース部材3は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる。ベース部材3の内部には、例えばフッ素化液、純水等の冷媒を流通させる空間となる冷媒流路31が設けられている。冷媒流路31は、冷媒を導入及び排出できるよう構成されている。
【0056】
図1に示すように、静電チャック1の内部には、半導体ウェハ8を冷却するヘリウム等の冷却用ガスの供給通路となる冷却用ガス供給路11が設けられている。吸着支持部材2の吸着面201には、冷却用ガス供給路11が開口してなる複数の開口部12や、その開口部12から供給された冷却用ガスが吸着面201全体に広がるように形成された環状の冷却用溝13が設けられている。
【0057】
図3(a)に示すように、吸着支持部材2には、厚み方向(上下方向)に貫通してなり、冷却用ガス供給路11の一部を構成する6つの上部貫通孔23が設けられている。また、吸着支持部材2には、電極用接続端子及びヒータ用接続端子(図示略)を挿入配置するための4つの端子用凹部24が設けられている。6つの上部貫通孔23及び4つの端子用凹部24は、吸着支持部材2の下面202に開口している。
【0058】
図3(b)に示すように、ベース部材3には、厚み方向(上下方向)に貫通してなり、冷却用ガス供給路11の一部を構成する6つの下部貫通孔32が設けられている。また、ベース部材3には、厚み方向(上下方向)に貫通してなり、電極用接続端子及びヒータ用接続端子(図示略)を挿入配置するための4つの端子用貫通孔33が設けられている。6つの下部貫通孔32及び4つの端子用貫通孔33は、ベース部材3の上面301に開口している。
【0059】
また、吸着支持部材2の6つの上部貫通孔23及びベース部材3の6つの下部貫通孔32には、吸着支持部材2の吸着面201に吸着された半導体ウェハ8を吸着面201から分離するためのリフトピン(図示略)が挿通される。
【0060】
図4(a)、(b)に示すように、接合層4は、後述する接着シート5(図6参照)を熱硬化させたものである。接合層4には、厚み方向(上下方向)に貫通してなる6つの第1貫通孔41及び4つの第2貫通孔42が設けられている。
【0061】
第1貫通孔41は、吸着支持部材2の上部貫通孔23とベース部材3の下部貫通孔32との間を連通するように設けられている。また、第2貫通孔42は、吸着支持部材2の端子用凹部24とベース部材3の端子用貫通孔33との間を連通するように設けられている。
【0062】
次に、静電チャック1の製造方法について説明する。
図5図7に示すように、後述する接着シート5の製造方法により接着シート5を形成する接着シート形成工程と、吸着支持部材2とベース部材3との間に接着シート5を配設した後、接着シート5を加熱し、接着シート5を熱開始剤により硬化させ、吸着支持部材2とベース部材3とを接合する接合工程とを有している。
【0063】
まず、接着シート形成工程では、図5に示すように、接着シート5を形成する。ここで、接着シート5の製造方法は、少なくとも光開始剤及び熱開始剤を含有する硬化性樹脂接着剤500に光を照射し、硬化性樹脂接着剤500を光開始剤により硬化させた半硬化状態の半硬化接着層50を形成する接着層形成工程を有している。そして、接着層形成工程を複数回行うことにより、接着シート5を形成する。
【0064】
本実施形態では、3次元プリンタを用いて接着シート5を形成する。接着シート5の造形方式は、インクジェット方式である。具体的には、図5(a)に示すように、テーブル61上に、液状の硬化性樹脂接着剤500を液滴吐出装置のインクジェットノズル(図示略)から吐出させ、所定の形状、所定の塗布厚みで塗布する。このとき、最終的に接着シート5の第1貫通孔51及び第2貫通孔52(図6参照)となる場所には硬化性樹脂接着剤500を塗布しない。
【0065】
なお、硬化性樹脂接着剤500は、光開始剤と、熱開始剤と、それぞれの開始剤により重合・硬化するモノマーと、充填材としてのフィラーとを含有する。光開始剤としては、ADEKA製の光酸発生剤アデカオプトマーSP−170、熱開始剤としては、三新化学工業製のサンエンドSI−100L、モノマーとしては、三菱化学製のエポキシ樹脂828と反応性希釈剤YED−216D、フィラーとしては、電気化学工業製のシリカFD−5Bを用いた。
【0066】
次いで、図5(b)に示すように、テーブル61上に塗布した硬化性樹脂接着剤500に光Lを照射する。本実施形態では、ステッパー等の露光装置62を用いて紫外線を照射する。紫外線の照射は、塗布した硬化性樹脂接着剤500を広範囲にわたって露光する面露光方式により行う。これにより、硬化性樹脂接着剤500を光開始剤により硬化させ、半硬化状態の半硬化接着層50を形成する。なお、半硬化接着層50において、先ほど硬化性樹脂接着剤500を塗布しなかった部分には、厚み方向に貫通する第1抜き孔501及び第2抜き孔502が形成されている。
【0067】
次いで、テーブル61を一段(半硬化接着層50の1層分)下げ、前述と同様の工程(接着層形成工程)を行い、半硬化接着層50上に半硬化接着層50を形成する。この工程を複数回繰り返し行い、図5(c)に示すように、複数の半硬化接着層50を積層させた所定の厚みの接着シート5を形成する。なお、同図では、説明の便宜上、3層の半硬化接着層50を示している。
【0068】
ここで、図6に示すように、接着シート5は、半硬化状態の半硬化接着層50を複数積層して構成されており、層ごとに剥離できない状態となっている。各半硬化接着層50の厚みは、100μm以下である。また、接着シート5全体の厚みは、100〜1000μmである。
【0069】
また、各半硬化接着層50には、6つの第1抜き孔501と4つの第2抜き孔502が形成されている。また、各半硬化接着層50は、すべて同じ形状であり、その外形形状や第1抜き孔501及び第2抜き孔の形成位置が同じである。また、半硬化接着層50に含有されているフィラーは、第1抜き孔501及び第2抜き孔502の内壁面に露出していない。
【0070】
また、接着シート5には、複数の半硬化接着層50の第1抜き孔501により構成された第1貫通孔51と、複数の半硬化接着層50の第2抜き孔502により構成された第2貫通孔52とが形成されている。第1貫通孔51は、最終的に接合層4の第1貫通孔41(図4参照)となり、第2貫通孔52は、最終的に接合層4の第2貫通孔52(図4参照)となる。
【0071】
次いで、接合工程では、図7(a)に示すように、ベース部材3の上面301に接着シート5を配置する。その後、図7(b)に示すように、接着シート5上に吸着支持部材2を配置する。これにより、図7(c)に示すように、吸着支持部材2とベース部材3との間に接着シート5を配置する。
【0072】
次いで、吸着支持部材2の上面(吸着面)201に重り(図示略)を載せ、上方から押圧した状態とする。そして、所定の温度で接着シート5を加熱し、接着シート5中の熱開始剤により硬化させ、接合層4を形成する。なお、雰囲気は、大気中でも、必要に応じて加圧しても減圧してもよい。加圧することで接着が確実に行われ、減圧することで気泡の混入を防止できる。これにより、吸着支持部材2とベース部材3とを接合層4により接合する。以上により、静電チャック1を得る。
【0073】
次に、本実施形態における作用効果について説明する。
本実施形態の接着シート5の製造方法は、前述のとおり、半硬化接着層50を形成する接着層形成工程を有しており、その接着層形成工程を複数回行うことにより、接着シート5を形成する。そのため、静電チャック用の接着シート5を1枚ずつ容易に作製できる。これにより、従来のような大型な製造装置が不要となり、接着シート5の製造が容易となる。
【0074】
また、静電チャック1の複雑な形状(外形形状、貫通孔等)に合わせた接着シート5を容易かつ精度良く作製できるため、形成した接着シート5に対して切断、打ち抜き等の加工を行う必要がなくなる。これにより、材料の無駄をなくすことができ、材料歩留まりを高めることができる。また、製造工程を短縮し、コスト低減が可能となる。また、半硬化接着層50を精度良く形成できるため、均質性に優れた接着シート5を得ることができる。
【0075】
また、本実施形態の接着シート5の製造方法において、接着層形成工程では、厚みが100μm以下となるように半硬化接着層50を形成する。半硬化接着層50の厚みを薄くすることにより、光が照射される面(露光面)とその反対側の面との露光量の差による影響を小さくできる。これにより、均質性に優れた半硬化接着層50(接着シート5)を得ることができる。
【0076】
また、接着層形成工程では、硬化性樹脂接着剤500を液滴吐出装置のインクジェットノズル(液滴吐出手段)により吐出させて所定の形状に塗布し、その後、塗布した硬化性樹脂接着剤500に光を照射して半硬化接着層50を形成する。そのため、必要な部分に必要な量の硬化性樹脂接着剤500を塗布し、所定の形状の半硬化接着層50を容易かつ精度良く形成できる。これにより、作製した接着シート5に対して切断、打ち抜き等の加工を行う必要がなくなり、材料歩留まりを高めることができる。また、余分な硬化性樹脂接着剤500を除去する工程が不要となるため、製造工程の簡素化も可能となる。
【0077】
また、接着層形成工程では、硬化性樹脂接着剤500に対し面露光により光を照射する。この場合、硬化性樹脂接着剤500に広範囲で光を照射できるため、硬化性樹脂接着剤500を迅速かつ均一に硬化(半硬化)させることができる。
【0078】
また、本実施形態において、接着シート5は、複数の半硬化接着層50を積層してなり、各半硬化接着層50には、厚み方向に貫通する抜き孔(第1抜き孔501、第2抜き孔502)が形成されており、複数の半硬化接着層50は、すべて同じ形状である。そのため、接着シート5に対して切断、打ち抜き等の加工を行う必要がなくなり、材料歩留まりを高めることができる。
【0079】
また、半硬化接着層50には、フィラーが含有されており、そのフィラーは、抜き孔(第1抜き孔501、第2抜き孔502)の内壁面に露出していない。そのため、接着シート5(半硬化接着層50)に含まれるフィラーが抜き孔(第1抜き孔501、第2抜き孔502)の内壁面(最終的には、静電チャック1の接合層4の第1貫通孔41及び第2貫通孔42の内壁面)から脱落して汚れの原因となることを防止できる。
【0080】
また、本実施形態の静電チャック1の製造方法は、前述のとおり、接着シート形成工程と接合工程とを有している。そして、接着シート形成工程では、前述の接着シートの製造方法により接着シート5を形成する。そのため、製造が容易であり、材料歩留まりが高く、均質性に優れた接着シート5を得ることができる。また、接合工程では、この接着シート5を加熱して熱開始剤により硬化させ、吸着支持部材2とベース部材3とを接合する。そのため、両者を容易かつ精度良く接合できる。
【0081】
このように、本実施形態によれば、製造が容易であり、材料歩留まりが高く、均質性に優れた静電チャック用の接着シート5及びその製造方法、並びに静電チャック1の製造方法を提供できる。
【0082】
なお、本実施形態では、静電チャック1の製造方法において、図5図6に示すように、テーブル61上に接着シート5を形成し、これをベース部材3の上面301に配置したが、例えば、接着シート5をテーブル61上ではなく、ベース部材3の上面301に直接形成してもよい。この場合には、ベース部材3上に直接、接着シート5を形成することにより、製造工程の簡素化が可能になり、ベース部材と接着シートの接合界面に気泡のない接合体(セラミック−金属貼り合わせ体)を得ることができる。
【0083】
また、本実施形態では、図6に示すように、接着シート5は、複数の半硬化接着層50を積層して構成されているが、例えば、図8に示すように、半硬化接着層50間に、半硬化接着層50よりも熱伝導率の低い樹脂層59を配置してもよい。この場合には、接着シート5を用いて吸着支持部材2とベース部材3とを接合した静電チャック1において、吸着支持部材2からベース部材3への熱伝導を抑制でき、吸着支持部材2の昇温性や均熱性を高めることができる。また、消費電力の低減も可能となる。
【0084】
なお、樹脂層59は、硬化性樹脂接着剤500と同様に、光開始剤と、熱開始剤と、それぞれの開始剤により重合・硬化するモノマーと、充填材としてのフィラーとを含有する。ただし、フィラーの含有量が少ないという点で、硬化性樹脂接着剤500と異なる。また、粘度の調整など必要に応じてエポキシ樹脂と反応希釈剤の配合割合を変更してもよい。
【0085】
(実施形態2)
本実施形態は、図9に示すように、接着シート5の製造方法を変更した例である。
同図に示すように、本実施形態では、実施形態1と同様に、3次元プリンタを用いて接着シート5を形成する。ただし、接着シート5の造形方式は、実施形態1とは異なり、光造形方式である。以下、これを詳説する。
【0086】
接着シート5の製造方法において、接着層形成工程では、図9(a)に示すように、容器(図示略)に収容された液状の硬化性樹脂接着剤500の表面における所定の部分(領域C)に光Lを照射する。本実施形態では、露光装置62を用いて紫外線レーザーを照射する。紫外線レーザーの照射は、紫外線レーザーを硬化性樹脂接着剤500の表面に走査する線露光方式により行う。これにより、図9(b)に示すように、硬化性樹脂接着剤500における光Lを照射した部分(領域C)を硬化させ、半硬化接着層50を形成する。
【0087】
次いで、テーブル61を一段(半硬化接着層50の1層分)下げ、前述と同様の工程(接着層形成工程)を行い、半硬化接着層50上に半硬化接着層50を形成する。この工程を複数回繰り返し行い、図9(c)に示すように、複数の半硬化接着層50を積層させた所定の厚みの接着シート5を形成する。その後、余分な(光Lを照射しなかった部分の)硬化性樹脂接着剤500を除去し、接着シート5を得る。
【0088】
本実施形態の場合、硬化性樹脂接着剤500の所定の部分(領域C)に光を照射し、硬化性樹脂接着剤500における光を照射した部分(領域C)に半硬化接着層50を形成する。そのため、余分な硬化性樹脂接着剤500(光を照射しなかった部分の硬化性樹脂接着剤500)を除去することで、所定の形状の接着シート5を容易かつ精度良く形成できる。これにより、作製した接着シート5に対して切断、打ち抜き等の加工を行う必要がなくなる。また、除去した硬化性樹脂接着剤500を再利用できるため、材料歩留りを高めることができる。
【0089】
また、接着層形成工程では、硬化性樹脂接着剤500に対し線露光により光を照射する。これにより、硬化性樹脂接着剤500にピンポイントで光を照射できるため、複雑な形状にも対応でき、半硬化接着層50(接着シート5)の形状変更(設計変更)が容易となる。その他の基本的な作用効果は、実施形態1と同様である。
【0090】
なお、本実施形態では、図9に示すように、紫外線レーザーを硬化性樹脂接着剤500の表面に走査する線露光方式により光の照射を行ったが、例えば、前述の実施形態1のように、紫外線を硬化性樹脂接着剤500の表面の所定の部分全体に照射する面露光方式を採用することもできる。ただし、この場合、光が所定の部分以外の部分に照射されないようにするためのマスク(図示略)が必要となる。
【0091】
(その他の実施形態)
本発明は、前記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0092】
(1)前記実施形態では、3次元プリンタを用いて接着シート(半硬化接着層)を形成したが、その他の手段を用いて接着シート(半硬化接着層)を形成してもよい。また、3次元プリンタを用いた造形方式として、インクジェット式や光造形式を採用したが、それ以外の方式を採用してもよい。
【0093】
(2)前記実施形態では、吸着支持部材において、吸着用電極及びヒータをセラミック絶縁体の内部に設けたが、吸着用電極やヒータをセラミック絶縁体の表面に設けてもよいし、接合層の間に設けてもよい。この場合、例えばヒータとしては、ポリイミド等からなる絶縁フィルムにヒータを設けたフィルムヒータ等を用いることができる。
【0094】
(3)前記実施形態では、接合層は、吸着支持部材とベース部材との間において、吸着支持部材及びベース部材に対して直接接触するように配置されているが、接合層と吸着支持部材との間、接合層とベース部材との間に、アルミニウム板やステンレス板等の金属板、炭素繊維基板、グラファイト基板、石英基板等のガラス板等からなる熱拡散層等のその他の層が配置されていてもよい。そして、吸着支持部材と熱拡散層等のその他の層との間、ベース部材と熱拡散層等のその他の層との間に、接合層を配置してもよい。
【0095】
(4)前記実施形態では、接合層は、吸着支持部材のセラミック絶縁体に対して直接接触するように配置されているが、例えば、セラミック絶縁体の表面(ベース部材側の表面)にヒータを設け、そのヒータに対して接合層が直接接触するように配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1…静電チャック
21…吸着用電極
2…吸着支持部材
3…ベース部材
5…接着シート
50…半硬化接着層
500…硬化性樹脂接着剤
L…光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9