【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様である静電チャック用の接着シートは、吸着用電極が設けられた吸着支持部材とベース部材との接合に用いられる静電チャック用の接着シートであって、該接着シートは、1又は複数の半硬化接着層を有しており、該半硬化接着層は、少なくとも光開始剤及び熱開始剤を含有する硬化性樹脂接着剤に光を照射し、該硬化性樹脂接着剤を前記光開始剤により硬化させて半硬化状態としたものであることを特徴とする。
【0010】
本発明の接着シートは、少なくとも光開始剤及び熱開始剤を含有する硬化性樹脂接着剤に光を照射し、その硬化性樹脂接着剤を光開始剤により硬化させて半硬化状態とした1又は複数の半硬化接着層により構成されている。すなわち、接着シートは、半硬化状態であるため、流動を抑制でき、厚みのばらつきが少ないものとなる。これにより、静電チャックの面内温度ばらつき(被吸着物を吸着する吸着支持部材の吸着面の温度ばらつき)を低減できる。
【0011】
また、接着シートは、半硬化状態であり流動を抑制できるため、静電チャックの複雑な形状(例えば外形形状、貫通孔等)に合わせた形状とすることができる。また、流動を抑制できるため、作業性に優れたものとなる。すなわち、例えば吸着支持部材やベース部材の側面に硬化性樹脂接着剤が付着することがなくなり、側面を正確な形状に保つことができ、半導体製造装置への組み付けが容易となる。また、例えば貫通孔に硬化性樹脂接着剤が入ることがなくなるため、貫通孔が狭くなることや閉塞することを防止でき、良好な静電チャックを得ることができる。
【0012】
また、接着シートにフィラーが含有されている場合には、流動の抑制によってフィラーの沈降を防止できる。そのため、接着シートは、その特性が厚み方向で変化することのない、均質性に優れたものとなる。
【0013】
本発明の第2の態様である静電チャック用の接着シートの製造方法は、吸着用電極が設けられた吸着支持部材とベース部材との接合に用いられる静電チャック用の接着シートの製造方法であって、少なくとも光開始剤及び熱開始剤を含有する硬化性樹脂接着剤に光を照射し、該硬化性樹脂接着剤を前記光開始剤により硬化させた半硬化状態の半硬化接着層を形成する接着層形成工程を有し、該接着層形成工程を1又は複数回行うことにより、前記接着シートを形成することを特徴とする。
【0014】
本発明の接着シートの製造方法は、前述のとおり、半硬化接着層を形成する接着層形成工程を有しており、その接着層形成工程を1又は複数回行うことにより、接着シートを形成する。そのため、静電チャック用の接着シートを1枚ずつ容易に作製できる。これにより、従来のような大型な製造装置が不要となり、接着シートの製造が容易となる。
【0015】
また、静電チャックの複雑な形状(例えば外形形状、貫通孔等)に合わせた接着シートを容易かつ精度良く作製できるため、形成した接着シートに対して切断、打ち抜き等の加工を行う必要がなくなる。これにより、材料の無駄をなくすことができ、材料歩留まりを高めることができる。また、製造工程を短縮し、コスト低減が可能となる。また、半硬化接着層を精度良く形成できるため、均質性に優れた接着シートを得ることができる。
【0016】
本発明の第3の態様である静電チャックの製造方法は、吸着用電極が設けられた吸着支持部材とベース部材とを備えた静電チャックの製造方法であって、前記本発明の接着シートの製造方法により接着シートを形成する接着シート形成工程と、前記吸着支持部材と前記ベース部材との間に前記接着シートを配設した後、該接着シートを加熱し、該接着シートを前記熱開始剤により硬化させ、前記吸着支持部材と前記ベース部材とを接合する接合工程とを有することを特徴とする。
【0017】
本発明の静電チャックの製造方法は、前述のとおり、接着シート形成工程と接合工程とを有している。そして、接着シート形成工程では、上述の接着シートの製造方法により接着シートを形成する。そのため、製造が容易であり、材料歩留まりが高く、均質性に優れた接着シートを得ることができる。また、接合工程では、この接着シートを加熱して熱開始剤により硬化させ、吸着支持部材とベース部材とを接合する。そのため、両者を容易かつ精度良く接合できる。
【0018】
本発明の第4の態様である
静電チャックは、セラミック材と金属材とが1又は複数の硬化接着層を介して貼り合わされたセラミック−金属貼り合わせ体
を用いてなる静電チャックであって、前記硬化接着層は、少なくとも光開始剤及び熱開始剤を含有する硬化性樹脂接着剤からなることを特徴とする。
【0019】
本発明の
静電チャック(即ちセラミック−金属貼り合わせ体(以下、適宜、貼り合わせ体という)
を用いてなる静電チャック)では、セラミック材と金属材とを貼り合わせる接着層(硬化接着層)を、光開始剤を含み露光により硬化させることができる接着層にすることで、通常の熱硬化型接着剤と比べ熱開始剤の添加量を減らすことができる。これにより、低温もしくは室温での硬化反応を遅くできるため、硬化性樹脂接着剤の使用可能期間を延ばすことができる。また、光開始剤と露光によりパターンを形成することで、解像度を高めることができ、複雑な形状のセラミック材や金属材であってもそれらの形状に合わせた接着層を形成できる。
【0020】
また、製造工程において、半硬化状態の硬化接着層を介してセラミック材と金属材とを貼り合わせ、その貼り合わせ体を別の場所に搬送する場合には、セラミック材及び金属材の位置ずれを生じさせることなく、容易に貼り合わせ体を搬送できる。半硬化状態の硬化接着層は、液体とは異なり、流動性がないためである。
【0021】
さらに、セラミック材(吸着支持部材)や金属材(ベース部材)の上に硬化性樹脂接着剤を塗布した後、露光により半硬化させることで、接合界面に気泡のない貼り合わせ体を得ることができる。硬化反応が完了した粘着シートを張り付ける場合と比較して、液体の接着剤(硬化性樹脂接着剤)を塗布する方が気泡を挟みにくいためである。よって、貼り合わせ体が静電チャックの場合、気泡により熱伝達が妨げられることがなくなり、温度ばらつきを少なくできる。
【0023】
このように、本発明によれば、製造が容易であり、材料歩留まりが高く、均質性に優れた静電チャック用の接着シート及びその製造方法、静電チャックの製造方法、
及び静電チャックを提供できる。
【0024】
前記静電チャック用の接着シートにおいて、前記半硬化接着層の厚みは、100μm以下であることが好ましい。この場合には、半硬化接着層の厚みを薄くすることにより、例えば、光が照射される面(露光面)とその反対側の面との露光量の差による影響を小さくできる。これにより、半硬化接着層(接着シート)は、均質性に優れたものとなる。なお、半硬化接着層の厚みは、硬化性樹脂接着剤を半硬化させて層を形成できる程度の厚み(例えば数μm)以上とすればよい。
【0025】
また、前記半硬化接着層は、前記硬化性樹脂接着剤に対し面露光及び線露光の少なくとも一方により光を照射して形成されたものであってもよい。この場合には、均質性に優れた半硬化接着層を形成できる。これにより、接着シートは、均質性に優れたものとなる。
【0026】
また、前記接着シートは、複数の前記半硬化接着層を積層してなり、該各半硬化接着層には、厚み方向に貫通する抜き孔が形成されており、前記複数の半硬化接着層は、すべて同じ形状であってもよい。この場合には、接着シートに対して切断、打ち抜き等の加工を行う必要がなくなり、材料歩留まりを高めることができる。
【0027】
また、前記半硬化接着層には、フィラーが含有されており、該フィラーは、前記抜き孔の内壁面に露出していないことが好ましい。この場合には、接着シート(半硬化接着層)に含まれるフィラーが抜き孔の内壁面から脱落して汚れの原因となることを防止できる。なお、フィラーとしては、無機粒子や樹脂粒子を用いることができる。無機粒子としては、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、アルミノシリケート、マイカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭化珪素、窒化アルミニウム等を用いることができる。樹脂粒子としては、例えば、シリコーン樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子、アクリル樹脂粒子等を用いることができる。
【0028】
また、前記半硬化接着層間には、該半硬化接着層よりも熱伝導率の低い樹脂層が存在してもよい。この場合には、接着シートの積層方向への熱伝導を抑制できる。これにより、例えば、吸着支持部材にヒータ等を設けた場合、吸着支持部材からベース部材への熱伝導を抑制でき、吸着支持部材の昇温性や均熱性を高めることができる。また、消費電力の低減も可能となる。なお、樹脂層は、半硬化接着層の樹脂成分と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、樹脂層としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリル酸やメタクリル酸等の二重結合を含むカルボン酸と多価アルコールのエステル化合物、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂等を用いることができる。
【0029】
前記静電チャック用の接着シートの製造方法において、前記接着層形成工程では、厚みが100μm以下となるように前記半硬化接着層を形成することが好ましい。この場合には、半硬化接着層の厚みを薄くすることにより、例えば、光が照射される面(露光面)とその反対側の面との露光量の差による影響を小さくできる。これにより、均質性に優れた半硬化接着層(接着シート)を得ることができる。なお、半硬化接着層の厚みは、硬化性樹脂接着剤を半硬化させて層を形成できる程度の厚み(例えば数μm)以上とすればよい。
【0030】
また、前記接着層形成工程では、前記硬化性樹脂接着剤を液滴吐出手段により吐出させて所定の形状に塗布し、その後、塗布した前記硬化性樹脂接着剤に光を照射して前記半硬化接着層を形成してもよい。この場合には、例えば、液滴吐出装置のインクジェットノズル等の液滴吐出手段を用いることにより、必要な部分に必要な量の硬化性樹脂接着剤を塗布し、所定の形状の半硬化接着層を容易かつ精度良く形成できる。これにより、作製した接着シートに対して切断、打ち抜き等の加工を行う必要がなくなり、材料歩留まりを高めることができる。また、余分な硬化性樹脂接着剤を除去する工程が不要となるため、製造工程の簡素化も可能となる。
【0031】
また、前記接着層形成工程では、前記硬化性樹脂接着剤の所定の部分に光を照射し、該硬化性樹脂接着剤における光を照射した部分に前記半硬化接着層を形成してもよい。この場合には、余分な(光を照射しなかった部分の)硬化性樹脂接着剤を除去することで、所定の形状の接着シートを容易かつ精度良く形成できる。これにより、作製した接着シートに対して切断、打ち抜き等の加工を行う必要がなくなる。また、除去した硬化性樹脂接着剤を再利用できるため、材料歩留りを高めることができる。
【0032】
また、前記接着層形成工程では、前記硬化性樹脂接着剤に対し面露光及び線露光の少なくとも一方により光を照射してもよい。例えば、面露光の場合には、硬化性樹脂接着剤に広範囲で光を照射できるため、硬化性樹脂接着剤を迅速かつ均一に硬化(半硬化)させることができる。また、線露光の場合には、硬化性樹脂接着剤にピンポイントで光を照射できるため、複雑な形状にも対応でき、半硬化接着層(接着シート)の形状変更(設計変更)が容易となる。
【0033】
前記静電チャックの製造方法において、前記接合工程では、前記吸着支持部材と前記ベース部材との間に配設する前記接着シートが1枚であってもよいし、複数枚であってもよい。
【0034】
また、前記接着シート形成工程では、前記ベース部材上に前記接着シートを形成してもよい。この場合には、ベース部材上に直接接着シートを形成することにより、製造工程の簡素化が可能となる。
【0035】
また、前記硬化性樹脂接着剤は、光硬化性と熱硬化性を同時に備えることが必要であり、光で反応を開始する光開始剤と、熱で反応を開始する熱開始剤と、それぞれの開始剤により重合・硬化する材料(モノマー)とを含有する。
【0036】
光開始剤としては、例えば、光ラジカル開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤等が挙げられ、特定波長の光により、それぞれラジカル、酸、塩基を発生することで硬化反応を開始する。また、これらの光開始剤には、硬化速度を適切に保つため、増感剤や硬化遅延剤を加えても良い。
【0037】
光ラジカル開始剤を用いる場合の利点は、酸性化合物や塩基性化合物による重合阻害を受けず、光酸発生剤のように腐食性の強い物質を生じないことである。ラジカル重合性の化合物には、重合性のアクリル基、メタクリル基等の二重結合を有する化合物がある。
【0038】
光酸発生剤を用いる場合の利点は、大気中や接着剤中に存在する酸素による硬化阻害がないことである。また、硬化する材料として硬化収縮が小さく、接着性に優れたエポキシ化合物やオキセタン化合物を使用できる点と、光反応の感度が高いため、パターン精度が良いことである。
【0039】
光塩基発生剤を用いる場合の利点は、大気中や接着剤中に存在する酸素による硬化阻害がないことである。また、硬化する材料として硬化収縮が小さく、接着性に優れたエポキシ化合物やオキセタン化合物を使用できる点と、下地に塩基性の官能基を含む樹脂シート、例えばポリアミド樹脂シート等を使用できることである。
【0040】
また、熱開始剤は、光開始剤により半硬化された接着シートをさらに硬化し、接着性を発現するために用いる。熱開始剤は、光開始剤と同じ系統の開始剤を選択することが好ましい。すなわち、光ラジカル発生剤を用いた場合は熱ラジカル開始剤を、光酸発生剤を用いた場合は熱酸発生剤を、光塩基発生剤を用いた場合は熱塩基発生剤を使用することが好ましい。モノマーを共通にでき、硬化反応を確実に進めることができるためである。
【0041】
なお、前記硬化性樹脂接着剤において、光開始剤(光ラジカル開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤等)、増感剤、熱開始剤(熱ラジカル開始剤、熱酸発生剤、熱塩基発生剤等)、光開始剤や熱開始剤により重合・硬化する材料(モノマー)としては、従来公知のものを用いることができる。
【0042】
また、前記硬化性樹脂接着剤に含まれる光開始剤と熱開始剤とは、同一の材料であってもよい。すなわち、前記硬化性樹脂接着剤に含まれる光開始剤が熱開始剤としての効果(熱硬化)を発揮することがあってもよいし、熱開始剤が光開始剤としての効果(光硬化)を発揮することがあってもよい。
【0043】
また、前記硬化性樹脂接着剤に光を照射して半硬化状態の半硬化接着層を形成し、これを積層して接着シートを形成する方法としては、例えば、3次元プリンタを用いることができ、造形方式としては、例えば、光造形方式、インクジェット方式等を選択できる。
【0044】
また、前記
静電チャックにおいて、前記硬化接着層は、シート状であってもよい。この場合には、厚さばらつきの低減のほか、セラミック−金属張り合わせ体を静電チャックとして用いたときの表面温度の均一性向上、表面の平坦性の向上等の効果がある。なお、ここでの表面とは、被吸着物を吸着する吸着面のことをいう。
【0045】
また、前記硬化接着層には、厚み方向に貫通する抜き孔が形成されており、また前記硬化接着層には、フィラーが含有されており、該フィラーは、前記抜き孔の内壁面に露出していないことが好ましい。この場合には、フィラーが使用中に脱落し、装置等を汚染することを防止できる。また、フィラーによりセラミック材、金属材、接続端子等を傷つけることがなくなる。
【0046】
また、前記セラミック材と前記金属材とが複数の前記硬化接着層を介して貼り合わされており、該硬化接着層間には、該硬化接着層よりも熱伝導率の低い樹脂層が存在してもよい。この場合には、セラミック−金属張り合わせ体を静電チャックとして用いたときの表面温度の均一性の向上や消費電力の低下が可能になる。
【0047】
また、前記硬化接着層は、前記硬化性樹脂接着剤に光を照射し、該硬化性樹脂接着剤を前記光開始剤により硬化させたものであってもよい。この場合には、光照射によりパターニングできるため、材料のロスを防ぐことができる。
【0048】
また、前記硬化接着層は、前記硬化性樹脂接着剤に光を照射し、該硬化性樹脂接着剤を前記光開始剤により硬化させて半硬化状態とした後、さらに加熱して硬化状態としたものであってもよい。この場合には、半硬化の工程を経ることで接着工程を簡略化できる。また、次の工程での硬化収縮を小さくできるため、硬化収縮により生じるひずみを小さくできる。