特許第6181593号(P6181593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181593
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】密閉型電池および密閉型電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/36 20060101AFI20170807BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   H01M2/36 101D
   H01M10/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-85033(P2014-85033)
(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-204283(P2015-204283A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2016年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390035909
【氏名又は名称】興国インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 智浩
(72)【発明者】
【氏名】平川 靖
(72)【発明者】
【氏名】室井 伸也
(72)【発明者】
【氏名】松山 桂子
【審査官】 松本 陶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−025977(JP,A)
【文献】 特開2013−161596(JP,A)
【文献】 特開2012−248336(JP,A)
【文献】 特開2013−084480(JP,A)
【文献】 特開2005−190689(JP,A)
【文献】 特開2013−114910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/36
H01M 10/04
H01M 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液を注入するための注液孔と、前記注液孔を封止する封止栓と、を有する密閉型電池において、
前記封止栓は、金属板と、前記金属板の前記注液孔側の面に形成される軸部と、前記軸部における当該軸部の軸方向の先端に形成されるシール部と、前記金属板の前記注液孔側の面にて前記軸部の周囲に配置される突起部と、を備え、
前記軸部は、前記注液孔の径よりも小さい外径により形成される小径部と、前記小径部よりも前記シール部側に形成され前記注液孔の径以上の外径により形成される大径部と、を備え
前記シール部は、前記軸部側の面である平面部を備え、
前記平面部の外径は、前記大径部の外径よりも大きいこと、
を特徴とする密閉型電池。
【請求項2】
請求項1の密閉型電池において、
前記突起部は、加硫密度が1.00×10−4mol/cc以上のゴム材により形成されること、
を特徴とする密閉型電池。
【請求項3】
蓋板と、前記蓋板に形成され電解液を注入するための注液孔と、前記注液孔を封止する封止栓と、を有する密閉型電池の製造方法において、
前記封止栓は、金属板と、前記金属板の前記注液孔側の面に形成される軸部と、前記軸部における当該軸部の軸方向の先端に形成されるシール部と、前記金属板の前記注液孔側の面にて前記軸部の周囲に配置される突起部と、を備え、
前記軸部は、前記注液孔の径よりも小さい外径により形成される小径部と、前記小径部よりも前記シール部側に形成され前記注液孔の径以上の外径により形成される大径部と、を備え、
前記シール部は、前記軸部側の面である平面部を備え、
前記平面部の外径は、前記大径部の外径よりも大きく、
前記電解液を前記注液孔から前記密閉型電池の内部に注入した後、前記突起部を前記蓋板に当接させながら前記封止栓を前記注液孔に挿入させて、前記大径部の外周面と前記注液孔の内周面を当接させることにより、前記注液孔を封止させる仮封止を行う仮封止工程と、
前記仮封止を行った状態で、前記密閉型電池を初期充電させる初期充電工程と、
前記封止栓を前記蓋板側に押して、前記大径部の外周面と前記注液孔の内周面を離間させることにより、前記密閉型電池を初期充電させたときに前記密閉型電池の内部に発生したガスを、前記注液孔を介して前記密閉型電池の外部に放出させるガス放出工程と、
前記ガスを前記密閉型電池の外部に放出させた後に、前記蓋板と前記金属板を溶接する溶接工程と、を有すること、
を特徴とする密閉型電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池等の密閉型電池および当該密閉型電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車、電気自動車などの車両や、ノート型パソコン、ビデオカムコーダなどのポータブル電子機器の駆動用電源に、充放電可能な電池が利用されている。このような電池の製造において、特許文献1には、封止フィルムによりケースの貫通孔を仮封止した状態で電池組立体を初期充電した後、封止フィルムに開口孔を形成してケース内の余剰ガスを外部に排出し、その後、本封止部材を蓋体に溶接する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−295595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている電池の製造の技術は、封止フィルムや本封止部材などが必要なので、部品点数が多くなってしまう。そのため、作業工程も多くなり、コストアップになってしまう。
【0005】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、コストの低減を図りながら電池を製造できる密閉型電池および密閉型電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、電解液を注入するための注液孔と、前記注液孔を封止する封止栓と、を有する密閉型電池において、前記封止栓は、金属板と、前記金属板の前記注液孔側の面に形成される軸部と、前記軸部における当該軸部の軸方向の先端に形成されるシール部と、前記金属板の前記注液孔側の面にて前記軸部の周囲に配置される突起部と、を備え、前記軸部は、前記注液孔の径よりも小さい外径により形成される小径部と、前記小径部よりも前記シール部側に形成され前記注液孔の径以上の外径により形成される大径部と、を備え、前記シール部は、前記軸部側の面である平面部を備え、前記平面部の外径は、前記大径部の外径よりも大きいこと、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、密閉型電池を製造するときに、電解液を注液孔から密閉型電池の内部に注入した後、封止栓を注液孔に挿入させて軸部の大径部の外周面と注液孔の内周面を当接させることにより、注液孔を仮封止させることができる。そして、密閉型電池の初期充電を行った後、封止栓を密閉型電池の内部側に押して仮封止を解除させることにより、密閉型電池を初期充電したときに密閉型電池の内部に発生したガスを、容易に、注液孔を介して密閉型電池の外部に放出させることができる。そのため、部品点数と作業工数を抑制して、コストを低減しながら、密閉型電池の内部に発生したガスを密閉型電池の外部に放出させることができる。したがって、コストの低減を図りながら密閉型電池を製造できる。
【0008】
また、前記の仮封止を行うときに、封止栓を注液孔に挿入させて軸部の大径部の外周面と注液孔の内周面を当接させることができるので、軸部の中心軸と注液孔の中心軸とを一致させることができる。そのため、封止栓による注液孔のシール長さ(封止栓により注液孔が封止される部分の長さ)が均一化される(安定する)とともに、シール長さを十分に確保することができる。
【0009】
上記の態様においては、前記突起部は、加硫密度が1.00×10−4mol/cc以上のゴム材により形成されること、が好ましい。
【0010】
この態様によれば、突起部において、歪みが少なくなり、圧縮状態が変化しても安定して反発力を得ることができる。そのため、前記の仮封止を行うときに、注液孔が形成される蓋板に突起部を当接させることにより、軸部の大径部の外周面と注液孔の内周面との間に発生するシール面圧の安定化を図ることができる。
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の態様は、蓋板と、前記蓋板に形成され電解液を注入するための注液孔と、前記注液孔を封止する封止栓と、を有する密閉型電池の製造方法において、前記封止栓は、金属板と、前記金属板の前記注液孔側の面に形成される軸部と、前記軸部における当該軸部の軸方向の先端に形成されるシール部と、前記金属板の前記注液孔側の面にて前記軸部の周囲に配置される突起部と、を備え、前記軸部は、前記注液孔の径よりも小さい外径により形成される小径部と、前記小径部よりも前記シール部側に形成され前記注液孔の径以上の外径により形成される大径部と、を備え、前記シール部は、前記軸部側の面である平面部を備え、前記平面部の外径は、前記大径部の外径よりも大きく、前記電解液を前記注液孔から前記密閉型電池の内部に注入した後、前記突起部を前記蓋板に当接させながら前記封止栓を前記注液孔に挿入させて、前記大径部の外周面と前記注液孔の内周面を当接させることにより、前記注液孔を封止させる仮封止を行う仮封止工程と、前記仮封止を行った状態で、前記密閉型電池を初期充電させる初期充電工程と、前記封止栓を前記蓋板側に押して、前記大径部の外周面と前記注液孔の内周面を離間させることにより、前記密閉型電池を初期充電させたときに前記密閉型電池の内部に発生したガスを、前記注液孔を介して前記密閉型電池の外部に放出させるガス放出工程と、前記ガスを前記密閉型電池の外部に放出させた後に、前記蓋板と前記金属板を溶接する溶接工程と、を有すること、を特徴とする。
【0012】
この態様によれば、ガス放出工程にて、封止栓を蓋板側に押して仮封止を解除させることにより、初期充電工程にて密閉型電池の内部に発生したガスを、容易に、注液孔を介して密閉型電池の外部に放出させることができる。そのため、部品点数と作業工数を抑制して、コストを低減しながら、密閉型電池の内部に発生したガスを密閉型電池の外部に放出させることができる。したがって、コストの低減を図りながら密閉型電池を製造できる。
【0013】
また、前記の仮封止を行うときに、封止栓を注液孔に挿入させて軸部の大径部の外周面と注液孔の内周面を当接させることができるので、軸部の中心軸と注液孔の中心軸とを一致させることができる。そのため、封止栓による注液孔のシール長さ(封止栓により注液孔が封止される部分の長さ)が均一化される(安定する)とともに、シール長さを十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本構成の密閉型電池および密閉型電池の製造方法によれば、コストの低減を図りながら電池を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施例の密閉型電池の斜視図である。
図2】封止栓の周辺の拡大図(上面図)である。
図3図2のA−A断面図である。
図4】軸部やシール部が注液孔内に挿入されていないときの封止栓の断面図である。
図5】封止栓の下面図である。
図6】仮封止を行ったときの封止栓の周辺の断面図である。
図7】ガスを放出するときの封止栓の周辺の断面図である。
図8】本実施例の封止栓と比較例の封止栓との比較表を示す図である。
図9】変形例の封止栓の断面図である。
図10】変形例の封止栓の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔密閉型電池の全体説明〕
まず、本実施例の密閉型電池(以下、主に「電池」と表記する)について全体的に説明する。本実施例の電池1は、図1に示すように、電極体(不図示)及び電解液(不図示)を収容してなる電池ケース10を有する密閉型のリチウムイオン二次電池である。また、この電池1は、電極体の負極板(不図示)と接合する負極端子構造体12と、電極体の正極板(不図示)と接合する正極端子構造体14とを備える。
【0017】
電池ケース10は、開口を含むケース本体部材16と蓋板18を備える。このうち蓋板18は、矩形板状であり、ケース本体部材16の開口を閉塞して、このケース本体部材16に溶接されている。
【0018】
また、電池ケース10は、蓋板18の注液孔26(図3参照)を封止する封止栓20を備える。この封止栓20は、図2に示すように、本実施例においてはその外周縁が円形状に形成され、その外周縁にて蓋板18と溶接させた部分である溶接部22が形成されている。
【0019】
〔蓋板の説明〕
蓋板18は、図3に示すように、凹部24と、ケース本体部材16の内部に電解液を注液するための注液孔26と、を備える。凹部24は、側面28と底面30とを備える。また、蓋板18は、注液孔26と底面30との間に、面取り部32を備える。注液孔26の内周面26aは、円筒形状に形成されている。そして、凹部24の底面30は、円形状の面取り部32の入口における径方向の外側の周囲に形成されている。また、凹部24の側面28は、底面30の円形状の外周縁から底面30に直交して立ち上がるように形成されている。
【0020】
〔封止栓の説明〕
封止栓20は、図3に示すように、金属板50と軸部52とシール部54と突起部56などを備えている。
【0021】
金属板50は、金属製の平板であり、本実施例では一例として円盤状に形成されている。そして、この金属板50と前記の蓋板18とは、溶接部22にて接合している。
【0022】
軸部52とシール部54と突起部56は、いずれも、弾性体である。そして、軸部52とシール部54とにより第1の弾性体40が形成され、突起部56により第2の弾性体42が形成されている。
【0023】
軸部52は、図3に示すように、金属板50における注液孔26側(図3の下側)の面60に形成され、その一部が注液孔26内に挿入されている。この軸部52は、図3図4に示すように、小径部62と段付き部64とを備えている。
【0024】
小径部62は、円柱状に形成されている。そして、小径部62の外径A(図4参照)は、注液孔26の径D(図3参照)よりも小さい。
【0025】
段付き部64は、小径部62よりもシール部54側(図4の下側)に形成されている。この段付き部64は、円筒状に形成されている。そして、段付き部64の外径B(図4参照)は、小径部62の外径A(図4参照)よりも大きく、かつ、注液孔26の径D(図3参照)以上である。なお、段付き部64は、本発明の「大径部」の一例である。
【0026】
シール部54は、図3に示すように、軸部52における当該軸部52の軸方向(ケース本体部材16の内部側)の先端に形成されている。すなわち、シール部54は、軸部52と一体的に形成されている。シール部54は、図4に示すように、中空円筒状に形成された円筒部66と、中空円錐状に形成された円錐部68を備えている。
【0027】
そして、シール部54は、(円筒部66における)軸部52側の面である平面部70を備えている。平面部70は、軸部52とシール部54との境界部分にて、軸部52の段付き部64よりも外径方向に突出するように形成されている。すなわち、平面部70の外径C(図4参照)は、注液孔26の径D(図3参照)よりも大きく、かつ、軸部52の段付き部64の外径B(図4参照)よりも大きい。
【0028】
また、軸部52とシール部54は、電解質透過性の小さい材料、すなわち、電解液や水分の透過性の低い材料により形成されている。具体的には、軸部52とシール部54は、例えば電解液透過量が100g・mm/(m・day)以下となるゴム材により形成されている。ここで、電解液透過量は、電池1を60℃の環境下にて1日(24時間)放置した際の電池1の重量の減少量(電解液の減少量)に相当する。そして、ゴム材として使用されているゴムの種類は、耐電解質性の高いエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)等、または、これらのブレンド材(混合材)である。軸部52とシール部54は、このような材料により形成されているので、内部を透過する電解液や水分の量を低減することができる。
【0029】
突起部56は、複数形成されている。図5においては、一例として、突起部56は、4つ形成されている。この突起部56は、図3図4に示すように金属板50の注液孔26側の面60にて突出するように形成されており、図5に示すように軸部52の周囲に配置されている。図5においては、一例として、突起部56は、金属板50の周方向について、90度ごとに等間隔に配置されている。
【0030】
なお、突起部56は、図5に示すような形状に限定されず、軸部52の周囲に沿って環状に形成され、かつ、その周方向の一部に内周と外周の間に亘って欠損している欠損部を有するように形成されていてもよい。
【0031】
突起部56は、軸部52やシール部54とは異なる材質により形成されており、圧縮永久歪みが良い材料により形成されている。具体的には、突起部56は、加硫密度が1.00×10−4mol/cc以上のゴム材により形成されている。そして、ゴム材として使用されているゴムの種類は、耐電解質性の高いエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)等、または、これらのブレンド材(混合材)である。突起部56は、このような材料により形成されているので、歪みが少なく圧縮状態が変化しても反発力を得ることができる。
【0032】
封止栓20は、このような構成を有する。そのため、後述する仮封止を行うときに、軸部52とシール部54が注液孔26内に挿入されることにより、弾性体である段付き部64と、同じく弾性体であるシール部54の平面部70にて発生する圧縮応力により、注液孔26は密閉される。
【0033】
〔電池の製造方法〕
このような構造の電池1の製造方法においては、まず、電極体などをケース本体部材16の内部に収容して、蓋板18によりケース本体部材16の開口を閉塞する。次に、注液孔26から電解液をケース本体部材16の内部に注入する。次に、注液孔26を封止栓20により封止する。
【0034】
ここで、注液孔26を封止栓20により封止する際には、まず、図6に示すように、突起部56の先端を蓋板18の底面30に当接させながら、シール部54を注液孔26からケース本体部材16の内部に挿入させ、かつ、軸部52を注液孔26内に挿入させる(仮封止工程)。これにより、ケース本体部材16の内部は、シール部54の平面部70と蓋板18との当接部分T1や、軸部52の段付き部64の外周面64aと蓋板18(注液孔26の内周面26a)との当接部分T2にて、ケース本体部材16の外部から一旦封止される。このようにして、注液孔26を封止栓20により一旦封止させる仮封止が行われる。
【0035】
このように、封止栓20の軸部52が注液孔26内に差し込まれるだけで、弾性体である軸部52の圧縮応力により注液孔26が密閉される。そのため、封止栓20の中心軸と注液孔26の中心軸とが一致し、かつ、電解液や水分が封止栓20の軸部52やシール部54を透過し難くなる。
【0036】
次に、仮封止が行われた状態で、電池1を初期充電させる(初期充電工程)。
【0037】
次に、図7に示すように、封止栓20を下方向(蓋板18側)に押して、突起部56を押し潰すとともに、軸部52の段付き部64とシール部54を下方向に移動させる。これにより、シール部54の平面部70と蓋板18とが離間する。また、軸部52の段付き部64がケース本体部材16の内部に移動することにより、段付き部64の外周面64aと蓋板18(注液孔26の内周面26a)とが離間する。そのため、電池1の初期充電を行ったときにケース本体部材16の内部で発生したガスは、図7に示すように、注液孔26の内周面26aと軸部52の小径部62の外周面62aとの間の隙間を通って、さらに、隣り合う突起部56と突起部56との間の隙間を通って、ケース本体部材16の外部に放出される(ガス放出工程)。
【0038】
次に、ケース本体部材16の内部で発生したガスがケース本体部材16の外部へ放出された後に、封止栓20を下方向(蓋板18側)に向かってさらに押して、封止栓20の金属板50を蓋板18に当接させる。そして、封止栓20の金属板50を蓋板18に当接させながら、例えばレーザを使用して、蓋板18と金属板50を溶接する(溶接工程)。これにより、前記の図3に示すように、蓋板18と封止栓20は、接合する。以上のようにして、注液孔26が封止栓20により封止されることにより、電池1の内部は外部から封止される。
【0039】
〔評価結果〕
ここで、本実施例の封止栓20を使用した場合と比較例の封止栓を使用した場合について、電解液透過量の評価を行った。本実施例の封止栓20と比較例の封止栓との比較表を図8に示す。図8に示すように、本実施例の封止栓20と比較例の封止栓との相違点は、段付き部64の有無と、軸部52やシール部54の材質と突起部56の材質との相違の有無である。すなわち、本実施例の封止栓20は段付き部64を備えているが、比較例の封止栓は段付き部64を備えていない。また、本実施例の封止栓20は前記のように軸部52やシール部54の材質と突起部56の材質とが相違するが、比較例の封止栓は軸部52やシール部54の材質と突起部56の材質とは同一である。そして、評価は、60℃の環境下にて行った。
【0040】
すると、評価結果として、電解液透過量は、比較例の封止栓を使用した場合は0.15gであるのに対し、本実施例の封止栓20を使用した場合は0.003gであった。このように、本実施例の封止栓20を使用した場合には、比較例の封止栓を使用した場合よりも、電解液透過量が非常に少なくなった。
【0041】
〔変形例〕
変形例として、図9に示すように、段付き部64の外径は、シール部54に向かうに連れて徐々に大きくなるように形成されていてもよい。
【0042】
また、その他の変形例として、図10に示すように、軸部52は、段付き部64を備えておらず、金属板50側の端部からシール部54側の端部に向かうに連れて徐々に大きくなるように形成されていてもよい。そして、このようにして、軸部52は、小径部62と大径部72を備えている。すなわち、大径部72は、小径部62よりもシール部54側に形成され、その外径が注液孔26の径D以上である。
【0043】
〔本実施例の効果〕
本実施例においては、封止栓20は、金属板50と、金属板50の注液孔26側の面60に形成される軸部52と、軸部52における当該軸部52の軸方向の先端に形成されるシール部54と、金属板50の面60にて軸部52の周囲に配置される突起部56と、を備えている。そして、軸部52は、小径部62と段付き部64を備えている。そして、小径部62の外径Aは、注液孔26の径Dよりも小さい。また、段付き部64の外径Bは、注液孔の径D以上の大きさである。
【0044】
これにより、電池1を製造するときに、電解液を注液孔26からケース本体部材16の内部に注入した後、封止栓20を注液孔26に挿入させて軸部52の段付き部64の外周面64aと注液孔26の内周面26aを当接させることにより、注液孔26を仮封止させることができる。そして、電池1の初期充電を行った後、封止栓20を蓋板18側に押して仮封止を解除させることにより、電池1を初期充電したときにケース本体部材16の内部に発生したガスを、容易に、注液孔26を介して電池1の外部に放出させることができる。そのため、部品点数と作業工数を抑制して、コストを低減しながら、ケース本体部材16の内部に発生したガスを電池1の外部に放出させることができる。したがって、コストの低減を図りながら電池1を製造できる。
【0045】
また、前記の仮封止を行うときに、封止栓20を注液孔26に挿入させて軸部52の段付き部64の外周面64aと注液孔26の内周面26aを当接させることができるので、軸部52の中心軸と注液孔26の中心軸とを一致させることができる。そのため、封止栓20による注液孔26のシール長さ(封止栓20により注液孔26が封止される部分の長さ)が均一化される(安定する)とともに、シール長さを十分に確保することができる。
【0046】
また、突起部56は、加硫密度が1.00×10−4mol/cc以上のゴム材により形成されている。これにより、突起部56において、歪みが少なくなり、圧縮状態が変化しても安定して反発力を得ることができる。そのため、前記の仮封止を行うときに、封止栓20を注液孔26に挿入させて軸部52の段付き部64の外周面64aと注液孔26の内周面26aを当接させたときに、段付き部64の外周面64aと注液孔26の内周面26aとの間に発生するシール面圧の安定化を図ることができる。
【0047】
また、電池1の製造方法において、電解液を注液孔26からケース本体部材16の内部に注入した後、突起部56を蓋板18に当接させながら封止栓20の軸部52とシール部54を注液孔26に挿入させて、シール部54の平面部70と蓋板18を当接させ、かつ、段付き部64の外周面64aと注液孔26の内周面26aを当接させることにより、注液孔26を封止させる仮封止を行う仮封止工程と、仮封止を行った後に、電池1を初期充電させる初期充電工程と、封止栓20を蓋板18側に押して、シール部54の平面部70と蓋板18を離間させ、かつ、段付き部64の外周面64aと注液孔26の内周面26aを離間させることにより、電池1を初期充電させたときに電池1の内部に発生したガスを、注液孔26を介して電池1の外部に放出させるガス放出工程と、ガスを電池1の外部に放出させた後に、蓋板18と金属板50を溶接する溶接工程と、を有する。
【0048】
このようにして、ガス放出工程にて、封止栓20を蓋板18側に押して仮封止を解除させることにより、初期充電工程にてケース本体部材16の内部に発生したガスを、容易に、注液孔26を介して電池1の外部に放出させることができる。そのため、部品点数と作業工数を抑制して、コストを低減しながら、ケース本体部材16の内部に発生したガスを電池1の外部に放出させることができる。したがって、コストの低減を図りながら電池1を製造できる。
【0049】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0050】
1 電池
10 電池ケース
16 ケース本体部材
18 蓋板
20 封止栓
26 注液孔
26a 内周面
50 金属板
52 軸部
54 シール部
56 突起部
60 面
62 小径部
62a 外周面
64 段付き部
64a 外周面
70 平面部
72 大径部
T1 平面部と蓋板との当接部分
T2 段付き部と蓋板との当接部分
A 小径部の外径
B 段付き部の外径
C 平面部の外径
D 注液孔の径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10