【実施例】
【0156】
本発明をよりよく理解できるように、かつ達成した技術的進歩を明白に示すために、本発明に関して実施した様々な試験の結果を実施例として以下に示す。
【0157】
実施例1では、本発明の複数の好ましい免疫原性組成物を記載する。実施例2から8では、本発明の免疫原性組成物を用いる特性、用途および治療方法を示す。実施例2から8では、実施例1に記載される免疫原性組成物である組成物1が使用され、本明細書ではこれをDECAと呼ぶ。
【0158】
これらの実施例は例証目的でのみ示すものであり、本発明の範囲と領域をいかようにも制限するものとみなしてはならない。
【0159】
実施例1:免疫原性組成物
本発明に記載の画期的な概念により免疫応答の再構成、更新および再プログラムをリアルタイムで達成するために、当業者であれば、本発明の範囲内の生成物の種々様々な組成物、併用または製剤を設計することができる。
【0160】
記載のように、かかる組成物が数々の疾患や疾病との対峙において有利なまたは未発表の結果を得るための技術的要件を満たすには、PAMPおよびDAMPがその受容体と結合し(ATC機能の有無にかかわらず)センチネル細胞における自然免疫の高度な活性化の達成を可能にする最大の共働効果を得てリアルタイムで免疫応答の再構成、更新および再プログラムが可能になるように、病原体由来の非常に多様な抗原を有さねばならない。
【0161】
かかる組成物は、以前の接触のせいで再構成と並行して広範囲の抗炎症作用を誘発できるその記憶クローンをほとんどの人が免疫系に有するであろう抗原性薬剤を用いるのが好ましい。このため、次のような抗原性薬剤を選択するのが好ましい:
・個体が小児期から成人まで(その動物またはヒトがその「免疫レパートリー」を獲得するとき)に感染した最も一般的な感染症に対応するもの。
・風土病および/または流行性疾患に対する小児ワクチンプログラムなどの予防接種プログラムで使用されるもの。
・記憶リンパ球が活性な動的バリアの役割を果たし個体の生存を確保する、特に胃腸管内の、潜在的病原性微生物叢の生物に由来するもの。
・理想的には、各抗原性薬剤は0.001〜500マイクログラム/mLの濃度で存在すべきである。
【0162】
これらの概念に従い、ヒトワクチンプログラムまたはアレルギー反応試験および免疫評価試験用に既に入手可能の安全な承認済みの形態の抗原性薬剤を用いた複数の製剤が開発されている。
【0163】
従って、本発明の範囲内のいくつかの組成物の実施例を以下に示すが、本発明を制限する意図ない。なぜならば本発明とその概念により膨大な数の併用抗原性薬剤を含む免疫原性組成物が設計できるからである。
【0164】
【表1-1】
【表1-2】
【0165】
【表2】
【0166】
【表3】
【0167】
【表4】
【0168】
【表5】
【0169】
【表6】
【0170】
【表7】
【0171】
【表8-1】
【表8-2】
【0172】
【表9-1】
【表9-2】
【0173】
【表10-1】
【表10-2】
【0174】
【表11-1】
【表11-2】
【0175】
【表12-1】
【表12-2】
【0176】
【表13】
【0177】
【表14】
【0178】
【表15】
【0179】
【表16】
【0180】
【表17-1】
【表17-2】
【0181】
【表18-1】
【表18-2】
【0182】
【表19-1】
【表19-2】
【0183】
【表20-1】
【表20-2】
【0184】
【表21-1】
【表21-2】
【0185】
【表22-1】
【表22-2】
【0186】
【表23-1】
【表23-2】
【0187】
【表24-1】
【表24-2】
【0188】
【表25-1】
【表25-2】
【0189】
【表26-1】
【表26-2】
【0190】
【表27-1】
【表27-2】
【0191】
【表28-1】
【表28-2】
【0192】
【表29-1】
【表29-2】
【0193】
【表30-1】
【表30-2】
【0194】
【表31-1】
【表31-2】
【0195】
【表32-1】
【表32-2】
【0196】
【表33-1】
【表33-2】
【0197】
【表34-1】
【表34-2】
【0198】
【表35-1】
【表35-2】
【0199】
【表36-1】
【表36-2】
【0200】
関連または治療すべき寄生虫症がある場合、製剤は寄生虫由来の抗原性薬剤を含有するのが好ましい。この場合、該製剤は、本発明に記載の概念に従い、地理学的分布並びに地域および地方の人間発展(先進国または発展途上国)に応じて、その個体が多数の記憶細胞を有する最も一般的な寄生虫由来の抗原性薬剤を含むべきである。かかるパラメーターは、これらの寄生虫発生および所与の地域人口の免疫系における対応する記憶細胞の存在の決定因子である。
【0201】
【表37】
【0202】
【表38】
【0203】
【表39】
【0204】
【表40】
【0205】
【表41】
【0206】
【表42】
【0207】
【表43】
【0208】
【表44】
【0209】
【表45】
【0210】
【表46】
【0211】
【表47】
【0212】
【表48】
【0213】
【表49】
【0214】
【表50】
【0215】
【表51】
【0216】
【表52】
【0217】
【表53】
【0218】
【表54】
【0219】
【表55】
【0220】
【表56】
【0221】
【表57】
【0222】
【表58】
【0223】
【表59】
【0224】
【表60】
【0225】
【表61】
【0226】
【表62】
【0227】
【表63】
【0228】
【表64】
【0229】
【表65】
【0230】
【表66】
【0231】
【表67】
【0232】
【表68】
【0233】
【表69】
【0234】
【表70】
【0235】
【表71】
【0236】
実施例2:DECA抗原組成物を用いたマウスメラノーマの実験的治療モデル
動物
雌の特定病原体除去(SPF)C57BL6マウス(25〜35g、8〜12週齢)を用いた。動物は、12時間の明暗サイクルの温度・湿度管理環境下(温度22±2℃、湿度60〜80%)で、実験時まで水と飼料を自由に取らせ飼育した。
【0237】
マウスメラノーマの誘導
ゼロ日目にB16−F10細胞株のメラノーマ細胞を雄のC57BL/6マウスの背部に皮下(s.c.)接種した(1動物当たり培地100uL中1×10
6個の細胞)(Lee, Y.S.らSuppression of tumor growth by a new glycosaminoglycan isolated from the African giant snail Achatina fulica. European Journal of Pharmacology, 465: 191-198, 2003)。動物(n=8/群、表3)は、表1のスキームに示すように、賦形剤(対照)、DECAまたはDECA+IL2で7日目から(以後4日ごとに)治療した。DECA+IL2群は、毎日IL−2(1日2回20,000UIを皮下注射)も受けた。腫瘍体積をデジタルノギスを用いて評価し、次式に従い決定した(mm
3):腫瘍体積(mm
3)=幅×長さ×0.5(Lee, Y.S.ら Suppression of tumor growth by a new glycosaminoglycan isolated from the African giant snail Achatina fulica. European Journal of Pharmacology, 465: 191-198, 2003)。固形腫瘍塊の体積を腫瘍細胞接種後28日間で3日ごとに評価した。動物の生存率は腫瘍細胞接種後30日間で評価した。
【0238】
【表72】
【0239】
結果
腫瘍体積は腫瘍細胞接種後28日でピークの6,728.65±2,027.01mm
3(平均値±SEM)に達し、動物の生存率は33.3%(本研究の一部の動物9匹のうち3匹がB16F10細胞接種の30日後も生存していた)という結果が示された(
図1)。統計学的有意差はないにせよ、DECA治療を受けた動物群は、開始後28日目にこのモデルの腫瘍塊の体積が対照群よりも小さい(3,524.87±871.01mm
3)ことと、50%の生存率(本研究の一部の動物10匹のうち5匹)を示した。有意ではないが28日目に47.6%(対照群との比較)の腫瘍体積阻害があったこと、および有意差がなかったことは対照群が示した平均値の標準誤差に帰し得ることは特筆すべきである。DECA+IL−2群では、この併用により、腫瘍体積を13日目から(57%の阻害)から28日目まで相当減少させられることが結果として示され、およそ67%の阻害(2,198.36±450.39mm
3)と生存率80%(本研究の一部であった10匹の動物のうち8匹)が観察された。さらに、動物は、IL−2での反復治療に良好な忍容性を示した。臨床現場ではIL−2は高用量(600,000〜720,000UI/Kg)で投与され、観察される中毒症状は敗血症性ショックの管理状態の誘発に匹敵する(肺水腫の他、低血圧、低全身循環抵抗、肝臓および腎臓の毒性)(Rosenberg SA, Yang YC, Topalian SLら Treatment of 283 consecutive patients with metastatic melanoma or renal cell cancer using high-dose bolus interleukin-2. JAMA, 271: 907-913, 1994)。
図1Bに示す解析は、
図1Aのデータを裏付けるものであり、(DECA+IL−2群の)腫瘍成長速度の減少と体積減少の関連を示している。
【0240】
全体的に、DECA+IL−2併用治療により、対照群(賦形剤)と比べて、成長速度/腫瘍体積が低下した(
図1)他、動物の生存率が上昇した(
図2)ことが結果として示され、該併用がメラノーマ治療に有用であることが示唆された。
【0241】
実施例3:再発4回目の転移性悪性メラノーマ治療
患者データ
患者MBS、46歳、女性
【0242】
診断
再発4回目の転移性悪性メラノーマ クラークレベルIII、ブレスロー1.32mm
2、2006年5月16日に診断。
【0243】
以前の従来治療
a)1回目の外科的癌治療
2006年6月1日に手術を実施し、腫瘍部位のマージン拡大およびセンチネルリンパ節生検を行った結果、悪性度は陰性と証明された。補完的なリンパ節の免疫組織化学病理学的検査で最大0.17mmの微小転移巣の存在が示され、事後的に、メランA抗原の存在により転移性免疫原性悪性メラノーマの診断が決定された。
【0244】
b)2回目の外科的癌治療
2008年2月20日、再発の疑いのある左腿部の浅部結節2個を切除し、病理学的検査により転移性悪性メラノーマの診断が明らかになった。次いで2008年4月9日、切除マージンを拡張し、手術病変部すべての生検を行った。
【0245】
c)3回目の外科的癌治療
8か月後(2008年10月15日)、左腿部の皮膚に2度目の再発があり、病変と切除マージンが一致する転移性悪性メラノーマが示された。切除マージンの拡大術を再度行い、2008年11月27日の病理学的検査では切除マージンに腫瘍残存物は認められなかった。
【0246】
d)4回目の外科的癌治療
2010年5月13日、新病変が臀部において診断され、2010年5月19日に凍結試験なしで切除された。その新しい標本は損なわれた切除マージンと共に転移性メラノーマを示し、該疾患の3回目の再発が示唆された。
【0247】
e)4回目の外科的癌治療、DECA事前投与の結果
2010年6月23日、PET/CT検査を行い、それが腫瘍病変であることが示され、4回目の再発が証明された。4回目の再発が残存病変から短期間内に生成したことで、転移細胞の侵攻性が示された。
【0248】
DECA事前投与の免疫学的検査
免疫学的検査の一部は、インビトロの血液検査(全血球数、リンパ球表現型検査、免疫グロブリン量、RASTテスト(アレルギー)、急性期タンパク質泳動および自己免疫試験)およびインビボ(遅延型過敏性一次・二次試験)からなった。
【0249】
遅延型過敏性試験は、二次抗原9種の一式を用いて実施された(0.1ccで投与):1)コッホのツベルクリン1:100,000;2)PPD 20UI/mL;3)ブドウ球菌毒素1:100;4)レンサ球菌毒素1:100;5)ストレプトキナーゼ/ドルナーゼ40/10UDS/mL;6)オイディオマイシン1:100;7)トリコフィチン1:100;8)大腸菌1:100;9)サルモネラ属spp.1:100。
【0250】
遅延型一次過敏性試験は、DNCB皮膚パッチ0.5%および2%を用いて実施した。
【0251】
2010年6月12日に行った血液検査によると、手術後、免疫学的検査の結果ESR、CRP、α−1−酸糖タンパク質の増加を伴う急性期タンパク質の変化が現れ、腫瘍成長による全身性炎症効果が示された。
【0252】
一次過敏性検査では消失が証明された。全身性遅延型二次過敏性は、腫瘍からのある距離で、細胞内抗原では+++++に対し+/++の低下が示され、他の抗原に対しては正常な++/++++が示された。再発部位では、すべての抗原が、細胞内抗原では0/+、他の抗原に対しては+/+++から+++++と大幅な反応減少を示した。腫瘍周辺領域では、事実上の反応消失が証明され、細胞内抗原では0/0、他の抗原に対しては0/+であった。
【0253】
遅延型二次過敏性のこれらの結果から有意な免疫抑制も示された。
【0254】
DECA治療
手術用健康保険処理の待機期間中、2010年6月26日の開始から2010年8月4日の終了まで。免疫療法の治療は、十分な説明を受けた上での患者の自由意思のもとに実施された。DECA免疫療法は以下のとおり実施された:
・抗原組成物1.8ccを0.9mlずつの2適用分に分けて10か所の主要リンパ領域付近に適用。
・4±1日間隔での治療展開の測定を容易にするため適用箇所間に3〜4cmの距離のマージン。
・同じく4±1日間隔で、初回腫瘍切除の傷、2回目および3回目の再発の傷、並びに4回目と5回目の再発領域をバイパスして、病変周囲にさらに1.8ccを9セット(1セットあたり0.9ccずつ2適用分)投与。
・2回目適用の評価に基づき、1.8mL組成物の10相当量を用いて腫瘍内複合(joint)適用剤を作製した。
・病変から5cmの位置の体表1メートル当たり100万〜200万単位の濃度の受容体飽和レベルで組み換えヒトインターロイキン−2を低用で適用。患者に毎日100万単位を皮下適用した。抗原適用の期間中、適用後に100万単位の2用量を、1用量は病変周囲内部領域に、もう1用量は腫瘍内部位にさらに投与した。このような場合、これらの適用は全部で300万単位となったが、体表面による推奨低用量の限度内であった。
【0255】
したがって、2010年6月24日から2010年8月2日の間、手術までに11セッションの全身性および病変周囲の免疫療法が適用され、同時に腫瘍内適用が4±1日間隔で5回、または全身性および病変周囲の適用の1日後に適用された。
【0256】
興味深いことに、ドプラー超音波検査(2010年7月19日および2010年8月4日)では腫瘍が血管新生なしで炎症部位に変換したことが示唆された。
【0257】
DECA免疫療法の評価
2010年8月5日の5回目の手術の際、凍結切片検査では治療部位に腫瘍は認められず、該手術は単なる従来的な炎症病変の除去にとどまった。
【0258】
DECA免疫療法の結果
2010年8月5日の術後病理学的検査では、中心壊死の柵状化肉芽腫、この巨細胞肉芽腫の異物を含む高密度の慢性的炎症性浸潤を有する皮膚、残存新生物形成の不存在および癌のない切除マージンが示された。
【0259】
免疫組織化学検査では、利用可能な治療技術の範囲内で、以前DECA治療を行った外科的に切除した組織由来の腫瘍細胞が完全に不存在であることが判明した(
図3)。
【0260】
上述のプロトコールの最初の2回の適用後、患者は観察された免疫抑制から回復し、このことは免疫療法のすべての適用箇所が正常な患者のように正常化および過剰活性化したことで証明された。これらの結果は、患者のTループおよび腫瘍に圧倒された全TH1プロファイル細胞性免疫の回復を示す。同時に、該免疫療法は、腫瘍全体を含む炎症過程を生じ、超音波検査で示されかつ組織学的検査で証明されたように、腫瘍を完全に壊死させ排除した。
【0261】
2010年8月7日から2011年11月30日まで、患者は同一の全身的および病変周囲の治療を週2回と、受診者飽和レベルを下回る組み換えヒトインターロイキン−2の用量を1日600,000単位で受けた。それ以来、患者は抗原投与を毎週、およびインターロイキン2投与を毎日受けている。こうして、患者には18か月間腫瘍はない。
【0262】
本症例の結論
患者のこれまでの評価データおよび臨床結果から、本発明の免疫原性組成物での免疫療法が腫瘍排除をもらたしたことが強力に示唆される。
【0263】
実施例4:悪性メラノーマの治療
患者データ
患者PPC、62歳、男性。
【0264】
診断
クラークレベルII、ブレスロー1.2mm
2の悪性メラノーマ、2011年2月2日に診断。
【0265】
以前の治療
この症例では、原発腫瘍の癌切除前に、自由意思に基づくインフォームド・コンセント条件を適用しDECA免疫療法を行ったので、以前の治療はなかった。
【0266】
DECA事前投与の免疫学的検査
手術をできるだけ早期に行う必要があり事前の免疫学的評価を行う時間がなかったので、この検査はDECA治療中に適用された抗原のリーディングにより行った。
【0267】
腫瘍外科手術前のDECA治療
術前の期間(2011年2月10日から2011年2月17日まで)、以下を基に患者の治療を開始した:
・10か所の主要リンパ領域に沿って製剤1すなわちDECA1.8ccを0.9ccずつの2適用分に分けて適用。
4±1日間隔での治療展開の測定を容易にするため適用箇所間に3〜4cmの距離のマージン。
・治療1日目に腫瘍メラノーマをバイパスしてDECA1.8ccの2セットを各組成物につき0.9ccずつの2適用分に分けてさらに投与。
・5つのDECA組成物各1.8ccを最終体積9.0ccで腫瘍内適用。
・病変から5cmの位置の体表1m
2当たり100万〜200万単位の濃度の受容体飽和レベルの低用量を適用。患者には毎日100万単位を皮下投与した。
【0268】
こうして、手術までに、全身性免疫療法2セッション、病変周囲免疫療法1セッションおよび腫瘍内免疫療法1セッションを適用し、このうち病変周囲免疫療法と腫瘍内免疫療法は治療初日に適用した。この治療に組み換えヒトインターロイキン−2を上述の用量と方法で毎日適用し、併用した。
【0269】
腫瘍外科手術前のDECA免疫療法治療の結果
この8日間の治療において患者の免疫療法への応答は良好であり悪性メラノーマは完全に退縮した。腫瘍変換部の病変は激しい局所炎症過程と共に進行し、外科病理学に記述されるように壊死して消失し炎症過程へと移行する。この期間、患者は発熱および低体温並びに激しい炎症性同側鼡径リンパ節症のエピソードを示したことを記さねばならない。
【0270】
従来的外科的癌治療
手術中にセンチネルリンパ節を調査すると共に広範囲の切除安全マージンをとって原発腫瘍を完全切除することが提案された。
【0271】
原発腫瘍の従来的腫瘍外科手術
2011年2月18日、患者は手術を受け、広範囲の切除安全マージンをとって腫瘍を完全切除し、2個のサテライト節の検査で悪性度は陰性であることが判明した。このため、ガングリオンのドレーンは行わなかった。
【0272】
原発腫瘍の従来的腫瘍外科手術の結果
病理学的検査では以下のように腫瘍の完全退縮が確認された:
・皮膚上:フィブリン−白血球キャップに覆われ、底部に混合炎症性浸潤を伴う過剰肉芽形成組織を示す潰瘍部位を有する炎症変化。この浸潤はこの潰瘍端部で上皮全体に浸潤拡大し、異物型多核巨細胞も伴う。顕微鏡下で白色のこのドーム状の領域は、表皮のアカントーシス、角化症および乳頭腫症を伴う乳頭腫タイプの脂漏性角化症に対応する。皮膚をすべて組織学的検査に供した結果、残存メラニン細胞異常増殖は認められなかった。
・センチネルリンパ節I内:門部の広範囲の線維症および被膜下洞組織球症、形態学的検査では転移性堆積物の同定なし;
・センチネルリンパ節II内:Iに記載のものと同様の組織学的所見であり形態学的には転移性堆積物なし。
【0273】
この日のセンチネルリンパ節IとIIの免疫組織化学検査ではメラノーマ微小転移巣は認められなかった。
【0274】
原発腫瘍の免疫組織化学検査では、利用可能な治療技術の範囲内で、以前DECA治療を行った外科的に切除した組織由来の腫瘍細胞が完全に不存在であることが判明した(
図4)。
【0275】
腫瘍外科手術前の原発腫瘍DECA治療の結果
利用可能な診断技術のコンテキストおよび範囲内でのこれらの手術データは、DECA免疫療法での治療後、原発腫瘍不検出という驚くべき結果を示した。
【0276】
腫瘍外科手術後のDECA治療
腫瘍の完全退縮というこの結果を受けて、免疫療法は以下を基に継続された:
・10か所の主要リンパ領域に沿ってDECA組成物1.8ccを0.9ccずつの2適用分に分けて適用。
・4±1日間隔での治療展開の測定を容易にするため適用箇所間に3〜4cmの距離のマージン。
・同じく4±1日間隔で、大きい手術瘢痕をバイパスしそれらの間にスペースなしで、病変周囲に2つの組成物各1.8ccを1組成物当たり0.9ccずつの2適用分でさらに投与。
・手術瘢痕から5cmの位置の体表当たり100万〜200万単位の濃度の受容体飽和レベルでヒト組み換えインターロイキン2を低用量で毎日適用。患者には1適用につき体表1m
2当たり100万単位を使用した。
【0277】
腫瘍外科手術後のDECA治療の結果
鼡径部のサテライト節を除去した術野は液貯留の形成と共に進行し、2011年3月16日に超音波検査で以下のことが示され確認された:隣接脂肪面が不明瞭な6.0×5.2×3.1cmの単純包嚢形成および異常な血管新生または腫瘍型血管変性はカラードプラーで観察されなかった。
【0278】
上述のこの貯留は局所炎症過程と共に進行し、そのサイズ減少と炎症性アデノパシーの増大が2011年3月28日の超音波検査で検出された。カラードプラーではこの形成部に異常血管新生は検出されなかった。2011年3月16日の検査では次のことが判明した:1)以前に包嚢性の外観を有していた形成物の縮小が顕著であり、有意な再吸収、組織化および炎症/反応性仮説(術後の貯留)の支持が示唆された;これは左鼠蹊部リンパ領域でも観察された、2)血管に富む門と反応性特徴を保持したままリンパ節サイズが拡大、前述の形成部の内側かつ近位に位置し、1.6×0.8cmおよび2.4×1.7cmと測定された。
【0279】
この免疫療法は2011年7月31日まで継続し、理学的検査では病変の完全退縮と、激しい所属リンパ節症反応から残存所属リンパ節症反応への変容が判明した。
【0280】
2011年7月5日と8日に左脚と左鼠蹊部のPET/CTと軟組織の「ドプラー」カラー超音波をそれぞれ繰り返し、残余反応炎症性アデノパシーを残すのみの病変の炎症性性質と完全退縮が確認された。中軸骨と四肢骨の骨髄での代謝活性の広範な増大にも退縮があり、免疫応答更新におけるDECAの骨髄刺激効果が示され、このことは組織を刺激再生するDECAの能力を証明している。
【0281】
従来的腫瘍外科手術前および後のDECA治療結果の考察
およそ1cmの悪性メラノーマの症例であり、外科的処置なしで1度生検を受けた。この腫瘍は、上記のように一式の9種の抗原を減用量の組み換えヒトインターロイキン−2と併用する免疫療法治療の標的であった。この治療は病変全体を含む激しい炎症反応と、治療の8日以内に消失した全腫瘍部位の潰瘍化をもたらした。
【0282】
この期間の後患者は手術を受け、病理学的検査により、腫瘍組織が潰瘍形成と入れ替わり腫瘍細胞は一切存在せず、異物肉芽腫の特徴を有する激しい炎症に取り囲まれていることが確認された(
図4B)。
【0283】
センチネルリンパ節2個の病理学的検査により、激しい被膜下洞組織球症を併発した反応性に富むリンパ組織過形成および門部の広範囲の線維症が証明され、転移性堆積物は同定されなかった。免疫組織化学検査により、これらのリンパ節における微小転移巣の不存在を確認する所見が決定づけられた。
【0284】
サテライトリンパ節を除去した領域は、炎症過程で包覆される液貯留の形成と共に進行し、反応性の炎症性局所領域的リンパ節炎が増大して良好な免疫応答を示した。治療を継続すると、この液貯留を取り囲んだ激しい炎症過程は貯留の退縮と吸収をもたらし、サテライトリンパ節の非腫瘍炎症反応がこれに伴った。
【0285】
超音波ドプラー検査およびPET−CTで腫瘍塊の不存在が証明され、示唆された非腫瘍炎症性特徴が明らかになった。これらの検査では激しい所属リンパ球反応が示され、骨髄活性の増大が強力かつ有効な抗腫瘍免疫応答を証明している。
【0286】
本症例の結論
現在までの評価データおよび臨床結果は、原発腫瘍の癌手術前の唯一の治療としての本発明の組成物を用いる免疫療法が、観察された8日間での腫瘍排除をもたらしたことを強く示唆している。
【0287】
実施例5:腹膜癌症および腹腔内リンパ節転移性浸潤を併発した進行性微小管胃腺癌(microtubular gastric adenocarcinoma)の治療
患者データ
患者R−M、72歳、男性
【0288】
診断
腹膜癌症および腹腔内リンパ節転移性浸潤を併発した進行性微小管胃腺癌。
【0289】
実施した検査
a)従来的上部胃腸管内視鏡および病理学的検査
2008年6月12日の上部胃腸管内視鏡検査で、2008年6月13日の病理学検査で確認された胃幽門の進行性・狭窄性新生物形成が示され、生検では が示された。
【0290】
b)従来的画像診断
2008年6月20日、腹腔および骨盤の術前トモグラフィーを行って胃癌のステージをチェックし、播種性の塊と複数部位における最大4cmの広範囲のリンパ節により、腹膜癌症を併発した進行胃癌という結論が出た(
図5A1〜A3)。
【0291】
c)術後の免疫学的検査
初回の診察を術後の2008年7月23日に行い、従来的試験と免疫学的検査を2008年7月24日に行った。
【0292】
従来的試験では以下のことが示された:軽い小球性貧血(Hb=11.7g/dL(NV=13〜18g/dL、HT=37.1%(NV=40〜54%)およびVCM=70U
3(NV=80から97U
3)および過剰な血小板増加(755,000(NV=150,000から450,000/mm
3))、リンパ球増加(9.100/mm
3(NV=4,000から11,000/mm
3)、高血糖(155mg/dL(NV=最高99mg/dL)、ESR増加110mm/h、尿酸増加(7.3mg/dL(NV=最高7.0mg/dL)、CRP増加(0.6mg/dL VN最高0.5mg/dL)、高α−1−酸糖タンパク質(141mg/dL(NV=最高140mg/dl)およびアミラーゼ増加170U/L(NV=25から125U/L)。
【0293】
免疫学的検査は、術後、次のインビトロ試験(血液検査)およびインビボ(一次および二次過敏性)で実施した。
【0294】
インビトロ試験は、以下からなった:最大正常レベルの隣に記載のT依存性免疫グロブリンレベル(IgA 324(NV=82〜453)、IgG 1476(NV=751〜1560)、IgM 200(NV=46〜304)およびIgE 61.89(NRV=100))、RASTは全試験で陰性、β−2ミクログロブリン2496(NV=最高2030)CD
3+Tリンパ球の正常な免疫表現型、正常CD
4+細胞(43.3%(845/mm
3)NV=27〜57%(560から2700/mm
3))、絶対値と相対値が減少したCD
8+(242/mm
3 NV=14〜34%(330〜1400/mm
3)および高CD4
+/CD8
+比(3.49VN=0.98から3.24)。
【0295】
インビボ試験:
・遅延型一次過敏性:DNCB皮膚パッチ0.5%および2%を用いて試験した。
・遅延型二次過敏性。
【0296】
結果によると:
・一次過敏性の消失が証明された。
・全身性遅延型二次過敏性は、腫瘍からのある距離で、細胞内抗原では+++++中0/+の減少を示し、他の抗原に対しては+/++の減少を示した。瘢痕周囲部位では全抗原が細胞内抗原では0/+の反応消失、他の抗原に対しては+++++中0/+を示した。
【0297】
これらのインビボおよびインビトロの試験は、一次および二次の局所性および全身性抗腫瘍性免疫および腫瘍細胞除去を担うTh1プロファイル細胞性免疫と、細胞応答性というよりも抗体応答性のTh2による腫瘍回避メカニズムの有意な免疫抑制を示した。Tループの完全性を失い新たなT応答を引き起こす可能性のない一次免疫抑制が、抗腫瘍性免疫反応を担う細胞性免疫プロファイルTH1の破壊および細胞応答ではなく抗体エスケープ反応の優勢と合わさり免疫系に障害が生じ、それ自体により該疾患を抑制する可能性なしで腫瘍に圧倒されていることが示された。
【0298】
d)診断結果
隣接浸潤および複数のリンパ領域において最大のもので4cmと測定された広範囲のリンパ節転移性浸潤により、腹膜癌症を併発した進行性・狭窄性微小管胃腺癌。
【0299】
治療
e)従来的外科治療
治療(2008年7月11日)は、B2姑息的再形成術を伴う胃部分切除とリンパ節部分切除であった。
【0300】
2008年7月11日の部分的および姑息的胃切除およびリンパ節切除の病理学的検査では、広範囲に残存する進行性新生物疾患が示された。
【0301】
f)従来的化学療法および放射線治療
外科手術および化学療法では治癒の見込みのない腹膜癌症および腹腔内リンパ節浸潤を併発した進行胃癌であったため、5−フルオロウラシルおよびタキソテールを21日サイクルで用いて腫瘍塊をコントロールする非治癒化学療法との併用で放射線治療を行い、患者の生活の質と生存の可能性の両方を向上させることが提案された。この化学療法は2008年8月14日から2008年12月26日まで行った。放射線治療は2008年10月10日に開始し、25セッション実施して2008年11月13日に終了した。
【0302】
g)DECA治療
上記の理由により、患者の症状を改善し、その可能な薬理学的併用の有益な結果を得るため、姑息的化学療法と併用での免疫療法が提案された。
【0303】
免疫療法は化学療法を開始する1週間前に行われ(DECA2適用分)、第1週後、第2および3週も化学療法の21日サイクルごとに継続した。したがって、化学療法は干渉されなかったが、免疫療法は1週間の間隔を置いて2週間行われた。
【0304】
DECAプロトコールを以下のとおり実施した:
・10か所の主要リンパ領域にDECA組成物1.8ccを0.9ccずつの2適用分で適用。
・4±1日間隔での治療展開の測定を容易にするため適用箇所間に3〜4cmの距離のマージン。
・すべての反応が正常化した4回目の適用の評価より、ヒペルエルギー性(hyperergic)になりつつある。
【0305】
患者体表1m
2当たり100万〜200万単位の濃度の受容体飽和レベルで、組み換えヒトインターロイキン−2を毎日600,000単位の低用量で手術瘢痕付近に適用。
【0306】
h)治療結果
i)従来治療
従来治療の姑息手術のみを行い患者の胃閉塞を解消した。
【0307】
ii)化学療法と組み合わせたDECA治療
患者の遅延型一次過敏性試験は1か月で正常化し、遅延型二次過敏性は2週間でTループ細胞応答の回復を示した。2週間で全身性炎症および感染の症状は消失した。
【0308】
患者はDECA治療および併用化学療法(それぞれ2008年8月6日と2008年8月14日に開始)の6か月後に再評価された。免疫療法および併用化学療法の6か月後(2009年2月9日)、以下が認められた:
・腹腔内のほとんどのリンパ節症(lymphadenomegaly)の有意な減少;
・癌症の兆候の有意な減少。
・4週間の治療後、遅延型二次過敏性の数値が以前耐性を示した9種の抗原に対し5+のうち3+/4+の陽性反応を示し、免疫抑制の陽性化(positivization)を伴う完全寛解。以前消失した遅延型一次過敏性はやはり治療の1か月後陽性になった。
【0309】
上述の治療の9か月後(2009年5月13日)、以下が認められた:
・腹腔動脈のリンパ節症がそれ以上のリンパ節症なしで2.0〜1.6cmから1.4cmに縮小(
図5B2〜B3)。
・癌症の兆候の消失を示す線維性特徴の減衰(
図5B1)。
・左胸の胸水は変化なし。
【0310】
上述の治療の1年2か月後(2009年10月3日)、以下が認められた:
・左胸の胸水が有意な減少;
・それ以上のリンパ節症なしで腹腔動脈が1.4cmから1.3cmに縮小
・手術腔の線維性瘢痕変化の緩和。
【0311】
上述の治療の1年8か月後(2010年4月13日)、以下が認められた:
・左胸の胸水の消失。
・腹腔動脈のリンパ節症は変化なし(
図5C2)。
【0312】
上述の治療の1年11か月後(2010年7月31日)、以下が認められた:
・それ以上のリンパ節症なしで腹腔動脈が1.3cmから1.1cmに縮小。
・肝結節の完全消失;
【0313】
上述の治療の2年4か月後(2011年2月18日)、以下が認められた:
・胸部は変化なし。
・腹腔動脈のリンパ節は1.1cmを維持。
【0314】
本症例の結論
2008年8月から12月に実施した放射線治療、化学療法および免疫療法の併用により以下がもたらされた:免疫抑制の完全寛解並びに腹腔上部の癌症およびリンパ節症両方の有意な減少。肝結節と腹腔動脈の肥大リンパ節は最大1.6cmで残存。
【0315】
この評価を受け、免疫療法だけが2012年2月まで行われた。この治療の結果、疑わしい肝結節は完全に寛解し、癌症の兆候は消え、リンパ節は2.0〜1.6cmから1.1cmに有意に縮小した。
【0316】
これらのデータは、免疫療法が放射線治療および化学療法の補助療法として有効であり、単独適用では治療の3年半後も腫瘍寛解を誘発し維持するのに有効であることを強力に示唆している(
図5C1、C3)。
【0317】
実施例6:ヒトヘルペスウイルスVIII型関連の多発性炎症性偽腫瘍の治療
患者データ
患者A−D、40歳、女性
【0318】
診断
ヒトヘルペスウイルスVIII型関連の多発性炎症性偽腫瘍。
【0319】
病歴
a)臨床概要
2006年6月4日の診察では、夕方の発熱(37.5から37.8℃の間)、頭痛、疲労感および軽い運度での息切れといった症状であった。臨床検査では患者に発熱、脱力、やや衰弱、両肺にまばらなラ音および重大な肝脾腫が認められた。
【0320】
b)実施した試験
従来的血液検査
2006年10月5日の臨床試験では、感染性/炎症性シナリオが示された:ESR=41mm(NV<=10mm)、PCR=3.83mg/dL(N=<0.50mg/mL)、α−1−酸糖タンパク質=l.66mg/dL(N=50〜120mg/dL)、低カルシウム血症Ca2+=7.4mg/dL(N=8.6〜10.3mg/dL)、軽度の血小板減少症であり血小板数は143.000/mm
3(NV=150,000から450,000mm
3)、タンパク尿0.66g。2006年10月5日、血清学的検査では以下の病因薬剤は陰性であった:トキソプラズマ症、デング熱、ブルセラ症、HIV、ウイルス性肝炎A、BおよびC;パラコッカス属spp、ヒストプラズマ属spp。直接PCR抗原検査ではクリプトコッカス属sppおよびヒストプラズマ属sppは陰性であった。血清学的検査では過去の巨細胞ウイルス、EBV(単球増加症)および風疹の感染が示された。一方でIgMヘルペスウイルスは陽性であった。この症状はヘルペスウイルスVIII型と関係があり、この型とIおよびII型の交差反応性はヒト血清型VIIIの感染を示唆している。
【0321】
従来的画像診断法
2006年10月9日の胸部コンピューター・トモグラフィーでは次のことが明らかになった:最大3.0cmの多発性両側性肺結節、左心尖内に5.0cmの腫瘍様異常部位、右エアブロンコグラムおよび胸膜に付着したRML内の塊(
図6A)。腹腔トモグラフィーでは腸間膜根、肝結節および脾結節にわたり多発性結節を有する重大な同時(contemporary)肝脾腫が確認された。また、上顎洞炎並びに鼻路の浮腫および肥大のシナリオも見出された。
【0322】
従来的病理学的試験
多数の組織球を伴う炎症過程を示す複合が病理学的に証明された。該検査はある肺の専門家に送られた。組織病理学的分析により、奇病の炎症性偽腫瘍であると診断された。
【0323】
免疫学的検査
以下のインビトロ試験(血液検査)とインビボ試験(一次および二次過敏性)を含む免疫学的検査を2006年10月5日に行った。
【0324】
インビトロ試験では、以下の臨床的状況が示された:正常な免疫グロブリン量(IgG、IgA、IgE)、正常基準による全補体およびC3およびC4、Tリンパ球減少症を示す絶対数が減少した全CD
3+Tリンパ球の免疫表現型(715/mm
3〜正常最小値=1035/mm
3)、CD
4+は正常(54%(551/mm
3)NV=35〜62%(535から2580/mm
3))、絶対値が減少したCD8
+(163/mm
3 NV=17〜43%(255から1720/mm
3)および高CD4
+/CD8
+比(3.4NV=0.9から2.6)。
【0325】
これらの結果では、正常な補体系の液性免疫が示されたが、非反応性すなわち進行中の感染に対し免疫応答をしていないことが示された。免疫表現型検査では、進行中のTリンパ球減少症および高CD4
+/CD8
+(ヘルパー細胞がサプレッサー/細胞傷害性細胞より優勢)によるT応答が示された。感染病原体は、TH1細胞型の応答への二極化をもたらした。
【0326】
インビボ試験:
・遅延型一次過敏性:DNCB皮膚パッチ0.5%および2%を用いて実施
・遅延型二次過敏性。
【0327】
結果から以下が示された:
・一次過敏性の消失が証明された。
・全身性遅延型二次過敏性の減少が示された。
【0328】
免疫学的評価の結果:インビボおよびインビトロの試験から、感染病原体がTH1型のT細胞応答への二極化をもたらしたことが示された。この応答は、新規の一次応答ができないことを示す一次過敏性の消失並びに細胞記憶の減少および損なわれたエフェクターループを示す遅延型二次過敏性によりリンパ球減少症とTループ破壊を有し、無効であることが示されている。
【0329】
診断結果
T免疫抑制関連の多発性炎症性偽腫瘍(ヒトヘルペスウイルスVIII型と関連)。
【0330】
治療
従来治療
外科的介入は、有効な治療形態からなり、病因学的にはヘルペスウイルスVIIIと関連付けられ、このことはヘルペスウイルスI型とII型にIgM陽性である交差反応性を説明する。外科的切除後の再発例が記述されている。炎症性全身カルシウム血症を伴う多発性肺結節、(腸間膜根の)腹腔内結節および肝脾腫を有する本症例は、科学的文献に類似の報告はなかった。したがって、該手術は治癒的ではないかもしれない。観察された重大なT免疫抑制が珍しい多発性の奇病の一因となりえたと推論できよう。
【0331】
DECA治療
観察された免疫抑制と(多発性病巣による)外科的治療の不可能性のため、十分な説明を受けた上での患者の自由意思のもと、この免疫抑制のDECA治療をおよそ2か月間行うことが決定し、その治療後に患者を再評価することになった。プロトコールは以下からなった:
・3つのDECA組成物各1.8ccを1組成物当たり0.9ccずつの2適用分に分けて腹腔内に適用し、2つのDECA各1.8ccをそれぞれ組成物0.9cc2適用分に分けて左右の上肢に、両腕10か所の主要リンパ領域に隣接して0.9ccを腕部、0.9ccを上腕部に適用。
・7±2日間隔での治療展開の測定を容易にするため適用箇所間に3〜4cmの距離のマージン。
・組み換えヒトインターロイキン−2を低用量で、患者体表の1m
2当たり100万から200万単位の濃度の受容体飽和レベルで、毎日600,000単位を腹腔内適用。
【0332】
I.治療結果
I.従来治療
本症例の場合、疾患の多発性出現に対し手術は有効ではないと考えれられたので、治療上の選択肢はなかった。
【0333】
II.DECA治療
患者の遅延型一次過敏性の試験結果は1か月で、遅延型二次過敏性は2週間で正常化し、Tループ細胞応答の回復を示した。2週間で、全身性炎症および感染症の兆候および症状は消失した。
【0334】
2か月の治療後、患者を再評価した。理学的検査では、患者に感染症または炎症の兆候は認められなかった;肝脾腫の退縮が認められた。2006年12月11日に行った胸部と腹腔のコンピュータートモグラフィーで以下が示された:
・肺:右心尖縫合部の薄い擦りガラス様陰影(手術後遺症)、両肺の多数まばらな結節の陰影(肺の炎症および感染過程の完全寛解)および右肺門部リンパ節の完全退縮(
図6B)
・腹腔内:肝脾腫の完全寛解および転移性リンパ節の有意な減少。
【0335】
本症例の結論
DECA治療期間(2006年10月15日〜2006年12月11日)後、以下が認められた:2006年12月11日の検査では肝脾腫、多発性肺腹腔結節の完全寛解および転移性リンパ節の正常化、並びに全身性炎症および感染症の臨床兆候の完全寛解。また、2週間の治療後、免疫抑制陽性化を伴う完全寛解もあり、遅延型過敏性の測定値は5+中3+/4+の陽性反応を示した。以前は消失していた遅延型一次過敏性は1か月の治療後陽性になった。これらの結果は、提案された治療を用いたことにより以下の完全寛解を示した:炎症性偽腫瘍の臨床的、検査的および画像診断ならびに患者が示した免疫抑制シナリオ。患者は5年3か月にわたり疾患または再発の兆候がない。
【0336】
実施例7:腺房腺癌の治療、グリーソン分類7(4+3)。前立腺に位置する腺癌T2aステージ。
患者データ
患者O−S、69歳、男性。
【0337】
初診
前立腺腺房腺癌、グリーソン分類7(4+3)、T2aステージ。
【0338】
病歴の同定と要約
PSAは20上昇、生検で腺房腺癌が判明、グリーソン分類7(4+3)、T2aステージ。患者には併存性アレルギー性鼻炎があったことは特筆に値する。
【0339】
提案され実施された従来治療
局所疾患(前立腺に限定)の根治的手術としての前立腺全摘。2010年2月18日に無事に行われた。
【0340】
実施した従来治療と最終診断の結果
病理学的最終診断では、該疾患が前立腺の局所領域的腺癌と共に浸潤しており、グリーソン分類9(4+5)、TNM pT3bN0 2002ステージであり、腺体積の22%に影響を及ぼしており(腫瘍体積11.2cc)、腺の両葉に位置することが記述された。新生物は精嚢および前立腺周囲の脂肪に浸潤していたが、腸骨リンパ節と膀胱頸部には新生物がなかった。
【0341】
最終結論:腫瘍塊が前立腺周囲領域に残存し、提案された治癒の可能性が損なわれるので、外科治療は無効でった。提案された治療は、2か月間の放射線治療と5年間にわたり半年ごとの腫瘍学的フォローアップであった。
【0342】
DECA治療前の免疫学的検査
初診を2010年3月9日に行い、患者は免疫学的検査と、2か月後に行われる放射線治療の前に疾患を抑制する免疫療法の可能性を希望した。
【0343】
腫瘍学的検査は2010年3月10日に実施され、PSAは0.15であり、無効な前立腺摘出状況による腫瘍残存と合致した(
図7)。
【0344】
2010年3月10日に血液検査で証明された過去の免疫学的検査で以下が示された:
・良好な抗腫瘍反応を伴う適合TH1細胞プロファイルが以下の正常下限の抗体により示された:
IgG 977mg/dL(NV=600〜1500);
IgA 233mg/dL(NV=50から400mg/dL)
IgM 112mg/dL(NV=50から300mg/dL)
アルブミン3.67g/dL(3.50から4.85g/dL)
ガンマグロブリン0.97g/dL(NV=0.74から1.75g/dL)。
・表現型的に正常なTループ:
CD4
+846/mm
3;
CD8
+504/mm
3;
CD4
+/CD8
+比1.7
・中程度アレルギーの評価:
IgE 204mg/dL(NV=100mg/dL未満);
ダスト特異性IgE 1.5mg/dL
(クラス2 中程度);
・以下のマーカー陽性自己免疫評価:
核ANA≧1/640;
核小体ANA≧1/640;
【0345】
放射線治療前に免疫療法に残された時間が短かったので、インビボ試験(遅延型一次・二次過敏性)は行わなかった。
【0346】
インビトロ検査に基づく結論:
1.液性免疫、補体系およびTループは表現型的に正常であり、見かけ上の免疫不全は認められなかった;
2.免疫療法への良好な応答に有利なTH1細胞プロファイル;
3.インビボ試験を行わなかったので機能検査は実施しなかった。
【0347】
提案されたDECA治療
DECA治療は以下からなった:
・DECA組成物1.8ccを0.9ccずつ2適用分で10か所の主要リンパ領域に適用。
・4±1日間隔での治療展開の測定を容易にするため適用箇所間に3〜4cmの距離のマージン。
・6つのDECA組成物1.8ccをそれぞれ0.9ccずつの病変周囲適用分2つに分け、次の領域の周囲に投与:上部および下部並びに左右の鼡径部に合計4組成物、並びに恥骨上に1つの組成物、下腹部(臍下)にもう1つの組成物。
・組み換えヒトインターロイキン−2を、余剰DECA適用箇所の領域に位置する患者体表の1m
2当たり100万〜200万単位の濃度の受容体飽和レベルで、低用量で適用。抗原適用の間はこのようにし、以後は上述の領域に100万単位で毎日皮下適用。
【0348】
したがって、放射線療法時まで、患者の自由意思に基づくインフォームド・コンセントを得て免疫療法の治療が選択され、該治療は2010年3月11日に開始し、初回の部分的再評価を2010年4月3日に予定した。
【0349】
提案されたDECA治療の初回部分的結果
治療の4週間後、PSAは検出不能となり(
図7)、腫瘍塊を除去するかまたは有意に縮小する能力を明白に有する免疫療法に誘導された完全寛解を示した。現在の技術水準では、腫瘍塊の根絶と微小残存病変を区別することは不可能であり、提案されたDECA治療の驚くべき効果が示された。
【0350】
ここで(2010年4月3日)、以下が立証できた:
IgG 1070mg/dL(NV=600〜1500);
IgA 248mg/dL(NV=50〜400mg/dL);
IgM 129mg/dL(NV=50〜300mg/dL);
全補体系は有意な変化なし(2010年3月10日の280から2010年4月3日の281);
補体系がこのように維持されたことはC3(117から115)およびC4(76から71)にも見出されうる;
アルブミン3.21g/dL(3.50から4.85g/dL);
ガンマグロブリン1.00g/dL(NV=0.74から1.75 g/dL)。
CD4
+ 1.075/mm
3;
CD8
+ 537mm
3;
CD4
+/CD8
+比2.0。
IgE 165mg/dL(NV=100mg/dL未満);
核ANA≧1/320;
核小体ANA≧1/320;
【0351】
インビボ試験(遅延型二次過敏性)では以下が示された:
・初回の適用:
腫瘍部位からある距離で投与された抗原は、全抗原のスコアが+/++;
残存腫瘍部位付近のDECA領域では、反応は+++++中+/++のスコアを示して減少し、腫瘍の免疫抑制が証明された。
・2回目の適用:
腫瘍からある距離で投与された抗原は、全抗原に対し+++/++++のスコアでヒペルエルギー性となった;
残存腫瘍部位付近のDECA領域は正常化し、+++++上++/+++のスコアを示し始め、残存腫瘍塊がもたらした免疫抑制の逆転が確認された。
・3回目の適用(治療第2週目の初め):
腫瘍からある距離で投与された抗原は、全抗原に対し++++/+++++のスコアでよりヒペルエルギー性となった;
残存腫瘍部位付近のDECA領域は(++++/+++++の)同じ活性レベルに達し残存塊の局所領域性免疫抑制の完全逆転が証明された。
これらのヒペルエルギー性反応は第4週の再評価の日まで継続した(2010年4月3日)。
【0352】
提案されたDECA治療の初回部分的結果の結論
患者は当初、Th1細胞プロファイルを有する全身性免疫を維持していた。このTh1細胞プロファイルは、腫瘍に近い非反応性Tループの部位では損なわれており、局所領域的な腫瘍の免疫抑制が証明された。
【0353】
免疫療法は、DECAの2度目の適用後腫瘍からある距離の全領域で遅延型二次過敏性をヒペルエルギー性にし、他と同様ヒペルエルギー性になった局所領域的免疫抑制を逆転させた。
【0354】
血液検査はTループの機能分析を裏付け、CD4
+/ヘルパー細胞の絶対数・相対数の増加と、CD4
+/CD8
+比の増加を示し、患者の細胞性免疫を回復させたCD4
+細胞の全身レベルでの可動化が証明された。血液検査はまた、抗体と補体系が治療の第1相で変化していないことから、DECA組成物が細胞性免疫に排他的、特異的に作用することを示した。
【0355】
並行して、我々は他のアレルギーおよび自己免疫の利点を観察した:
・IgEクラス抗体の減少は、患者に現れた併存性アレルギー性鼻炎の完全寛解を伴い、提案されたDECA治療の抗アレルギー作用が示唆された。
・1/640から1/320になったANAスコアの有意な低下は自己免疫傾向に回帰する可能性が示された;
【0356】
放射線療法前の提案されたDECA治療の最終結果
2010年4月27日、患者が有痛性のヒペルエルギー性反応を示したとき2回目の部分的再評価を行った(全て+++++)。PSA不検出という結果が得られ、これは2012年2月まで続いた。
【0357】
2010年3月11日に開始した免疫療法は、(放射線療法の前日である)2010年6月10日まで全部で90日行われ、腫瘍の完全寛解が4週間後に得られ、免疫抑制の逆転が2週間で得られたことが強調された。
【0358】
DECA治療の結果
術後の残存腫瘍塊のあるグリーソン分類9(4+5)、外科的ステージpT3bN0の前立腺腺癌患者の4週間での完全寛解により、これらの症例の逆転は困難と指摘する技術水準と比較すると、この結果は驚くべきものと推論されうる。
【0359】
治療1か月目に、DECA免疫療法は、潜在的抗アレルギー能(アレルギー性鼻炎の完全寛解と関連するIgEの減少)を示し、かつ自己免疫傾向のリグレッサー(核要素に対する抗体滴定の半減に証明される)として示されたことがさらに推定できる。
【0360】
本症例の結論
これらのデータから、現在の技術水準では腫瘍塊の根治と微小残存病変を区別することができないので、DECA免疫療法の治療が放射線療法の開始を待つ間の唯一の薬理学的治療であったとすると、不検出になるまでPSAレベルが変換されて腫瘍の除去が示されたことで、該治療が前立腺切除後残存する局所領域的腫瘍の(4週間での)完全寛解に有効であったことが強力に示唆される。
【0361】
加えて、アレルギー性鼻炎の完全寛解とANAレベルの改善(おそらく自己免疫増強の傾向)も観察された。
【0362】
実施例8:敗血症の治療
患者データ
患者J−P、58歳、男性。
【0363】
主診断
敗血症。
【0364】
副診断
以下を伴う多発性外傷:
・およそ40cmの大組織欠損を伴う複雑な感染創。
・左下肢切断を示唆する広範囲の感染組織壊死。
外側が露出した左大腿骨の骨髄炎を合併したグレードIIIBの感染開放骨折。
・左腕、左足裏および右外側くるぶし領域に縫合不能な開放創、感染開裂挫傷。
【0365】
病歴の同定と要約
2011年1月12日、地滑りの被災者であった患者は、外側開裂を有する左大腿骨のグレードIIIbの開放骨折および側部の露出に連絡する40cmの広範囲の深い内側開裂挫傷を負い、テレゾポリスのOctavian Constantine Hospital das Clinicasの集中治療室に入院した。左腕、左足裏および右外側くるぶし領域の裂傷、挫傷。24時間で敗血症シナリオに進行し、緑膿菌の微生物学的同定がなされた。
【0366】
提案され実施された従来治療
緊急治療室での大腿部の外部固定、毎日の外科的壊死組織切除に関連してのクリンダマイシン、バンコマイシンおよびセフェピムの投与。
【0367】
従来治療を実施した結果
当初は敗血症シナリオが改善、次いで広範囲の筋肉壊死を伴い左下肢の感染が進行し、切断の高リスク。入院15日後、39℃の発熱エピソード、深刻な貧血症(輸血を受ける)を伴い敗血症が悪化、抗菌薬をTazocimに替えた。患者を医師の監督下サンパウロに航空搬送して転院させた。
【0368】
従来治療の完了で、敗血症の再発および左脚の壊死増加で切断が示唆された。
【0369】
従来的外科治療との併用で提案されたDECA治療
患者はHospital Alemao Oswaldo CruzのICUに入院し、壊死組織切除および以下の形態のDECA治療の適用を受けた:
・DECA組成物1.8ccを1組成物当たり0.9ccずつの2適用分に分け、10か所の主要リンパ領域に沿って適用。
・4±1日間隔での治療展開の測定を容易にするため適用箇所間に3〜4cmの距離のマージン。これらの適用は外科的壊死組織切除と共に行った(週平均1回から2回)。
・さらに36の病変周囲組成物DECA各1.8ccを1セット当たり0.9ccずつの2適用分で以下の縫合不能な開放創傷を囲むように投与した:左鼡径部、左腿外側、左腿前側および左腿内側面並びに右脚の足甲領域および左外側くるぶし。
・余剰DECA適用領域に位置する患者体表の1m
2当たり100万〜200万単位の濃度の受容体飽和レベルで組み換えヒトインターロイキン−2を低用量で適用。毎日300万単位を患者の左腿または鼡径部に皮下注射した。
・むき出し部位の浸潤のため露出領域にDECA組成物15各1.8ccを適用した。
・この広範囲の免疫療法は常に一般的な麻酔下での洗浄と外科的壊死組織切除の施術日に適用された。
【0370】
従って、免疫療法の第1相は2011年1月29日に開始、2011年3月19日に終了し、洗浄と壊死組織切除が手術室で行われる間(むき出し部位で内部組織が広範囲に露出しており強い痛みと感染のリスクがあったため)、週1回か2回の範囲の期間で合計9回のDECA適用を行った。
【0371】
外科的壊死組織切除および抗生物質療法と併用のDECA治療の結果。
2011年1月29日に手術室で患者の損傷の初回評価を行い、すべての傷に多数の凝血塊を伴う出血と広範囲の壊死および悪臭がする膿が認められた。外科的洗浄後、組織は概してワイン様の(winy)外観で依然として不良であり、健常な顆粒化組織の外観はなかった。記載のように、DECA免疫療法がこれらの部位に適用された。ここで内分泌物と組織片の培養が実施されたことは興味深い。
【0372】
24時間後、DECA免疫療法と併用の外科的治療の初回評価が行われ、以下が示された:活動性出血のない、無悪臭の少量の分泌物を伴うわずかな壊死部位を有する健常な顆粒化組織の外観の赤色の病変。病変を洗浄し、上記のようにDECA免疫療法を適用した。ここで抗生物質療法をTazocim Meronem、キュビシンおよびリファンピシンに変更し培養結果を待った。
【0373】
2011年2月1日、損傷部位、末梢血および中心カテーテルの培養物の結果は以下を示した:
・左腿の傷では多剤耐性緑膿菌、ポリミキシンBのみに感受性の多剤耐性アシネトバクター・バウマンニおよび多剤耐性プロテウス・ミラビリスを分離。
・末梢血および中心カテーテルではポリミキシンBのみに感受性の多剤耐性アシネトバクター・バウマンニを分離。
【0374】
結論:これらの結果により、左脚の損傷の予後不良がアシネトバクター・バウマンニを伴う新たな敗血症エピソードの一因となり、アシネトバクター・バウマンニの多剤耐性とポリミキシンBのみに対する感受性のせいで静脈内Tazocimでの治療に反応しなかったことが示された。一方で、ポリミキシンBを適用してこの病因薬剤が中和できる前に全身的感染および損傷の改善があったので、DECA組成物を外科的治療と併用して局所的および全身的にこの感染を予防する有益な効果が強力に支持される。
【0375】
同じ日に、その他の処方は変更することなくMeronemをポリミキシンB20,000IU/kg1日2回に替えた。
【0376】
2011年2月3日、抗生物質療法、壊死組織切除およびDECA免疫療法の併用が敗血症シナリオの寛解をもたらしたことが見いだされたので、患者はICUを出て次の病棟に移ることができた。
【0377】
2011年2月6日、ポリミキシンBおよび他の抗菌剤投与の毒性により、患者は乏尿を伴う急性腎不全を示した。このため、2011年2月6日から2011年2月15日まで(12日間)これらの抗生物質の投与を中断し、院内ブドウ球菌感染予防としてLimezolida(ザイボックス)を導入した。2011年2月15日に患者の腎不全の完全寛解が確認された。この12日間は壊死組織切除、抗生物質予防投与およびDECA免疫療法の併用療法のみであったが、患者はこの期間後、感染と損傷の非常に良好な全体的進展を見せ、外部固定器を外して外科的洗浄を受けることができ、2011年2月17日に骨折を固定する内部ロッドを導入する手術を受けた。このように、この期間中、整形外科手術と共に、皮膚のないむき出し部位が広範囲の組織再生で有意に減少し、新たな感染症もなかった。
【0378】
患者は骨髄炎を含む複雑な損傷と傷の感染症がすべて完治し、2011年3月15日に退院した。患者は抗生物質療法なしで退院した。
【0379】
本症例の結論
重度かつ広範囲の感染症と、ポリミキシンBに対してのみ感受性の多剤耐性アシネトバクター・バウマンニに感染した複雑な傷の存在が、特に抗生物質療法なしでコントロールされ、敗血症、全露出病変および骨髄炎の広範囲な進展を得、壊死組織切除および抗生物質との併用でのDECA免疫療法が臨床シナリオを比較的短期間に治癒する決定的役割を果たしたことが強力に示唆される。
【0380】
【表73】
【0381】
まとめると、ここに挙げた臨床例は、先行技術の知識による解析では予後が不明瞭から相当不良であり非常に複雑であるとみなされる疾病や疾患が、本発明の組成物の使用を介し、より有利かつ有効な異なるアプローチを受けていることを証するものである。