特許第6181642号(P6181642)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181642エネルギー効率の良いポリアルキレングリコール及びそれを含む潤滑剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181642
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】エネルギー効率の良いポリアルキレングリコール及びそれを含む潤滑剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/28 20060101AFI20170807BHJP
   C10M 107/34 20060101ALI20170807BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20170807BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20170807BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20170807BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20170807BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20170807BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20170807BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20170807BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20170807BHJP
【FI】
   C08G65/28
   C10M107/34
   C10N20:00 A
   C10N20:00 Z
   C10N20:04
   C10N30:00 Z
   C10N30:02
   C10N30:06
   C10N40:02
   C10N40:04
   C10N40:30
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-517006(P2014-517006)
(86)(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公表番号】特表2014-520195(P2014-520195A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】US2012041449
(87)【国際公開番号】WO2012177415
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年5月11日
(31)【優先権主張番号】61/499,532
(32)【優先日】2011年6月21日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(72)【発明者】
【氏名】マーティン アール.グリーブス
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド ファン フォールスト
(72)【発明者】
【氏名】シンシア エル.ランド
(72)【発明者】
【氏名】マリヌス メールテンス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエレ ビンチ
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−508334(JP,A)
【文献】 特開昭57−205423(JP,A)
【文献】 特公昭48−035959(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/28
C10M 107/34
C10N 20/00
C10N 20/04
C10N 30/00
C10N 30/02
C10N 30/06
C10N 40/02
C10N 40/04
C10N 40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラヒドロフランにより開始された、EOに由来する単位及びPOに由来する単位を含むランダムコポリマーを含むポリアルキレングリコールであって、
前記ポリテトラヒドロフランは、重量平均分子量200〜300g/モルを有し、かつ600g/モルを超える分子量を有する成分を10質量%未満で有し、
前記ランダムコポリマーは、55〜70重量%のEOに由来する単位及び45〜30重量%のPOに由来する単位を有し、
前記ポリアルキレングリコールは、ASTM D97を用いて測定して、流動点が−30℃以下であり、1.25GPaの接触圧力、速度=2m/s、100%のSRR、そして80℃の温度でのトラクション値が0.0165未満である、ポリアルキレングリコール。
【請求項2】
前記ポリアルキレングリコールは、1.25GPaの接触圧力、速度=2m/s、SRR=50%、そして80℃の温度でのトラクション値が0.0135未満である、請求項1記載のポリアルキレングリコール。
【請求項3】
流動点は−35℃以下である、請求項1又は2記載のポリアルキレングリコール。
【請求項4】
ポリテトラヒドロフランにより開始された、EOに由来する単位及びPOに由来する単位を含むランダムコポリマーを含むポリアルキレングリコールであって、前記ポリテトラヒドロフランは重量平均分子量が200〜400g/モルであり、600g/モルを超える分子量を有する成分を10質量%未満で有し、
前記ランダムコポリマーは、55〜70重量%のEOに由来する単位及び45〜30重量%のPOに由来する単位を有する、ポリアルキレングリコール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はエネルギー効率の良いポリアルキレングリコール、及び、このようなエネルギー効率の良いポリアルキレングリコールをベースオイルとして含む潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンオキシド(EO)及びプロピレンオキシド(PO)のランダムコポリマーを含むポリアルキレングリコール(PAG)は、潤滑剤配合物中でベースオイルとして使用されるときに、優れた摩擦制御性(すなわち、低摩擦係数)を提供することが知られている。このようなEO/PO PAGの摩擦性能は鉱油、合成炭化水素、及び、PO、ブチレンオキシド(BO)又はそれらの組み合わせをベースとするPAGポリマーよりも有意に優れている。PAGを含む高性能EO/POランダムコポリマーは、通常、50〜60質量%のEOに由来する単位を含む。既知の潤滑剤配合物中に使用されるPAGは、モノオール(例えば、ブタノール)、ジオール(例えば、プロピレングリコール)又はトリール(例えば、グリセロール)開始剤を用いて製造されるPAGである。
【0003】
EO/PO PAGは、通常、ギア、カレンダー及びベアリング潤滑剤中の主要ベースオイルとして使用される。例えば、このようなPAGは>50質量%のレベルで使用され、そしてよりしばしば、>95%のレベルで使用される。
【0004】
産業界の重要な傾向はより良好な摩擦制御性を付与することができるベースオイルを選択することにより、より効率の良い潤滑剤を開発することである。EO/PO PAGの摩擦係数はポリマーのEO由来含有分を増加させることにより、さらに低下されうる。しかしながら、EOに由来する単位のレベルを増加させることで、EO/PO PAGの流動点に負の影響を与える。このようにして、75%のEOに由来する単位の含有分を有するポリマーはその高い流動点のために、ギア潤滑剤中の主要ベースオイルとしての実用性を限定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のEO/PO PAGと比較して低い摩擦係数を提供するように十分に高い含有分のEOに由来する単位を有するが、同時に、許容されうる低温特性、例えば、流動点を有するEO/PO PAGの必要性が残る。EO/PO PAGが50℃〜−25℃などの広い温度範囲にわたって透明であり、均一でありそして安定であることがさらに望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本発明はエネルギー効率の良いポリアルキレングリコール、及び、このようなポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物である。
【0007】
1つの実施形態において、本発明は、ポリテトラヒドロフランにより開始された、EOに由来する単位及びPOに由来する単位を含むランダムコポリマーを含むポリアルキレングリコールであって、前記ポリアルキレングリコールは、ASTM D97を用いて測定して、流動点が−30℃以下であり、1.25GPaの接触圧力、速度=2m/s、100%のスライドロール比(SRR)、そして80℃の温度でのトラクション値が0.015未満である、ポリアルキレングリコールを提供する。
【0008】
別の実施形態において、本発明は、ポリテトラヒドロフランにより開始された、EOに由来する単位及びPOに由来する単位を含むランダムコポリマーを含むポリアルキレングリコールであって、前記ポリテトラヒドロフランは重量平均分子量が200〜400g/モルであり、600g/モルを超える分子量を有する成分を10質量%未満で有する、ポリアルキレングリコールを提供する。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、本発明のポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物をさらに提供する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、1.25GPaの接触圧力、速度=2m/s、SRR=50%、そして80℃の温度での前記ポリアルキレングリコールのトラクション値が0.0135未満であることを以外は先行の実施形態のいずれかによるポリアルキレングリコール、及び、該ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物を提供する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、ポリアルキレングリコールの流動点が−35℃以下であること以外は先行の実施形態のいずれかによるポリアルキレングリコール、及び、該ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物を提供する。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、前記ポリアルキレングリコールが20℃で視覚安定性を示すこと以外は先行の実施形態のいずれかによるポリアルキレングリコール、及び、該ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物を提供する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、前記ポリアルキレングリコールが4℃で視覚安定性を示すこと以外は先行の実施形態のいずれかによるポリアルキレングリコール、及び、該ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物を提供する。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、前記ポリアルキレングリコールが50℃で視覚安定性を示すこと以外は先行の実施形態のいずれかによるポリアルキレングリコール、及び、該ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物を提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、前記ポリアルキレングリコールが−25℃で視覚安定性を示すこと以外は先行の実施形態のいずれかによるポリアルキレングリコール、及び、該ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物を提供する。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、前記ランダムコポリマーが55〜70質量%のEOに由来する単位及び45〜30質量%のPOに由来する単位を含むこと以外は先行の実施形態のいずれかによるポリアルキレングリコール、及び、該ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物を提供する。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、前記ランダムコポリマーが60〜65質量%のEOに由来する単位及び35〜40質量%のPOに由来する単位を含むこと以外は先行の実施形態のいずれかによるポリアルキレングリコール、及び、該ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物を提供する。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、前記ポリテトラヒドロフランの重量平均分子量が150〜350g/モルであること以外は先行の実施形態のいずれかによるポリアルキレングリコール、及び、該ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物を提供する。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、前記ポリテトラヒドロフランの重量平均分子量が200〜300g/モルであること以外は先行の実施形態のいずれかによるポリアルキレングリコール、及び、該ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物を提供する。
【0020】
別の実施形態において、本発明は、前記ランダムコポリマーの40℃での粘度が61cSt〜75cStであり、又は、別の実施形態において、288〜352cStであり、又は、別の実施形態において、900〜1100cStであること以外は先行の実施形態のいずれかによるポリアルキレングリコール、及び、該ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物を提供する。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、前記潤滑剤組成物がISO−68、ISO−320又はISO−1000グレードの潤滑剤であること以外は先行の実施形態のいずれかによるポリアルキレングリコール、及び、該ポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物を提供する。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、潤滑剤組成物が酸化防止剤、耐摩耗添加剤及び腐食防止剤からなる群より選ばれる1種以上の添加剤をさらに含むこと以外は先行の実施形態のいずれかによるポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物を提供する。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、潤滑剤組成物が酸化防止剤、耐摩耗添加剤及び腐食防止剤からなる群より選ばれる1種以上の添加剤をさらに含むこと以外は先行の実施形態のいずれかによる潤滑剤組成物を提供する。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、前記酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、芳香族アミン酸化防止剤、第二級アミン酸化防止剤、硫化フェノール系酸化防止剤、硫化オレフィン、油溶性銅化合物及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれること以外は先行の実施形態のいずれかによる、潤滑剤組成物を提供する。
【0025】
別の実施形態において、本発明は、前記腐食防止剤が(1)脂肪族リン酸エステルのアミン塩、(2)鉱油中のアルケニルコハク酸半エステル、(3)ジチオリン酸誘導体と組み合わせたアルキルリン酸のアミン塩、(4)水素化処理ナフテン油中のバリウムジノニルナフタレンスルホネート及びジノニルナフタレンカルボキシレートの組み合わせ、及び、(5)それらの組み合わせからなる群より選ばれること以外は先行の実施形態のいずれかによる潤滑剤組成物を提供する。
【0026】
別の実施形態において、本発明は、前記耐摩耗添加剤がジアルキルジチオリン酸亜鉛、トリクレジルホスフェート、ジドデシルホスファイト、硫化マッコウクジラ油、硫化テルペン、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれること以外は先行の実施形態のいずれかによる潤滑剤組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本発明はエネルギー効率の良いポリアルキレングリコール、及び、このようなポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物を提供する。
【0028】
本発明に係るポリアルキレングリコールは、ポリテトラヒドロフランにより開始された、EOに由来する単位及びPOに由来する単位を含むランダムコポリマーを含み、該ポリアルキレングリコールは、ASTM D97を用いて測定して、流動点が−30℃以下であり、1.25GPaの接触圧力、速度=2m/s、100%のSRR、そして80℃の温度でのトラクション値が0.015未満である。
【0029】
本発明のポリアルキレングリコールはASTM D97を用いて測定して、−30℃以下の流動点を示す。−30℃以下のすべての個々の値及び副次範囲は本明細書中に含まれそして本明細書中に開示されており、例えば、流動点は上限が−30、−32、−33、−34、−35、−36、−37、−38又は−40℃であることができる。
【0030】
本発明のポリアルキレングリコールは1.25GPaの接触圧力、速度=2m/s、100%のSRR、そして80℃の温度で0.015未満のトラクション値を示す。0.015未満のすべての個々の値及び副次範囲は本明細書中に含まれそして本明細書中に開示されており、例えば、トラクション値は0.015未満であることができ、又は、別の実施形態において、トラクション値は0.013未満であることができ、又は、別の実施形態において、トラクション値は0.011未満であることができ、又は、別の実施形態において、トラクション値は0.009未満であることができ、又は、別の実施形態において、トラクション値は0.007未満であることができる。
【0031】
1つの特定の実施形態において、本発明のポリアルキレングリコールは、1.25GPaの接触圧力、速度=2m/s、50%のSRR、そして80℃の温度でのトラクション値が0.0135未満である。
【0032】
幾つかの実施形態において、本発明のポリアルキレングリコールは50〜−25℃の温度で視覚安定性を示す。50〜−25℃のすべての個々の値及び副次範囲は本明細書中に含まれそして本明細書中に開示されており、例えば、ポリアルキレングリコールは−25、−15、−5、0、5、15、20、25、30、35、40又は45℃の下限から−15、−5、0、5、15、20、25、30、35、40、45又は50℃の上限の温度で視覚安定性を示す。例えば、ポリアルキレングリコールは4℃で視覚安定性を示し、又は、別の実施形態において、ポリアルキレングリコールは20℃で視覚安定性を示し、又は、別の実施形態において、ポリアルキレングリコールは50℃で視覚安定性を示し、又は、別の実施形態において、ポリアルキレングリコールは−25℃で視覚安定性を示す。
【0033】
本発明のポリアルキレングリコールの幾つかの実施形態において、ランダムコポリマーは55〜70質量%のEOに由来する単位及び45〜30質量%のPOに由来する単位を含む。55〜70質量%のEOに由来する単位のすべての個々の値及び副次範囲は本明細書中に含まれそして本明細書中に開示されており、例えば、ランダムコポリマー中のEOに由来する単位の量は55、57、59、61、63、65、67又は69質量%の下限から57、59、61、63、65、67、69又は70質量%の上限であることができる。例えば、ランダムコポリマー中のEOに由来する単位の量は55〜70質量%の範囲にあることができ、又は、別の実施形態において、ランダムコポリマー中のEOに由来する単位の量は60〜68質量%の範囲にあることができ、又は、別の実施形態において、ランダムコポリマー中のEOに由来する単位の量は56〜66質量%の範囲にあることができ、又は、別の実施形態において、ランダムコポリマー中のEOに由来する単位の量は65〜70質量%の範囲にあることができる。同様に、30〜45質量%のPOに由来する単位のすべての個々の値及び副次範囲は本明細書中に含まれそして本明細書中に開示されており、例えば、ランダムコポリマー中のPOに由来する単位の量は30、33、36、39又は44質量%の下限から32、35、38、41、44又は45質量%の上限であることができる。例えば、ランダムコポリマー中のPOに由来する単位の量は45〜30質量%の範囲にあることができ、又は、別の実施形態において、ランダムコポリマー中のPOに由来する単位の量は40〜36質量%の範囲にあることができ、又は、別の実施形態において、ランダムコポリマー中のPOに由来する単位の量は45〜34質量%の範囲にあることができ、又は、別の実施形態において、ランダムコポリマー中のPOに由来する単位の量は35〜30質量%の範囲にあることができる。
【0034】
本発明のポリアルキレングリコールの1つの特定の実施形態において、ランダムコポリマーは60〜65質量%のEOに由来する単位及び35〜40質量%のPOに由来する単位を含む。
【0035】
本発明のポリアルキレングリコールの幾つかの実施形態において、ポリテトラヒドロフランは重量平均分子量が150〜350g/モルである。150〜350g/モルのすべての個々の値及び副次範囲は本明細書中に含まれそして本明細書中に開示されており、例えば、ポリテトラヒドロフランの分子量は150、175、200、225、250、275、300又は325g/モルの下限から175、200、225、250、275、300、325又は350g/モルの上限であることができる。例えば、ポリテトラヒドロフランの分子量は150〜350g/モルの範囲にあることができ、又は、別の実施形態において、ポリテトラヒドロフランの分子量は200〜300g/モルの範囲にあることができ、又は、別の実施形態において、ポリテトラヒドロフランの分子量は175〜250g/モルの範囲にあることができ、又は、別の実施形態において、ポリテトラヒドロフランの分子量は225〜325g/モルの範囲にあることができ、又は、別の実施形態において、ポリテトラヒドロフランの分子量は250〜350g/モルの範囲にあることができる。
【0036】
ポリアルキレングリコールの幾つかの実施形態において、ランダムコポリマーは分子量が700〜5000g/モルである。700〜5000g/モルのすべての個々の値及び副次範囲は本明細書中に含まれそして本明細書中に開示されており、例えば、ランダムコポリマーの分子量は700、900、1300、1700、2400、2700、3300、3900、4500又は4700g/モルの下限から800、1500、2600、3000、3500、4600又は5000g/モルの上限であることができる。例えば、ランダムコポリマーの分子量は700〜5000g/モルの範囲にあることができ、又は、別の実施形態において、ランダムコポリマーの分子量は1500〜4500g/モルの範囲にあることができ、又は、別の実施形態において、ランダムコポリマーの分子量は2000〜4000g/モルの範囲にあることができ、又は、別の実施形態において、ランダムコポリマーの分子量は900〜3500g/モルの範囲にあることができる。
【0037】
別の実施形態において、本発明は、平均分子量が200〜400g/モルであり、600g/モルを超える分子量を有する成分を10質量%未満で有するポリテトラヒドロフランにより開始された、EOに由来する単位及びPOに由来する単位を含むランダムコポリマーを含むポリアルキレングリコールを提供する。600g/モルを超える分子量を有する成分10質量%未満のすべての個々の値及び副次範囲は本明細書中に含まれそして本明細書中に開示されている。ポリアルキレングリコールは上限が10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1質量%である高分子量成分を有することができる。
【0038】
別の実施形態において、本発明は、先行の実施形態のいずれかのポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物をさらに提供する。
【0039】
幾つかの実施形態において、本発明の潤滑剤組成物は酸化防止剤、耐摩耗添加剤及び腐食防止剤からなる群より選ばれる1種以上の添加剤をさらに含む。
【0040】
添加剤は潤滑剤中でさまざまな目的で使用されうる。本発明の潤滑剤組成物の特定の実施形態は、酸化防止剤、耐摩耗添加剤及び腐食防止剤からなる群より選ばれる1種以上の添加剤を含むことができる。本発明の潤滑剤組成物の様々な実施形態において有用な例示の酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、芳香族アミン酸化防止剤、第二級アミン酸化防止剤、硫化フェノール系酸化防止剤、硫化オレフィン、油溶性銅化合物及びそれらの組み合わせが挙げられる。本発明の潤滑剤組成物の様々な実施形態において有用な例示の腐食防止剤としては、(1)脂肪族リン酸エステルのアミン塩(例えば、King Industriesから入手可能なNALUBE 6110)、(2)鉱油中のアルケニルコハク酸半エステル(例えば、BASF Corporationから入手可能IRGACOR L12)、(3)ジチオリン酸誘導体と組み合わせたアルキルリン酸のアミン塩(例えば、King Industriesから入手可能なNALUBE 6330)、(4)水素化処理ナフテン油中のバリウムジノニルナフタレンスルホネート及びジノニルナフタレンカルボキシレートの組み合わせ(例えば、King Industriesから入手可能なNASUL BSN)、及び、(5)それらの組み合わせが挙げられる。本発明の潤滑剤組成物の様々な実施形態において有用な例示の耐摩耗添加剤としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、トリクレジルホスフェート、ジドデシルホスファイト、硫化マッコウクジラ油、硫化テルペン、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛及びそれらの組み合わせが挙げられる。典型的な添加剤パッケージは酸化防止剤及び腐食防止剤を含み、例えば、下記の組み合わせ、(4−ノニルフェノール)酢酸、独占権付きアシルサルコシネート及びノニルフェノール(IRGACOR L17)、N−フェニル−ar−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−1−ナフタレンアミン(IRGANOX L06)、2,4,4−トリメチルペンテントジフェニルアミン(IRGANOX L57)とN−フェニルベンゼンアミンとの反応生成物、トリルトリアゾール及びモノメチルヒドロキノンである。IRGANOX及びIRGACORはBASF Corporationから入手可能である。潤滑剤に使用されうる、なおも他の添加剤としては、ポリメチルシロキサンなどの脱泡剤、解乳化剤、銅腐食防止剤、防錆剤、流動点降下剤、洗剤、染料、金属不活性化剤、補足摩擦調整剤、希釈剤及びそれらの組み合わせなどが挙げられる。添加剤は、任意の便利な組み合わせ又は量で使用されうるが、通常、総組成物の0.05wt%〜5wt%、好ましくは1wt%〜3wt%で含まれる。
【実施例】
【0041】

以下の実施例は本発明を例示するが、本発明の範囲を限定することが意図されない。本発明の例は本発明に係る特定のポリアルキレングリコール組成物及び構造が良好な低温特性及び低摩擦係数の両方を提供する。
【0042】
すべての本発明のポリアルキレングリコールの例は下記の一般的なアルコキシル化手順を用いて調製された。
【0043】
開始剤ポリTHF250(BASFから入手可能な250g/モルの重量平均分子量を有するポリテトラヒドロフラン)を、スターラ、アルキレンオキシド投与システム及び真空システムを備えたガラス製又はステンレススチール製反応器中に充填する。45%水性KOHを、2000ppmのエンドバッチ濃度に添加する。この混合物を115℃に加熱し、存在する水を、2000ppm未満の水のレベルまで真空(30mbar、1.5時間)により除去する。その後、反応器を所望のアルコキシル化温度(135℃)まで加熱し、アルキレンオキシドの混合物(EO/PO)を時間をかけて添加する。すべての酸化物を添加し、反応させたときに、反応器を80℃に冷却する。この温度で、生成物をろ過剤で処理し、触媒をろ過により除去する。
【0044】
表1は本発明の例及び比較例についての組成的情報を提供する。
【表1】
【0045】
表1の記号説明
ポリTHF−250はBASFから入手可能な重量平均分子量が250g/モルであるポリテトラヒドロフランである。
ポリTHF−650はINVISTA(Koch Industries, Inc.の完全保有子会社)から入手可能な重量平均分子量が650g/モルであるポリテトラヒドロフランである。
ポリTHF−250−HMWテールはINVISTA(Koch Industries, Inc.の完全保有子会社)から入手可能な重量平均分子量が250g/モルであり、かつ、特に分子量が630g/モル以上である高分子量材料を10質量%有するポリテトラヒドロフランである。
P−200はモノプロピレングリコールのプロポキシル化により調製される、重量平均分子量が200g/モルであるポリプロピレングリコールである。
P−400はSYNALOX 100-D20の商品名でDow Chemicalから入手可能な重量平均分子量が400g/モルであるポリプロピレングリコールである。
EB−500はモノプロピレングリコールを75/25(質量基準)のEO/BOランダムフィードと反応させることにより調製される、重量平均分子量が500g/モルであるエチレンオキシド/ブチレンオキシドランダムコポリマーである。
DPnBはDow Chemical Companyから入手可能なジプロピレングリコールn−ブチルエーテルであるDOWANOL DPnBである。
B−250はモノプロピレングリコールのブトキシル化により調製される、重量平均分子量が250g/モルであるポリブチレングリコールである。
【0046】
表2は比較例1〜18及び本発明の例1〜2の各々について、各々下記のとおりに測定された40℃での粘度、粘度指数、流動点、50%SSRでの摩擦及び100%SSRでの摩擦を提供する。
【0047】
【表2】
【0048】
表3は本発明の例1〜2及び比較例1〜18の各々について、下記の「試験法」に記載されるとおりに測定されるブレンド安定性を提供する。
【0049】
【表3】
【0050】
表1〜3に含まれるデータは、本発明に係る、ポリテトラヒドロフランにより開始された、EO及びPOに由来する単位を有するランダムコポリマーであるポリアルキレンから製造されるポリアルキレングリコールは、良好な低温加工性(すなわち、流動点)を維持しながら、ブレンド安定性、良好な摩擦特性を示すことを明確に例示している。比較例2、4、6、7及び12などのEOに由来する単位を高レベルで含むポリアルキレングリコールは許容されうる摩擦特性を示すが、所望よりも高い流動点を有する。50wt%/50wt%PO/BOコポリマー及び100%BOコポリマーである比較例8及び9は許容されうるほど低い流動点を示すが、また、許容され得ないほど高い摩擦を示す。同様に、比較例10〜11のトリオール開始EO/POをベースとするポリアルキレングリコールは良好な流動点を示すが、高い摩擦を示す。それぞれモノオール及びジオール開始EO/PO系ポリアルキレングリコールである比較例1及び3も許容されうる流動点を示すが、許容され得ない高摩擦を示す。
【0051】
さらに判るとおり、高分子量テールを有しない(すなわち、600g/モルを超える分子量の成分が10質量%未満である)ポリテトラヒドロフランの使用では、本発明のポリアルキレングリコールの低温加工性、視覚安定性及び低摩擦性を有するポリアルキレングリコールが提供される。このような高分子量テールを有するポリテトラヒドロフランにより開始されるポリアルキレングリコールでは、これらの特性の所望の組み合わせを提供しない。
【0052】
試験法
試験法は以下を含む。
トラクション測定試験
スチールディスク上でスチールボール(3/4インチ直径)を回転させるミニトラクション機械(Mini-Traction Machine)(PCS機械)を用いて、滑り/回転条件下にトラクション曲線を測定した。トラクション係数を、80℃で、0%〜100%のスライドロール比(SRR)で、速度=2m/sで、そして1.25GPaの接触圧力(70N荷重)で測定した。トラクションデータを50%及び100%SRRで報告した。
スライドロール比、SRRは、滑り速度/巻き込み速度の比であり、すなわち、
SRR=[U2−U1]/U
(上式中、巻き込み速度(U)は下記のとおりに2つの表面の平均速度として定義される)である。
U=1/2(U1+U2)
(上式中、U1及びU2はそれぞれボール及びディスクの速度である)。
【0053】
ブレンド安定性試験
ポリマーのブレンド安定性を、炉内、冷蔵機又は冷凍機中に200mlの流体を24時間貯蔵し、そしてポリマーの外観を視覚的に記録することにより、周囲温度(20℃)、50℃、4℃及び−25℃で評価した。この外観は透明又は曇りと記録した。
【0054】
分子量
明細書中のすべての分子量は重量平均分子量である。
分子量分布はRIディテクタを有する室温GPCにより決定した。使用される手順の応用可能概算範囲は100〜10000ダルトンである。
【0055】
分子量決定のためのサンプル調製:
120±20mgのサンプルを20mLバイアル中に計量し、そして10mLのテトラヒドロフラン(HPLCグレード)を添加した。バイアルをブチルゴムセプタムでシールし、そしてバイアルを振盪した。
【0056】
【表4】
【0057】
GPC分析のための検量
GPC分析を、CP6001、CP4100、P2000及びCP1000のポリオール混合物(THF中1.5wt%)を用いて検量した。計算はブロード標準法に基づいた。この標準混合物の検量パラメータはMw=2572及びMn=1732g/モルである。
【0058】
本発明はその精神及び本質的特質から逸脱することなく他の形態で具現化でき、したがって、本発明の範囲を示すものとして、上記の明細書でなく、添付の特許請求の範囲を参照するべきである。
本開示は以下も包含する。
[1]
ポリテトラヒドロフランにより開始された、EOに由来する単位及びPOに由来する単位を含むランダムコポリマーを含むポリアルキレングリコールであって、
前記ポリアルキレングリコールは、ASTM D97を用いて測定して、流動点が−30℃以下であり、1.25GPaの接触圧力、速度=2m/s、100%のSRR、そして80℃の温度でのトラクション値が0.0165未満である、ポリアルキレングリコール。
[2]
前記ポリアルキレングリコールは、1.25GPaの接触圧力、速度=2m/s、SRR=50%、そして80℃の温度でのトラクション値が0.0135未満である、[1]記載のポリアルキレングリコール。
[3]
流動点は−35℃以下である、先行のいずれか1項記載のポリアルキレングリコール。
[4]
前記ポリアルキレングリコールは20℃で視覚安定性を示す、先行のいずれか1項記載のポリアルキレングリコール。
[5]
前記ポリアルキレングリコールは4℃で視覚安定性を示す、先行のいずれか1項記載のポリアルキレングリコール。
[6]
前記ポリアルキレングリコールは50℃で視覚安定性を示す、先行のいずれか1項記載のポリアルキレングリコール。
[7]
前記ポリアルキレングリコールは−25℃で視覚安定性を示す、先行のいずれか1項記載のポリアルキレングリコール。
[8]
前記ランダムコポリマーは55〜70質量%のEOに由来する単位及び45〜30質量%のPOに由来する単位を含む、先行のいずれか1項記載のポリアルキレングリコール。
[9]
前記ランダムコポリマーは60〜65質量%のEOに由来する単位及び35〜40質量%のPOに由来する単位を含む、先行のいずれか1項記載のポリアルキレングリコール。
[10]
前記ポリテトラヒドロフランは重量平均分子量が150〜350g/モルである、先行のいずれか1項記載のポリアルキレングリコール。
[11]
前記ポリテトラヒドロフランは重量平均分子量が200〜300g/モルである、先行のいずれか1項記載のポリアルキレングリコール。
[12]
ポリテトラヒドロフランにより開始された、EOに由来する単位及びPOに由来する単位を含むランダムコポリマーを含むポリアルキレングリコールであって、前記ポリテトラヒドロフランは重量平均分子量が200〜400g/モルであり、600g/モルを超える分子量を有する成分を10質量%未満で有する、ポリアルキレングリコール。
[13]
ASTM D97を用いて測定して、流動点が−30℃以下である、[12]記載のポリアルキレングリコール。
[14]
1.25GPaの接触圧力、速度=2m/s、100%のSRR、そして80℃の温度でのトラクション値が0.0165未満である、[12]〜[13]のいずれか1項記載のポリアルキレングリコール。
[15]
−25℃〜50℃の温度で視覚安定性を示す、[12]〜[14]のいずれか1項記載のポリアルキレングリコール。
[16]
先行のいずれか1項記載のポリアルキレングリコールを含む潤滑剤組成物。
[17]
酸化防止剤、耐摩耗添加剤及び腐食防止剤からなる群より選ばれる、1種以上の添加剤をさらに含む、[12]記載の潤滑剤組成物。