特許第6181646号(P6181646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181646TNFアルファによる生物学的治療に対する中和自己抗体の検出のためのアッセイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181646
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】TNFアルファによる生物学的治療に対する中和自己抗体の検出のためのアッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20170807BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20170807BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20170807BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20170807BHJP
   G01N 30/04 20060101ALI20170807BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20170807BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20170807BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20170807BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   G01N33/53 N
   G01N30/88 J
   G01N30/06 E
   G01N30/86 E
   G01N30/04 P
   G01N33/536 D
   A61P19/02
   A61P37/02
   A61K45/00
【請求項の数】16
【全頁数】59
(21)【出願番号】特願2014-519077(P2014-519077)
(86)(22)【出願日】2012年7月6日
(65)【公表番号】特表2014-525036(P2014-525036A)
(43)【公表日】2014年9月25日
(86)【国際出願番号】US2012045794
(87)【国際公開番号】WO2013006810
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2015年7月3日
(31)【優先権主張番号】61/505,031
(32)【優先日】2011年7月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/528,072
(32)【優先日】2011年8月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/535,884
(32)【優先日】2011年9月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599132904
【氏名又は名称】ネステク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114270
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 朋也
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ハウエンスタイン, スコット
(72)【発明者】
【氏名】オールムンド, リンダ
(72)【発明者】
【氏名】シング, シャラット
(72)【発明者】
【氏名】ワン, シュイ ロン
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/056590(WO,A1)
【文献】 特開平07−140144(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0035216(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0252740(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形のパーセントを測定するための方法であって、
(a)試料を酸と接触させて、自己抗体と抗TNFα薬との予め形成された複合体を解離させるステップと、
(b)予め形成された複合体の解離後に試料を標識抗TNFα薬及び標識TNFαと接触させるステップと、
(c)試料中の酸を中和して、
(i)標識抗TNFα薬と自己抗体との第1標識複合体、及び/又は
(ii)標識抗TNFα薬と標識TNFαと自己抗体との第2標識複合体
を形成するステップと、
(d)第1標識複合体及び/又は第2標識複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、前記複合体を、遊離標識TNFα、遊離標識抗TNFα薬、及び/又は標識抗TNFα薬と標識TNFαとの複合体から分離するステップと、
(e)サイズ排除クロマトグラフィー後に試料中の遊離標識TNFαの曲線下面積(AUC)(試料の遊離標識TNFαAUCを測定するステップと、
(f)ステップ(e)において測定された遊離標識TNFαのAUCを、第1の対照試料中の遊離標識TNFαのAUC(第1の対照試料の遊離標識TNFαAUC)及び第2の対照試料中の遊離標識TNFαのAUC(第2の対照試料の遊離標識TNFαAUC、式:
[(試料の遊離標識TNFαAUC−第1の対照試料の遊離標識TNFαAUC)/第2の対照試料の遊離標識TNFαAUC]×100
を用いて比較することによって、自己抗体の中和形のパーセントを測定するステップであって、第1の対照試料は、標識TNFα及び標識抗TNFα薬が添加された正常ヒト血清である参照試料であり、第2の対照試料は、標識TNFαのみが添加された正常ヒト血清である参照試料である、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形のパーセントを測定するための方法であって、
(a)試料を標識抗TNFα薬及び標識TNFαと接触させて、
(i)標識抗TNFα薬と自己抗体との第1標識複合体、及び/又は
(ii)標識抗TNFα薬と標識TNFαと自己抗体との第2標識複合体
を形成するステップと、
(b)第1標識複合体及び/又は第2標識複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、前記複合体を、遊離標識TNFα、遊離標識抗TNFα薬、及び/又は標識抗TNFα薬と標識TNFαとの複合体から分離するステップと、
(c)サイズ排除クロマトグラフィー後に試料中の遊離標識TNFαの曲線下面積(AUC)(試料の遊離標識TNFαAUC)を測定するステップと、
(d)ステップ(c)において測定された遊離標識TNFαのAUCを、第1の対照試料中の遊離標識TNFαのAUC(第1の対照試料の遊離標識TNFαAUC)及び第2の対照試料中の遊離標識TNFαのAUC(第2の対照試料の遊離標識TNFαAUC)と、式:
[(試料の遊離標識TNFαAUC−第1の対照試料の遊離標識TNFαAUC)/第2の対照試料の遊離標識TNFαAUC]×100
を用いて比較することによって、自己抗体の中和形のパーセントを測定するステップであって、第1の対照試料は、標識TNFα及び標識抗TNFα薬が添加された正常ヒト血清である参照試料であり、第2の対照試料は、標識TNFαのみが添加された正常ヒト血清である参照試料である、ステップと、
を含む方法。
【請求項3】
抗TNFα薬は、レミケード(商標)(インフリキシマブ)、エンブレル(商標)(エタネルセプト)、ヒュミラ(商標)(アダリムマブ)、シムジア(登録商標)(セルトリズマブペゴール)、シンポニー(登録商標)(ゴリムマブ、CNTO148)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
抗TNFα薬に対する自己抗体は、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、ヒト抗マウス抗体(HAMA)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
試料が3.00%以上の自己抗体の中和形を有する場合に、試料は自己抗体の中和形について陽性である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
試料は血清である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
試料は、抗TNFα薬による治療を受けている対象からの試料である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
標識抗TNFα薬及び標識TNFαは異なる蛍光体又は蛍光色素を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形が第2抗TNFα薬と交差反応性であるかどうかを決定するための方法であって、
(a)試料中の自己抗体の中和形のパーセントを、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法を行うことにより測定し、測定された自己抗体の中和形のパーセントを、健常対照から確立されたカットオフ値又は基準範囲と比較するステップ
を含み、
自己抗体の中和形のパーセントが前記カットオフ値又は基準範囲以上であるならば、
(b)試料を標識第2抗TNFα薬と接触させて、標識第2抗TNFα薬と自己抗体の中和形との標識複合体を形成するステップと、
(c)標識複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して標識複合体を分離するステップと、
(d)標識複合体を検出し、それにより、第1抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形が第2抗TNFα薬と交差反応性であるかどうかを決定するステップと、
をさらに含む方法。
【請求項10】
第1及び第2抗TNFα薬は、レミケード(商標)(インフリキシマブ)、エンブレル(商標)(エタネルセプト)、ヒュミラ(商標)(アダリムマブ)、シムジア(登録商標)(セルトリズマブペゴール)、シンポニー(登録商標)(ゴリムマブ、CNTO148)、及びそれらの組み合わせからなる群より独立して選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第1抗TNFα薬に対する自己抗体は、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、ヒト抗マウス抗体(HAMA)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
標識複合体の存在が、第1抗TNFα薬に対する中和自己抗体が第2抗TNFα薬と交差反応性であることを示す、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
標識複合体の非存在が、第1抗TNFα薬に対する中和自己抗体が第2抗TNFα薬と交差反応性でないことを示す、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
試料は血清である、請求項9〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
試料は、抗TNFα薬による治療を受けている対象からの試料である、請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
標識第2抗TNFα薬は蛍光体又は蛍光色素を含む、請求項9〜15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、米国特許仮出願第61/505,031号(出願日:2011年7月6日)、米国特許仮出願第61/528,072号(出願日:2011年8月26日)及び米国特許仮出願第61/535,884号(出願日:2011年9月16日)についての優先権を主張するものである。これらの仮出願の開示内容は、ここで参照されることによってそのまま本明細書に組み入れられる。
【発明の背景】
【0002】
[0002]自己免疫障害は、重要で普及した医療的問題である。例えば、関節リウマチ(RA)は、米国において2百万を超える人が罹患している自己免疫疾患である。RAは関節の慢性的炎症であり、典型的には、関節破壊及び機能的障害を引き起こす可能性がある進行性の疾病である。関節リウマチの原因はわかっていないが、遺伝的素因、感染性因子及び環境因子のすべてがこの疾患の原因に関与している。活動性RAでは、症状は、疲労、食欲欠如、微熱、筋肉及び関節の疼痛及び硬直を含み得る。また、疾患再燃中に、関節は、滑膜の炎症により頻繁に赤くなり、肥大し、疼痛及び圧痛がある。さらに、RAは全身性疾患であるので、炎症は、目及び口の腺、肺粘膜、心膜並びに血管を含む、関節以外の体の器官及び領域に影響し得る。
【0003】
[0003]RA及び他の自己免疫障害の管理のための伝統的な治療は、迅速に作用する「第1選択薬物」及びより緩徐に作用する「第2選択薬物」を含む。第1選択薬物は疼痛及び炎症を低減する。そのような第1選択薬物の例としては、経口で与えられるか、又は組織及び関節に直接注射される、アスピリン、ナプロキセン、イブプロフェン、エトドラク及び他の非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID)並びに副腎皮質ステロイドが挙げられる。第2選択薬物は、疾患の寛解を促進し、進行性の関節破壊を阻止し、疾患修飾性抗リウマチ薬物又はDMARDとも呼ばれる。第2選択薬物の例としては、金、ヒドロクロロキン、アザルフィジン並びにメトトレキセート、アザチオプリン、シクロホスファミド、クロラムブシル、シクロスポリン等の免疫抑制剤が挙げられる。しかし、これらの薬物の多くは有害な副作用を有し得る。すなわち、関節リウマチ及び他の自己免疫障害のためのさらなる治療が求められている。
【0004】
[0004]腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)は、単球及びマクロファージを含む多数の細胞型により生成されるサイトカインであり、あるいくつかのマウス腫瘍の壊死を誘導する能力に基づいて最初に同定された。その後、悪液質に付随するカケクチンと呼ばれる因子が、TNF−αと同一であることが示された。TNF−αは、ショック、敗血症、感染症、自己免疫疾患、RA、クローン病、移植片拒絶及び移植片対宿主病を含む種々の他のヒト疾患及び障害の病態生理に関与している。
【0005】
[0005]種々のヒト障害におけるヒトTNF−α(hTNF−α)の有害な役割のために、hTNF−α活性を阻害又は該活性に対向するための治療的方策が設計されている。特に、hTNF−αと結合して中和する抗体が、hTNF−α活性を阻害するための手段として求められている。そのような抗体の最も初期のもののいくつかは、hTNF−αで免疫されたマウスのリンパ球から調製されたハイブリドーマにより分泌されるマウスモノクローナル抗体(mAb)であった(例えば、Moellerらに対する米国特許第5,231,024号を参照されたい)。これらのマウス抗hTNF−α抗体は、hTNF−αについての高い親和性をしばしば提示し、hTNF−α活性を中和できたが、in vivoでの該抗体の使用は、マウス抗体をヒトに投与することに伴う問題(例えば、短い血清半減期、あるいくつかのヒトエフェクター機能を誘引できないこと、及びヒトにおけるマウス抗体に対する望ましくない免疫応答の誘発(「ヒト抗マウス抗体」(HAMA)反応))により制限されている。
【0006】
[0006]より最近では、関節リウマチ等の自己免疫障害の治療に対して生物学的治療が用いられている。例えば、4つのTNFα阻害剤、すなわち、レミケード(REMICADE)(商標)(インフリキシマブ)、キメラ抗TNFαmAb、エンブレル(ENBREL)(商標)(エタネルセプト)、TNFR−Ig Fc融合タンパク質、ヒュミラ(HUMIRA)(商標)(アダリムマブ)、ヒト抗TNFαmAb及びシムジア(CIMZIA)(登録商標)(セルトリズマブペゴール)、PEG化Fab断片が、関節リウマチの治療のためにFDAにより承認されている。シムジア(登録商標)は、中等度から重度のクローン病(CD)の治療のためにも用いられている。そのような生物学的治療は、関節リウマチ及び他の自己免疫障害(例えばCD)の治療において成功することが実証されているが、治療されるすべての対象がそのような治療に対して応答又は良好に応答するわけではない。さらに、TNFα阻害剤の投与は、薬物に対する免疫応答を誘導し、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、ヒト抗マウス抗体(HAMA)等の自己抗体の生成をもたらし得る。そのようなHACA、HAHA又はHAMA免疫応答は、さらなる薬物治療を妨げる過敏性反応並びに免疫治療用TNFα阻害剤の薬物動態及び体内分布の劇的な変化と関連し得る。すなわち、当技術分野において、患者試料中の抗TNFα薬等の生物学的製剤に対する自己抗体の存在を検出して、生物学的治療をモニタリングし、治療法の決定の指針となるアッセイに対する必要性が存在する。本発明は、この必要性を満たし、関連する利点をもたらす。
【発明の概要】
【0007】
[0007]本発明は、試料中の抗TNFα薬等の生物製剤に対する中和及び非中和自己抗体の存在又はレベルを検出及び測定するためのアッセイを提供する。本発明は、対象が生物学的治療(例えば抗TNFα薬治療)を受けている間の中和及び/又は非中和抗薬物抗体の経時的な形成をモニタリングするのに有用である。また、本発明は、対象の試料中の中和抗薬物抗体の、代替生物学的治療(例えば代替抗TNFα治療)との交差反応性を予測及び/又は決定するのに有用である。すなわち、本発明は、生物学的製剤による治療を受けている対象のための治療法の決定の指針となる情報を提供し、治療の最適化、毒性の低減及び/又は治療薬の効力のモニタリングの正確性を改善する。
【0008】
[0008]一態様において、本発明は、試料中の生物製剤に対する自己抗体の中和形及び/又は非中和形の存在を検出するための方法であって、
(a)試料を標識生物製剤及び標識生物製剤結合部分と接触させて、
(i)標識生物製剤と自己抗体との第1標識複合体(すなわち免疫複合体又はコンジュゲート)(すなわち、ここで第1標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)、及び/又は
(ii)標識生物製剤と標識生物製剤結合部分と自己抗体との第2標識複合体(すなわち免疫複合体又はコンジュゲート)(すなわち、ここで第2標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)
を形成するステップと、
(b)第1標識複合体及び/又は第2標識複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、それらの複合体を、遊離(すなわち未結合)標識生物製剤結合部分、遊離標識生物製剤、及び/又は標識生物製剤と標識生物製剤結合部分との複合体から分離するステップと、
(c)サイズ排除クロマトグラフィー後に、(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)後の遊離標識生物製剤結合部分ピークの曲線下面積(AUC)を測定することによって)遊離標識生物製剤結合部分のレベルを測定するステップと、
(d)ステップ(c)において測定された遊離標識生物製剤結合部分のレベルを、(例えば、遊離標識生物製剤結合部分のみを含有する参照試料のSEC後の遊離標識生物製剤結合部分ピークのAUCを測定することによって)対照試料中の遊離標識生物製剤結合部分のレベルと比較し、それにより自己抗体の中和形及び/又は非中和形の存在を検出するステップと、
を含む方法を提供する。
【0009】
[0009]あるいくつかの実施形態において、自己抗体の中和形は、ステップ(c)において測定された遊離標識生物製剤結合部分のレベルが、対照試料中の遊離標識生物製剤結合部分のレベルと同じ又は実質的に同じである場合に検出される。あるいくつかの他の実施形態において、自己抗体の非中和形は、ステップ(c)において測定された遊離標識生物製剤結合部分のレベルが、対照試料中の遊離標識生物製剤結合部分のレベルと比較して減少しているか(例えば実質的に減少)又は存在しない(例えば検出不能)場合に検出される。
【0010】
[0010]別の態様において、本発明は、試料中の生物製剤に対する自己抗体の中和形のレベル又はパーセントを測定するための方法であって、
(a)試料を標識生物製剤及び標識生物製剤結合部分と接触させて、
(i)標識生物製剤と自己抗体との第1標識複合体(すなわち免疫複合体又はコンジュゲート)(すなわち、ここで第1標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)、及び/又は
(ii)標識生物製剤と標識生物製剤結合部分と自己抗体との第2標識複合体(すなわち免疫複合体又はコンジュゲート)(すなわち、ここで第2標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)
を形成するステップと、
(b)第1標識複合体及び/又は第2標識複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、それらの複合体を、遊離(すなわち未結合)標識生物製剤結合部分、遊離標識生物製剤、及び/又は標識生物製剤と標識生物製剤結合部分との複合体から分離するステップと、
(c)サイズ排除クロマトグラフィー後に、(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)後の遊離標識生物製剤結合部分ピークの曲線下面積(AUC)を測定することによって)遊離標識生物製剤結合部分のレベルを測定するステップと、
(d)ステップ(c)において測定された遊離標識生物製剤結合部分のレベルを、(例えば、遊離標識生物製剤結合部分のみを含有する参照試料のSEC後の遊離標識生物製剤結合部分ピークのAUCを測定及び標準化して、遊離標識生物製剤結合部分のレベル又はパーセントを算出することによって)対照試料中の遊離標識生物製剤結合部分の標準化されたレベル又はパーセントと比較するステップであって、対照試料中の遊離標識生物製剤結合部分の標準化されたレベル又はパーセントは自己抗体の中和形のレベル又はパーセントに対応するステップと、
を含む方法を提供する。
【0011】
[0011]いくつかの実施形態において、対照試料中の遊離標識生物製剤結合部分の標準化されたレベル又はパーセントと、ステップ(c)において測定された遊離標識生物製剤結合部分のレベルと、の差は自己抗体の非中和形のレベル又はパーセントに対応する。
【0012】
[0012]さらに別の実施形態において、本発明は、第1生物製剤に対する自己抗体の中和形が第2(すなわち異なる)生物製剤と交差反応性であるかどうかを決定するための方法であって、
(a)試料中の自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントを、本明細書に記載のアッセイに従って検出又は測定して、自己抗体の中和形について試料が陽性であるか陰性であるかを決定するステップ
を含み、
自己抗体の中和形について試料が陽性であるならば、
(b)試料を標識第2生物製剤と接触させて、標識第2生物製剤と自己抗体の中和形との標識複合体(すなわち、ここで標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)を形成するステップと、
(c)標識複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して標識複合体を(例えば遊離標識第2生物製剤から)分離するステップと、
(d)標識複合体を検出し、それにより、第1生物製剤に対する自己抗体の中和形が第2生物製剤と交差反応性であるかどうかを決定するステップと、
をさらに含む方法を提供する。
【0013】
[0013]あるいくつかの実施形態において、標識複合体の存在は、第1生物製剤に対する中和自己抗体が第2生物製剤と交差反応性であること、すなわち中和自己抗体が第1及び第2生物学的製剤の両方の活性を阻害することを示す。
【0014】
[0014]あるいくつかの他の実施形態において、標識複合体の非存在は、第1生物製剤に対する中和自己抗体が第2生物製剤と交差反応性でないこと、すなわち中和自己抗体が第2生物学的製剤の活性を阻害しないことを示す。
【0015】
[0015]いくつかの実施形態において、生物製剤は、抗体(例えば抗TNFαモノクローナル抗体)、抗体断片、タンパク質(例えば、インターロイキン等のサイトカイン)、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質、多価結合タンパク質、抗体−薬物コンジュゲート、ワクチン、核酸、糖、それらの組換え形、それらの工学改変形及びそれらの組み合わせを含む。
【0016】
[0016]他の実施形態において、試料は、例えば、生物学的治療を受けている対象からの全血、血清又は血漿試料である。好ましい実施形態において、試料は血清である。特定の実施形態において、対象は、疾患又は障害、例えば、自己免疫疾患(例えば関節リウマチ)、炎症性疾患(例えば、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)等の炎症性腸疾患(IBD))、又は癌を有する。
【0017】
[0017]あるいくつかの実施形態において、試料は、生物製剤に対する自己抗体を有するか、又はその疑いがある。他の実施形態において、生物製剤自己抗体は、それらに限定されないが、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)及びヒト抗マウス抗体(HAMA)並びにそれらの組み合わせを含む。
【0018】
[0018]あるいくつかの態様において、本発明のアッセイ方法は、試料を標識生物製剤及び標識生物製剤結合部分と接触させる前、接触中及び/又は接触させた後に試料を酸と接触させることを含む酸解離ステップをさらに含む。
【0019】
[0019]あるいくつかの他の態様において、本発明のアッセイ方法は、試料中の生物製剤に対する自己抗体の中和形及び/又は非中和形の1又は複数のアイソタイプの存在又はレベルを検出するステップを含む。
【0020】
[0020]特定の一態様において、本発明は、試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形及び/又は非中和形の存在を検出するための方法であって、
(a)試料を標識抗TNFα薬及び標識TNFαと接触させて、
(i)標識抗TNFα薬と自己抗体との第1標識複合体(すなわち免疫複合体又はコンジュゲート)(すなわち、ここで第1標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)、及び/又は
(ii)標識抗TNFα薬と標識TNFαと自己抗体との第2標識複合体(すなわち免疫複合体又はコンジュゲート)(すなわち、ここで第2標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)
を形成するステップと、
(b)第1標識複合体及び/又は第2標識複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、それらの複合体を、遊離(すなわち未結合)標識TNFα、遊離標識抗TNFα薬、及び/又は標識抗TNFα薬と標識TNFαとの複合体から分離するステップと、
(c)サイズ排除クロマトグラフィー後に、(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)後の遊離標識TNFαピークの曲線下面積(AUC)を測定することによって)遊離標識TNFαのレベルを測定するステップと、
(d)ステップ(c)において測定された遊離標識TNFαのレベルを、(例えば、遊離標識TNFαのみを含有する参照試料のSEC後の遊離標識TNFαピークのAUCを測定することによって)対照試料中の遊離標識TNFαのレベルと比較し、それにより自己抗体の中和形及び/又は非中和形の存在を検出するステップと、
を含む方法を提供する。
【0021】
[0021]あるいくつかの実施形態において、自己抗体の中和形は、ステップ(c)において測定された遊離標識TNFαのレベルが、対照試料中の遊離標識TNFαのレベルと同じ又は実質的に同じである場合に検出される。あるいくつかの他の実施形態において、自己抗体の非中和形は、ステップ(c)において測定された遊離標識TNFαのレベルが、対照試料中の遊離標識TNFαのレベルと比較して減少しているか(例えば実質的に減少)又は存在しない(例えば検出不能)場合に検出される。
【0022】
[0022]別の特定の態様において、本発明は、試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形のレベル又はパーセントを測定するための方法であって、
(a)試料を標識抗TNFα薬及び標識TNFαと接触させて、
(i)標識抗TNFα薬と自己抗体との第1標識複合体(すなわち免疫複合体又はコンジュゲート)(すなわち、ここで第1標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)、及び/又は
(ii)標識抗TNFα薬と標識TNFαと自己抗体との第2標識複合体(すなわち免疫複合体又はコンジュゲート)(すなわち、ここで第2標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)
を形成するステップと、
(b)第1標識複合体及び/又は第2標識複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、それらの複合体を、遊離(すなわち未結合)標識TNFα、遊離標識抗TNFα薬、及び/又は標識抗TNFα薬と標識TNFαとの複合体から分離するステップと、
(c)サイズ排除クロマトグラフィー後に、(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)後の遊離標識TNFαピークの曲線下面積(AUC)を測定することによって)遊離標識TNFαのレベルを測定するステップと、
(d)ステップ(c)において測定された遊離標識TNFαのレベルを、(例えば、遊離標識TNFαのみを含有する参照試料のSEC後の遊離標識TNFαピークのAUCを測定及び標準化して、遊離標識TNFαのレベル又はパーセントを算出することによって)対照試料中の遊離標識TNFαの標準化されたレベル又はパーセントと比較するステップであって、対照試料中の遊離標識TNFαの標準化されたレベル又はパーセントは自己抗体の中和形のレベル又はパーセントに対応するステップと、
を含む方法を提供する。
【0023】
[0023]いくつかの実施形態において、対照試料中の遊離標識TNFαの標準化されたレベル又はパーセントと、ステップ(c)において測定された遊離標識TNFαのレベルと、の差は自己抗体の非中和形のレベル又はパーセントに対応する。
【0024】
[0024]さらに別の特定の態様において、本発明は、第1抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形が第2(すなわち異なる)抗TNFα薬と交差反応性であるかどうかを決定するための方法であって、
(a)試料中の自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントを、本明細書に記載のアッセイに従って検出又は測定して、自己抗体の中和形について試料が陽性であるか陰性であるかを決定するステップ
を含み、
自己抗体の中和形について試料が陽性であるならば、
(b)試料を標識第2抗TNFα薬と接触させて、標識第2抗TNFα薬と自己抗体の中和形との標識複合体(すなわち、ここで標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)を形成するステップと、
(c)標識複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して標識複合体を(例えば遊離標識第2抗TNFα薬から)分離するステップと、
(d)標識複合体を検出し、それにより、第1抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形が第2抗TNFα薬と交差反応性であるかどうかを決定するステップと、
をさらに含む方法を提供する。
【0025】
[0025]あるいくつかの実施形態において、標識複合体の存在は、第1抗TNFα薬に対する中和自己抗体が第2抗TNFα薬と交差反応性であること、すなわち中和自己抗体が第1及び第2抗TNFα薬の両方の活性を阻害することを示す。
【0026】
[0026]あるいくつかの他の実施形態において、標識複合体の非存在は、第1抗TNFα薬に対する中和自己抗体が第2抗TNFα薬と交差反応性でないこと、すなわち中和自己抗体が第2抗TNFα薬の活性を阻害しないことを示す。
【0027】
[0027]いくつかの実施形態において、抗TNFα薬は、レミケード(商標)(インフリキシマブ)、エンブレル(商標)(エタネルセプト)、ヒュミラ(商標)(アダリムマブ)、シムジア(登録商標)(セルトリズマブペゴール)、シンポニー(SIMPONI)(登録商標)(ゴリムマブ、CNTO148)及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0028】
[0028]他の実施形態において、試料は、例えば、抗TNFα薬治療を受けている対象からの全血、血清又は血漿試料である。好ましい実施形態において、試料は血清である。特定の実施形態において、対象は、TNFα媒介疾患又は障害、例えば、自己免疫疾患(例えば関節リウマチ)又は炎症性疾患(例えば、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)等の炎症性腸疾患(IBD))を有する。
【0029】
[0029]あるいくつかの実施形態において、試料は、抗TNFα薬に対する自己抗体を有するか、又はその疑いがある。他の実施形態において、抗TNFα薬自己抗体は、それらに限定されないが、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)及びヒト抗マウス抗体(HAMA)並びにそれらの組み合わせを含む。
【0030】
[0030]あるいくつかの態様において、本発明のアッセイ方法は、試料を標識抗TNFα薬及び標識TNFαと接触させる前、接触中及び/又は接触させた後に試料を酸と接触させることを含む酸解離ステップをさらに含む。
【0031】
[0031]あるいくつかの他の態様において、本発明のアッセイ方法は、試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形及び/又は非中和形の1又は複数のアイソタイプの存在又はレベルを検出するステップを含む。
【0032】
[0032]さらなる態様において、本発明は、生物製剤による治療コースを受けている対象における治療のモニタリング及び/又は前記生物製剤への治療の最適化を行うための方法であって、
(a)生物製剤に対する自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントを、本明細書に記載のアッセイに従って治療コース中の複数の時点で検出又は測定するステップと、
(b)自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントの経時的な変化を検出するステップと、
(c)対象についての治療コースの後続の用量、又は異なる治療コースを対象に対して実施するべきかを、自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントの経時的な変化に基づいて決定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0033】
[0033]特定の一態様において、本発明は、生物製剤による治療コースを受けている対象における治療のモニタリング及び/又は前記生物製剤への治療の最適化を行うための方法であって、
(a)対象からの第1試料中の生物製剤に対する自己抗体の中和形のレベル又はパーセントを本明細書に記載のようにして時点tで測定するステップと、
(b)対象からの第2試料中の自己抗体の中和形のレベル又はパーセントを本明細書に記載のようにして時点tで測定するステップと、
(c)対象からのnのさらなる試料を用いて時点tn+1(ここで、nは、1〜約25の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24若しくは25又はその中の任意の範囲)である。)でステップ(b)を任意選択で反復するステップと、
(d)時点tからtまで又は時点tからtn+1までの自己抗体の中和形のレベル又はパーセントの変化を検出するステップと、
(e)対象についての治療コースの後続の用量、又は異なる治療コースを対象に対して実施するべきかを、自己抗体の中和形のレベル又はパーセントの経時的な変化に基づいて決定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0034】
[0034]さらなる態様において、本発明は、第1生物製剤による治療コースを受けている対象における治療の最適化及び/又は毒性の低減のための方法であって、
(a)対象からの試料中の自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントを本明細書に記載のアッセイに従って検出又は測定することによって、第1生物製剤に対する自己抗体の中和形が第2(すなわち異なる)生物製剤と交差反応性であるかどうかを決定するステップと、
(b)自己抗体の中和形が第2生物製剤と交差反応性であるならば、異なる治療コースを対象に対して実施するべきと決定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0035】
[0035]特定の一態様において、本発明は、抗TNFα薬による治療コースを受けている対象における治療のモニタリング及び/又は前記抗TNFα薬への治療の最適化を行うための方法であって、
(a)抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントを、本明細書に記載のアッセイに従って治療コース中の複数の時点で検出又は測定するステップと、
(b)自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントの経時的な変化を検出するステップと、
(c)対象についての治療コースの後続の用量、又は異なる治療コースを対象に対して実施するべきかを、自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントの経時的な変化に基づいて決定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0036】
[0036]別の特定の態様において、本発明は、抗TNFα薬による治療コースを受けている対象における治療のモニタリング及び/又は前記抗TNFα薬への治療の最適化を行うための方法であって、
(a)対象からの第1試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形のレベル又はパーセントを本明細書に記載のようにして時点tで測定するステップと、
(b)対象からの第2試料中の自己抗体の中和形のレベル又はパーセントを本明細書に記載のようにして時点tで測定するステップと、
(c)対象からのnのさらなる試料を用いて時点tn+1(ここで、nは、1〜約25の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24若しくは25又はその中の任意の範囲)である。)でステップ(b)を任意選択で反復するステップと、
(d)時点tからtまで又は時点tからtn+1までの自己抗体の中和形のレベル又はパーセントの変化を検出するステップと、
(e)対象についての治療コースの後続の用量、又は異なる治療コースを対象に対して実施するべきかを、自己抗体の中和形のレベル又はパーセントの経時的な変化に基づいて決定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0037】
[0037]さらに別の特定の態様において、本発明は、第1抗TNFα薬による治療コースを受けている対象における治療の最適化及び/又は毒性の低減のための方法であって、
(a)対象からの試料中の自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントを本明細書に記載のアッセイに従って検出又は測定することによって、第1抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形が第2(すなわち異なる)抗TNFα薬と交差反応性であるかどうかを決定するステップと、
(b)自己抗体の中和形が第2抗TNFα薬と交差反応性であるならば、異なる治療コースを対象に対して実施するべきと決定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0038】
[0038]本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】NAbパーセント(y軸)とATIレベルとの間に明らかな関係があったことを示す。
図2】≧60U/mlのATI濃度がNAb+を予測できることを示す。
図3】0.931のROC AUCでATIがNAbを予測することを示す。
図4】本発明の流体相移動度シフトアッセイによるATIの検出を示す。
図5】本発明の例示的なATI/IFX流体相移動度シフトアッセイを示す。
図6】本発明の非中和抗薬物抗体(ADA)アッセイを示す。
図7】本発明の中和ADAアッセイを示す。
図8】1、2又は3ヶ月の期間を置いて採取したUC患者からの5つの試料の経時的なIFX及びATIのレベルを示す。
図9】UC患者における遊離TNFαの経時的なパーセンテージを決定するためのピーク分析を示す。
図10】2又は3ヶ月の期間を置いて採取し、IFXを添加したUC患者からの3つの試料中で例示される、非中和自己抗体の存在から中和自己抗体の存在への経時的なシフトを示す。
図11】IFXを添加したUC患者からの試料中の遊離TNFαの経時的なパーセンテージを決定するためのピーク分析を示す。
図12】非中和抗体(Ab)対照としてのウサギ抗ヒトIgG1 Fcの使用を示す。
図13】中和抗体(NAb)/非中和抗体(Ab)混合対照としてのATI陽性血清の使用を示す。
図14】ATI陽性血清からのATIの精製が弱親和性NAbの喪失をもたらすことを示す。
図15】種々の対照中の遊離TNFαのパーセンテージを決定するための、UC患者症例研究からのピーク分析を示す。
図16】30週間の期間中に7又は8週間の期間を置いて採取した4つの試料の経時的な遊離TNFαのパーセンテージを決定するための、CD患者症例研究からのピーク分析を示す。
図17】50週間の期間中に採取した3つの試料の経時的な遊離TNFαのパーセンテージを決定するための、別のCD患者症例研究からのピーク分析を示す。
図18】治療の導入若しくは維持中又は導入若しくは維持後の特定の週の試料中の遊離TNFαのパーセンテージを決定するための、4つのさらなるCD患者症例研究からのピーク分析を示す。
図19】移動度シフトアッセイによる非中和抗体活性の検出を示す。
図20】IFX及びADLの両方に対するADAの交差反応性を示す。ここで、ADAの結合部位はTNFαの結合部位を模倣しており、そのため複数の抗TNF薬と結合できる。
図21】2つの患者の例(患者1及び2)を示す。これらの例では、ある抗TNF薬に応答して生成されたNAbの交差反応性を他の抗TNF薬について決定した。具体的には、患者がレミケード(IFX)を受けている場合に発生したNAbをヒュミラ(ADL)に対して試験した。
図22】IFX、ADL等の薬物に対する非中和抗体(非NAb)(上)又は中和抗体(NAb)(下)の存在を検出するための本発明のアッセイの例示的な実施形態を示す。
図23】NAb標準曲線の作製及び使用を示す。
図24】IFXに対して生じたNAbのADLに対する交差反応性を決定するための、IFXで治療されたがIFXに対する応答を喪失した患者3についての症例研究の結果を示す。
図25】IFXに対して生じたNAbのADLに対する交差反応性を決定するための、IFXで治療されたがIFXに対する応答を喪失した患者4についての症例研究の結果を示す。
図26】ATI親和性成熟及び交差反応性ATIの発生を実証する患者研究の非限定的な例を示す。
【発明の詳細な説明】
【0040】
I.イントロダクション
[0065]本発明は、サイズ排除クロマトグラフィーと、任意選択で、免疫複合体の平衡化を可能にする酸解離と、を用いる均質移動度シフトアッセイが、抗TNFα薬等の生物製剤に対して生じる自己抗体の中和形及び非中和形(例えば、HACA、HAHA)の存在又はレベルを測定するために特に有利であることを見出したことに一部基づく。そのような自己抗体は抗薬物抗体又はADAとしても知られ、それらの中和形及び非中和形はそれぞれNAb及び非NAbとしても知られる。
【0041】
[0066]特定の実施形態において、本発明の均質移動度シフトアッセイは、対象の試料を(例えば蛍光)標識生物製剤(例えば抗TNFα薬)及び(例えば蛍光)標識生物製剤結合部分(例えばTNFα)と接触させることによって行われる。本明細書に記載のアッセイは、少なくとも次の理由により有利である。該アッセイは、低親和性ADAを除去する洗浄ステップの必要性を除去する;該アッセイは、バックグラウンド及び血清干渉の問題を低減する、可視、IR及び/又は近IR(NIR)スペクトルでの検出を可能にする特異的な標識(例えば蛍光体)を使用する;該アッセイは、蛍光標識検出の感度が高く、対象での低力価の中和及び/又は非中和ADAを検出する能力を増加させる;該アッセイは、液相反応として生じ、そのため、固体表面(例えばELISAプレート)への結合によるエピトープのどのような変化の可能性も低減する。
【0042】
[0067]例示的な実施形態において、本発明のアッセイは、異なる時点での複数の試料中の中和及び/又は非中和抗薬物抗体の形成をモニタリングするための、抗TNFα薬治療を受けているIBD対象の経時的症例研究を可能にする点で有利である。また、本発明のアッセイは、対象が抗TNFα薬治療を受けている間に経時的に非中和抗薬物抗体から中和抗薬物抗体へのシフトがあるかを決定できる点で有利である。いずれの特定の理論にも束縛されるものではないが、中和抗薬物抗体は、抗TNFα薬とTNFαとの間の結合を阻害し、それにより効力の喪失を誘導することから、著しい負の臨床結果をもたらし得る。
【0043】
[0068]さらなる例示的な実施形態において、本発明のアッセイは、対象の試料中の中和抗薬物抗体の、他の抗TNF薬等の代替生物学的製剤との交差反応性の予測及び/又は決定において利用できる。単純化して言うと、試料がある抗TNFα薬に対する中和ADAを含有するならば、これらの中和ADAは、他の抗TNFα薬と交差反応性で、かつ該薬物を中和する可能性があり、そのため、該対象に関しては、異なる作用機序を有する薬物(例えば非抗TNF薬)に切り替えるように治療法を調整することが推奨される。しかし、試料が、ある抗TNFα薬に対する非中和ADAを含有するならば、該対象に関しては、別の抗TNFα薬に切り替えるように治療法を調整することが推奨される。
【0044】
[0069]すなわち、本発明は、抗TNFα薬治療を受けている対象についての治療法の決定の指針とするのに有用な情報を提供することによって、抗TNFα薬(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ)の投与に付随する現在の限界に一部対処し、かつ該限界を克服する。本発明の方法は、抗TNFα薬を受けている対象をモニタリングして、(例えば、抗TNFα薬治療コース中に経時的に)中和ADAの形成及び/又は発生を検出又は測定するのに特に有用であり、また、対象が抗TNFα薬治療を受けている間の経時的な、非中和ADAと比較した中和ADAの量、パーセント又は比率の変化(例えば増加)を検出又は測定するのに有用である。
【0045】
[0070]すなわち、本発明は、いつ及び/又はどのように(1)中和ADAの存在、レベル若しくはパーセントを考慮して抗TNFα薬の後続の用量を調整若しくは改変(例えば増加又は減少)し、治療効力を最適化及び/又は毒性を低減するか、(2)中和ADAの存在、レベル若しくはパーセントを考慮して(例えば、初期、増加、減少又は同じ用量で)抗TNFα薬を1若しくは複数の免疫抑制剤(例えば、メトトレキセート(MTX)、アザチオプリン(AZA))と組み合わせるか、及び/又は(3)中和ADAの存在、レベル若しくはパーセントを考慮して現在の治療コースを変更する(例えば、異なる抗TNFα薬又は異なる機序を標的にする薬物に切り替える)か、を決定するための方法を提供する。そのような方法は、抗TNFα薬を受けている対象が正しい用量を受けていること、該対象が薬物に対する免疫応答を発生しないこと、及び該対象が初期薬物の失敗(例えば、初期抗TNFα薬に対する交差反応性中和ADAの発生)により異なる薬物に切り替えるべきであることを確実にするのに有用である。
【0046】
II.定義
[0071]本明細書において、以下の用語は、特に断らない限り、それらの用語に割り当てられた意味を有する。
【0047】
[0072]用語「生物製剤」(biologic)又は「生物学的製剤」(biologic agent, biological drug)は、本明細書において、生物系(例えば生体)から生成又は抽出された生成物及び物質を包含する。生物製剤の非限定的な例としては、抗体、抗体断片、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質(例えばIg融合タンパク質又はFc融合タンパク質)、多価結合タンパク質(例えばDVD Ig)、抗体−薬物コンジュゲート、ワクチン、核酸、糖、それらの組換え形、それらの工学改変形及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0048】
[0073]用語「生物製剤結合部分」は、生物製剤と(例えば特異的に)結合又は相互作用する任意の分子、薬剤又は物質を含む。あるいくつかの場合において、自己抗体の中和形は生物製剤結合部分と生物製剤との間の結合を阻害する。あるいくつかの他の場合において、自己抗体の非中和形は生物製剤結合部分と生物製剤との間の結合を阻害しない。非限定的な一例として、生物製剤が抗TNFα薬を含む場合に、生物製剤結合部分はTNFαを含む。別の非限定的な例として、生物製剤がインターロイキン(例えばIL−2)を含む場合に、生物製剤結合部分はインターロイキン受容体(例えば、インターロイキン受容体の可溶性細胞外断片)を含む。
【0049】
[0074]用語「抗TNFα薬」又は「TNFα阻害剤」は、本明細書において、タンパク質、抗体、抗体断片、融合タンパク質(例えばIg融合タンパク質又はFc融合タンパク質)、多価結合タンパク質(例えばDVD Ig)、小分子TNFαアンタゴニスト及び同様の天然若しくは非天然に存在する分子、及び/又は、例えば、TNFαとTNFαの細胞表面受容体との相互作用を阻害すること、TNFαタンパク質生成を阻害すること、TNFα遺伝子発現を阻害すること、細胞からのTNFαの分泌を阻害すること、TNFα受容体シグナル伝達を阻害すること若しくは対象におけるTNFα活性の減少をもたらす任意のその他の手段により、TNFα活性を直接若しくは間接的に阻害するその組換え及び/又は工学改変形を含む物質を包含することを意図する。用語「抗TNFα薬」又は「TNFα阻害剤」は、TNFα活性を阻害する物質を含むことが好ましい。抗TNFα薬の例としては、限定することなく、インフリキシマブ(レミケード(商標)、Johnson and Johnson)、ヒト抗TNFモノクローナル抗体アダリムマブ(D2E7/ヒュミラ(商標)、Abbott Laboratories)、エタネルセプト(エンブレル(商標)、Amgen)、セルトリズマブペゴール(シムジア(登録商標)、UCB,Inc.)、ゴリムマブ(シンポニー(登録商標)、CNTO148)、CDP571(Celltech)、CDP870(Celltech)、並びにTNFα活性を阻害して、TNFα活性が有害な障害(例えばRA)に罹患しているか又は罹患するリスクのある対象に投与された場合に該障害を治療する他の化合物が挙げられる。
【0050】
[0075]用語「TNFα」は、17kDaの分泌形及び26kDaの膜結合形で存在し、生物活性形は非共有結合した17kDa分子の3量体で構成されるヒトサイトカインを含むことを意図する。TNFαの構造は、例えばJonesら、Nature、338:225〜228頁(1989)にさらに記載されている。用語TNFαは、ヒトTNFα、組換えヒトTNFα(rhTNF−α)又はヒトTNFαタンパク質と少なくとも約80%同一であるTNFαを含むことを意図する。ヒトTNFαは、35アミノ酸(aa)の細胞質ドメイン、21aaの膜貫通セグメント及び177aaの細胞外ドメイン(ECD)からなる(Pennica,D.ら(1984)Nature 312:724頁)。ECD内で、ヒトTNFαは、アカゲザルTNFαと97%のaa配列同一性、及びウシ、イヌ、コットンラット、ウマ、ネコ、マウス、ブタ及びラットTNFαと71%〜92%のaa配列同一性を有する。TNFαは、標準的な組換え発現方法により調製できるか、又は商業的に購入できる(R&D Systems、カタログNo.210−TA、Minneapolis、Minn.)。
【0051】
[0076]あるいくつかの実施形態において、「TNFα」は、抗TNFα薬が結合できる分子又は分子の一部を含む「抗原」である。TNFαは、1又は1より多いエピトープを有することができる。あるいくつかの場合において、TNFαは、高度に選択的な様式で抗TNFα抗体と反応する。抗体、断片及び抗TNFα抗体の領域と結合する好ましい抗原は、ヒトTNFαの少なくとも5アミノ酸を含む。あるいくつかの場合において、TNFαは、抗TNFα抗体、断片及びその領域と結合できるTNFαのエピトープを有する十分な長さである。
【0052】
[0077]用語「サイズ排除クロマトグラフィー」又は「SEC」は、溶液中の分子が、サイズ及び/又は流体力学的容積に基づいて分離されるクロマトグラフィーの方法を含む。サイズ排除クロマトグラフィーは、大分子又は巨大分子複合体(例えば、タンパク質又はそれらのコンジュゲート)に用いられる。典型的には、カラムを通して試料を輸送するために水性溶液を用いる場合、この技術はゲルろ過クロマトグラフィーとして知られる。
【0053】
[0078]用語「複合体」、「免疫複合体」、「コンジュゲート」及び「イムノコンジュゲート」は、それらに限定されないが、抗TNFα薬と(例えば非共有的手段により)結合したTNFα、抗TNFα薬に対する自己抗体(例えば中和又は非中和抗薬物抗体)と(例えば非共有的手段により)結合した抗TNFα薬、並びにTNFα及び抗TNFα薬に対する自己抗体(例えば中和又は非中和抗薬物抗体)の両方と(例えば非共有的手段により)結合した抗TNFα薬を含む。
【0054】
[0079]本明細書において、用語「標識」で修飾された物体は、実験的に検出可能な別の分子又は化学物体とコンジュゲートした任意の物体、分子、タンパク質、酵素、抗体、抗体断片、サイトカイン又は関連する種を含む。標識物体のための標識として適切な化学種は、それらに限定されないが、蛍光色素(例えば、アレクサフロール(Alexa Fluor)(登録商標)647等のアレクサフロール(登録商標)色素)、量子ドット、光学色素、発光色素、及び放射性核種(例えば125I)を含む。
【0055】
[0080]「蛍光標識検出」というフレーズは、蛍光標識を検出するための手段を含む。検出のための手段は、それらに限定されないが、分光計、蛍光計、光度計、及びクロマトグラフィー機器(例えばサイズ排除−高性能液体クロマトグラフィー)と一般的に組み合わせられた検出装置(例えばAgilent−1200 HPLCシステム)を含む。
【0056】
[0081]「治療を最適化する」というフレーズは、特定の治療の用量(例えば有効量又はレベル)及び/又は種類を最適化することを含む。例えば、抗TNFα薬の用量を最適化することは、対象に続いて投与される抗TNFα薬の量を増加又は減少することを含む。あるいくつかの場合において、抗TNFα薬の種類を最適化することは、投与される抗TNFα薬を、ある薬物から異なる薬物(例えば異なる抗TNFα薬又は異なる機序を標的にする薬物)に変更することを含む。他の場合において、治療を最適化することは、ある用量の抗TNFα薬(例えば以前の用量から増加、減少したか又は以前の用量と同じ用量)を1又は複数の免疫抑制薬と組み合わせて共投与することを含む。
【0057】
[0082]用語「共投与」は、1より多い活性薬剤を投与して、ある活性薬剤の生理的効果の持続期間が第2活性薬剤の生理的効果とオーバーラップするようにすることを含む。
【0058】
[0083]用語「対象」又は「患者」又は「個体」は、典型的にはヒトが挙げられるが、その他の動物(例えば、他の霊長類、げっ歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタ)であってもよい。
【0059】
[0084]用語「治療コース」は、疾患又は障害に付随する1又は複数の症状を和らげるか又は予防するために採用される任意の治療アプローチを含む。該用語は、疾患又は障害を有する個体の健康を改善するのに有用な任意の化合物、薬物、手順及び/又は計画を投与又は実施することを包含し、本明細書に記載の任意の治療薬を含む。非限定的な例として、治療コース又は現在の治療コースの用量は、TNFα、抗TNFα薬及び/又は抗薬物抗体の存在又は濃度レベル(例えば、本発明の方法を用いて決定された中和及び/又は非中和抗薬物抗体の存在、レベル又はパーセント)に基づいて変更(例えば増加又は減少)できる。
【0060】
[0085]用語「免疫抑制薬」又は「免疫抑制剤」は、免疫抑制効果(例えば、免疫応答の阻止又は減退)を、照射により又は薬物(例えば、代謝拮抗薬、抗リンパ球血清、抗体)の投与により生じさせることができる任意の物質を含む。免疫抑制薬の例としては、限定することなく、チオプリン系薬剤(例えば、アザチオプリン(AZA)及びその代謝産物);代謝拮抗薬(例えばメトトレキセート(MTX));シロリムス(ラパマイシン);テムシロリムス;エベロリムス;タクロリムス(FK−506);FK−778;抗リンパ球グロブリン抗体、抗胸腺細胞グロブリン抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体及び抗体−毒素コンジュゲート;シクロスポリン;ミコフェノール酸塩;ミゾリビン一リン酸;スコパロン;酢酸グラチラマー;それらの代謝産物;それらの薬学的に許容される塩;それらの誘導体;それらのプロドラッグ;並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0061】
[0086]用語「チオプリン系薬剤」は、アザチオプリン(AZA)、6−メルカプトプリン(6−MP)又は治療効力を有するそれらの任意の代謝産物を含み、限定することなく、6−チオグアニン(6−TG)、6−メチルメルカプトプリンリボシド、6−チオイノシンヌクレオチド(例えば6−チオイノシン一リン酸、6−チオイノシン二リン酸、6−チオイノシン三リン酸)、6−チオグアニンヌクレオチド(例えば6−チオグアノシン一リン酸、6−チオグアノシン二リン酸、6−チオグアノシン三リン酸)、6−チオキサントシンヌクレオチド(例えば6−チオキサントシン一リン酸、6−チオキサントシン二リン酸、6−チオキサントシン三リン酸)、それらの誘導体、それらの類似体及びそれらの組み合わせを含む。
【0062】
[0087]用語「試料」は、個体から得られた任意の生物学的検体を含む。試料は、限定することなく、全血、血漿、血清、赤血球、白血球(例えば末梢血単核細胞(PBMC)、多形核(PMN)細胞)、管洗浄液、乳頭吸引液、リンパ液(例えばリンパ節の播種性腫瘍細胞)、骨髄吸引液、唾液、尿、大便(すなわち糞便)、痰、気管支洗浄液、涙、穿刺吸引液(例えば無作為乳輪周囲穿刺吸引により採集された)、任意の他の体液、組織試料、例えば炎症部位の生検(例えば針生検)、それらの細胞抽出物、及びこれらの体液若しくは組織の1又は複数に由来する免疫グロブリン濃縮画分を含む。いくつかの実施形態において、試料は、全血、その分画構成要素(例えば、血漿、血清、細胞ペレット)、又はその免疫グロブリン濃縮画分である。当業者であれば、試料(例えば血清試料)を分析前に希釈できることを理解するであろう。あるいくつかの実施形態において、試料は、当技術分野において知られる任意の技術を用いてPBMC及び/又はPMN細胞を単離することによって得られる。あるいくつかの他の実施形態において、試料は、例えば炎症部位(例えば、胃腸管又は滑膜組織の一部)からの組織生検である。
【0063】
[0088]本発明の方法のステップは、それが記載された特定の順序で行われる必要はない。当業者であれば、本発明の方法のステップの他の順序が本発明の範囲内に包含されることを理解するであろう。
【0064】
[0089]括弧[ ]は、括弧内の種がその濃度により言及されることを示す。
【0065】
III.実施形態の説明
[0090]本発明は、試料中の抗TNFα薬等の生物製剤に対する中和及び非中和自己抗体の存在又はレベルを検出及び測定するためのアッセイを提供する。本発明は、対象が生物学的治療(例えば抗TNFα薬治療)を受けている間の中和及び/又は非中和抗薬物抗体の経時的な形成をモニタリングするのに有用である。また、本発明は、対象の試料中の中和抗薬物抗体の、代替生物学的治療(例えば代替抗TNFα治療)との交差反応性を予測及び/又は決定するのに有用である。すなわち、本発明は、生物学的製剤による治療を受けている対象についての治療法の決定の指針となる情報を提供し、治療を最適化すること、毒性を低減すること及び/又は治療薬の効力をモニタリングすることの正確性を改善する。
【0066】
[0091]一態様において、本発明は、試料中の生物製剤に対する自己抗体の中和形及び/又は非中和形の存在を検出するための方法であって、
(a)試料を標識生物製剤及び標識生物製剤結合部分と接触させて、
(i)標識生物製剤と自己抗体との第1標識複合体(すなわち免疫複合体又はコンジュゲート)(すなわち、ここで第1標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)、及び/又は
(ii)標識生物製剤と標識生物製剤結合部分と自己抗体との第2標識複合体(すなわち免疫複合体又はコンジュゲート)(すなわち、ここで第2標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)
を形成するステップと、
(b)第1標識複合体及び/又は第2標識複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、それらの複合体を、遊離(すなわち未結合)標識生物製剤結合部分、遊離標識生物製剤、及び/又は標識生物製剤と標識生物製剤結合部分との複合体から分離するステップと、
(c)サイズ排除クロマトグラフィー後に、(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)後の遊離標識生物製剤結合部分ピークの曲線下面積(AUC)を測定することによって)遊離標識生物製剤結合部分のレベルを測定するステップと、
(d)ステップ(c)において測定された遊離標識生物製剤結合部分のレベルを、(例えば、遊離標識生物製剤結合部分のみを含有する参照試料のSEC後の遊離標識生物製剤結合部分ピークのAUCを測定することによって)対照試料中の遊離標識生物製剤結合部分のレベルと比較し、それにより自己抗体の中和形及び/又は非中和形の存在を検出するステップと、
を含む方法を提供する。
【0067】
[0092]いくつかの実施形態において、自己抗体の中和形は生物製剤と生物製剤結合部分との間の結合を阻害する。他の実施形態において、自己抗体の非中和形は生物製剤と生物製剤結合部分との間の結合を阻害しない。
【0068】
[0093]いくつかの場合において、遊離標識生物製剤結合部分は、結合している生物製剤(例えば標識及び/又は未標識生物製剤)が実質的にない標識生物製剤結合部分からなる。
【0069】
[0094]あるいくつかの実施形態において、自己抗体の中和形は、ステップ(c)において測定された遊離標識生物製剤結合部分のレベルが、対照試料中の遊離標識生物製剤結合部分のレベルと同じ又は実質的に同じである場合に検出される。あるいくつかの他の実施形態において、自己抗体の非中和形は、ステップ(c)において測定された遊離標識生物製剤結合部分のレベルが、対照試料中の遊離標識生物製剤結合部分のレベルと比較して減少しているか(例えば実質的に減少)又は存在しない(例えば検出不能)場合に検出される。
【0070】
[0095]特定の実施形態において、ステップ(c)において測定された遊離標識生物製剤結合部分のレベルは、該レベルが対照試料中で測定された遊離標識生物製剤結合部分のレベルの少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%である場合に、対照試料中の遊離標識生物製剤結合部分のレベルと実質的に同じであるとみなされる。特定の実施形態において、ステップ(c)において測定された遊離標識生物製剤結合部分のレベルは、該レベルが対照試料中で測定された遊離標識生物製剤結合部分のレベルの少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%未満である場合に、対照試料中の遊離標識生物製剤結合部分のレベルと比較して実質的に減少しているとみなされる。
【0071】
[0096]いくつかの実施形態において、遊離標識生物製剤結合部分のレベルは、サイズ排除クロマトグラフィー(例えばSEC−HPLC)からの溶出時間の関数としてのシグナル強度のプロットからの遊離標識生物製剤結合部分ピークの曲線下面積(AUC)を積分することによって測定される。
【0072】
[0097]いくつかの実施形態において、生物製剤は、抗体(例えば抗TNFαモノクローナル抗体)、抗体断片、タンパク質(例えば、インターロイキン等のサイトカイン)、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質、多価結合タンパク質、抗体−薬物コンジュゲート、ワクチン、核酸、糖、それらの組換え形、それらの工学改変形及びそれらの組み合わせを含む。
【0073】
[0098]他の実施形態において、試料は、例えば、生物学的治療を受けている対象からの全血、血清又は血漿試料である。好ましい実施形態において、試料は血清である。特定の実施形態において、対象は、疾患又は障害、例えば、自己免疫疾患(例えば関節リウマチ)、炎症性疾患(例えば、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)等の炎症性腸疾患(IBD))、又は癌を有する。
【0074】
[0099]あるいくつかの実施形態において、試料は、生物製剤に対する自己抗体を有するか、又はその疑いがある。他の実施形態において、生物製剤自己抗体は、それらに限定されないが、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)及びヒト抗マウス抗体(HAMA)並びにそれらの組み合わせを含む。
【0075】
[0100]別の態様において、本発明は、試料中の生物製剤に対する自己抗体の中和形のレベル又はパーセントを測定するための方法であって、
(a)試料を標識生物製剤及び標識生物製剤結合部分と接触させて、
(i)標識生物製剤と自己抗体との第1標識複合体(すなわち免疫複合体又はコンジュゲート)(すなわち、ここで第1標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)、及び/又は
(ii)標識生物製剤と標識生物製剤結合部分と自己抗体との第2標識複合体(すなわち免疫複合体又はコンジュゲート)(すなわち、ここで第2標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)
を形成するステップと、
(b)第1標識複合体及び/又は第2標識複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、それらの複合体を、遊離(すなわち未結合)標識生物製剤結合部分、遊離標識生物製剤、及び/又は標識生物製剤と標識生物製剤結合部分との複合体から分離するステップと、
(c)サイズ排除クロマトグラフィー後に、(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)後の遊離標識生物製剤結合部分ピークの曲線下面積(AUC)を測定することによって)遊離標識生物製剤結合部分のレベルを測定するステップと、
(d)ステップ(c)において測定された遊離標識生物製剤結合部分のレベルを、(例えば、遊離標識生物製剤結合部分のみを含有する参照試料のSEC後の遊離標識生物製剤結合部分ピークのAUCを測定及び標準化して、遊離標識生物製剤結合部分のレベル又はパーセントを算出することによって)対照試料中の遊離標識生物製剤結合部分の標準化されたレベル又はパーセントと比較するステップであって、対照試料中の遊離標識生物製剤結合部分の標準化されたレベル又はパーセントは自己抗体の中和形のレベル又はパーセントに対応するステップと、
を含む方法を提供する。
【0076】
[0101]いくつかの実施形態において、対照試料中の遊離標識生物製剤結合部分の標準化されたレベル又はパーセントと、ステップ(c)において測定された遊離標識生物製剤結合部分のレベルと、の差は自己抗体の非中和形のレベル又はパーセントに対応する。
【0077】
[0102]いくつかの場合において、遊離標識生物製剤結合部分は、結合している生物製剤(例えば標識及び/又は未標識生物製剤)が実質的にない標識生物製剤結合部分からなる。
【0078】
[0103]特定の実施形態において、対照試料中の遊離標識生物製剤結合部分のレベル又はパーセントは、標識生物製剤と標識生物製剤結合部分との間で形成された複合体(例えば「標識複合体」)のピーク面積を(例えば、AUCを測定することによって)測定し、次いで、標識複合体の測定されたピーク面積を、(例えば、遊離標識生物製剤結合部分ピークのAUCを測定することによって得られた)遊離標識生物製剤結合部分のピーク面積から差し引くことによって標準化する。
【0079】
[0104]あるいくつかの実施形態において、遊離標識生物製剤結合部分のレベルは、サイズ排除クロマトグラフィー(例えばSEC−HPLC)からの溶出時間の関数としてのシグナル強度のプロットからの遊離標識生物製剤結合部分ピークの曲線下面積(AUC)を積分することによって測定される。他の実施形態において、標識生物製剤と標識生物製剤結合部分との間で形成された複合体のレベルは、サイズ排除クロマトグラフィー(例えばSEC−HPLC)からの溶出時間の関数としてのシグナル強度のプロットからの遊離標識生物製剤結合部分ピークのAUCを積分することによって測定される。
【0080】
[0105]あるいくつかの実施形態において、生物製剤に対する自己抗体(例えばADA)の部分集団は自己抗体の中和形(例えばNAb)である。いくつかの実施形態において、試料中の生物製剤に対する自己抗体の総レベルは、本発明の方法に従って測定された中和形及び非中和形の両方の自己抗体のレベルを加えることによって算出できる。
【0081】
[0106]いくつかの実施形態において、ステップ(c)において測定された遊離標識生物製剤結合部分のレベルは陰性対照、陽性対照又はそれらの組み合わせとさらに比較される。さらなる実施形態において、ステップ(d)において決定される自己抗体の中和形(例えばNAb)のパーセントは、健常対照(例えば正常ヒト血清)から確立されたカットオフ値又は基準範囲と比較される。いくつかの実施形態において、カットオフ値又は基準範囲は、NAbについて陽性とみなされるために試料が有さなければならないNAbの閾値パーセントとして表現される。そのような実施形態において、試料は、ステップ(d)において決定されたNAbのパーセントが健常対照から確立されたカットオフ値又は基準範囲以上である場合に、NAbについて陽性である。他の実施形態において、試料は、ステップ(d)において決定されたNAbのパーセントが健常対照から確立されたカットオフ値又は基準範囲未満である場合に、NAbについて陰性である。カットオフ値又は基準範囲の非限定的な例は、例えば、少なくとも約0.25%、0.50%、0.75%、1.00%、1.50%、2.00%、2.50%、2.60%、2.70%、2.80%、2.90%、3.00%、3.01%、3.02%、3.03%、3.04%、3.05%、3.06%、3.07%、3.08%、3.09%、3.10%、3.20%、3.30%、3.40%、3.50%、4.00%、4.50%、5.00%、5.50%、6.00%、6.50%、7.00%、7.50%、8.00%、8.50%、9.00%、9.50%、10.00%NAb又はその中の任意の範囲を含む。
【0082】
[0107]いくつかの実施形態において、生物製剤に対する自己抗体はすべて中和抗体であり、試料は、100%中和抗薬物抗体(NAb)及び/又は0%非中和抗薬物抗体(非NAb)を有するものとされる。これらの実施形態では、ステップ(c)において測定された遊離標識生物製剤結合部分のレベルは対照試料中の遊離標識生物製剤結合部分のレベルと概して同じであり、自己抗体は、生物製剤と生物製剤結合部分との間の結合を完全に遮断又は阻害すると予測される。
【0083】
[0108]他の実施形態において、生物製剤に対する自己抗体はいずれも中和抗体でなく、試料は、100%非NAb及び/又は0%NAbを有するものとされる。これらの実施形態では、ステップ(c)において測定された遊離標識生物製剤結合部分のレベルは、対照試料中の遊離標識生物製剤結合部分のレベルと比較して概して存在せず(例えば検出不能)、自己抗体は、生物製剤と生物製剤結合部分との間の結合を完全には遮断又は阻害しないと予測される。
【0084】
[0109]さらなる実施形態では、中和形及び非中和形の両方の自己抗体が試料中に存在する場合、各々のパーセントはそのまま(例えば、50%NAb又は50%非NAbは、試料中のNAb及び非NAbの割合が等しいことを指すものとする。)又は比率として表現される。あるいくつかの場合において、比率は、NAbのパーセントを非NAbのパーセントで除するか又はその逆により算出される。他の場合において、比率は、NAbのレベルを非NAbのレベルで除するか又はその逆により算出される。
【0085】
[0110]いくつかの実施形態において、生物製剤は、抗体(例えば抗TNFαモノクローナル抗体)、抗体断片、タンパク質(例えば、インターロイキン等のサイトカイン)、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質、多価結合タンパク質、抗体−薬物コンジュゲート、ワクチン、核酸、糖、それらの組換え形、それらの工学改変形及びそれらの組み合わせを含む。
【0086】
[0111]他の実施形態において、試料は、例えば、生物学的治療を受けている対象からの全血、血清又は血漿試料である。好ましい実施形態において、試料は血清である。特定の実施形態において、対象は、疾患又は障害、例えば、自己免疫疾患(例えば関節リウマチ)、炎症性疾患(例えばクローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)等の炎症性腸疾患(IBD))、又は癌を有する。
【0087】
[0112]あるいくつかの実施形態において、試料は、生物製剤に対する自己抗体を有するか、又はその疑いがある。他の実施形態において、生物製剤自己抗体は、それらに限定されないが、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)及びヒト抗マウス抗体(HAMA)並びにそれらの組み合わせを含む。
【0088】
[0113]さらに別の態様において、本発明は、第1生物製剤に対する自己抗体の中和形が第2(すなわち異なる)生物製剤と交差反応性であるかどうかを決定するための方法であって、
(a)試料中の自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントを、本明細書に記載のアッセイに従って検出又は測定して、自己抗体の中和形について試料が陽性であるか陰性であるかを決定するステップ
を含み、
自己抗体の中和形について試料が陽性であるならば、
(b)試料を標識第2生物製剤と接触させて、標識第2生物製剤と自己抗体の中和形との標識複合体(すなわち、ここで標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)を形成するステップと、
(c)標識複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して標識複合体を(例えば遊離標識第2生物製剤から)分離するステップと、
(d)標識複合体を検出し、それにより、第1生物製剤に対する自己抗体の中和形が第2生物製剤と交差反応性であるかどうかを決定するステップと、
をさらに含む方法を提供する。
【0089】
[0114]あるいくつかの実施形態において、標識複合体の存在は、第1生物製剤に対する中和自己抗体が第2生物製剤と交差反応性であること、すなわち中和自己抗体が第1及び第2生物学的製剤の両方の活性を阻害することを示す。
【0090】
[0115]あるいくつかの他の実施形態において、標識複合体の非存在は、第1生物製剤に対する中和自己抗体が第2生物製剤と交差反応性でないこと、すなわち中和自己抗体が第2生物学的製剤の活性を阻害しないことを示す。
【0091】
[0116]いくつかの実施形態において、第1及び第2生物製剤は、抗体(例えば抗TNFαモノクローナル抗体)、抗体断片、タンパク質(例えば、インターロイキン等のサイトカイン)、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質、多価結合タンパク質、抗体−薬物コンジュゲート、ワクチン、核酸、糖、それらの組換え形、それらの工学改変形及びそれらの組み合わせからなる群より独立して選択される。
【0092】
[0117]他の実施形態において、試料は、例えば、生物学的治療を受けている対象からの全血、血清又は血漿試料である。好ましい実施形態において、試料は血清である。特定の実施形態において、対象は、疾患又は障害、例えば、自己免疫疾患(例えば関節リウマチ)、炎症性疾患(例えば、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)等の炎症性腸疾患(IBD))、又は癌を有する。
【0093】
[0118]あるいくつかの実施形態において、試料は、生物製剤に対する自己抗体を有するか、又はその疑いがある。他の実施形態において、生物製剤自己抗体は、それらに限定されないが、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)及びヒト抗マウス抗体(HAMA)並びにそれらの組み合わせを含む。
【0094】
[0119]あるいくつかの態様において、本発明のアッセイ方法は、試料を標識生物製剤及び標識生物製剤結合部分と接触させる前、接触中及び/又は接触させた後に試料を酸と接触させることを含む酸解離ステップをさらに含む。
【0095】
[0120]あるいくつかの他の態様において、本発明のアッセイ方法は、試料中の生物製剤に対する自己抗体の中和形及び/又は非中和形の1又は複数のアイソタイプの存在又はレベルを検出するステップを含む。
【0096】
[0121]特定の一態様において、本発明は、試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形及び/又は非中和形の存在を検出するための方法であって、
(a)試料を標識抗TNFα薬及び標識TNFαと接触させて、
(i)標識抗TNFα薬と自己抗体との第1標識複合体(すなわち免疫複合体又はコンジュゲート)(すなわち、ここで第1標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)、及び/又は
(ii)標識抗TNFα薬と標識TNFαと自己抗体との第2標識複合体(すなわち免疫複合体又はコンジュゲート)(すなわち、ここで第2標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)
を形成するステップと、
(b)第1標識複合体及び/又は第2標識複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、それらの複合体を、遊離(すなわち未結合)標識TNFα、遊離標識抗TNFα薬、及び/又は標識抗TNFα薬と標識TNFαとの複合体から分離するステップと、
(c)サイズ排除クロマトグラフィー後に、(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)後の遊離標識TNFαピークの曲線下面積(AUC)を測定することによって)遊離標識TNFαのレベルを測定するステップと、
(d)ステップ(c)において測定された遊離標識TNFαのレベルを、(例えば、遊離標識TNFαのみを含有する参照試料のSEC後の遊離標識TNFαピークのAUCを測定することによって)対照試料中の遊離標識TNFαのレベルと比較し、それにより自己抗体の中和形及び/又は非中和形の存在を検出するステップと、
を含む方法を提供する。
【0097】
[0122]いくつかの実施形態において、自己抗体の中和形は抗TNFα薬とTNFαとの間の結合を阻害する。他の実施形態において、自己抗体の非中和形は抗TNFα薬とTNFαとの間の結合を阻害しない。
【0098】
[0123]いくつかの場合において、遊離標識TNFαは、結合している抗TNFα薬(例えば標識及び/又は未標識抗TNFα薬)が実質的にない標識TNFαからなる。
【0099】
[0124]あるいくつかの実施形態において、自己抗体の中和形は、ステップ(c)において測定された遊離標識TNFαのレベルが、対照試料中の遊離標識TNFαのレベルと同じ又は実質的に同じである場合に検出される。あるいくつかの他の実施形態において、自己抗体の非中和形は、ステップ(c)において測定された遊離標識TNFαのレベルが、対照試料中の遊離標識TNFαのレベルと比較して減少しているか(例えば実質的に減少)又は存在しない(例えば検出不能)場合に検出される。
【0100】
[0125]特定の実施形態において、ステップ(c)において測定された遊離標識TNFαのレベルは、該レベルが対照試料中で測定された遊離標識TNFαのレベルの少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%である場合に、対照試料中の遊離標識TNFαのレベルと実質的に同じであるとみなされる。特定の実施形態において、ステップ(c)において測定された遊離標識TNFαのレベルは、該レベルが対照試料中で測定された遊離標識TNFαのレベルの少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%未満である場合に、対照試料中の遊離標識TNFαのレベルと比較して実質的に減少しているとみなされる。
【0101】
[0126]あるいくつかの実施形態において、遊離標識TNFαのレベルは、サイズ排除クロマトグラフィー(例えばSEC−HPLC)からの溶出時間の関数としてのシグナル強度のプロットからの遊離標識TNFαピークの曲線下面積(AUC)を積分することによって測定される。
【0102】
[0127]いくつかの実施形態において、抗TNFα薬は、レミケード(商標)(インフリキシマブ)、エンブレル(商標)(エタネルセプト)、ヒュミラ(商標)(アダリムマブ)、シムジア(登録商標)(セルトリズマブペゴール)、シンポニー(登録商標)(ゴリムマブ、CNTO148)及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0103】
[0128]他の実施形態において、試料は、例えば、抗TNFα薬治療を受けている対象からの全血、血清又は血漿試料である。好ましい実施形態において、試料は血清である。特定の実施形態において、対象は、TNFα媒介疾患又は障害、例えば、自己免疫疾患(例えば関節リウマチ)又は炎症性疾患(例えば、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)等の炎症性腸疾患(IBD))を有する。
【0104】
[0129]あるいくつかの実施形態において、試料は、抗TNFα薬に対する自己抗体を有するか、又はその疑いがある。他の実施形態において、抗TNFα薬自己抗体は、それらに限定されないが、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)及びヒト抗マウス抗体(HAMA)並びにそれらの組み合わせを含む。
【0105】
[0130]別の特定の態様において、本発明は、試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形のレベル又はパーセントを測定するための方法であって、
(a)試料を標識抗TNFα薬及び標識TNFαと接触させて、
(i)標識抗TNFα薬と自己抗体との第1標識複合体(すなわち免疫複合体又はコンジュゲート)(すなわち、ここで第1標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)、及び/又は
(ii)標識抗TNFα薬と標識TNFαと自己抗体との第2標識複合体(すなわち免疫複合体又はコンジュゲート)(すなわち、ここで第2標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)
を形成するステップと、
(b)第1標識複合体及び/又は第2標識複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、それらの複合体を、遊離(すなわち未結合)標識TNFα、遊離標識抗TNFα薬、及び/又は標識抗TNFα薬と標識TNFαとの複合体から分離するステップと、
(c)サイズ排除クロマトグラフィー後に、(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)後の遊離標識TNFαピークの曲線下面積(AUC)を測定することによって)遊離標識TNFαのレベルを測定するステップと、
(d)ステップ(c)において測定された遊離標識TNFαのレベルを、(例えば、遊離標識TNFαのみを含有する参照試料のSEC後の遊離標識TNFαピークのAUCを測定及び標準化して、遊離標識TNFαのレベル又はパーセントを算出することによって)対照試料中の遊離標識TNFαの標準化されたレベル又はパーセントと比較するステップであって、対照試料中の遊離標識TNFαの標準化されたレベル又はパーセントは自己抗体の中和形のレベル又はパーセントに対応するステップと、
を含む方法を提供する。
【0106】
[0131]いくつかの実施形態において、対照試料中の遊離標識TNFαの標準化されたレベル又はパーセントと、ステップ(c)において測定された遊離標識TNFαのレベルと、の差は自己抗体の非中和形のレベル又はパーセントに対応する。
【0107】
[0132]いくつかの場合において、遊離標識TNFαは、結合している抗TNFα薬(例えば標識及び/又は未標識抗TNFα薬)が実質的にない標識TNFαからなる。
【0108】
[0133]特定の実施形態において、対照試料中の遊離標識TNFαのレベル又はパーセントは、標識抗TNFα薬と標識TNFαとの間で形成された複合体(例えば「標識複合体」)のピーク面積を(例えば、AUCを測定することによって)測定し、次いで、標識複合体の測定されたピーク面積を、(例えば、遊離標識TNFαピークのAUCを測定することによって得られた)遊離標識TNFαのピーク面積から差し引くことによって標準化する。
【0109】
[0134]あるいくつかの実施形態において、遊離標識TNFαのレベルは、サイズ排除クロマトグラフィー(例えばSEC−HPLC)からの溶出時間の関数としてのシグナル強度のプロットからの遊離標識TNFαピークの曲線下面積(AUC)を積分することによって測定される。他の実施形態において、標識抗TNFα薬と標識TNFαとの間で形成された複合体のレベルは、サイズ排除クロマトグラフィー(例えばSEC−HPLC)からの溶出時間の関数としてのシグナル強度のプロットからの遊離標識TNFαピークのAUCを積分することによって測定される。
【0110】
[0135]あるいくつかの実施形態において、抗TNFα薬に対する自己抗体(例えばADA)の部分集団は自己抗体の中和形(例えばNAb)である。いくつかの実施形態において、試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の総レベルは、本発明の方法に従って測定された中和形及び非中和形の両方の自己抗体のレベルを加えることによって算出できる。
【0111】
[0136]いくつかの実施形態において、ステップ(c)において測定された遊離標識TNFαのレベルは陰性対照、陽性対照又はそれらの組み合わせとさらに比較される。陰性対照の非限定的な例は、マウスモノクローナル抗ヒトIgG Fc試料及び/又はウサギモノクローナル抗ヒトIgG Fc試料を含む。陽性対照の非限定的な例は、プールしたADA陽性患者血清試料及び/又は抗TNFα薬のF(ab’)断片に対するウサギポリクローナル抗体の試料を含む。
【0112】
[0137]さらなる実施形態において、ステップ(d)において決定された自己抗体の中和形(例えばNAb)のパーセントは、健常対照(例えば正常ヒト血清)から確立されたカットオフ値又は基準範囲と比較される。特定の実施形態において、カットオフ値又は基準範囲は、NAbについて陽性とみなされるために試料が有さなければならないNAbの閾値パーセントとして表現される。そのような実施形態において、試料は、ステップ(d)において決定されたNAbのパーセントが健常対照から確立されたカットオフ値又は基準範囲以上である場合に、NAbについて陽性である。他の実施形態において、試料は、ステップ(d)において決定されたNAbのパーセントが健常対照から確立されたカットオフ値又は基準範囲未満である場合に、NAbについて陰性である。カットオフ値又は基準範囲の非限定的な例は、例えば、少なくとも約0.25%、0.50%、0.75%、1.00%、1.50%、2.00%、2.50%、2.60%、2.70%、2.80%、2.90%、3.00%、3.01%、3.02%、3.03%、3.04%、3.05%、3.06%、3.07%、3.08%、3.09%、3.10%、3.20%、3.30%、3.40%、3.50%、4.00%、4.50%、5.00%、5.50%、6.00%、6.50%、7.00%、7.50%、8.00%、8.50%、9.00%、9.50%、10.00%NAb又はその中の任意の範囲を含む。いくつかの場合において、カットオフ値又は基準範囲は、約3.00%NAb又は約3.06%NAb又は約3.00%〜3.10%NAbである。
【0113】
[0138]いくつかの実施形態において、抗TNFα薬に対するすべての自己抗体は中和抗体であり、試料は、100%中和抗薬物抗体(NAb)及び/又は0%非中和抗薬物抗体(非NAb)を有するものとされる。これらの実施形態では、ステップ(c)において測定された遊離標識TNFαのレベルは対照試料中の遊離標識TNFαのレベルと概して同じであり、自己抗体は、抗TNFα薬とTNFαとの間の結合を完全に遮断又は阻害すると予測される。
【0114】
[0139]あるいくつかの他の実施形態において、抗TNFα薬に対する自己抗体はいずれも中和抗体でなく、試料は、100%非NAb及び/又は0%NAbを有するものとされる。これらの実施形態では、ステップ(c)において測定された遊離標識TNFαのレベルは、対照試料中の遊離標識TNFαのレベルと比較して概して存在せず(例えば検出不能)、自己抗体は、抗TNFα薬とTNFαとの間の結合を完全には遮断又は阻害しないと予測される。
【0115】
[0140]さらなる実施形態では、中和形及び非中和形の両方の自己抗体が試料中に存在する場合、各々のパーセントはそのまま(例えば、50%NAb又は50%非NAbは、試料中のNAb及び非NAbの割合が等しいことを指すものとする。)又は比率として表現される。あるいくつかの場合において、比率は、NAbのパーセントを非NAbのパーセントで除するか又はその逆により算出される。他の場合において、比率は、NAbのレベルを非NAbのレベルで除するか又はその逆により算出される。
【0116】
[0141]いくつかの実施形態において、抗TNFα薬は、レミケード(商標)(インフリキシマブ)、エンブレル(商標)(エタネルセプト)、ヒュミラ(商標)(アダリムマブ)、シムジア(登録商標)(セルトリズマブペゴール)、シンポニー(登録商標)(ゴリムマブ、CNTO148)及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0117】
[0142]他の実施形態において、試料は、例えば、抗TNFα薬治療を受けている対象からの全血、血清又は血漿試料である。好ましい実施形態において、試料は血清である。特定の実施形態において、対象は、TNFα媒介疾患又は障害、例えば、自己免疫疾患(例えば関節リウマチ)又は炎症性疾患(例えば、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)等の炎症性腸疾患(IBD))を有する。
【0118】
[0143]あるいくつかの実施形態において、試料は、抗TNFα薬に対する自己抗体を有するか、又はその疑いがある。他の実施形態において、抗TNFα薬自己抗体は、それらに限定されないが、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)及びヒト抗マウス抗体(HAMA)並びにそれらの組み合わせを含む。
【0119】
[0144]さらに別の特定の態様において、本発明は、第1抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形が第2(すなわち異なる)抗TNFα薬と交差反応性であるかどうかを決定するための方法であって、
(a)試料中の自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントを、本明細書に記載のアッセイに従って検出又は測定して、自己抗体の中和形について試料が陽性であるか陰性であるかを決定するステップ
を含み、
自己抗体の中和形について試料が陽性であるならば、
(b)試料を標識第2抗TNFα薬と接触させて、標識第2抗TNFα薬と自己抗体の中和形との標識複合体(すなわち、ここで標識複合体の構成要素は互いに共有結合していない。)を形成するステップと、
(c)標識複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに供して標識複合体を(例えば遊離標識第2抗TNFα薬から)分離するステップと、
(d)標識複合体を検出し、それにより、第1抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形が第2抗TNFα薬と交差反応性であるかどうかを決定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0120】
[0145]あるいくつかの実施形態において、標識複合体の存在は、第1抗TNFα薬に対する中和自己抗体が第2抗TNFα薬と交差反応性であること、すなわち中和自己抗体が第1及び第2抗TNFα薬の両方の活性を阻害することを示す。
【0121】
[0146]あるいくつかの他の実施形態において、標識複合体の非存在は、第1抗TNFα薬に対する中和自己抗体が第2抗TNFα薬と交差反応性でないこと、すなわち中和自己抗体が第2抗TNFα薬の活性を阻害しないことを示す。
【0122】
[0147]特定の実施形態において、第1及び第2抗TNFα薬は、レミケード(商標)(インフリキシマブ)、エンブレル(商標)(エタネルセプト)、ヒュミラ(商標)(アダリムマブ)、シムジア(登録商標)(セルトリズマブペゴール)、シンポニー(登録商標)(ゴリムマブ、CNTO148)及びそれらの組み合わせからなる群より独立して選択される。
【0123】
[0148]他の実施形態において、試料は、例えば、抗TNFα薬治療を受けている対象からの全血、血清又は血漿試料である。好ましい実施形態において、試料は血清である。特定の実施形態において、対象は、TNFα媒介疾患又は障害、例えば、自己免疫疾患(例えば関節リウマチ)又は炎症性疾患(例えば、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)等の炎症性腸疾患(IBD))を有する。
【0124】
[0149]あるいくつかの実施形態において、試料は、抗TNFα薬に対する自己抗体を有するか、又はその疑いがある。他の実施形態において、抗TNFα薬自己抗体は、それらに限定されないが、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)及びヒト抗マウス抗体(HAMA)並びにそれらの組み合わせを含む。
【0125】
[0150]あるいくつかの態様において、本発明のアッセイ方法は、試料を標識抗TNFα薬及び標識TNFαと接触させる前、接触中及び/又は接触させた後に試料を酸と接触させることを含む酸解離ステップをさらに含む。
【0126】
[0151]酸解離を用いて抗薬物抗体を検出するための方法は、本明細書及び国際出願PCT/US2012/025437(出願日:2012年2月16日)(その開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。)に記載されている。
【0127】
[0152]あるいくつかの他の態様において、本発明のアッセイ方法は、試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形及び/又は非中和形の1又は複数のアイソタイプの存在又はレベルを検出するステップを含む。非限定的な例として、本発明のアッセイは、抗TNFα薬(例えば、レミケード(商標)(インフリキシマブ)、ヒュミラ(商標)(アダリムマブ))を受けているADA陽性患者からの試料中の異なる中和及び/又は非中和ADAアイソタイプを決定するために用いることができる。あるいくつかの実施形態において、1又は複数のアイソタイプは少なくとも2、3、4、5又はそれ以上のアイソタイプを含む。他の実施形態において、1又は複数のアイソタイプは、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMアイソタイプ、それらのサブクラス並びにそれらの組み合わせからなる群より選択される。あるいくつかの実施形態において、各自己抗体アイソタイプは、該アイソタイプの保持時間により特徴決定、同定及び/又は検出される。他の実施形態において、各自己抗体アイソタイプは、検出部分(例えば、標識抗TNFα薬、及び異なる抗体アイソタイプに特異的な標識抗Ig抗体)の近接結合により生じるシグナルにより特徴決定、同定及び/又は検出される。あるいくつかの場合において、シグナルは、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)により検出できる蛍光シグナルを含む。
【0128】
[0153]抗薬物抗体(ADA)アイソタイプを検出するための方法は、国際公開第2012/054532号パンフレット(その開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。)にさらに記載されている。
【0129】
[0154]生物製剤(例えば抗TNFα薬)又は生物製剤結合部分(例えばTNFα)は、種々の検出可能基のいずれを用いても標識できる。好ましい実施形態において、生物製剤(例えば抗TNFα薬)及び生物製剤結合部分(例えばTNFα)は異なる標識を含む。あるいくつかの実施形態において、生物製剤(例えば抗TNFα薬)又は生物製剤結合部分(例えばTNFα)は蛍光体又は蛍光色素で標識される。蛍光体又は蛍光色素の非限定的な例としては、Molecular Probesカタログ(その内容は、参照により本明細書に組み入れられている。)に列挙されているものが挙げられる(R.Haugland、The Handbook−A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies、第10版、Molecular probes,Inc.(2005)を参照されたい)。そのような例示的な蛍光体又は蛍光色素は、それらに限定されないが、アレクサフロール(登録商標)色素、例えば、アレクサフロール(登録商標)350、アレクサフロール(登録商標)405、アレクサフロール(登録商標)430、アレクサフロール(登録商標)488、アレクサフロール(登録商標)514、アレクサフロール(登録商標)532、アレクサフロール(登録商標)546、アレクサフロール(登録商標)555、アレクサフロール(登録商標)568、アレクサフロール(登録商標)594、アレクサフロール(登録商標)610、アレクサフロール(登録商標)633、アレクサフロール(登録商標)635、アレクサフロール(登録商標)647、アレクサフロール(登録商標)660、アレクサフロール(登録商標)680、アレクサフロール(登録商標)700、アレクサフロール(登録商標)750及び/又はアレクサフロール(登録商標)790、並びに他の蛍光体、例えば、それらに限定されないが、ダンシルクロリド(DNS−Cl)、5−(ヨードアセトアミド)フルオレセイン(5−IAF)、フルオレセイン5−イソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミン5−(及び6−)イソチオシアネート(TRITC)、6−アクリロイル−2−ジメチルアミノナフタレン(アクリロダン)、7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3,−ジアゾール−4−イルクロリド(NBD−Cl)、臭化エチジウム、ルシファーイエロー、5−カルボキシローダミン6G塩酸塩、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、テキサスレッド(Texas Red)(商標)スルホニルクロリド、BODIPY(商標)、ナフタラミンスルホン酸(例えば、1−アニリノナフタレン−8−スルホン酸(ANS)、6−(p−トルイジニル)ナフタレン−2−スルホン酸(TNS))、アンスロイル脂肪酸、DPH、パリナリン酸、TMA−DPH、フルオレニル脂肪酸、フルオレセイン−ホスファチジルエタノールアミン、テキサスレッド−ホスファチジルエタノールアミン、ピレニル−ホスファチジルコリン、フルオレニル−ホスファチジルコリン、メロシアニン540、1−(3−スルホナトプロピル)−4−[β−[2[(ジ−n−ブチルアミノ)−6ナフチル]ビニル]ピリジニウムベタイン(ナフチルスチリル)、3,3’ジプロピルチアジアカルボシアニン(diS−C−(5))、4−(p−ジペンチルアミノスチリル)−1−メチルピリジニウム(di−5−ASP)、Cy−3ヨードアセトアミド、Cy−5−N−ヒドロキシスクシンイミド、Cy−7−イソチオシアネート、ローダミン800、IR−125、チアゾールオレンジ、アズールB、ナイルブルー、Alフタロシアニン、オキサジン1、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)、ヘキスト33342、TOTO、アクリジンオレンジ、エチジウムホモダイマー、N(エトキシカルボニルメチル)−6−メトキシキノリニウム(MQAE)、Fura−2、カルシウムグリーン、カルボキシSNARF−6、BAPTA、クマリン、フィトフロール、コロネン、金属−リガンド錯体、IRDye(登録商標)700DX、IRDye(登録商標)700、IRDye(登録商標)800RS、IRDye(登録商標)800CW、IRDye(登録商標)800、Cy5、Cy5.5、Cy7、DY676、DY680、DY682、DY780及びそれらの混合物を含む。さらなる適切な蛍光体は、酵素補因子;ランタニド、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質又はそれらの変異体及び誘導体を含む。本発明の一実施形態において、特異的結合対の第2メンバーには検出可能基が結合している。
【0130】
[0155]典型的には、蛍光基は、ポリメチン、フタロシアニン、シアニン、キサンテン、フルオレン、ローダミン、クマリン、フルオレセイン及びBODIPY(商標)を含む色素の範疇から選択される蛍光体である。
【0131】
[0156]一実施形態において、蛍光基は、約650〜約900nmの範囲で発光する近赤外(NIR)蛍光体である。近赤外蛍光技術を用いることは、生物学的アッセイにおいて有利である。なぜなら、該技術は、生物基質の自己蛍光からのバックグラウンドを実質的に排除又は低減するからである。近IR蛍光技術の別の利益は、散乱強度は波長の4乗の逆数に比例するので、励起源からの散乱光が大きく低減されることである。低いバックグラウンド蛍光及び低い散乱は、高いシグナル対ノイズ比をもたらし、高いシグナル対ノイズ比は、高い感度での検出のために必須である。さらに、生体組織における近IR領域(650nm〜900nm)における光学的に透明なウィンドウにより、NIR蛍光は、光が生物学的構成要素を透過することが要求されるin vivoイメージング及び細胞より小さいレベルの検出用途のための価値のある技術になる。本実施形態の態様内で、蛍光基は、IRDye(登録商標)700DX、IRDye(登録商標)700、IRDye(登録商標)800RS、IRDye(登録商標)800CW、IRDye(登録商標)800、アレクサフロール(登録商標)660、アレクサフロール(登録商標)680、アレクサフロール(登録商標)700、アレクサフロール(登録商標)750、アレクサフロール(登録商標)790、Cy5、Cy5.5、Cy7、DY676、DY680、DY682及びDY780からなる群より選択されるのが好ましい。あるいくつかの実施形態において、近赤外基は、IRDye(登録商標)800CW、IRDye(登録商標)800、IRDye(登録商標)700DX、IRDye(登録商標)700又はDynomic DY676である。
【0132】
[0157]蛍光標識化は、蛍光体の化学反応性誘導体を用いて達成される。一般的な反応性基は、アミン反応性イソチオシアネート誘導体(例えば、FITC及びTRITC(フルオレセイン及びローダミンの誘導体))、アミン反応性スクシンイミジルエステル(例えばNHS−フルオレセイン)、及びスルフヒドリル反応性マレイミド活性化フロール(例えばフルオレセイン−5−マレイミド)(これらの多くは市販で入手可能)を含む。これらの反応性色素のいずれかと生物製剤(例えば抗TNFα薬)又は生物製剤結合部分(例えばTNFα)との反応は、蛍光体と生物製剤(例えば抗TNFα薬)又は生物製剤結合部分(例えばTNFα)との間の安定な共有結合の形成をもたらす。
【0133】
[0158]あるいくつかの場合には、蛍光標識化反応の後に標識標的分子から任意の未反応蛍光体を除去することがしばしば必要である。該除去は、蛍光体と標識タンパク質との間のサイズの差を利用して、サイズ排除クロマトグラフィーによりしばしば達成される。
【0134】
[0159]反応性蛍光色素は、多くの供給源から入手可能である。反応性蛍光色素は、標的分子内の種々の官能基への結合のための異なる反応性基を用いて得ることができる。反応性蛍光色素は、標識化反応を行うためのすべての構成要素を含有する標識化キット中で入手可能でもある。好ましい一態様では、Invitrogen(Cat.No.A−20347)からのアレクサフロール(登録商標)647 C2マレイミドを用いる。
【0135】
[0160]中和及び/又は非中和抗薬物抗体(例えばNAb及び/又は非NAb)と生物製剤(例えば抗TNFα薬)及び/又は生物製剤結合部分(例えばTNFα)との特異的免疫学的結合は、直接又は間接的に検出できる。直接標識は、例えば、抗体に結合した蛍光又は発光タグ、金属、色素、放射性核種を含む。あるいくつかの場合において、異なる放射性核種で標識した生物製剤(例えば抗TNFα薬)又は生物製剤結合部分(例えばTNFα)は、試料中のNAb及び/又は非NAbの存在又はレベルを決定するために用いることができる。他の場合には、化学発光生物製剤(例えば抗TNFα薬)及び生物製剤結合部分(例えばTNFα)を用いる化学発光アッセイが、試料中のNAb及び/又は非NAbの存在又はレベルの高感度で非放射活性の検出のために適切である。特定の場合には、異なる蛍光色素で標識した生物製剤(例えば抗TNFα薬)及び生物製剤結合部分(例えばTNFα)が、試料中のNAb及び/又は非NAbの存在又はレベルの検出のために適切である。蛍光色素の例としては、限定することなく、アレクサフロール(登録商標)色素、DAPI、フルオレセイン、ヘキスト33258、R−フィコシアニン、B−フィコエリスリン、R−フィコエリスリン、ローダミン、テキサスレッド及びリサミンが挙げられる。蛍光色素と連結される2次抗体は、商業的に得ることができ、例えばヤギF(ab’)抗ヒトIgG−FITCは、Tago Immunologicals(Burlingame,CA)から入手可能である。
【0136】
[0161]間接標識は、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ等の、当技術分野において公知の種々の酵素を含む。セイヨウワサビペルオキシダーゼ検出系は、例えば発色基質テトラメチルベンジジン(TMB)とともに用いることができ、該発色基質は、過酸化水素の存在下、450nmで検出可能な可溶性生成物を産生する。アルカリホスファターゼ検出系は、例えば発色基質p−ニトロフェニルホスフェートとともに用いることができ、該発色基質は、405nmで容易に検出可能な可溶性生成物を産生する。同様に、β−ガラクトシダーゼ検出系は、発色基質o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)とともに用いることができ、該発色基質は、410nmで検出可能な可溶性生成物を産生する。ウレアーゼ検出系は、尿素−ブロモクレゾールパープル(Sigma Immunochemicals,St.Louis,MO)等の基質とともに用いることができる。酵素と連結される有用な2次抗体は、いくつかの商業的な供給源から得ることができ、例えば、ヤギF(ab’)抗ヒトIgG−アルカリホスファターゼは、Jackson ImmunoResearch(West Grove,PA)から購入できる。
【0137】
[0162]直接又は間接標識からのシグナルは、例えば発色基質からの色を検出するための分光光度計;放射線を検出するための放射線測定器(例えば、125Iの検出のためのガンマ線測定器);又はある波長の光の存在下で蛍光を検出するための蛍光計を用いて分析できる。酵素連結抗体の検出のために、NAb及び/又は非NAbレベルの定量分析を、製造者の使用説明に従って分光光度計(例えば、EMAXマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,Menlo Park,CA))を用いて行うことができる。所望により、本発明のアッセイは、自動化するか又はロボットにより行うことができ、複数の試料からのシグナルを同時に検出できる。
【0138】
[0163]あるいくつかの実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーが使用される。SECの根底をなす原理は、異なるサイズの粒子が異なる速度で定常相を通って溶出(ろ過)されるということである。この結果、サイズに基づいて粒子の溶液が分離される。すべての粒子が同時又はほぼ同時に装填されることを条件として、同じサイズの粒子は一緒に溶出される。各サイズ排除カラムは分離可能な分子量の範囲を有する。排除限界は該範囲の上端の分子量を規定し、定常相に捕捉されるには分子が大きすぎるところである。浸透限界は分離の範囲の下端の分子量を規定し、十分に小さいサイズの分子が定常相の孔に完全に浸透し、この分子質量未満のすべての分子は単一バンドとして溶出されるほど小さいところである。
【0139】
[0164]あるいくつかの態様において、溶離液は一定容積又は画分で回収される。粒子のサイズが似ているほど、それらの粒子は同じ画分にあり、別々に分離されない可能性がより高い。回収された画分を分光技術により調べて、溶出された粒子の濃度を決定することが好ましい。典型的には、本発明において有用な分光検出技術は、それらに限定されないが、蛍光分析、屈折率(RI)及び紫外線(UV)を含む。あるいくつかの場合において、溶出容積は、分子流体力学的容積の対数とともにほぼ直線的に減少する(すなわち、まず重い部分が落ちる)。
【0140】
[0165]さらなる態様において、本発明は、生物製剤による治療コースを受けている対象における治療のモニタリング及び/又は前記生物製剤への治療の最適化を行うための方法であって、
(a)生物製剤に対する自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントを、本明細書に記載のアッセイに従って治療コース中の複数の時点で検出又は測定するステップと、
(b)自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントの経時的な変化を検出するステップと、
(c)対象についての治療コースの後続の用量、又は異なる治療コースを対象に対して実施するべきかを、自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントの経時的な変化に基づいて決定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0141】
[0166]あるいくつかの実施形態において、複数の時点は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50以上の時点を含む。
【0142】
[0167]特定の一態様において、本発明は、生物製剤による治療コースを受けている対象における治療のモニタリング及び/又は前記生物製剤への治療の最適化を行うための方法であって、
(a)対象からの第1試料中の生物製剤に対する自己抗体の中和形のレベル又はパーセントを本明細書に記載のようにして時点tで測定するステップと、
(b)対象からの第2試料中の自己抗体の中和形のレベル又はパーセントを本明細書に記載のようにして時点tで測定するステップと、
(c)対象からのnのさらなる試料を用いて時点tn+1(ここで、nは、1〜約25の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24若しくは25又はその中の任意の範囲)である。)でステップ(b)を任意選択で反復するステップと、
(d)時点tからtまで又は時点tからtn+1までの自己抗体の中和形のレベル又はパーセントの変化を検出するステップと、
(e)対象についての治療コースの後続の用量、又は異なる治療コースを対象に対して実施するべきかを、自己抗体の中和形のレベル又はパーセントの経時的な変化に基づいて決定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0143】
[0168]あるいくつかの他の実施形態において、自己抗体の中和形(例えばNAb)のレベル又はパーセントは、生物学的製剤治療コース中の例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、80、90、100週目のうちの1又は複数(例えば複数)の週に測定される。
【0144】
[0169]いくつかの実施形態において、対象についての治療コースの後続の用量を決定することは、対象についての治療コースの後続の用量を維持、増加又は減少することを含む。他の実施形態において、対象についての異なる治療コースを決定することは異なる生物学的製剤による治療を含む。他の実施形態において、対象についての異なる治療コースを決定することは、別の治療薬とともに現在の治療コースを用いる治療を含む。さらなる実施形態において、対象についての異なる治療コースを決定することは、現在の治療コースを変更すること(例えば、異なる生物製剤又は異なる機序を標的にする薬物に切り替えること)を含む。
【0145】
[0170]特定の実施形態において、自己抗体の中和形(例えばNAb)のレベル又はパーセントの経時的な増加は、該対象に関して治療法の調整が推奨されることを示す。あるいくつかの他の実施形態において、自己抗体の中和形(例えばNAb)の非存在から該抗体の存在への経時的な変化は、該対象に関して治療法の調整が推奨されることを示す。これらの実施形態では、対象を、1又は複数の他の治療薬とともに現在の治療コース(例えば、現行の生物製剤の服用)を用いて治療できる。あるいくつかの代替の実施形態において、対象は、異なる生物製剤に切り替えることができる。あるいくつかの他の代替の実施形態において、対象は、異なる機序を標的にする薬物(例えば、生物製剤及び/又は非生物製剤)に切り替えることができる。
【0146】
[0171]さらなる態様において、本発明は、第1生物製剤による治療コースを受けている対象における治療の最適化及び/又は毒性の低減のための方法であって、
(a)対象からの試料中の自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントを本明細書に記載のアッセイに従って検出又は測定することによって、第1生物製剤に対する自己抗体の中和形が第2(すなわち異なる)生物製剤と交差反応性であるかどうかを決定するステップと、
(b)自己抗体の中和形が第2生物製剤と交差反応性であるならば、異なる治療コースを対象に対して実施するべきと決定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0147】
[0172]あるいくつかの実施形態において、異なる治療コースを実施するべきと決定することは、異なる機序を標的にする薬物(例えば、生物製剤及び/又は非生物製剤)に切り替えることを含む。
【0148】
[0173]いくつかの実施形態において、方法は、自己抗体の中和形が第2生物製剤と交差反応性でないならば、現在の治療コースの後続の用量を増加若しくは減少する、又は対象に対して異なる治療コースを実施するべきと決定するステップをさらに含む。あるいくつかの場合において、異なる治療コースは第2生物製剤による治療を含む。あるいくつかの他の場合において、異なる治療コースは、1又は複数の他の治療薬とともに第1又は第2生物製剤を用いる治療を含む。
【0149】
[0174]特定の一態様において、本発明は、抗TNFα薬による治療コースを受けている対象における治療のモニタリング及び/又は前記抗TNFα薬への治療の最適化を行うための方法であって、
(a)抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントを、本明細書に記載のアッセイに従って治療コース中の複数の時点で検出又は測定するステップと、
(b)自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントの経時的な変化を検出するステップと、
(c)対象についての治療コースの後続の用量、又は異なる治療コースを対象に対して実施するべきかを、自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントの経時的な変化に基づいて決定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0150】
[0175]あるいくつかの実施形態において、複数の時点は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50以上の時点を含む。
【0151】
[0176]別の特定の態様において、本発明は、抗TNFα薬による治療コースを受けている対象における治療のモニタリング及び/又は前記抗TNFα薬への治療の最適化を行うための方法であって、
(a)対象からの第1試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形のレベル又はパーセントを本明細書に記載のようにして時点tで測定するステップと、
(b)対象からの第2試料中の自己抗体の中和形のレベル又はパーセントを本明細書に記載のようにして時点tで測定するステップと、
(c)対象からのnのさらなる試料を用いて時点tn+1(ここで、nは、1〜約25の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24若しくは25又はその中の任意の範囲)である。)でステップ(b)を任意選択で反復するステップと、
(d)時点tからtまで又は時点tからtn+1までの自己抗体の中和形のレベル又はパーセントの変化を検出するステップと、
(e)対象についての治療コースの後続の用量、又は異なる治療コースを対象に対して実施するべきかを、自己抗体の中和形のレベル又はパーセントの経時的な変化に基づいて決定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0152】
[0177]あるいくつかの他の実施形態において、自己抗体の中和形(例えばNAb)のレベル又はパーセントは、抗TNFα薬治療コース中の例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、80、90、100週目のうちの1又は複数(例えば複数)の週に測定される。
【0153】
[0178]いくつかの実施形態において、対象についての治療コースの後続の用量を決定することは、対象についての治療コースの後続の用量を維持、増加又は減少することを含む。他の実施形態において、対象についての異なる治療コースを決定することは異なる抗TNFα薬による治療を含む。他の実施形態において、対象についての異なる治療コースを決定することは、それらに限定されないが、抗TNF治療、免疫抑制剤、副腎皮質ステロイド、異なる機序を標的にする薬物、栄養療法及び他の併用治療を含む別の治療薬とともに現在の治療コースを用いる治療を含む。さらなる実施形態において、対象についての異なる治療コースを決定することは、現在の治療コースを変更すること(例えば、異なる抗TNF薬、又は異なる機序を標的にする薬物(例えば、IL−6受容体阻害モノクローナル抗体、抗インテグリン分子(例えば、タイサブリ、ベドリズマブ)、JAK−2阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤)、又は栄養療法(例えば特別炭水化物食)に切り替えること)を含む。
【0154】
[0179]特定の実施形態において、自己抗体の中和形(例えばNAb)のレベル又はパーセントの経時的な増加は、該対象に関して治療法の調整が推奨されることを示す。あるいくつかの他の実施形態において、自己抗体の中和形(例えばNAb)の非存在から該抗体の存在への経時的な変化は、該対象に関して治療法の調整が推奨されることを示す。これらの実施形態では、対象を、1又は複数の免疫抑制剤(例えば、メトトレキセート(MTX)、アザチオプリン(AZA))とともに現在の治療コース(例えば、現行の抗TNFα薬の服用)を用いて治療できる。あるいくつかの代替の実施形態において、対象は、異なる抗TNFα薬に切り替えることができる。あるいくつかの他の代替の実施形態において、対象は、異なる機序を標的にする薬物(例えば非抗TNFα薬)に切り替えることができる。
【0155】
[0180]さらに別の特定の態様において、本発明は、第1抗TNFα薬による治療コースを受けている対象における治療の最適化及び/又は毒性の低減のための方法であって、
(a)対象からの試料中の自己抗体の中和形の存在、レベル又はパーセントを本明細書に記載のアッセイに従って検出又は測定することによって、第1抗TNFα薬に対する自己抗体の中和形が第2(すなわち異なる)抗TNFα薬と交差反応性であるかどうかを決定するステップと、
(b)自己抗体の中和形が第2抗TNFα薬と交差反応性であるならば、異なる治療コースを対象に対して実施するべきと決定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0156】
[0181]あるいくつかの実施形態において、異なる治療コースを実施するべきと決定することは、異なる機序を標的にする薬物(例えば非抗TNFα薬)に切り替えることを含む。そのような薬物の非限定的な例としては、IL−6受容体阻害モノクローナル抗体、抗インテグリン分子(例えば、タイサブリ、ベドリズマブ)、JAK−2阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、栄養療法(例えば特別炭水化物食)及びそれらの混合物が挙げられる。
【0157】
[0182]いくつかの実施形態において、方法は、自己抗体の中和形が第2抗TNFα薬と交差反応性でないならば、現在の治療コースの後続の用量を増加若しくは減少する、又は対象に対して異なる治療コースを実施するべきと決定するステップをさらに含む。あるいくつかの場合において、異なる治療コースは第2抗TNFα薬による治療を含む。あるいくつかの他の場合において、異なる治療コースは、1又は複数の免疫抑制剤(例えば、MTX、AZA)とともに第1又は第2抗TNFα薬を用いる治療を含む。
【0158】
[0183]抗TNFα薬及び抗薬物抗体を検出するための方法は、国際公開第2011/056590号パンフレット(その開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。)にさらに記載されている。
【0159】
[0184]あるいくつかの場合において、本発明は、治療有効量の治療コース(例えば、抗TNFα薬、又はTNFα媒介疾患若しくは障害(例えば、CD、UC等のIBD)に付随する1若しくは複数の症状を治療するのに有用な異なる機序を標的にする薬物(例えば非抗TNFα薬))を対象に対して実施するステップをさらに含んでもよい。治療用途に関して、治療コースは単独で実施できるか、又は本明細書に記載の1又は複数のさらなる薬剤と組み合わせて共投与できる。すなわち、本発明は、治療法の決定の指針を与え、適切な薬物が適切な患者に適切な時間に与えられるように抗TNFα薬についての治療の選択及び最適化を知らせることによって、臨床医が「個別化医療」を有利に実施することを可能にする。
【0160】
IV.酸解離
[0185]あるいくつかの態様において、本発明のアッセイ方法は、酸解離ステップをさらに含み、例えば抗TNFα薬等の生物製剤に対して生じる中和自己抗体(NAb)、非中和自己抗体(非NAb)及び/又はそのアイソタイプの存在又はレベルを測定するための免疫複合体の平衡化を可能にする。結果として、必要とする対象に投与された生物製剤(例えば抗TNFα薬)に対するNAb及び/又は非NAbの存在又はレベルは、対象の試料中に存在する投与された生物製剤から実質的に妨害されることなく測定できる。特に、対象の試料は、生物製剤(例えば抗TNFα薬)の存在下であっても高い生物学的製剤レベルから実質的に妨害されることなくNAb及び/又は非NAbの存在又はレベルの測定をもたらすのに十分な量の酸とともにインキュベートできる。
【0161】
[0186]いくつかの実施形態において、本発明のアッセイ方法のステップ(a)は、
(a’)試料を酸と接触させて、自己抗体(例えば、その中和形及び/又は非中和形を含む。)と生物製剤(例えば抗TNFα薬)との予め形成された複合体を解離させるサブステップと、
(b’)予め形成された複合体の解離後に試料を標識生物製剤(例えば抗TNFα薬)及び標識生物製剤結合部分(例えばTNFα)と接触させるサブステップと、
(c’)試料中の酸を中和して、
(i)標識生物製剤(例えば抗TNFα薬)と自己抗体との第1標識複合体、及び/又は
(ii)標識生物製剤(例えば抗TNFα薬)と標識生物製剤結合部分(例えばTNFα)と自己抗体との第2標識複合体
を形成するサブステップと、
を含んでもよい。
【0162】
[0187]いくつかの代替の実施形態において、サブステップ(a’)及び(b’)は同時に行い、例えば、試料を同時に酸、標識生物製剤(例えば抗TNFα薬)及び標識生物製剤結合部分(例えばTNFα)と接触させる。他の代替の実施形態において、サブステップ(b’)は、サブステップ(a’)の前に行い、例えば、試料をまず標識生物製剤(例えば抗TNFα薬)及び標識生物製剤結合部分(例えばTNFα)と接触させ、次いで酸と接触させる。さらなる実施形態において、サブステップ(b’)及び(c’)は同時に行い、例えば、試料を標識生物製剤(例えば抗TNFα薬)及び標識生物製剤結合部分(例えばTNFα)と接触させ、同時に(例えば、試料を1又は複数の中和剤と接触させることによって)中和する。
【0163】
[0188]特定の実施形態では、試料を、自己抗体と生物製剤(例えば抗TNFα薬)との予め形成された複合体を解離するのに十分な量の酸と接触させ、標識生物製剤結合部分(例えばTNFα)、標識生物製剤(例えば抗TNFα薬)、未標識生物製剤(例えば抗TNFα薬)、及び生物製剤(例えば抗TNFα薬)に対する自己抗体が平衡化して、それらの間で複合体を形成できるようにする。あるいくつかの実施形態では、試料を、高レベルの生物製剤(例えば抗TNFα薬)の存在下で自己抗体の検出及び/又は測定を可能にするのに十分な量の酸と接触させることができる。
【0164】
[0189]いくつかの実施形態において、「高レベルの生物製剤」(例えば、高レベルの抗TNFα薬)というフレーズは、約10〜約100μg/mL、約20〜約80μg/mL、約30〜約70μg/mL又は約40〜約80μg/mLの薬物レベルを含む。他の実施形態において、「高レベルの生物製剤」(例えば、高レベルの抗TNFα薬)というフレーズは、約10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100μg/mL以上の薬物レベルを含む。
【0165】
[0190]いくつかの実施形態において、酸は有機酸を含む。他の実施形態において、酸は無機酸を含む。さらなる実施形態において、酸は有機酸と無機酸との混合物を含む。有機酸の非限定的な例としては、クエン酸、イソクエン酸、グルタミン酸、酢酸、乳酸、ギ酸、シュウ酸、尿酸、トリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、カンファ−10−スルホン酸、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、プロパン酸、ブタン酸、グリセリン酸、コハク酸、リンゴ酸、アスパラギン酸及びそれらの組み合わせが挙げられる。無機酸の非限定的な例としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸、臭化水素酸及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0166】
[0191]あるいくつかの実施形態において、酸の量は、約0.01M〜約10M、約0.1M〜約5M、約0.1M〜約2M、約0.2M〜約1M又は約0.25M〜約0.75Mの酸又は酸の混合物の濃度に相当する。他の実施形態において、酸の量は、約0.01M、0.05M、0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1M、2M、3M、4M、5M、6M、7M、8M、9M又は10M以上の酸又は酸の混合物の濃度に相当する。酸のpHは、例えば、約0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0又は6.5であり得る。
【0167】
[0192]いくつかの実施形態では、試料を、自己抗体と生物製剤(例えば抗TNFα薬)との予め形成された複合体を解離するのに十分な時間、酸と接触させる。あるいくつかの場合には、約0.1時間〜約24時間、約0.2時間〜約16時間、約0.5時間〜約10時間、約0.5時間〜約5時間又は約0.5時間〜約2時間、試料を酸と接触させる(例えばインキュベートする)。他の場合には、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9又は10時間以上の期間、試料を酸と接触させる(例えばインキュベートする)。試料は、酸と4℃、室温(RT)又は37℃で接触させることができる。
【0168】
[0193]あるいくつかの実施形態において、酸を中和するサブステップは、試料のpHを上昇させて、本明細書に記載の第1及び/又は第2標識複合体の形成を可能にすることを含む。いくつかの実施形態では、1又は複数の中和剤(例えば、強塩基、弱塩基、緩衝剤溶液、及びそれらの組み合わせ)を加えることによって酸を中和する。当業者であれば、中和反応がpH7をもたらすことを必ずしも意味しないことを理解するであろう。いくつかの場合において、酸の中和は塩基性の試料をもたらす。他の場合において、酸の中和は酸性(しかし、中和剤を加える前の試料のpHより高い)の試料をもたらす。特定の実施形態において、中和剤は緩衝剤(例えば、約7.3のpHのリン酸塩緩衝食塩水(例えば、10×PBS))を含む。
【0169】
[0194]いくつかの実施形態において、サブステップ(b’)は、内部対照を、標識生物製剤(例えば抗TNFα薬)及び標識生物製剤結合部分(例えばTNFα)と一緒に試料に接触させることをさらに含む(例えば予め形成された複合体の解離前、解離中又は解離後)。あるいくつかの場合において、内部対照は標識内部対照(例えばビオシチン−アレクサ488)を含む。あるいくつかの他の場合において、標識内部対照の量は、分析試料100μL当たり約1ng〜約25ng、約5ng〜約25ng、約5ng〜約20ng、約1ng〜約20ng、約1ng〜約10ng又は約1ng〜約5ngの範囲である。さらなる場合において、標識内部対照の量は、分析試料100μL当たり約1ng、5ng、10ng、15ng、20ng又は25ng以上である。
【0170】
[0195]本発明の方法の非限定的な一例として、試料、例えば血清試料(例えば、抗TNFα薬(例えばレミケード(IFX))による治療を受けている対象からの血清)を、0.5Mクエン酸、pH3.0と1時間、室温でインキュベートできる。(未標識)抗TNFα薬と抗TNFα薬に対する自己抗体(例えば、抗IFX抗体(ATI)等の抗薬物抗体)との間の予め形成された複合体の解離後に、標識抗TNFα薬(例えばIFX−アレクサ488)、標識TNFα(例えばTNFα−アレクサ532)、及び任意選択で内部対照を加え、反応混合物を、中和剤(例えば、10×PBS,pH7.3)を用いて(例えば直ちに)中和できる。中和後に、反応混合物を室温で(例えばプレート振とう器上で)さらに1時間インキュベートして平衡化を可能にし、標識TNFα、標識抗TNFα薬、未標識抗TNFα薬、及び/又は抗TNFα薬に対する自己抗体の間の免疫複合体の再形成を完了できる。次いで、試料をろ過し、本明細書に記載のようにしてSEC−HPLCにより分析できる。
【0171】
[0196]特定の実施形態において、(例えば、酸解離とその後の均質溶液相結合動態とを含む)本発明の方法は、NAb及び/又は非NAb ATIを約60μg/mLまでのIFXの存在下で測定できるほどIFX薬物耐容性を著しく増加する。言い換えると、本発明の方法は、抗TNFα薬に対するNAb及び/又は非NAb(例えばATI)並びに他の抗TNFα薬に対する自己抗体の存在又はレベルを、高レベルの抗TNFα薬(例えばIFX)の存在下であっても高レベルの該薬物から実質的に妨害されることなく検出できる。
【0172】
[0197]酸解離を用いて抗薬物抗体を検出するための方法は、2012年2月16日に出願された国際出願PCT/US2012/025437(その開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。)にさらに記載されている。
【0173】
V.生物学的治療
[0198]本発明のアッセイは、対象(例えば、生物学的治療を受けている対象)からの試料中の任意の生物製剤に対する中和及び/又は非中和自己抗体の存在若しくは非存在(例えば、陽性であるか陰性であるか)、レベル又はパーセントを検出及び/又は測定するために適切である。生物製剤の非限定的な例としては、抗体、抗体断片、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質(例えばIg融合タンパク質又はFc融合タンパク質)、多価結合タンパク質(例えばDVD Ig)、抗体−薬物コンジュゲート、ワクチン、核酸、糖、それらの組換え形、それらの工学改変形及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0174】
[0199]抗体ベースの生物製剤の例としては、それらに限定されないが、治療用モノクローナル抗体及びその抗原結合断片が挙げられる。特定の実施形態において、抗体は、抗TNFα薬、例えば、レミケード(商標)(インフリキシマブ)、ヒュミラ(商標)(アダリムマブ)、シムジア(登録商標)(セルトリズマブペゴール)、シンポニー(登録商標)(ゴリムマブ、CNTO148)又はそれらの組み合わせを含む。抗体ベースの生物製剤のさらなる例としては、アドセトリス(Adcetris)(商標)(ブレンツキシマブベドチン)等の抗体−薬物コンジュゲートが挙げられる。表1は、承認されているか又は現在開発中のいずれかである治療用モノクローナル抗体の例示的なリストを示す。臨床開発中及び承認された製品中のモノクローナル抗体治療薬の網羅的なリストは、「418 Biotechnology Medicines in Testing Promise to Bolster the Arsenal Against Disease」との表題の2006 PhRMAレポート(その開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。)に示されている。
【0175】
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】

【表1-4】

【表1-5】
【0176】
[0200]タンパク質ベース又はポリペプチドベースの生物製剤の非限定的な例としては、サイトカイン(例えばインターロイキン)、ケモカイン、増殖因子、血液生成刺激タンパク質(例えばエリスロポエチン)、ホルモン(例えばエロンヴァ(Elonva)(登録商標)(卵胞刺激ホルモン)、成長ホルモン)、酵素(例えばプルモザイム(Pulmozyme)(登録商標)(ドルナーゼアルファ))、凝固因子、インスリン、アルブミン、それらの断片、それらの保存的改変バリアント、それらの類似体及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0177】
[0201]サイトカインの例としては、それらに限定されないが、TNFα、TNF関連アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)、オステオプロテジェリン(OPG)、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、インターロイキン(例えばIL−1α、IL−1β、IL−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、可溶性IL−6受容体(sIL−6R)、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、IL−15、IL−17、IL−23及びIL−27)、アディポサイトカイン(例えば、レプチン、アディポネクチン、レジスチン、活性又はトータルプラスミノゲン活性化因子阻害剤−1(PAI−1)、ビスファチン及びレチノール結合タンパク質4(RBP4))及びそれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態において、インターロイキンはIL−2(例えば、プロリューキン(Proleukin)(登録商標)(アルデスロイキン;組換えIL−2))を含む。
【0178】
[0202]ケモカインの例としては、それらに限定されないが、CXCL1/GRO1/GROα、CXCL2/GRO2、CXCL3/GRO3、CXCL4/PF−4、CXCL5/ENA−78、CXCL6/GCP−2、CXCL7/NAP−2、CXCL9/MIG、CXCL10/IP−10、CXCL11/I−TAC、CXCL12/SDF−1、CXCL13/BCA−1、CXCL14/BRAK、CXCL15、CXCL16、CXCL17/DMC、CCL1、CCL2/MCP−1、CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1β、CCL5/RANTES、CCL6/C10、CCL7/MCP−3、CCL8/MCP−2、CCL9/CCL10、CCL11/エオタキシン、CCL12/MCP−5、CCL13/MCP−4、CCL14/HCC−1、CCL15/MIP−5、CCL16/LEC、CCL17/TARC、CCL18/MIP−4、CCL19/MIP−3β、CCL20/MIP−3α、CCL21/SLC、CCL22/MDC、CCL23/MPIF1、CCL24/エオタキシン−2、CCL25/TECK、CCL26/エオタキシン−3、CCL27/CTACK、CCL28/MEC、CL1、CL2、CXCL1及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0179】
[0203]増殖因子の非限定的な例としては、上皮増殖因子(EGF)、ヘパリン結合上皮増殖因子(HB−EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、色素上皮由来因子(PEDF;SERPINF1としても知られる)、アンフィレギュリン(AREG;シュワン細胞腫由来増殖因子(SDGF)としても知られる)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、トランスフォーミング増殖因子−α(TGF−α)、トランスフォーミング増殖因子−β(例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3)、エンドセリン−1(ET−1)、ケラチノサイト増殖因子(KGF;FGF7としても知られる)、骨形成タンパク質(例えば、BMP1〜BMP15)、血小板由来増殖因子(PDGF)、神経増殖因子(NGF)、β−神経増殖因子(β−NGF)、神経栄養因子(例えば、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン3(NT3)、ニューロトロフィン4(NT4))、増殖分化因子−9(GDF−9)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、ミオスタチン(GDF−8)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0180】
[0204]受容体構築物ベース又は融合タンパク質ベースの生物製剤の例としては、それらに限定されないが、免疫グロブリンフレームと連結された自然に存在する受容体(例えば、オレンシア(Orencia)(登録商標)(アバタセプト;免疫グロブリンCTLA−4融合タンパク質)、アメビブ(Amevive)(登録商標)(アレファセプト;IgG1融合タンパク質)、エンブレル(商標)(エタネルセプト;組換えヒトTNF受容体融合タンパク質))、2つの異なるポリペプチド種を組み合わせる工学改変タンパク質(例えば、オンタック(Ontak)(登録商標)(デニロイキンジフチトクス;インターロイキン−2とジフテリア毒素とを含む工学改変タンパク質))、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0181】
[0205]本発明は、本明細書及び表1に記載の疾患又は障害の1又は複数(例えば、下記疾患又は障害の1又は複数)についての生物学的治療を受けている対象からの試料中の抗TNFα薬等の生物製剤に対する中和及び非中和自己抗体の存在又はレベルを検出及び測定するための方法において使用できる。
【0182】
炎症性疾患、例えば、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC))、ぶどう膜炎、サルコイドーシス、ウェゲナー肉芽腫症、及び炎症が中心的特徴である他の疾患;
自己免疫疾患、例えば、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、強直性脊椎炎(ベヒテレフ病)、ループス、乾癬性関節炎、若年性特発性関節炎、乾癬、及びエリテマトーデス;
癌、例えば、消化器及び胃腸の癌(例えば、大腸癌(colorectal cancer)、小腸(small intestine(small bowel))癌、消化管間質腫瘍、消化管カルチノイド腫瘍、結腸癌(colon cancer)、直腸癌(rectal cancer)、肛門癌、胆管癌、胃(gastric(stomach))癌、食道癌、虫垂癌)、胆のう癌、肝癌、膵癌、乳癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、前立腺癌、卵巣癌、腎癌(例えば腎細胞癌)、中枢神経系の癌、皮膚癌、絨毛癌、頭頚部癌、血液悪性腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫(例えばB細胞性非ホジキンリンパ腫))、骨肉腫(例えばユーイング肉腫)、軟部組織肉腫(例えば隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)、横紋筋肉腫)、その他の軟部組織悪性腫瘍、及び甲状腺乳頭癌;
感染性疾患、例えば、クロストリジウム・ディフィシル病、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、HIV、炭疽、カンジダ症、ブドウ球菌感染症、及びC型肝炎;
血液障害、例えば、敗血症、敗血症性ショック、発作性夜間ヘモグロビン尿症、及び溶血性尿毒症症候群;
循環器疾患、例えば、アテローム動脈硬化症、急性心筋梗塞、心肺バイパス術、及びアンギナ;
代謝疾患、例えば糖尿病(例えばI型糖尿病);
遺伝性疾患、例えば発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH);
神経障害、例えば、変形性関節症痛及びアルツハイマー病;
呼吸器疾患、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、鼻ポリポーシス、及び小児喘息;
皮膚疾患、例えば、慢性で中等度から重度の尋常性乾癬を含む乾癬;
移植片拒絶、例えば、急性腎移植片拒絶、心肝移植片拒絶の反転、腎移植片拒絶の防止、急性腎移植片拒絶の予防、及び腎移植片拒絶;及び/又は
他の障害、例えば、腎臓炎症、閉経後骨粗鬆症(骨障害)、好酸球増加症候群、好酸球性食道炎、及びピーナッツアレルギー。
【0183】
[0219]特定の実施形態において、対象は、TNFα媒介疾患又は障害、例えば、自己免疫疾患(例えば関節リウマチ)又は炎症性疾患(例えば、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)等の炎症性腸疾患(IBD))を有する。
【0184】
VI.実施例
[0220]本発明を具体的な実施例によりさらに詳細に説明する。以下の実施例は説明のために提供されるものであり、本発明を限定することを意図したものではない。当業者であれば、変更又は改変しても本質的に同じ結果が得られる種々の重要でないパラメータを容易に理解するであろう。
【0185】
[0221]国際出願PCT/US2012/025437(出願日:2012年2月16日)の実施例は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。
【0186】
実施例1(IBD患者における中和抗薬物抗体の形成をモニタリングするための新規アッセイの開発):
[0222]本実施例は、標識(例えば蛍光標識)抗TNFα薬及び標識TNFαの存在下でサイズ排除クロマトグラフィーを用いて、患者試料(例えば血清)中の中和及び/又は非中和抗薬物自己抗体(ADA)の存在又はレベルを検出又は測定するための新規な均質アッセイを説明する。特定の実施形態において、本アッセイは次の理由により有利である。低親和性ADAを除去する洗浄ステップの必要性を除去する;バックグラウンド及び血清干渉の問題を減少させる可視及び/又はIRスペクトルでの検出を可能にする特異的な標識(例えば蛍光体)を使用する;蛍光標識検出の感度が高く、患者での低力価の中和及び/又は非中和ADAを検出する能力を増加させる;液相反応として生じ、そのため、固体表面(例えばELISAプレート)への結合によるエピトープのどのような変化の可能性も低減する。
【0187】
[0223]インフリキシマブ(IFX)及びアダリムマブ(ADL)は、炎症性腸疾患(IBD)の治療のために処方される抗TNFモノクローナル抗体である。治療コース中にしばしば抗薬物抗体(ADA)が発生する。これらのADAの一部は中和抗体(NAb)である。ADAは薬物動態に負の影響を及ぼすが、NAbの存在は、薬物の結合部位を遮断することによって薬物の効力の喪失をさらに引き起こす。本実施例は、IFX治療を受けているIBD患者におけるNAbの発生を、均質移動度シフトアッセイ(HMSA)プラットフォームに基づいてモニタリングするためのアッセイについて記載し、インフリキシマブに対する抗体(ATI)成熟とNAb形成との間の相関を示す。
【0188】
[0224]方法:
IFX及びATIの血清濃度は、例えば国際出願PCT/US2012/025437(出願日:2012年2月16日)及び国際公開第2011/056590号パンフレット(それらの開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。)に記載されるHMSAにより測定した。NAbアッセイのために、ATIを含有する患者血清をまず酸解離し、次いで、2つの標識タンパク質(例えばIFX−アレクサ488及びTNFアルファ−アレクサ532)を加えた後に中和した。溶液を2%血清まで希釈し、HPLCによりサイズ排除カラムに注入し、複合体を蛍光によりモニタリングした。各スペクトル(例えばプロット又はクロマトグラム)における遊離TNF−アレクサ532ピークの曲線下面積(AUC)を対照及び患者試料について算出し、次いで、パーセントNAbを算出した。抗原結合を完全に遮断したATIは100%NAbとされ、50%は、試料中の等しい割合のATIが非NAbであることを意味し、0%は、すべてのATIが非NAbであることを意味する。基準範囲は、75名の健常ボランティアからの血清を用いて確立した。IFX及びATIレベルについてスクリーニングした132名の残りのIBD患者血清からのATI陽性血清試料(>3.13U/mL)をNAbについて分析した。陽性対照は、プールしたATI陽性患者血清を用いて創出した。
【0189】
[0225]データ分析に関しては、ピーク検出アルゴリズムを用いて、実験ごとの各スペクトルにおけるすべてのピーク及び谷を見出す。3次平滑化スプラインを各スペクトルに当てはめ、ピーク及び谷をシグナルの1次導関数の変化と定義する。ピークは、スペクトルの傾きの正から負への符号の変化である。逆に、谷は負から正への符号の変化として定義する。遊離TNF−アレクサ532ピークの予測される位置(例えば11.5〜13分)でのウィンドウ内の最高のピークを遊離ピーク自体とする。検出された遊離ピークのすぐ上及び下の谷はピーク自体の上限及び下限を規定する。結合ピーク、遊離(TNF及びIFX)ピーク及び陰性対照ピークの下の面積は、台形公式を用いる上記限界内のピーク面積を積分することによって求められる。次いで、TNF−アレクサ532ピーク面積の%を、式:
%=[(a−b)/c]×100
[式中、a=未知試料中のTNF−アレクサ532ピークのAUC、b=NAb陰性対照(例えば、正常ヒト血清中のIFX−アレクサ488+TNF−アレクサ532)からのTNF−アレクサ532ピークのAUC、及びc=正常ヒト血清中の遊離TNF−アレクサ532のAUC]
を用いて各試料について算出する。算出のために、「c」は100%に設定し、「b」は可能な限り0%に近い(ただし、反応条件により変動し得る)。「b」及び「c」の間の範囲が感度の最大ウィンドウを規定する。
【0190】
[0226]結果:
本発明のNAbアッセイは高い再現性、正確度及び精度を示す。アッセイ内及びアッセイ間精度はCVの20%未満であり、アッセイの正確度は25%以内である。本発明のNAbアッセイを用いて得られる精度及び正確度は細胞ベースのアッセイ又はELISAよりも実質的に優れている。IFX薬物耐容性は約6μg/mLであるが、TNFαは1.0ng/mLを超えると障害となる。プールしたATI陽性患者血清からの陽性対照は、40〜5%のNAbから直線的に希釈する。健常対照の分析は、≧3%(例えば3.06%)の値を戻す試料がNAb陽性とみなされることを示す。30を超えるATI陽性患者血清試料(3.12〜199.43U/mL)をNAbについてスクリーニングし、132のATI陽性患者血清試料のうち26(19.7%)がNAb陽性であった(平均22.47%、範囲3.29〜51.63%)。60U/mLを超えるATIレベルは高度に中和性のAbに相当した。NAb陽性試料のさらなる分析は、ATI力価とNAb陽性との間の直線的な相関を明らかにする。特に、図1は、NAbパーセント(y軸)とATIレベルとの間に明らかな関係があったことを説明する(スピアマン順位相関係数、ロー=0.564、p<<0.0001)。図2は、≧60U/mlのATI濃度がNAb陽性(NAb+)を予測できることを説明する。感度=77.8%;特異度=98.1%;オッズ比=63.6、p<<0.0001、フィッシャーの正確確率検定。図3は、ATIカットオフ分析を説明し、0.931のROC AUCでATIがNAbを予測することを示す。真陽性率(TPR)=感度;偽陽性率(FPR)=1−特異度。
【0191】
[0227]結論:
薬物及びADAレベルに加えてNAbをモニタリングすることは、ADA応答についての必要な情報を提供し、早期の治療的介入の指針を得る助けとなる。本方法は、任意の生物学的治療に対するADAの特徴決定のために用いることができる。
【0192】
実施例2(経時的な中和抗薬物抗体形成をモニタリングするための患者症例研究):
[0228]本実施例は、標識(例えば蛍光標識)抗TNFα薬及び標識TNFαの存在下でサイズ排除クロマトグラフィーを用いて、患者試料(例えば血清)中の中和及び/又は非中和抗薬物自己抗体(ADA)の存在又はレベルを検出又は測定するための新規な均質アッセイのさらなる実施形態を説明する。さらに、本実施例は、中和及び/又は非中和抗薬物抗体の形成、及び/又は患者が治療を受けている間の非中和抗薬物抗体から中和抗薬物抗体へのシフトをモニタリングするための、抗TNFα薬治療を受けているIBD患者の経時的症例研究を示す。
【0193】
1.薬物及び抗薬物抗体アッセイ
[0229]図4は、本明細書に記載の流体相移動度シフトアッセイによるATI(すなわちIFXに対する抗体;「HACA」)の検出を説明する。例えば、444ngのアレクサ488標識IFX(100%血清中に18.8μg/ml)を試料に添加して、遊離IFXと競合させる。特定の実施形態では、IFXとATIとの複合体を含有する患者血清試料を酸解離に供することができ、ここでは、酸解離を用いる平衡化と標識添加及びそれに続く中和とを行う。
【0194】
[0230]図5は、本発明の例示的なATI/IFX流体相移動度シフトアッセイを説明する。例えば、蛍光標識インフリキシマブ(IFX−488)と平衡化した種々の濃度のATI(標準又は未知)を含有する試料を2%血清の状態でサイズ排除カラムに注入した。図5は、大きいIFX−488/ATI複合体がまず溶出し、その後、より小さい複合体、次いで未結合IFX−488及びアレクサ488装填対照が溶出したことを示す。未知濃度は標準曲線からの補間により決定した。IFXの検出は同様の方法に従った。
【0195】
2.中和及び非中和抗薬物抗体アッセイ
[0231]図6及び7は、ATI等の抗薬物抗体が中和又は非中和自己抗体のいずれであるかを、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて決定して、蛍光標識TNFαの存在下で蛍光標識抗TNFα薬とこれらの自己抗体との結合を検出するための本発明のアッセイを説明する。例示的な一実施形態では、IFX等の抗TNFα薬を蛍光体「F1」で標識し、該蛍光体は可視及びIRスペクトルのいずれか又は両方で検出できる。同様に、TNFαを蛍光体「F2」で標識し、該蛍光体も可視及びIRスペクトルのいずれか又は両方で検出でき、「F1」及び「F2」は異なる蛍光体である。標識抗TNFα薬及び標識TNFαを液相反応においてヒト血清とインキュベートして、標識抗TNFα薬(例えばIFX)、標識TNFα及び/又は血清中に存在する抗薬物抗体(例えばATI)の間の複合体(すなわち免疫複合体)の形成を可能にする。
【0196】
[0232]インキュベーション後に、試料をサイズ排除カラムに直接装填し、HPLC移動度シフトアッセイに供する。図6は、本発明の非中和抗薬物抗体(ADA)アッセイを説明し、該アッセイでは、抗薬物抗体(例えばATI)及び標識TNFα(例えば、アレクサ532標識TNFα;「TNF−532」)の両方と標識抗TNFα薬(例えば、アレクサ488標識IFX;「IFX−488」)との結合が、遊離TNF−532レベルの減少をもたらす。図7は、本発明の中和ADAアッセイを説明し、該アッセイでは、抗薬物抗体(例えばATI)と標識抗TNFα薬(例えばIFX−488)との結合(標識TNFα(例えばTNF−532)と結合せずに)が、TNF−532対照と実質的に同じ量の遊離TNF−532レベルをもたらす。
【0197】
3.中和及び非中和抗薬物抗体をモニタリングするための経時的研究
[0233]図8〜11は、本発明の移動度シフトアッセイを用いてATI等の抗薬物抗体が中和又は非中和自己抗体であるかを決定するためのUC患者症例研究からのデータを説明する。例えば、図8は、1、2又は3ヶ月の期間を置いて採取した5つの試料の経時的なIFX及びATIのレベルを説明する。図9は、遊離TNFαの経時的なパーセンテージを決定するためのピーク分析を示す。特に、TNF−532/IFX−488複合体のピーク面積をすべての試料の遊離標識TNFα面積から差し引き、その後、遊離TNFαの%を算出した。顕著なことに、図9は、1、2又は3ヶ月の期間を置いて採取した5つの試料の経時的な遊離TNFαのレベルの増加を示し、該増加は中和自己抗体レベルの増加を示す。図10は、2又は3ヶ月の期間を置いて採取し、IFXを添加した3つの試料中で例示される、非中和自己抗体の存在から中和自己抗体の存在への経時的なシフトを説明する。「1年目11月」試料について、非中和抗体は添加されたIFXと結合し、TNF−532ピークの減少を示す。「2年目1月」試料について、中和抗体(NAb)/非中和抗体(Ab)混合物は、初期複合体のレベルと比べてTNF−532ピークのわずかな減少を示す。ATIはほぼ完全に中和性になる(「2年目4月」試料)ので、高いIFXレベルはIFXと結合するATIに打ち勝てず、いずれのTNFα結合も妨げられる。すなわち、図10は、ATIプロファイルが非中和ATIプロファイルから中和ATI及び非中和ATIの混合物を含有するプロファイル、さらに中和ATIプロファイルへとIFX治療コースにわたってシフトするUC患者ATIプロファイルを示す。図11は、IFXを添加した試料中の遊離TNFαの経時的なパーセンテージを決定するためのピーク分析を示す。特に、TNF−532/IFX−488複合体のピーク面積をすべての試料の遊離TNFα面積から差し引き、その後、遊離TNFαのパーセント(%)を算出した。顕著なことに、図11は、UC患者から採取した試料の経時的な遊離TNFαのレベルの増加を示し、該増加は、患者がIFX治療を受けている間の中和自己抗体レベルの増加及び非中和ATIから中和ATIへのシフトを示す。
【0198】
[0234]図12〜14は、本発明の移動度シフトアッセイを用いて行った種々の対照を説明する。特に、図12は、非中和抗体(Ab)対照としてのウサギ抗ヒトIgG1 Fcの使用を示す。図13は、中和抗体(NAb)/非中和抗体(Ab)混合対照としてのATI陽性血清の使用を示す。図14は、ATI陽性血清からのATIの精製が弱親和性NAbの喪失をもたらすことを示す。図15は、種々の対照中の遊離TNFαのパーセンテージを決定するための、UC患者症例研究からのピーク分析を説明する。特に、TNF−532/IFX−488複合体のピーク面積をすべての試料の遊離TNFα面積から差し引き、その後、遊離TNFαのパーセント(%)を算出した。
【0199】
[0235]図16〜18は、本発明の移動度シフトアッセイを用いてATI等の抗薬物抗体が中和又は非中和自己抗体であるかを決定するための、CD患者症例研究からのデータを説明する。例えば、図16は、30週間の期間中に7又は8週間の期間を置いて採取した4つの試料の経時的な遊離TNFαのパーセンテージを決定するための、CD患者症例研究からのピーク分析を示す。さらに、図17は、50週間の期間中に採取した3つの試料の経時的な遊離TNFαのパーセンテージを決定するための、別のCD患者症例研究からのピーク分析を示す。さらに、図18は、治療の導入若しくは維持中又は導入若しくは維持後の特定の週の試料中の遊離TNFαのパーセンテージを決定するための、4つのさらなるCD患者症例研究からのピーク分析を示す。
【0200】
実施例3(HPLC移動度シフト競合リガンド結合アッセイによる中和抗体(NAb)活性の検出):
[0236]本実施例は、HPLCサイズ排除クロマトグラフィーアッセイを用いて、患者試料(例えば血清)中の中和及び/又は非中和抗薬物自己抗体(ADA)の存在又はレベルを検出又は測定するための新規な均質アッセイのなおさらなる実施形態を説明する。さらに、本実施例は、代替生物学的製剤(例えば、他の抗TNF薬)とのNAbの交差反応性を予測及び/又は決定するための方法を実証する。
【0201】
[0237]いくつかの実施形態において、免疫原性試験のための多段アプローチは、迅速で高感度なスクリーニングアッセイによる薬物及び抗薬物抗体の両方の第1スクリーニングを含む。本アプローチは、FDA及びEMEAの両方により推奨されており、大規模臨床試験及び患者当たり複数の時点のための有用な管理ツールである。ATI等のADAの存在を確認した後に、患者試料を、著しい負の臨床結果をもたらすことがある中和抗体の存在についてさらに調べる。中和抗体は、活性部位と若しくは活性部位付近に結合することによって、又は効力の喪失を導く高次構造変化を導入することによって生物活性に干渉する。ATIを含有する試料は、アイソタイプ及びエピトープ特異性についてもスクリーニングしてもよい。ADA発生前後の生成物に対する患者の臨床応答の比較により、ADA発生(及び抗体の特徴)と臨床応答との間の相関についての情報を得ることができる。
【0202】
[0238]HPLC移動度シフトアッセイを利用するNAbアッセイは本明細書に記載のようにして開発された。あるいくつかの実施形態において、多段アプローチ又は試験は、次の段階のいずれか1、2又は3つすべてを含むか又はそれからなる。(1)スクリーニングを行って、試料がNAb陽性であるかを定性的に決定する(正常ヒト血清の分析から確立されたカットポイントに基づく肯定/否定);(2)例えば免疫競合及び/又は免疫枯渇を用いて試料がNAb陽性であることを確認する;及び/又は(3)代替生物学的製剤とのNAbの交差反応性を予測及び/又は決定する。
【0203】
I.スクリーニング段階
[0239]患者試料がADAについて陽性であると確認した後に該試料をNAbについてスクリーニングできる。あるいくつかの態様において、ADAの部分集団はNAbである。あるいくつかの実施形態では、ADA(例えば、IFXに対する抗体(「ATI」又は「HACA」としても知られる。))を含有する患者血清を、まず、HPLC水中の0.5Mクエン酸を用いて1時間、室温(RT)で酸解離する。試料を96ウェルプレート中に調製し、暗所中、プレート振とう器上でインキュベーションを行う。次いで、2つの標識タンパク質(例えば、0.1%BSAを含有するHPLC水中の薬物−アレクサ488(例えばIFX−アレクサ488)及びTNFα−アレクサ532)を加える。10×PBS、pH7.3を加え、暗所中、プレート振とう器上で1時間、RTでインキュベートすることによって試料を中和する。さらなる10×緩衝剤及びHPLC水を用いて試料を2%血清まで希釈する。次いで、試料をHPLCによりサイズ排除カラムに注入する。異なるサイズの複合体又は種は、蛍光、例えば、遊離TNFα−アレクサ532(「TNF532」)、遊離IFX−アレクサ488(「IFX488」)、TNF532/IFX488複合体、TNF532/IFX488/ATI複合体(非中和Ab)及びATI/IFX488複合体(NAb)により分離及びモニタリングされる。結果を陰性(例えば図12、19を参照されたい)及び陽性(例えば図13を参照されたい)対照並びに正常ヒト血清から確立したカットオフ(例えば、3.06%NAbの基準範囲)と比較した後に、試料をNAbについて陽性又は陰性に割り当て、力価を決定できる。
【0204】
[0240]図19は、移動度シフトアッセイによる非中和抗体活性の検出を示す。TNF532とIFX488との組み合わせにより、約8分の保持時間へのシフトがあり、該シフトは、より高い分子量の複合体の形成を示す。遊離IFX−488ピーク(10.5分付近)は完全に消滅し、遊離TNF−532ピーク(12分付近)もほぼ完全に消滅する(ATI/IFX/TNF3元複合体の形成を示す)。IFXの活性部位から離れて結合する非中和Abは、同様のパターンをたどる。マウスモノクローナル抗体(例えば7分付近)は所望の通りに挙動する。
【0205】
[0241]図13は、移動度シフトアッセイによる中和抗体活性の検出を示す。完全に中和するAbは、TNFと結合するIFXの能力を(例えば、活性部位の遮断により)妨げる。このことは、クロマトグラムにおいて、IFX−488ピークの消滅及びより高い分子量種の形成として観察される。TNF−532ピークは変化しない。実際には、ほとんどの患者は、図13中のプールした患者血清(ATI陽性血清、黒の実線)において観察されるように非中和/中和Abの組み合わせを経験する。改良NAb陽性対照としてのIFX/ヒュミラのF(ab’)2断片に対するウサギポリクローナル抗体も有用である。
【0206】
[0242]図8は、IFX治療の過程中の患者における経時的なNAb応答の発生を説明する。患者はすべての時点でATIについて陽性であるが、2年目の1月(淡い灰色の矢印、約12分の上から3つ目)の時点までNAbは発生しない。ATI/IFX−488複合体は、わずかに異なる保持時間(約7.8分)までシフトし、該シフトは、TNF532/IFX488/ATIの複合体(約8.2及び8.8分)と比較して異なるサイズの複合体を示す。無関係のタンパク質に対するさらなるIFXの存在における中和活性の確認(免疫競合)も行うことができる。そのような患者は治療法の調整の理想的な候補である。
【0207】
[0243]図9は、残存している%遊離TNFピークのAUCの棒グラフとしてデータをプロットし、患者がNAbを経時的に発生していることを明らかに実証する。早期の時点で観察される低レベルのNAbの発生も疾患の再発を予測できる。この活性を示す患者に関しては治療法の調整が推奨される。例えば、患者は、現行の抗TNF薬を服用しつつ1又は複数の免疫抑制剤(例えば、メトトレキセート(MTX)、アザチオプリン(AZA))を使用し、及び/又は異なる抗TNF薬に切り替えるべきである。
【0208】
II.確認段階
[0244]確認段階では、薬物(例えば抗TNFα抗体)を試料に種々の濃度(例えば、1〜50μg/mL)で添加して、試料の中和能力を決定する。並行して、非特異的IgGを同様のレベルで添加する。薬物を添加した試料は薬物に対する用量応答を示すはずであり、NAbのEC50を算出できる。非特異的IgGは何の影響も有しないはずである。必要であれば、免疫枯渇を行って母体の影響を除外することもできる。
【0209】
[0245]図10は、2又は3ヶ月の期間を置いて採取し、IFXを添加した3つの試料中で例示される、非中和自己抗体の存在から中和自己抗体の存在への経時的なシフトを説明する。各時点での患者血清は添加されたIFXに対して応答し、応答の特異性を示す。経時的にNAbはより中和性になり、最終的に、>20μg/mLのIFXを中和できる(2年目4月試料はIFXを添加しても減少しない)。完全な力価決定を行って、各時点でのNAbのEC50を決定できる。
【0210】
III.交差反応性段階
[0246]交差反応性段階は、患者が薬物又は治療(例えば、抗TNFα薬又は治療)に応答するかを予測するのに特に有用である。
【0211】
[0247]いくつかの実施形態において、本発明は、一連の異なる抗TNF治療薬と交差反応する抗薬物抗体(ADA)の能力に基づいて、どの治療薬が患者(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎又は関節リウマチ患者)において働くか否かを迅速に決定する方法を提供する。非限定的な例として、レミケード(インフリキシマブ)に対するNAbを有する患者(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎及び/又は関節リウマチ患者)において、次の薬物の1又は複数を試験できる。エンブレル(エタネルセプト);ヒュミラ(アダリムマブ);シムジア(セルトリズマブペゴール);及びシンポニー(ゴリムマブ)。具体的な薬物(例えばIFX)を用いてNAbについての陽性を試験した後に、NAbアッセイを、一連の他の薬物(例えば蛍光標識薬物)を用いて上記初期NAb試験法により行うことができる。
【0212】
[0248]本発明の予測試験は、患者の抗体により中和される薬物(例えば抗TNFα薬)の使用を防止することによって患者の治療の管理に有用である。いずれの特定の理論にも束縛されるものではないが、中和ADAの結合部位の配列は、TNFαのそれに類似するように発生した可能性がある(図20を参照されたい)。NAbが他のいずれかの抗TNF薬を中和するならば、これらの他の抗TNF薬は、既に投与されている薬物の代替としては乏しい可能性がある。なぜなら、患者は免疫応答を有する可能性があるからである。いくつかの実施形態では、正常ヒト血清から確立されたカットオフを用いて、患者からの試験試料が陽性であるか陰性であるかを決定できる。試験は、迅速で費用対効果の高い様式でin vitroの設定で行うことができる。
【0213】
[0249]以下の非限定的な症例研究は、レミケード(インフリキシマブ)で治療されたが、レミケードに対する応答をその後喪失した患者1及び2を含んだ。患者1はUCを有し、患者2はCDを有した。本明細書に記載の移動度シフトアッセイは、患者1及び2が抗レミケード抗体(例えばATI)を発生するにつれてレミケードに対する応答を喪失することを明らかに実証した。次いで、これらの抗レミケード抗体は中和抗体(例えばNAb)であることが示された。
【0214】
[0250]図21は、患者1及び2が中和抗体(NAb)を発生したことを説明する。これらのNAbはレミケード結合部位についてTNFαと競合する。重要なことに、これらのNAbは他の抗TNF治療薬と交差反応性であり得る。NAbが他の抗TNF治療薬と交差反応するならば、別の抗TNF治療薬に変更することは患者の助けにならない。すなわち、本発明の予測アッセイは、別の抗TNF剤に変更することにより陽性HACA(検出可能な抗体)を管理する、レミケードに対する応答を喪失した患者を管理する現在の方法(例えば、Afifら,Am.J.Gastroenterol.,105(5):1133〜9頁(2010)を参照されたい)に対して利点を提供する。
【0215】
[0251]ある抗TNF薬に応答して生成されたNAbの、他の抗TNF薬との交差反応性を決定するために、患者がレミケード(IFX)を受けているときに発生したNAbをヒュミラ(アダリムマブ)に対して試験した。図21に示すデータは、IFXに対して生じたNAbがヒュミラと交差反応することを明らかに実証した。図21は、遊離ヒュミラピーク(10〜11分の間、各患者研究の下のパネル)が、NAbを含有する患者血清を加えたときにより高い分子量に完全にシフトすることを説明する(約12分、患者研究#1;約12分、患者研究#2;各患者研究の下のパネル)。これらの結果は、TNFαがヒュミラの抗原結合部位にアクセスすることをNAbがある程度妨げるような様式でNAbがヒュミラと結合することを示す。図22は、このことをNAb及び非NAb決定の両方について模式的に描く。
【0216】
[0252]あるいくつかの実施形態において、本発明のアッセイ方法は、これらの患者がヒュミラ又はいずれの他の抗TNF治療薬にも応答しないことを予測する。患者は、抗TNF治療により治療されるべきでなく、それらに限定されないが、関節リウマチ(RA)についてアクテムラ、キネレット、オレンシア、リツキサン及び/又はアルゼラ、又はクローン病(CD)についてタイサブリ及び/又はステロイドを含む代替治療選択肢に切り替えるべきである。
【0217】
[0253]したがって、本発明の方法は、患者からの試料中の中和抗体(NAb)及び/又は非NAbの存在及び/又は濃度レベルを決定又は測定することによって、患者が抗TNFα治療に応答するかを予測することに関して特に有利である。一実施形態では、試料がある抗TNFα薬に対するNAbを含有するならば、これらのNAbは、他の抗TNFα薬と交差反応し、かつ該薬物を中和する可能性があり、そのため、該患者に関しては、異なる作用機序を有する薬物(例えば非抗TNF薬)に切り替えるように治療法を調整することが推奨される。別の実施形態では、試料がある抗TNFα薬に対する非中和ADAを含有するならば、該患者に関しては、別の抗TNFα薬に切り替えるように治療法を調整することが推奨される。
【0218】
実施例4(中和抗薬物抗体(NAb)の存在及び交差反応性の検出のためのアッセイ):
[0254]本実施例は、試料がNAb陽性であるかを決定するためのスクリーニング、並びに代替生物学的製剤とのNAbの交差反応性の予測及び/又は決定(例えば実施例3を参照されたい)のための本発明のアッセイ方法に関するさらなる実施形態を説明する。特定の実施形態において、本明細書に記載のアッセイ方法は、対象から得られた試料がNAbについて陽性又は陰性のいずれであるかを決定することによって、第1抗TNFα薬を受けている対象が代替抗TNFα治療に応答するかを予測するのに有用である。試料がNAbについて陽性であるならば、方法は、NAbが第2抗TNFα薬と交差反応するかを決定するステップと、NAbが第2抗TNFα薬と交差反応する場合に、非抗TNFα薬に切り替えることを対象に推奨するステップとを含む。試料がNAbについて陰性であるならば、方法は、第2抗TNFα薬に切り替えることを対象に推奨するステップを含む。
【0219】
[0255]図23は、本発明の例示的NAb標準曲線の作製及び使用を示す。蛍光標識TNF−532/IFX−488と平衡化した種々の濃度のウサギ(Rb)抗IFX抗体(ATI)血清(標準又は未知)を含有する試料を2%血清の状態でサイズ排除カラムに注入した。大きい免疫複合体がまず溶出し、その後、より小さい複合体、次いで未結合のIFX−488及びTNF−532が溶出した。未知濃度は標準曲線からの補間により決定できる。NAb及び非NAbの異なる混合物を含有するウサギ血清を組み合わせて、対象を作製できる。本明細書に記載のNAbアッセイは、11.63%の古いカットオフと比較して、2.72%の改善されたカットオフを有する(N=50正常試料)。表2は、患者によるNAb臨床研究のサマリーを示す。
【0220】
【表2】
【0221】
[0256]本発明の交差反応性アッセイ方法は、別の生物学的治療への切り替えが有益であるかを予測するのに特に有用である。患者がある薬物に対してNAb陽性であることを見出した後に、蛍光標識代替薬物をアッセイにおいて用いることができる。患者血清が中和能力をまだ示すならば、新しい薬物は成功する可能性が低い。そのような方法は、最良の治療選択肢の提案又は提示を可能とするような費用対効果が高く時宜を得た様式で一連の薬物をスクリーニングするのに使用できる点で有利である。
【0222】
[0257]図24及び25は、実施例3に記載し、図21に示す患者研究についてのさらなる症例研究を示す。特に、レミケード(インフリキシマブ,IFX)で治療されたが、IFXに対する応答をその後喪失した患者3及び4は、ヒュミラ(アダリムマブ,ADL)に対して応答しない可能性がある患者として同定された。なぜなら、患者がIFXを受けているときに生じたNAbがADLと交差反応性であると決定されたからである。
【0223】
[0258]図26は、ATI親和性成熟及び交差反応性ATIの発生を実証する患者研究の非限定的な例を示す。
【0224】
[0259]本明細書に記載の発明は、明確な理解を目的として図面及び実施例によりいくらか詳細に説明されているが、あるいくつかの変更及び改変が添付の特許請求の範囲内で行われ得ることは当業者であれば理解するであろう。また、本明細書で提示される各文献は、参照により個別に組み入れられているのと同じ程度に、その全体が参照により組み入れられている。
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