特許第6181660号(P6181660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181660血中のストレプトコッカス・ニューモニエの検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181660
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】血中のストレプトコッカス・ニューモニエの検出
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20170807BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C12Q1/68 AZNA
   C12N15/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-541543(P2014-541543)
(86)(22)【出願日】2011年11月15日
(65)【公表番号】特表2014-533116(P2014-533116A)
(43)【公表日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】EP2011070127
(87)【国際公開番号】WO2013071954
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2014年9月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306015135
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ リブル ドゥ ブリュッセル
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(72)【発明者】
【氏名】ドレゼ,ピエール−アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】スメーステルス,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】デマジー,レナ
(72)【発明者】
【氏名】ファン メルデレン,ローレンス
【審査官】 吉田 知美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/106407(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/090159(WO,A1)
【文献】 特表2009−514551(JP,A)
【文献】 特表2008−509664(JP,A)
【文献】 特表2007−532140(JP,A)
【文献】 J Med Microbiol.,2010 Oct,59(10),p.1146-52,Epub 2010 Jul 8
【文献】 BioTechniques,2007 Dec,43,p.770-4
【文献】 Infect Immun.,2008 Feb,76(2),p.646-57,Epub 2007 Nov 26
【文献】 Microbiology,2002 Jul,148(7),p.2045-53
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
CAplus/BIOSIS(STN)
PubMed
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のS.ニューモニエのリボ核酸を検出する方法であって、
前記リボ核酸を単離する工程であって、ここで該単離は前記サンプルへの酸性フェノールの添加と該リボ核酸の精製を含む、工程と、
単離されたリボ核酸からデオキシリボ核酸を合成する工程と、
前記デオキシリボ核酸を少なくとも一つのフラップ(flap)配列を付着させたプライマーセットと接触させる工程であって、ここで該プライマーセットは配列番号1及び配列番号2からなり、及び該フラップ配列は配列番号5である、工程と、
前記デオキシリボ核酸を少なくとも1つの標識プローブと接触させる工程と、
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムPCRという)により、前記S.ニューモニエのデオキシリボ核酸を増幅する工程と、
前記S.ニューモニエの核酸と前記標識プローブとのハイブリダイゼーションを検出する工程であって、ハイブリダイゼーションの検出がハイブリダイゼーション前の前記標識プローブのシグナルに対するハイブリダイゼーション中又はハイブリダイゼーション後の前記標識プローブのシグナルの変化を検出することを含む工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記標識プローブが、放射標識、蛍光標識、ビオチン標識、酵素標識、又は化学標識される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プローブがフルオロフォア、蛍光クエンチャ又はその組合せで標識される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記プローブの核酸配列が、X−配列番号10−Y(ここでXはフルオロフォアであり、Yはダーククエンチャ又はアクセプタ色素である)からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルが、細胞、組織、骨髄穿刺液、体液、眼拭い液(eye swabs)、子宮頸部拭い液(cervical swabs)、膣拭い液、直腸拭い液、糞便、糞便懸濁液、中耳液、気管支肺胞洗浄液、気管吸引物、痰、鼻咽頭吸引物、口腔咽頭吸引物、又は唾液から選択されるヒト又は獣医被験体から得られる生体サンプルである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルが、ヒト又は獣医被験体から得られる全血である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
S.ニューモニエのwzg遺伝子が、配列番号1及び配列番号2からなるプライマーセットを使い標的化され、それによって、S.ニューモニエの核酸と、肺炎球菌様ビリダンス連鎖球菌(P−LVS)の核酸とを識別する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
S.ニューモニエ感染の疑いがある被験体におけるS.ニューモニエ感染に関する検査方法であって、
前記被験体から得られた核酸を含むサンプルを被験サンプルとし、
前記核酸に含まれるリボ核酸を単離する工程であって、ここで該単離は前記サンプルへの酸性フェノールの添加と該リボ核酸の精製を含む、工程と
単離されたリボ核酸からデオキシリボ核酸を合成する工程と、
X−配列番号10−Y、配列番号1及び配列番号2からなるプローブ及びプライマーセットを用いて、前記デオキシリボ核酸を接触及び増幅させる工程であって、ここでXはフルオロフォアであり、Yはダーククエンチャ又はアクセプタ色素であり、該プライマーセットが、該デオキシリボ核酸とハイブリダイズするとともに該デオキシリボ核酸を増幅させることが可能であり、該プライマーが配列番号5に記載されたヌクレオチド配列と少なくとも90%若しくは少なくとも95%若しくは少なくとも100%同一である少なくとも一つのフラップ配列を付着させた、工程と、
前記デオキシリボ核酸と前記プローブとのハイブリダイゼーションを検出する工程であって、ハイブリダイゼーションの検出が前記被験体にストレプトコッカス・ニューモニエが感染していることを示す、工程と、
を含む、方法。
【請求項9】
S.ニューモニエのリボ核酸から合成されたデオキシリボ核酸を増幅するプライマーセットであって、
配列番号1及び配列番号2からなるプライマーセット
を含み、前記S.ニューモニエのリボ核酸から合成されたデオキシリボ核酸とハイブリダイズするとともに前記S.ニューモニエのリボ核酸から合成されたデオキシリボ核酸を増幅させることが可能である、プライマーセット。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法に使用される請求項9に記載のプライマーセット。
【請求項11】
サンプル中のS.ニューモニエのリボ核酸を検出するキットであって、
X−配列番号10−Yからなるプローブ及び配列番号1及び配列番号2からなるプライマーセット、
ここでXはフルオロフォアであり、Yはダーククエンチャ又はアクセプタ色素であり、前記S.ニューモニエのリボ核酸から合成されたデオキシリボ核酸とハイブリダイズするとともに前記S.ニューモニエのリボ核酸から合成されたデオキシリボ核酸を増幅させることが可能である、プライマーセット
を含む、キット。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法に使用される請求項11に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae:肺炎連鎖球菌)を検出するプライマー及びプローブと、該プローブ及び該プライマーを含むキットと、該プローブ及び該プライマーを使用する方法とに関する。本発明は更に、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumonia)を検出するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ストレプトコッカス・ニューモニエ(S.ニューモニエ)は市中肺炎(Community-Acquired Pneumonia:CAP)の主因である。S.ニューモニエは、肺炎、菌血症、髄膜炎、急性中耳炎及び副鼻腔炎等の疾患を引き起こす、相当の罹患率及び死亡率に関与するグラム陽性菌である。S.ニューモニエ症例の20%が菌血症及び髄膜炎等の他の兆候を起こし、死亡率は抗生物質による治療を行ったとしても30%近くになると推定されている。S.ニューモニエは人口の11%〜76%(子供では平均40%〜50%及び成人では20%〜30%)の鼻咽頭に見られる(非特許文献1)。
【0003】
肺炎球菌感染のリスクがあるとして最も一般的なものは、生後6ヶ月〜4年の子供及び60歳を超える成人である。ほぼ全ての子供が生後5年までに肺炎球菌性中耳炎に罹る。市中肺炎の25%が肺炎球菌によるものであると推定される(住民100000人当たり1000人)。最近になって、前抗生物質時代(pre-antibiotic era)以降認められてこなかった場所である長期介護施設、軍営及び託児所といった環境において疾患の流行が再び起こっている。S.ニューモニエは、幼児、高齢者及び免疫力が低下した患者において生じるその罹患率及び死亡率から依然として重大なヒト病原菌である。
【0004】
肺炎球菌性肺炎の診断方法の中でも、気管支肺胞洗浄(BronchoAlveolar Lavage:BAL)又は経胸腔針吸引は信頼性が高いとされているが、侵襲性であり、定期的に行うことはできない。
【0005】
血液培養物中での細菌の特定は、確定診断をもたらし、疾患の重症度の指標とすることができる。しかしながら、CAPにおいて血液培養物の陽性率が10%を超えることは稀であり(非特許文献2)、血液サンプルを抗微生物治療中に採取する場合には1%未満となることがある(非特許文献3)。高感度で特異性の高い「至適基準(gold standard)」方法がないことが肺炎球菌性肺炎の診断の妨げになっている。肺炎球菌が気道において保因されることから、唾液及び鼻咽頭分泌物の培養物が議論の的になっている。従来のS.ニューモニエ診断検査に基づく培養物の制限が、確定診断を下すことを難しくしている。例えば、S.ニューモニエの存在について広く認められている確定検査である血液からのS.ニューモニエの単離は感度が低く、陽性結果となるのは肺炎球菌性肺炎の成人症例の20%〜30%、子供症例の10%未満にすぎない。抗体及び抗原の両方の検出に関する血清学的分析は特異性及び感度が低いという問題があり、例えば最近になって導入された尿抗原検査、Binax NOW(商標)は、一部の研究で成人には感度及び特異性を示すが、子供では保因と疾患とを識別することができない。
【0006】
正確な診断及びアッセイを開発する試みが為されており、臨床診療において血液サンプル中の細菌を検出するのにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロトコルを使用することが増えてきている。血液サンプルに適用される市販のPCRの手順では、全ての細菌に共通の遺伝子で保存されるPCR標的が使用される。これは黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)及びグラム陰性腸内桿菌のような病原菌では有望な戦略であるが、S.ニューモニエではそうではない。共通する細菌遺伝子に対するPCRでは、S.ニューモニエとα溶血連鎖球菌とを識別することはそれらが密接に関連していることから難しい(非特許文献4及び非特許文献5)。
【0007】
加えて、肺炎球菌様ビリダンス連鎖球菌(viridans Streptococci:緑色連鎖球菌)(P−LVS)をS.ニューモニエと誤って特定することで、特に痰等の非滅菌部位の試料を用いようとする場合、更なる誤診断の可能性が生じる。S.ニューモニエの特定は通例、胆汁溶解試験、オプトヒン感度試験及びGenProbe ACCUPROBE(商標)肺炎球菌特定試験に基づくものであるが、臨床試料から単離されたP−LVSがこれらの標準的な肺炎球菌試験の1つ又は複数において陽性反応又は生存反応を示し得るという報告が増えている。一連の報告されたP−LVS単離株の中で、ストレプトコッカス・シュードニューモニエ(S. pseudopneumoniae)(Spseudo)に分類される新たに認識された種が記載され、特徴付けられている(非特許文献6)。Spseudo生物は、5% COの存在下で胆汁溶解性に対して陰性であり、オプトヒンに対して耐性であるが、ACCUPROBE(商標)に対しては陽性であり(非特許文献6)、そのためS.ニューモニエ感染に対して偽陽性を呈する。これらの肺炎球菌様微生物の出現は、特に非滅菌部位の呼吸器試料を確定診断に使用する場合に、更に特定及び診断を難しくしている。
【0008】
特許文献1は、肺炎球菌の表面接着タンパク質(psaA)遺伝子を検出するリアルタイムPCR法を開示している。特許文献2は、被験体由来の生体試料を分析して、S.ニューモニエの核酸lytA、ply及びpsaA等の広範のS.ニューモニエの核酸を検出することにより、S.ニューモニエ感染を診断する方法を提供している。
【0009】
従来技術に記載される方法の主な欠点の一つは、それらの方法がS.ニューモニエのDNAを標的としていることである。この欠点は、S.ニューモニエが通常、ヒト鼻咽頭腔内で偏性無症候性の関係を確立することに起因するものである。この無症候性の関係は、肺炎がS.ニューモニエとは異なる生物によって引き起こされる場合に偽陽性を呈する。そのため、S.ニューモニエの存在及び活性の検出を可能にする診断方法及び診断アッセイが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7476733号
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0234245号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Ghaffar et al., J. Infect. Dis. 18, 638-646, 1999
【非特許文献2】Chalasani et al., Chest., 108, 932-936, 1995
【非特許文献3】Grace et al., Clin Infect Dis., 32, 1651-1655, 2001
【非特許文献4】Innings et al., J Clin Microbiol. 43, 5983-5991, 2005
【非特許文献5】Lehmann et al., Med Microbiol Immunol. 197, 313-324, 2008
【非特許文献6】Arbique et al., J. Clin. Microbiol. 42, 4686-4696, 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、解決策を与えるとともに、上述の欠点を克服することである。本発明の目的は、標的とされる核酸がS.ニューモニエのRNAである診断方法を提供することである。本発明の方法、キット及びデバイスが以下及び特許請求の範囲に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様において、本発明はサンプル中のS.ニューモニエの核酸を検出する方法を提供する。該方法は、上記核酸を単離する工程と、S.ニューモニエの核酸と標識プローブとのハイブリダイゼーションを検出する工程であって、ハイブリダイゼーションの検出がハイブリダイゼーション前の標識プローブのシグナルに対するハイブリダイゼーション中又はハイブリダイゼーション後の標識プローブのシグナルの変化を検出することを含む、工程とを含む。該方法は上記核酸がリボ核酸であり、該リボ核酸の単離が上記サンプルへの酸性フェノールの添加と、該リボ核酸(RNA)の精製とを含むことを特徴とする。DNAの代わりにRNAを検出することは、肺炎球菌感染に関与する活発に複製されている細菌の選択的検出を可能にすることから有益である。
【0014】
好ましい実施の形態では、本発明の方法は、単離されたリボ核酸からデオキシリボ核酸を合成する工程と、該デオキシリボ核酸を少なくとも1つのプライマーと接触させる工程と、該デオキシリボ核酸を少なくとも1つの標識プローブと接触させる工程と、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、リアルタイム逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(rt RT−PCR)、リガーゼ連鎖反応、又は転写増幅法(TMA)の群から選択される方法により、好ましくはリアルタイムPCRにより、S.ニューモニエのデオキシリボ核酸を増幅する工程とを更に含む。
【0015】
好ましい実施の形態では、本発明は、上記少なくとも1つのプライマーが、極めて高ストリンジェントな条件下においてS.ニューモニエのリボ核酸とハイブリダイズすることが可能な15ヌクレオチド〜40ヌクレオチドに含まれる長さを有する、方法を提供する。
【0016】
好ましい実施の形態では、本発明は、プライマーが、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4と記載されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは100%同一な核酸配列を含む、方法を提供する。
【0017】
好ましい実施の形態では、本発明は、上記少なくとも1つのプライマーが、配列番号5と記載されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは100%同一な少なくとも1つのflap配列を含む、方法を提供する。flap配列を有するプライマーの使用が、リアルタイムPCR蛍光シグナルの増大をもたらすことから有益である。
【0018】
好ましい実施の形態では、本発明は、標識プローブが、放射標識、蛍光標識、ビオチン標識、酵素標識、又は化学標識される、方法を提供する。
【0019】
好ましい実施の形態では、本発明は、プローブがフルオロフォア、蛍光クエンチャ(quencher:消光剤)又はその組合せで標識される、方法を提供する。
【0020】
好ましい実施の形態では、本発明は、プローブの核酸配列が、X−配列番号10−Y又はX−配列番号11−Y(ここでXはフルオロフォアであり、Yはダーククエンチャ又はアクセプタ色素である)からなる、方法を提供する。
【0021】
好ましい実施の形態では、本発明は、サンプルが、被験体から得られる生体サンプル、好ましくは全血である、方法を提供する。
【0022】
好ましい実施の形態では、本発明は、S.ニューモニエの核酸と、肺炎球菌様ビリダンス連鎖球菌(P−LVS)の核酸とを識別する、方法を提供する。
【0023】
第2の態様では、本発明は、S.ニューモニエ感染の疑いがある被験体においてS.ニューモニエ感染を診断する方法であって、被験体から核酸を含むサンプルを得る工程と、サンプルを1つ又は複数の核酸プローブと接触させる工程であって、プローブの核酸配列が、X−配列番号10−Y又はX−配列番号11−Y(ここでXはフルオロフォアであり、Yはダーククエンチャ又はアクセプタ色素である)からなる、工程と、配列番号1又は配列番号3と記載される核酸配列から本質的になる1つ又は複数のフォワードプライマーと、配列番号2又は配列番号4と記載される核酸配列から本質的になる1つ又は複数のリバースプライマーとを含むプライマーセットを用いて、S.ニューモニエのリボ核酸を増幅する工程であって、プライマーセットが、上記S.ニューモニエのリボ核酸とハイブリダイズするとともに上記S.ニューモニエのリボ核酸を増幅させることが可能である、工程と、サンプル中に存在するS.ニューモニエのリボ核酸配列とプローブとのハイブリダイゼーションを検出する工程であって、ハイブリダイゼーションの検出が被験体にストレプトコッカス・ニューモニエが感染していることを示す、工程とを含む、方法を提供する。
【0024】
第3の態様では、本発明は、S.ニューモニエのリボ核酸を増幅するプライマーセットであって、配列番号1又は配列番号3と記載される核酸配列から本質的になる1つ又は複数のフォワードプライマーと、配列番号2又は配列番号4と記載される核酸配列から本質的になる1つ又は複数のリバースプライマーとを含み、S.ニューモニエのリボ核酸とハイブリダイズするとともにS.ニューモニエのリボ核酸を増幅させることが可能である、プライマーセットを提供する。
【0025】
好ましい実施の形態では、本発明による方法に使用されるプライマーセットが提供される。
【0026】
第3の態様では、本発明は、サンプル中のS.ニューモニエのリボ核酸を検出するキットであって、核酸配列がX−配列番号10−Y又はX−配列番号11−Y(ここでXはフルオロフォアであり、Yはダーククエンチャ又はアクセプタ色素である)からなるプローブと;配列番号1又は配列番号3と記載される核酸配列から本質的になる1つ又は複数のフォワードプライマーと、配列番号2又は配列番号4と記載される核酸配列から本質的になる1つ又は複数のリバースプライマーとを含むプライマーセットであって、S.ニューモニエのリボ核酸とハイブリダイズするとともにS.ニューモニエのリボ核酸を増幅させることが可能である、プライマーセットとを含む、キットを提供する。
【0027】
好ましい実施の形態では、本発明による方法に使用されるキットが提供される。
【0028】
本発明の利点は、出発材料が分裂細菌に特異的なRNAであり、偽陽性結果の可能性が低減されることにある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】検量線を示す図である。Y軸:C値。X軸:血液1ml当たりのS.ニューモニエの対数濃度。EはQPCR効率である。Rは線形回帰直線の決定係数である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、サンプル中のS.ニューモニエのリボ核酸を検出する方法、プライマーセット及びキットに関する。
【0031】
別途定義されない限り、本発明の開示において使用される技術用語及び科学用語を包含する全ての用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解される意味を有する。更なる説明(guidance)による本発明の教示をよりよく理解するための用語の定義が包含される。
【0032】
本明細書で使用される場合、以下の用語は以下の意味を有する。
【0033】
本明細書で使用される数量を特定していない単数形("A", "an", and "the")は、別途文脈により明確に指示されない限り、単数及び複数の両方の指示物を指す。例えば、「コンパートメント(a compartment)」は1つ又は2つ以上のコンパートメントを指す。
【0034】
本明細書においてパラメーター、量、期間等の計測可能な値に対する言及で使用される「約(About)」は、規定値より±20%以下、好ましくは±10%以下、より好ましくは±5%以下、更により好ましくは±1%以下、そして更により好ましくは±0.1%以下の変動を包含することを意味し、そのような変動であれば開示される本発明を実施するのに適切である。しかしながら、修飾語「約」が言及する値自体も具体的に開示されていることを理解されたい。
【0035】
本明細書で使用される「含む("Comprise," "comprising," and"comprises")」及び「で構成される("comprisedof")」は、「含む、挙げられる」("include","including", "includes")又は「含有する」("contain","containing", "contains")と同義であり、その前にある(follows)例えば構成要素の存在を明示する包括的な又はオープンエンド型の用語であって、当該技術分野において既知又はそこで開示される追加の言及されていない構成要素、特徴、要素、部材、工程の存在を排除又は除外するものではない。
【0036】
端点による数値範囲の記述は、記述された端点だけでなく、その範囲内に含まれる数及び分数を全て包含する。
【0037】
「重量%」(重量パーセント)の表現は、別途定義されない限り本明細書及び明細書全体において、配合物の全重量をベースとする各構成要素の相対重量を表す。
【0038】
定義
本願では、定義が下記のプレアンブルに与えられている用語を用いる。技術用語は従来の用法に従って用いられる。本発明の様々な実施形態の検討を容易にするために、下記に用語の説明を与える。
【0039】
動物:例えば、哺乳動物及び鳥類を含むカテゴリーの生きた多細胞の脊椎生物又は無脊椎生物。「哺乳動物」という用語は、ヒト及び非ヒト哺乳動物の両方を含む。同様に「被験体」という用語は、ヒト及び脊椎動物の両方の被験体を含む。被験体はヒトであるのが好ましい。
【0040】
増幅:核酸分子のコピー数を増大することである。得られる増幅産物は「アンプリコン」と呼ばれる。核酸分子(DNA分子又はRNA分子等)の増幅は、サンプル中の核酸分子のコピー数、例えばS.ニューモニエのlytA核酸又はその断片等のS.ニューモニエの核酸のコピー数を増大する技法の使用を指す。増幅の例は、サンプルにおけるプライマーと核酸鋳型とのハイブリダイゼーションを可能にする条件下においてサンプルをオリゴヌクレオチドプライマー対と接触させるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。プライマーを好適な条件下において伸長し、鋳型から解離させ、再度アニーリングを行い、伸長し、解離させることで、核酸のコピー数を増幅させる。このサイクルを繰り返すことができる。増幅産物は、電気泳動、制限エンドヌクレアーゼ切断パターン、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション若しくはライゲーション、及び/又は核酸シークエンシング等の技法に特徴付けられ得る。
【0041】
in vitro増幅技法の他の例としては、とりわけ定量的リアルタイムPCR;逆転写酵素PCR(RT−PCR);リアルタイムPCR;リアルタイム逆転写酵素PCR(it RT−PCR);ネステッドPCR;鎖置換増幅(米国特許第5,744,311号を参照されたい);無転写(transcription-free)等温増幅(米国特許第6,033,881号を参照されたい)、修復鎖反応増幅(国際公開第90/01069号を参照されたい);リガーゼ連鎖反応増幅(欧州特許出願公開第320308号を参照されたい);ギャップ充填リガーゼ連鎖反応増幅(米国特許第5,427,930号を参照されたい);共役リガーゼ検出及びPCR(米国特許第6,027,889号を参照されたい);並びにNASBA(商標)RNA無転写増幅(米国特許第6,025,134号を参照されたい)が挙げられる。
【0042】
cDNA(相補的DNA):内部の非コードセグメント(イントロン)と転写調節配列とを欠いたDNA片。cDNAは、対応するRNA分子における翻訳制御に関与する非翻訳領域(UTR)も含有し得る。cDNAはRNA、例えばS.ニューモニエのlytA、psaA又はplyをコードするRNA等のS.ニューモニエ由来のRNAからの逆転写によって研究室で合成することができる。
【0043】
相補的:二本鎖のDNA鎖又はRNA鎖は塩基対の2つの相補鎖からなっている。一方の核酸分子の塩基がもう一方の核酸分子の塩基と水素結合を形成することで相補的結合が起こる。通常、アデニン(A)塩基がチミジン(T)及びウラシル(U)と相補的であり、シトシン(C)がグアニン(G)と相補的である。
【0044】
Flap配列:標的と非相補的なプライマー部分であり、オーバーハング又はテール(tail)とも呼ばれる。
【0045】
プローブ:プローブは標的核酸(S.ニューモニエの核酸、例えばS.ニューモニエのlytA、psaA又はply核酸分子等)とハイブリダイズすることが可能な単離核酸を含む。検出可能な標識又はレポーター分子をプローブに付着させることができる。典型的な標識としては、放射性同位体、酵素基質、補因子、リガンド、化学発光剤又は蛍光剤、ハプテン及び酵素が挙げられる。
【0046】
特定例ではプローブは、アクセプタフルオロフォア又はドナーフルオロフォア等の少なくとも1つのフルオロフォアを含む。例えばフルオロフォアをプローブの5’末端又は3’末端に付着させることができる。具体例では、フルオロフォアをプローブの5’末端の塩基、その3’末端の塩基、その5’末端のリン酸基又はプローブの内部にあるT等の修飾塩基に付着させる。
【0047】
核酸分子の定量:サンプル中に存在するアンプリコンの数又は核酸分子の数等の核酸分子の存在量(相対量等)の決定又は測定。特定例では核酸分子の定量は、サンプル中に存在するS.ニューモニエの核酸分子等のサンプル中に存在する核酸分子の相対量又は実際の数を決定することである。
【0048】
リアルタイムPCR:PCR開始前の鋳型核酸の量に比例する各PCRサイクル中に生成される産物を検出及び測定する方法。増幅曲線等の得られる情報を使用して、標的核酸(S.ニューモニエの核酸等)の存在を判断する、及び/又は標的核酸配列の初期量を定量することができる。例示的なリアルタイムPCRの手順は、Perkin Elmer Applied Biosystems (1999)により刊行された"Quantitation of DNA/RNA Using Real-Time PCR Detection"及びPCR Protocols(Academic Press New York, 1989)に見ることができる。
【0049】
幾つかの例では、標的核酸(S.ニューモニエの核酸分子、例えばS.ニューモニエのlytA、psaA又はply核酸分子等)の増幅量は、フルオロフォアで標識されるプローブ、例えばTAQMAN(商標)プローブ等の標識プローブを用いて検出される。この例では、蛍光放射の増大がリアルタイムPCR中にリアルタイムで測定される。この蛍光放射の増大は標的核酸の増幅(S.ニューモニエの核酸の増幅等)の増大と直接関連がある。
【0050】
ハイブリダイゼーション:相補的な一本鎖のDNA又はRNAの二重鎖(duplex)分子(ハイブリダイゼーション複合体とも称される)を形成する能力。核酸ハイブリダイゼーション法を用いて、プローブ又はプライマーと、核酸、例えばS.ニューモニエの核酸分子、例えばS.ニューモニエのlytA、psaA又はply核酸分子とのハイブリダイゼーション複合体を形成することができる。
【0051】
検出:作用因子(シグナル、特定のヌクレオチド、アミノ酸、核酸分子、及び/又は生物等)、例えばS.ニューモニエが存在するか否かを判断することである。幾つかの例では、これには定量化が更に含まれ得る。例えば特定例では、開示プローブの使用によって、S.ニューモニエの核酸(S.ニューモニエのlytA核酸分子、S.ニューモニエのpsaA核酸分子、又はS.ニューモニエのply核酸分子等)に対応する核酸が存在するか否かを判断するのに使用することができる、フルオロフォアの検出、例えばフルオロフォアからのシグナルの検出が可能となる。S.ニューモニエの核酸分子の検出は、サンプル中のS.ニューモニエ、例えばサンプル中のS.ニューモニエ感染の存在を示唆している。
【0052】
フルオロフォア:既定波長の光等の特定の刺激に曝されることにより励起されると、光(蛍光)を例えば異なる波長で(より長い波長の光等を)放射する化合物。フルオロフォアはより大きな群の発光性化合物の一部である。発光性化合物には、発光に特定の波長の光を必要とせず、化学的エネルギー源を利用する化学発光性分子が含まれる。そのため化学発光性分子(エクオリン等)の使用によって、レーザー等の外部の電磁放射線源が必要なくなる。
【0053】
本明細書に開示されるS.ニューモニエ特異的なプローブ及びプライマーに使用することができる特定のフルオロフォアの例は当業者にとって既知であり、とりわけ4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’ジスルホン酸等のNazarenko et al.の米国特許第5,866,366号で与えられたもの;アクリジン及びアクリジンイソチオシアネート、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS)、4−アミノ−N−[3−ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド(naphthalimide)−3,5ジスルホネート(ルシファーイエローVS)、N−(4−アニリノ−1−ナフチル)マレイミド、アントラニルアミド等のアクリジン及びその誘導体;ブリリアントイエロー;クマリン、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC、クマリン120)、7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン(正:trifluoromethylcoumarin)(クマラン151)等のクマリン及びその誘導体;シアノシン;4’,6−ジアミジノ(diamidino)−2−フェニルインドール(DAPI);5’,5’’−ジブロモピロガロール−スルホンフタレイン(ブロモピロガロールレッド);7−ジエチルアミノ−3−(4’−イソチオシアナトフェニル)−4−メチルクマリン;ジエチレントリアミン五酢酸;4,4’−ジイソチオシアナトジヒドロ−スチルベン−2,2’−ジスルホン酸;4,4’−ジイソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸;5−[ジメチルアミノ]ナフタレン−1−スルホニルクロリド(DNS、ダンシルクロリド);4−ジメチルアミノフェニルアゾフェニル−4’−イソチオシアネート(DABITC);エオシン及びエオシンイソチオシアネート等のエオシン及びその誘導体;エリトロシンB及びエリトロシンイソチオシアネート等のエリトロシン及びその誘導体;エチジウム;5−カルボキシフルオレセイン(carboxyfluorescein)(FAM)、5−(4,6−ジクロロトリアジン−2−イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、QFITC(XRITC)、−6−カルボキシ−フルオレセイン(HEX)及びTET(テトラメチルフルオレセイン)等のフルオレセイン及びその誘導体;フルオレスカミン;IR144;IR1446;マラカイトグリーンイソチオシアネート;4−メチルウンベリフェロン;オルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラローザニリン;フェノールレッド;B−フィコエリトリン;o−フタルジアルデヒド;ピレン、ピレンブチレート及びスクシンイミジル1−ピレンブチレート等のピレン及びその誘導体;5リアクティブレッド4(CIBACRON(商標)ブリリアントレッド3B−A);6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(N,N,N',N'-tetramethyl-6-carboxyrhodamine)(TAMRA)、テトラメチルローダミン及びテトラメチルローダミンイソチオシアネート10(TRITC)等のローダミン及びその誘導体;スルホローダミンB;スルホローダミン101及びスルホローダミン101のスルホニルクロリド誘導体(テキサスレッド);リボフラビン;ロゾール酸及びそのテルビウムキレート誘導体;ライトサイクラーレッド640;Cy5.5;及びCySο−カルボキシフルオレセイン;ホウ素ジピロメテン二フッ化物(boron dipyrromethene difluoride)(BODIPY);アクリジン;スチルベン;6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX);テキサスレッド;Cy3;Cy5;VIC(商標)(AppliedBiosystems);LCレッド640;LCレッド15 705;並びにヤキマイエロー(Yakimayellow)が挙げられる。
【0054】
他の好適なフルオロフォアとしては、当業者に既知のもの、例えばMolecular Probes(オレゴン州ユージーン)から入手可能なものが挙げられる。特定の例では、フルオロフォアはドナーフルオロフォア又はアクセプタフルオロフォアとして使用される。
【0055】
「アクセプタフルオロフォア」は、ドナーフルオロフォアから(from)、例えば約400nm〜900nmの範囲(例えば約500nm〜800nmの範囲)のエネルギーを吸収するフルオロフォアである。アクセプタフルオロフォアは概して、ドナーフルオロフォアの極大吸収波長よりも通常少なくとも10nm高い(例えば少なくとも20nm高い)波長の光を吸収し、約400nm〜900nmの範囲の波長で25蛍光放射極大を有する。アクセプタフルオロフォアはドナーフルオロフォアの発光と重複する励起スペクトルを有し、そのためドナーによって放射されたエネルギーがアクセプタを励起することができる。アクセプタフルオロフォアが核酸分子に付着することが可能であるのが理想である。
【0056】
特定の例では、アクセプタフルオロフォアは、Dabcyl、QSY7(Molecular Probes)、QSY33(Molecular Probes)、BLACK HOLE QUENCHERS(商標)(Glen Research)、ECLIPSE(商標)Dark Quencher(EpochBiosciences)又はIOWA BLACK(商標)(Integrated DNATechnologies)等のダーククエンチャである。クエンチャはドナーフルオロフォアの発光を低減又は消失させることができる。このような例では、ドナーフルオロフォアに十分に近接した場合にアクセプタフルオロフォアからの発光シグナルの増大を検出する(又はドナーフルオロフォアから相当な距離がある場合にアクセプタフルオロフォアからの発光シグナルの低減を検出する)代わりに、クエンチャがドナーフルオロフォアとは相当な距離がある場合にドナーフルオロフォアからの発光シグナルの増大(又はクエンチャアクセプタフルオロフォアと十分に近接する場合にドナーフルオロフォアからの発光シグナルの低減)を検出することができる。
【0057】
「ドナーフルオロフォア」は、エネルギーをアクセプタフルオロフォアへと移動させることにより、アクセプタから検出可能な蛍光シグナルを発生させることが可能なフルオロフォア又は発光性分子である。ドナーフルオロフォアは概して、約300nm〜900nm、例えば約350nm〜800nmの範囲の光を吸収する化合物である。ドナーフルオロフォアは所望の励起波長で強い、例えば約10−1cm−1を超えるモル吸光係数を有する。
【0058】
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET):初期に励起されたドナーから10A〜100A離れたアクセプタ分子へとエネルギーが移行する分光プロセス。ドナー分子は通常、アクセプタ分子の吸光と重複したより短い波長で発光する。エネルギー伝達効率はドナーフルオロフォアとアクセプタフルオロフォアとの距離(R)の6乗分の1(inverse sixth power)(1/R)に比例し、光子の放射を伴わずに起こる。FRETを用いる用途では、ドナーとアクセプタ色素とが異なり、この場合FRETを、アクセプタの増感蛍光の出現又はドナーの蛍光の消失のいずれかによって検出することができる。例えばドナーの蛍光が消失する場合には、ドナー分子とアクセプタ分子とがフェルスター半径内にあることが示され、TAQMAN(商標)プローブがプローブと標的核酸配列とのハイブリダイゼーション後にTaqポリメラーゼにより分解される場合、又はヘアピンプローブが標的核酸配列とハイブリダイズする場合等の特定の波長でドナーが蛍光を発する場合には、ドナー分子とアクセプタ分子との距離がフェルスター半径を超えて増大していることが示される。別の例では、エネルギーがFRETを介して2つの異なるフルオロフォア間で移動し、そのためアクセプタ分子がドナー分子の発光波長より常に長い特定の波長の光を放射することができる。
【0059】
アンプリコンを検出するのに使用することができるFRETを用いるオリゴヌクレオチドの例としては、HybProbe等の線形オリゴプローブ、TAQMAN(商標)プローブ等の5’ヌクレアーゼオリゴプローブ、分子ビーコン、スコーピオンプライマー及びUniPrimer等のヘアピンオリゴプローブ、副溝結合プローブ、並びにサンライズプライマー等の自己蛍光アンプリコンが挙げられる。
【0060】
本明細書に開示される核酸プローブ及びプライマーは、所望に応じてプローブ又はプライマーが機能する能力に実質的に影響を及ぼすことなく、配列に変更を加えることができることを当業者は理解していることから、示される正確な配列に限定されない。例えば、配列番号1〜配列番号11のいずれかに対する配列同一性が少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%、例えば100%である配列が本明細書で提供される。当業者は、これらの配列同一性の範囲が指針として与えられているにすぎず、これらの範囲を逸脱するプローブ及びプライマーを使用することができる可能性があることを理解している。
【0061】
全血には、エリスロサイト(erythrocytes)とも呼ばれる赤血球と、ロイコサイト(leucocytes)とも呼ばれる白血球と、血小板とが含まれる。
【0062】
本発明の実施形態
第1の態様では、本発明は所与のサンプル中の細菌核酸の存在を検出する方法を提供する。好ましい実施形態では、本発明は、サンプル中のS.ニューモニエの核酸を検出する方法であって、上記核酸を単離する工程と、S.ニューモニエの核酸と標識プローブとのハイブリダイゼーションを検出する工程であって、ハイブリダイゼーションの検出がハイブリダイゼーション前の標識プローブのシグナルに対するハイブリダイゼーション中又はハイブリダイゼーション後の標識プローブのシグナルの変化を検出することを含む、工程とを含む、方法を提供する。この方法は、上記核酸がリボ核酸であり、リボ核酸の単離が上記サンプルへの酸性フェノールの添加と、該リボ核酸の精製とを含むことを特徴とする。
【0063】
好ましい実施形態では、サンプル中のS.ニューモニエの核酸配列の存在の検出は、S.ニューモニエのRNAの抽出を含む。RNA抽出は、細胞又はサンプル中のRNAを潜伏性又は利用不可な形態から解放し、RNAを自由に利用可能にすることに関する。このような状態のRNAがS.ニューモニエの核酸の効果的な検出及び/又は増幅に好適である。RNAの解放は細胞の破壊をもたらす工程を含み得る。RNAの抽出は概して、存在し得る任意のリボヌクレアーゼ活性を効果的に排除又は阻害する条件下で行われる。加えて、RNAの抽出は他の細胞成分からの水性媒体に溶解したRNAの少なくとも部分的な分離をもたらす工程を含み得る。このような成分は粒子状物質であっても又は溶解していてもよい。
【0064】
本発明の好ましい実施形態では、RNAはチオシアン酸グアニジン中で回収サンプルの細胞をホモジナイズすることによって単離され、RNAは低pHの酸性フェノールを用いた抽出によって溶解物から精製される。このpHには0〜7、好ましくは1〜6、より好ましくは2〜5、最も好ましくは4前後が含まれる。
【0065】
本発明の別の好ましい実施形態では、RNAはチオシアン酸グアニジン中で回収サンプルの細胞をホモジナイズすることによって単離され、RNAは低pHのフェノール−クロロホルムを用いた抽出によって溶解物から精製される。このpHには0〜7、好ましくは1〜6、より好ましくは2〜5、最も好ましくは4前後が含まれる。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、RNAは加熱した酸性フェノールをサンプルに添加することによって単離される。好ましくは酸性フェノールの温度には、45℃〜85℃、より好ましくは55℃〜75℃、最も好ましくは65℃前後が含まれる。酸性フェノールの添加容量にはサンプル容量の0.5倍〜2.5倍が含まれ、好ましくは酸性フェノールの添加容量はサンプルの容量に等しい。次いでサンプルと酸性フェノールとの混合物を、45℃〜85℃、より好ましくは55℃〜75℃、最も好ましくは65℃前後に含まれる温度で3分〜10分、好ましくは4分〜8分、より好ましくは約5分、混合する。それから、混合物を、2℃〜6℃、好ましくは3℃〜5℃、より好ましくは約4℃に含まれる温度で約14000×gの速度において約20分、遠心分離する。その後上清を回収する。
【0067】
好ましい実施形態では、上清の回収容量は遠心分離後に得られる上清の容量よりも小さい。これにより、RNA以外の分子を回収する可能性が低くなることから、偽陽性及び偽陰性の結果が減少する。
【0068】
更に好ましい実施形態では、RNAは、RNeasy midiキット(Qiagen)、PureLink(商標)Pro 96 RNA精製キット(Invitrogen)、GeneJET RNA精製キット(Fermentas)及びRNA Clean & Concentrator(商標)−5(Zymoresearch)からなる群から選択される市販のキットを用いて得られた上清から精製される。
【0069】
本発明の好ましい実施形態では、非特異的なcDNAが、ランダムプライマー及びレトロトランスクリプターゼを使用することによって単離RNAから作製される。GoScript逆転写システム(promega)、Super Script III(Invitrogen)及びI−Script(Biorad)等の(これらに限定されない)市販のキットをcDNA作製に使用することができる。作製されたcDNAを分子タイピングに使用することができる。実際、特異的な血清型の配列はS.ニューモニエの莢膜の分子タイピングを行うための標的として使用される。
【0070】
好ましい実施形態では、サンプル中のS.ニューモニエ特異的な核酸の存在及び/又は量を求めるのに、S.ニューモニエの核酸cDNAをリアルタイムで、例えばリアルタイムPCRによって検出する。このようにして、増幅したS.ニューモニエのwzg又はply核酸配列等の増幅核酸配列を、対象のS.ニューモニエの配列から増幅された産物に特異的なプローブを用いて検出することができる。S.ニューモニエのwzg核酸は莢膜タンパク質をコードし、Ply核酸配列は肺炎球菌の毒性因子である肺炎球菌溶血素をコードする。
【0071】
好ましい実施形態では、S.ニューモニエの核酸の増幅は、S.ニューモニエの核酸を、S.ニューモニエの核酸とハイブリダイズして、S.ニューモニエの核酸を増幅させることが可能な1つ又は複数のプライマーと接触させることを含む。更に好ましい実施形態では、上記1つ又は複数のプライマーは、極めて高ストリンジェントな条件下においてS.ニューモニエの核酸配列とハイブリダイズすることが可能である。
【0072】
好ましい実施形態では、サンプルをフォワードプライマーとリバースプライマーとを含むプライマー対と接触させ、その両プライマーをS.ニューモニエのply及び/又はwzg核酸とハイブリライズさせる。
【0073】
好ましい実施形態では、本発明は、上記少なくとも1つのプライマーが、高ストリンジェントな条件下において、好ましくは極めて高ストリンジェントな条件下においてS.ニューモニエのリボ核酸とハイブリダイズすることが可能な10ヌクレオチド〜60ヌクレオチド、好ましくは12ヌクレオチド〜50ヌクレオチド、より好ましくは15ヌクレオチド〜40ヌクレオチドに含まれる長さを有する、方法を提供する。
【0074】
更に好ましい実施形態では、プライマーは、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4と記載されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは100%同一な核酸配列を含む。
【0075】
本発明の好ましい実施形態では、上記少なくとも1つのプライマーは、配列番号5と記載されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは100%同一な少なくとも1つのflap配列を含む。
【0076】
サンプル中でのS.ニューモニエの核酸の検出は、サンプルを、極めて高ストリンジェントな条件下においてS.ニューモニエのply核酸又はS.ニューモニエのwzg核酸等のS.ニューモニエの核酸とハイブリダイズすることが可能な本明細書で開示されるS.ニューモニエ特異的なプローブの少なくとも1つと接触させることを含む。
【0077】
プローブとS.ニューモニエの核酸とのハイブリダイゼーションの検出がサンプル中のS.ニューモニエの核酸の存在を示唆し、例えばS.ニューモニエのwzgプローブとS.ニューモニエのwzg核酸とのハイブリダイゼーションの検出がサンプル中のS.ニューモニエの核酸の存在を示唆し、S.ニューモニエのplyプローブとS.ニューモニエのply核酸とのハイブリダイゼーションの検出がサンプル中のS.ニューモニエの核酸の存在を示唆する。
【0078】
一実施形態では、S.ニューモニエのlytA核酸、S.ニューモニエのpsaA核酸又はS.ニューモニエのply核酸等の対象の標的核酸配列の検出は、リアルタイムPCRを用いて産物が測定されるように、PCR増幅と標識プローブとを併用することを含む。
【0079】
一実施形態では、蛍光標識プローブは、DNAプローブと増幅した標的核酸とのハイブリダイゼーションをリアルタイムで検出する方法として蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)又はサンプルの蛍光放射波長の変化に応じて決まる。例えば、異なるプローブ上の蛍光発生標識間で又は同じプローブ上のフルオロフォアと非蛍光性クエンチャとの間で(例えば分子ビーコン又はTAQMAN(商標)プローブを用いて)発生するFRETは、対象のDNA配列と特異的にハイブリダイズするプローブを特定することができ、このようにしてS.ニューモニエのwzgプローブ及び/又はS.ニューモニエのplyプローブを使用することで、サンプル中のS.ニューモニエの存在を検出し、及び/又はS.ニューモニエの量を求めることができる。幾つかの実施形態では、増幅産物を特定するのに使用される蛍光標識DNAプローブはスペクトルが異なる発光波長を有し、それにより同じ反応管内で、例えばマルチプレックスPCR、例えばマルチプレックスリアルタイムPCRにおいて増幅産物を識別することができる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるプローブ及びプライマーはマルチプレックスリアルタイムPCRに使用される。例えば、マルチプレックスPCRによって、開示されるプローブを用いてwzg核酸及びply核酸の増幅産物の同時検出が可能になる。開示されるプライマー及びプローブを用いて、wzgとplyとの任意の組合せを検出することができる。
【0080】
別の好ましい実施形態では、本発明は標識プローブが放射標識、蛍光標識、ビオチン標識、酵素標識、又は化学標識される、方法を提供する。
【0081】
別の好ましい実施形態では、プローブをフルオロフォア、蛍光クエンチャ又はその組合せで標識する。更に好ましい実施形態では、プローブの核酸配列は、X−配列番号10−Y又はX−配列番号11−Y(ここでXはフルオロフォアであり、Yはダーククエンチャ又はアクセプタ色素である)からなる。
【0082】
別の好ましい実施形態では、本発明はプローブを提供する。更に好ましい実施形態では、上記プローブは、配列番号10又は配列番号11に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは100%同一の核酸配列を有する。更に好ましい実施形態では、上記プローブは、X−配列番号10−Y又はX−配列番号11−Y(ここでXはフルオロフォアであり、Yはダーククエンチャ又はアクセプタ色素である)からなる核酸配列を有する。
【0083】
別の実施形態では、増幅標的核酸の融解曲線分析を増幅プロセスに続けて行うことができる。核酸配列の融解温度(Tm)は配列の長さ及びそのG/C含量に応じて決まる。このため、核酸配列に対するTmの特定を利用して、例えば二本鎖DNA結合色素の化学的性質を用いることにより増幅核酸を特定することができ、これによって配列非特異的な蛍光性挿入剤(SYBR−グリーン又は臭化エチジウム)の使用によりアンプリコン産生が定量される。SYBRグリーンは、溶解している場合にはほとんど蛍光を呈さないが、二本鎖DNAと結合すると強い蛍光シグナルを発する蛍光発生副溝結合色素である。
【0084】
本明細書に開示されるS.ニューモニエ特異的なプライマー及びプローブの用途は、S.ニューモニエに感染している又はその疑いがある被験体から得られた生体サンプル等のサンプル中でのS.ニューモニエの検出である。このようにして、開示される方法を用いて、被験体にS.ニューモニエがいるかを診断することができる。好ましい実施形態では、上記方法によって、S.ニューモニエの核酸と肺炎球菌様ビリダンス連鎖球菌(P−LVS)の核酸とが識別される。これは本発明のプライマー及び方法によるwzgの標的化に起因するものである。wzgはS.ニューモニエに対して特異的が高く、肺炎球菌様ビリダンス連鎖球菌(P−LVS)の検出をもたらすものではない。
【0085】
本明細書に記載の方法を、研究室及び臨床状況等といった診断用途及び予後診断用途を含むS.ニューモニエの検出が望まれる任意の目的に使用することができる。適切なサンプルとしては、ヒト又は獣医被験体から得られる臨床サンプルを含む任意の従来的な環境サンプル又は生体サンプルが挙げられる。好適なサンプルとしては、被験体における細菌感染の検出に有用な全ての生体サンプルが挙げられ、これには細胞、組織(例えば、肺、肝臓及び腎臓)、骨髄穿刺液、体液(例えば、血液、血清、尿、脳脊髄液、気管支肺胞洗浄液、気管吸引物、痰、鼻咽頭吸引物、口腔咽頭吸引物、唾液)、眼拭い液(eye swabs)、子宮頸部拭い液(cervical swabs)、膣拭い液、直腸拭い液、糞便、及び糞便懸濁液が挙げられるが、それらに限定されない。他の好適なサンプルとしては、中耳液、気管支肺胞洗浄液、気管吸引物、痰、鼻咽頭吸引物、口腔咽頭吸引物、又は唾液から得られるサンプルが挙げられる。サンプルは被験体の全血であるのが好ましい。
【0086】
第2の態様では、本発明は、S.ニューモニエ感染の疑いがある被験体においてS.ニューモニエ感染を診断する方法であって、被験体から核酸を含むサンプルを得る工程と、サンプルを1つ又は複数の核酸プローブと接触させる工程であって、プローブの核酸配列が、X−配列番号10−Y又はX−配列番号11−Y(ここでXはフルオロフォアであり、Yはダーククエンチャ又はアクセプタ色素である)からなる、工程と、配列番号1又は配列番号3と記載される核酸配列から本質的になる1つ又は複数のフォワードプライマーと、配列番号2又は配列番号4と記載される核酸配列から本質的になる1つ又は複数のリバースプライマーとを含むプライマーセットを用いて、S.ニューモニエのリボ核酸を増幅する工程であって、プライマーセットが、上記S.ニューモニエのリボ核酸とハイブリダイズするとともに上記S.ニューモニエのリボ核酸を増幅させることが可能である、工程と、サンプル中に存在するS.ニューモニエのリボ核酸の配列とプローブとのハイブリダイゼーションを検出する工程であって、ハイブリダイゼーションの検出が被験体にストレプトコッカス・ニューモニエが感染していることを示す、工程とを含む、方法を提供する。
【0087】
別の好ましい実施形態では、本発明は、マルチプレックスRT−PCR反応がS.ニューモニエの少なくとも2つの異なる核酸配列を増幅するのに使用される方法を提供する。好ましい実施形態では、プライマー及び/又はプローブの混合物を上記マルチプレックス反応に使用する。プライマー及び/又はプローブの混合物は表1から選択されるのが好ましい。
【0088】
第3の態様では、本発明は、S.ニューモニエのリボ核酸を増幅するプライマーセットであって、配列番号1又は配列番号3と記載される核酸配列から本質的になる1つ又は複数のフォワードプライマーと、配列番号2又は配列番号4と記載される核酸配列から本質的になる1つ又は複数のリバースプライマーとを含み、S.ニューモニエのリボ核酸とハイブリダイズするとともにS.ニューモニエのリボ核酸を増幅させることが可能である、プライマーセットを提供する。
【0089】
好ましい実施形態では、本発明による方法に使用されるプライマーセットが提供される。
【0090】
第3の態様では、本発明は、サンプル中のS.ニューモニエのリボ核酸を検出するキットであって、核酸配列がX−配列番号10−Y又はX−配列番号11−Y(ここでXはフルオロフォアであり、Yはダーククエンチャ又はアクセプタ色素である)からなるプローブと;配列番号1又は配列番号3と記載される核酸配列から本質的になる1つ又は複数のフォワードプライマーと、配列番号2又は配列番号4と記載される核酸配列から本質的になる1つ又は複数のリバースプライマーとを含むプライマーセットであって、S.ニューモニエのリボ核酸とハイブリダイズするとともにS.ニューモニエのリボ核酸を増幅させることが可能である、プライマーセットとを含む、キットを提供する。核酸プローブ及び/又はプライマーは、例えば水溶液中に懸濁して又はフリーズドライ粉末若しくは凍結乾燥粉末として提供され得る。
【0091】
好ましい実施形態では、キットはDNAサンプル調製試薬と、適切なバッファー(ポリメラーゼバッファー等)と、塩(例えば塩化マグネシウム)と、デオキシリボヌクレオチド(dNTP)とを含む、増幅反応を行うのに必要な試薬も含み得る。PCR反応に使用される1つ又は複数の制御配列もキットに(例えばヒトRNasePの検出のために)供給され得る。キットは、サンプルを得る、サンプルを処理する、プローブを調製する、及び/又は各プローブをサンプルのアリコートと接触させるための指示書を含む使用説明書を更に含む。
【0092】
好ましい実施形態では、本発明による方法に使用されるキットが提供される。
【0093】
本明細書に記載の本発明の好ましい実施形態は、本発明の幾つかの好ましい態様を説明するものであることから、本発明の範囲を限定する意図はない。任意の均等な実施形態が本発明の真の趣旨及び範囲内にあることが意図される。実際、本明細書に示されるもの及び記載されるものに加えて、本発明の様々な変更形態が先の詳細な説明から当業者にとって明らかとなる。かかる変更形態も添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0094】
本発明の利点は、出発材料が分裂細菌に特異的であり、偽陽性結果の可能性を低減するRNAであることにある。実際、本発明の方法によって、血液1ml当たり50個未満の細菌の検出が可能となる。
【実施例】
【0095】
全ての実験を強い滅菌環境において滅菌材料を用いて行うことが極めて重要である。利用者は常に実験用手袋を着用しなければならない。
【0096】
実施例1:静止期のS.ニューモニエ培養物を用いた血液汚染及び対数期のS.ニューモニエ培養物を用いて汚染した血液
S.ニューモニエ血清型1(コード070799)を対数期及び静止期において培養した。S.ニューモニエの培養法は当業者に既知である。各培養物から、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5及び10−6希釈物をトッドヒューイットブロス培地中で調製した。
【0097】
全血サンプルをボランティアの人からEDTAK抗凝固剤の入った採血管にとった。各アリコートが2mlの血液を含有するように、回収したサンプルからアリコートを作製した。次いでアリコートを、対数期及び静止期において培養したS.ニューモニエの様々な希釈液によって汚染させた。その後、汚染したサンプルを−80℃で凍結させた。
【0098】
実施例2:全RNA抽出及び精製
汚染した血液サンプルを氷と水との混合物中に90分間入れることによって解凍した。その後、等容量の加熱した酸性フェノールを各サンプルに添加した。次いでサンプルと酸性フェノールとの混合物を65℃で約5分間混合した。それから混合物を14000×g、4℃で20分間遠心分離した。次に500μlの上清を回収した。メーカーの使用説明書に従ってQiagenのRNeasy midiキットを使用して、得られた上清からRNAを精製した。次いで単離されたRNAの純度を、分光光度測定を用いてモニタリングした。
【0099】
実施例3:cDNA作製
10μlの精製されたDNAを1μlのランダムプライマーと混合する。次いで二次構造をサーモサイクラーにおいて70℃で5分間変性させる。その後、14μlのマスターミックスを添加して、レトロ転写を25℃で10分間、続いて50℃で60分のサイクルで行う。PromegaのGo script逆転写酵素(商標)を精製されたRNAのレトロ転写に使用する。
【0100】
実施例4:wzg遺伝子及びply遺伝子のリアルタイムPCR検出及び増幅
プライマー
S.ニューモニエのwzg遺伝子及びply遺伝子に特異的なプライマーを設計した。プライマー配列を表1に示す。5’末端にflap配列を有するプライマーを合成した。flap配列の配列を表1に示す。またプライマーをHPLCにおいて精製した。
【0101】
Taqman(商標)リアルタイムPCR
プライマー及びプローブを12.5μΜに等しい濃度で使用した。これらの希釈プライマー及びプローブを使用して、反応のマスターミックスを調製する。
【0102】
wzg遺伝子を増幅するために、2μlのwzgフォワードプライマー及びwzgリバースプライマーを2μlのwzgプローブ、9μlの滅菌水及び25μlのIQ−Mix 2Xと混合することにより、マスターミックスを得る。
【0103】
ply遺伝子を増幅するために、2μlのplyフォワードプライマー及びplyリバースプライマーを2μlのplyプローブ、9μlの滅菌水及び25μlのIQ−Mix 2Xと混合することにより、マスターミックスを得る。
【0104】
20μlの調製したcDNAを各ミックスに添加し、リアルタイムPCR反応を、95℃で3分間のインキュベーションから開始して、続いて95℃で10秒間及び60℃で30秒間を45サイクルで行った。反応は3回行った。陽性サンプル及び陰性サンプルも本発明者らの実験に含めた。
【0105】
閾値(C)データを、デフォルト閾値設定を用いて求めた。Cサイクルを蛍光が固定閾値を超えるサイクル数の分数として規定する。試験サンプルから、R値が0.972の標準曲線を得た(実験とともに図面を参照されたい)。これによって、本発明者らの方法の再現性が示された。
【0106】
本発明者らは更にコンピュータによる解析を行い(performed)、これにより標的となる遺伝子(wzg)は、S.ニューモニエに対する特異性が高く、肺炎球菌様ビリダンス連鎖球菌(P−LVS)の検出をもたらさないことが示された。
【0107】
実施例5:臨床サンプルにおけるS.ニューモニエの存在の検出
全血サンプルを、肺炎を患う様々なヒト(20サンプル)及び健常なヒト(10サンプル)から回収した。各サンプルをこのようにそれぞれ実施例2、実施例3及び実施例4に記載のように処理して、RNAを抽出して、cDNAを作製して、S.ニューモニエの遺伝子の存在を検出した。本発明者らの実験結果は、健常なヒトから回収されたサンプルがRT−PCR後に全くシグナルを示さなかったことから、何ら偽陽性をもたらさなかった(結果は示していない)。罹患ヒトから回収されたサンプルはRT−PCR中に増幅シグナルを示した。得られたRT−PCR結果を標準曲線とともに用いて、試験サンプル中のS.ニューモニエの核酸の濃度を求めた。得られた予備データから、本実験が臨床サンプルによる非常に良好な結果を与えることが示されている。
【0108】
表1:プライマー、プローブ及びflap配列の核酸配列
【表1】

図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]