(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
容器、原料水素供給口、及び純水素取出し口を備えた収納構造物のうち、前記容器に収納され、前記収納構造物と一体となって水素精製装置を構成するパラジウム合金膜ユニットであって、
複数のパラジウム合金細管と、管板と、純水素の取出し配管と、を備え、
前記複数のパラジウム合金細管は、それぞれ、閉口端部と開口端部とを有し、
前記複数の閉口端部は、それぞれ、前記複数のパラジウム合金細管の一端を封じ、
前記複数の開口端部は、それぞれ、前記複数のパラジウム合金細管の他端に形成され、
前記管板は、円盤状の外周部と複数の支持部とを有し、
前記複数の支持部は、それぞれ、前記複数のパラジウム合金細管を前記複数の開口端部において支持し、
前記取出し配管は、取出し配管本体と、前記取出し配管本体の一端に形成され前記外周部と密着する円筒部と、前記取出し配管本体の他端に形成され前記純水素取出し口と接続する取出口継手とを有し、
前記管板がニッケルで構成され、
前記取出し配管がステンレスで構成され、
前記管板と前記取出し配管とがニッケル、クロム、及び鉄の合金により溶接され、
前記管板の直径は、パラジウム合金細管の長さの1/10以下である、パラジウム合金膜ユニット。
容器、原料水素供給口、及び純水素取出し口を備えた収納構造物のうち、前記容器に収納され、前記収納構造物と一体となって水素精製装置を構成するパラジウム合金膜ユニットであって、
複数のパラジウム合金細管と、管板と、純水素の取出し配管と、を備え、
前記複数のパラジウム合金細管は、それぞれ、閉口端部と開口端部とを有し、
前記複数の閉口端部は、それぞれ、前記複数のパラジウム合金細管の一端を封じ、
前記複数の開口端部は、それぞれ、前記複数のパラジウム合金細管の他端に形成され、
前記管板は、円盤状の外周部と複数の支持部とを有し、
前記複数の支持部は、それぞれ、前記複数のパラジウム合金細管を前記複数の開口端部において支持し、
前記取出し配管は、取出し配管本体と、前記取出し配管本体の一端に形成され前記外周部と密着する円筒部と、前記取出し配管本体の他端に形成され前記純水素取出し口と接続する取出口継手と、前記円筒部と前記取出口継手との間の位置に前記容器の開口部と密着する容器継手とを有し、
前記管板がニッケルで構成され、
前記取出し配管がステンレスで構成され、
前記管板と前記取出し配管とがニッケル、クロム、及び鉄の合金により溶接され、
前記管板の直径は、パラジウム合金細管の長さの1/10以下である、パラジウム合金膜ユニット。
前記管板の中心軸、前記取出し配管の中心軸、前記取出口継手の中心軸、及び前記容器継手の中心軸が、同一の中心軸となるように設定された、請求項2に記載のパラジウム合金膜ユニット。
前記取出口継手は、前記収納構造物の内部に設けられ前記取出口継手と接続する接続部材に対して、取付け及び取外し可能な着脱部を有する、請求項1に記載のパラジウム合金膜ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パラジウム合金の水素分離膜を利用した水素精製方法は、深冷吸着法、圧力スイング法と比較して、前述のように高純度の水素ガスが得られるほか、装置を小型化、簡素化できるという長所があるが、単位時間当たりの純水素の取出し量が少ないという短所がある。
尚、水素分離膜の単位面積当りの水素透過量Qは、Q=At
−1(P
11/2−P
21/2)で表される。ここで、式中、Aは分離膜の種類、操作条件等による数値、tは膜厚、P
1は一次側空間の水素分圧、P
2は二次側空間の水素分圧を表す。
【0007】
前述のような水素精製装置においては、適量の純水素を確保するため、パラジウム合金細管(水素分離膜)の膜厚が、通常、100μm以下に設定されている。そのため、水素精製装置を長期間使用すると、パラジウム合金細管の機械的強度が低下し、やがてパラジウム合金細管が破壊してしまう。そこで、破壊する前に、つまり、所定の期間使用した後に、破壊しそうなパラジウム合金細管を新規なパラジウム合金細管と取替える必要がある。
また、例えば、一次側空間の水素分圧P
1と二次側空間の水素分圧P
2との間の差を大きくすれば、精製水素の取出し量の増加を図ることが可能である。しかし、そのようにすると、パラジウム合金細管の機械的強度の低下が早まり、パラジウム合金細管を頻繁に取替える必要が生じる。さらに、パラジウム合金細管の機械的強度の低下を見逃し、パラジウム合金細管の周辺部からガスの漏洩が発生した後は、パラジウム合金細管を早急に取替える必要がある。
【0008】
パラジウム合金細管を新規なパラジウム合金細管と取替える場合、管板から不具合があるパラジウム合金細管を取外し、新規なパラジウム合金細管を取付けることは困難である。また複数のパラジウム合金細管及びこれらを支持する管板を一緒に新規な複数のパラジウム合金細管及びこれらを支持する管板と交換する場合は、水素精製装置からの管板の取付け取外し、及び機密性の確保をすることに手間がかかっていた。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、パラジウム合金細管からなる水素分離膜を利用した水素精製において、パラジウム合金細管を容易に取替えることが可能な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討した結果、前述のような水素精製装置を、複数本のパラジウム合金細管、該パラジウム合金細管を支持する円盤状の管板、及び純水素の取出し配管からなる構成部(パラジウム合金膜ユニット)と、これらを収納する容器、容器内を加熱するヒータ、及び水素精製に必要な各種ガスの出入口からなる構成部(収納構造物)に分離し、継手を用いることにより、一体に組合せたときに内部の機密性を損なうことなく、これらの構成部の合体及び分離が容易となり、パラジウム合金細管を容易に取替えることが可能であることを見出し、以下の(1)から(11)の本発明に到達した。
【0010】
(1) 容器、原料水素供給口、及び純水素取出し口を備えた収納構造物のうち、前記容器に収納され、前記収納構造物と一体となって水素精製装置を構成するパラジウム合金膜ユニットであって、
複数のパラジウム合金細管と、管板と、純水素の取出し配管と、を備え、
前記複数のパラジウム合金細管は、それぞれ、閉口端部と開口端部とを有し、
前記複数の閉口端部は、それぞれ、前記複数のパラジウム合金細管の一端を封じ、
前記複数の開口端部は、それぞれ、前記複数のパラジウム合金細管の他端に形成され、
前記管板は、円盤状の外周部と複数の支持部とを有し、
前記複数の支持部は、それぞれ、前記複数のパラジウム合金細管を前記複数の開口端部において支持し、
前記取出し配管は、取出し配管本体と、前記取出し配管本体の一端に形成され前記外周部と密着する円筒部と、前記取出し配管本体の他端に形成され前記純水素取出し口と接続する取出口継手とを有する、パラジウム合金膜ユニット。
【0011】
(2) 容器、原料水素供給口、及び純水素取出し口を備えた収納構造物のうち、前記容器に収納され、前記収納構造物と一体となって水素精製装置を構成するパラジウム合金膜ユニットであって、
複数のパラジウム合金細管と、管板と、純水素の取出し配管と、を備え、
前記複数のパラジウム合金細管は、それぞれ、閉口端部と開口端部とを有し、
前記複数の閉口端部は、それぞれ、前記複数のパラジウム合金細管の一端を封じ、
前記複数の開口端部は、それぞれ、前記複数のパラジウム合金細管の他端に形成され、
前記管板は、円盤状の外周部と複数の支持部とを有し、
前記複数の支持部は、それぞれ、前記複数のパラジウム合金細管を前記複数の開口端部において支持し、
前記取出し配管は、取出し配管本体と、前記取出し配管本体の一端に形成され前記外周部と密着する円筒部と、前記取出し配管本体の他端に形成され前記純水素取出し口と接続する取出口継手と、前記円筒部と前記取出口継手との間の位置に前記容器の開口部と密着する容器継手とを有する、パラジウム合金膜ユニット。
【0012】
(3) 前記管板の中心軸、前記取出し配管の中心軸、及び前記取出口継手の中心軸が、同一の中心軸となるように設定された、(1)に記載のパラジウム合金膜ユニット。
【0013】
(4) 前記管板の中心軸、前記取出し配管の中心軸、前記取出口継手の中心軸、及び前記容器継手の中心軸が、同一の中心軸となるように設定された、(2)に記載のパラジウム合金膜ユニット。
【0014】
(5) 前記管板がニッケルで構成され、
前記取出し配管がステンレスで構成され、
前記管板と前記取出し配管とがニッケル、クロム、及び鉄の合金により溶接された、(1)又は(2)に記載のパラジウム合金膜ユニット。
【0015】
(6) 前記取出口継手は、前記収納構造物の内部に設けられ前記取出口継手と接続する接続部材に対して、取付け及び取外し可能な着脱部を有する、(1)に記載のパラジウム合金膜ユニット。
【0016】
(7) 前記取出口継手は、前記収納構造物の内部に設けられ前記取出口継手と接続する接続部材に対して、取付け及び取外し可能な着脱部を有し、
前記容器継手は、前記収納構造物の内部に設けられ前記容器継手と密着する密着部材に対して、取付け及び取外し可能な着脱部を有する、(2)に記載のパラジウム合金膜ユニット。
【0017】
(8) (1)に記載のパラジウム合金膜ユニットを収納し、前記パラジウム合金膜ユニットと一体となって水素精製装置を構成する収納構造物であって、
端部に形成された開口部を有し、前記開口部から挿通された前記複数のパラジウム合金細管を収納する容器と、
前記容器の外側から前記容器の内側を加熱するヒータと、
不純物を含む原料水素を前記容器に供給する原料水素供給口と、
パラジウム合金膜を透過しない不純物を含むガスを前記容器から取出す不純物含有ガス取出し口と、
前記取出口継手と接続可能な接続部材を有する純水素取出し口と、を備える、収納構造物。
【0018】
(9) (2)に記載のパラジウム合金膜ユニットを収納し、前記パラジウム合金膜ユニットと一体となって水素精製装置を構成する収納構造物であって、
端部に形成された開口部と前記開口部に前記容器継手と密着可能な密着部材とを有し、前記開口部から挿通された前記複数のパラジウム合金細管を収納する容器と、
前記容器の外側から前記容器の内側を加熱するヒータと、
不純物を含む原料水素を前記容器に供給する原料水素供給口と、
パラジウム合金膜を透過しない不純物を含むガスを前記容器から取出す不純物含有ガス取出し口と、
前記取出口継手と接続可能な接続部材を有する純水素取出し口と、を備える、収納構造物。
【0019】
(10) (1)に記載のパラジウム合金膜ユニットを、(8)に記載の収納構造物に収納して水素の精製を行なう方法であって、
前記複数のパラジウム合金細管を所定の期間使用した後、
前記複数のパラジウム合金細管の機械的強度が低下した後、又は、
前記複数のパラジウム合金細管の周辺部からガスの漏洩が発生した後、
前記複数のパラジウム合金細管を含む前記パラジウム合金膜ユニットを新規なパラジウム合金膜ユニットに交換して、水素の精製を行なう、水素精製方法。
【0020】
(11) (2)に記載のパラジウム合金膜ユニットを、(9)に記載の収納構造物に収納して水素の精製を行なう方法であって、
前記複数のパラジウム合金細管を所定の期間使用した後、
前記複数のパラジウム合金細管の機械的強度が低下した後、又は、
前記複数のパラジウム合金細管の周辺部からガスの漏洩が発生した後、
前記複数のパラジウム合金細管を含む前記パラジウム合金膜ユニットを新規なパラジウム合金膜ユニットと交換して水素の精製を行なう、水素精製方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、複数本のパラジウム合金細管、該パラジウム合金細管を支持する円盤状の管板、及び純水素の取出し配管等からなるパラジウム合金膜ユニットと、容器、原料水素供給口、及び純水素取出し口等からなる収納構造物を、1つ又は2つの継手(取出口継手、容器継手)により、水素精製装置に容易に組立て、また容易に分離できるようにしたものである。本発明はこのような構成なので、例えば、パラジウム合金細管の機械的強度が低下した場合等、パラジウム合金細管の交換が必要なときに、一体に組合せたときの内部の機密性を損なうことなく、パラジウム合金膜ユニットごと容易に新規なものと交換することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、一端が封じられたパラジウム合金細管とパラジウム合金細管の開口端を支持する管板によってセル内部が一次側空間と二次側空間に仕切られ、不純物を含む水素を一次側空間から導入し、パラジウム合金細管を透過させて二次側空間から純水素を取出す水素精製装置あるいは水素精製方法に適用される。
また、本発明に適用される原料水素としては、メタノール、ジメチルエーテル、天然ガス、液化石油ガス等から水蒸気改質反応により得られる改質ガス、該改質ガスを、深冷吸着法、圧力スイング法等により予備的に精製した比較的に高純度の水素が挙げられる。これらの方法により得られた水素は、通常は、ボンベ、貯蔵タンク等の貯蔵装置に備蓄される。
本発明により得られる極めて高純度の精製水素は、例えば半導体製造工程における雰囲気ガス(キャリアガス)として使用される。さらに、例えばハイブリッド車、電気自動車に利用するための燃料電池等の原料として使用することもできる。
【0023】
図1から
図8を参照して、本発明のパラジウム合金膜ユニット、その収納構造物、及びこれらを用いた水素精製方法を説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。
図1は、本発明の第1形態のパラジウム合金膜ユニットの一例を示す構成図である。
図2は、本発明の第2形態のパラジウム合金膜ユニットの一例を示す構成図である。
図3は、本発明に使用される配管の継手の例を示す斜視図である。
図4は、
図1、
図2のパラジウム合金膜ユニットの管板の位置における断面の一例を示す構成図である。
図5は、本発明の第1形態の収納構造物の一例を示す構成図である。
図6は、本発明の第2形態の収納構造物の一例を示す構成図である。
図7は、パラジウム合金膜ユニットの容器継手と収納構造物の容器の開口部の接続構造の一例を示す断面図である。
図8は、本発明のパラジウム合金膜ユニットとその収納構造物を一体に組合せた水素精製装置の例を示す構成図である。
【0024】
図5、
図6に示すように、本発明のパラジウム合金膜ユニット100、100aは、容器9、原料水素供給口11、及び純水素取出し口13を備えた収納構造物200、200aのうち、容器9に収納され、収納構造物200、200aと一体となって水素精製装置300、300aを構成するパラジウム合金膜ユニット100,100aである。以下、本発明の第1形態のパラジウム合金膜ユニット100と第2形態のパラジウム合金膜ユニット100aについて詳細に説明する。
【0025】
図1に示すように、本発明の第1形態のパラジウム合金膜ユニット100は、それぞれの一端が封じられ、それぞれの他端に開口端部6を有する複数のパラジウム合金細管1、開口端部6においてパラジウム合金細管1を支持する円盤状の管板2、及び、一端に管板2の外周部2bと密着する円筒部3を有し、他端に収納構造物200の純水素取出し口13と接続する取出口継手4を有する純水素の取出し配管5を備える。前記の円盤状の管板2、純水素の取出し配管5、及び取出口継手4の中心軸は、通常は同一の中心軸となるように設定される。
【0026】
詳細に説明すると、パラジウム合金膜ユニット100は、複数のパラジウム合金細管1と、管板2と、純水素の取出し配管5と、を備える。複数のパラジウム合金細管1は、それぞれ、閉口端部7と開口端部6とを有する。複数の閉口端部7は、それぞれ、複数のパラジウム合金細管1の一端を封じている。複数の開口端部6は、それぞれ、複数のパラジウム合金細管1の他端に形成されている。管板2は、管板本体2aと、円盤状の外周部2bと、複数の支持部2cとを有する(
図4参照)。複数の支持部2cは、それぞれ、複数のパラジウム合金細管1を複数の開口端部6において支持する。各支持部2cは、例えば、管板本体2aに形成された貫通孔である。
取出し配管5は、取出し配管本体8と、取出し配管本体8の一端に形成され外周部2bと密着する円筒部3と、取出し配管本体8の他端に形成され純水素取出し口13(
図5参照)と接続する取出口継手4とを有する。パラジウム合金ユニット100に対する取出し配管5の長さの割合は、パラジウム合金ユニット100が取り付けられる収納構造物200や、水素精製装置300のサイズに適合するよう、設定される。
【0027】
図2に示すように、本発明の第2形態のパラジウム合金膜ユニット100aは、それぞれの一端が封じられ、それぞれの他端に開口端部6を有する複数のパラジウム合金細管1、開口端部6においてパラジウム合金細管1を支持する円盤状の管板2、及び、一端に管板2の外周部2bと密着する円筒部3を有し、他端に収納構造物200aの純水素取出し口13と接続する取出口継手4を有し、円筒部3と取出口継手4との間の位置に収納構造物200aの容器9の開口部14と密着する容器継手4aを有する純水素の取出し配管5を備える。前記の円盤状の管板2、純水素の取出し配管5、取出口継手4、及び容器継手4aの中心軸は、通常は同一の中心軸となるように設定される。取出口継手4及び容器継手4aには、例えば、ニッケル製の金属パッキンが使用される。また、容器継手4aは、水素精製中約300℃まで上昇するので、これに耐える材料であれば特に限定されない。
【0028】
詳細に説明すると、パラジウム合金膜ユニット100aは、複数のパラジウム合金細管1と、管板2と、純水素の取出し配管5と、を備える。複数のパラジウム合金細管1は、それぞれ、閉口端部7と開口端部6とを有する。複数の閉口端部7は、それぞれ、複数のパラジウム合金細管1の一端を封じる。複数の開口端部6は、それぞれ、複数のパラジウム合金細管1の他端に形成されている。管板2は、管板本体2aと、円盤状の外周部2bと、複数の支持部2cとを有する(
図4参照)。複数の支持部2cは、それぞれ、複数のパラジウム合金細管1を複数の開口端部6において支持する。各支持部2cは、例えば、管板本体2aに形成された貫通孔である。取出し配管5は、取出し配管本体8と、取出し配管本体8の一端に形成され外周部2bと密着する円筒部3と、取出し配管本体8の他端に形成され純水素取出し口13(
図6参照)と接続する取出口継手4と、円筒部3と前記取出口継手4との間の位置に前記容器9の開口部14(
図6参照)と密着する容器継手4aとを有する。
【0029】
図1に示すように、本発明のパラジウム合金膜ユニットにおいて使用されるパラジウム合金細管1は、管板2側の一端に開口端部6を有し、反対側の一端である他端に閉口端部7を有する管からなる。パラジウム合金細管1は、長さが通常20〜200cm、外径が通常1.0〜5.0mm、厚みが通常30〜100μmである。また、パラジウム合金細管1は、1個のパラジウム合金膜ユニット100又は100aに対して3〜1000本使用される。これらの配置については特に制限がないが、隣接するパラジウム合金細管同士の間隔は、通常1.0〜2.5mmとなるように設定される。
【0030】
前述のパラジウム合金細管1の構成成分としては、パラジウムと銅を主成分とする合金、パラジウムと銀を主成分とする合金、パラジウムと銀と金を主成分とする合金を例示することができる。これらの合金を用いる場合、パラジウム50〜70wt%と銅30〜50wt%との合金、パラジウム60〜90wt%と銀10〜40wt%との合金、パラジウム60〜80wt%と銀10〜37wt%と金3〜10wt%の合金が好ましい。パラジウム合金はその他の金属を含んでいてもよいが、前記の金属は、通常は95wt%以上、好ましくは99wt%以上含有される。
【0031】
本発明において使用される管板2は、通常は厚みが3〜30mmの円盤である。また、管板2の直径は、パラジウム合金細管1の径や本数等により異なるが、通常は10〜200mmであり、好ましくは15〜50mmである。また、管板2の直径は、パラジウム合金細管1の長さの1/10以下であることが好ましく、さらに1/15以下であることがより好ましい。その理由は、パラジウム合金膜ユニット100、100aを細長い形状とすることにより、取出し配管5の円筒部3の径、取出し配管5の容器継手4aの径が小さくなり、その結果、パラジウム合金膜ユニット100、100aを容器9に収納し(
図5、
図6参照)、水素の精製を行なう際に、これらの近辺からのガス漏洩をより確実に防止できるからである。
図3に示すように、管板2には、予めパラジウム合金細管1を取付ける位置に、これを挿入するための貫通孔が設けられる。パラジウム合金細管1の管板2への支持は、溶接等により行なわれる。支持部2cは、この貫通孔や溶接により構成される。その際、水素分離膜を透過した純水素の流路空間を確保するために、必要に応じてパラジウム合金細管1の内部にコイル状のスプリングを挿入することもできる。尚、管板2はニッケル製であることが好ましい。
【0032】
本発明において使用される純水素の取出し配管5は、管板2側の端部に該管板2の外周部2bと密着する円筒部3を有している。円筒部3は、管板2との密着部においてガス漏れがないように、少なくとも管板2の外周部2bの側面において円筒に形成されていればよく、取出し配管本体8と管板2との間の部分は、その断面が
図1に示すようなコの字形状のほか、円錐台の形状、半円の形状、又はこれらに類似する形状等であってもよい。また、純水素の取出し配管5は、管板2と反対側の端部に、収納構造物200、200aの純水素取出し口13と接続する取出口継手4、例えば
図3(1)(2)に示すような雄型又は雌型の継手を有している。
【0033】
さらに、本発明の第2形態のパラジウム合金膜ユニットに関しては、純水素の取出し配管5は、円筒部3と継手4との間の位置に、収納構造物200aの容器9の開口部14と密着する容器継手4a、例えば、
図3(3)に示すような雌型又は雄型(図示しない)の継手を有している。容器継手4aは、通常はパラジウム合金細管1の長さや収納構造物200aの容器9の長さとの関係で、好ましい位置において純水素の取出し配管5の取出し配管本体8に固定して取付けられる。
【0034】
これらの取出口継手4、容器継手4aは、後述する収納構造物200、200aの内部に設けられたこれらの継手と接続又は密着する部材(接続部材13a、密着部材14a)に対して、取付け取外しが自在となるように設定される。即ち、取出口継手4は、収納構造物200、200aの内部に設けられ取出口継手4と接続する接続部材13aに対して、取付け及び取外し可能な着脱部41を有する。また、容器継手4aは、収納構造物200aの内部に設けられ容器継手4aと接続する密着部材14aに対して、取付け及び取外し可能な着脱部41aを有する。例えば、収納構造物200の純水素取出し口13が雄型の継手を有する場合、取出口継手4はこれに螺合する雌型の継手となり、収納構造物200の純水素取出し口13が雌型の継手を有する場合、取出口継手4はこれに螺合する雄型の継手となる。また、同様に収納構造物200aの容器9の開口部14が雄型の継手を有する場合、容器継手4aはこれに螺合する雌型の継手となり、収納構造物200aの容器9の開口部14が雌型の継手を有する場合、容器継手4aはこれに螺合する雄型の継手となる。
【0035】
尚、取出口継手4は、パラジウム合金細管1を透過した純水素を、漏洩することなく収納構造物200の純水素取出し口13に供給することができる機能を有し、また容器継手4aは、収納構造物200aの容器9の開口部14との機密性を確保することができる機能を有すれば、特に継手の種類、構造、大きさ等に制限されることがなく、例えばネジがないワンタッチ継手等も使用可能である。また、相手部材である収納構造物内の継手が、単独で前記のような機能を有する場合、純水素の取出し配管5の当該部分は、円筒等の形状を有する単純な構造の配管であってもよく、このような場合も本発明に含まれるものである。純水素の取出し配管5は、円筒部3、取出口継手4、及び容器継手4aを含めてステンレス製であることが好ましく、管板2と円筒部3は、ニッケル、クロム、及び鉄の合金により溶接されることが好ましい。
【0036】
図5、
図6に示すように、本発明の収納構造物200、200aは、前述のようなパラジウム合金膜ユニット100、100aを収納し、該パラジウム合金膜ユニット100、100aと一体となって水素精製装置300、300aを構成する。本発明の収納構造物200、200aは、前述のようなパラジウム合金膜ユニット100、100aのうち、少なくともパラジウム合金細管1、管板2、及び純水素の取出し配管5の円筒部3を容器9に収納する。以下、本発明の第1形態の収納構造物200と第2形態の収納構造物200aについて詳細に説明する。
【0037】
図5(実線部分)に示すように、本発明の第1形態の収納構造物200は、第1形態のパラジウム合金膜ユニット100を収納するUの字形状又はコの字形状の容器9、容器9の外側から該容器内を加熱するヒータ10、不純物を含む原料水素を容器9に供給する原料水素供給口11、パラジウム合金膜を透過しない不純物を含むガスを該容器から取出す不純物含有ガス取出し口12、及び、第1形態のパラジウム合金膜ユニットの純水素の取出し配管5の一端に設けられた取出口継手4と接続可能な部材(接続部材13a)を有する純水素取出し口13を備えてなる収納構造物である。
【0038】
より詳細に説明すると、本発明の第1形態の収納構造物200は、第1形態のパラジウム合金膜ユニット100を収納し、パラジウム合金膜ユニット100と一体となって水素精製装置300を構成する。収納構造物200は、端部に形成された開口部14を有し、開口部14から挿通された複数のパラジウム合金細管1を収納する容器9と、容器9の外側から容器9の内側を加熱するヒータ10と、不純物を含む原料水素を容器9に供給する原料水素供給口11と、パラジウム合金膜を透過しない不純物を含むガスを容器9から取出す不純物含有ガス取出し口12と、取出口継手4と接続可能な接続部材13aを有する純水素取出し口13と、を備える。
【0039】
図6(実線部分)に示すように、本発明の第2形態の収納構造物200aは、Uの字形又はコの字形の形状を有し、開口部14に第2形態のパラジウム合金膜ユニット100aの容器継手4aと密着可能な部材を有する、パラジウム合金膜ユニットを収納する容器9、容器9の外側から容器9内を加熱するヒータ10、不純物を含む原料水素を容器9に供給する原料水素供給口11、パラジウム合金膜を透過しない不純物を含むガスを容器9から取出す不純物含有ガス取出し口12、及び第2形態のパラジウム合金膜ユニット100aの純水素の取出し配管5の一端に設けられた取出口継手4と接続可能な部材(接続部材13a)を有する純水素取出し口13を備えてなる収納構造物である。
【0040】
より詳細に説明すると、本発明の第2形態の収納構造物200aは、第2形態のパラジウム合金膜ユニット100aを収納し、パラジウム合金膜ユニット100aと一体となって水素精製装置300aを構成する。収納構造物200aは、端部に形成された開口部14と開口部14に容器継手4aと密着可能な密着部材14aとを有し、開口部14から挿通された複数のパラジウム合金細管1を収納する容器9と、容器9の外側から容器9の内側を加熱するヒータ10と、不純物を含む原料水素を容器9に供給する原料水素供給口11と、パラジウム合金膜を透過しない不純物を含むガスを容器9から取出す不純物含有ガス取出し口12と、取出口継手4と接続可能な接続部材13aを有する純水素取出し口13と、を備える。
【0041】
本発明の収納構造物200、200aにおいて使用される容器9は、正面から見た形状がUの字形状又はコの字形状であるが、これらを回転させて得られる形状、あるいはこれらに類似するものも含まれる。また、側壁の断面の形状は通常は円形であるが、これに限定されることはない。容器9の長さは、通常はパラジウム合金細管1の長さの1.05〜1.3倍である。また、容器9の底部(原料水素供給口11)とパラジウム合金細管1の閉口端部7との間の間隙は、パラジウム合金細管における水素の透過が効率よく行なわれるように狭くなるように設定することが好ましく、通常は該間隙1〜10cmとなるように設定される。尚、容器9は通常はステンレス製である。
【0042】
原料水素供給口11と不純物含有ガス取出し口12との位置は、管板2の位置より上流側であれば特に制限されることはないが、これらは互いに離れた位置に設定されることが好ましい。
図5、
図6において、原料水素供給口11と不純物含有ガス取出し口12の位置を、互いに付け替えることもできる。純水素取出し口13の先端部には、
図5、
図6に示すように、パラジウム合金膜ユニットの取出口継手4と接続可能な部材、例えば
図3(1)(2)に示すような雄型又は雌型の継手が設けられる。しかし、これに限定されることなく、パラジウム合金膜ユニットの純水素の取出し配管5の場合と同様に、例えばネジがないワンタッチ継手等も使用可能である。
【0043】
さらに、本発明の第2形態の収納構造物200aに関しては、容器9の開口部14の先端部16には、第2形態のパラジウム合金膜ユニット100aの容器継手4aと密着可能な部材(密着部材14a)が設けられる。例えば、
図7に示すような容器継手4aの接続構造においては、容器継手4aの先端部15の内周には雌ネジが設けられ、開口部14の先端部16の外周には雄ネジが設けられ、ネジを回して締めることによりパッキン17が壁面18に密着し、当該部分における機密性を得ることが可能である。本発明においては、容器継手4aと開口部14との機密性を確保することが可能であれば、このような構造に限定されることなく、例えばネジを有しないワンタッチ継手等も使用可能である。
【0044】
次に、本発明の第1形態の水素精製方法と第2形態の水素精製方法について詳細に説明する。
本発明の第1形態の水素精製方法は、第1形態のパラジウム合金膜ユニット100を、第1形態の収納構造物200に収納して水素の精製を行なう方法であって、パラジウム合金細管1を所定の期間使用した後、パラジウム合金細管1の機械的強度が低下した後、又はパラジウム合金細管1の周辺部からガスの漏洩が発生した後、パラジウム合金細管1をパラジウム合金膜ユニット100ごと新規なものと交換して水素の精製を行なう方法である。
【0045】
また、本発明の第2形態の水素精製方法は、第2形態のパラジウム合金膜ユニット100aを、第2形態の収納構造物200aに収納して水素の精製を行なう方法であって、パラジウム合金細管1を所定の期間使用した後、パラジウム合金細管1の機械的強度が低下した後、又はパラジウム合金細管1の周辺部からガスの漏洩が発生した後、パラジウム合金細管1をパラジウム合金膜ユニット100aごと新規なものと交換して水素の精製を行なう方法である。
【0046】
尚、本発明において、パラジウム合金細管1の所定の使用期間は、パラジウム合金細管1の条件(膜厚等)、水素の精製条件(温度、ガス圧力等)、使用頻度等により一概に定めることはできないが、通常は6ヶ月〜5年である。また、パラジウム合金細管1の機械的強度の低下とは、パラジウム合金細管1を構成するパラジウム合金膜にピンホール等が発生した場合、パラジウム合金膜が劣化した場合、パラジウム合金膜が変質した場合等を含むものである。
【0047】
本発明により水素の精製を行なう際は、
図5、
図6に示すように、パラジウム合金膜ユニット100、100aが収納構造物200、200aに収納され、各配管の接続等が行なわれて水素精製装置300、300aが組立てられた後、
図8(1)又は
図8(2)に示すように、収納構造物200、200aの原料水素供給口11が原料水素供給配管19と、不純物含有ガス取出し口12が不純物含有ガス回収配管20と、純水素取出し口13が純水素回収配管21と接続される。
尚、第2形態においては、パラジウム合金膜ユニット100aの純水素の取出し配管5の円筒部3と、収納構造物200aの容器9の側壁の間には、パラジウム合金膜ユニット100aが収納構造物200aに容易に収納できるようにするために、0.2〜10mmの間隙があることが好ましく、さらに0.5〜5mmの間隙があることがより好ましい。原料水素が該間隙を通過して配管本体8の方に流れても、収納構造物200aの容器9の開口部14と密着する容器継手4aにより、原料水素の外部への漏れを防止することができる。
また、第1形態においては、前記のような間隙がないことが好ましいが、間隙がある場合は、耐熱性パッキン等のシール部材、あるいは互いに噛合うネジ部等を設けて原料水素の漏洩を防止することができる。
【0048】
その後、原料水素供給口11から不純物を含む原料水素が、ヒータ10により加熱された容器9内に供給され水素の精製が行なわれる。水素精製の際のパラジウム合金細管1の温度は、通常は250〜500℃、好ましくは300〜450℃である。尚、予め予熱器等により原料ガスを前記の温度程度に加熱してから、水素精製装置に導入することが好ましい。原料水素は加熱されたパラジウム合金細管1と接触し、水素のみがパラジウム合金細管1を透過し、純水素の取出し配管5の配管本体8を経由して、純水素取出し口13に供給される。また、パラジウム合金細管1を透過しないガスは、不純物含有ガス取出し口12から回収される。
【0049】
本発明の水素精製方法においては、容器9の一次側(パラジウム合金細管1より上流側)と二次側(パラジウム合金細管1より下流側)の水素分圧の差が大きいほど単位時間当たりの水素透過量が大きくなる。そのため、本発明においては、通常は原料水素を大気圧より大きな圧力で供給し、二次側の圧力が大気圧以下になるようにされる。厚みの薄いパラジウム合金細管1は、このような雰囲気下で長期間使用すると機械的強度が低下し、やがて破壊してしまうので、その前にパラジウム合金細管1をパラジウム合金膜ユニットごと新規なものと取替えることが好ましい。以後、パラジウム合金細管1の機械的強度が低下した時等に、同様にしてパラジウム合金膜ユニットの交換が繰返して行なわれる。
【実施例】
【0050】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。
【0051】
[実施例1]
(第1形態のパラジウム合金膜ユニットの製作)
直径25mm、厚さ5mmの円盤状のニッケル製管板2に、パラジウム、銀、及び金を主成分とする合金からなるパラジウム合金細管1(外径1.8mm、厚さ70μm、長さ300mm)35本を、複数の同心円上に溶接した。また、一端に円筒部3(内径25mm、長さ20mm)を有し、他の一端に
図3(2)に示すような雄型の継手(ネジ部の内径30mm、長さ70mm)を有する純水素の取出し配管5(配管本体8の外径7mm、長さ200mm)を製作した。続いて、円筒部3と管板2を、ニッケル、クロム、及び鉄の合金により溶接し、
図1に示すようなパラジウム合金膜ユニットを製作した。
【0052】
(第1形態の収納構造物の製作、水素精製装置の製作)
原料水素供給口11、不純物含有ガス取出し口12を有するUの字形状の容器9(内径25mm、長さ400mm)の外側にヒータ10を設けた後、純水素取出し口13を設置し、その先端に前記のパラジウム合金膜ユニットの雄型の継手と嵌合する雌型の継手を設けて収納構造物を製作した。
その後、パラジウム合金膜ユニットを収納構造物に収納し、パラジウム合金膜ユニットの雄型の継手と収納構造物の雌型の継手を接続した後、原料水素供給配管19、不純物含有ガス回収配管20、及び純水素回収配管21を接続して、
図8(1)に示すような水素精製装置を製作した。
【0053】
(水素精製試験)
Uの字形状の容器内の温度を600℃に昇温するとともに水素を導入して、10時間加熱処理を行なった。続いて420℃まで温度を低下させ、一次側(パラジウム合金細管1より上流側)の空間と二次側(パラジウム合金細管1より下流側)の空間の差圧が1.0MPaとなるように制御しながら、不純物(窒素、酸素、二酸化炭素等)を合計で約400ppm含む原料水素を原料水素供給口11から導入し、水素の精製を行なった。その結果、1時間の処理で純水素取出し口13から820Lの純水素が得られた。
この時、原料ガスの供給量に対する不純物含有ガスの排出量は、実施例(不純物400ppm)では約2%に制御される。
【0054】
(パラジウム合金膜ユニットの交換)
前述の水素精製試験において、パラジウム合金細管1の機械的強度が低下したと仮定して、次のようにパラジウム合金膜ユニットの交換を行なった。
水素精製試験が終了した状態で、純水素回収配管21のバルブを閉にして、窒素を原料水素供給口11から導入し、Uの字形状の容器内を窒素雰囲気にした後、パラジウム合金膜ユニットの雄型の継手と収納構造物の雌型の継手を外した。続いて、収納構造物の純水素取出し口13を移動し、収納構造物からパラジウム合金膜ユニットを取出し、新規のパラジウム合金膜ユニットを収納構造物に収納した。その後、収納構造物の純水素取出し口13を元の位置に戻し、ユニットの雄型の継手と収納構造物の雌型の継手を接続してユニットの交換を完了した。
【0055】
[実施例2]
(第2形態のパラジウム合金膜ユニットの製作)
直径25mm、厚さ5mmの円盤状のニッケル製管板2に、パラジウム、銀、及び金を主成分とする合金からなるパラジウム合金細管1(外径1.8mm、厚さ70μm、長さ300mm)35本を、複数の同心円上に溶接した。また、一端に円筒部3(内径25mm、長さ20mm)を有し、他の一端に
図3(2)に示すような雄型の継手を有し、中央部に
図3(3)に示すような雌型の継手(ネジ部の内径30mm、長さ70mm)を有する純水素の取出し配管5(配管本体8の外径7mm、長さ200mm)を製作した。続いて、円筒部3と管板2を、ニッケル、クロム、及び鉄の合金により溶接し、
図2に示すようなパラジウム合金膜ユニットを製作した。
【0056】
(第2形態の収納構造物の製作、水素精製装置の製作)
原料水素供給口11、不純物含有ガス取出し口12を有し、開口部の先端部16に前記のパラジウム合金膜ユニットの雌型の継手と螺合する雄型の継手を設けたUの字形状の容器9(内径30mm、長さ400mm)の外側にヒータ10を設けた後、純水素取出し口13を設置し、その先端に前記のパラジウム合金膜ユニットの雄型の継手と螺合する
図3(1)に示すような雌型の継手を設けて収納構造物を製作した。
その後、パラジウム合金膜ユニットを収納構造物に収納し、パラジウム合金膜ユニットの雄型の継手と収納構造物の雌型の継手を接続した後、原料水素供給配管19、不純物含有ガス回収配管20、及び純水素回収配管21を接続して、
図8(1)に示すような水素精製装置を製作した。
【0057】
(水素精製試験)
Uの字形状の容器内の温度を600℃に昇温するとともに水素を導入して、10時間加熱処理を行なった。続いて420℃まで温度を低下させ、一次側(パラジウム合金細管1より上流側)の空間と二次側(パラジウム合金細管1より下流側)の空間の差圧が1.0MPaとなるように制御しながら、不純物(窒素、酸素、二酸化炭素等)を合計で約400ppm含む原料水素を原料水素供給口11から導入し、水素の精製を行なった。その結果、1時間の処理で純水素取出し口13の下流側から830Lの純水素が得られた。
この時も、原料ガスの供給量に対する不純物含有ガスの排出量は、実施例(不純物400ppm)では約2%に制御される。
【0058】
(パラジウム合金膜ユニットの交換)
前述の水素精製試験において、パラジウム合金細管1の機械的強度が低下したと仮定して、次のようにパラジウム合金膜ユニットの交換を行なった。
水素精製試験が終了した状態で、純水素回収配管21のバルブを閉にして、窒素を原料水素供給口11から導入し、Uの字形状の容器内を窒素雰囲気にした後、2箇所の継手を外した。続いて、収納構造物の純水素取出し口13を移動し、収納構造物からパラジウム合金膜ユニットを取出し、新規のパラジウム合金膜ユニットを収納構造物に収納した。その後、収納構造物の純水素取出し口13を元の位置に戻し、2箇所の継手を接続してパラジウム合金膜ユニットの交換を完了した。
【0059】
以上のように、本発明のパラジウム合金膜ユニット及びその収納構造物を用いた水素精製装置は、1箇所又は2箇所の継手により、水素精製装置の一体組合せ及び分離が容易にでき、一体に組合せたときに内部の機密性を損なうことがないので、機械的強度が低下した場合等、パラジウム合金細管の交換が必要なときに、パラジウム合金細管を、パラジウム合金膜ユニットごと容易に新規なものと交換することが可能である。