【実施例1】
【0018】
図1の(a)は平屋建ての建物16の側面図、(b)は部分2階建て構造の建物70の側面図、(c)はその横断面図である。
図2の(a)は、補強された平屋建ての建物の1階部分の間取り図、(b)はその2階部分の間取り図である。
本発明では、はじめに、施主の希望に従って平屋建ての建物16の間取りを設計する。続いて、1階部分30にこの間取りを備え、2階部分32を増築した2階建て構造の建物70を設計する。この図の例では部分2階建てであるが、後で説明するように、総2階建て等であっても手順は変わらない。
【0019】
2階建て構造の建物70を設計後、その1階部分30の設計データを使用した補強された平屋建ての建物を設計する。外観は
図1(a)の平屋建ての建物16と変わらない。当面、この補強された平屋建ての建物を建築して、将来家族が増えた場合に、
図1(b)の部分2階建て構造の建物70になるように改装工事をする。施主に対してこうしたプランを提案する。同時にその改装工事費用も計算する。
【0020】
図2の(a)に示した間取り図は、補強された平屋建ての建物のものである。この図に示したように、補強された平屋建ての建物42では、2階部分32を増設できるように、予め階段増設用区画74を設けてある。これがそのまま部分2階建て構造の建物70の1階部分30になる。即ち、1階部分30の構造材の補強だけでなく、2階部分32の間取り図を考慮した階段部分も含めて、補強された平屋建ての建物42の設計をする。
【0021】
図3は、上記のような建物の設計をして、工事費用の比較図を生成することができるコンピュータ10の機能ブロック図である。また、
図4はその演算処理機能を図解した説明図である。
図のコンピュータ10には、演算処理装置12と記憶装置14とが設けられている。演算処理装置12に設けられた5種類の演算手段26,40,52,60,66は、それぞれコンピュータプログラムにより、コンピュータ10に一定の機能を付与する部分である。また、記憶装置14には、その演算処理の結果が記憶される。
【0022】
第1の演算手段26は、間取りが指定された平屋建ての建物16の構造と仕様と建築費用とを演算する機能を持つ。得られた設計データ18は、記憶装置14に記憶させる。第2の演算手段は、上記の指定された間取りと共通の間取りを1階部分30に有する2階(複層階)建ての建物の構造と仕様と建築費用とを演算する機能を持つ。得られた設計データ34は、記憶装置14に記憶させる。
【0023】
第3の演算手段は、2階建ての建物の1階部分30の構造と仕様を、共通の間取りの平屋建ての建物16の構造と仕様に置き換えて、補強された平屋建ての建物42の構造と仕様と建築費用を演算する機能を持つ。得られた設計データ44は、記憶装置14に記憶させる。このときの平屋建ての建物16と2階建ての建物の1階部分30の構造と仕様は実質同一であるが、階段室の追加とか若干の変更があるので共通という表現をして説明を進める。
【0024】
第4の演算手段は、補強された平屋建ての建物42を改装して、第2の演算手段40により構造と仕様を演算した2階建ての建物にするために必要な、工事の内容と改装工事費用を演算する機能を持つ。得られた工事の内容と改装工事費用と演算式64は、記憶装置14に記憶させる。
【0025】
第5の演算手段は、上記第2の演算手段40により演算した複層階建ての建物の建築費用と、上記第3の演算手段52の演算により得られた補強された平屋建ての建物42の建築費用と、上記第4の演算手段60の演算により得られた改装工事費用56とを比較した比較表58を生成する機能を持つ。そして、出力手段62により、例えば、プリンタ63やコンピュータ10のディスプレイに工事費用の比較表58を表示出力させる機能を持つ。
【0026】
また、この補強された平屋建ての建物42の建築が決まった場合には、記憶装置14に、第4の演算手段60による改装工事費用56を求めるための演算式64と、上記第2の演算手段40が演算をした複層階建ての建物の構造と仕様を含む設計データ34とを記憶させた状態で、改装工事着手時期まで保存するように管理される。
【0027】
図5は、比較表58の一例を示す説明図である。
図の(a)は、始めから2階建てを建てた場合と、補強された平屋建ての建物42を建築して、その後10年とか15年後に2階建てに改装工事をする場合の費用を比較したものである。2階建ての建物には、お神楽タイプと小屋裏タイプとを例示した。お神楽タイプというのは、
図1に示した部分2階建て構造の建物70のことである。小屋裏タイプというのは、後で
図9と
図10で説明する、2階部分の増設時に屋根工事が不要な構造の建物のことである。
【0028】
図5(a)の比較表では、始めから2階建てで建築をすると2,000万円の費用がかかるという見積もりがされている。これに対して、始めに補強された平屋建ての建物42を建てた場合には、1,500万円プラス補強費用70万円で、総工費1,570万円になる。そして、例えば15年後に2階建てに改装工事を行うと、改装工事費用は900万円で、当初の建築費用と合計すると2,470万円になる。
【0029】
その結果、始めから2階建てで建築をした場合と、始めに補強された平屋建ての建物42を建てた後に2階建に改装工事をした場合とを比較すると、470万円の差額ができるということがわかる。この差額を十分に施主に説明をした上で、最適な建築計画を進めることができる。
【0030】
一方、一階部分が同程度の小屋裏タイプの場合には、始めから2階建てで建築をすると2,100万円の費用がかかるという見積もりがされている。これに対して、始めに補強された平屋建ての建物42を建てた場合には、1600万円プラス補強費用90万円で、総工費1,690万円になる。そして、例えば15年後に2階建てに改装工事を行うと、改装工事費用は500万円で、当初の建築費用と合計すると2,190万円になる。
【0031】
その結果、始めから2階建てで建築をした場合と、始めに補強された平屋建ての建物42を建てた後に2階建てに改装工事をした場合とを比較すると、差額が90万円になることが分かる。御神楽タイプと小屋裏タイプとを比較すると小屋裏タイプの改装工事費用は約半額である。御神楽タイプの場合、平屋建ての建物の屋根の一部を取り壊して2階部分を増設する工事になる。一方、小屋裏タイプの場合には、屋根工事が不要である。これが、改装工事費用の差として現れている。
【0032】
図5(b)は、小屋裏タイプの建物の別の効果を説明する比較表である。
小屋裏タイプの建物は、後で説明するように、一方に傾斜した白い屋根面を設けることができる。従って、その屋根面に効率の良い大面積の太陽光発電設備を取り付けることができる。例えば、15年後に改装工事をするという計画の場合には、15年間で得られた売電による利益を比較表に書き込む。この費用を改装費用に補填するという計算をする。
【0033】
図5(a)の例では、始めから2階建てで建築をすると2,100万円の費用がかかり、始めに補強された平屋建ての建物42を建てた後に2階建てに改装工事をした場合の総工費は2190万円になるという見積もり計算であった。ここで、太陽光発電設備を取り付けると500万円の設備費が追加になり、総工費は2690万円になる。
【0034】
ここで、始めから2階建てで建築をした場合と、始めに補強された平屋建ての建物42を建てて、15年後に2階建てに改装工事をした場合とを比較すると、差額が590万円に広がる。一方、15年間の売電による利益は1100万円になる。その結果、510万円の利益が出るということがわかる。この利益を改装費用に補填することができるので、きわめて経済的な計画であるということを、施主に示すことができる。
【0035】
上記のように、太陽光発電設備を取り付けて、将来の改装工事費用は売電によりまかなっても余りあるという計画を立てることができる。もちろん、屋根面積が十分に広ければ、お神楽タイプのものでも総2階構造のものでも、同様にして自家発電設備を取り付けることができる。その他の各種自然エネルギによる発電設備も、これが併設されていれば、同様の計算をすることができる。
【0036】
図6は、第1〜第3の演算手段の具体的な動作フローチャートである。
ステップS11では、第1の演算手段26を起動する。ステップS12では、間取りの指定処理をする。即ち、施主の希望する間取りを指定して、コンピュータ10に入力する。ステップS13では、この間取りを使用した、通常の平屋建ての建物16の設計データ18を生成する。ステップS14では、この設計に基づいた建築費用の計算をする。
【0037】
ステップS15では、第2の演算手段40を起動する。ステップS16では、第1の演算手段26により生成された設計データ18の間取りを、1階部分30の設計用として取得する。ステップS17で、2階建ての建物の設計データ34を生成する。ステップS18では、この建物の建築費用の計算をする。
【0038】
ステップS19では、第3の演算手段52を起動する。ステップS20では、第2の演算手段40により生成された設計データ34から、1階部分30の構造と仕様を取得する。ステップS21では、この1階部分30の構造と仕様に従って、補強された平屋建ての建物42の設計データ44を生成する。ステップS22では、この補強された平屋建ての建物42の建築費用の計算をする。
【0039】
図7は、第4と第5の演算手段の動作フローチャートである。
ステップS31では、第4の演算手段60を起動する。ステップS32では、第2の演算手段40が生成した補強された平屋建ての建物42の設計データ34の取得をする。ステップS33では、第3の演算手段52が生成した2階建ての建物の設計データ44を取得する。ステップS34では、補強された平屋建ての建物42を2階建ての建物に改装するために必要な工事の内容と、その改装工事費用を計算する。
【0040】
ステップS35では、第5の演算手段66を起動する。ステップS36では、第3の演算手段52が生成した2階建ての建物の建築費用を、上記の計算結果から取得する。ステップS37では、第2の演算手段40が生成した補強された平屋建ての建物42の建築費用を取得する。ステップS38では、第4の演算手段60が生成した改装工事の内容と改装工事費用を取得する。さらに、自家発電設備を取り付けることができる建物の場合には、ステップS39で、自家発電設備の売電利益計算をする。そして、これらの結果をまとめた比較表58の生成と出力をする。
【0041】
次に、上記の結果を、改装工事をする時期まで記憶装置14に保存する処理を実行する。まず、ステップS41で、改装工事着手時期に応じた保存期間を指定する。少なくともこの日まで保存するという指定をすればよい。ステップS42では、改装工事費用の演算式64を取得する。改装工事をするときに、材料費や人件費等が変更になっていることがある。その再計算に利用するためである。ステップS43では、この演算式64と改装工事に必要な全ての設計データ18、34、44を含む期間指定保存データ54を生成して、指定した保存期間を表示して記憶装置14に記憶させる。
【0042】
図8の(a)は平屋建ての建物16の側面図、(b)は総2階建て構造の建物68の側面図、(c)はその横断面図である。
将来総2階建てに改装する場合も、はじめに、施主の希望に従って平屋建ての建物16の間取りを設計する。
図1(a)で説明した場合と同様である。そして、1階部分32bにこの間取りを備え、2階部分32aを増築した、
図8(b)の総2階建て構造の建物68を設計する。続いて、その1階部分30aの設計データを使用した補強された平屋建ての建物を設計する。この場合には、
図8(c)に示すように一階部分30aの全体に2階部分32aが乗るので、一階部分30aの全体を補強する設計になる。その後の手順は既に説明した例と同様である。
【0043】
通常の平屋建ての建物の構造は、主に屋根荷重を計算しているため、2階を増築した際に階下にかかる荷重は考慮されていない。本発明では、設計段階で2階の増築を想定した構造計算を行ない、1階の柱や梁を補強しておく。そのため、2階を増築した場合も荷重を階下でしっかり支えることができ、万一の地震などにも優れた耐震性を確保できる。
【0044】
しかも、暮らしの変化にあわせて平屋の増築を予定するこができ、容積率や斜線規制などを考慮しながら、2階を増築し。例えば、部分2階建て構造ならは、平屋の形状を活かしながら、必要な空間を効率よく増やすことができる。即ち、平屋の屋根を一部残し、バランスのとれた立体感も豊かに増築された部分2階建てを実現できる。
【0045】
また、平屋を総2階建てに改装できれば、ゆとりある暮らしのスペースを生み出すことが可能になる。2世帯での暮らしを考慮して、家族が集うスペースも確保しやすくなる。また、平屋の小屋裏部分を大きく確保しておき、将来的にそこを改築して、2階居室を設けることも可能になる。この場合、屋根を架け替える必要が無いのが最大の効果になる。
【0046】
また、部分2階建て構造、総2階建て構造、または小屋裏活用構造の建物は、いずれも、増築のために新たな敷地を必要としない。3階建て構造であっても同様である。即ち、土地を有効利用できるので、上記のような設計と演算処理と比較表の生成により、経済的で合理的な建設計画を施主に提示することができる。