特許第6181684号(P6181684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181684屋根搭載ユニットおよび屋根搭載ユニットを含む車両空調システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181684
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】屋根搭載ユニットおよび屋根搭載ユニットを含む車両空調システム
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20170807BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   B60H1/00 102S
   B60H1/32 614E
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-37921(P2015-37921)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-159684(P2016-159684A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】591150797
【氏名又は名称】株式会社デンソーエアクール
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】有元 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉川 勝
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/088963(WO,A1)
【文献】 特開平11−235922(JP,A)
【文献】 特開2005−306165(JP,A)
【文献】 特開2009−051424(JP,A)
【文献】 特開2008−275232(JP,A)
【文献】 特開2005−306330(JP,A)
【文献】 特表2007−525353(JP,A)
【文献】 特開2008−296724(JP,A)
【文献】 特開2007−186015(JP,A)
【文献】 特開2014−148292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
右側の室内用ファンおよび室内用熱交換器を収納し、車両の屋根の右側に搭載される右側のハウジングと、
左側の室内用ファンおよび室内用熱交換器を収納し、前記右側のハウジングとの間に前記屋根が露出した状態で、前記屋根の左側に搭載される左側のハウジングとを有し、
前記右側のハウジングは、前記室内用ファンおよび室内用熱交換器を収納する室内用の領域の前方に第1の室外熱交換器を収納する室外用の領域を含み、
前記左側のハウジングは、前記室内用ファンおよび室内用熱交換器を収納する室内用の領域の前方に第2の室外熱交換器を収納する室外用の領域を含み、
前記右側のハウジングおよび前記左側のハウジングは、それぞれ前記室外用の領域の幅に対して、前記室内用の領域の幅は狭く、前記室内用の領域が前記屋根に沿って伸びた左右対称のL字型で、前記右側のハウジングの前記室外用の領域と前記左側のハウジングの前記室外用の領域とを隣接または連結すると、前記右側のハウジングの前記室内用の領域と前記左側のハウジングの前記室内用の領域とが離れて間に前記屋根が露出した部分であって、メンテナンスの際に作業員が後方から前記屋根の中央に沿って移動可能な部分が形成される、屋根搭載ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
前記屋根が露出した部分の幅は15〜50cmである、屋根搭載ユニット。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記右側のハウジングおよび前記左側のハウジングは、それぞれの室外用の領域の前記室外熱交換器の後方側に配置された、冷媒の気液分離と水分除去を行うレシーバードライヤーを含む、屋根搭載ユニット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記右側のハウジングおよび前記左側のハウジングは、それぞれ前記室内用ファンの駆動を制御する電装部品を含み、前記車両の中心側から前記電装部品、前記室内用熱交換器および前記室内用ファンが順番に設置されている、屋根搭載ユニット。
【請求項5】
請求項4において、
前記右側のハウジングおよび前記左側のハウジングは、それぞれ、前記車両の室内から空気を取り入れる空気取入口と、
前記空気取入口からドレンの逆流出を防止する立ち上がり部とを含み、
前記電装部品は、前記立ち上がり部の上に配置されている、屋根搭載ユニット。
【請求項6】
請求項5において、
前記電装部品は、それぞれのコネクタ部が前記空気取入口に向くように配置されている、屋根搭載ユニット。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記右側のハウジングおよび前記左側のハウジングは、それぞれ、下部および側部を形成する下ハウジングと、前記下ハウジングの上部を覆う上ハウジングと、前記室内用熱交換器に冷媒を循環させる循環系とを含み、
前記下ハウジングは、上縁部に前記循環系の配管を通すU字溝を含む、屋根搭載ユニット。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、
前記右側のハウジングおよび前記左側のハウジングは、それぞれ、前記室内用熱交換器を片持ち支持する支持ユニットを含む、屋根搭載ユニット。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかにおいて、
前記右側のハウジングおよび前記左側のハウジングは、それぞれ前記車両の屋根に固定される複数の脚部を含む、屋根搭載ユニット。
【請求項10】
請求項9において、
前記脚部は、前記車両の屋根と固定されるようにそれぞれのハウジングの底面が凹んだ凹部と、
前記凹部の側壁に形成された排水用の孔とを含む、屋根搭載ユニット。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の屋根搭載ユニットを含む、車両空調システム。
【請求項12】
請求項11に記載の車両空調システムを搭載した車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を空調する屋根搭載ユニットおよび屋根搭載ユニットを含む車両空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モジュールがバスの屋根に取り付けるために設けられ、客室からの還気を調和しかつ調和された空気を客室に供給するために必要なコンポーネントの全てを含むことが記載されている。各モジュールは蒸発器部、凝縮器部、および圧縮機とインバータを含む電力部を含む。蒸発器部は還気室を有し、この還気室は1つの設計で種々のタイプのバスの種々の還気ダクトの設置の必要性に合うように実質的にバスの屋根を横切る距離だけ延びている。蒸発器排出口とバスの吸気ダクトとがフレキシブルダクトによって連結されており、このフレキシブルダクトは、締結具によって連結される一体形成された端部プレートを有する。給気ダクトに固定される下方の端部プレートは、保護カバーを連結するための直立フランジをさらに有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−525181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バスなどの車両の屋根に搭載されるモジュール型の空調装置が知られており、特許文献1のように圧縮機を含むもの、圧縮機はバスのエンジンに直結されているものなどがある。このような屋根搭載ユニットを有する車両空調システムにおいてメンテナンス性を向上させることは重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、右側の室内用ファンおよび室内用熱交換器を収納し、車両の屋根の右側に搭載される右側のハウジングと、左側の室内用ファンおよび室内用熱交換器を収納し、右側のハウジングとの間に屋根が露出した状態で、屋根の左側に搭載される左側のハウジングとを有する屋根搭載ユニットである。
【0006】
従来、特許文献1に記載されているように、屋根に搭載されるモジュールはバスに設置されたダクトの配置に合致するようにバスの屋根を横切る距離だけ延びている。この屋根搭載ユニットにおいては、車両の左右をそれぞれ空調する左右のハウジングが分かれて、それら左右のハウジングの間に車両の屋根が露出するように車両の屋根に搭載される。したがって、左右のハウジングの間にメンテナンス用のスペースを確保でき、作業員が左右のハウジングに対し、左右のハウジングの間からアクセスできる。左右のハウジングは、独立して屋根に搭載されていてもよく、一部をハーネス等で連結して搭載してもよい。
【0007】
この屋根搭載ユニットの右側のハウジングは、室内用ファンおよび室内用熱交換器を収納する室内用の領域の前方に第1の室外熱交換器を収納する室外用の領域を含む。また、左側のハウジングは、室内用ファンおよび室内用熱交換器を収納する室内用の領域の前方に第2の室外熱交換器を収納する室外用の領域を含む。さらに、右側のハウジングの室外用の領域と左側のハウジングの室外用の領域とは隣接または連結している右側のハウジングおよび左側のハウジングは、それぞれ室外用の領域の幅に対して、室内用の領域の幅は狭く、室内用の領域が屋根に沿って伸びた左右対称のL字型で、右側のハウジングの室外用の領域と左側のハウジングの室外用の領域とを隣接または連結すると、右側のハウジングの室内用の領域と左側のハウジングの室内用の領域とが離れて間に、屋根が露出した部分であって、メンテナンスの際に作業員が後方から屋根の中央に沿って移動可能な部分が形成される。左右の室外用の領域を隣接または連結することにより、右側のハウジングの室内用の領域と左側のハウジングの室内用の領域とは離れて間に屋根が露出しているが全体として一体化された屋根搭載ユニットを提供できる。また、左右の室外用の領域の後方からメンテナンス用にアクセスすることが可能となる。さらに、左右の室外用の領域の後方を開けることにより換気効率を向上したり、走行中のラム圧の利用効率を向上することも可能となる。
【0008】
右側のハウジングおよび左側のハウジング(左右のハウジング)は、それぞれの室外用の領域の室外熱交換器の後方側に、冷媒の気液分離と水分除去を行うレシーバードライヤーを配置してもよい。室内用の領域の幅を削減でき、左右の室内用の領域同士の間の距離を拡張できる。
【0009】
左右のハウジングには、左右の室内用ファンの駆動を制御する電装部品をそれぞれ含めることが可能である。左右の室内空調用のファンを統合して制御する部品は左右いずれか一方のハウジングに搭載してもよい。左右のハウジング内は対称的な配置を採用でき、車両の中心側から電装部品、室内用熱交換器および室内用ファンを順番に設置できる。電装部品を室内用熱交換器に対して上流に配置し、室内用熱交換器で空調した空気をファンで吸引して車内に供給する構成とすることにより、室内用熱交換器で発生する可能性がある結露水の電装部品に対する影響を抑制できる。
【0010】
左右のハウジングは、それぞれ、車両の室内から空気を取り入れる空気取入口と、空気取入口からドレンの逆流出を防止する立ち上がり部とを含んでいてもよい。電装部品は、立ち上がり部の上に配置でき、結露水による影響をさらに抑制できる。さらに、電装部品を、そのコネクタ部が空気取入口に向くように配置することにより、コネクタ部に対する結露水の影響をさらに抑制できる。また、電装部品を、車両の内側から空気取入口を介してメンテナンスできる。
【0011】
左右のハウジングは、それぞれ、下部および側部を形成する下ハウジングと、下ハウジングの上部を覆う上ハウジングと、室内熱交換器に冷媒を循環させる循環系とを含み、下ハウジングは、上縁部に循環系の配管を通すU字溝を含んでもよい。循環系の配管をハウジングの壁を貫通させることなく、室内外、たとえば、室内用の領域と室外用の領域とに配置でき、雨仕舞も容易となる。
【0012】
左右のハウジングは、それぞれ、室内用熱交換器を片持ち支持する支持ユニットを含んでいてもよい。室内用の領域の左右方向の構成をコンパクトにでき、左右の室内用の領域同士の間の距離を拡張でき、屋根の露出面積を広くできる。
【0013】
左右のハウジングは、それぞれ車両の屋根に固定される複数の脚部を含んでもよい。ハウジングは左右に分割されており、それらをそれぞれのハウジングに設けられた脚部により車両の屋根に搭載することにより、それぞれのハウジングが走行中の屋根あるいは車体の変形に追従しやすい。したがって、ハウジングおよび車体に無理な力が掛かりにくく、ハウジングの構成を簡易にでき、搭載容量を拡大できる。またハウジングの耐久性を向上できる。
【0014】
脚部は、車両の屋根と固定されるようにそれぞれのハウジングの底面が凹んだ凹部と、凹部の側壁に形成された排水用の孔とを含んでいてもよい。左右のハウジングは脚部を介してそれぞれ独立して車両に、例えばボルトなどを用いて固定できる。さらに、ハウジング内部の結露や雨水の侵入によるドレンを、脚部の排水用の孔を介して排出できる。
【0015】
本発明の他の態様は、左右のハウジングを含む上記の屋根搭載ユニットを有する車両空調システムである。冷媒を供給するコンプレッサは屋根搭載ユニットに含められていてもよく、屋根搭載ユニットの外に配置されていてもよい。
【0016】
本発明の異なる他の態様は、上記の車両空調システムを搭載した車両である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】車両空調システムを搭載した車両の概要を示す斜視図。
図2】屋根搭載ユニットの概略構成を示す斜視図。
図3】屋根搭載ユニットの内部の構成を示す平面図。
図4】屋根搭載ユニットの室内用の領域の内部の配置を拡大して示す断面図。
図5】下ハウジングに形成されたU字溝を拡大して示す斜視図。
図6】下ハウジングに設けられた脚部の構造を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に、車両空調システムが搭載された車両の概略構成を斜視図により示している。以下ではバス1を対象とした車両空調システム(バス空調、バスエアコン)10を対象に本発明をさらに説明するが、空調の対象となる車両は電車や大型トラックなどであってもよい。このバス空調システム10は、バス1の屋根2に搭載された屋根搭載ユニット(屋根モジュール)20と、エンジンに直結されたコンプレッサ11とを含む。コンプレッサは屋根搭載ユニット20に内蔵されていてもよい。
【0019】
屋根搭載ユニット20は、吸引した車内の空気6を空調して車内の前後方向に延びる供給ダクト5を介して車内3に供給する。屋根搭載ユニット20は右側のハウジング21a(21)と、左側のハウジング21b(21)とを含む。屋根搭載ユニット20とコンプレッサ11とは、冷媒を循環する車両内配管12を介して接続されている。
【0020】
この明細書においては、右側のハウジング21aおよび左側のハウジング21bは車両1の前方からみた左右で示している。左右は後方から見てもよい。この車両には、車両1の後方のエンジンルーム9にコンプレッサ11が2台搭載されており、左右のハウジング21аおよび21bとそれぞれ独立した車両内配管12aおよび12bにより接続されている。1台のコンプレッサで左右のハウジング21に冷媒を供給する構成であってもよく、複数のコンプレッサを含んでいてもよい。コンプレッサ11はエンジンルーム9以外に搭載されていてもよく、バス1はコンプレッサ11を専用で駆動するエンジンを含んでいてもよい。
【0021】
図2に、バス空調システム10の屋根搭載ユニット20を拡大して示している。図3に、屋根搭載ユニット20の内部の平面的な配置をハウジングのカバー22を外した状態で示している。
【0022】
屋根搭載ユニット20は、右側のユニット29aおよび左側のユニット29bを有し、ユニット29aおよび29bはそれぞれ右側のハウジング21aおよび左側のハウジング21bを有する。右側のハウジング21aは、右側の室内空調用のファン(室内用ファン)34および室内用熱交換器33を収納する室内用の領域30aを含み、車両1の屋根2の右側に搭載され、バス車内の主に右側のダクト5を介して空調用空気(冷気)7を供給する。左側のハウジング21bも、左側の室内空調用のファン(室内用ファン)34および室内用熱交換器33を収納する室内用の領域30bを含み、車両1の屋根2の左側に搭載され、バス車内の主に左側のダクト5を介して空調用空気(冷気)7を供給する。右側のハウジング21aと左側のハウジング21bとは、ハウジング同士の間に屋根2が露出した状態で屋根2に搭載される。
【0023】
右側のハウジング21aは、隔壁25により前後に区分けされており、室内用ファン34および室内用熱交換器33を収納する室内用の領域30aと、室内の領域30aの前方に位置し、室外熱交換器43aを収納する室外用の領域40aとを含む。左側のハウジング21bも隔壁25により前後に区分けされており、室内用ファン34および室内用熱交換器33を収納する室内用の領域30bと、室内の領域30bの前方に位置し、室外熱交換器43bを収納する室外用の領域40bとを含む。
【0024】
図4に屋根搭載ユニット20の室内用の領域30aの内部の配置を断面図により示している。屋根搭載ユニット20は、右側のハウジング21aと左側のハウジング21bとの構成および配置は左右対称である。このため、図4においては、右側のハウジング21aを中心に、その断面を拡大して示している。以降、左右の違いを言及する必要のない場合は、右側のユニット29aを代表して説明する。
【0025】
右側のユニット29aのハウジング21aは、室内用の領域30aおよび室外用の領域40aの下部および側部を形成する下ハウジング(ベース)23と、下ハウジング23の上部を覆い、取外し可能な上ハウジング(カバー、蓋)22とを含む。ベース23およびカバー22はFRPまたはその他の樹脂製、またはアルミニウムなどの金属製の成形品であってもよい。
【0026】
ベース23とカバー22とは室内用の領域30aを覆う組み合わせと、室外用の領域40aを覆う組み合わせとに分かれていてもよい。カバー22の室内用の領域30aを覆う部分と室外用の領域40aを覆う部分との形状、高さは同じであっても異なっていてもよい。本例では、たとえば、カバー22の室内用の領域30aを覆う部分は、車両1の中心部側が低くなるよう傾斜勾配が付けられており、雨を屋根2の中央に導き、雨が屋根2を伝わって排出されやすいようにしている。
【0027】
左右のハウジング21aおよび21bは、それぞれ前方の室外用の領域40aおよび40bの部分の幅に対して、後方の室内用の領域30aおよび30bの部分の幅が狭く、室内用の領域30aおよび30bの部分がバス(車両)1または屋根2の長手方向に伸び、全体として屋根2の幅方向の中心に対して左右対称で、J字型またはL字型となっている。屋根搭載ユニット20は、左右のハウジング21aおよび21bが、それぞれの内側に突出した室外用の領域40aおよび40bの部分が隣接または連結するように組み合わされている。
【0028】
したがって、右側のハウジング21aの室外用の領域40aと左側のハウジング21bの室外用の領域40bとは隣接または連結しており、右側のハウジング21aの室内用の領域30aと左側のハウジング21bの室内用の領域30bとは離れ、左右のハウジング21aおよび21bの間に屋根2が露出している。左右の室外用の領域40aおよび40bを隣接して配置することにより、車両1の左右方向の幅(ワイド)を活かして、車両1の前方側から室外用の領域40aおよび40bに導入される空気(風、外気)を効率よく取り込むことができ、室外熱交換器43aおよび43bの効率を上げられる。
【0029】
一方、左右のハウジング21aおよび21bの室内用の領域30aおよび30bの間には、屋根2の中心に沿って屋根2が露出した部分2aが設けられる。屋根が露出した部分2aの幅は、数cm〜1m程度、好ましくは15cm〜50cm程度が確保でき、屋根が露出した部分2aに沿って、メンテナンスの際に作業員が屋根2の中央に沿って屋根2の上を安全に移動できる。したがって、この屋根搭載ユニット20は、メンテナンスの際に、屋根2の前方および後方からだけではなく、屋根2の中央から作業員がアクセスできる。さらに、ハウジング21aおよび21bの間の屋根2が露出した部分2aは、室内用の領域30aおよび30bに沿って前後に延びているので、室内用の領域30aおよび30bのみならず、室外用の領域40aおよび40bに対し後方からアクセスするためにも利用できる。
【0030】
従来の屋根モジュールにおいては、特許文献1に記載されているように、幅方向に屋根を横切る距離だけ延びている。このため、屋根に搭載された屋根モジュールには前後からしかアクセスできず、屋根モジュールの中央付近のメンテナンスは困難であった。本例の屋根搭載ユニット20は、従来不可能であった中央からのアクセスを可能し、さらに、屋根2の中央に沿って作業員が移動できるので作業の安全を確保することも容易となる。
【0031】
さらに、屋根搭載ユニット20においては、左右のハウジング21aおよび21bが分離されているので、製造あるいは組み立て工程においても、それぞれのハウジング21aおよび21bに対して独立して前後および左右からアクセスできる。したがって、製造時においても、ハウジング21aおよび21bの内部に容易にアクセスでき、労力を軽減できるとともに作業効率を向上でき、製造コストおよび時間を低減できる。
【0032】
屋根搭載ユニット20においては、右側のハウジング21aと左側のハウジング21bとは完全に独立して屋根2に搭載してもよく、ハーネス13などにより一部を連結した応対で搭載してもよい。ハーネス13の上部に命綱用のフックなどを取り付けることにより、車両1の屋根2で作業などを行う際に安全性を確保できる。
【0033】
それぞれのハウジング21aおよび21bの前方の室外用の領域40aおよび40bは、連結させてもよく、離して配置してもよい。前方の室外用の領域40aおよび40bを近接または連結した配置とすることにより一体感のある屋根搭載ユニット20が得られる。また、左右のユニット29aおよび29bの間の制御用の配線を車内3の代わりに室外用の領域40aおよび40bを介して接続できる。また、室内用の領域30aおよび30bは、それぞれ室外用の領域40aおよび40bより狭く、室外用の領域40aおよび40bの後方の一部は室外に開放できる。したがって、室外用の領域40aおよび40bの後方に外気が流入する開口を設けることが可能となり、換気効率を高めたり、走行時のラム圧を利用して外気を引き込むことが可能となる。
【0034】
図3および図4を参照して、ハウジング内の配置を右側のユニット29aを中心にさらに詳しく説明する。室外用の領域40aには、ハウジング21aの前方に設けられた外気取入口(フロントグリル)49から取り入れた外気と熱交換を行う室外熱交換器(コンデンサ)43と、室外熱交換器43で熱交換された空気を車外4に排出する室外用のファン44と、室外熱交換器43を循環する冷媒の気液分離と水分除去を行うレシーバードライヤー45とが配置されている。レシーバードライヤー45は、室外熱交換器43の後方側で、室内用の領域30aと室外用の領域40aとの間に、室外用の領域40aを幅方向に横切り、車両1の左右方向に長手方向が向くように配置されている。レシーバードライヤー45は室内用の領域30aに配置することも可能であるが、室外熱交換器43、レシーバードライヤー45、室内用熱交換器33を前後方向に配置することによりハウジング21aを全体的に前後方向に長く、幅方向に短くすることが可能であり、左右の室内の領域30aおよび30bの間の露出する屋根2aの幅を広くできる。
【0035】
室内用の領域30aには、車体(バス)1の中心側から幅方向に外側に向かって順番に、バス室内3からの空気6を取り入れる空気取入口35と、電装部品(リレー群)76と、空気取入口35から取り入れた室内の空気6を空調(冷却または加温)する室内用熱交換器33と、空気6を循環する室内用ファン(送風機)34とが配置されており、室内用ファン34の下側に空調された空気7をバス室内3に吹き出す吹出口36が配置されている。
【0036】
空気取入口35は、バス室内3と、バス側の天井(内板)8に設けられた開口部8aを介して繋がっている。吹出口36は、バス側の天井8または天井内に設けられた供給ダクト5(この場合は右側の供給ダクト)に接続されており、バス室内3の前後方向に空調された空気(冷房または暖房された空気)7を供給する。この例では、空気取入口35、ファン34および吹出口36は、車両1の前後方向に沿ってそれぞれ4か所設けられているが、3か所以下であってもよく、5か所以上であってもよい。さらに、空気取入口35とファン34との数が一致していなくてもよい。また、室内用の領域30aには、他の空調用の機器、たとえば、車内の空気6の代わりに、あるいは混合して空調して外気を車内に供給するダンパーおよび外気取入口を含んでいてもよい。
【0037】
室内用熱交換器33はエバポレータとして機能し、室内の空気6を冷房する。冷暖房を行う屋根搭載ユニット20においては、室外熱交換器43との間で冷媒を循環する循環系60に切替弁などを設置することにより、冷媒の流れを逆転して室内用熱交換器33をコンデンサとしても機能させることができる。また、室内用熱交換器33は、冷媒が流れるチューブに加えて温水が流れるチューブを含むものであってもよい。この場合は、屋根搭載ユニット20は、バス1で生成される温水を室内用熱交換器33に供給する配管を含んでいてもよく、温水を用いて車内3の暖房が可能となる。
【0038】
室内用熱交換器33は、左右のハウジング21aおよび21b内において、支持ユニット38により片持ち支持されている。支持ユニット38は、室内熱交換器33の下流側で底板23に固定されて上下に延びる支柱38aと、室内熱交換器33の上下から室内熱交換器33を支持するように支柱38aから延びる上下のアーム38bとを含む。この屋根搭載ユニット20は左右のハウジング21аおよび21bに分割されているため、それぞれのハウジング21aおよび21bは比較的剛性が高く、室内用熱交換器33を支持ユニット38により片持ち支持できる。室内熱交換器33の両側に支柱を設けてもよいが、支持ユニット38により片持ち支持することにより、室内用の領域30aおよび30bの左右方向をさらにコンパクトにでき、左右の室内用の領域30aおよび30bの間の屋根2aを広くできる。室内用熱交換器33の支持強度を高めるために、逆側(上流側)から支持する支持ユニットをさらに設けてもよい。
【0039】
ハウジング21a内において、電装部品76は室内用熱交換器33よりも中央側、すなわち、上流に配置されている。図3に示すように、左右のハウジング21aおよびハウジング21bに、室内用ファン34および室外用ファン44を制御する電装部品(リレー群)76が分散して配置されている。屋根搭載ユニット20としては、電装部品として、さらに、車両空調システム10全体の動作を制御するECU(中央制御ユニット)75を含むが、ECU75は一方のハウジング、本例では左側のハウジング21b内に配置され、右側のハウジング21aに配置されたリレー群76とは車内3に設けられたケーブル78を介して接続されている。
【0040】
図4に示すように、ハウジング21aの内部には、空気取入口35と室内用熱交換器33との間に、堤防(堰)のように立ち上がった部分(立ち上がり部)37が設けられており、電装部品であるECU75およびリレー群76は、立ち上がり部37の上(上面)37aに配置されている。さらに、ECU75およびリレー群76は、それぞれのコネクタ部75cおよび76cが空気取入口35の方向に向くように配置されている。本例においては、さらに、コネクタ部75cおよび76cが空気取入口35の上方に、空気取入口35からアクセスできる位置に配置されている。
【0041】
屋根搭載ユニット20においては、ECU75およびリレー群76といった電装部品を防水用のボックスなどに入れず、ハウジング21a内の立ち上がり部37に分散して直付している。したがって、ハウジング21a内のスペースを有効活用でき、ハウジング21aの幅方向の寸法を縮めることができている。
【0042】
さらに、リレー群76などが取り付けられる立ち上がり部37は、空気取入口35と室内熱交換器33との間に位置し、冷房する前の状態の結露しにくい、比較的乾燥した空気6が流れ、空気6が中央から外側に流れるので、室内用熱交換器33で結露した水分や、雨水がリレー群76などにかかる可能性はほとんどない。さらに、立ち上がり部37は、室内用熱交換器33の結露、または、ハウジング21a内の結露により発生したドレンや、万一、雨水がハウジング21a内に侵入しても、空気取入口35からそれらが車内3へ流れ込む(逆流する)ことを防止するための堰として機能する。その上37aにリレー群76などを配置することにより、リレー群76を防水用のボックスなどに入れなくても十分に結露や雨水等から保護でき、安全に作動させることができる。
【0043】
さらに、リレー群76を分散して、ハウジング21a内に配置することにより、電装部品用のスペースをまとめて確保する必要がなくなるだけではなく、カバー22を取り外すだけで個々の電装部品にアクセスできる。このため、メンテナンス時の検査が簡易になり、必要な場合には個々のリレー77を簡単に取り換えできる。また、リレー群76のコネクタ部76cやECU75のコネクタ部75cが、空気取入口35に面するように配置されているため、車両1の室内3側からも、動作チェックや交換などを行いやすい。さらに、車内3を介して左右のユニット29aおよび29bをケーブル等で連絡することも容易になる。
【0044】
図5に、室内用熱交換器33と室外空調用の熱交換器43との間で冷媒を循環させる循環系(配管系)60がハウジング21aの内部を前後に区切る隔壁25を通過する様子を示している。ベース23から立ち上がった隔壁(側壁)25の上縁部25aに、上方が開いたU字型の溝(切れ込み)26が設けられており、循環系60の冷媒配管63は溝26を通って隔壁25の前後に配置されている。ベース23にカバー22を被せることにより、溝26を通過する配管63は固定され、上からの雨水の侵入を防止できる。また、配管63は隔壁25の上を通過するので下側からの雨水の侵入も防止できる。さらに、隔壁25の上の溝26を通過するように配管63を上に曲げることにより配管63を伝わって雨水が侵入することも防止できる。このため、シールやパテなどにより雨仕舞をしなくても、溝26を通して配管63を配置することにより簡単に屋外からの雨水の侵入を防止できる。この屋根搭載ユニット20においては、室内用の領域30aに対して出入りする循環系60は、全て上記と同様にハウジング21aのベース23から立ち上がった壁を通過する構成となっている。
【0045】
また、循環系60は、ハウジング21aの外に配置されているコンプレッサ11と室外熱交換器43とを接続する配管61を含む。配管61は、ハウジング21aのカバー22が、室内用ファン34が配置された位置を超えて側方へ張り出した内側のスペース24に配置されており、スペース24の内部で車両内配管12とジョイント62を介して接続されている。このスペース24は、ベース23から立ち上がった側壁27により室内用の領域30aに対し分離されており、室外として取り扱われ、室内用の機器が配置されないデッドスペースとなっている。このスペース24を配管スペースとして使用することにより、ハウジング21a内の配管効率を高め、ハウジング21aの幅方向のサイズをさらに小さくできる。
【0046】
以上に説明したように、屋根搭載ユニット20は、独立した右側のハウジング21aおよび左側のハウジング21bを有し、それぞれ、別々に、独立してバス1の屋根(外板)2に固定できる。これらのハウジング21aおよび21bは、幅が狭く、バス1の走行中の屋根2の動き(ねじれや歪みなどの変形)に追従しやすい。したがって、それぞれのハウジング21aおよび21bを、フレームなどを介さずに直に屋根2に取り付けることができる。
【0047】
図6に、ハウジング21aに設けられ脚部50の1つの構造を拡大して示している。ハウジング21aは、ベース23の底面23aに複数の脚部50が分散して設けられている。脚部50は、ベース23の底壁(底板、底面)23aの一部が凹み、下側に突出するように成形された部分である。脚部50は、車両1の屋根2に当たる底面52と、底壁23aが凹んだ凹部51の側壁54に形成された排水用の孔55とを含む。底面52には、屋根2にハウジング21aを固定するためのボルト56を通す貫通孔53を設けてもよい。脚部50を構成する凹部51はハウジング21aの底壁23aよりも一段下がっており、ハウジング21a内で発生した様々なドレン28が流入しやすい。したがって、凹部51の側壁54に排出用の孔55を形成することによりドレン28がハウジング21a内に蓄積されることを予防できる。
【0048】
以上に説明したように、この車両空調システム10の屋根搭載ユニット20においては、左右のハウジング21aおよび21bを分離し、左右の室内用の領域30aおよび30bの間に車両1の屋根2が露出するように屋根2に搭載している。このため、屋根2に搭載されたユニット20に対して、メンテナンスする際や、ユニット20を着脱する際に、前後からのみならず、左右のハウジング21aおよび21bの間から作業員がアクセスできる。したがって、メンテナンス性のよい屋根搭載ユニット20を備えた車両空調システム10を提供できる。
【0049】
また、以上においては、左側のハウジング21аと左側のハウジング21bとが完全に分離した屋根搭載ユニット20を例に説明したが、左右のハウジングが一体として形成された、例えばU字型のハウジングを備えた屋根搭載ユニットであってよい。このタイプの屋根搭載ユニット20においても、右側のハウジングの室内用の領域と左側のハウジングの室内用の領域との間に屋根が露出するので、メンテナンスが容易な屋根搭載ユニットを提供できる。
上記には、右側の室内用ファンおよび室内用熱交換器を収納し、車両の屋根の右側に搭載される右側のハウジングと、左側の室内用ファンおよび室内用熱交換器を収納し、前記右側のハウジングとの間に前記屋根が露出した状態で、前記屋根の左側に搭載される左側のハウジングとを有する屋根搭載ユニットが記載されている。前記右側のハウジングは、前記室内用ファンおよび室内用熱交換器を収納する室内用の領域の前方に第1の室外熱交換器を収納する室外用の領域を含み、前記左側のハウジングは、前記室内用ファンおよび室内用熱交換器を収納する室内用の領域の前方に第2の室外熱交換器を収納する室外用の領域を含み、前記右側のハウジングの前記室外用の領域と前記左側のハウジングの前記室外用の領域とは隣接または連結しており、前記右側のハウジングの前記室内用の領域と前記左側のハウジングの前記室内用の領域とは離れて間に前記屋根が露出してもよい。上記において、さらに、前記右側のハウジングおよび前記左側のハウジングは、それぞれの室外用の領域の前記室外熱交換器の後方側に配置された、冷媒の気液分離と水分除去を行うレシーバードライヤーを含んでもよい。上記において、前記右側のハウジングおよび前記左側のハウジングは、それぞれ前記室内用ファンの駆動を制御する電装部品を含み、前記車両の中心側から前記電装部品、前記室内用熱交換器および前記室内用ファンが順番に設置されていてもよい。上記において、前記右側のハウジングおよび前記左側のハウジングは、それぞれ、前記車両の室内から空気を取り入れる空気取入口と、前記空気取入口からドレンの逆流出を防止する立ち上がり部とを含み、前記電装部品は、前記立ち上がり部の上に配置されていてもよい。上記において、前記電装部品は、それぞれのコネクタ部が前記空気取入口に向くように配置されていてもよい。
上記において、さらに、前記右側のハウジングおよび前記左側のハウジングは、それぞれ、下部および側部を形成する下ハウジングと、前記下ハウジングの上部を覆う上ハウジングと、前記室内用熱交換器に冷媒を循環させる循環系とを含み、前記下ハウジングは、上縁部に前記循環系の配管を通すU字溝を含んでいてもよい。上記において、前記右側のハウジングおよび前記左側のハウジングは、それぞれ、前記室内用熱交換器を片持ち支持する支持ユニットを含んでもよい。上記において、前記右側のハウジングおよび前記左側のハウジングは、それぞれ前記車両の屋根に固定される複数の脚部を含んでもよい。上記において、前記脚部は、前記車両の屋根と固定されるようにそれぞれのハウジングの底面が凹んだ凹部と、前記凹部の側壁に形成された排水用の孔とを含んでもよい。また、上記の屋根搭載ユニットを含む車両空調システムが記載されている。さらに、上記の車両空調システムを搭載した車両が記載されている。
【符号の説明】
【0050】
1 車両(バス)
10 車両空調システム(バスエアコン)
20 屋根搭載ユニット、 21а 右側のハウジング、 21b 左側のハウジング
30a、30b 室内用の領域
40a、40b 室外用の領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6