(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181685
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】すべり軸受の製造方法及びすべり軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/14 20060101AFI20170807BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20170807BHJP
F16C 33/10 20060101ALI20170807BHJP
F16C 33/20 20060101ALI20170807BHJP
F16C 9/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
F16C33/14 Z
F16C17/02 Z
F16C33/10 D
F16C33/10 Z
F16C33/20 A
F16C9/02
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-39117(P2015-39117)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-161017(P2016-161017A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年6月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】関 大輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 裕史
【審査官】
上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−181811(JP,A)
【文献】
特開2014−031871(JP,A)
【文献】
特開平09−126227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/14
F16C 9/02
F16C 17/02
F16C 33/10
F16C 33/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒を軸方向と平行に二分割した半割部材を上下に配置したすべり軸受の製造方法であって、
前記製造方法は、前記下側の半割部材の軸方向端部に、回転方向下流側において円周方向に細溝を設ける第一の工程と、前記細溝の表面にショットブラスト加工を施す第二の工程と、前記半割部材の表面にコーティング層を形成する第三の工程とを有し、
前記第三の工程において、前記細溝の一部であって、上流側端部及び下流側端部のみにコーティング層を形成したことを特徴とするすべり軸受の製造方法。
【請求項2】
前記第三の工程において形成される前記コーティング層は、二硫化モリブデン、グラファイト、カーボン、ポリテトラフルオロエチレン、窒化ホウ素、二硫化タングステン、または、フッ素系樹脂の少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする請求項1に記載のすべり軸受の製造方法。
【請求項3】
前記細溝の軸方向外側面に周縁部が形成され、
前記周縁部の前記半割部材の外周面からの高さは、前記半割部材の外周面から当接面までの高さよりも低くなるように形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のすべり軸受の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項の製造方法によって製造されたことを特徴とするすべり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すべり軸受の製造方法の技術に関し、円筒を軸方向と平行に二分割した半割部材を上下に配置したすべり軸受の製造方法及びすべり軸受の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンのクランクシャフトを軸支するための軸受であって、円筒形状を二分割した二つの部材を合わせる半割れ構造のすべり軸受が公知となっているが、冷間時に油の粘度が高いためフリクションが大きいという課題がある。そこで、前記軸受の軸方向両端部に、全周に逃げ部分(細溝)を形成した軸受が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−532036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の細溝を形成した軸受では、油の引込み量増加と軸方向両端部からの油の漏れ量抑制を両立することができず、更なるフリクション低減効果が期待できなかった。
【0005】
そこで、本発明は係る課題に鑑み、総和の流出油量を抑えることができ、更なるフリクション低減効果を得ることができるすべり軸受の製造方法及びすべり軸受を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、円筒を軸方向と平行に二分割した半割部材を上下に配置したすべり軸受の製造方法であって、前記製造方法は、前記下側の半割部材の軸方向端部に、回転方向下流側において円周方向に細溝を設ける第一の工程と、前記細溝の表面にショットブラスト加工を施す第二の工程と、前記半割部材の表面にコーティング層を形成する第三の工程とを有し、前記第三の工程において、前記
細溝の一部であって、上流側端部及び下流側端部のみにコーティング層を形成したものである。
【0008】
即ち、請求項2においては、前記第三の工程において形成される前記コーティング層は、二硫化モリブデン、グラファイト、カーボン、ポリテトラフルオロエチレン、窒化ホウ素、二硫化タングステン、または、フッ素系樹脂の少なくともいずれか一つを含むものである。
また、請求項3においては、前記細溝の軸方向外側面に周縁部が形成され、前記周縁部の前記半割部材の外周面からの高さは、前記半割部材の外周面から当接面までの高さよりも低くなるように形成されるものである。
【0009】
請求項4においては、請求項1から請求項3のいずれか一項の製造方法によって製造されたすべり軸受である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
すなわち、油膜圧力の発生を妨げない程度の細溝を設けることで、摺動面積を減らしつつ、フリクション低減効果を得ることができ、かつ、総和の流出油量を抑えることができる。また、ショットブラスト加工により、細溝の表面に複数の窪みを設けて梨地面を形成することにより、潤滑油を細溝内で保持し、漏れ油量を低減させることができ、コーティング層を細溝の上流側端部及び下流側端部に設けることでコーティング層の親油性によって、漏れ油量を低減させることができることができるので、総和の流出油量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るすべり軸受を示す正面図。
【
図2】(a)本発明の実施形態に係るすべり軸受を構成する半割部材を示す平面図。(b)同じくA−A線断面図。(c)同じくB−B線断面図。
【
図3】本発明の実施形態に係る半割部材の製造方法を示すフローチャート図。
【
図4】(a)本発明の実施形態に係る半割部材を示すA−A線断面一部拡大図。(b)平面一部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態を説明する。なお、
図1はすべり軸受1の正面図であり、画面の上下を上下方向、画面の手前方向及び奥方向を軸方向(前後方向)とする。
【0014】
まず、本発明の実施形態に係るすべり軸受1を構成する半割部材2について
図1及び
図2を用いて説明する。
すべり軸受1は円筒状の部材であり、
図1に示すように、エンジンのクランクシャフト11のすべり軸受構造に適用される。すべり軸受1は、二つの半割部材2・2で構成されている。二つの半割部材2・2は、円筒を軸方向と平行に二分割した形状であり、断面が半円状となるように形成されている。本実施形態においては、半割部材2・2は上下に配置されており、左右に合わせ面が配置されている。クランクシャフト11をすべり軸受1で軸支する場合、所定の隙間が形成され、この隙間に対し図示せぬ油路から潤滑油が供給される。
【0015】
図2(a)においては、上側及び下側の半割部材2を示している。なお、本実施形態においては、クランクシャフト11の回転方向を
図1の矢印に示すように正面視時計回り方向とする。また、軸受角度ωは、
図2(b)における右端の位置を0度とし、
図2(b)において、反時計回り方向を正とする。すなわち、
図2(b)において、左端の位置の軸受角度ωが180度となり、下端の位置の軸受角度ωが270度となるように定義する。
【0016】
上側の半割部材2の内周には円周方向に溝が設けられており、中心に円形の孔が設けられている。また、上側の半割部材2の左右に合わせ面が配置されている。半割部材2は、
図2(c)に示すように、金属層21及びライニング層22を有する。
下側の半割部材2の内周において、その軸方向の端部に細溝3が形成されている。
また、細溝3の軸方向外側面を形成する周縁部2aは、半割部材2の外周面からの高さhが、半割部材2の外周面から当接面までの高さDよりも低くなるように形成されている。すなわち、軸方向外側の周縁部2aが周囲のクランクシャフト11との当接面よりも一段低くなるように形成されている。
【0017】
細溝3について
図2(b)及び
図2(c)を用いて説明する。
細溝3は下側の半割部材2に設けられる。本実施形態においては、細溝3は軸方向に並列して二本設けられている。詳細には、細溝3は、クランクシャフト11の回転方向下流側合わせ面(軸受角度ωが180度)と離間した位置(軸受角度ωがω1)から軸受角度ωが正となる方向(反時計回り方向)に向けて、軸受角度ω2まで円周方向に設けられる。下側の半割部材2においては、
図2(b)の右側の合わせ面が回転方向上流側合わせ面、
図2(b)の左側の合わせ面が回転方向下流側合わせ面となる。
細溝3の幅は、
図2(c)に示すように、wとなるように形成されている。
また、細溝3の深さdは、半割部材2の外周面から当接面までの高さDよりも短くなるように形成されている。
【0018】
また、周縁部2aが細溝3の底面3aよりも一段高くなるように形成されていることにより、摺動面から軸方向端部に漏れる油や吸い戻した油が再度漏れないための壁となり、漏れ油量を抑制できる。これにより、特に冷間時の引き込み油量が増加し、早期昇温による低フリクション効果を増大することができる。
【0019】
また、周縁部2aが周囲のクランクシャフト11との当接面よりも一段低くなるように形成されていることにより、クランクシャフト11が傾いて軸方向片側端部にのみ接触する状態(片当りする状態)となったときに、周縁部2aとクランクシャフト11との接触機会を減らすことができるため、周縁部2aの損傷を防止することができる。
【0020】
本実施形態に係る細溝3を設けたことにより、FMEP軽減量が増加する。特に、エンジン回転数が低い領域において、FMEP軽減量が増加する。ここで、FMEPとは、フリクションの傾向を見るための値であり、FMEP軽減量が増加するとフリクションが低減する。例えば、エンジンが冷間始動する際などにおいて、FMEP軽減量が増加し、フリクションが低減する。
【0021】
次に、すべり軸受1を構成する下側の半割部材2の製造方法について、
図3を用いて説明する。
下側の半割部材2の製造方法は、金属層21にライニング層22を貼設するライニング層形成工程と、ライニング層22及び金属層21を半円形状に成形する成形工程と、細溝3を形成する第一の工程である細溝形成工程と、周縁部2aを形成する第二の工程である周縁部形成工程と、細溝3及び周縁部2aにショットブラスト加工を加えて梨地面を形成する梨地面形成工程と、ライニング層22の表面に図示せぬコーティング層を形成するコーティング層形成工程と、を備える。以下に、各工程について具体的に説明する。
【0022】
ライニング層形成工程においては、金属層21にライニング層22を貼設する。より詳しくは、金属層21及びライニング層22に圧延処理を加えることにより、金属層21にライニング層22を貼設する。ここで、金属層21とは、金属からなる素材で構成されており、例えば鉄系の材料からなる素材で構成されている。また、ライニング層22は、金属層21よりも硬度が低い金属からなる素材で構成されており、例えばアルミニウム系の材料からなる素材で構成されている。
【0023】
次に、成形工程においては、金属層21及びライニング層22を半円形状に成形する。より詳しくは、金属層21及びライニング層22をプレス成型することにより半円形状に成形する。
【0024】
次に、細溝形成工程においては、細溝3を形成する。さらに、周縁部形成工程においては、周縁部2aを形成する。細溝3及び周縁部2aは、切削加工により形成される。
切削加工は、円鋸のような刃具によって行われる。
また、周縁部形成工程においては、周縁部2aの内周面2cを、細溝3の底面3aよりも内周側に形成する。
【0025】
次に、梨地面形成工程においては、細溝3及び周縁部2aに対してショットブラスト加工を行うことにより、梨地面を形成する。ここで、ショットブラスト加工においては、投射剤を細溝3及び周縁部2aに対して衝突させることにより、無数の窪みを作成する。これにより、細溝3及び周縁部2aには、
図4(b)の点描部に示すように、梨地面が形成される。梨地面の無数の窪みに潤滑油が保持されることで、細溝3及び周縁部2aからの漏れ油量を低減することができる。
【0026】
次に、コーティング層形成工程においては、ライニング層22の表面(内周面)に図示せぬコーティング層23を形成する。ここで、コーティング層23は、二硫化モリブデン、グラファイト、カーボン、ポリテトラフルオロエチレン、窒化ホウ素、二硫化タングステン、または、フッ素系樹脂の少なくともいずれか一つを含むものである。このように構成することにより、コーティング層23は親油性を有する。
【0027】
図4(a)及び(b)に示すように、細溝3の上流側端部及び下流側端部の内周面の少なくとも一部にはコーティング層23a・23aが設けられている。コーティング層23a・23aは、梨地面が形成された細溝3の表面に形成されている。このように構成することにより、細溝3の上流側端部及び下流側端部に流れてきた潤滑油をコーティング層23a・23aで捕集することができる。
【0028】
また、
図4(a)及び(b)に示すように、周縁部2aの上流側端部及び下流側端部の内周面の少なくとも一部にはコーティング層23b・23bが設けられている。コーティング層23b・23bは、梨地面が形成された細溝3の表面に形成されている。このように構成することにより、周縁部2aの上流側端部及び下流側端部に流れてきた潤滑油をコーティング層23b・23bで捕集することができる。
【0029】
以上のように、円筒を軸方向と平行に二分割した半割部材2・2を上下に配置したすべり軸受の製造方法であって、前記製造方法は、下側の半割部材2の軸方向端部に、回転方向下流側において円周方向に細溝3を設ける細溝形成工程(第一の工程)と、細溝3の表面にショットブラスト加工を施す梨地面形成工程(第二の工程)と、半割部材2の表面にコーティング層23を形成するコーティング層形成工程(第三の工程)と、を有し、コーティング層形成工程において、細溝3の上流側端部及び下流側端部にコーティング層23aを形成したものである。
このように構成することにより、油膜圧力の発生を妨げない程度の細溝3を設けることで、摺動面積を減らしつつ、フリクション低減効果を得ることができ、かつ、総和の流出油量を抑えることができる。また、ショットブラスト加工により、細溝3の表面に複数の窪みを設けて梨地面を形成することにより、潤滑油を細溝3内で保持し、漏れ油量を低減させることができ、コーティング層23aを細溝3の上流側端部及び下流側端部に設けることでコーティング層23aの親油性によって、漏れ油量を低減させることができることができるので、総和の流出油量を抑えることができる。
【0030】
また、コーティング層形成工程において形成されるコーティング層23は、二硫化モリブデン、グラファイト、カーボン、ポリテトラフルオロエチレン、窒化ホウ素、二硫化タングステン、または、フッ素系樹脂の少なくともいずれか一つを含むものである。
このように構成することにより、コーティング層23は親油性を有し、コーティング層23の親油性によって、漏れ油量を低減させることができることができるので、総和の流出油量を抑えることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 すべり軸受
2 半割部材
2a 周縁部
3 細溝
11 クランクシャフト
21 金属層
22 ライニング層
23・23a コーティング層