特許第6181695号(P6181695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181695高圧直流送電システムの瞬時電力モニタリングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181695
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】高圧直流送電システムの瞬時電力モニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20170807BHJP
   G01R 21/00 20060101ALI20170807BHJP
   H02J 3/36 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   G01R19/00 A
   G01R19/00 T
   G01R21/00 P
   H02J3/36
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-78269(P2015-78269)
(22)【出願日】2015年4月7日
(65)【公開番号】特開2015-210265(P2015-210265A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2015年4月7日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0051552
(32)【優先日】2014年4月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス産電株式会社
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】チェ ホ ソク
【審査官】 居島 一仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−141887(JP,A)
【文献】 特表2010−503370(JP,A)
【文献】 特開2013−121267(JP,A)
【文献】 特表2005−539473(JP,A)
【文献】 特表2009−516994(JP,A)
【文献】 特開平8−223930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R11/00−11/66
G01R21/00−22/04
G01R35/00−35/06
H02J9/06
H02P9/10
H02P6/16−6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相電及び電圧を入力されて前記入力された3相電流及び電圧から同期位相角を検出し、3相データを2相データに変換して出力する演算処理部と、
前記演算処理部で変換されたデータを貯蔵するデータ処理部と、を含み、
前記演算処理部は、前記3相データを第1次変換及び第2次変換する瞬時電力3相−2相変換処理部を含み、
前記第1次変換は、前記3相データを2相直交座標系データに固定座標系変換する第1変換と、前記第1変換されたデータを回転座標系変換する第2変換とを含み、
前記第2次変換は、前記第1次変換の逆変換であり、
前記瞬時電力3相−2相変換処理部は、
前記3相電流の2線短絡時、第1次変換を介して前記3相電流を2相電流に変換し、変換された2相電流を第2次変換して正常状態の3相電流に復元することを特徴とするHVDC瞬時電力モニタリングシステム。
【請求項2】
前記演算処理部は、
前記3相電流及び電圧から同期位相角を検出する同期位相角検出部を含む、請求項1に記載のHVDC瞬時電力モニタリングシステム。
【請求項3】
前記回転座標系変換は前記同期位相角検出部で検出された同期位相角に基づいて行われる、請求項1に記載のHVDC瞬時電力モニタリングシステム。
【請求項4】
ユーザインタフェース部を更に含む、請求項1に記載のHVDC瞬時電力モニタリングシステム。
【請求項5】
前記データ処理部は、
予め貯蔵されたデータを前記演算処理部に出力する、請求項1に記載のHVDC瞬時電力モニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はHVDC瞬時電力モニタリングシステムに関するものであり、詳しくは、HVDC電力モニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統を連携する方式には交流電力系統をそのまま連携する方式と、電力変換器を介して交流電力を直流電力に変換して系統を連携する方式がある。
【0003】
最近は交流電力系統をそのまま連携する方式よりは交流電力を直流電力に変換して系統を連携する方式に対する関心が増大されている。
【0004】
国内でも電力変換器を利用した超高圧直流送電(High Voltage Direct Current:HVDC)システムを済州と海南の間に設置して済州と海南の電力系統を連携している。
【0005】
超高圧直流送電(HVDC)方式とは電気送電方式の一つであって、発電所で発電した高圧の交流電力を直流電力に変換して送電した後、望みの受電地域で更に交流電力に再変換する供給方式をいう。
【0006】
直流送電方式には多様な長所がある。
【0007】
まず、直流電圧は交流電圧の最大値に比べて大きさが約70%に過ぎず、超高圧直流送電システムは機器の絶縁が容易で電圧が低いため各機器に設置されている絶縁体の数量及び鉄塔の高さを下げることができる。
【0008】
超高圧直流送電システムは同じ電力を送る場合に交流方式に比べ直流方式が送電損失が少ないため送電効率が上がることが最大の長所である。超高圧直流送電システムは直流が交流に比べ2倍以上の電流を伝送することができる。
【0009】
超高圧直流送電システムは電線の使用量を減らし送電線路の面積を減らすことができるため効果的であり、電圧や周波数が異なる2つの交流系統の間に連結して系統の安定度を向上することもできる。
【0010】
超高圧直流送電システムは送電距離に対する制約なく、450kmを超える陸上電力伝送や40kmを超える海底を介した電力伝送においても直流送電方式の方が建設費が安価である。
【0011】
よって、HVDC伝送システムは新再生エネルギーの電力システムへの連係方案、特に大規模の海上風力発電団地の電力伝送などに利用される。
【0012】
他の国家、例えば中国、インドなどの場合、発電所と電気使用者間の距離が1000km以上であるため超高圧直流送電システムの普及が急速に拡張しているのが実情である。
【0013】
このようなHVDCシステムは、サイリスタ(Thyristor)バルブを利用する電流型HVDCシステムとIGBT素子を利用する電圧型HVDCシステムに区分される。
【0014】
国内の電力送配電システムでは電力潮流の監視だけでなく故障電流の監視など、全てのイベント状況の監視及びデータ取得のために3相電流と電圧を測定して瞬時電力を監視する方式を採択し適用している。電力の監視は送配電点の母線別変電所で行われており、母線に連携されている各フィーダー(feeder)に対しても電力のモニタリングが行われる。
【0015】
よって、HVDCシステムでも同じ目的で整流器側及びインバータ側の変換所でそれぞれ交流電力を監視する。
【0016】
図1は、従来のHVDC瞬時電力のモニタリングシステムを説明するための図である。
【0017】
図1を参照すると、従来のHVDC瞬時電力モニタリングシステム1は交流電力を監視するために3相電圧と電流、そしてその位相差を測定し、送電システムの正常動作可否及び故障状況など全てのイベント状況を判断する構成を含む。
【0018】
特に、電力監視処理部10は演算処理部11とデータ処理部12を含んで構成される。一般に、イベント状況が発生すれば必ずイベントの発生時点とその状況の電圧電流をデータ化して貯蔵するように設計されるが、データ処理部12のデータ貯蔵容量に限界がある。よって、貯蔵空間を確保するための法案として、一定期間以上貯蔵されたデータは自動的に削除又はユーザインタフェース部20を介して運営者が選択的に削除するようにして貯蔵空間を確保する。もし貯蔵空間が確保されていない状況で電力システムに事故及び故障などのイベントが発生すれば、その原因に対する分析と状況の解決能力を確保することが難しい。また、予め貯蔵されたデータに対する任意削除又は一括削除などによって過去の履歴に対するイベントデータの確認が不可能になる恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明が解決しようとする課題は、瞬時電力を解析するためのアルゴリズムを設計してデータの貯蔵空間を効率的に管理するHDVC瞬時電力モニタリングシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の実施例によるHVDC瞬時電力にモニタリングシステムは、3相電力及び電圧を入力されて前記入力された3相電流及び電圧から同期位相角を検出し、3相データを2相データに変換して出力する演算処理部と、前記演算処理部で変換されたデータを貯蔵するデータ処理部と、を含む。
【0021】
特に、前記演算処理部は前記3相電流及び電圧から同期位相角を検出する同期位相角検出部を含む。
【0022】
特に、前記演算処理部は前記3相データを第1次変換及び第2次変換する瞬時3相−2相変換処理部を含む。
【0023】
特に、前記瞬時電力3相−2相変換処理部は前記第1変換を介して前記3相データを固定座標系変換(Clarke transformation:クラーク変換)して2相直行座標系データに変換し、前記第2変換を介して前記第1次変換されたデータを回転座標系変換(Park transformation:パーク変換)して2相回転同期座標系に変換する。
【0024】
特に、前記回転座標系変換は前記同期位相角検出部で検出された同期位相角に基づいて行われる。
【0025】
特に、前記第1変換は前記3相電流を2相電流に変換し、前記第2変換は前記変換された2相電流を直流性(DC)2相電流に変換する。
【0026】
特に、前記瞬時電力3相−2相変換処理部は、前記第1次変換及び第2次変換を介して変換された2相データを逆に前記第1次及び第2次変換して最初に入力された3相データに復元する。
【0027】
特に、前記瞬時電力3相−2相変換処理部は前記3相データの第2線短絡の際に正常状態の3相電流に復元する。
【発明の効果】
【0028】
本発明のHVDC瞬時電力モニタリングシステムは、HVDC瞬時電力データを管理しモニタリングシステムの貯蔵空間を効率的に利用可能な効果がある。
【0029】
また、本発明のHVDC瞬時電力モニタリングシステムは収集されるデータに対する強制削除が発生しない限り全ての収集データを貯蔵するようにすることで、事故イベントの履歴管理に効率的に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】従来のHVDC瞬時電力のモニタリングシステムを説明するための図である。
図2】本発明の実施例が適用されるのHVDC瞬時電力のモニタリングシステムを説明するための図である。
図3】本発明の実施例によるHVDC瞬時電力データに対する処理動作を説明するための図である。
図4】本発明の実施例によるHVDC瞬時電力データに対する処理動作を説明するための図である。
図5】本発明の実施例によって処理されるHVDC瞬時電力データを説明するための例示図である。
図6】本発明の実施例によって処理されるHVDC瞬時電力データを説明するための例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の具体的な実施例を図面と共に詳細に説明する。
【0032】
本発明で使用される用語はなるべく現在広く使用されている一般的な用語を選択しているが、特定の場合には出願人が任意に選定した用語もあり、この場合には該当する発明の説明部分にその意味を詳細に記載しているため、単純な用語の名称ではなく用語が有する意味として本発明を把握すべきであることを明白にする。
【0033】
即ち、以下の説明において、単語「含む」は列挙されたものとは異なる構成要素又はステップの存在を排除しない。
【0034】
図2は、本発明の実施例が適用されるのHVDC瞬時電力のモニタリングシステムを説明するための図である。
【0035】
図2を参照すると、本発明の実施例が適用されるのHVDC瞬時電力のモニタリングシステム2は電力監視処理部100及びユーザインタフェース部200で構成される。
【0036】
電力監視処理部100は演算処理部110及びデータ処理部120を含む。
【0037】
演算処理部110は3相測定電流と3相測定電圧を印加され、前記印加された電流及び電圧に対するデータ変換を介して2相DC電流及び電圧データに変換する。
【0038】
演算処理部110は同期位相角検出部111と瞬時電力3相−2相変換処理部112を含む。
【0039】
同期位相角検出部111は3相電流及び電圧から同期位相角を検出し、検出された同期位相角は瞬時電力に対する第1次変換値に適用されて第2次変換値を算出する係数として使用される。
【0040】
瞬時電力3相−2相変換処理部112は本発明の実施例による3相電流及び3相電圧に対して第1次変換及び第2次変換を介して2相電流及び電圧データを変換するための動作を行う。
【0041】
図3及び図4は、本発明の実施例によるHVDC瞬時電力データに対して瞬時電力3相−2相変換処理部112の処理動作を説明するための図である。
【0042】
図3及び図4を参照して、本発明の実施例による瞬時電力モニタリングデータの変換動作について詳細に説明する。
【0043】
瞬時電力3相−2相変換処理部112は3相電流及び3相電圧データに基づいて第1変換(Clarke transformaiton)及び第2変換(Park transformaion)を行って2相瞬時電力データに変換する。
【0044】
瞬時電力3相−2相変換処理部112は3相電流ia,ib,icを入力され、前記3相電流を第1次変換部112aで変換する。この際、3相電流及び3相電圧データを2相瞬時電力データに変換するための第1次変換は固定座標系変換(Clarke transformaion)で行われる。固定座標系変換は下記数式1及び図4(a)に基づいて固定子a,b,c3相電流をα、βの2つの固定子直行座標系に変換する。
【0045】
【数1】
【0046】
即ち、第1変換部112aで変換された第1次変換データは同期位相角検出部111で検出された同期位相角θを第1次変換データに適用して第2変換部112bで第2次変換を行う。
【0047】
第2変換部112bで行われる第2変換は回転座標系変換(Park transformaion)で行われる。回転座標系変換は下記数学式2及び図4(b)の例示図に基づいてα、βの2つの固定子直行座標系をd、qの2つの回転同期座標系に変換する。この際、同期位相角検出部111で検出される値θはα、βに対するd、qのロータ磁束位置を示す。
【0048】
【数2】
【0049】
よって、本発明の実施例では3相測定電流及び3相測定電圧値が入力されると、前記3相値は第1変換及び第2変換を行って2相瞬時電力モニタリングデータに変換される。
【0050】
逆に、予め変換された2相瞬時電力モニタリングデータは前記のような第1次変換及び第2次変換を逆変換して取得3相電流及び3相電圧データに変換する。
【0051】
前記逆変換は下記数学式3及び数学式4を順次に適用して行われる。
【0052】
【数3】
【0053】
【数4】
【0054】
データ処理部120は、前記演算処理部110の処理結果を貯蔵するか予め貯蔵されたデータを前記演算処理部110に出力する。前記データ処理部120は本発明の実施例によって処理されたデータ及び処理対象データを貯蔵する貯蔵部である。
【0055】
以下、前記のように本発明の実施例による構成に基づき、図5及び図6を参照して本発明の実施例によるHVDC瞬時電力データについて詳細に説明する。
【0056】
図5及び図6は、本発明の実施例によって処理されるHVDC瞬時電力データを説明するための例示図である。
【0057】
図5は、本発明の実施例によって例示図(a)は正常状態の3相電流曲線を示す例示図である。上述したように、3相電流ia,ib,icが入力されると前記3相電流から同期位相角検出部111で同期位相角θを検出する。3相電流は瞬時電力3相−2相変換処理部112で第1変換を行う。3相電流が第1次変換を完了すると例示図(b)のように2相電流ids,iqsに変換して出力し、前記第1次変換された2相電流は第2次変換を介して例示図(c)のように直流性(DC)2相電流ide,iqeに出力される。よって、前記のように2相平衡電流データを出力することで、最初に入力される電流及び電圧データに比べデータの量及び解析が容易な形態の相のデータに変換される。
【0058】
また、前記のように変換された2相データは3相データを2相データに変換するための動作を逆変換し、最初に入力されたデータに復帰してデータの状態を監視及び解析する。
【0059】
図6の例示図(a)は図4に示した正常状態の2線短絡(故障)の際の3相電流曲線であり、入力される3相電流に対して第1次変換を介して例示図(b)のように2つの相に変換し、例示図(c)のように第2次変換して解析が容易な正常状態の3相電力に復元する。
【符号の説明】
【0060】
2 モニタリングシステム
100 電力監視処理部
110 演算処理部
111 同期位相角検出部
112 瞬時電力3相−2相変換処理部
112a 第1変換部
112b 第2変換部
120 データ処理部
200 ユーザインタフェース部
図1
図2
図3
図4
図5
図6