(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
枠状部を有する保持フレームと前記枠状部に挿入された状態で前記保持フレームに保持された収納ケースと前記収納ケースに収納された電池モジュールとを有する車載用バッテリーの少なくとも一部がフロアーパネルに形成された配置凹部に挿入されて配置され、
前記保持フレームの前端部に対向する位置に、後方からの衝突時に車載用バッテリーの上方への変位を規制する変位規制部が形成された
車体構造。
枠状部を有する保持フレームと前記枠状部に挿入された状態で前記保持フレームに保持された収納ケースと前記収納ケースに収納された電池モジュールとを有する車載用バッテリーであって、
少なくとも一部がフロアーパネルに形成された配置凹部に挿入されて配置され、
後方からの衝突時に上方への変位を規制する変位規制部に対向する位置に、前記保持フレームの前端部が位置された
車載用バッテリー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1に記載されたような車載用バッテリーが荷室における前側に配置された車両に対して大衝突が発生した場合には、車載用バッテリーの全体が上斜め前方に移動されるため、収納ケースの一部が車体における剛性の高い部分、例えば、後部座席の回動軸を支持するシートヒンジブラケットやフロアーパネルとクロスメンバとの結合部分に接触する可能性がある。
【0011】
このような剛性の高い部分に収納ケースの一部が接触すると、接触した部分を基点として収納ケースが折れ曲がり、収納ケースが破損する他に、収納ケースの内部に配置されている各部に損傷や破壊等が生じるおそれがある。
【0012】
また、車両の後方からの衝突以外に、例えば、スピン等によって車載用バッテリーが搭載されている車両の後部が電柱等に衝突する所謂ポール衝突が発生したときに、車体における一対のリアサイドフレーム間の部分が電柱等に衝突することもある。このような場合には、電柱等から車載用バッテリーに大きな荷重が付与されて車載用バッテリーの全体が上斜め前方に移動されるため、収納ケースの一部が剛性の高い部分に接触し、接触した部分を基点として収納ケースが折れ曲がり、収納ケースの破損や収納ケースの内部に配置されている各部に損傷や破壊等が生じるおそれがある。
【0013】
そこで、本発明は、上記した問題点を克服し、衝突時における収納ケースの内部に配置されている各部の損傷や破壊を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1に、本発明に係る車体構造は、枠状部を有する保持フレームと前記枠状部に挿入された状態で前記保持フレームに保持された収納ケースと前記収納ケースに収納された電池モジュールとを有する車載用バッテリーの少なくとも一部がフロアーパネルに形成された配置凹部に挿入されて配置され、前記保持フレームの前端部に対向する位置に、後方からの衝突時に車載用バッテリーの上方への変位を規制する変位規制部が形成されたものである。
【0015】
これにより、後方からの衝突時に車載用バッテリーの一部が変位規制部に接触され車載用バッテリーの上方への変位が規制される。
【0016】
第2に、上記した本発明に係る車体構造においては、前記変位規制部が後部座席の回動軸を支持するシートヒンジブラケットに形成されることが望ましい。
【0017】
これにより、収納ケースの移動を規制するための専用の変位規制部を設ける必要がない。
【0018】
第3に、上記した本発明に係る車体構造においては、前記シートヒンジブラケットが前記フロアーパネルを挟んでクロスメンバに固定されることが望ましい。
【0019】
これにより、変位規制部が形成されたシートヒンジブラケットの強度が高くされる。
【0020】
第4に、上記した本発明に係る車体構造においては、前記変位規制部の上端部には後方に突出された規制用突部が設けられることが望ましい。
【0021】
これにより、保持フレームの前端部が変位規制部に接触されて車載用バッテリーの上方への移動が規制される。
【0022】
第5に、上記した本発明に係る車体構造においては、前記収納ケースの前端部における内面に補強部材が取り付けられ、前記変位規制部の下端部が前記補強部材と同じ高さに位置されることが望ましい。
【0023】
これにより、収納ケースが変位規制部に接触したときに補強部材によって収納ケースの変形が抑制される。
【0024】
第6に、本発明に係る車載用バッテリーは、枠状部を有する保持フレームと前記枠状部に挿入された状態で前記保持フレームに保持された収納ケースと前記収納ケースに収納された電池モジュールとを有する車載用バッテリーであって、少なくとも一部がフロアーパネルに形成された配置凹部に挿入されて配置され、後方からの衝突時に上方への変位を規制する変位規制部に対向する位置に、前記保持フレームの前端部が位置されたものである。
【0025】
これにより、後方からの衝突時に車載用バッテリーの一部が変位規制部に接触され車載用バッテリーの上方への変位が規制される。
【0026】
第7に、上記した本発明に係る車載用バッテリーにおいては、前記収納ケースの前端部における内面に補強部材が取り付けられ、前記補強部材が前記変位規制部の下端部と同じ高さに位置されることが望ましい。
【0027】
これにより、収納ケースが変位規制部に接触したときに補強部材によって収納ケースの変形が抑制される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、後方からの衝突時に車載用バッテリーの一部が変位規制部に接触され車載用バッテリーの上方への変位が規制されるため、衝突時における収納ケースの内部に配置されている各部の損傷や破壊を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明車載用バッテリーを実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0031】
車載用バッテリー1は保持フレーム2と収納ケース3とカバー体4と電池モジュール5、5を有している(
図1乃至
図3参照)。
【0032】
車載用バッテリー1は少なくとも一部が後部座席100の後方に位置された荷室200におけるフロアーパネル300に配置されている。フロアーパネル300には荷室200において上方に開口された配置凹部301が形成されている。フロアーパネル300における配置凹部301を形成する前面部は、上方へ行くに従って前側に変位するように傾斜された傾斜面部300aとされている。
【0033】
フロアーパネル300の下側には燃料タンク400、リアサスペンション500、500及びマフラー600が位置されている。燃料タンク400は後部座席100の下方に位置されている。
【0034】
後部座席100は回動軸101、101、・・・を介してシートヒンジブラケット102、103、104、105に支持されている(
図1及び
図4参照)。後部座席100は、例えば、背もたれが左右に分割された第1のバックレスト100aと第2のバックレスト100bによって構成され、第1のバックレスト100aの底面部と第2のバックレスト100bの底面部がそれぞれ左右に延びる固定バー106、107に固定されている。
【0035】
シートヒンジブラケット102、103、104、105は左右に離隔した状態でフロアーパネル300に固定されている。フロアーパネル300の下面側には左右に延びるクロスメンバ120が固定され、シートヒンジブラケット102、103、104、105はクロスメンバ120の真上においてフロアーパネル300に固定されている(
図4及び
図5参照)。従って、シートヒンジブラケット102、103、104、105はフロアーパネル300を挟んでクロスメンバ120に固定されており、強度が高くされている。
【0036】
固定バー106、107はそれぞれ左右両端部に回動軸101、101、・・・の一端部が連結されている。回動軸101、101、・・・は他端部がそれぞれシートヒンジブラケット102、103、104、105に回動自在に支持されている。従って、左側に位置された第1のバックレスト100aは固定バー106及び回動軸101、101を介してシートヒンジブラケット102、103に支持されて回動軸101、101を支点として回動可能とされ、右側に位置された第2のバックレスト100bは固定バー107及び回動軸101、101を介してシートヒンジブラケット104、105に支持されて回動軸101、101を支点として回動可能とされる。
【0037】
第2のバックレスト100bを支持するシートヒンジブラケット104は上下方向を向く被固定部110と被固定部110の一方の側縁から上方に突出された軸支持部111とを有している(
図6参照)。被固定部110はフロアーパネル300に固定され、軸支持部111の前端寄りの位置には回動軸101が支持されている。
【0038】
尚、シートヒンジブラケット102、103、105もシートヒンジブラケット104と同様に被固定部と軸支持部を有する構成にされているが、詳細な説明は省略する。
【0039】
シートヒンジブラケット104の軸支持部111の後縁は垂直又は略垂直に形成され後縁が後方又は略後方を向く変位規制部112として形成されている(
図5及び
図6参照)。
【0040】
保持フレーム2は左右に延び前後に離隔して位置された第1の部分6、6と前後に延び左右に離隔して位置された第2の部分7、7とが井桁状に結合されて成る(
図1乃至
図3参照)。第1の部分6、6は左右両端部6a、6a、・・・がそれぞれ第2の部分7、7から側方(外方)に突出された状態にされている。保持フレーム2は第1の部分6、6の左右両端部6a、6a、・・・を除く部分が矩形の枠状部8として設けられている。
【0041】
収納ケース3の内部には平板状の仕切板9が配置されている。仕切板9の前端部における一方の側部には切欠9aが形成されている。収納ケース3は仕切板9の上側の部分が上側収納部10として設けられ仕切板9の下側の部分が下側収納部11として設けられている。従って、仕切板9によって収納ケース3の内部は上段と下段に仕切られ、下段には、例えば、二つの電池モジュール5、5が左右に離隔して収納されている。
【0042】
収納ケース3は上下方向を向く底面部12と下縁が底面部12の外周縁に連続された周面部13とを有している。周面部13は前面壁部13aと後面壁部13bと二つの側面壁部13c、13cと被取付部13dとを有している。被取付部13dは前面壁部13aと後面壁部13bと側面壁部13c、13cの上縁から外方に張り出されたフランジ状に形成されている。
【0043】
収納ケース3は保持フレーム2の枠状部8に上方から挿入され被取付部13dの下面が枠状部8の上面に接し、被取付部13dがボルト等によって枠状部8に締結されて保持フレーム2に固定されている(
図2参照)。
【0044】
カバー体4の前端部における一方の側部には連通孔4aが形成されている。
【0045】
車載用バッテリー1は保持フレーム2における第1の部分6、6の両端部6a、6a、・・・がフロアーパネル300にボルト等によって固定されている。
【0046】
保持フレーム2がフロアーパネル300に固定された状態においては、保持フレーム2における前側に位置された第1の部分6がシートヒンジブラケット104の変位規制部112に前後方向において対向して位置される(
図5参照)。
【0047】
車載用バッテリー1は下側収納部11を含む下段がフロアーパネル300の配置凹部301に挿入された状態で荷室200に配置されている(
図1、
図2及び
図5参照)。従って、上側収納部10を含む上段はフロアーパネル300の上面より上方に位置されている。
【0048】
収納ケース3の下段の真横には車体の骨格である前後に延びるリアサイドフレーム700、700が位置され、リアサイドフレーム700、700は後端が車載用バッテリー1より後方に位置されている(
図1及び
図2参照)。リアサイドフレーム700、700の後方には左右に延びるバンパービーム800が配置されている。
【0049】
荷室200における収納ケース3の後方側の空間はクラッシャブルエリア900として形成されている。
【0050】
上記したように、保持フレーム2がフロアーパネル300に固定されることにより収納ケース3の下側収納部11が配置凹部301に配置され、下側収納部11は左右に離隔して位置されたリアサイドフレーム700、700の間に位置される(
図7参照)。
【0051】
収納ケース3における底面部12の上面には衝撃吸収部材14、14、14が左右に離隔して取り付けられている(
図3参照)。衝撃吸収部材14は上下方向を向く平板状の配置面部15と配置面部15から上方に突出され断面形状が下方に開口されたコ字状の突状部16とが一体に形成されて成る。突状部16は一つ又は左右に離隔して二つが設けられ、突状部16の上面部は台部16aとして設けられている。衝撃吸収部材14は突状部16が前後に延びる向きで底面部12に取り付けられ、前後両端部がそれぞれ底面部12の前後両端部に結合されている。
【0052】
収納ケース3の周面部13における前面壁部13aと後面壁部13bと側面壁部13c、13cの内面にはそれぞれ補強部材17、17、・・・が取り付けられている。補強部材17は断面形状が周面部13の内面側に開口されたハット状に形成され、左右又は前後に延びる向きで前面壁部13aと後面壁部13bと側面壁部13c、13cにそれぞれ取り付けられている。
【0053】
補強部材17、17、・・・が収納ケース3の周面部13に取り付けられることにより、収納ケース3の強度が高くなり、収納ケース3の内部に配置された各部の保護を強化することができる。
【0054】
また、補強部材17、17、・・・上には仕切板9が載置されて取り付けられ、補強部材17、17、・・・は収納ケース3を補強する機能と仕切板9を取り付ける取付部材としての双方の機能を有している。前面壁部13aに取り付けられた補強部材17はシートヒンジブラケット104における変位規制部112の下端部と同じ高さに位置されている(
図5参照)。
【0055】
収納ケース3の外面には上方に開口する略コ字状に形成された撓み防止部材18、18が左右に離隔した状態で取り付けられている(
図3参照)。撓み防止部材18は前面壁部13aと底面部12と後面壁部13cと被取付部13dに亘る位置に取り付けられている。
【0056】
撓み防止部材18、18が収納ケース3に取り付けられることにより、収納ケース3が枠状部8に挿入されて保持フレーム2に保持された状態における収納ケース3の撓みが防止され、収納ケース3の内部に配置された各部の安定した配置状態を確保することができる。
【0057】
収納ケース3の内部空間19は電池モジュール5、5の他に、後述する各部が収納される空間とされている。
【0058】
電池モジュール5は前後方向が長手方向になる箱状のセルカバー20とセルカバー20の内部において前後に並んで配列された複数の電池セル21、21、・・・とを有している(
図3参照)。電池モジュール5、5は収納ケース3の下側収納部11に左右に離隔した状態で収納されている(
図7及び
図8参照)。
【0059】
電池モジュール5は衝撃吸収部材14における隣り合う突状部16、16の台部16a、16aに跨がった状態で配置されている。
【0060】
収納ケース3の下側収納部11には、電池モジュール5、5を挟んで左右方向における反対側にバッテリーコントロールユニット22とジャンクションボックス23が収納されている。従って、電池モジュール5、5とバッテリーコントロールユニット22とジャンクションボックス23は収納ケース3の内部空間19における下段に収納され、リアサイドフレーム700、700の上面以下に位置されている(
図7参照)。バッテリーコントロールユニット22は車載用バッテリー1の全体の制御を司る機能を有している。ジャンクションボックス23はリレーやヒューズやコネクター端子等を有している。
【0061】
上記したように、収納ケース3の下側収納部11はリアサイドフレーム700、700の間に位置されており、下側収納部11に収納された電池モジュール5、5とバッテリーコントロールユニット22とジャンクションボックス23もリアサイドフレーム700、700の間に位置されている。
【0062】
収納ケース3の上側収納部10には、前半部に端子台24と電動オイルポンプのポンプ用インバータ25が左右に並んで配置され、後半部にDC/DCコンバータ26とバッテリーコントロールユニット22のユニット用インバータ27が左右に並んで配置されている(
図7及び
図9参照)。従って、端子台24とポンプ用インバータ25とDC/DCコンバータ26とユニット用インバータ27は収納ケース3の内部空間19における上段に収納されている。
【0063】
収納ケース3にはジャンクションボックス23の前側にサービスプラグ28が配置されている。サービスプラグ28は仕切板9の切欠9aに位置されている。サービスプラグ28はカバー体4が収納ケース3に取り付けられた状態において、カバー体4の連通孔4aから臨まれる位置に配置されている。
【0064】
上記したように、収納ケース3の内部には電池モジュール5、5、バッテリーコントロールユニット22、ジャンクションボックス23、端子台24、ポンプ用インバータ25、DC/DCコンバータ26及びユニット用インバータ27が配置され、車載用バッテリー1の駆動に必要とされる全ての電装部品がカバー体4に覆われた状態で収納ケース3の内部に配置されている。
【0065】
従って、車載用バッテリー1の駆動に必要とされる電装部品に対して外部からの電磁ノイズが遮蔽可能とされ、電磁シールドの強化により車載用バッテリー1の良好な駆動状態を確保することができる。
【0066】
また、収納ケース3の内部空間19には電池モジュール5、5等の各部が配置されているが、内部空間19において電池モジュール5、5とバッテリーコントロールユニット22とジャンクションボックス23の後側には隙間が形成されており、この隙間が収容部19aとして形成されている(
図10参照)。
【0067】
車載用バッテリー1には吸気用ダクト29が設けられている(
図2参照)。吸気用ダクト29は収納ケース3を貫通され一部を除いて収納ケース3の後側に形成されたクラッシャブルエリア900に位置されている。吸気用ダクト29の内部には重量の大きなファンモーター30が配置されている。ファンモーター30は収納ケース3の下側収納部11と同じ高さに位置され、リアサイドフレーム700、700間に配置されている。
【0068】
ファンモーター30の回転軸には図示しない冷却ファンが連結されている。冷却ファンは回転されることにより冷却風を吸気用ダクト29から取り込み収納ケース3の内部に配置された各部に向けて送る機能を有している。
【0069】
ファンモーター30はクラッシャブルエリア900において、例えば、ジャンクションボックス23の真後ろに位置されている(
図10参照)。従って、ファンモーター30は右側に配置された電池モジュール5の右端より右方に位置されている。尚、ファンモーター30は左側に配置された電池モジュール5の左端より左方に位置されていてもよい。
【0070】
車載用バッテリー1には排気用ダクト31が設けられている(
図2参照)。排気用ダクト31は収納ケース3を貫通され一部を除いて収納ケース3の側方(左方)に位置されている。排気用ダクト31によって吸気用ダクト29から取り込まれ収納ケース3の内部に配置された各部を冷却した冷却風が収納ケース3の外部に放出される。
【0071】
上記した吸気用ダクト29から収納ケース3の内部を経て排気用ダクト31によって放出される冷却風の流動は冷却ファンによって強制的に行われ、収納ケース3の内部に配置された各部、特に、電池モジュール5、5やバッテリーコントロールユニット22やジャンクションボックス23等が効率的に冷却される。
【0072】
以上のように構成された車載用バッテリー1が搭載された車両に、万が一、後方からトラック等の車高の高い他の車両が衝突したときには、トラック等の他の車両のリアサイドフレーム及びバンパービームの高さが車載用バッテリー1が搭載された車両のリアサイドフレーム700、700及びバンパービーム800の高さより高い位置に存在するため、収納ケース3の上段に他の車両からの衝撃による荷重が付与される。
【0073】
収納ケース3の上段に他の車両からの衝撃による荷重が付与されると、収納ケース3の上段に収納された端子台24とポンプ用インバータ25とDC/DCコンバータ26とユニット用インバータ27に荷重が付与される可能性があるが、下段に収納された電池モジュール5、5とバッテリーコントロールユニット22とジャンクションボックス23には荷重が付与され難い。従って、電池モジュール5、5とバッテリーコントロールユニット22とジャンクションボックス23が保護される。
【0074】
一方、車載用バッテリー1が搭載された車両に、万が一、後方から乗用車等の車高の低い他の車両が衝突したときには、車載用バッテリー1が搭載された車両のリアサイドフレーム700、700及びバンパービーム800の高さが乗用車等の他の車両のリアサイドフレーム及びバンパービームの高さと略同じであるため、リアサイドフレーム700、700とバンパービーム800が圧潰されてリアサイドフレーム700、700とバンパービーム800によって収納ケース3の後方において衝撃が吸収される。
【0075】
このように乗用車等の車高の低い車両が衝突したときには、リアサイドフレーム700、700とバンパービーム800によって衝撃が吸収されるため、収納ケース3に大きな荷重が付与されず、収納ケース3の荷室200に配置された状態が保持され車載用バッテリー1を保護することができる。
【0076】
また、車載用バッテリー1が搭載された車両に、万が一、後方から乗用車等の車高の低い他の車両が衝突し衝突が大衝突であるときには、リアサイドフレーム700、700とバンパービーム800が圧潰されてリアサイドフレーム700、700とバンパービーム800によって衝撃が吸収された後に収納ケース3に荷重が付与される。
【0077】
このとき収納ケース3には衝撃吸収部材14、14、14が取り付けられているため、衝撃吸収部材14、14、14によって衝撃が吸収され、収納ケース3に大きな荷重が付与されず、収納ケース3の内部に配置された各部を保護することができる。
【0078】
さらに、車載用バッテリー1が搭載された車両において、万が一、スピン等によって車載用バッテリー1が搭載されている車両の後部が電柱等に衝突する所謂ポール衝突が発生したときには、電柱等がリアサイドフレーム700、700間に侵入して収納ケース3に大きな荷重が付与される。また、大衝突である場合にも、衝突の程度によっては収納ケース3に大きな荷重が付与される。さらに、このときクラッシャブルエリア900に配置されている重量の大きなファンモーター30が衝突によって前方へ移動されることにより、収納ケース3に大きな荷重が付与される可能性がある。
【0079】
このように収納ケース3に後方から大きな荷重が付与されたときには、収納ケース3に前方への移動力が付与されて収納ケース3がフロアーパネル300の傾斜面部300aに沿って上斜め前方へ移動可能な状態とされる。
【0080】
しかしながら、保持フレーム2における前側の第1の部分6に対向する位置に、垂直又は略垂直に形成され後面が後方又は略後方を向く変位規制部112が存在するため、第1の部分6が変位規制部112に接して収納ケース3の上斜め前方への移動が規制される(
図11参照)。
【0081】
従って、収納ケース3の前面壁部13aが車体における剛性の高い部分、例えば、シートヒンジブラケット104やフロアーパネル300とクロスメンバ120との結合部分に接触せず、又は、接触しても大きな力を有した状態で接触することがなく、前面壁部13aが折れ曲がり難く、収納ケース3の破損が防止されると共に衝突時における収納ケース3の内部に配置されている各部の損傷や破壊を防止することができる。
【0082】
尚、重量の大きなファンモーター30が衝突によって前方へ移動されて収納ケース3に荷重が付与されたときにおいても、上記したように、ファンモーター30が左右方向において電池モジュール5、5の左方又は右方に位置されているため、ファンモーター30が電池モジュール5、5に接触されず、電池モジュール5、5を保護することができる。
【0083】
また、ファンモーター30は収納ケース3を突き破って収納ケース3の内部まで前方に移動される可能性もあるが、収納ケース3の内部空間19における後端部が収容部19aとして形成されているため、ファンモーター30が収納ケース3の内部まで前方に移動されたときにはファンモーター30が収容部19aに収容される(
図12参照)。
【0084】
従って、収納ケース3の内部に配置された各部、特に、ジャンクションボックス23や電池モジュール5、5と機能性部品の接触が回避されるため、衝突時における収納ケース3の内部に配置されている各部の損傷や破壊を防止することができる。
【0085】
上記したように、収納ケース3は上斜め前方への移動が変位規制部112によって規制されるが、変位規制部112が後部座席100の回動軸101を支持するシートヒンジブラケット104に設けられているため、収納ケース3の移動を規制するための専用の変位規制部を設ける必要がなく、簡素な構造によって車載用バッテリー1を保護することができる。
【0086】
また、変位規制部112が形成されたシートヒンジブラケット104は、フロアーパネル300を挟んでクロスメンバ120に固定されているため強度が高くされており、収納ケース3の上方への変位を確実に規制することができる。
【0087】
さらに、収納ケース3の前面壁部13aにおける内面に補強部材17が取り付けられ、変位規制部112の下端部が補強部材17と同じ高さに位置されているため、収納ケース3が変位規制部112に接触したときに補強部材17によって収納ケース3の変形が抑制され、収納ケース3の内部に配置された各部を保護することができる。
【0088】
尚、上記には、変位規制部112がシートヒンジブラケット104に形成された例を示したが、変位規制部112はシートヒンジブラケット104以外に他のシートヒンジブラケット102、103、105の少なくとも一つに形成されてもよい。
【0089】
また、変位規制部はシートヒンジブラケット102、103、104、105以外に車両を構成する他の部分に形成されてもよい。
【0090】
以下に、変位規制部を有するシートヒンジブラケットの変形例について説明する(
図13乃至
図18参照)。
【0091】
第1の変形例に係るシートヒンジブラケット104Aは、
図13に示すように、変位規制部112Aが上方へ行くに従って後方へ変位する傾斜縁として形成されている。
【0092】
シートヒンジブラケット104Aにあっては、車両の衝突時に保持フレーム2の第1の部分6が変位規制部112Aに接したときに、変位規制部112Aによって車載用バッテリー1の前方及び上方への移動が規制される。
【0093】
第2の変形例に係るシートヒンジブラケット104Bは、
図14に示すように、変位規制部112Bが上下に延びる規制縁50と規制縁50の上端に連続され規制縁50よりも後方に突出された規制用突部51とを有している。
【0094】
シートヒンジブラケット104Bにあっては、車両の衝突時に保持フレーム2の第1の部分6が変位規制部112Bに接したときに、規制縁50によって車載用バッテリー1の前方への移動が規制されると共に規制用突部51によって車載用バッテリー1の上方への移動が規制される。
【0095】
このように変位規制部112Bの上端部に後方に突出された規制用突部51が設けられることにより、保持フレーム2の第1の部分6が規制用突部51に接触されて車載用バッテリー1の上方への移動が規制されるため、車載用バッテリー1の上方への移動を簡素な構造によって確実に規制することができる。
【0096】
第3の変形例に係るシートヒンジブラケット104Cは、
図15に示すように、変位規制部112Cが上下に延びる規制縁50と規制縁50の上端に連続され規制縁50よりも後方に突出された規制用突部51と規制縁50の下端に連続され規制縁50よりも後方に突出された突部52とを有している。
【0097】
シートヒンジブラケット104Cにあっては、車両の衝突時に保持フレーム2の第1の部分6が変位規制部112Cに接したときに、規制縁50によって車載用バッテリー1の前方への移動が規制されると共に規制用突部51によって車載用バッテリー1の上方への移動が規制される。また、第1の部分6が規制用突部50と突部51の間に挿入されて車載用バッテリー1の移動が確実に規制される。
【0098】
このように変位規制部112Cの上端部に後方に突出された規制用突部51が設けられることにより、保持フレーム2の第1の部分6が規制用突部51に接触されて車載用バッテリー1の上方への移動が規制されるため、車載用バッテリー1の上方への移動を簡素な構造によって確実に規制することができる。
【0099】
第4の変形例に係るシートヒンジブラケット104Dは、
図16に示すように、変位規制部112Dが後方に開口された凹状の規制縁60によって構成され、規制縁60が曲線状部60aと曲線状部60aの上下両端にそれぞれ連続する直線状部60b、60bとによって形成されている。
【0100】
シートヒンジブラケット104Dにあっては、車両の衝突時に保持フレーム2の第1の部分6が変位規制部112Dに接したときに、第1の部分6が凹状の部分に挿入されて車載用バッテリー1の移動が確実に規制される。
【0101】
第5の変形例に係るシートヒンジブラケット104Eは、
図17に示すように、変位規制部112Eが後方に開口された凹状の規制縁70によって構成され、規制縁70が直線状部70a、70aによってV字状に形成されている。
【0102】
シートヒンジブラケット104Eにあっては、車両の衝突時に保持フレーム2の第1の部分6が変位規制部112Eに接したときに、第1の部分6が凹状の部分に挿入されて車載用バッテリー1の移動が確実に規制される。
【0103】
第6の変形例に係るシートヒンジブラケット104Fは、
図18に示すように、変位規制部112Fが凹凸状の規制縁80によって構成されている。
【0104】
シートヒンジブラケット104Fにあっては、車両の衝突時に保持フレーム2の第1の部分6が変位規制部112Fに接したときに、凹凸状の規制縁80によって車載用バッテリー1の移動が規制される。