特許第6181725号(P6181725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181725
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】自動車の運転手用の装着可能な器械
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20170807BHJP
   B62D 41/00 20060101ALN20170807BHJP
   B60R 11/02 20060101ALN20170807BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   !B62D41/00
   !B60R11/02 C
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-196406(P2015-196406)
(22)【出願日】2015年10月2日
(65)【公開番号】特開2016-103264(P2016-103264A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2015年10月2日
(31)【優先権主張番号】10 2014 017 599.5
(32)【優先日】2014年11月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511007093
【氏名又は名称】エレクトロビット オートモーティブ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】フランツ ドゥックシュタイン
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−096750(JP,A)
【文献】 特開2005−204143(JP,A)
【文献】 特開2014−197179(JP,A)
【文献】 特表2013−543979(JP,A)
【文献】 特開2011−109170(JP,A)
【文献】 特開2005−212709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 1/16
B60R 11/02
B60R 21/00
B62D 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の運転手用の装着可能な器械であって、
前記自動車の補完的な通信装置と通信するように構成される通信手段と、
表示手段と、
前記自動車内の運転手の方位を検出するように構成される方位検出手段と、
前記自動車の補完的な通信装置から、少なくとも前記自動車の後方側の周囲の状況に関する、センサーで取得したデータを前記通信手段を経由して受信し、前記自動車の運転方向を示すデータであって、つながっているギアを示すか、又は、該つながっているギアから導かれるデータ、及び、前記自動車内の運転手の方位を示すか、又は、該方位から導かれるデータを、要求すること及び受信することの少なくとも一方を行い、かつ、前記自動車の運転方向を示すデータがバックであることを示す時に、前記自動車の後方側の周囲の状況に関する前記受信した周囲の状況のデータ、又は該受信した周囲の状況のデータから導かれるデータを表示するように、前記表示手段を制御するように構成される処理手段とを有するものであることを特徴とする器械。
【請求項2】
前記センサーで取得した周囲の状況のデータは、前記自動車の距離センサー及びカメラの少なくともいずれか一方のデータであることを特徴とする請求項1に記載の器械。
【請求項3】
さらに、使用者による入力を検出するように構成される検出手段を有し、前記処理手段は、前記使用者による入力に基づいて、前記自動車の後方側、前方側、及び側方のうち一つ以上に位置する周囲の状況に関して選択的に、前記受信した周囲の状況のデータ又は該受信した周囲の状況のデータから導かれるデータを表示するように前記表示手段を制御するように構成されるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の器械。
【請求項4】
さらに、使用者による入力を検出するように構成される検出手段を有し、前記処理手段は、前記使用者による入力に基づいて、前記自動車の周囲の状況に関するデータを要求すること及び受信することの少なくとも一方を行うように前記通信手段を制御するように構成されるものであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の器械。
【請求項5】
さらに、前記表示手段、前記処理手段及び前記通信手段を収容するハウジングと、
前記自動車の運転手が手首又は腕に前記器械を装着するための手段とを有するものであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の器械。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の前記自動車の運転手が装着する器械と、
前記自動車の周囲の状況に関するデータを取得するセンサー手段と通信手段とを備えた自動車とを有するものであることを特徴とするシステム。
【請求項7】
自動車の運転手用の装着可能な器械の使用方法であって、
前記器械は通信手段と表示手段と方位検出手段とを備え、
前記通信手段を前記自動車の補完的な通信装置と通信するように構成し、前記方位検出手段を前記自動車内の運転手の方位を検出するように構成し、
前記自動車の補完的な通信装置から、少なくとも前記自動車の後方側の周囲の状況に関する、センサーで取得したデータを前記通信手段を経由して受信するステップと、
前記自動車の運転方向を示すデータであって、つながっているギアを示すか、又は、該つながっているギアから導かれるデータ、及び、前記自動車内の運転手の方位を示すか、又は、該方位から導かれるデータを、要求すること及び受信することの少なくとも一方を行うステップと、
前記自動車の運転方向を示すデータがバックであることを示す時に、前記自動車の後方側の周囲の状況に関する前記受信した周囲の状況のデータ、又は該受信した周囲の状況のデータから導かれるデータを表示するように、前記表示手段を制御するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項8】
コンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納され、請求項に記載の方法を処理手段によって実行可能とするコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は、概して自動車の運転手を電子的手段により支援する技術分野に関する。特には、自動車の運転手用の装着可能な装置とその装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車には、運転手を電子的手段により支援するための装置がますます装備されるようになっている。これらの装置としては、例えば、自動車の周囲の状況を検出し、そうすることにより周囲の状況のデータを生成するカメラや距離センサーのようなセンサー装置がある。
【0003】
周囲の状況のデータは、典型的には視覚による表示(例えば、カメラ画像)の形式で、又は、(例えば、自動車の周囲の障害物との距離に依存して)聴覚信号の形式で、運転手へ提供される。このデータは、通常、計器ディスプレイ又はセンターコンソール部分において自動車に固定的に組み込まれる表示装置によって表示される。
【0004】
運転の状況(例えば、前方運転又はバック、駐車の処置)に依存して、自動車の様々な位置に配置された複数のセンサー装置には、運転手へ提供される周囲の状況のデータを、例えば、自動車の運転方向に適応させるために、問い合わせが行われてもよい。しかしながら、(例えばバックのような)ある運転の状況において、運転手は自動車内で彼/彼女の視野方向を典型的には変えることがある。これにより、自動車に固定的に組み込まれ、周囲の状況のデータを表示する表示装置が運転手の視野方向になくなり、それにより運転手の視界外に存在することになるかもしれない。
【0005】
そのような不利な状況を回避するために、駐車支援について、DE 10 2011 121 285 A1号公報に記載されている。この支援においては、複数の障害物が少なくとも自動車の前方側及び後方側の周囲から複数のセンサー装置によって検出される。この間に生成される周囲の状況のデータは、自動車の運転方向に依存して、フロントガラス部分に配置される表示装置によって、又は、リアウインドウ(後窓)部分に配置される表示装置(例えば、ヘッドアップディスプレイ)によって表示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車の運転手を電子的手段により支援する改善された解決策が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、自動車の運転手用の装着可能な器械が提供される。装着可能な器械は、自動車の補完的な通信装置と通信するように構成される通信手段と、表示手段と、処理手段とを有する。処理手段は、自動車の補完的な通信装置から、自動車の周囲の状況に関する、センサーで取得したデータを通信手段を経由して受信し、かつ、受信した周囲の状況のデータ、又は該受信した周囲の状況のデータから導かれるデータを表示する表示手段を制御するように構成される。
【0008】
通信手段は、少なくとも自動車の補完的な通信装置と無線通信するように構成されてもよい。ここで、通信は、例えば、ブルートゥース、WLAN、超広帯域無線、又は他の無線通信技術で行われてもよい。
【0009】
表示手段は、液晶ディスプレイでよい。それに代わり、(例えば、OLEDのような)他の表示システムが提供されてもよい。
【0010】
センサーで取得した周囲の状況のデータは、外部センサーのデータでもよい。特に、それは自動車の距離センサー及び/又はカメラのデータでもよい。
【0011】
距離センサーは、自動車と障害物の間の距離を測定するように構成されてもよい。例えば、超音波、レーダー、又は、赤外(IR)波長域(約700nmから1100nm)の光に基づく距離センサーが提供されてもよい。距離センサーによって取得した距離のデータは、表示手段によって、数値(例えば絶対値)の形式で、又は、図表の成分の形式で(例えば大きさが可変の棒の形式で)表示されてよい。カメラは、可視波長域(約300nmから700nm)の光、及び/又は、赤外光を検出するように構成されてもよい。距離のデータに加えて、又は、それに代えて、表示手段により、カメラによって検出されたカメラ画像を表示する準備が行われてもよい。さらに、周囲の状況のデータを処理する(例えば、まとめる)ように構成される器械の処理手段及び/又は自動車の処理装置の準備が行われてもよい。処理された周囲の状況のデータは、表示手段によって表示されてよい。
【0012】
自動車の周囲の状況に関して、自動車の後方側、前方側、及び/又は、側方のうち一つ以上に位置する周囲の状況が提供されてもよい。この場合、周囲の状況には、特に、自動車の後方側、前方側、及び/又は、側方にある交通上のスペースを含んでよい。自動車の後方側の環境に関する周囲の状況のデータであるセンサーで取得した周囲の状況のデータの準備が行われてもよい。
【0013】
処理手段は、さらに、自動車の運転方向を示すデータを要求すること及び受信することの少なくとも一方を行うように構成されてもよい。自動車の運転方向を示すデータは、つながっているギアか、又は、該つながっているギアから導かれるものを表してもよい。このため、処理手段は、例えば自動車内に配置された変速機センサーと通信するように構成されてもよい。変速機センサーは、運転手によってつなげられたギア、又は自動化された方法(自動変速機)でつなげられたギアを検出するように用意されてもよい。
【0014】
それに代えて、又は、それに加えて、自動車の運転方向を示すデータは、自動車内の運転手の方位(向いている方向)を示すか、又は、該方位から導かれるものを表してもよい。この場合、器械は自動車内の運転手の方位を検出するように構成される手段を有していてもよい。自動車内の器械の向きを決定するように構成される方位の検出手段の準備が行われてもよい。このことは、自動車内に配置された少なくとも一つの補完的な方位の検出手段との相互作用(協同)により行われてもよい。少なくとも一つの方位の検出手段は、例えば、複数の電気的な接触面、(例えば誘導)近接センサーの複数の機能的な部分、又は慣性センサーを備えてもよい。慣性センサーは、少なくとも一つの並進運動センサー、及び/又は、少なくとも一つのジャイロスコープセンサーを備えていてもよい。
【0015】
器械は、さらに、使用者による入力を検出するように構成される検出手段を有していてもよい。検出手段は、例えば、タッチスクリーン(接触感応画面)の形式で表示装置に組み込まれてよい。それに代わり、又は、それに加えて、検出手段は一つ以上の機械的な作動部品を備えていてもよい。これらの部品は、押しボタン、スイッチ、スライドコントロール、又は機械的に作動する他の作動部品でよい。さらに、検出手段は、利用者による音声入力を検出するマイク、及び/又は、器械の動きを検出する慣性センサーを備えていてもよい。
【0016】
自動車の運転方向を示すデータがバックであることを示す時に、受信した周囲の状況のデータ又は該受信した周囲の状況のデータから導かれるデータを表示するように、表示手段を制御するように構成される処理手段の準備が行われてもよい。さらに、(例えば、自動車の運転手によって実行される)ディスプレイの能動的な制御に関して、使用者による入力に基づいて、自動車の後方側、及び/又は、前方側、及び/又は側方に位置する周囲の状況に関して選択的に、受信した周囲の状況のデータ又は該受信した周囲の状況のデータから導かれるデータを表示するように表示手段を制御するように構成される処理手段の準備が行われてもよい。このようにして、表示手段は、例えば、バックでの駐車の処置において、自動車の後方側、及び少なくともある実施態様においては、側方に位置する周囲の状況を表示するように制御されてよい。このような操作が利用者による入力(利用者入力)に応じて、又は(例えば、検出された、又は所望の運転方向に依存して)自動的に行われてもよい。
【0017】
処理手段は、さらに、自動車の周囲の状況に関するデータを要求すること及び受信することの少なくとも一方を行うように通信手段を制御するように構成されてもよい。それに代わり、処理手段は、器械が自動車の補完的な通信装置の範囲内に入るや否や、通信手段を経由して、自動車の周囲の状況に関するデータを要求すること及び受信することの少なくとも一方を行うように構成されてもよい。
【0018】
器械は運転手の手首又は腕に装着可能に構成されてもよい。例えば、器械は、ハウジングと自動車の運転手が手首又は腕に器械を装着するための手段とを備えてもよい。表示手段、処理手段、及び通信手段は、ハウジング内に収容されてもよい。器械を装着するための手段は、例えば、(リストストラップのような)バンド、又は衣類でもよい。
【0019】
器械はスマートウオッチでもよい。スマートウオッチは、従来の腕時計の形態で自動車の内外で使用可能である。
【0020】
第2の実施態様によれば、システムが提供される。システムは、ここに開示される自動車の運転手が装着する器械と、自動車の周囲の状況に関するデータを取得するセンサー手段と通信装置とを備えた自動車とを有する。第3の態様によれば、自動車の運転手用の装着可能な器械の使用方法が提供され、器械は通信手段と表示手段とを備える。通信手段を自動車の補完的な通信装置と通信するように構成する。方法は、自動車の補完的な通信装置から、自動車の周囲の状況に関する、センサーで取得したデータを通信手段を経由して受信するステップと、受信した周囲の状況のデータ、又は該受信した周囲の状況のデータから導かれるデータを表示するように、表示手段を制御するステップとを有する。
【0021】
第4の態様によれば、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納されるコンピュータプログラム製品が提供される。コンピュータプログラム製品は、ここに記載された方法を処理手段により実行するように機能する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
ここに記載された解決策のさらなる利点、詳細、及び特徴が以下の代表的な実施態様の記載及び図面から明らかにされる。
【0023】
図1A】自動車の運転手用の装着可能な器械の代表的な実施態様を示す概略図である。
図1B】自動車の運転手用の装着可能な器械の代表的な実施態様を示す他の概略図である。
図2】自動車の周囲の状況に関するデータを提供する、図1A及び図1Bによる器械の代表的な実施態様を示す概略図である。
図3A】自動車の周囲の状況に関するデータを提供する方法の代表的な実施態様を示すフロー図である。
図3B】自動車の周囲の状況に関するデータを提供する方法の他の代表的な実施態様を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1A及び図1Bは、自動車14の運転手12の手首又は前腕に着けられる、全体として10で指定される、器械の代表的な実施態様の概略図である。示された代表的な実施態様において、器械10は、その器械10の両側面から延びるバンド16によって、運転手12の手首部分に着脱可能とされる。これに代わり、運転手12によって着用される衣類(例えば、シャツ又はジャケットの袖)により、手首部分又は前腕部分に器械10を取る付ける準備がなされてもよい。器械10は例えばスマートウオッチでよい。スマートウオッチは、例えば、従来の腕時計の形態で、及び、付加的に運転に関係するデータを表示するために運転手12によって使用されてよい。
【0025】
図1Aは、自動車14のダッシュボード18の前面図を示している。運転手12が自動車14を操縦するために機能する自動車14のハンドル20が、ダッシュボード18の前面に据え付けられている。示された代表的な実施態様において、器械10は、前方視野の方向で見られるように、自動車14の運転手12の右手首部分に配置される。これに代わり、器械10は、運転手12の左手首部分に、又は、例えば、運転手12の一方の前腕のあたりに配置されてもよい。
【0026】
図1Bは、器械10を前方から見た全体像を示している。器械10は、前面側に表示手段24を収容するハウジング22を備えている。示された代表的な実施態様において、ハウジング22の前面側は、丸みを持った角部(コーナー)を有する矩形の形状に構成される。これに代わり、ハウジング22の前面側は、例えば(円形を含む)長円形又は多角形の形状で構成されてもよい。表示手段24は、液晶パネル、OLEDパネル、又は他の適切な表示システムでよい。
【0027】
図1Bに示される代表的な実施態様において、機械的な作動部品26及び電気的な接点27が、ハウジング22の側面28に組み込まれている。機械的な作動部品26は、(例えば、自動車14の運転手12によって実行される)利用者による入力を検出するように構成される。この部品は、例えば、押しボタン、スイッチ、スライドコントロール、又は機械的に作動する他の部品でよい。電気的な接点27は、器械10のバッテリー(不図示)を充電するように構成される。示された代表的な実施態様において、電気的な接点27は、電気的なプラグイン接続部の一部として設けられる。それに代わり、又は、それに加えて、電気的な接点27は、ワイヤレス(例えば、誘導)エネルギー伝達又は太陽光によって充電する太陽電池の形態で構成されてもよい。バッテリーの充電は、それに代わり、又は、それに加えて、器械を動かすことによって(例えば、誘導によって)行われてもよい。
【0028】
他の実施態様において、器械的な作動部品26及び/又は電気的な接点27は、器械10のハウジング22の他の部分に配置されてもよく、又は、完全に削除されてもよい。さらに、例えば、電気的な接触面として構成されるインターフェース、データキャリアを挿入するインターフェース、スピーカ、又はマイクのような別の複数の部品(不図示)が、ハウジング22に組み込まれてもよい。
【0029】
図1Bに示される代表的な実施態様において、(図1Aに示すように)運転手12の手首部分又は前腕部分に器械10を着脱可能とするバンド16は、ハウジングの両側面28、29に配置され、ハウジング22の前側の2つの長いへりから背後に延びる。他の実施態様において、バンド16は、例えば、前記の長い両側面28、29とは異なる、ハウジング22の短い側面に配置されてもよい。
【0030】
図2は、自動車14内に配置される器械10の代表的な実施態様をブロック図で示している。これは、図1A及び図1Bに示される代表的な実施態様を参照して記載される器械10でもよい。
【0031】
図2による器械10は、検出手段30、処理手段32、表示手段24(図1Bによる代表的な実施態様を参照)、通信手段34、及び方位の検出手段36を備えている。検出手段30は、利用者による入力を検出するように構成される。利用者による入力は、例えば、(図1Bに示される代表的な実施態様を参照して記載されるように)機械的な作動部品の操作によって、タッチスクリーンの形式の接触感応画面に接触することによって、器械10に組み込まれたマイクを通した音声制御によって、及び/又は、器械10に組み込まれた慣性センサーによる動作検出によって行われてもよい。検出手段30は、検出された利用者による入力を評価するように構成される、処理手段32に接続される。
【0032】
処理手段32は、少なくとも一つのプロセッサ38(例えば、CPU)と記録媒体(記憶装置)40を備えている。記憶装置40は、少なくとも一つのコンピュータプログラム製品(プログラム)42を保存するように構成される。プログラム42は、プロセッサ38によって実行される複数の作動を制御する。記憶装置40は、例えば、ハードディスク記録装置、着脱可能な記録装置、又は半導体記録装置でもよい。処理手段32は、表示手段24、通信手段34、及び/又は、方位の検出手段36を(例えば、検出された利用者による入力に基づいて)制御するように構成される。
【0033】
器械10の通信手段34は、自動車14内に配置された補完的な通信装置44と、一方向の、又は、双方向のデータ伝達によって通信する。図2によるデータ伝達は、双方向かつ無線で、例えば、ブルートゥース、WLAN、又は超広帯域無線を通して行われる。自動車14の補完的な通信装置44は、自動車14の制御システム46に接続される。
【0034】
自動車14の制御システム46との通信を通して、器械10の処理手段32は、自動車14のセンサーによる検出部48を制御し、及び/又は、センサーによる検出部48からデータを受信するように構成される。示された代表的な実施態様において、センサーによる検出部48は変速機センサー50、カメラ52、及び距離センサー54である。それに代わり、又は、それに加えて、自動車14は、さらなるセンサーによる検出部48(例えば、さらに複数のカメラ52、及び/又は、さらに複数の距離センサー54)を備えていてよい。さらに、自動車14の制御システム46との通信を通して、さらに他の自動車システムの機能(例えば、スピードメーター)を音を出して読み取るように構成される処理手段32の準備が行われてもよい。
【0035】
変速機センサー50は、運転手によってつなげられた、又は、自動化された方法(自動変速機)でつなげられた自動車14のギアを検出するように構成される。カメラ52と距離センサー54は、自動車14の周囲の状況のデータを取得するように構成される。自動車14の周囲の状況のデータのセンサー52、54の配置に依存して、ここでのデータは自動車14の後方側、前方側、及び/又は、側方に位置する周囲の状況に関するデータである。特に、ここでの周囲の状況とは、自動車14の周囲の交通上のスペースのことでよい。
【0036】
カメラ52は、電磁波を検出するように構成される。ここで、可視波長域(約300nmから700nm)の光、及び/又は、赤外(IR)波長域(約700nmから1100nm)の光を検出するように構成されるカメラ52の準備が行われてもよい。カメラ52は、例えば、CCD(charge coupled device)センサー、及び/又は、CMOS(complementary metal oxide silicon)センサーを備えていてもよい。さらに、センサーは特定の波長域の(例えば、可視波長域の)光を分離するためにフィルターを備えていてよい。少なくともこの場合、カメラ52は赤外光を可視化する像変換器(イメージコンバーター)を備えていてもよい。距離センサー54は、障害物までの距離を検出するように構成される。距離センサー54として、例えば、超音波又は赤外光用の送受信装置が用意されてもよい。
【0037】
器械10の方位の検出手段36は、自動車14内で運転手12が向いている方向(方位)を検出するように構成される。ここで、運転手12の身につけている器械10の位置の測定から推論される運転手12の方位が提供されてもよい。このため、図2に示される代表的な実施態様において、方位の検出手段36は、自動車14内に配置される少なくとも一つの補完的な方位の検出手段56と協同するように構成される。補完的な方位の検出手段56は、例えば、ハンドル20の部分に(図1Aの代表的な実施態様を参照)、及び/又は、運転手の座席(又は乗客(同乗者)の座席)の部分に配置されてもよい。方位の検出手段36、56は、電気的な接触面又は(誘導又は容量性の)近接センサーの機能的な部分であってもよい。
【0038】
それに代わり、又は、それに加えて、方位の検出手段36は、補完的な方位の検出手段56と協同することなしに、自動車14内の運転手12の方位を検出するように構成されてもよい。ここで、器械10の方位の検出手段36は、例えば、慣性センサーでもよい。慣性センサーは、少なくとも一つの並進運動センサー、及び/又は、少なくとも一つのジャイロスコープセンサーを備えていてよい。方位の変化として検出される(例えば、ハンドル20のあたりから運転手の座席又は乗客の座席あたりへの)器械10の所定の動きを提供してもよい。
【0039】
図3A及び図3Bは、自動車14の周囲の状況のデータを提供する方法の代表的な実施態様のフロー図を示している。その方法は、図1Aから図2に従って、自動車14内の器械10によって実行されるように提供されてもよい。
【0040】
図3Aの代表的な実施態様によれば、周囲の状況のデータは第1の方法のステップ60において受信される。図2の代表的な実施態様を参照すると、周囲の状況のデータとは、自動車14の周囲の状況に関してカメラ52及び/又は距離センサー54によりセンサーで取得したデータである。データは、自動車14の制御システム46と通信することにより、処理手段32によって要求及び/又は受信される。例えば、自動車14の後方側の周囲の状況に関するデータであるセンサーで取得するデータを提供してもよい。処理手段32は、例えば器械10が自動車14の補完的な通信装置44の範囲内に位置する時に、通信手段34を通して自動的な方法で周囲の状況のデータを受信するように構成されてもよい。
【0041】
続く方法のステップ62において、表示手段24(図1B及び図2を参照)は、受信した周囲の状況のデータ、又は、その受信した周囲の状況のデータから導かれるデータを表示するように制御される。図2の代表的な実施態様を適用することで、その作動が処理手段32により行われる用意がなされる。ここで、例えば、カメラ52によって検出されたカメラ画像を表示するように表示手段24を制御する処理手段32の準備が行われてもよい。それに加え、又は、それに代えて、距離センサー54によって取得された距離のデータ、又は、その距離のデータから導かれるデータは、複数の数値(例えば、絶対値又は相対値)の形式で、又は、図表の成分の形式で(例えば大きさが可変の棒の形式で)、表示手段24によって表示されてもよい。周囲の状況のデータから導かれるデータは、器械10の処理手段32によって、又は、自動車14の処理装置によって処理される(例えば、まとめられる)周囲の状況のデータでもよい。ここで、器械10の処理手段32又は自動車14の処理装置は、例えば、複数の距離センサー54によって取得される距離のデータから最小の距離を決定するように、及び/又は、複数のカメラ52によって検出されるカメラ画像から一つの合成されたカメラ画像を算出するように構成されてもよい。
【0042】
図3Aに示す方法に加えて、図3Bによる方法では、運転方向のデータを受信する方法のステップ(ステップ64)と利用者入力を検出する方法のステップ(ステップ66)とを有している。運転方向のデータを受信するにあたり、さらに2つのステップ68と70において、自動車14内でつながっているギア及び自動車14の運転手12の方位が検出される。
【0043】
図2の代表的な実施態様を適用することで、処理手段32は運転方向のデータを受信及び/又は要求するように構成される。このために、処理手段32は、例えば自動車14の制御システム46との通信を通して、つながっているギアを検出(ステップ68)するように構成される変速機センサー50と通信してもよい。この場合、運転方向のデータは、自動車14においてつながっているギアを示すか、又は、つながっているギアから導かれるものでよい。さらに、例えば、変速機センサー50において、第1の前進ギア又はバックギアが検出されるときに、駐車の処置が検知されてもよい。それに加えて、又は、それに代えて、処理手段32は運転手12の方位を検出(ステップ70)するように構成される、方位の検出手段36からの運転方向のデータを受信してもよい。この場合、運転方向のデータは、自動車14内の運転手12の方位を示すか、又は、その方位から導かれるものでもよい。自動車14の後方側の周囲の方向へ運転手12が向くことにより、例えばバックであることが推定されてもよい。
【0044】
図3Bに示される代表的な実施態様において、表示手段24を作動させる方法のステップ62が、運転方向のデータを受信するステップ(ステップ64)に続く。ここで、例えば、運転方向のデータが自動車14がバックすることを示すとき、図2に従って表示手段24を制御する処理手段32の準備が行われてもよい。さらに、バックの場合には、受信した周囲の状況のデータ(ステップ60)、及び/又は、表示手段24上にステップ62によって表示される周囲の状況のデータを、自動車14の後方側の環境に関しての周囲の状況のデータとする用意がなされてもよい。
【0045】
それに代わり、又は、それに加えて、方法のステップ66において、利用者入力が検出される。図1B及び図2の代表的な実施態様を参照して、検出は機械的な作動部品26によって、及び/又は、検出手段30によって行われてもよい。図3Bに示される代表的な実施態様において、周囲の状況のデータを受信するステップ(ステップ60)と表示手段を作動させるステップ(ステップ62)は検出された利用者入力に基づいて実施される。図2の代表的な実施態様を適用することで、処理手段32は、利用者入力に基づいて、周囲の状況のデータを要求、及び/又は、受信するために、通信手段34が補完的な通信装置44と通信するように制御するように構成されてもよい。
【0046】
さらに、検出された利用者入力(ステップ66)に基づいて、自動車14の後方側、及び/又は、前方側、及び/又は、側方に位置する周囲の状況に関して選択的に、受信した周囲の状況のデータ又は周囲の状況のデータから導かれるデータを表示するように、又は、表示を取り消すように表示手段24を制御(ステップ62)するように構成される処理手段32の準備が行われてもよい。このように、例えば、利用者入力によって、後方側の周囲の状況の表示を行う、及び、表示を取り消す準備が行われてもよい。利用者入力によって、前方側の周囲の状況の表示と(例えば、バックによる駐車の処置のための)後方側の周囲の状況の表示との間の切り替えの準備も行われてよい。それに加えて、又は、それに代えて、利用者入力により、後方側の周囲の状況の表示と、(例えば、バックによる平行駐車の処置のための)後方側及び側方の周囲の状況の表示との間の切り替えの準備が行われてもよい。上述の場合の各々において、表示の実施/取り消し又は表示の切り替えはまた(例えば、検出された、又は、意図された運転方向に依存して)自動的に行われてもよい。
【0047】
上述した複数の実施態様を参照して、器械10は自動車14の運転手12を支援するように利用されてよい。運転手の手首又は前腕に器械10を装着することにより、この装置は、自動車14の前方運転と自動車14がバックする際の両方で、運転手12の視野方向に配置される。支援のために表示手段24によって提供される周囲の状況のデータは、運転手12が直観的に認識する視野内にある。従って、後者は特にバックする際に、例えば、自動車14の運転方向から離れて、ダッシュボード18部分に固定的に組み込まれた表示手段の方向を無理やり見るように強いられない。周囲の状況のデータ(例えば、カメラ画像)が視野方向に表示される結果、運転手12の周囲の状況のデータへの理解がさらに改善される。
【0048】
前述の代表的な実施態様により、自動車の運転手の電子的手段による支援に関して様々な特徴と解決策の使用が提供される。異なる代表的な実施態様において、これらの特徴は必要に応じ、組み合わされ、又は修正されてもよい。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B