特許第6181729号(P6181729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181729
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】物品、コーティング組成物、及び方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 1/00 20060101AFI20170807BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170807BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20170807BHJP
   C03C 17/32 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C09D1/00
   C09D7/12
   C09D5/00
   C03C17/32 A
【請求項の数】2
【外国語出願】
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2015-208700(P2015-208700)
(22)【出願日】2015年10月23日
(62)【分割の表示】特願2013-510117(P2013-510117)の分割
【原出願日】2011年4月25日
(65)【公開番号】特開2016-29181(P2016-29181A)
(43)【公開日】2016年3月3日
【審査請求日】2015年11月18日
(31)【優先権主張番号】201010170156.6
(32)【優先日】2010年5月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】チュー イウェン
(72)【発明者】
【氏名】ユー チガン
(72)【発明者】
【氏名】ナイヨン ジン
(72)【発明者】
【氏名】パン ルイ
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/017069(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/073972(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
C03C 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物であって、
非球状ナノ粒子と、
球状ナノ粒子と、
任意の親水基及び任意の界面活性剤と、
水、及び存在する場合、液体媒質の総重量を基準として30重量%以下の有機溶媒を含む液体媒質と、を含み、
前記非球状ナノ粒子の少なくとも一部分又は前記球状ナノ粒子の少なくとも一部分が、化学結合を介してそれらの表面に結合している官能基を含み、前記官能基が、

【化1】
(式中、nが、0〜10の整数であり、
xが、CH,O,S,又はNHC(O)Rであり、及び、
Rが、−CH,−C,−C,又は−Cである。)
及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の基を含み、
前記非球状ナノ粒子と前記球状ナノ粒子との重量比が、80:20〜20:80の範囲である、コーティング組成物。
【請求項2】
前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量を基準として、少なくとも0.05重量%の球状ナノ粒子でかつ40重量%以下の球状ナノ粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、コーティング組成物、基材表面の改質方法、及び該コーティング組成物でコーティングされた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止性、洗浄容易性、及び改善された耐久性特性を備えた表面を有する物品は、種々の用途で望ましい。例えば、太陽電池用のソーラーガラスの光電変換率は、ガラスコーティングによって改善され得る。
【0003】
いくつかのガラスコーティング組成物が開発されている。例えば、米国特許第6,040,378号及び同第6,352,780号は、反射防止特性を目的としてガラス基材上に塗布するためのポリマーコーティング組成物を開示している。このコーティングは、モノマー及び/又はプレポリマー、触媒、並びにグラフト開始剤の使用を伴う化学的グラフト化によってもたらされ、ガラス基材表面に塗布されると、強力な接着力でガラスに化学的に結合するポリマーフィルムを形成する。このコーティングは、コーティングされたガラス表面の反射率を限りなくゼロ近くまで低減し、そうして透過率を最大にし、かつ磨耗、水/薬品による腐食、及び紫外線劣化への耐性を提供することができる。米国特許第6,838,178号は、最初に導電性コーティングが塗布されるガラス基材上にコーティングとして塗布される無彩色(color neutral)吸収膜を開示している。追加の金属酸化物層が吸収膜上に堆積される。このコーティングは、30%以上の可視光線透過率及び5%未満の反射率を有するコーティングされたガラス物品を得るために他の金属酸化物を含有する反射防止用コーティングで使用するのに適している。コーティングされたガラス物品は、吸収性、反射防止性、及び導電性である。米国特許第6,858,306号は、ガラス基材、このガラス基材上に堆積及び付着されるアンチモンドープ酸化スズのコーティング、及びフッ素ドープ酸化スズのコーティングを含むコーティングされた物品を開示している。コーティングされたガラス物品の低放射率は、多層スタックの驚くほど選択的な太陽吸収と組み合わされると、夏には改善された熱遮断、冬には保温を提供し、その一方で比較的高程度の可視光線透過率を可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コーティングでコーティングされた基材に、反射防止性、洗浄容易性、及び改善された耐久性のうちの少なくとも1つを付与するコーティング組成物の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、液体コーティング組成物でコーティングされた基材に、反射防止性、洗浄容易性、及び改善された耐久性のうちの少なくとも1つの特性を付与する液体コーティング組成物、並びにコーティング方法及びコーティングされた物品に関する。いくつかの実施形態において、液体は水性の液体である。コーティング組成物は、非球状ナノ粒子と球状ナノ粒子とを利用し、非球状ナノ粒子の少なくとも一部分又は球状ナノ粒の少なくとも一部分は、化学結合を介して粒子表面に結合する、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル基、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラ、メルカプト、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の基で官能化される。いくつかの実施形態において、ナノ粒子はシリカナノ粒子である。いくつかの実施形態において、非球状ナノ粒子の全ては、化学結合を介して粒子表面に結合する、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル基、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の基で官能化される。いくつかの実施形態において、球状ナノ粒子の全ては、化学結合を介して粒子表面に結合する、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル基、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の基で官能化される。コーティング組成物は、特に、洗浄容易性の理由で太陽電池パネル、屋外標識、車体に有用であり、かつフェイスマスク、シールド、及び保護眼鏡などの多種多様な個人保護装置に有用である。
【0006】
一実施形態において、本発明は、基材表面改質方法を提供する。本方法は、コーティング組成物を基材に適用する工程と、基材上にコーティングを形成するためにコーティング組成物を乾燥させる工程と、を含み、コーティングされた基材は、コーティングされていない基材と比較して、反射防止性、防塵性又は防汚性、洗浄容易性、及び改善された耐久性からなる群から選択される少なくとも1つの性質の改善を示す。コーティング組成物は、非球状ナノ粒、球状ナノ粒子、任意の親水基、及び任意の界面活性剤、並びに水と、存在する場合、液体媒質の総重量を基準として30重量%以下の有機溶媒と、を含む液体媒質、を含み、非球状ナノ粒子の少なくとも一部分又は球状ナノ粒子の少なくとも一部分が、化学結合を介して粒子表面に結合している官能基を含み、官能基が、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル基、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の基を含む。いくつかの実施形態において、非球状ナノ粒子の全ては、化学結合を介して粒子表面に結合している官能基を含み、該官能基は、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル基、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の基を含む。いくつかの実施形態において、球状ナノ粒子の全ては、化学結合を介して粒子表面に結合している官能基を含み、該官能基は、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル基、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の基を含む。
【0007】
一実施形態において、本発明は、コーティング組成物を提供する。コーティング組成物は、非球状ナノ粒、球状ナノ粒子、任意の親水基、及び任意の界面活性剤、並びに水と、存在する場合、液体媒質の総重量を基準として30重量%以下の有機溶媒と、を含む液体媒質、を含み、非球状ナノ粒子の少なくとも一部分又は球状ナノ粒子の少なくとも一部分が、化学結合を介して粒子表面に結合している官能基を含み、官能基は、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル基、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の基を含む。いくつかの実施形態において、非球状ナノ粒子の全ては、化学結合を介して粒子表面に結合している官能基を含み、該官能基は、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル基、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の基を含む。いくつかの実施形態において、球状ナノ粒子の全ては、化学結合を介して粒子表面に結合している官能基を含み、該官能基は、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル基、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の基を含む。このコーティング組成物は、その上にコーティングされて乾燥される基材に、コーティングされていない基材と比較して、反射防止性、洗浄容易性、及び改善された耐久性からなる群から選択される少なくとも1つの性質が改善されたコーティングを提供する。
【0008】
一実施形態において、本発明のコーティング組成物は、任意に、ラジカル開始剤、脂肪族アミン、若しくはポリアミン、又はエポキシ、あるいは多官能性エポキシモノマー/オリゴマー、又はこれらの組み合わせなどの硬化剤又は共硬化剤を含有してもよい。
【0009】
一実施形態において、本発明は、本発明の方法を用いて改質された基材表面を含む物品を提供する。特定の実施形態において、物品は、個人保護物品、自走車両、又は屋外標識である。特定の実施形態において、この物品は、ソーラーパネルである。特定の実施形態において、基材は、ガラス又はセラミックである。
【0010】
一実施形態において、本発明は、本発明のコーティング組成物を使用して改質された基材表面を含む物品を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態において、球状ナノ粒子は、1nm〜120nmの範囲の平均粒径を有する。
【0012】
定義
本明細書において、「ナノ粒子」は、例えば、200ナノメートル(nm)以下の平均粒径を有するナノメートルサイズの粒子として定義される。本明細書で使用するとき、「粒径」及び「粒子直径」は同じ意味を有し、粒子、又は凝集体若しくは凝集体の凝集の最大寸法を指すために用いられる。本文脈において、「凝集」は、電荷又は極性によってまとまることができ、またより小さな構成要素に分解することができる、粒子間の弱い結合を指す。
【0013】
本明細書で使用するとき、用語「球状」とは、その全ての点が固定点から等距離である三次元形状を意味する。
【0014】
本明細書で使用するとき、用語「非球状」とは、球状以外の全ての三次元形状を意味し、例えば、針状の細長い形状、とげ状の細長い形状、棒状の細長い形状、鎖状の細長い形状、フィラメント状の細長い形状等を有する粒子を包含するが、これらに限定されない。
【0015】
「親水基」は、水分散性基、水溶性基、及び/又は、ナノ粒子の表面に親水性をもたらす帯電基を包含する。好ましくは、このような基がナノ粒子に結合する場合には、これらは水中でのナノ粒子の過剰な凝集及び沈殿を低減、好ましくは防止することができ、「水分散性基」と呼ばれる。
【0016】
「帯電基」は、官能基当たり1個以上のイオン化可能基を有する基を指す。
【0017】
「強化ガラス」は、高温(例えば少なくとも500℃、少なくとも600℃、又は少なくとも700℃に等しい温度)で最長30分、最長20分、最長10分又は最長5分の時間にわたって加熱することと、その後でその表面を急速に冷却することと、を含む強化プロセスに供されたガラスを意味する。例えば、このガラスは、700〜750℃の範囲の温度にて約2〜5分にわたって加熱し、その後急速冷却することができる。
【0018】
「乾燥した」コーティングは、液体のキャリア(即ち、液状媒質)を含むコーティング組成物から与えられ、液体キャリアが実質的に、例えば、蒸発などで、完全に除去されたコーティングである。乾燥したコーティングは、溶媒蒸発中の反応性官能基間(例えば、アミン基とエポキシ基)の反応の結果として典型的にはまた「硬化されている」。硬化の速度及び程度は、乾燥プロセス中にコーティング組成物を加熱することにより、向上させることができる。
【0019】
「含む」なる用語及びその変化形は、これらの用語が説明文及び「特許請求の範囲」において用いられている場合に限定的な意味を有するものではない。
【0020】
用語「好ましい」及び「好ましくは」は、所定の状況下で所定の利益を提供し得る、本発明の実施形態を指す。しかしながら、同じ、又は他の状況下において他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1以上の好ましい実施形態の引用は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から除外することを目的とするものではない。
【0021】
本明細書で使用するところの「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1以上の」は、互換可能に使用される。それゆえに、例えば、「1つの」官能基を備えるナノ粒子とは、ナノ粒子が「1つ以上の」官能基を備えることを意味すると解釈することができる。
【0022】
用語「及び/又は」は、1つ又は全ての列挙した要素/性質のうちの1つ又は全て、あるいは、列挙した要素/性質のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0023】
本明細書で使用する時、用語「又は(or)」は、文意で明らかに別途示されている場合を除き、「及び/又は(and/or)」を含む通常の意味で一般的に用いられる。
【0024】
また、本明細書における端点による数の範囲の記載には、その範囲に含まれるすべての数が含まれる(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、などが含まれる)。
【0025】
本発明の上記の「課題を解決するための手段」は、本発明が開示する各実施形態又はあらゆる実施例を説明することを意図したものではない。以下の説明は、実例となる実施形態をより詳細に例示するものである。本明細書にわたっていくつかの箇所で、実施例の一覧を通してガイダンスを提供するが、実施例は様々な組合せにおいて使用できる。それぞれの場合において記載される一覧はあくまで代表的な群として与えられるものであって、排他的な羅列として解釈されるべきものではない。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、官能化非球状又は球状ナノ粒子、特にシリカナノ粒子を含有する水性コーティング組成物、並びに、コーティング方法及びコーティングされた物品に関する。非球状ナノ粒子の少なくとも一部分又は球状ナノ粒の少なくとも一部分は、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル基、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト、又はこれらの組み合わせ、及び任意に親水基(これは水状の官能基であり、水分散性基、水溶性基、及び/又は帯電基であってもよい)からなる群から選択される少なくとも1種の基で官能化される。
【0027】
特定の実施形態では、非球状ナノ粒子のみが官能化される。これらの実施形態では、コーティング組成物を基材に塗布する際に、非球状ナノ粒子群の特定の一部は裸の粒子であり得るが、非球状ナノ粒子の大半、好ましくは大部分が、それらに共有結合している官能基(例えば、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル基、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト、又はこれらの組み合わせ)を有することを理解すべきである。
【0028】
特定の実施形態では、球状ナノ粒子のみが官能化される。これらの実施形態では、コーティング組成物を基材に塗布する際に、球状ナノ粒子群の特定の一部は裸の粒子であり得るが、球状ナノ粒子の大半、好ましくは大部分が、それらに共有結合している官能基(例えば、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル基、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト、又はこれらの組み合わせ)を有することを理解すべきである。
【0029】
特定の実施形態では、非球状ナノ粒子の全て又は球状ナノ粒子の全ては官能化される。他の特定の実施形態では、コーティング組成物を基材に塗布する際に、非球状ナノ粒子及び/又は球状ナノ粒子の群の特定の一部は裸の粒子であり得ることを理解すべきである。
【0030】
本発明のコーティング組成物は、コーティングされた基材に、反射防止性、洗浄容易性、及び改善された耐久性のうちの少なくとも1つを付与する。これらの特性の1つ以上は、共有化学結合を介して、これらのナノ粒子を一緒に組み立てる/相互接続することを可能し、それによって連続網状構造を形成する、ナノ粒子表面化学物質の設計からもたらされ、この連続網状構造は、このような所望される特性の1つ以上を有するコーティングの形成に寄与する。
【0031】
本発明の特定のコーティング組成物は、コーティングされ乾燥させた基材に「反射防止」特性をもたらし、これは以下のように定義することができる。本発明のコーティング組成物が基材に適用されて反射防止又は反射低減特性をもたらすとき、コーティングされた基材の光透過率を増加させることによりグレアは減少する。好ましくは、550mm(例えば、人間の目が光−視覚反応(photo-optic response)のピークを示す波長)で、コーティングされていない基材と比較した場合、片面コーティングされた基材は、ガラス基材のように少なくとも0.5%、少なくとも3%の垂直入射光線の透過率の増加を呈し、両面コーティングされた基材については最大で10%以上の増加を呈する。透過率パーセントは、光の入射角及び波長に依存し、例えば、プラスチックに関しては、ASTM試験法 D1003−92、題名「Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics」を用いて決定される。好ましくは、片面コーティングされたガラス基材は、550nmの光を用いてコーティングされていない基材と比較した場合、少なくとも0.5パーセント、より好ましくは少なくとも3パーセントの透過率パーセントの増加を示す。好ましくは、片面コーティングされたプラスチック基材は、550nmの光を用いて、コーティングされていない基材と比較した場合、プラスチックに対して少なくとも2パーセントの透過率パーセントの増加を呈し、両面コーティングされた基材では、より好ましくは少なくとも5パーセント、及び最も好ましくは8パーセントを超える透過率パーセントの増加を呈する。両面コーティングされた基材については、透過率パーセントにおける増加は、典型的にはこれらの値の2倍である。所望の用途が著しく「軸外」(即ち非垂直)視野又は不所望の反射に関与するとき、視感度の増加は、特に反射が視野内の物体の輝度に近づく又は超える場合更に大きくなる場合がある。
【0032】
反射防止特性は、太陽電池を考慮する際には550nmよりも更に広い範囲にわたって考慮される、太陽電池は、太陽光エネルギーを電気に変換するための独特の吸収スペクトルを有する種々の半導体材料で開発されてきた。それぞれの種類の半導体材料は、特徴的な帯ギャップエネルギーを有し、ある光の波長において、最も効率的に光を吸収するか、又はより正確には、電磁放射線を太陽光スペクトルの一部分にわたって吸収する。太陽電池の形成に使用される半導体材料及びそれらの太陽光吸収帯端波長の例としては、結晶性シリコン単接合(約400nm〜約1150nm)、アモルファスシリコン単接合(約300nm〜約720nm)、リボンシリコン(約350nm〜約1150nm)、CIGS(銅インジウムガリウムセレン化物、約350nm〜約1000nm)、CdTe(テレル化カドミウム、約400nm〜約895nm)、GaAsマルチ接合(約350nm〜約1750nm)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの半導体材料の短波長の左吸収帯端は、典型的には、300nm〜400nmである。当業者であれば、独自の固有の長波長吸収帯端を有する、より効率的な太陽電池のための新しい材料が開発されていること、及び多層反射フィルムは、対応する反射帯幅を有することを理解する。
【0033】
本発明の特定のコーティング組成物は、上にコーティングされて乾燥された基材に洗浄容易特性又は防塵特性をもたらす。乾燥したコーティングは、コーティングされた基材が油及び/又は汚れ耐性を呈する場合に、「洗浄可能である」又は「容易に洗浄される」、あるいは、「洗浄可能」性又は「洗浄容易」性を有すると考えられる。別の方法としては及び/又は追加的に、乾燥したコーティングは、汚れ、食物、機械油、塗料、塵及び/又は埃などの有機汚染物質が水により単純にすすぎ落され得る場合に、容易に洗浄される又は洗浄可能であると考えられる。かかる洗浄容易性又は洗浄可能性特性は、典型的には、コーティングのナノ多孔質構造が、オリゴマー及びポリマー分子による浸透を阻止する傾向があり、かつ特異的な摩擦電気特性を提供する可能性があるためにもたらされる。
【0034】
本発明のコーティング組成物は、(例えば、無機又は有機材料の)基材に適用して乾燥させると、通常、通常使用中の操作(例えば、接触)が乾燥したコーティングを完全に除去しないような耐久性を有する。好ましいコーティングは、実施例の項目で示されるように、乾燥したコーティングがより機械的に過酷な(例えば、摩擦)条件下でも完全に除去されないような耐久性を有する。
【0035】
本発明のコーティング組成物から調製される好ましい乾燥したコーティングは、1つ以上の望ましい特性(曇り防止性及び/又は洗浄容易性)を、50℃及び90%の湿度条件下にて、少なくとも12時間にわたって、より好ましくは少なくとも24時間にわたって、更により好ましくは少なくとも120時間にわたって、並びに多くの場合には200時間以上の長時間にわたって提供できる十分な耐久性を有することができる。
【0036】
好ましい実施形態において、本発明のコーティング組成物で使用される非球状ナノ粒子の少なくとも一部分又は球状ナノ粒の少なくとも一部分は、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル基、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト、又はこれらの組み合わせで官能化される。本明細書では、「アミン」は、四級アンモニウムを含まない。好ましくはこのアミン基は一級又は二級であり、より好ましくはこれらは一級アミンである。これらは脂肪族であっても芳香族であってもよい。任意に、本発明のコーティング組成物は、ラジカル開始剤、脂肪族アミン、若しくはポリアミン、又はエポキシ、あるいは多官能性エポキシモノマー/オリゴマーなどの硬化剤又は共硬化剤を含有してもよい。こうした硬化剤は、これら無機ナノ粒子中に共有結合性有機ネットワ−クを形成する原因となるので、改善された力学的耐久性を達成することができる。
【0037】
本発明の好ましい組成物は、液状で又はアプリケータ基材に浸透した状態で密閉した容器内に周囲条件(例えば、室温)で貯蔵されても、比較的に長い、好ましくは数か月までの、貯蔵寿命を有し得る。
【0038】
ナノ粒子
本発明による表面改質ナノ粒子は、ナノメートルサイズの粒子を含む。用語「ナノメートルサイズ」は、多くの場合(表面改質、即ち、官能化の前に)200ナノメートル(nm)以下、好ましくは100nm以下のナノメートル範囲での平均粒径(即ち、粒子の最大寸法の平均又は球体粒子については平均粒径)により特徴付けられる粒子を指す。
【0039】
ナノ粒子の平均粒径は、透過電子顕微鏡を使用して測定することができる。本発明の実践において、粒度はいずれかの好適な技術を用いて決定することができる。好ましくは、粒度は数平均粒度を表し、透過電子顕微鏡又は走査電子顕微鏡を使用する機器を用いて測定される。粒度を測定する別の方法は、重量平均粒度を測定する動的光散乱である。好適であることがわかったそのような機器の1つの例は、カリフォルニア州フラートン(Fullerton)のベックマン・コールター社(Beckman Coulter Inc.)から入手可能なN4プラスサブミクロン粒子分析器(N4 PLUS SUB-MICRON PARTICLE ANALYZER)である。
【0040】
ナノ粒子がサイズにおいて比較的均一であることも好ましい。均一なサイズのナノ粒子は、一般に、より再現可能な結果を提供する。好ましくは、ナノ粒子のサイズの変動性は、平均粒径の25%未満である。
【0041】
本明細書では、裸のナノ粒子(官能化前)は、水性環境での粒子の過剰な凝集及び沈殿を低減、及び好ましくは防止するために、水分散性である。必要であれば、ナノ粒子を水分散性基で官能化することによって水分散性を高めることができる。ナノ粒子凝集は、望ましくない沈殿、ゲル化、又は粘度の劇的な増加を引き起こす可能性があるが、ナノ粒子が水性環境にある場合、凝集体(即ち、凝集粒子)の平均サイズが200nm以下である限り、少量の凝集は許容することができる。それゆえに、ナノ粒子は、個々の粒子又はこれらの小さな凝集体であることができるため、本明細書において好ましくはコロイド状ナノ粒子であると見なされる。
【0042】
ナノ粒子は、好ましくは、少なくとも10m/g、より好ましくは少なくとも20m/g、及び更により好ましくは少なくとも25m/gの表面積を有する。ナノ粒子は、750m/gを超える表面積を有するのが好ましい。本発明のナノ粒子は、多孔質又は無孔質であり得る。
【0043】
好適なガラス及びセラミックナノ粒子は、例えば、ナトリウム、ケイ素、アルミニウム、鉛、ホウ素、リン、ジルコニウム、マグネシウム、カルシウム、ヒ素、ガリウム、チタン、銅、又はこれらの組み合わせを含むことができる。ガラスは典型的に種々のケイ酸塩含有物質を含む。
【0044】
非改質ナノ粒子は、粉末としてよりもゾルとして提供され得る。好ましいゾルは一般に、流体媒体中に分散された15重量%〜50重量%のコロイド状粒子を含有する。コロイド状粒子に好適な流体媒体の代表的な例には、水、水性アルコール溶液、低級脂肪族アルコール、エチレングリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、ホルムアミド、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい流体媒体は水性であり、例えば、水及び所望により1種以上のアルコールである。コロイド状粒子が水性流体中に分散されると、粒子はそれぞれの粒子の表面上に発生する共通電荷のために安定化し得る。共通電荷は凝集又は凝結よりむしろ分散を促進する傾向があるが、これは同様に荷電した粒子が互いに反発するためである。
【0045】
水性媒質中の無機シリカゾルは、当該技術分野において周知であり、市販されている。水又は水−アルコール溶液中のシリカゾルは、「ルドックス(LUDOX)」(米国デラウェア州ウィルミントン(Wilmington)のE.I.デュポンデヌムール社(E.I.duPont de Nemours and Co.,Inc.)製造)、「ニアコール(NYACOL)」(マサチューセッツ州アシュランド(Ashland)のニアコール社(Nyacol Co.)より入手可能)又は「ナルコ(NALCO)」(米国イリノイ州オークブルック(Oak Brook)のナルコケミカル社(Nalco Chemical Co.)製造)などの商標名で市販されている。一部の有用なシリカゾルは、平均粒度が4ナノメートル(nm)〜77nmであるシリカゾルとして入手可能なNALCO 1115、2326、1050、2327及び2329である。別の有用なシリカゾルは、平均粒子サイズが20ナノメートルのシリカゾルとして入手可能なナルコ1034aである。別の有用なシリカゾルは、平均粒径が2〜4ナノメートルのシリカゾルとして入手可能なNALCO 8699ある。好適なコロイド状シリカの更なる例が、米国特許番号第5,126,394号に記載されている。
【0046】
本発明で使用されるゾルは、一般に、コロイドの表面電荷を中和するために対イオンを含み得る。用いられるコロイドのpH及び種類に応じて、コロイド上の表面電荷は、負であっても正であってもよい。したがって、カチオン又はアニオンのいずれかが、対イオンとして用いられる。負に帯電したコロイドに対する対イオンとして用いるのに適したカチオンの例としては、Na、K、Li、NRなどの第4級アンモニウムカチオン(各Rは、任意の一価の部分であり得るが、好ましくはH、又は−CHなどのより低級のアルキル基である)、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0047】
表面の官能性に応じて、種々の方法が、ナノ粒子の表面を改質するために利用可能である。下記に提案される反応のうち、水性媒質中で作用するとき、水中に安定又は準安定な基に対する強い選好が存在することが理解される。
【0048】
所望される場合には、異なるタイプのナノ粒子の様々な混合物を使用することができる(「裸の」若しくは「剥き出しの」、即ち、官能化されていないナノ粒子又は親水基のみで官能化されたナノ粒子を更に包含する)。本発明のコーティング組成物で使用するナノ粒子は、非球状ナノ粒子だけでなく、球状ナノ粒子も含む。特定の好ましい実施形態において、非球状ナノ粒子と球状ナノ粒子との重量比は、95:5〜5:95、より好ましくは、80:20〜20:80、最も好ましくは、70:30〜30:70の範囲である。
【0049】
本発明のコーティング組成物中のナノ粒子の濃度は、コーティング組成物の総重量を基準として、合計で、好ましくは少なくとも0.1重量パーセント(重量%)、より好ましくは少なくとも0.2重量%、更により好ましくは少なくとも0.5重量%、更により好ましくは少なくとも1重量%、更により好ましくは少なくとも2重量%、更により好ましくは2重量%超過、更により好ましくは少なくとも3重量%、更により好ましくは少なくとも4重量%、更により好ましくは少なくとも5重量%、及び更により好ましくは少なくとも10重量%である。ナノ粒子の濃度は、コーティング組成物の総重量を基準として、好ましくは45重量%以下、より好ましくは40重量%以下、及び更により好ましくは10重量%以下である。約45重量パーセントを超えると、コーティング組成物は所望される厚さの範囲内で適用することが困難になり、約0.1重量パーセントを下回ると、基材への適用後にコーティングが乾燥するのに法外な時間が必要となる。本明細書で使用されるとき、用語「組成物」及び「溶液」は、液状媒体中に分散又は懸濁されたナノ粒子を含む。特定の好ましい実施形態において、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量を基準として、少なくとも0.05重量%の非球状ナノ粒子でかつ40重量%以下の非球状ナノ粒子を含む。特定の好ましい実施形態において、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量を基準として、少なくとも0.05重量%の球状ナノ粒子でかつ40重量%以下の球状ナノ粒子を含む。
【0050】
非球状ナノ粒子
非球状ナノ粒子(好ましくは、細長いコロイダルシリカ粒子)は、5〜60nmの平均直径、40〜500nmの長さD(動的光散乱法で測定した場合)、及び5〜30の伸長度D/Dを有してもよく、米国特許第5,221,497号の明細書に開示されているように、Dは、等式D=2720/Sにより算出された直径(nm)を意味し、Sは、粒子の比表面積(m/g)を意味する。特定の実施形態によると、非球状シリカ粒子は、直径5〜20nm、長さ50〜200nmを有してもよい。
【0051】
米国特許第5,221,497号には非球状シリカナノ粒子の製造法が開示されており、この方法では、水溶性カルシウム塩、マグネシウム塩、又はこれらの混合物を、平均粒径3〜30nmの活性ケイ酸又は酸性シリカゾルのコロイド水溶液に、シリカに対するCaO、MgO、又はその両方に基づき0.15〜1.00重量%の量で添加し、次いでアルカリ金属水酸化物を、SiO/MO(M:アルカリ金属原子)のモル比が20〜300となるように添加し、得られた液体を60〜300℃で0.5〜40時間加熱する。この方法で得られたコロイダルシリカ粒子は伸長形のシリカ粒子であり、5〜40nmの範囲内の均一な厚さで、1平面のみに延びる伸長を有する。非球状シリカゾルはまた、米国特許第5,597,512号(Watanabeら)に記載の通りに調製されてもよい。簡単にいうと、この方法は、(a)水溶性カルシウム塩又はマグネシウム塩あるいは前記カルシウム塩とその前記マグネシウム塩の混合物を含有する水溶液を、1〜6%(重量/重量)のSiOを含有し、かつ2〜5の範囲内のpHを有する活性ケイ酸のコロイド水溶液と、CaO若しくはMgO又はCaOとMgOとの混合物と、活性ケイ酸のSiOとの重量比として1500〜8500ppmの量で混合する工程と、(b)アルカリ金属水酸化物若しくは水溶性有機塩基又は該アルカリ金属水酸化物若しくは該水溶性有機塩基の水溶性ケイ酸塩と、工程(a)で得た水溶液とを、SiO/MOのモル比が20〜200で混合する工程と(SiOは、活性ケイ酸由来の総シリカ含有量及びケイ酸塩のシリカ含有量を表わし、Mは、アルカリ金属原子又は有機塩基分子を表わす)、(c)(b)で得られた混合物の少なくとも一部を60℃以上に加熱してヒール液を得、工程(b)で得られた混合物の別の一部、又は工程(b)に従って別途調製された混合物を用いて供給液を調製し、SiOの濃度が6〜30%(重量/重量)になるまで、添加工程中に混合物から水を蒸発させながら、前記供給液を前記ヒール液に添加する工程と、を含む。工程(c)で製造されたシリカゾルのpHは、典型的には8.5〜11である。
【0052】
有用な非球状シリカ粒子は、Nissan Chemical Industries(Tokyo,Japan)より商標名SNOWTEX−UP、SNOWTEX−UPの水性懸濁液として入手可能である。SNOWTEX−UPは、15〜16%(重量/重量)の非球状シリカ、0.03%(重量/重量)未満のNaO、及び水からなる。粒子は、直径約9〜15ナノメートルであり、40〜300ナノメートルの長さを有する。懸濁液は、25℃にて20mPas未満の粘度、2〜4のpH、及び20℃にて1.10の比重を有する。SNOWTEX−UPは、20〜21%(重量/重量)の非球状シリカ、0.35%(重量/重量)未満のNaO、及び水からなる。粒子は、直径約9〜15ナノメートルであり、40〜300ナノメートルの長さを有する。懸濁液は、25℃にて100mPas未満の粘度、9〜10.5のpH、及び20℃にて1.13の比重を有する。
【0053】
その他の有用な非球状シリカ粒子は、Nissan Chemical Industriesより商標名SNOWTEX−PS−S及びSNOWTEX−PS−Mの水性懸濁液として入手可能である。SNOWTEX−PS−Sは、ナノ粒子からなる真珠の数珠状の形態を有する。この混合物は、20〜21%(w/w)のシリカ、0.2%(w/w)未満のNaO、及び水からなる。SNOWTEX−PS−M粒子は、直径約18〜25ナノメートルであり、80〜150ナノメートルの長さを有する。動的光散乱法による粒度は、80〜150である。懸濁液は、25℃にて100mPas未満の粘度、9〜10.5のpH、及び20℃にて1.13の比重を有する。SNOWTEX−PS−Sは、粒子直径10〜15nm及び長さ80〜120nmを有する。
【0054】
球状ナノ粒子
用語「球状」は、名目上球状の粒子を含むとして理解される。用語「球状のナノメートルサイズ」とは、(表面改質、即ち、官能化前に)ナノメートル範囲内(しばしば200ナノメートル(nm)以下、及び好ましくは60nm以下)の平均粒子直径(粒径)によって特徴付けられる粒子を指す。平均粒径は、より好ましくは(表面改質前に)45nm以下、更に好ましくは(表面改質前に)20nm以下、更により好ましくは(表面改質前に)10nm以下、更により好ましくは(表面改質前に)5nm以下である。好ましくは、表面改質に先立つシリカナノ粒子の平均粒径は、少なくとも1nm、より好ましくは少なくとも2nmである。特に好ましい粒径は2nm〜5nmである。
【0055】
官能化ナノ粒子
本発明のコーティング組成物で使用される非球状ナノ粒子の少なくとも一部分又は球状ナノ粒の少なくとも一部分は、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル基、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の基を含む。2種以上の官能基が存在する場合、これらの官能基は、同一ナノ粒子上、又は異なるナノ粒子上にあってもよい。一実施形態では、これら官能基の1種のみがナノ粒子に含まれる。
【0056】
本発明は、共有結合(有機−有機、有機−無機(例えば、C−N)又は無機−無機結合(例えば、Si−O−Si)の組み合わせを含むことができる)を介してナノ粒子を一緒に組み立てる/相互連結することを可能にするナノ粒子表面化学の設計も包含する。このネットワークは、相互連結したナノ粒子の通常連続相を含むと考えられる(同一であっても又は異なっていてもよい)。このような構造は、コーティングされていない基材と比べて改善された特性を有するコーティングの形成に寄与する。
【0057】
非球状粒子のみ、若しくは球状粒子のみ、又は官能化非球状粒子と官能化球状粒子との組み合わせから得られるコーティングは、力学的耐久性、反射防止性、及び洗浄容易性の望ましいバランスを提供しない場合がある。官能化非球状粒子と官能化球状粒子との組み合わせは所望の特性を提供することができたとしても、コーティング組成物の製造コストは、本発明と比較した場合、過度の官能化の結果として急激に増加することになる。驚くべきことに、ある形状の官能化ナノ粒子と別の形状の非官能化ナノ粒子との組み合わせが、改善された特性をコーティングにもたらし得ることが見出された。例えば、かかる新規な組み合わせによって、改善された力学的耐久性、反射防止性、洗浄容易性、及び多孔率の調節を得ることができる。本発明者らの仮定として、理由は下記のように説明することができる。例えば、改善された機械的特性は、非球状粒子とより小さい官能化球状粒子とを一定の割合で混合することによって得ることができ、これは力学的耐久性にとって重要である粒子のパッキング及びコーティングトポロジーを達成するのを助けることができる。例えば、直径4nmのエポキシ−官能化ナノ粒子を非官能化非球状ナノ粒子と混合すると、同じ重量比の裸の粒子の混合物と比較して改善された耐久性を得ることができる。
【0058】
エポキシ官能基
いくつかの実施形態において、本発明のナノ粒子の一部分は、エポキシ基などの有機基で官能化され、これは例えば、エポキシアルコキシシランを用いて形成され得る。エポキシ基は個々のナノ粒子の好ましいシリカ表面に共有結合され、好ましくはSi−O−Si結合により結合する。ジルコニア、アルミナ、セリア、酸化スズ、又は二酸化チタンを含有する他のナノ粒子は同じように、Zr−O−Si、Al−O−Si、Ce−O−Si、Sn−O−Si、及びTi−O−Siのそれぞれの化学結合でエポキシアルコキシシロキサンに結合され得る。これらの化学結合はSi−O−Siのシロキサン結合ほど強くないが、これらの結合強度は本発明のコーティング用途に適している。
【0059】
本明細書では、エポキシ官能化ナノ粒子の被覆レベルは、コーティング組成物中のエポキシ基の量の100%がシリカ粒子の表面に共有結合されると想定して、コーティング組成物中のエポキシ基の濃度において報告される。好ましくは、エポキシ基は、コーティング組成物中で粒子表面上に、この表面上の官能基の合計モルの少なくとも3モル%に相当する量で存在する。
【0060】
いくつかの実施形態において、エポキシ基は、コーティング組成物中で粒子表面上に、該粒子表面上の官能基の合計モルの少なくとも5モル%、更により好ましくは少なくとも10モル%、及び更により好ましくは少なくとも25モル%に相当する量で存在する。エポキシ基のモル当量が大きいほど、より多くの粒子間結合に寄与することができ、これにより、より高密度の粒子ネットワークを有するコーティングを形成することができる。特定の状況では、エポキシ基の過剰(即ち、100%超)が望ましいものであり得る。しかしながら、典型的には、エポキシ基の量は、コーティング組成物中の粒子表面上に、この粒子表面上の官能基の合計モルの150モル%以下である。エポキシアルコキシシランの多官能性のため、コーティング組成物が100モル%を超えるエポキシ基を含むとき、単層よりも多くのエポキシシロキサンが粒子表面に形成される。過剰の加水分解されたエポキシシランは、存在する場合、基材の表面上のプライマーとしても機能し得る。
【0061】
エポキシ基によるナノ粒子官能化は、従来技術を用いて達成することができる。シリカナノ粒子については、しかしながら、これは、酸性条件下でエポキシ官能化合物を用いてナノ粒子を官能化することにより、有利に達成することができることが発見された。好ましくはpHは6以下であり、より好ましくは5以下のpHで、更により好ましくは3以下のpHで、更により好ましくは1〜3のpHである。このようなpHは、少なくとも3時間、好ましくは少なくとも8時間、より好ましくは少なくとも12時間維持される。所望のpH及び反応の時間は、官能化を改良し、組成物の安定性を改良し(例えば、粒子の沈殿及び/又は凝集の低下)、かつ結果として得られたコーティングの防曇特性を改良する。4〜5nmのナノ粒子において、官能化反応の好ましいpHの範囲は1〜3である。所望のレベルまで(好ましくは完全に)官能化反応が行われた後、コーティング溶液のpHは所望のpH(例えば、5〜8の範囲)にすることができる。
【0062】
官能基はナノ粒子への結合を可能にする様々な化学基を含む。このような基は典型的には、式A−L−F1により表される官能化合物で提供される。官能基F3は、エポキシ基を含む。ここでは、基Aはナノ粒子表面結合基であり、Lは結合又は様々な有機リンカーのうちのいずれでもあり得る。有機リンカーLは、直鎖若しくは分枝アルキレン、アリーレン、又はアルキレンとアリーレン基との組み合わせであることができ、所望によりヘテロ原子を含む。
【0063】
代表的なエポキシ官能基化合物は次のものを含む。
【0064】
【化1】
【0065】
種々の方法が、ナノ粒子の表面を改質するために利用可能であり、それらには、例えば、表面改質剤のナノ粒子への添加(例えば、粉末又はコロイド状分散物の形態)及び表面改質剤をナノ粒子と反応するのを可能にすることが挙げられる。エポキシ官能化合物A−L−F1について、表面結合基Aは、典型的にはシラノール、アルコキシシラン、又はクロロシランであり、一官能性、二官能性、又は三官能性であり得る。例えば、シリカナノ粒子の表面のシラノール基が、官能化合物の少なくとも1つのシラノール基、アルコキシシラン基、又はクロロシラン基と反応させられ、官能化されたナノ粒子を形成する。シリカナノ粒子で官能化合物を反応させる例示的な条件は、「実施例」の部分に記載されている。
【0066】
アミン官能基
特定の実施形態において、本発明のナノ粒子の一部分は、アミン基で官能化されており、これは典型的にはアミノシロキサン化学作用を用いて形成され得る。アミン基は、所望される場合には、保護することができる。保護アミン基と保護されていないアミン基との組み合わせが、所望される場合には、使用することができる。
【0067】
アミン基は個々のナノ粒子の好ましいシリカ表面に共有結合され、好ましくはSi−O−Si結合により結合する。ジルコニア、アルミナ、セリア、酸化スズ、又は二酸化チタンを含有する他のナノ粒子は同じように、Zr−O−Si、Al−O−Si、Ce−O−Si、Sn−O−Si、及びTi−O−Siのそれぞれの化学結合でアミノシロキサンに結合され得る。これらの化学結合はSi−O−Siのシロキサン結合ほど強くないが、これらの結合強さは本発明のコーティング用途には十分であり得る。
【0068】
本明細書では、アミン官能化ナノ粒子の被覆レベルは、コーティング組成物中のアミン基の量の100%がシリカ粒子の表面に共有結合されると想定して、コーティング組成物中のアミン基の濃度において報告される。好ましくは、アミン基は、コーティング組成物中で粒子表面上に、該表面上の官能基の合計モルの少なくとも3モル%に相当する量で存在する。
【0069】
より好ましくは、アミン基は、コーティング組成物中で粒子表面上に、この表面上の官能基の合計モルの少なくとも5モル%、更に好ましくは少なくとも10モル%、更により好ましくは少なくとも25モル%に相当する量で存在する。アミン基のモル当量が大きいほど、より多くの粒子間結合に寄与することができ、これにより、より高密度の粒子ネットワークを有するコーティングを形成することができる。特定の状況では、アミン基の過剰(即ち、100%超)が望ましいものであり得る。しかしながら、典型的には、アミン基の量は、コーティング組成物中の粒子表面上に、この粒子表面上の官能基の合計モルの150モル%以下に相当する量で存在する。アミンアルコキシシランの多官能性のため、コーティング組成物が100モル%を超えるアミン基を含むとき、単層よりも多くのアミノシロキサンが粒子表面に形成される。過剰な加水分解されたアミンアルコキシシランは、存在する場合、基材の表面上のプライマーとしても機能し得る。
【0070】
アミン基によるナノ粒子官能化は、従来技術を用いて達成することができる。シリカナノ粒子に関しては、しかしながら、アミンアルコキシシランを反応させてシリカナノ粒子の表面上にアミノ官能基を形成することは、塩基条件を用いて、有利に(例えば、ゲル化を生じずに)達成できることが発見された。好ましくは、これは、少なくともpH 10.5にて、更により好ましくは少なくともpH 11.0にて、更に好ましくは少なくともpH 11.5にて、更により好ましくは少なくともpH 12.0にて、更により好ましくは少なくともpH 12.5にて達成される。典型的な上方pHは、14.0である。典型的な方法では、シリカナノ粒子の水分散体のpHは、負に帯電したシリカ粒子を生じさせるために最初にこのpHに調整される。次に、アミンアルコキシシランは、負に帯電したシリカナノ粒子と組み合わせられ、アミンアルコキシシランのアルコキシシリル末端が負に帯電したシリカ表面と優先的に反応するのに有効な時間にわたって反応されられる。このようなpHは、アミンアルコキシシランのアルコキシシリル末端とシリカナノ粒子との間の反応を引き起こすのに有効な時間にわたって、維持される。典型的には、これは、少なくとも2時間、好ましくは少なくとも8時間、より好ましくは少なくとも12時間である。反応時間を短縮するために、室温よりも高い温度(例えば、60℃〜80℃)を使用することができる。所望のpH及び反応の時間は、官能化を改良し、組成物の安定性を改良するものである(例えば、粒子の沈殿及び/又は凝集の低下)。所望のレベルまで(好ましくは完全に)官能化反応が行われた後、コーティング溶液のpHは所望のpH(例えば、5〜8の範囲)にすることができる。
【0071】
官能基はナノ粒子への結合を可能にする様々な化学基を含む。このような基は典型的には、式A−L−F2により表される官能化合物で提供される。官能基F1は、アミン基を含む。ここでは、基Aはナノ粒子表面結合基であり、Lは結合又は様々な有機リンカーのうちのいずれでもあり得る。有機リンカーLは、直鎖若しくは分枝アルキレン、アリーレン、又はアルキレンとアリーレン基との組み合わせであることができ、所望によりヘテロ原子を含む。
【0072】
代表的なアミン官能化合物としては次のものが挙げられる。
【0073】
【化2】
【0074】
種々の方法が、ナノ粒子の表面を改質するために利用可能であり、それらには、例えば、表面改質剤のナノ粒子への添加(例えば、粉末又はコロイド状分散物の形態)及び表面改質剤をナノ粒子と反応するのを可能にすることが挙げられる。アミン官能化合物A−L−F2について、表面結合基Aは、典型的にはシラノール、アルコキシシラン、又はクロロシランであり、一官能性、二官能性、又は三官能性であり得る。例えば、シリカナノ粒子の表面のシラノール基が、官能化合物の少なくとも1つのシラノール基、アルコキシシラン基、又はクロロシラン基と反応させられ、官能化されたナノ粒子を形成する。シリカナノ粒子で官能化合物を反応させる例示的な条件は、「実施例」の部分に記載されている。本発明で記述される表面結合基は、シラノール又はアルコキシシランに限定されなくてもよい。ナノ粒子表面に対するイオン結合又は水素結合及び他の種類の共有結合もまた包含され得る。
【0075】
アミン基は、所望される場合には、保護することができる。典型的には、アミン基は、アミンと反応(即ち、保護)してこれを窒素原子に結合した水素原子がない形態に転化する好適な試薬との反応により保護形態に転化され得る。後続の脱保護は、元のアミン基を再生する。アミン基の保護及び対応する保護アミン基の脱保護のための方法は広く知られ、例えば、P.J.Kocienskiにより「Protecting Groups」、3rd ed.,Stuttgart:Thieme,2004に、及びT.W.Greene及びP.G.M.Wutsにより「Protective Groups in Organic Synthesis」、2nd ed.,New York:Wiley−Interscience,1991に説明されている。好適な保護基としては、CHC(O)−、CFC(O)−、(CHSi−、(CHCH−O−C(O)−、CH−O−C(O)−C(O)−、−C(O)OH、−C(O)O、アルキル−NH−C(O)−が挙げられ、式中、「−」は窒素に対する結合を表す。
【0076】
オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト基
特定の好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子の一部分は、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、及びメルカプト基からなる群から選択されるもののうちの少なくとも1つで官能化され、典型的には、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプトシロキサンの化学的性質を用いて形成され得る。
【0077】
オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト基は、個々のナノ粒子に、好ましくはSi−O−Si結合により共有結合される。ジルコニア、アルミナ、セリア、酸化スズ、又は二酸化チタンを含有する他のナノ粒子は同じように、Zr−O−Si、Al−O−Si、Ce−O−Si、Sn−O−Si、及びTi−O−Siの化学結合で、それぞれ、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプトシロキサンに結合され得る。これらの化学結合はSi−O−Siのシロキサン結合ほど強くないが、これらの結合強さは本発明のコーティング用途には十分であり得る。
【0078】
本明細書では、コーティング組成物中のオレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト基の量の100%がシリカ粒子の表面に共有結合されると想定して、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト官能化ナノ粒子の被覆レベルは、コーティング組成物中の不飽和アルケン、アルキン、アクリル(メタ)基の濃度で報告される。好ましくは、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト基は、コーティング組成物中の粒子表面上に、前記表面上の官能基の合計モルの少なくとも3モル%に相当する量で存在する。
【0079】
より好ましくは、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト基は、コーティング組成物中の粒子表面上に、前記表面上の官能基の合計モルの少なくとも5モル%、更により好ましくは少なくとも10モル%、及び更により好ましくは少なくとも25モル%に相当する量で存在する。オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト基のモル当量が大きいほど、より多くの粒子間結合に寄与することができ、これにより、より高密度の粒子ネットワークを有するコーティングを形成することができる。特定の条件下では、過剰なオレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト基(即ち、100%を超える)が望ましくあり得るが、典型的には、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト基の量は、コーティング組成物中で粒子表面上に前記粒子表面上の官能基の合計モルの150モル%以下に相当する量で存在する。オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプロアルキルシランの多官能性のため、コーティング組成物が100モル%を超えるオレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト基を含むとき、単層よりも多くのオレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプトシロキサンが粒子表面に形成される。過剰の加水分解されたオレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプトアルコキシシランは、存在する場合、基材の表面上のプライマーとしても機能し得る。
【0080】
オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト基によるナノ粒子官能化は、従来技術を用いて達成することができる。シリカナノ粒子に関しては、しかしながら、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプロアルキルシランを反応させてシリカナノ粒子の表面上にアミノ官能基を形成することは、塩基条件を用いて、有利に(例えば、ゲル化を生じずに)達成できることが発見された。好ましくは、これは、少なくともpH 10.5にて、更により好ましくは少なくともpH 11.0にて、更により好ましくは少なくともpH 11.5にて、更により好ましくは少なくともpH 12.0にて、更により好ましくは少なくともpH 12.5にて達成される。典型的な上方pHは、14.0である。典型的な方法では、シリカナノ粒子の水分散体のpHは、負に帯電したシリカ粒子を生じさせるために最初にこのpHに調整される。次に、アルケン、アルキン、アクリル(メタ)アルコキシシランは、負に帯電したシリカナノ粒子と組み合わせられ、アルケン、アルキン、アクリル(メタ)アルコキシシランのアルコキシシリル末端が負に帯電したシリカ表面と優先的に反応するのに有効な時間にわたって反応されられる。このようなpHは、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプトアルコキシシランのアルコキシシリル末端とシリカナノ粒子との間の反応を引き起こすのに有効な時間にわたって、維持される。典型的には、これは、少なくとも2時間、好ましくは少なくとも8時間、より好ましくは少なくとも12時間である。反応時間を短縮するために、室温よりも高い温度(例えば、60℃〜80℃)を使用することができる。所望のpH及び反応の時間は、官能化を改良し、組成物の安定性を改良するものである(例えば、粒子の沈殿及び/又は凝集の低下)。所望のレベルまで(好ましくは完全に)官能化反応が行われた後、コーティング溶液のpHは所望のpH(例えば、5〜8の範囲)にすることができる。
【0081】
官能基はナノ粒子への結合を可能にする様々な化学基を含む。このような基は典型的には、式A−L−F3により表される官能化合物で提供される。官能基F3は、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト基を含む。この表示では、基Aはナノ粒子表面結合基であり、Lは結合又は様々な有機リンカーのうちのいずれでもあり得る。有機リンカーLは、直鎖若しくは分枝アルキレン、アリーレン、又はアルキレンとアリーレン基との組み合わせであることができ、所望によりヘテロ原子を含む。
【0082】
代表的なアルケン、アルキン、アクリル(メタ)官能化合物が、以下にこの順序で示される。
【0083】
【化3】
【0084】
種々の方法が、ナノ粒子の表面を改質するために利用可能であり、それらには、例えば、表面改質剤のナノ粒子への添加(例えば、粉末又はコロイド状分散物の形態)及び表面改質剤をナノ粒子と反応するのを可能にすることが挙げられる。アルケン、アルキン、アクリル(メタ)官能化合物A−L−F3について、表面結合基Aは典型的にはシラノール、アルコキシシラン、又はクロロシランであり、一官能性、二官能性、又は三官能性であり得る。例えば、シリカナノ粒子の表面のシラノール基が、官能化合物の少なくとも1つのシラノール基、アルコキシシラン基、又はクロロシラン基と反応させられ、官能化されたナノ粒子を形成する。シリカナノ粒子で官能化合物を反応させる例示的な条件は、「実施例」の部分に記載されている。
【0085】
任意の親水基
必要に応じて、本発明の官能化ナノ粒子の親水性を高めるために、追加の親水(例えば、水分散性、水溶性、及び/又は帯電している)基を個々の粒子に共有結合させることができる。親水基(例えば、水分散性基、水溶性基、及び/又は帯電基)は、ナノ粒子表面に親水特性を提供することができる一価の基であり、これにより、水性環境におけるナノ粒子の過剰な凝集及び/又は沈殿を低減、好ましくは防止する(しかしながら、ナノ粒子が水性環境にある場合、凝集体の平均サイズが好ましくは80nm以下である限り、少量の凝集は許容することができる)。
【0086】
本明細書で使用する時、「親水性化合物」(例えば、「水分散性化合物」、「水溶性」及び/又は帯電)は、ナノ粒子の表面と反応して親水基(例えば、水分散性基)で改質することができる化合物を表す。これは式A−L−WDにより表すことができ、式中、Aは表面結合基であり、これは本明細書に記載されている他の表面結合基と同一であっても異なっていてもよく、WDは親水基(例えば、水分散性基、水溶性基及び/又は帯電基)を表し、Lは有機リンカー又は結合を表す。有機リンカーLは、直鎖若しくは分枝アルキレン、アリーレン、又はアルキレンとアリーレン基との組み合わせであることができ、所望によりヘテロ原子を含む。
【0087】
親水基は水様基(water-like groups)である。これらは典型的には、例えば、アニオン性基、カチオン性基、水に分散されるとアニオン性基又はカチオン性基を形成することができる基(例えば、塩又は酸)、あるいはこれらの混合物を含む。アニオン又はアニオン形成基は、表面のアニオン性イオン化に寄与する任意の好適な基であることができる。例えば、好適な基としては次のものが挙げられる:カルボキシレート基、並びに、結合したエチレンジアミン三酢酸基及び結合したクエン酸により例示される、複数のカルボキシレート基を持つ構造単位;硫酸半エステル基及び複数の硫酸半エステル基を持つ構造単位;スルホン酸基及び複数のスルホン酸基を持つ構造単位;リン酸モノエステル基及び/又はリン酸ジエステル基並びに複数のリン酸モノエステル基及び/又はリン酸ジエステル基を持つ構造単位;ホスホン酸基及び複数のホスホン酸基を持つ構造単位;並びに同様の基並びにこれらの酸。
【0088】
カチオン又はカチオン形成基は、表面のカチオン性イオン化に寄与する任意の好適な基であることができる。例えば、好適な基としては、四級アンモニウム基、四級ホスホニウム基、三級スルホニウム基、これらの組み合わせ及びこれらを複数持つ構造単位が挙げられる。
【0089】
他の好適な親水基としては、ヒドロキシル基、ポリエチレンオキシド基、これらの組み合わせ、並びにこれらを複数持つ構造単位が挙げられる。
【0090】
親水基は中性であってもよいが、多くのものは帯電している。「帯電基」は、官能基当たり1個以上のイオン化可能基を有する基を指す。
【0091】
特定の実施形態では、好ましい親水基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0092】
ある実施形態では、ナノ粒子の表面上での水分散性基の結合は、重要なことに、これらの分散が安定性のために界面活性剤などの外部の乳化剤を必要としないことを意味する。しかしながら、所望される場合には、アニオン性及びカチオン性水分散性化合物も、外部の乳化剤として機能してナノ粒子の分散を助ける官能化ナノ粒子を含む組成物中で使用することができる。
【0093】
親水基は、式A−L−WDの親水性化合物を用いて提供することができる。例えば、エポキシ官能化合物においての親水性化合物の好適な表面結合基Aが本明細書に示されている。実施例は、シラノール、アルコキシシラン、又はクロロシランを含む。
【0094】
一部の好ましい親水性化合物としては次のものが挙げられる:
【0095】
【化4】
【0096】
並びに、他の既知の化合物。
【0097】
非常に多様な他の親水性化合物が、外部の乳化剤として、又は水分散性基でナノ粒子を改質するために使用できる化合物として、本発明に有用であることを当業者であれば、理解するであろう。
【0098】
好ましくは、本発明の組成物の曇り防止性、反射防止性及び洗浄可能性を妨げないで所望のレベルの親水性をもたらすために十分な量の親水性化合物がナノ粒子と反応させられる。
【0099】
本明細書では、親水基によるナノ粒子の被覆レベルは、コーティング組成物中の親水基の量の100%が粒子の表面に共有結合されると想定して、コーティング組成物中の親水基の濃度において報告される。使用されるのであれば、親水基は好ましくは、コーティング組成物中のナノ粒子表面上に、この表面上の官能基の合計モルの少なくとも1モル%、より好ましくは少なくとも10モル%に相当する量で存在する。使用されるのであれば、親水性基は好ましくは、コーティング組成物中のナノ粒子表面上に、この粒子表面上の官能基の合計モルの60モル%以下、より好ましくは50モル%以下、更に好ましくは20モル%以下、更により好ましくは10モル%以下に相当する量で存在する。
【0100】
好ましくは、親水性の所望されるレベルは、貯蔵安定的な分散液を調製するために外部の乳化剤が必要でない程度である。
【0101】
任意の添加剤
ある実施形態では、本発明の組成物は1つ以上の界面活性剤を含む。本明細書で使用するとき、用語「界面活性剤」は、コーティング組成物の表面張力を低下させ、かつ該コーティング組成物でコーティングされた基材又は物品に望ましい洗浄容易、反射防止性、及び改善された耐久性特性を付与するコーティングをもたらす分子を示す。本発明に記載される界面活性剤は、コーティングの均一性のためのレベリング剤としても使用されてもよい。本発明の有用な界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、又は両性の界面活性剤を含む。例としては、次のものが挙げられる。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
使用されるのであれば、本発明のコーティング組成物中の界面活性剤の濃度は、好ましくはコーティング組成物の少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.04重量%、更により好ましくは少なくとも0.1重量%である。使用されるのであれば、界面活性剤の濃度は、好ましくはコーティング組成物の10重量%以下、より好ましくはコーティング組成物の5重量%以下である。
【0105】
他の任意であるが好ましい添加剤は、抗菌剤である。例としては、以下のものが挙げられる(水中溶解度についての情報と共に)。
【0106】
【表3】
【0107】
使用されるのであれば、本発明のコーティング組成物中の抗菌剤の濃度は、好ましくはコーティング組成物の総重量の少なくとも0.0005重量パーセント(重量%)、より好ましくは少なくとも0.001重量%、更により好ましくは少なくとも0.002重量%である。使用されるのであれば、抗菌剤の濃度は、コーティング組成物の総重量の好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下である。
【0108】
通常、本発明のコーティング組成物は液体キャリア(即ち、流体媒質)として水を含むが、しかし、水に加えて有機溶媒を使用し得る。本発明の好適な有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコール及びそのモノメチルエーテル、エチレングリコール及びそのモノメチルエーテル、アセトン及びメチルエチルケトンなどのケトン、並びにテトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルアセトアミド、ホルムアミド又はそれらの組み合わせなどのエーテル、が挙げられる。存在する場合には、典型的には、有機溶媒は、アルコール又はアルコールの組み合わせである。コーティング組成物中の有機溶媒の量は、液体媒質の総重量を基準として、典型的には30重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更により好ましくは2重量%以下、更により好ましくは1重量%以下である。最も好ましい液体媒質は、100%水である。
【0109】
物品
コーティングは、(例えば、無機及び/又は有機材料の)基材に適用されて乾燥させると、除去可能又は恒久的である。本発明のコーティング組成物を塗布し得る基材は、好ましくは可視光に透明又は半透明である。これらは、有機、無機材料又はこれらの組み合わせを含む。代表的な基材は、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート(PC)、アリルジグリコールカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエテルスルホン、酢酸酪酸セルロース、ガラス、ポリオレフィン、PVC及びこれらに類するものから作製され、それらのブレンド及びラミネートを含む。
【0110】
基材は典型的には、フィルム、シート、パネル又は物質の枠の形状であり、ソーラーパネル、目の保護具、フェイスマスク、フェイスシールド、外科手術用マスク、及び他の(特に目用の)様々な人身保護具、並びに鏡、自動車の窓及びフロントガラスなどの物品の一部である。所望される場合には、コーティングは、物品の一部のみを覆い得、例えば、フェイスシールドの目に直接近接する部分のみがコーティングされ得る。基材は平板であっても、湾曲していても、所定の形状に形成されてもよい。コーティングされる物品は、吹き込み成形、流延成形、押出成形又は射出成形などによる任意の方法で製造され得る。
【0111】
本組成物は、バー、ロール、カーテン、輪転グラビア、スプレー又はディップコーティング技術などの従来技術を用いて、(例えば、注入可能形態又は噴霧可能形態の)液体系コーティング組成物の形態などの流体コーティング組成物として基材上にコーティングすることができる。この用途での使用に好適な噴霧器及びノズルシステムは当業者に既知であり、例えば、液圧式、気圧式、回転及び超音波ノズル泳ぎ関連する噴霧器システムが挙げられる。液圧式噴霧器の例は、US Global Resources(Seattle,WA)から入手可能なMSO噴霧器である。好適な基圧式噴霧器の例としては、DeVilbiss Corporation(Glendale Hts.,IL)から入手可能なEGA Manual Touch−Up Gun又はJacto(Tualaltin,OR)から入手可能なAJ−401−LH噴霧器が挙げられる。回転噴霧器は、高速回転ディスク、カップ又は車輪を使用して、液体を噴霧して中空錐体スプレーにする。回転速度が液滴サイズを制御する。回転噴霧器の例としては、Ledebuhr Industries(Williamston,MI)から入手可能なPROPTEC及びPENGUIN噴霧器が挙げられる。超音波噴霧器は、圧電結晶の高(20kHz〜50kHz)周波数振動を用いて、狭い液滴サイズ分布及び低速噴霧を生じさせる。超音波噴霧器ノズルを有する好適な噴霧器の例としては、Sonics and Materials,Inc.(Newtown,CT)から入手可能なモデルVC5020AT及びVC5040ATが挙げられる。
【0112】
別の方法としては、本発明の組成物は、組成物をパッド、布などに含ませ若しくは基材表面の表面に適用し、パッド、布、ペーパータオル、又は他の適用装置/材で基材の表面を単に拭くことによって基材にコーティングすることができる。好適なアプリケータ基材は、例えば、スポンジ状、フォーム状、織布、不織布、又はニット物質であり得る。用語「不織布ウェブ」又は「不織布」は、不規則な様式でインターレイされた個々の繊維の構造を有するウェブ又は布を言及する。対照的に、ニット又は織布は規則的な様式でインターレイされた繊維を有する。アプリケータ基材(例えば、アプリケータパッド又はワイプ)の原料は、合成又は天然繊維、長繊維、若しくは糸を含み得る。好適な原料としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリウレタン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリ尿素、ポリアクリロニトリル、セルロース、綿、レーヨン、麻、麻布、並びにこれらの共重合体及びポリマーブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。所望であれば、アプリケータ基材には、様々な形状の様々な原料の組み合わせが使用され得る。最も典型的な基材は、コーティング組成物を含んだ紙ワイプ(ワイプに染み込ませ又は浸透させた)である。
【0113】
本発明のコーティングは、基材の片面又は両面にコーティングすることができる。本発明のコーティングは、基材の片面にコーティングすることができ、基材の反対面はコーティングされなくてもよく又は広範囲の従来の組成物、特に従来の曇り防止組成物でコーティングされてもよい。好ましくは、コーティング面は、より湿度が高い方向を向くべきであり、例えば、フェイスシールドでは、曇り防止コーティングを有する側が着用者に向くべきである。
【0114】
コーティングされた表面は、(例えば、15分間かけて)室温で乾燥させてもよく、あるいは所望であれば、より速く乾燥させるために(例えば5分以内)高温で乾燥させてもよい。本発明のコーティング組成物にとって、乾燥条件は、例えば、乾燥したコーティングの耐久性、除去可能性及び恒久性に影響を及ぼすことができる。「乾燥した」コーティング(即ち、液体キャリア(即ち、液体媒質)が例えば、蒸発によりコーティング組成物から実質的に完全に除去されているもの)はまた典型的には、反応性官能基間(例えば、アミン基とエポキシ基)の反応の結果として硬化する。このような硬化は、乾燥プロセス中にコーティング組成物を加熱することにより、向上させることができる。例えば、乾燥条件は、少なくとも80℃の温度、又は少なくとも100℃の温度、又は少なくとも120℃の温度を含むことができる。コーティング組成物が適用される基材が典型的に乾燥温度を逝去する。一般に、プラスチック基材については、コーティングは120℃〜140℃の温度にて乾燥させることができる。より具体的には、PET基材については、コーティングは120℃〜135℃の温度にて乾燥させることができ、PMMA基材については最高でも80℃の温度に限って乾燥させることができる。
【0115】
更に、コーティングは、ガラス強化に典型的な温度及び時間にて(例えば、700〜750℃などの温度にて2〜5分にわたって)加熱することができ、これは強化プロセス後に透過電子顕微鏡(TEM)及びESCAが粒子の形状及び粒子上のコーティングの元素組成にいくらかの変化を示したとしても太陽電池コーティングに重要な特性(高光透過性、反射防止、汚れ防止及び抗摩擦)を破壊しない。しかしながら、言及される具体的な強化条件は粒子を焼結するようには見えない。強化は商業的なソーラーガラスに必要とされ得、それゆえにコーティング組成物は強化の前又は後に適用され得る。ナノ構造により生じる比較的低い屈折率は、反射防止特性を付与し、これは少なくとも一部の実施形態では、光透過性を2〜3%改善することができ、それゆえに光から電力への変換を2〜2.5%改善する。これらの高温強化条件下でさえ、得られるコーティングは、裸のシリカ粒子よりも高い電力変換を付与することができる。
【0116】
ナノ粒子上の官能基は、基材へのコーティングの接着に寄与することができる。例えば、エポキシ基及び/又はアミン基のなどの官能基は、表面の官能基と反応して、ナノ粒子と基材との間に共有結合を形成することができる。別の方法としては又は追加的に、基材とコーティングとの間の接着を改善するために、例えば、化学処理、機械的粗化、空気又は窒素コロナなどのコロナ処理、プラズマ、火炎又は化学放射線などによって基材を処理することができる。必要に応じて、任意の結合層を基材とコーティングとの間に適用して、層間接着を高めることもできる。
【0117】
本発明のコーティング組成物を含むことができる別の物品の例としては、光電池又は光電池の配列(一連の相互連結された光起電電池)と、送電増加のために並びに抗汚れ及びすすぎ落し洗浄のためにソーラーパネルの前側に配置されたコーティング組成物と、を備えるソーラーパネル(例えば、光電池モジュール)を挙げることができる。
【0118】
一般に、光起電力電池は、光を電気に変換するために用いられる半導体デバイスであり、太陽電池と呼ばれる場合もある。光に曝露されると、光起電力電池は、端子を超えて電圧を発生させ、結果として電子を流し、その大きさは電池の表面に形成される光起電ジャンクションに対して光が衝突する強度に比例する。典型的には、一連の太陽電池モジュールは、相互連結されて、単一の電気製造ユニットとして機能するソーラーアレイ(即ち、ソーラーパネル)を形成し、1つの装置に電力を供給するためか又は貯蔵用蓄電池を補充するために、電池とモジュールは、好適な電圧を発生するように相互連結される。
【0119】
光電池で用いられる半導体材料としては、結晶性若しくは多結晶性シリコン、又は薄膜シリコン(例えば、非晶質、半晶質シリコン)、並びに、ガリウムヒ素、ジセレン化銅インジウム、有機半導体、CIGSなどの非シリコン材料、並びにこれらに類するものが挙げられる。2種の光起電力電池、ウェファ及び薄膜が存在する。ウェファは、単一結晶又は多結晶インゴットから機械的に鋸引きする、又は鋳造することにより作製される半導体材料の薄いシートである。薄膜ベースの光電池は、スパッタリング法又は化学蒸着法等を用いて、典型的には基板又は基板(substrate or substrate)の上に堆積された、半導体材料の連続層である。
【0120】
ウェファ及び薄膜光起電力電池は、モジュールが1つ以上の支持体を必要とすることができるのに十分な程度脆性であることが多い。支持体は剛性、例えばガラスプレート剛性材料であってもよいか、又は可撓性材料、例えばポリイミド又はポリエチレンテレフタレート等の好適なポリマー材料の金属膜及び/又はシートであってもよい。支持体は、最上層であっても基材であってもよく、即ち、光電池と光源との間に配置されてもよく、光源からの光を通過させる。別の方法としては又は加えて、支持体は、光電池の後ろに配置される最下層であり得る。
【0121】
本発明のコーティング組成物は、ソーラーパネルの前面の上にコーティングされ得る。好ましいコーティング厚さは、反射防止コーティングについては100nm〜200nmの範囲である。
【0122】
代表的な実施形態
1.基材表面の改質方法において、該方法は、
(a)コーティング組成物を基材に適用することと、該コーティング組成物が、
(i)非球状ナノ粒子、
(ii)球状ナノ粒子、
(iii)任意に親水基、及び任意に界面活性剤、並びに
(iv)水と、存在する場合、液体媒質の総重量を基準として30重量%以下の有機溶媒と、を含む液体媒質、
を含み、前記非球状ナノ粒子の少なくとも一部分又は前記球状ナノ粒子の少なくとも一部分が、化学結合を介して前記非球状ナノ粒子又は前記球状ナノ粒子の表面に結合している官能基を含み、更に、前記官能基が、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル基、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト、又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の基を含む、コーティング組成物を基材に適用する工程、及び
(b)前記コーティング組成物を乾燥させて前記基材上に親水性コーティングを形成する工と、を含む。
【0123】
2.前記非球状ナノ粒子の全て又は前記球状ナノ粒子の全てが前記官能基を含む、請求項1に記載の方法。
【0124】
3.前記非球状ナノ粒子と前記球状ナノ粒子との重量比が、95:5〜5:95の範囲である、請求項1に記載の方法。
【0125】
4.前記非球状ナノ粒子と前記球状ナノ粒子との重量比が、80:20〜20:80の範囲である、請求項3に記載の方法。
【0126】
5.前記非球状ナノ粒子と前記球状ナノ粒子との重量比が、70:30〜30:70の範囲である、請求項4に記載の方法。
【0127】
6.前記非球状ナノ粒子の少なくとも一部が、シリカナノ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【0128】
7.前記球状ナノ粒子の少なくとも一部が、シリカナノ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【0129】
8.前記基材がガラス又はセラミックである、請求項1に記載の方法。
【0130】
9.前記方法が、前記コーティングされた基材を200℃〜750℃の範囲の温度で焼結することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【0131】
10.前記非球状ナノ粒子が、1〜200nmの平均粒径、及び2〜100のアスペクト比を有する、請求項1に記載の方法。
【0132】
11.前記球状ナノ粒子が、1〜120nmの平均粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【0133】
12.前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量を基準として、少なくとも0.05重量%の非球状ナノ粒子でかつ40重量%以下の非球状ナノ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【0134】
13.前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量を基準として、少なくとも0.05重量%の球状ナノ粒子でかつ40重量%以下の球状ナノ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【0135】
14.前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量を基準として、0.01重量%〜5重量%の界面活性剤を含む、請求項1に記載の方法。
【0136】
15.前記非球状ナノ粒子が細長いナノ粒子である、請求項1に記載の方法。
【0137】
16.前記球状ナノ粒子が前記官能基を含む、請求項1に記載の方法。
【0138】
17.請求項1に記載の方法を用いて改質された基材表面を含む物品。
【0139】
18.コーティング組成物であって、
非球状ナノ粒子、
球状ナノ粒子、
任意に親水基、及び任意に界面活性剤、
並びに水と、存在する場合、液体媒質の総重量を基準として30重量%以下の有機溶媒と、を含む液体媒質、を含み、
前記非球状ナノ粒子の少なくとも一部分又は前記球状ナノ粒子の少なくとも一部分が、化学結合を介してそれらの表面に結合している官能基を含み、該官能基が、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル基、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト基、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の基を含む、コーティング組成物。
【0140】
19.前記非球状ナノ粒子の全て又は前記球状ナノ粒子の全てが前記官能基を含む、請求項18に記載の組成物。
【0141】
20.前記非球状ナノ粒子と前記球状ナノ粒子との重量比が、95:5〜5:95の範囲である、請求項18に記載の組成物。
【0142】
21.重前記非球状ナノ粒子と前記球状ナノ粒子との重量比が、70:30〜30:70の範囲である、請求項20に記載の組成物。
【0143】
22.前記非球状ナノ粒子の少なくとも一部がシリカナノ粒子を含む、請求項18に記載の組成物。
【0144】
23.前記球状ナノ粒子の少なくとも一部がシリカナノ粒子を含む、請求項18に記載の組成物。
【0145】
24.前記基材がガラス又はセラミックである、請求項18に記載の組成物。
【0146】
25.前記非球状ナノ粒子が、1〜200nmの平均粒径、及び2〜100のアスペクト比を有する、請求項18に記載の組成物。
【0147】
26.前記球状ナノ粒子が、1〜120nmの平均粒径を有する、請求項18に記載の組成物。
【0148】
27.前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量を基準として、少なくとも0.05重量%の非球状ナノ粒子でかつ40重量%以下の非球状ナノ粒子を含む、請求項18に記載の組成物。
【0149】
28.前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量を基準として、少なくとも0.05重量%の球状ナノ粒子でかつ40重量%以下の球状ナノ粒子を含む、請求項18に記載の組成物。
【0150】
29.前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量を基準として、0.01重量%〜5重量%の界面活性剤を含む、請求項18に記載の組成物。
【0151】
30.乾燥したコーティングが、前記基材に反射防止性、洗浄容易性、及び/又は耐久性特性を少なくとも24時間にわたって提供する、請求項18に記載の組成物。
【0152】
31.前記非球状ナノ粒子が細長いナノ粒子である、請求項18に記載の組成物。
【0153】
32.前記球状ナノ粒子が前記官能基を含む、請求項18に記載の組成物。
【0154】
33.請求項18に記載のコーティング組成物を用いて改質された基材表面を含む物品。
【0155】
34.ソーラーパネルである、請求項33に記載の物品。
【0156】
35.前記基材がガラスである、請求項33に記載の物品。
【0157】
36.前記ガラスが強化されている、請求項35に記載の物品。
【実施例】
【0158】
別段に示されない限り、化学試薬及び溶媒はAldrich Chemical Co.(Milwaukee,WI)から入手したか又は入手可能なものである。特に指示がない限り、実施例に記載される部、百分率又は比率はすべて、重量による。特に指定のない限り、実施例に定められている全ての温度は摂氏温度である。
【0159】
シリカナノ粒子分散体1115(4nm)、2326(5nm)、8699(2〜4nm)は、NALCO Company(Naperville,IL)から入手した。
【0160】
非球状シリカナノ粒子分散体IPA−ST−UP、ST−OUP、ST−UP、及びST−PS−Sは、NissanChemicalIndustries,LTD.から入手した。
【0161】
3−(グリシドオキシプロピル)−トリメトキシシラン(KH560、97%)、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(Z−6020、85%)、及びγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(Z−6030、98%)は、Zhejiang Chem−Tech Group Co.,Ltd.(Hangzhou,Zhejiang Province,China)又はDow Corning Company(Midland,MI)から入手した。
【0162】
ソーラーガラスはCSG HoldingCo.Ltd.から入手した。
【0163】
反射防止試験
全光線透過率測定は、HAZE−GARD DUAL曇価及び透過率計(BYK−Gardner(Columbia,Maryland,USA))で行った。透過率%は、ASTM D1003に従って太陽昼間光波長範囲(CIE D65標準光源)の平均として計器から直接読み取った。
【0164】
400〜1200nmの光透過スペクトルはLambda 900(PerkinElmer)上で行われた。
【0165】
耐久性試験
機械的耐久性は、濡れた状態及び乾燥した状態で擦ることにより評価された。乾燥した状態の擦りは、ペーパータオルでコーティング表面を(手により強い圧力で)100回摩擦することにより実施された。濡れた状態の擦りは、Sheen湿式磨耗研磨試験機上で、ふきんによる1kgの重量圧力及び1.0重量%洗剤水溶液(Shanghai Baimao Companyより市販のアニオン性及びノニオン性界面活性剤を有する食器用洗剤)を用いて、1000サイクル実施された。(表2を参照のこと)。
【0166】
洗浄容易性試験
この試験は、Gorecki Manufacturing Inc.(Milaca,MN)から入手可能なGorecki Standard Carpet Soilの中にコーティング済み基材を浸漬し、30秒にわたって振盪することにより行われた。試料を汚れ容器から取り出し、水道水で毎分750ミリメートル(mL/分)の速度にて1分にわたってすすいだ。試料をこれらの外観に基づいて評価した。「良好」という評価は試料は完全にきれいである場合に与えられ、「不良」という評価は試料がきれいではない場合に与えられた(表3を参照のこと)。
【0167】
硬度試験
硬度は、被膜硬度コーティング(film hardness coating)のための試験方法(ASTM D 3363)に従って、単純に人の爪及び鉛筆によって試験された。コーティングを爪で引っ掻いたときに引っ掻き跡がない場合、コーティングを「合格」と評価し、その他は「不合格」と評価する。(表4を参照のこと)
IEC 61215の85℃/85%RH試験
コーティングされたガラス試料を1250時間後に85%±5% RH及び85℃下の気候室に入れ、光透過率を追跡して加湿加熱経年耐久性の影響を判定した。(表5を参照のこと)
表面改質ナノ粒子(SMN)1(エポキシ官能化−5nm球状ナノ粒子):
Nalco 2326シリカナノ粒子(20g、15重量%)及び脱イオン水(40g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。濃縮されたHPOを分散体に滴下し、pH値を1.5〜2.0に調節した。0.85gの3−(グリシドオキシプロピル)−トリメトキシシラン(KH560)をこの溶液に徐々に加えた。次に、この溶液を60℃に加熱し、10時間にわたり反応を維持した。コーティング溶液の濃度は約5重量%であり、例えば表1に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0168】
表面改質ナノ粒子(SMN)2(エポキシ官能化−4nm球状ナノ粒子):
NALCO 2326シリカナノ粒子(20グラム(g)、15重量%)及び脱イオン水(40g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。濃縮されたHSOを分散体に滴下し、pH値を1.5〜2.0に調節した。0.85gの3−(グリシドオキシプロピル)−トリメトキシシラン(KH560)をこの溶液に徐々に加えた。次に、この溶液を60℃に加熱し、10時間にわたり反応を維持した。コーティング溶液の濃度は約5重量%であり、例えば表1に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0169】
表面改質ナノ粒子(SMN)3(エポキシ官能化−4nm球状ナノ粒子):
NALCO 1115シリカナノ粒子(20g、15重量%)及び脱イオン水(40g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。濃縮されたHSOを分散体に滴下し、pH値を1.5〜2.0に調節した。1.06gの3−(グリシドオキシプロピル)−トリメトキシシラン(KH560)をこの溶液に徐々に加えた。次に、この溶液を60℃に加熱し、10時間にわたり反応を維持した。コーティング溶液の濃度は約5重量%であり、例えば表1に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0170】
表面改質ナノ粒子(SMN)4(エポキシ官能化−40〜100nm非球状ナノ粒子):
Nissan SNOWTEX−UP非球状ナノ粒子(20g、15重量%)及び脱イオン水(40g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。濃縮されたHPOを分散体に滴下し、pH値を1.5〜2.0に調節した。0.21gの3−(グリシドオキシプロピル)−トリメトキシシラン(KH560)をこの溶液に徐々に加えた。次に、この溶液を60℃に加熱し、10時間にわたり反応を維持した。コーティング溶液の濃度は約5重量%であり、例えば表1に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0171】
表面改質ナノ粒子(SMN)5(エポキシ官能化−2〜4nm球状ナノ粒子):
NALCO 8699シリカナノ粒子(20g、15重量%)及び脱イオン水(40g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。濃縮されたHPOを分散体に滴下し、pH値を1.5〜2.0に調節した。1.06gの3−(グリシドオキシプロピル)−トリメトキシシラン(KH560)をこの溶液に徐々に加えた。次に、この溶液を60℃に加熱し、10時間にわたり反応を維持した。コーティング溶液の濃度は約5重量%であり、例えば表1に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0172】
表面改質ナノ粒子(SMN)6(アミン官能化−40〜100nm非球状ナノ粒子): Nissan SNOWTEX−UP(20g、20重量%)非球状ナノ粒子及び脱イオン水(60g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。この混合物のpHは、0.1Nの水酸化ナトリウムを用いて約12に調整された。エタノール(5g)中のアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(Z−6020)(0.06)gを1〜1.5時間にわたって撹拌しながら滴加し、得られた混合物を20℃にて更に14時間にわたって連続撹拌した。得られた溶液(5重量%)を例えば、表1に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0173】
表面改質ナノ粒子(SMN)7(アミン官能化−2〜4nm球状ナノ粒子):
NALCO 8699シリカナノ粒子(20g、15重量%)及び脱イオン水(40g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。この混合物のpHは、0.1Nの水酸化ナトリウムを用いて約12に調整された。エタノール(5g)中のアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(Z−6020)0.20gを1〜1.5時間にわたって撹拌しながら滴加し、得られた混合物を20℃にて更に14時間にわたって連続撹拌した。得られた溶液(5重量%)を例えば、表1に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0174】
表面改質ナノ粒子(SMN)8(アクリレート官能化−40〜100nm非球状ナノ粒子):
Nissan SNOWTEX−UP非球状ナノ粒子(20g、15重量%)及び脱イオン水(40g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。濃縮されたHPOを分散体に滴下し、pH値を1.5〜2.0に調節した。0.5gのγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(Z6030)をこの溶液に徐々に加えた。次に、この溶液を60℃に加熱し、10時間にわたり反応を維持した。コーティング溶液の濃度は約5重量%であり、例えば表1に記載のコーティング試料の調製で使用された。
【0175】
裸のナノ粒子(BN)1(4nmシリカ球状ナノ粒子)
NALCO 1115シリカナノ粒子(20g、15重量%)及び脱イオン水(80g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。濃縮されたHSOを分散体に滴下し、pH値を1.5〜2.0に調節した。コーティング溶液の濃度は約3重量%であり、例えば表1に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0176】
裸のナノ粒子(BN)2(5nmシリカ球状ナノ粒子)
NALCO 2326シリカナノ粒子(20g、15重量%)及び脱イオン水(80g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。濃縮されたHPOを分散体に滴下し、pH値を1.5〜2.0に調節した。コーティング溶液の濃度は約3重量%であり、例えば表1に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0177】
裸のナノ粒子(BN)3(2〜4nmシリカ球状ナノ粒子)
NALCO 8699シリカナノ粒子(20g、15重量%)及び脱イオン水(80g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。濃縮されたHPOを分散体に滴下し、pH値を1.5〜2.0に調節した。コーティング溶液の濃度は約3重量%であり、例えば表1に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0178】
裸のナノ粒子(BN)4(IPA/H2O中の40〜100nm非球状ナノ粒子)
Nissan IPA−ST−UP非球状ナノ粒子(20g、15重量%)及び脱イオン水(80g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。コーティング溶液の濃度は約3重量%であり、例えば表1に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0179】
裸のナノ粒子(BN)5(酸性の40〜100nm非球状ナノ粒子)
Nissan SNOWTEX−UP非球状ナノ粒子(20g、15重量%)及び脱イオン水(80g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。コーティング溶液の濃度は約3重量%であり、例えば表1に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0180】
裸のナノ粒子(BN)6(アルカリ性の40〜100nm非球状ナノ粒子)
Nissan SNOWTEX−UP(30g、20重量%)非球状ナノ粒子及び脱イオン水(170g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。コーティング溶液の濃度は約3重量%であり、例えば表1に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0181】
【表4】
【0182】
(実施例1〜37)
表1に示されるように、湿潤性を改善するために適当量のSMN及びBN溶液を水及び界面活性剤と混合することによりコーティング溶液(3重量%)を調製した。
【0183】
実施例1は、9.0gのSMN 1を35.0gのBN4に徐々に添加することにより調製された。次いで、6.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0184】
実施例2は、9.0gのSMN 2を35.0gのBN4に徐々に添加することにより調製された。次いで、6.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0185】
実施例3は、1.5gのSMN 3を45.0gのBN4に徐々に添加することにより調製された。次いで、3.5gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0186】
実施例4は、2.5gのBN1を28.5gのSMN4に徐々に添加することにより調製された。次いで、19.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0187】
実施例5は、2.5gのBN3を28.5gのSMN8に徐々に添加することにより調製された。次いで、19.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0188】
実施例6は、2.5gのBN3を47.5gのBN5に徐々に添加することにより調製された。次いで、TRITON BG10の10%溶液0.75gをこのコーティング溶液に添加した。
【0189】
実施例7は、2.5gのBN3を28.5gのSMN 4に徐々に添加することにより調製された。次いで、19.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0190】
実施例8は、15.0gのBN3を21.0gのSMN 6に徐々に添加することにより調製された。次いで、14.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0191】
実施例9は、20.0gのBN3を18.0gのSMN 6に徐々に添加することにより調製された。次いで、12.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0192】
実施例10は、6.0gのSMN5を40.0gのBN5に徐々に添加することにより調製された。次いで、4.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0193】
実施例11は、12.0gのSMN5を30.0gのBN5に徐々に添加することにより調製された。次いで、8.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0194】
実施例12は、15.0gのSMN5を25.0gのBN5に徐々に添加することにより調製された。次いで、10.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0195】
実施例13は、10.0gのBN3を24.0gのSMN6に徐々に添加することにより調製された。次いで、16.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0196】
実施例14は、20.0gのBN3を18.0gのSMN6に徐々に添加することにより調製された。次いで、12.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0197】
実施例15は、6.0gのSMN7を40.0gのBN6に徐々に添加することにより調製された。次いで、4.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0198】
実施例16は、12.0gのSMN7を30.0gのBN6に徐々に添加することにより調製された。次いで、8.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0199】
実施例17は、5.0gのBN3を27.0gのSMN8に徐々に添加することにより調製された。次いで、18.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0200】
実施例18は、15.0gのBN3を21.0gのSMN8に徐々に添加することにより調製された。次いで、14.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0201】
実施例19は、25.0gのBN3を15.0gのSMN8に徐々に添加することにより調製された。次いで、10.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0202】
実施例20は、15.0gのBN3を21.0gのSMN4に徐々に添加することにより調製された。次いで、14.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0203】
実施例21は、47.5gのBN3を1.5gのSMN4に徐々に添加することにより調製された。次いで、1.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0204】
実施例22は、2.5gのBN5を28.5gのSMN5に徐々に添加することにより調製された。次いで、19.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0205】
実施例23は、15.0gのBN5を21.0gのSMN5に徐々に添加することにより調製された。次いで、14.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0206】
実施例24は、35.0gのBN5を9.0gのSMN5に徐々に添加することにより調製された。次いで、6.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0207】
実施例25は、47.5gのBN5を1.5gのSMN5に徐々に添加することにより調製された。次いで、1.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0208】
実施例26は、2.5gのBN3を28.5gのSMN6に徐々に添加することにより調製された。次いで、19.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0209】
実施例27は、15.0gのBN3を21.0gのSMN6に徐々に添加することにより調製された。次いで、14.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0210】
実施例28は、35.0gのBN3を9.0gのSMN6に徐々に添加することにより調製された。次いで、6.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0211】
実施例29は、47.5gのBN3を1.5gのSMN6に徐々に添加することにより調製された。次いで、1.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0212】
実施例30は、47.5gのBN6を1.5gのSMN7に徐々に添加することにより調製された。次いで、1.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0213】
実施例31は、35.0gのBN6を9.0gのSMN7に徐々に添加することにより調製された。次いで、6.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0214】
実施例32は、15.0gのBN6を21.0gのSMN7に徐々に添加することにより調製された。次いで、14.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0215】
実施例33は、2.5gのBN6を28.5gのSMN7に徐々に添加することにより調製された。次いで、19.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0216】
実施例34は、47.5gのBN3を1.5gのSMN8に徐々に添加することにより調製された。次いで、1.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0217】
実施例35は、35.0gのBN3を9.0gのSMN8に徐々に添加することにより調製された。次いで、6.0gの脱イオン水を添加し、TRITON BG10の10%溶液を0.75g添加することによってこの溶液を希釈した。
【0218】
実施例36は、12.5gのBN6を実施例19の溶液に添加することにより調製された。実施例37は、5.0gのSMN7を実施例27の溶液に添加することにより調製された。
【0219】
ディップコーターを使用してコーティング溶液をソーラーガラス基材(CSG Holding Co.Ltd)の滑らかな面にコーティングして、約100〜200nmの乾燥コーティング厚さを得た。次に、コーティングされた試料を100℃にて10分にわたって乾燥させた。その後、コーティングされた試料を750℃にて3分にわたって焼き戻しした。全ての実施例について、コーティング及び焼き戻し後に増加した透過率%は、コーティングされていないガラスと対比して2.0〜3.5であった。実施例6は裸のナノ粒子によって調製され、ここでは対照実施例として用いられる。
【0220】
【表5】
【0221】
【表6】
【0222】
【表7】
【0223】
【表8】
【0224】
本明細書中に引用される特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、その全体が参照することによって組み込まれる。本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく本発明に様々な変更及び改変を行い得る点は、当業者には明らかであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不要に限定されない点、また、こうした実施例及び実施形態はあくまで例として与えられるものであり、本発明の範囲は、本明細書において以下に記載される「特許請求の範囲」によってのみ限定されるものである点は理解すべきである。
本明細書に記載の実施態様の一部を項目[1]−[36]に記載する。
[項目1]
基材表面の改質方法であって、
(a)コーティング組成物を基材に適用する工程であって、前記コーティング組成物が
(i)非球状ナノ粒子、
(ii)球状ナノ粒子、
(iii)任意に親水基、及び任意に界面活性剤、並びに
(iv)水と、存在する場合、液体媒質の総重量を基準として30重量%以下の有機溶媒と、を含む液体媒質、
を含み、前記非球状ナノ粒子の少なくとも一部分又は前記球状ナノ粒子の少なくとも一部分が、化学結合を介して前記非球状ナノ粒子又は前記球状ナノ粒子の表面に結合している官能基を含み、更に、前記官能基が、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト、又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の基を含む、コーティング組成物を基材に適用する工程、及び
(b)前記コーティング組成物を乾燥させて前記基材上に親水性コーティングを形成する工程、
を含む、基材表面の改質方法。
[項目2]
前記非球状ナノ粒子の全て又は前記球状ナノ粒子の全てが前記官能基を含む、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記非球状ナノ粒子と前記球状ナノ粒子との重量比が、95:5〜5:95の範囲である、項目1に記載の方法。
[項目4]
前記非球状ナノ粒子と前記球状ナノ粒子との重量比が、80:20〜20:80の範囲である、項目3に記載の方法。
[項目5]
前記非球状ナノ粒子と前記球状ナノ粒子との重量比が、70:30〜30:70の範囲である、項目4に記載の方法。
[項目6]
前記非球状ナノ粒子の少なくとも一部が、シリカナノ粒子を含む、項目1に記載の方法。
[項目7]
前記球状ナノ粒子の少なくとも一部が、シリカナノ粒子を含む、項目1に記載の方法。
[項目8]
前記基材がガラス又はセラミックである、項目1に記載の方法。
[項目9]
前記方法が、前記コーティングされた基材を200℃〜750℃の範囲の温度で焼結する工程を更に含む、項目1に記載の方法。
[項目10]
前記非球状ナノ粒子が、1〜200nmの平均粒径、及び2〜100のアスペクト比を有する、項目1に記載の方法。
[項目11]
前記球状ナノ粒子が、1〜120nmの平均粒径を有する、項目1に記載の方法。
[項目12]
前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量を基準として、少なくとも0.05重量%の非球状ナノ粒子でかつ40重量%以下の非球状ナノ粒子を含む、項目1に記載の方法。
[項目13]
前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量を基準として、少なくとも0.05重量%の球状ナノ粒子でかつ40重量%以下の球状ナノ粒子を含む、項目1に記載の方法。
[項目14]
前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量を基準として、0.01重量%〜5重量%の界面活性剤を含む、項目1に記載の方法。
[項目15]
前記非球状ナノ粒子が細長いナノ粒子である、項目1に記載の方法。
[項目16]
前記球状ナノ粒子が前記官能基を含む、項目1に記載の方法。
[項目17]
項目1に記載の方法を用いて改質された基材表面を含む物品。
[項目18]
コーティング組成物であって、
非球状ナノ粒子と、
球状ナノ粒子と、
任意の親水基及び任意の界面活性剤と、
水、及び存在する場合、液体媒質の総重量を基準として30重量%以下の有機溶媒を含む液体媒質と、を含み、
前記非球状ナノ粒子の少なくとも一部分又は前記球状ナノ粒子の少なくとも一部分が、化学結合を介してそれらの表面に結合している官能基を含み、前記官能基が、エポキシ基、アミン基、ヒドロキシル、オレフィン、アルキン、(メタ)アクリラト、メルカプト基、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の基を含む、コーティング組成物。
[項目19]
前記非球状ナノ粒子の全て又は前記球状ナノ粒子の全てが前記官能基を含む、項目18に記載の組成物。
[項目20]
前記非球状ナノ粒子と前記球状ナノ粒子との重量比が、95:5〜5:95の範囲である、項目18に記載の組成物。
[項目21]
前記非球状ナノ粒子と前記球状ナノ粒子との重量比が、70:30〜30:70の範囲である、項目20に記載の組成物。
[項目22]
前記非球状ナノ粒子の少なくとも一部がシリカナノ粒子を含む、項目18に記載の組成物。
[項目23]
前記球状ナノ粒子の少なくとも一部がシリカナノ粒子を含む、項目18に記載の組成物。
[項目24]
前記基材がガラス又はセラミックである、項目18に記載の組成物。
[項目25]
前記非球状ナノ粒子が、1〜200nmの平均粒径、及び2〜100のアスペクト比を有する、項目18に記載の組成物。
[項目26]
前記球状ナノ粒子が、1〜120nmの平均粒径を有する、項目18に記載の組成物。
[項目27]
前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量を基準として、少なくとも0.05重量%の非球状ナノ粒子でかつ40重量%以下の非球状ナノ粒子を含む、項目18に記載の組成物。
[項目28]
前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量を基準として、少なくとも0.05重量%の球状ナノ粒子でかつ40重量%以下の球状ナノ粒子を含む、項目18に記載の組成物。
[項目29]
前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量を基準として、0.01重量%〜5重量%の界面活性剤を含む、項目18に記載の組成物。
[項目30]
乾燥したコーティングが、前記基材に反射防止性、洗浄容易性、及び/又は耐久性特性を少なくとも24時間にわたって提供する、項目18に記載の組成物。
[項目31]
前記非球状ナノ粒子が細長いナノ粒子である、項目18に記載の組成物。
[項目32]
前記球状ナノ粒子が前記官能基を含む、項目18に記載の組成物。
[項目33]
項目18に記載のコーティング組成物を用いて改質された基材表面を含む物品。
[項目34]
ソーラーパネルである、項目33に記載の物品。
[項目35]
前記基材がガラスである、項目33に記載の物品。
[項目36]
前記ガラスが強化されている、項目35に記載の物品。