特許第6181730号(P6181730)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181730半導体チップおよびそれを用いた発光装置、ディスプレイ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181730
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】半導体チップおよびそれを用いた発光装置、ディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 37/02 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   H05B37/02 J
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-210080(P2015-210080)
(22)【出願日】2015年10月26日
(62)【分割の表示】特願2012-501682(P2012-501682)の分割
【原出願日】2011年2月24日
(65)【公開番号】特開2016-29665(P2016-29665A)
(43)【公開日】2016年3月3日
【審査請求日】2015年10月26日
(31)【優先権主張番号】特願2010-41423(P2010-41423)
(32)【優先日】2010年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕之
【審査官】 山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−011608(JP,A)
【文献】 特開2007−220928(JP,A)
【文献】 特開2001−196872(JP,A)
【文献】 特開2007−005450(JP,A)
【文献】 特開2010−015879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02 − 39/00
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに共通接続された複数の発光ユニットの第1端子に供給する駆動電圧を生成するDC/DCコンバータを制御すると共に、前記複数の発光ユニットの各々に流れる駆動電流を制御する半導体チップであって、
前記発光ユニットの各々に対応して設けられて、各々が対応する発光ユニットの前記第1端子とは異なる第2端子に接続される複数の駆動端子と、
前記駆動電流の目標値を示す変更可能な第1電圧が入力される設定端子と、
前記第1電圧が入力され、前記第1電圧に比例する制御信号を生成して出力するアンプと、
前記複数の駆動端子の各々に対応して設けられ、且つ前記アンプから出力されて入力される前記制御信号に基づいて、対応する前記発光ユニットに流れる前記駆動電流の各々のレベルを調整する複数の電流源と、
前記アンプから出力されて入力される前記制御信号に基づいて、前記駆動電圧が、調整された前記駆動電流のレベルに対応したレベルになるように基準電圧を生成して出力する基準電圧源と、
前記複数の発光ユニットに対応するそれぞれの駆動端子の電圧のうち最も低い電圧が前記基準電圧と一致するように、前記DC/DCコンバータが前記第1端子に生成する前記駆動電圧を制御する制御回路と、
を備え、
前記複数の電流源と前記基準電圧源は、同じタイミングで前記アンプから出力された前記制御信号により制御されることを特徴とする半導体チップ。
【請求項2】
前記駆動電流のレベルと前記基準電圧は、前記第1電圧と実質的に比例関係にあることを特徴とする請求項1に記載の半導体チップ。
【請求項3】
前記駆動電圧と前記基準電圧とは、前記第1電圧に基づいて互いにリニアに変化することを特徴とする請求項1に記載の半導体チップ。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記DC/DCコンバータに接続されて前記DC/DCコンバータの動作を制御するスイッチングトランジスタと、
前記駆動電圧のうち最も低い電圧と前記基準電圧との差分である誤差信号を出力する誤差増幅器と、
三角波を発生させるオシレータと、
前記誤差信号と前記三角波とを比較、その結果としてのパルス信号を生成するPWMコンパレータと、
前記パルス信号に基づいて前記スイッチングトランジスタのオンオフを制御するドライバと、
を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の半導体チップ。
【請求項5】
複数の発光ユニットと、
前記複数の発光ユニットの各々に駆動電圧を供給する前記DC/DCコンバータと、
前記複数の発光ユニットの各々に流れる駆動電流を制御すると共に、前記DC/DCコンバータを介して前記複数の発光ユニットの各々に供給される前記駆動電圧を制御する請求項1からのいずれか1項に記載の半導体チップと、
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
液晶パネルと、
前記液晶パネルの背面に、その発光ユニットがバックライトとして設けられている請求項に記載の発光装置と、
を備えることを特徴とするディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルのバックライトや携帯電話端末の着信表示のための光源、あるいは蛍光灯に変わる照明機器として、発光ダイオード(LED)が利用される。LEDを所望の輝度で発光させるためには、駆動回路によって、DC/DCコンバータを制御してLEDに十分な駆動電圧を供給するとともに、LEDに対して輝度に応じた駆動電流を供給する必要がある。
【0003】
特許文献1には、LEDを高効率にて駆動するための回路が開示されている。特許文献1の技術では、DC/DCコンバータの出力端子と固定電圧端子の間に、LEDストリングと定電流源とを直列に接続する。この定電流源の電流を調整することができる可変電流型とし、また、DC/DCコンバータは、所定の基準電圧Vrefと、定電流源の降下電圧である検出電圧Vdetとが等しくなるように、その出力電圧を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3755770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の省エネに対する関心の高まりによって、駆動回路にはさらなる低消費電力化が求められている。
【0006】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、発光素子を効率的に駆動可能な駆動回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、少なくともひとつの発光ユニットの共通接続された第1端子に駆動電圧を生成するためのDC/DCコンバータを制御するとともに、少なくともひとつの発光ユニットそれぞれに駆動電流を供給する駆動回路に関する。この駆動回路は、少なくともひとつの発光ユニットごとに設けられ、それぞれが対応する発光ユニットの第2端子と接続されるべき、少なくともひとつの駆動端子と、少なくともひとつの駆動端子ごとに設けられ、それぞれが対応する駆動端子を介して対応する発光ユニットに調節可能な駆動電流を供給する、少なくともひとつの電流源と、駆動電流に応じた電圧レベルを有する基準電圧を生成する基準電圧源と、少なくともひとつの駆動端子それぞれの電圧のうち最も低い電圧が、基準電圧と一致するように、DC/DCコンバータを制御する制御回路と、を備える。
【0008】
電流源が発生する駆動電流の値が可変である場合に、基準電圧を駆動電流に応じて変化させることにより、基準電圧を固定した場合に比べて、電流源において発生する電圧降下、すなわち消費電力を低減することができ、発光素子を効率的に駆動することができる。
【0009】
少なくともひとつの発光ユニットはそれぞれ、共通の第1電圧に応じた駆動電流を生成してもよい。基準電圧源は、第1電圧に応じた基準電圧を生成してもよい。
この場合、駆動電流と基準電圧とを、第1電圧と連動させて変化させることができる。
【0010】
基準電圧源は、駆動電流に応じてステップ状に変化する基準電圧を生成してもよい。基準電圧源は、駆動電流に実質的に比例する基準電圧を生成してもよい。
【0011】
少なくともひとつの発光ユニットはそれぞれ、駆動電流の目標値を示す共通の第1電圧に応じた駆動電流を生成してもよい。基準電圧源は、少なくともひとつの発光ユニットが生成する駆動電流に応じた基準電圧を生成してもよい。
【0012】
基準電圧源は、発光ユニットが生成する駆動電流に対してステップ状に変化する基準電圧を生成してもよい。基準電圧源は、発光ユニットが生成する駆動電流に実質的に比例する基準電圧を生成してもよい。
【0013】
本発明の別の態様もまた、少なくともひとつの発光ユニットの共通接続された第1端子に駆動電圧を生成するためのDC/DCコンバータを制御するとともに、少なくともひとつの発光ユニットそれぞれに駆動電流を供給する駆動回路に関する。この駆動回路は、少なくともひとつの発光ユニットごとに設けられ、それぞれが対応する発光ユニットの第2端子と接続されるべき、少なくともひとつの駆動端子と、少なくともひとつの駆動端子ごとに設けられ、それぞれが対応する駆動端子を介して対応する発光ユニットに駆動電流を供給する、少なくともひとつの電流源と、少なくともひとつの駆動端子それぞれの電圧のうち最も低い電圧が、基準電圧と一致するように、DC/DCコンバータを制御する制御回路と、その監視対象の温度が所定の第1しきい値を超えると、本駆動回路を保護するサーマルシャットダウン回路と、駆動電流が経由する監視対象の外部接続端子の近傍に設けられ、その監視対象の温度が、第1しきい値より低い第2しきい値を超えると、監視対象の外部接続端子の温度の異常を示す検出信号を生成する端子温度検出回路と、を備える。
【0014】
この態様によると、検出信号に応じて、駆動電流を低下させたり、駆動電流を遮断したりすることによって、外部接続端子の温度が高い状態が持続するのを防止でき、外部接続端子に溶着されるはんだの劣化を抑制することができる。
【0015】
監視対象の外部接続端子は、駆動端子であってもよい。
【0016】
第2しきい値は、本駆動回路をプリント基板上に実装する際に、外部接続端子に溶着されるはんだが劣化しはじめる温度に応じて決定されてもよい。
【0017】
第1しきい値は130°以上であり、第2しきい値は100°以下であってもよい。
【0018】
端子温度検出回路は、少なくともひとつの駆動端子ごとに設けられてもよい。
この場合、駆動端子ごとに独立に高温状態を検出できるため、電流源ごとに、駆動電流の値を制限するなど、柔軟な回路保護を行うことができる。
【0019】
本発明のさらに別の態様は、発光装置である。この装置は、少なくともひとつの発光ユニットと、少なくともひとつの発光ユニットそれぞれに駆動電圧を供給するDC/DCコンバータと、少なくともひとつの発光ユニットそれぞれに駆動電流を供給するとともに、DC/DCコンバータを制御する上述のいずれかの態様の駆動回路と、を備える。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、ディスプレイ装置である。この装置は、液晶パネルと、液晶パネルの背面に、その発光ユニットがバックライトとして設けられている上述の発光装置と、を備える。
【0021】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のある態様によれば、発光素子を高効率で駆動できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施の形態に係る駆動ICを備えるディスプレイ装置の構成を示す回路図である。
図2図2(a)は、電流源の両端間の電圧と駆動電流の関係、図2(b)は、駆動電流と基準電圧の関係を示す図である。
図3】第2の実施の形態に係る駆動ICの構成を示す回路図である。
図4図4(a)、(b)は、図1の駆動ICの変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
図1は、実施の形態に係る駆動IC102を備えるディスプレイ装置1の構成を示す回路図である。ディスプレイ装置1は、バックライトとして設けられた発光装置2と、液晶パネル3を備える。
【0027】
発光装置2は、複数の発光ユニット4a〜4cと、DC/DCコンバータ104と、駆動IC102と、を備える。発光ユニット4a〜4cはそれぞれ、ひとつのLED、または直列に接続された複数のLEDを含むLEDストリングである。図1では、3つの発光ユニット4が示されるが、発光ユニット4の個数は任意であり、少なくともひとつ設けられていればよい。発光ユニット4a〜4cは、液晶パネル3の背面にバックライトとして設けられる。
【0028】
DC/DCコンバータ104は、入力電圧Vinを昇圧し、発光ユニット4a〜4cの共通に接続された一端(第1端子)に駆動電圧Voutを供給する。DC/DCコンバータ104は、インダクタL1、ダイオードD1、キャパシタC1を備える。DC/DCコンバータ104のトポロジーは一般的なものであるため、説明を省略する。
【0029】
駆動IC102は、発光ユニット4a〜4cそれぞれに、駆動電流ILEDa〜ILEDcを供給するとともに、DC/DCコンバータ104を制御して駆動電圧Voutを調節する機能ICであり、ひとつの半導体チップに集積化されている。以下、駆動IC102の構成を説明する。
【0030】
駆動IC102は、複数の駆動端子(以下、LED端子)P3a〜P3cと、複数の電流源30a〜30cと、基準電圧源34と、制御回路40と、を備える。
【0031】
LED端子P3a〜P3cは、発光ユニット4a〜4cごとに設けられる。LED端子P3a〜P3cはそれぞれ、対応する発光ユニット4の第2端子と接続される。電流源30a〜30cは、LED端子P3a〜P3cごとに設けられ、それぞれが対応するLED端子P3a〜P3cを介して対応する発光ユニット4a〜4cに、調節可能な駆動電流ILEDa〜ILEDcを供給する。
【0032】
電流源30a〜30cは同様に構成される。電流源30aは、トランジスタM4、抵抗R4、誤差増幅器32を備える。誤差増幅器32の非反転入力端子には、第2電圧Vmが入力される。トランジスタM4と抵抗R4は、LED端子P3aと接地端子の間に直列に設けられる。トランジスタM4と抵抗R4の接続点の電圧は、誤差増幅器32の反転入力端子にフィードバックされる。この電流源30aによって、
ILEDa=Vm/R4
で与えられる、第2電圧Vmに比例した駆動電流ILEDaが生成される。抵抗R4は、駆動IC102に外付けされてもよい。
【0033】
変換回路60は、駆動電流ILEDの目標値を示す第1電圧Vref1を受け、それに応じた、たとえばそれと比例する第2電圧Vmを生成し、電流源30a〜30cに出力する。第1電圧Vref1を、そのまま第2電圧Vmとして電流源30a〜30cに与えてもよい。つまり駆動電流ILEDa〜ILEDcは、第1電圧Vref1に応じた電流値に設定される。第1電圧Vref1は、駆動IC102の外部から与えられてもよいし、駆動IC102の内部の電圧源を用いて、外部から入力される制御信号にもとづいて生成してもよい。
【0034】
また変換回路60は、第1電圧Vref1に応じた第2電圧Vmに加えて、第1電圧Vref1に応じた制御信号S1を生成する。基準電圧源34は、制御信号S1に応じた基準電圧Vxを生成する。つまり基準電圧源34は、電流源30a〜30cが生成する駆動電流ILEDに応じた基準電圧Vxを生成する。
【0035】
制御回路40は、LED端子P3a〜P3cそれぞれの電圧VLEDa〜VLEDcのうち最も低い電圧が、基準電圧Vxと一致するように、DC/DCコンバータ104を制御する。制御回路40は、誤差増幅器42、オシレータ44、PWMコンパレータ46、ドライバ48、スイッチングトランジスタ50を備える。
【0036】
スイッチングトランジスタ50は、DC/DCコンバータ104のインダクタL1の経路上に設けられる。誤差増幅器42、オシレータ44、PWMコンパレータ46は、いわゆるパルス幅変調器を構成する。誤差増幅器42は、電圧VLEDa〜VLEDcのうち最も低い電圧と、基準電圧Vxの誤差に応じた誤差電圧Verrを生成する。オシレータ44は、三角波もしくはのこぎり波の周期信号Voscを発生する。PWMコンパレータ46は、誤差電圧Verrと周期信号Voscを比較し、パルス幅変調されたパルス信号Spwmを生成する。ドライバ48はパルス信号Spwmにもとづいてスイッチングトランジスタ50をスイッチングする。なお制御回路40の構成は図1のそれには限定されず、その他の形式で構成されてもよい。
【0037】
以上が駆動IC102の構成である。続いてその動作を説明する。
図2(a)は、電流源30の両端間の電圧(LED端子電圧)VLEDと駆動電流ILEDの関係を、図2(b)は駆動電流ILEDと基準電圧Vxの関係を示す図である。
【0038】
図2(a)に着目すると、電流源30がI1(たとえば20mA)の駆動電流ILEDを生成するためには、LED端子の電圧VLEDは、第1の動作保証電圧Vx1より高くなければならない。駆動電流ILEDが、I2(たとえば40mA)、I3(たとえば60mA)と増加するにしたがい、LED端子にはさらに高い動作保証電圧Vx2、Vx3を確保する必要がある。
【0039】
基準電圧源34が生成する基準電圧Vxを、駆動電流ILEDの値によらずに固定する場合には、想定される最大の駆動電流ILED(たとえばI3=60mA)が生成できるように、常に基準電圧Vxを電圧値Vx3以上に設定する必要がある。図2(b)の一点鎖線(III)は、基準電圧Vxを固定した場合を示す。
この場合、駆動電流I1(20mA)を生成する際に、電流源30の両端間の電圧VLEDは、電圧Vx1で足りるところ、それよりも高い動作点Vx3で動作させることになるため、無駄な電力が消費される。
【0040】
実施の形態に係る駆動IC102では、図2(b)に実線(I)で示すように、基準電圧源34は、駆動電流ILEDに応じてステップ状に変化する基準電圧Vxを生成する。この場合、変換回路60は、第1電圧Vref1を電流値I1、I2、I3に応じたしきい値電圧Vth1、Vth2、Vth3と比較するコンパレータによって制御信号S1を生成してもよい。これにより駆動電流ILEDに応じて基準電圧Vxをステップ状に切りかえることができる。
【0041】
あるいは図2(b)に破線(II)で示すように基準電圧源34は、駆動電流ILEDに実質的に比例する基準電圧Vxを生成してもよい。この場合、変換回路60は第1電圧Vref1に応じた制御信号S1を出力するアンプで構成することができる。
【0042】
図2(b)に実線(I)や破線(II)で示すように、駆動電流ILEDに応じて基準電圧Vxを変化させることにより、電流源30における無駄な電力消費を低減することができ、発光ユニット4を高効率で駆動することができる。
【0043】
図3は、第2の実施の形態に係る駆動IC102aの構成を示す回路図である。第2の実施の形態に係る技術は、第1の実施の形態で説明した技術と組み合わせて、あるいはそれとは別に単独で利用することができる。図1と共通の構成については説明を省略する。
【0044】
駆動IC102aは、リードもしくは裏面電極などの外部接続端子を備える。外部接続端子は、プリント基板上の配線パターン108に対してはんだ110を介して電気的、機械的に接続される。
【0045】
駆動IC102aは、図1の構成に加えて、サーマルシャットダウン回路62および端子温度検出回路64を備える。サーマルシャットダウン回路62は、駆動IC102aが形成されるチップ(ダイ)の温度を監視し、監視対象の温度が所定の第1しきい値Tth1を超えると、駆動IC102aの動作を停止して過熱状態から保護する。サーマルシャットダウン回路62は、定電流源80、ダイオード82、コンパレータ84を含む。ダイオード82には、定電流源80が発生する定電流Icが流れる。ダイオード82の両端間には、温度に依存した電圧降下Vfが発生する。コンパレータ84は、電圧降下Vfを、第1しきい値Tth1に応じたしきい値電圧Vth1と比較することにより、温度異常を示す検出信号S2を生成する。たとえば第1しきい値Tth1は、駆動IC102aの信頼性に影響を及ぼさない値に設定され、好ましくは130°以上、たとえば150°に設定される。
【0046】
駆動IC102aは、サーマルシャットダウン回路62とは別に、少なくともひとつの端子温度検出回路64を備える。端子温度検出回路64は、サーマルシャットダウン回路62と同様に構成することができる。
【0047】
端子温度検出回路64は、駆動電流ILEDが経由する外部接続端子112の近傍に設けられる。図3において、監視対象の外部接続端子112は、LED端子P3cである。端子温度検出回路64は、その監視対象の温度が、第2しきい値Tth2を超えると、監視対象の外部接続端子112の温度の異常を示す検出信号S2を生成する。第2しきい値Tth2は、第1しきい値Tth1よりも低く設定される。
【0048】
この第2しきい値Tth2は、駆動IC102aをプリント基板上に実装する際に、外部接続端子112に溶着されるはんだ110が劣化しはじめる温度に応じて決定される。一般的なはんだの劣化は、90°以上で進行するため、第2しきい値Tth2は100°以下、たとえば90°に設定することが好ましい。
【0049】
駆動IC102aは、外部接続端子それぞれと対応付けられるパッドを有する。「外部接続端子の近傍」とは、その外部接続端子とボンディングワイヤW1あるいは再配線を介して接続されるICチップ上のパッドPADの近傍を意味する。
【0050】
端子温度検出回路64が生成した検出信号S3は、オープンドレイン形式のインタフェース回路(M20、R20)を経由して、外部のCPU106へと出力される。CPU106のフェイル端子FAILには、検出信号S3に応じた電位が発生する。CPU106は、フェイル端子FAILの電位に応じて、イネーブル信号ENを発生し、駆動IC102aへと出力する。イネーブル信号ENがアサートされるとき、駆動IC102aは通常動作し、ネゲートされるときに電流源30は駆動電流ILEDの生成を停止し、あるいは駆動電流ILEDを低下させる。発光ユニット4をPWM駆動する場合には、スイッチングのデューティ比を低下させることにより、実効的な駆動電流ILEDを低下させてもよい。
【0051】
以上が駆動IC102aの構成である。図3の駆動IC102aでは、発光ユニット4a〜4cに大電流を流したときに、電流源30a〜30cが発熱するため、駆動電流ILEDが経由する外部接続端子の温度が上昇する。そこでサーマルシャットダウン回路とは別に、駆動電流ILEDが経由する外部接続端子112の温度を監視することにより、外部接続端子112の温度上昇を抑制することができ、ひいては外部接続端子112に溶着されるはんだ110の劣化を防止でき、発光装置2を長寿命化できる。
【0052】
図1の駆動IC102によれば、LED端子P3の電位VLEDを低い状態で動作させることができるため、電流源30の発熱は従来よりも低下することができる。したがって図1の駆動IC102に、図3の端子温度検出回路64を組み合わせることによって、外部接続端子112の温度上昇を好適に防止できる。
【0053】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0054】
図1の駆動IC102において、基準電圧源34は、第1電圧Vref1に応じた制御信号S1に応じて基準電圧Vxを生成したが、本発明はこれに限定されない。
たとえば、図1の駆動IC102において、基準電圧源34は、制御信号S1に代えて第1電圧Vref1を受け、第1電圧Vref1に応じて基準電圧Vxを生成してもよいし、第2電圧Vmを受け、第2電圧Vmに応じて基準電圧Vxを生成してもよい。
【0055】
図4(a)、(b)は、図1の駆動ICの変形例を示す回路図である。図1と共通の構成は省略される。
図4(a)、(b)の変形例において、基準電圧源34は、少なくともひとつの発光ユニット30a〜30cのいずれかに実際に流れる駆動電流ILEDa〜ILEDcに応じた基準電圧Vxを生成する。
【0056】
具体的に図4(a)の駆動IC102aにおいて、トランジスタM5のゲートは、トランジスタM4のゲートと共通に接続され、トランジスタM5のソースと接地端子間には、抵抗R5が設けられる。トランジスタM5には、トランジスタM4に流れる駆動電流ILEDaに応じた、より具体的には比例した検出電流ILEDa’が流れる。
【0057】
基準電圧源34aは、検出電流ILEDa’を受け、その電流値に応じた基準電圧Vxを生成する。基準電圧源34aは、図2の実線(I)に示すように、検出電流ILEDa’に対してステップ状に変化する基準電圧Vxを生成してもよいし、図2の破線(II)に示すように、検出電流ILEDa’に対して実質的に比例する基準電圧Vxを生成してもよい。
【0058】
図4(b)の駆動IC102bにおいて、抵抗R5には、検出電流ILEDa’に比例する電圧降下VR5(=ILEDa’×R5)が発生する。基準電圧源34bは、この電圧降下VR5に応じて基準電圧Vxを生成してもよい。基準電圧源34aは、電圧降下VR5に対してステップ状に変化する基準電圧Vxを生成してもよいし、電圧降下VR5に対して実質的に比例する基準電圧Vxを生成してもよい。
【0059】
なお抵抗R4には、駆動電流ILEDaに比例する電圧降下VR4(=ILEDa×R4)が発生する。そこで基準電圧源34は、電圧降下VR4に応じて基準電圧Vxを生成してもよい。この場合、トランジスタM5、抵抗R5を省略できる。
【0060】
実施の形態では、ディスプレイ装置1の発光ユニット4を駆動する駆動IC102を説明したが、本発明の用途はそれに限定されない。たとえば本発明は、LEDを用いた照明(発光装置)にも利用できる。
【0061】
図3には、単一の端子温度検出回路64を示しているが、端子温度検出回路64を、複数のLED端子P3a〜P3cごとに設けてもよい。この場合、LED端子P3a〜P3cごとに独立に高温状態を検出できるため、電流源30a〜30cごとに、駆動電流ILEDの値を低下させるなど、柔軟な回路保護を行うことができる。
【0062】
図3では、LED端子P3の近傍に端子温度検出回路64を設ける場合を説明したが、本発明はそれに限定されない。電流源30の抵抗R4が駆動IC102aに外付けされる場合には、LED端子P3cに代えて、抵抗R4が接続される外部接続端子の近傍に端子温度検出回路64を設けてもよい。
【0063】
実施の形態では、検出信号S3をCPU106に出力し、CPU106を介して駆動IC102aの回路保護を行う場合を説明したが、本発明はそれに限定されず、駆動IC102a自身が、検出信号S3に応じて回路保護を行ってもよい。
【0064】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0065】
1…ディスプレイ装置、2…発光装置、3…液晶パネル、4…発光ユニット、P3…LED端子、30…電流源、32…誤差増幅器、R4…抵抗、M4…トランジスタ、34…基準電圧源、40…制御回路、42…誤差増幅器、44…オシレータ、46…PWMコンパレータ、48…ドライバ、50…スイッチングトランジスタ、60…変換回路、62…サーマルシャットダウン回路、64…端子温度検出回路、102…駆動IC、104…DC/DCコンバータ、106…CPU、108…配線、110…はんだ。
図1
図2
図3
図4