【実施例】
【0051】
実施例1
ゲニステインの溶解度
ゲニステインについて計算されたpKaは7〜9の範囲であり、予測される溶解度は最
も低いpKaに従ってpH7より上で増加する。計算された特性を用いて、いくつかの許容される共溶媒へのゲニステインのpH−溶解度プロファイルのための適当なpH範囲を設計し、pH範囲はpH6〜9であることが確認された。ゲニステインの溶解度はより高いpHで増加したが、pH9で分解が観察された。表1は、選択された薬学的に許容される共溶媒へのゲニステインの溶解度の結果を示す。
【0052】
【表1】
【0053】
水へのゲニステインの溶解度はpH6〜7で検出不可能であり、そのことは、溶解度が0.02mg/mL未満またはH
2O1gあたり約0.00002g(最低濃度)である
ことを意味する。共溶媒へのpH−溶解度および溶解度に基づき、PEG400が最も高い溶解度を達成する共溶媒であると判定された。非経口製剤は好ましくは最大50%の有機成分を有するので、エタノール(EtOH)、Nメチルピロリドン(NMP)および界面活性剤の添加が考慮されたが、その理由は、これらが注射部位からの吸収を強化することが予想されたからである。エタノールは、粘度低下の付加利益を有する。ポリソルベート80(Tween 80)は12%の高さのレベルでの承認された非経口剤形でのその使用に起因して界面活性剤とみなされた(FDA不活性成分指針)が、より一般的な範囲は0.1〜1%である。溶解度を、非経口剤形のために許容される濃度を有する2つの水性/有機混合物においてさらに評価した。さらに、シクロデキストリン製剤を評価した。ゲニステインの溶解度試験の結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例2
ナノ粒子状ゲニステイン組成物
これまでに評価されたゲニステイン製剤のいずれも、所望のレベルの薬剤負荷を達成しなかった。より高い薬剤負荷を達成するために、滅菌注射用懸濁液を本明細書に従って調製した。製剤は、50mMリン酸緩衝生理食塩水(61mM塩化ナトリウム)中の5%ポビドンK17(w/w)、0.2%ポリソルベート80(w/w)のビヒクル溶液でナノ粉砕されたナノ粒子状ゲニステインを含んだ。製剤の量的組成を表3に記載する。
【0056】
【表3】
【0057】
表1に記載されている各成分および賦形剤の機能は以下の通りである:1)ポリソルベート80は、湿潤を可能にしかつ懸濁したゲニステイン原薬の凝集の防止を助ける界面活性剤として含まれ、2)ポビドンK17は、ゲニステイン原薬懸濁液の安定化を助ける粘度強化剤として含まれ、3)リン酸ナトリウム緩衝液、塩化ナトリウムは、希釈剤として含まれ、生理的オスモル濃度を達成し、組成物の非経口投与のためのpHを維持するために含まれる。
【0058】
50mMリン酸ナトリウム緩衝液/61mM塩化ナトリウム溶液の組成物は、表4に示す通りである。
【0059】
【表4】
【0060】
実施例3
第2のナノ粒子状ゲニステイン組成物
本明細書に記載されている第2のナノ粒子状ゲニステイン製剤を調製した。ナノ粉砕されたゲニステインは、閉鎖系における連続分散および微細湿式磨砕のための水平磨砕容器内の撹拌ビーズミルを利用する湿式ビーズ粉砕を用いて達成された。DYNO(登録商標)−Mill Type Multi Lab撹拌ビーズミルを用いてナノ粒子状ゲニステインを調製し、そこで、分散および磨砕のための必要なエネルギーは、撹拌機シャフト上に取り付けられた撹拌機ディスクを介して磨砕ビーズに伝えらえた。製品ポンプを介して材料をミルに連続的に供給した。ダイナミックギャップ分離器のギャップ設定、ビーズの直径および粉砕時間の長さを用いて、粒径分布を決定した。規定の粒径分布に到達するまで、ミルを通して製品を連続的に供給した。この研究においてDYNO(登録商標)−Mill Type Multi Lab撹拌ビーズミルを利用したが、他の高エネルギー湿式ビーズ粉砕プロセス設備を利用してもよい。
【0061】
安定した粒径分布を維持するために湿潤剤としてポリソルベート80またはポロキサマー188のいずれかを組み込んだ2つの製剤を試験した。粘度強化剤ならびに粒子凝集に抗する安定剤として、ポビドン(ポリビニルピロリドン(PVP))K17を製剤中に5%のレベルで用いた。製剤の量的組成を表5に示す。
【0062】
【表5】
【0063】
製剤は、滅菌注射用水の代わりに、pH調節およびオスモル濃度のためのリン酸緩衝生理食塩水を含むこともできる(例えば、実施例2に記載されている製剤において提供されたように)。
【0064】
製剤は、優れた、再現性のある安定した粒径分布プロファイルを示し、0.2μm未満
のd(0.5)であった。光学顕微鏡法により、懸濁液中の均一な粒径が確認された。粉砕プロセスの結果としての、または製剤不適合性の結果としてのゲニステイン材料の物理的結晶変化を検討するために、粉末のX線回折(XRD)を実施した。実施された分析は、ゲニステイン原薬ならびに0.2%(w/w)ポリソルベート80を5%(w/w)ポビドンK17と一緒に含有する、および0.2%(w/w)ポロキサマー188を5%(w/w)ポビドンK17と一緒に含有する粉砕された懸濁液について粉砕後の結晶形における変化がなかったことを示す。
【0065】
0.2%(w/w)ポリソルベート80を5%(w/w)ポビドンK17と一緒に含有するナノ粒子状ゲニステイン(300mg/mL)から構成されているナノ粉砕されたゲニステイン懸濁液を、5℃、30℃(65%RH)、および(40℃75%RH)で安定化した。懸濁液を、20mmのPTFE表面加工ブチルゴム栓を備える5mLの血清バイアル中に保存した。7カ月後に不純物は観察されず、粒径分布における有意な変化はなかった。
【0066】
実施例4
ゲニステイン懸濁製剤とゲニステイン溶液製剤とのin vivo比較
この実験は、本明細書によるゲニステインのナノ粒子状製剤を評価し、それをPEG400溶液製剤中のゲニステインの投与と比較した。ゲニステイン懸濁製剤は、50nMリン酸緩衝生理食塩水中のナノ粉砕されたゲニステインを0.2%(w/w)ポリソルベート80および5%(w/w)PVP K17と一緒に含んだ。懸濁製剤は6.96のpHを示し、懸濁製剤に組み込まれたナノ粒子状ゲニステインは0.126μmのD(0.50)および0.253μmのD(0.90)を示した。製剤は、照射の24時間前に皮下注射(「SC」)によって投与された。各製剤について別々のビヒクルおよびゲニステイン群が含まれた。研究は、8.75Gyまたは9.0Gyのいずれかの、2つの放射線量で実行された。
【0067】
0.6Gy/分で8.75Gyまたは9.0Gyの線量での両側性全身放射線照射へ、雄CD2F1マウスを曝露した。30日生存率がこの研究のエンドポイントであった。この研究において評価された異なる実験群を表6に詳述する。
【0068】
【表6】
【0069】
表6および
図1に示すように、8.75Gyでのゲニステインの溶液製剤(ゲニステイン(PEG−400))およびゲニステインの懸濁製剤(ゲニステイン(ナノ))を受けた群における30日生存率は、それぞれ81%および100%であった。対照群(ビヒクル(PEG−400)およびビヒクル(ナノ))の生存率は、それぞれ38%および25%であった。9.0Gyでは、ゲニステイン(PEG−400)群およびゲニステイン(ナノ)群の30日生存率は、それぞれ81%および88%であった。対照群(ビヒクル(PEG−400)およびビヒクル(ナノ))の生存率は、それぞれ38%および19%であった。照射の24時間前にゲニステインを受けたあらゆる群が、それらのそれぞれの対照群と有意に(p<0.05)異なった。
【0070】
実施例5
非経口投与されたゲニステイン懸濁製剤ならびに経口的に与えられたゲニステイン懸濁製剤およびゲニステイン溶液製剤のin vivo比較
この実験は、筋肉内注射(「IM」)によって与えられた、実施例4に記載の通りに調製されたゲニステインナノ粒子状懸濁製剤(ゲニステイン−IS)の効果を、経口的に与えられたPEG400溶液製剤およびゲニステインIS懸濁製剤の効果と比較して評価した。異なる製剤を照射前の6日間1日2回投与した。照射の24時間前にIM投与されるゲニステイン−ISである陽性対照も含まれた。各群について別々のビヒクルおよびゲニステイン群が含まれた。研究は、9.25Gyの1放射線量で実行された。0.6Gy/分で9.25Gyの線量での両側性全身放射線照射へ、雄CD2F1マウスを曝露した。30日生存率がこの研究のエンドポイントであった。
【0071】
【表7】
【0072】
表7に示すように、9.25Gyでの経口投与されたゲニステイン/PEG400およびゲニステイン−ISの30日生存率は、それぞれ80%および85%であった。対照群(ビヒクルのみの投与)の生存率は、それぞれ0%および15%であった。陽性対照群、照射の24時間前にIM投与されたゲニステインISは、ビヒクルについて10%であるのに対して85%の生存百分率を有した。
【0073】
IMまたは経口のいずれかによってゲニステインを受けたあらゆる群が、それらのそれぞれの陰性対照群と有意に(p<0.05)異なった。しかし、ゲニステイン/PEG−400とゲニステインIS製剤との間で生存率において有意差はなかった。
【0074】
実施例6
9.0Gyの
60Co照射の24時間前、18時間前、12時間前または6時間前に皮下投与されたビヒクル注射懸濁液およびゲニステインナノ粒子状注射懸濁液による放射線防護経時的研究
以前の実験は、本明細書に従って調製されたナノ粒子状ゲニステイン注射懸濁液(ゲニステイン−IS)が、照射の24時間前に生理食塩水ベースのビヒクル中で投与された場合に、統計的に有意な放射線防護結果を示した。この経時的研究は、SC投与されたゲニステイン−ISによる放射線防護効力に対する時間依存効果があったかどうか判定するために実施された。ゲニステイン−ISの時間依存効果は、プラセボ製剤(ビヒクル−IS)と比較された。ゲニステイン−IS製剤は、実施例4に記載されている通りに調製された。
【0075】
雄CD2F1マウスをこの実験で用いた。全ての群は、照射の24時間前、18時間前、12時間前または6時間前に単回の200mg/kgSC投与を受けた。SC注射剤は、1mlツベルクリン注射器を介して、25G針を用いて0.1mlの注射量で首筋に投与した。0.6Gy/分で9.0Gyの線量での両側性全身放射線照射へ、全てのマウス
を曝露した。30日生存率がこの研究のエンドポイントであった。
【0076】
【表8】
【0077】
表8および
図2に示した結果は、照射の24時間前、18時間前、12時間前または6時間前に投与されたゲニステイン−ISの単回のSC投与が、それぞれ88%、69%、81%および63%の30日生存率をもたらしたことを実証する。対応する時点でのビヒクル−IS群についての生存率は、それぞれ44%、13%、44%および38%であった。ゲニステイン−ISは、照射の24時間前または18時間前のいずれかに注射されたときに、有意(p<0.05)な放射線防護をもたらした。
【0078】
実施例7
9.25Gyの
60Co照射の24時間前に投与されたときの、放射線防護効力に対するナノ粒子状ゲニステイン製剤の皮下対筋肉内注射の効果
この実験の目的は、SC投与またはIM投与されたときに200mg/kgのゲニステイン用量を提供するように送達される、本明細書に記載されている通りに調製されたナノ粒子状ゲニステイン懸濁製剤(ゲニステイン−IS)の放射線防護効力を比較することであった。ゲニステイン−IS製剤は、実施例4に記載されている通りに調製された。雄CD2F1マウスをこの実験で用いた。群は、照射の24時間前に、プラセボ注射用懸濁液(ビヒクル−IS)またはゲニステイン−IS(200mg/kg)の単回のSCまたはIM注射が与えられた。この実験には、照射の24時間前にSC投与される、200mg/kgのゲニステイン用量を提供するように送達されるPEG400中のゲニステインの溶液製剤(ゲニステイン)またはプラセボPEG400製剤(PEG400)を受ける群も含まれた。
【0079】
全てのビヒクルおよびゲニステイン−IS群は、照射の24時間前に単回の200mg
/kgのSCまたはIM注射を受けた。SC注射剤は、1mlツベルクリン注射器を介して、25G針を用いて0.1mlの注射量で首筋に投与された。ハミルトン注射器に装着された25G針を用いて、四頭筋の筋肉へのIM注射によってビヒクル−ISまたはゲニステイン−ISをマウスに投与した。注射量は50μlであった。
【0080】
0.6Gy/分で9.25Gyの線量での両側性全身放射線照射へマウスを曝露した。30日生存率がこの研究のエンドポイントであった。
【0081】
【表9】
【0082】
SC投与されたビヒクル−PEG400およびゲニステインPEG400についての生存率は、それぞれ15%および75%であった。この結果として、ゲニステインはPEG400ビヒクルよりも統計的に有意な放射線防護をもたらした(p<0.05)(表9および
図3に示す)。
【0083】
ビヒクル−ISまたはゲニステイン−ISがSC投与された場合は、30日生存率はそれぞれ30%および85%であった。IM投与の場合は、ビヒクル−ISおよびゲニステイン−ISについての生存率は、それぞれ15%および75%であった。SCおよびIM経路の両方について、ゲニステインはビヒクルよりも有意な保護を提供した(p<0.05)(表9および
図3に示す)。
【0084】
これらの結果は、本明細書に従って調製されたナノ粒子状ゲニステイン製剤が、SCまたはIMのいずれかの経路によって投与された場合、類似したレベルの放射線防護を提供することを実証する。
【0085】
実施例8
14C−ゲニステインの静脈内または筋肉内注射の後のマウスにおける薬物動態
表10の結果に示すように、雄CD1マウスに単一のIM用量(群2、名目200mg/kg)または単一のIVボーラス用量(群3、名目50mg/kg)の
14C−ゲニステインを投与した。用いられたゲニステイン製剤は、滅菌水中に懸濁したゲニステインを0.2%(w/w)ポリソルベート80および5%(w/w)PVP K17と一緒に含む
懸濁製剤であった。懸濁製剤で用いられたゲニステイン材料は、0.136μmのD(0.50)および0.310μmのD(0.90)を示した。投薬後、血液、血漿、排泄物および死体中の放射能の含有量および濃度、ならびに全血および血漿中の全放射能の非コンパートメント薬物動態を判定した。用量を投与した後、あらゆる臨床徴候の程度および重症度を評価した。200mg/kg(IM)および50mg/kg(IV)の用量レベルは忍容性が高く、したがって主研究のために選択された。
【0086】
両用量製剤における放射能濃度は、液体シンチレーション分光法によって投与の前後に測定されたが、両方の場合で類似していた。用量の投与の前後に、両用量製剤における試験品の放射化学安定性を評価した。筋肉内用量製剤(群2)由来の用量製剤試料における試験品の平均放射化学安定性は、それぞれ98.5%および98.2%であった。静脈内用量製剤(群3)由来の投与前後の試料についての平均放射化学安定性値は、それぞれ98.3%および98.5%であった。したがって、両方の製剤中の
14C−ゲニステインは、投薬期間全体にわたって放射化学的に安定していたとみなされた。
14C−ゲニステインの単回のIM投与(200mg/kg)または
14C−ゲニステインの単回のIV投与(50mg/kg)の後、主研究の雄マウスのいずれにおいても処置関連の臨床徴候は観察されなかった。
【0087】
全血試料を収集し、遠心分離によって血漿を得た。全血および血漿中の放射能濃度は、液体シンチレーション分光法によって測定した。薬物動態パラメータは複合濃度対時間プロファイルから計算された。薬物動態パラメータを表10に提示する。
【0088】
【表10】
【0089】
群2については、投与の30分後(最初の分析時点)に血漿および全血中の最も高い平均放射能濃度が観察されたが、このことはIM用量からの急速な吸収を示唆している。1未満の血液対血漿比は、用量依存性材料が、投与後のいかなるときでも血球と特に関連していないことを示唆した。AUC
0-infによって測定されたように、用量依存性材料への
血漿の曝露は全血のそれより大きく、クリアランス速度はより遅かった(t
1/2によって
測定されたように)。IM投与後の全身曝露(AUC
0-inf)は比較的良好であり、全放
射能の相対的生物学的利用能は血液および血漿についてそれぞれ49.7%および83.5%と推定された。
【0090】
群3については、投与の30分後(最初の分析時点)に血漿および全血中の放射標識材料の最も高い平均濃度が観察された。初期の時点(0〜24時間)では、1未満の血液対血漿比によって反映されているように、血漿中の濃度は血中のそれらより常に高かった。このことは、用量依存性材料が、これらの時点で血球と特に関連していないことを示した。24時間後、血中放射能濃度は血漿中のそれらより常に高かったが、このことは用量依存性材料が血球と関連していることを示唆している。AUC
0-infによって測定されたよ
うに、用量依存性材料への血漿の曝露は全血と類似していたが、t
1/2によって測定され
たようにクリアランス速度はより速かった。
【0091】
IM投与またはIVボーラス投与の後の排泄の主要な経路は尿を介するものであり、より小さな百分率が糞便において回収された。筋肉内および静脈内投与の後の排泄物における回収率は非常に類似しており、尿についておよそ52.5%から54.0%であり、糞便についておよそ31.3%から35.5%であった。両方の投与経路について、排泄は比較的急速であり、投与された用量の大部分が24時間以内に排泄された。糞便において回収された、投与された放射標識材料の割合は、用量依存性材料の胆汁中排泄が両投与経路の後に起こったことを示唆した。排泄物回収率は群2および3についてそれぞれおよそ92%および93%であったが、このことは排泄が投与の168時間後までに本質的に完了したことを示している。両方の経路について、投与された放射標識材料の小さな百分率が残りの死体において見出された。したがって、放射能の全体の平均質量収支は良好であり、群2および3の動物の両方について、投与された用量のおよそ93%から94%であった。
【0092】
結論として、雄マウスに、IM用量(200mg/kg)またはIVボーラス用量(50mg/kg)の
14C−ゲニステインを投与した。全血、血漿、排泄物および死体中の放射能濃度を判定した。最も高い放射能濃度は筋肉内または静脈内ボーラス投与の30分後に観察されたが、このことは筋肉内投与からの急速な吸収を示している。筋肉内投与の後の用量依存性材料の生物学的利用能は良好であり、49%を超えていた。放射能は速やかに排泄され、両方の投与経路について尿が排泄の主要な経路であった。筋肉内または静脈内ボーラス投与の後の糞便において回収された高レベルの放射能は、胆汁中排泄が起こったことを示唆した。両方の投与経路の後の用量依存性材料の全回収率は、投与の168時間後までに本質的に完了した。
【0093】
実施例9
14C−ゲニステインの静脈内または筋肉内注射の後のビーグル犬における薬物動態
雄ビーグル犬に、単回のIVボーラス用量(群1、名目20mg/kg)または単回のIM用量(群2、名目20mg/kg)の
14C−ゲニステインを投与した(結果を表11に示す)。用いられたゲニステイン懸濁製剤は、実施例8に記載されている通りに調製された。投薬後、血液、血漿および排泄物中の放射能の含有量および濃度、ならびに全血および血漿中の全放射能の非コンパートメント薬物動態を判定した。両方の用量製剤における放射能濃度は、液体シンチレーション分光法によって投与の前後に測定されたが、両方の場合で類似していた。用量の投与の前後に、両方の用量製剤における試験品の放射化学安定性を評価した。静脈内用量製剤(群1)由来の投与前後の試料についての平均安定性値は、それぞれ100%および99.6%であった。筋肉内用量製剤(群2)由来の投与前後の試料についての平均安定性値は、それぞれ99.2%および98.9%であった。したがって、両方の製剤中の
14C−ゲニステインは、投薬期間全体にわたって放射化学的に安定していたとみなされた。
【0094】
全血試料を収集し、遠心分離によって血漿を得た。全血および血漿中の放射能濃度は、液体シンチレーション分光法によって測定された。薬物動態パラメータは濃度対時間プロファイルから計算された。薬物動態パラメータを表11に提示する。
【0095】
【表11】
【0096】
群1(IVボーラス用量)については、投与の15分後(最初の分析時点)に血漿および全血中の放射標識材料の最も高い平均濃度が観察された。1未満の血液対血漿比によって反映されているように、血漿中の濃度は血中のそれらより常に高かった。このことは、用量依存性材料が、これらの時点で血球と特に関連していないことを示した。AUC
0-infによって測定されたように、用量依存性材料への血漿の曝露は全血のそれより大きかっ
たが、t
1/2によって測定されたようにクリアランス速度は類似していた。
【0097】
群2(IM用量)については、投与の2時間後に血漿および全血中の最も高い平均放射能濃度が観察されたが、このことは筋肉内投与からの比較的急速な吸収を示唆している。1未満の血液対血漿比は、用量依存性材料が、投与後のいかなるときでも血球と特に関連していないことを示唆した。AUC
0-tlastによって測定されたように、用量依存性材料
への血漿の曝露は全血のそれより大きかった。クリアランス速度(t
1/2によって測定さ
れたように)は、IVボーラス投与の後に観察されたものよりも一般に遅かった。しかし、IM投与後の全身曝露(AUC
0-tlast)は良好であり、全放射能の相対的生物学的利
用能は血液および血漿についてそれぞれ92.9%および96.1%と推定された。
【0098】
静脈内ボーラス投与またはIM投与の後の排泄の主要な経路は糞便を介するものであり、より小さな百分率が尿において回収された。IVボーラスおよびIM投与の後の排泄物における回収率は非常に類似しており、糞便についておよそ48.7%から51.9%であり、尿についておよそ32.0%から33.6%であった。両方の投与経路について、排泄は比較的急速であり、投与された用量の大部分が48時間以内に排泄された。糞便において回収された、投与された放射標識材料の割合は、用量依存性材料の胆汁中排泄が両方の投与経路の後に起こったことを示唆した。投与の168時間後までの排泄物回収は、
群1および2についてそれぞれおよそ87.9%および85.8%であった。したがって、両群についての放射能の全体の平均排泄物質量収支は良好であり、投与された用量のおよそ86〜88%であった。
【0099】
結論として、雄イヌに、IVボーラス用量(20mg/kg)またはIM用量(20mg/kg)の
14C−ゲニステインを投与した。全血、血漿および排泄物中の放射能濃度を判定した。臨床徴候が両群において観察され、用量依存性であるとみなされた。投与の15分後(静脈内投与)または2時間後(筋肉内投与)に血液および血漿中の最も高い放射能濃度が観察されたが、このことはIM投与からの比較的急速な吸収を示している。IM投与の後の用量依存性材料の生物学的利用能は良好であり、92%を超えていた。試験品関連の材料は速やかに排泄され、両方の投与経路について糞便が排泄の主要な経路であった。IVボーラスまたは筋肉内投与の後の糞便において回収された高レベルの放射能は、胆汁中排泄が起こったことを示唆した。両方の投与経路についての排泄物質量収支は良好とみなされ、85%を超えていた。
【0100】
実施例10
経口薬物動態比較研究
(PEG400中のゲニステイン溶液製剤)対(本明細書に従って調製されたゲニステインナノ懸濁剤)の経口生物学的利用能の比較を実行した。ゲニステイン懸濁製剤は、実施例4に記載されている通りに調製された。より初期の前臨床および臨床研究におけるゲニステインの限られた経口生物学的利用能を考慮して、この実験は、ビヒクルとしてPEG400で調製された以前に用いられたゲニステイン溶液製剤と、本明細書に記載されている通りに調製されたゲニステインナノ懸濁製剤とを比較するように設計された。
【0101】
2つの製剤の各々について、各時点(70匹のマウス)で7匹のマウスの10群を準備した(合計マウス=140匹)。400mg/kgの単回用量のゲニステインを強制経口投与によって与え、次に以下の10時点で血液を収集した。血液収集の時点は、以下の通りであった:投与の0、0.5、1、2、3、4、6、8、10および12時間後。
【0102】
ナノ粒子状懸濁剤に関する経口生物学的利用能は、PEG400溶液製剤において達成されたものよりも統計学的に有意に高かった。遊離および総ゲニステインレベルの両方を各群において時点ごとに判定した。7匹のマウスの平均濃度を各時点について判定し、報告した。0時間時点で、遊離および総ゲニステイン濃度は定量限界未満であり、報告されなかった。ナノ粒子状懸濁剤を受けたマウスについては、PEG400溶液製剤を受けたマウスにおいて達成された濃度と比較して、遊離ゲニステイン濃度は1、2、4、8、10および12時間時に有意により高かった。ナノ粒子状懸濁剤に関する総ゲニステイン濃度も、PEG400溶液製剤と比較して、0.5、1、2、4、8、10および12時間時に有意に高かった。表12および表13に記すように、ならびに
図4および
図5に示すように、ナノ粒子状懸濁剤についての吸収および排泄曲線はまた、遊離および総ゲニステイン濃度の両方について、PEG400製剤によって達成されたものよりはるかに予測可能であり、不規則性が低い。マウスにおける2つの異なるゲニステイン製剤についての400mg/kgの単回の経口投与後の遊離ゲニステインの判定。
【0103】
【表12】
【0104】
【表13】
【0105】
実施例11
非ナノ粒子状ゲニステイン懸濁製剤およびナノ粒子状ゲニステイン製剤の経口生物学的利用能の比較
以前の実験において、PEG−400に溶解したゲニステインの製剤と比較して、経口投与されたゲニステイン−IS懸濁製剤に関する向上した経口生物学的利用能を実証することができた。この実験は、非ナノ粒子状ゲニステイン材料を含んだ水性ゲニステイン懸濁製剤の経口生物学的利用能を、実施例4に記載されている通りに調製されたゲニステイン−IS製剤によって提供されたものと比較した。非ナノ粒子状ゲニステイン(genisten)懸濁製剤は、ゲニステイン(genestein)材料が、ゲニステイン−IS懸濁製剤によっ
て示された0.13μmの容積平均粒径の代わりに8μmの容積平均粒径を示したことを
除いて、ゲニステイン−IS製剤と同じであった。
【0106】
2つの製剤の各々について、各時点で7匹のマウスの10群(70匹のマウス)を準備した(合計マウス=140匹)。400mg/kgの単回用量を強制経口投与によって与え、次に以下の10時点で血液を収集した。血液収集の時点は、以下の通りであった:投与の0、0.5、1、2、4、6、8、10、12および24時間後。
【0107】
遊離および総ゲニステインレベルの両方を各群において時点ごとに判定した。7匹のマウスの平均濃度を各時点について判定し、報告した。0時間時点で、遊離および総ゲニステイン濃度は定量限界未満であり、報告されなかった。ゲニステイン−IS懸濁製剤マウスについては、遊離ゲニステイン濃度は、非ナノ粒子状ゲニステイン製剤によって達成されたものと比較して、0.5、1および2時間時に有意により高かった(表14を参照)。ゲニステイン−IS懸濁製剤
での総ゲニステイン濃度も、非ナノ粒子状ゲニステイン製剤によって達成されたものと比較して、0.5、1および2時間時に有意に高かった(表15を参照)。
図6および
図7に記すように、ゲニステイン−IS懸濁製剤についての吸収および排泄曲線はまた、遊離および総ゲニステイン濃度の両方について、非ナノ粒子状ゲニステイン製剤によって達成されたものよりはるかに予測可能であり、不規則性が低い。
【0108】
【表14】
【0109】
【表15】
【0110】
本発明の基礎をなす原理から逸脱せずに上記の実施態様の詳細へ多くの変更をなすことができることが、当業者には明らかであろう。したがって本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲だけによって決定されるべきである。