特許第6181733号(P6181733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181733ナノ粒子イソフラボン組成物、ならびにそれを製造および使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181733
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ナノ粒子イソフラボン組成物、ならびにそれを製造および使用する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/352 20060101AFI20170807BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20170807BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20170807BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20170807BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20170807BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20170807BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20170807BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20170807BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20170807BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170807BHJP
   A61P 39/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   A61K31/352
   A61K9/10
   A61K47/02
   A61K47/10
   A61K47/32
   A61K47/44
   A61P3/06
   A61P11/00
   A61P19/08
   A61P35/00
   A61P39/00
【請求項の数】46
【外国語出願】
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2015-220365(P2015-220365)
(22)【出願日】2015年11月10日
(62)【分割の表示】特願2013-538998(P2013-538998)の分割
【原出願日】2011年11月15日
(65)【公開番号】特開2016-74683(P2016-74683A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2015年12月9日
(31)【優先権主張番号】12/946,711
(32)【優先日】2010年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509147628
【氏名又は名称】ヒューマネティクス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100114465
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(72)【発明者】
【氏名】エルダー,エドモンド ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】サチェッティ,マーク ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】タラチャク,ランダル ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ゼンク,ジョン エル.
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−544963(JP,A)
【文献】 特表2009−519970(JP,A)
【文献】 特表2004−538242(JP,A)
【文献】 難溶性薬物の物性評価と製剤設計の新展開,2010年 1月,第1刷,p.146-150
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/352
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子状ゲニステインと、
学的に許容される懸濁媒体
を含むゲニステイン製剤であって、
前記懸濁媒体は、水溶性ポリマーと非イオン性界面活性剤を含み、
ナノ粒子状ゲニステインが0.5μm以下のD(0.50)を示し
ナノ粒子状ゲニステインが製剤中に250mg/mL以上の濃度で存在する、製剤。
【請求項2】
ナノ粒子状ゲニステインが0.2μm以下のD(0.50)を示す、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
ナノ粒子状ゲニステインが0.2μm以下のD(0.50)および0.5μm以下のD(0.90)を示す、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
ナノ粒子状ゲニステインが0.2μm以下のD(0.50)および0.4μm以下のD(0.90)を示す、請求項2に記載の製剤。
【請求項5】
非イオン性界面活性剤がポリソルベート80およびポリソルベート20の少なくとも1つである、請求項1から4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
非イオン性界面活性剤が0.01%から10%(w/w)の範囲の量で存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
非イオン性界面活性剤が0.1%から10%(w/w)の範囲の量で存在する、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
存在する非イオン性界面活性剤の量が、0.2%から5%(w/w)、0.2%から1%(w/w)、0.2%から0.6%(w/w)および0.2%から0.8%(w/w)から選択される、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
水溶性ポリマーがポリビニルピロリドン(PVP)である、請求項1から8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
水溶性ポリマーがポビドンK17である、請求項1から9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
水溶性ポリマーが0.5%から15%(w/w)の範囲の量で存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
存在する水溶性ポリマーの量が、5%から15%(w/w)、10%から15%(w/w)、12%から15%(w/w)、1%から8%(w/w)および1%から5%(w/w)から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
非イオン性界面活性剤の量が、0.01%から10%(w/w)、0.1%から10%(w/w)、0.2%から5%(w/w)、0.2%から1%(w/w)、0.2%から1%(w/w)、0.2%から0.6%(w/w)および0.2%から0.8%(w/w)から選択され、水溶性ポリマーの量が、0.5%から15%(w/w)、1%から10%(w/w)、5%から15%(w/w)、10%から15%(w/w)、12%から15%(w/w)、1%から8%(w/w)および1%から5%(w/w)から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項14】
非イオン性界面活性剤が0.1%から1%(w/w)の範囲の量で存在し、水溶性ポリマーが1%から15%(w/w)の範囲の量で存在する、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
非イオン性界面活性剤が0.2%から1%(w/w)の範囲の量で存在し、水溶性ポリマーが5%から15%(w/w)の範囲の量で存在する、請求項13に記載の製剤。
【請求項16】
ナノ粒子状ゲニステインが300mg/ml以上の濃度で製剤中に存在する、請求項1から15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項17】
緩衝液および希釈剤の少なくとも1種をさらに含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項18】
緩衝液がリン酸ナトリウム緩衝液である、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
希釈剤が塩化ナトリウム溶液である、請求項17または請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
2から12の範囲のpH、4から8の範囲のpH、5から7の範囲のpHから選択されるpHを示す、請求項17から19のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項21】
PEG400、PEG300、綿実油およびヒマシ油のうちの少なくとも1種をさらに含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項22】
ゲニステインを薬学的に許容される懸濁媒体と合わせるステップと、
合わされたゲニステインおよび薬学的に許容される懸濁媒体をナノ粉砕して、0.5μm以下のD(0.50)を特徴とする粒径分布を示す、ナノ粒子状ゲニステインを含有するゲニステイン製剤を形成するステップとを含み、ここで、懸濁媒体は水溶性ポリマーと非イオン性界面活性剤とを含み、
ナノ粒子状ゲニステインが製剤中に250mg/mL以上の濃度で存在する、
ゲニステイン製剤の製造方法。
【請求項23】
ナノ粒子状ゲニステインが製剤中に300mg/mL以上の濃度で存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ナノ粒子状ゲニステインが0.2μm以下のD(0.50)を示す、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
ナノ粒子状ゲニステインが0.2μm以下のD(0.50)および0.5μm以下のD(0.90)を示す、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ナノ粒子状ゲニステインが0.2μm以下のD(0.50)および0.4μm以下のD(0.90)を示す、請求項22から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
非イオン性界面活性剤がポリソルベート80およびポリソルベート20の少なくとも1つである、請求項22から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
非イオン性界面活性剤が0.01%から10%(w/w)の範囲の量で存在する、請求項22から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
水溶性ポリマーがポリビニルピロリドン(PVP)である、請求項22から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
水溶性ポリマーがポビドンK17である、請求項22から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
水溶性ポリマーが0.5%から15%(w/w)の範囲の量で存在する、請求項22から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
薬学的に許容される懸濁媒体が緩衝希釈液をさらに含む、請求項22から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項1から21のいずれか一項に記載のゲニステイン製剤の治療有効量を含む、対象における乳房、結腸、前立腺、甲状腺および頭頚部の癌から選択される癌の発生、発症または進行を阻止するための医薬組成物であって、医薬組成物の投与が対象における癌の発生、発症または進行を阻止する、医薬組成物。
【請求項34】
請求項1から21のいずれか一項に記載のゲニステイン製剤の治療有効量を含む、対象における非ホジキンリンパ腫、黒色腫、肺癌および卵巣癌から選択される癌の発症または進行を阻止するための医薬組成物であって、医薬組成物の投与が対象における癌の発症または進行を阻止する、医薬組成物。
【請求項35】
請求項1から21のいずれか一項に記載のゲニステイン製剤の治療有効量を含む、対象における嚢胞性線維症の発症または進行を阻止するための医薬組成物であって、医薬組成物の投与が対象における嚢胞性線維症の発症または進行を阻止する、医薬組成物。
【請求項36】
対象がDeltaF508−CFTRを内因的に産生し、さらに、医薬組成物の投与が対象内でのDeltaF508−CFTRの崩壊を阻止する、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
請求項1から21のいずれか一項に記載のゲニステイン製剤の治療有効量を含む、対象における閉経後骨量減少を低減させるための医薬組成物であって、医薬組成物の投与が対象における骨量減少の発現または進行を阻止する、医薬組成物。
【請求項38】
請求項1から21のいずれか一項に記載のゲニステイン製剤の治療有効量を含む、対象における骨形成を促進するための医薬組成物であって、医薬組成物の投与が対象における骨形成を促進する、医薬組成物。
【請求項39】
医薬組成物の投与が対象の脊椎における骨形成を促進する、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
請求項1から21のいずれか一項に記載のゲニステイン製剤の治療有効量を含む、対象におけるLDLコレステロールを制御するための医薬組成物であって、医薬組成物の投与が対象における循環LDLのレベルを低下させる、医薬組成物。
【請求項41】
請求項1から21のいずれか一項に記載のゲニステイン製剤の治療有効量を含む、対象におけるHDLコレステロールのレベルを増加させるための医薬組成物であって、医薬組成物の投与が対象における循環HDLのレベルを増加させる、医薬組成物。
【請求項42】
請求項1から21のいずれか一項に記載のゲニステイン製剤の治療有効量を含む、急性の放射線症候群を処置するための医薬組成物。
【請求項43】
請求項1から21のいずれか一項に記載のゲニステイン製剤の治療有効量を含む、急性の放射線症候群を予防的に処置するための医薬組成物。
【請求項44】
請求項1から21のいずれか一項に記載のゲニステイン製剤の治療有効量を含む、対象における急性の放射線症候群を処置するための医薬組成物であって、
対象が放射線への曝露を受ける場合には、対象が放射線曝露を受けた後に、医薬組成物が対象に投与される、医薬組成物。
【請求項45】
請求項1から21のいずれか一項に記載のゲニステイン製剤の治療有効量を含む、治療手段または診断手段の一部としての放射線への曝露を受けた対象を処置するための医薬組成物。
【請求項46】
請求項1から21のいずれか一項に記載のゲニステイン製剤の治療有効量を含む、治療手段または診断手段の一部としての放射線への曝露を受ける対象を処置するための医薬組成物であって、
医薬組成物が治療手段または診断手段を受ける前および後に対象に投与される、医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲニステインを含む組成物、ならびにそのような組成物を生成および利用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲニステインは、薬学的に活性なイソフラボンである。体内では、ゲニステインは多くの組織において広範囲の作用を有する様々な酵素と相互作用する。したがって、ゲニステインの潜在的な治療的影響は多様である。しかし、ゲニステインは、治療的に有効な血漿レベルを達成および維持する様式で製剤化し対象に送達するのが困難であることが判明している。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1図1は、(ゲニステインの溶液製剤を投与されたマウスの群における30日生存率)対(本明細書に記載されているゲニステイン懸濁製剤を投与されたマウスの群における30日生存率)を示すグラフである。
図2図2は、照射の24、18、12または6時間前に、本明細書に記載されているゲニステイン懸濁製剤を皮下投与した後のマウスの30日生存率を示すグラフである。
図3図3は、本明細書に記載されているゲニステイン懸濁製剤の皮下および筋肉内投与の後のマウスの30日生存率を示すグラフである。
図4図4は、(本明細書に記載されているゲニステイン懸濁製剤の経口投与の後に達成された遊離ゲニステイン濃度)対(ゲニステインの溶液製剤によって達成された遊離ゲニステイン濃度)を示すグラフである。
図5図5は、(本明細書に記載されているゲニステイン懸濁製剤の経口投与の後に達成された総ゲニステイン濃度)対(ゲニステインの溶液製剤によって達成された総ゲニステイン濃度)を示すグラフである。
図6図6は、(本明細書に記載されているゲニステイン懸濁製剤の経口投与の後に達成された遊離ゲニステイン濃度)対(ゲニステインの非ナノ粒子状懸濁製剤によって達成された遊離ゲニステイン濃度)を示すグラフである。
図7図7は、(本明細書に記載されているゲニステイン懸濁製剤の経口投与の後に達成された総ゲニステイン濃度)対(ゲニステインの非ナノ粒子状懸濁製剤によって達成された総ゲニステイン濃度)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0004】
ゲニステイン化合物の組成物が、本明細書に記載されている。特定の実施態様において、本明細書に記載されている組成物は、経口または非経口投与に適する医薬製剤である。一般に、ゲニステインの所望の治療的用途を考えると、(i)比較的短い時間で治療的血漿中濃度を達成し、(ii)長時間にわたって治療的血漿中濃度を維持する様式で対象にゲニステインを送達することが望ましい。しかし、ゲニステインの入手可能な製剤を用いる場合、ゲニステインの治療的血漿中濃度を達成および維持するために、比較的高い用量のゲニステインがしばしば必要とされることが分かっている。これは、ゲニステインが経口投与される場合に特に当てはまる。しかし、ゲニステインが非経口投与(例えば、静脈内注射もしくは注入、血管内注射、皮下注射、または筋肉内注射を介して)のために製剤化されるときでさえ、治療的血漿中濃度を達成および維持するために比較的多量の薬剤製剤を送達しなければならない場合がしばしばある。
【0005】
ゲニステインは水に実質的に不溶性であるので、1部のゲニステインを溶解させるため
に25℃で50,000部を超える水を必要とする。さらに、経口的に送達される場合は、ゲニステインは劣る生物学的利用能を示しており、それは、少なくとも一つには、この化合物が少なくとも低水溶性であることによる可能性がある。したがって、ゲニステインの一般に低い生物学的利用能および水溶性を考慮すると、ゲニステインの治療的血漿中濃度を達成および維持することは、比較的高い投与頻度で送達される高い用量のゲニステインを必要とする可能性がある。著しく増大した生物学的利用能を提供する高濃度のゲニステインを有するゲニステイン組成物が、本明細書に記載されている。さらに、特定の実施態様において、本明細書に記載されているゲニステイン組成物は、長時間にわたってゲニステインの治療的血漿レベルを維持する。
【0006】
本明細書に記載されているゲニステイン製剤は、経口および非経口投与に適する。さらに、本明細書に記載されている製剤は、いくつかの利点を潜在的に提供する。例えば、より少ない量の原薬、および一部の実施態様において比較的より少ない用量を用いてゲニステインの治療的血漿中濃度を達成するためにそれらを用いることができるので、本明細書に記載されている製剤は、ゲニステイン処置の費用ならびに化合物の比較的より高い用量に付随する可能性があるいかなる潜在的な副作用も低減させることができる。さらに、本明細書に記載されている製剤は、製剤化された薬剤の比較的より少ない投与量を用いて治療量のゲニステインの送達を可能にするので、それらは患者の薬剤服用遵守(compliance)を容易にすること、およびゲニステインの投与を利用することができる状況を拡大することができる。
【0007】
本明細書に記載されている製剤は、望ましい安定特性も示し、商業生産のために拡張可能であり、具体的な実施態様において、投与後ゲニステインの循環半減期を増加させることができる。
【0008】
ゲニステインを用いる処置に適する様々な疾患および障害のリスクがあるまたはそれらを患っている対象を処置する方法も、本明細書に記載されている。
【0009】
I.定義
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられるように、内容が明らかに別途指示しない限り、単数形「a」、「an」および「the」には複数形が含まれる点に留意されたい。したがって、例えば、「緩衝液(a buffer)」と言う場合は複数のそのような緩衝液を含み、「緩衝液(the buffer)」と言う場合は1種または複数の緩衝液および当業者に公知であるその同等物を指す、などである。
【0010】
本明細書において、範囲は、「約の」1つの特定の値から、および/または「約の」別の特定の値までのように表すことができる。そのような範囲が表されている場合、別の実施態様は、1つの特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」の使用によって値が近似値で表されている場合、特定の値が別の実施態様を形成することが理解されよう。範囲の各々のエンドポイントは、他のエンドポイントに対して、および他のエンドポイントと独立して有意であることがさらに理解されよう。いくつかの値が本明細書で開示されていること、および各値も本明細書においてその値自体に加えて「約の」その特定の値として開示されていることも理解される。例えば、値「10」が開示されている場合には、「約10」も開示されている。2つの特定の単位間の各単位も開示されていることも理解される。例えば、10および15が開示されている場合は、11、12、13および14も開示されている。
【0011】
本明細書で用いるように、「ナノ粒子状(nanoparticulate)」は、レーザ光線回折を
用いて測定される体積直径を示す材料を指し、そこで材料のD(0.50)は0.5μm以下であり、2μmを超える大きさの粒子はない。レーザ光線回折を用いる粒径分析は、
粒径と直接に関連する様々な角度を通して散乱する光に基づく技術である。分析される粒子が散乱させた光の角度およびこの散乱光の強度を測定することによって、粒径分布を計算することができる。本開示との関連で粒径の分析に用いられる技術は、静的光散乱、レーリー光散乱、低角度光散乱(LALS)、多角度光散乱(MALS)フラウンホーファー回折またはミー散乱と呼ぶことができる。ミー散乱を用いる粒径分布の測定は、質量の方向測定を通しての粒径分布の判定を可能にする。
【0012】
レーザ光線回折による粒径の分析への2つの理論的適用は、粒子の特性についての仮定に基づく。フラウンホーファー理論は以下を考慮する:粒子は球状、非多孔性および不透明であること;粒径は、分析で用いられるレーザ光線の波長より大きいこと;および、粒子は、光の回折に干渉せず、無秩序運動を示さず、サイズおよび形状に関係なく同じ効率で光を回折しないように互いから十分に遠く離れていること。ミー理論は粒子と懸濁媒体との間の屈折率の差を考慮し、それは、分析で用いられるレーザ光線の波長を下回るサイズ範囲の粒子を測定技術が説明することを可能にする。異なるサイズの粒子の相対量は、異なる角度で散乱した光の強度を測定することによって判定される。粒子が光の波長に近づくまたはそれより小さくなるに従い、光強度のより多くがより高い角度へ散乱し、後方散乱する。ミー散乱理論は、この異なる挙動を説明する。粒径を測定するために、光強度パターンが全角度範囲にわたって測定される。粒径が入射光の波長より大きい場合は、ミー式はフラウンホーファー式に換算する。1回の分析において全サイズ範囲の測定を可能にするために、高角度および後方散乱検出器を含む検出器のアレイ、ならびに異なる波長の複数の光源が一般的に用いられる。レーザ光線回折による粒径の分析で使用するのに適している装置は市販されており、例えば、Horiba Instruments、Irvine、CAによって製造されている。
【0013】
本明細書で用いられる用語「体積直径」は、懸濁分散試料チャンバーを備えた、ミー散乱理論回折モードで動作するレーザ回折粒径分析器を用いて測定される粒径を指す(例えば、Horiba Instruments、Irvine、CA、USAから入手可能である)。本記載のために、体積直径は、D(0.10)、D(0.50)およびD(0.90)の1つまたは複数によって定義される粒径分布として与えられる。本明細書で言及される場合、用語D(0.10)は、試料の10%が参照サイズを下回る粒子の体積頻度分布を示し、用語D(0.50)は、試料の50%が参照サイズを下回る粒子の体積頻度分布を示し、用語D(0.90)は、試料の90%が参照サイズを下回る粒子の体積頻度分布を示す。
【0014】
本明細書で用いられる用語「非経口」は、経口投与以外の任意の経路または手段による対象への活性薬剤または製剤の送達を指す。例えば、本開示のために、非経口製剤には、局所、経皮および口内送達のための製剤および系が含まれる。本明細書で企図される用語「非経口」は、坐薬および坐薬としての製剤に適している組成物による送達をさらに包含する。本開示のために、用語「非経口」は、注入または注射、例えば静脈内注射、静脈内注入、血管内注射、皮下注射および筋肉内注射を介する送達をさらに包含する。
【0015】
本明細書で用いるように、「医薬組成物」は、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤またはアジュバントと合わせてゲニステインを含み、対象への経口または非経口投与に適する組成物を指す。
【0016】
用語「放射線防護薬」は、電離放射線への曝露から生じる有害細胞作用から細胞または生体を保護する剤を指す。これらの有害細胞作用には、細胞DNAへの損傷、例えばDNA鎖切断、細胞機能の破壊、細胞死および/または発癌が含まれる。より詳しくは、造血系は速やかに分裂する系であり、したがって、高線量全身電離放射線への曝露によって中枢的に侵される。骨髄形成不全およびその結果生じる白血球減少、赤血球減少および血小
板減少は、動物またはヒトの感染、出血および最後に死の素因になる。本開示のために、放射線防護薬は、潜在的放射線曝露の前に予防的に投与されるものであってよく、そのような曝露が起こった場合には、そのような投与は、電離放射線への曝露の症状または影響の防止、重症度の低減、または遅延をもたらす。さらに、放射線防護薬は、電離放射線への曝露が起こった後に投与される放射線曝露のための処置として用いることができ、そのような投与は緩和(すなわち、さもなければ所与の線量の電離放射線への曝露に伴う症状または影響の防止、重症度の低減、遅延、停止または逆行)をもたらす。
【0017】
本開示では、「対象」は、治療効果を達成するために本明細書に記載されている製剤を投与することができる動物である。一実施態様において、対象はヒトである。
【0018】
「治療的に有効な」は、患者における疾患もしくは障害を阻止することによって、または疾患もしくは障害の発生を予防的に阻止もしくは防止することによって治療効果を達成する、本明細書に記載されているゲニステインの量またはゲニステインの製剤の量を指す。治療有効量は、患者における疾患または障害の1つもしくは複数の症状をある程度まで軽減させる量;疾患もしくは障害に伴うもしくはそれを引き起こす1つもしくは複数の生理的もしくは生化学的パラメータを部分的もしくは完全に正常に戻す量;および/または疾患もしくは障害の発生の可能性を低減させる量であってよい。
【0019】
II.ゲニステイン製剤
ゲニステインは、植物において通常見出されるいくつかの公知のイソフラボンの1つである。天然のゲニステインの主な供給源は、大豆および他の豆類である。ゲニステインは市販されており、合成の精製された形において得ることができる。例えばDSM Nutritional Products(DSM Nutritional Products,Inc.Parsippany、NJ)からBONISTEINとして、合成ゲニステインが入手可能である。ゲニステインの化学名は、5,7−ジヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−クロメン−4−オン(IUPAC)である。ゲニステインの化学構造は以下の通りに示される:
【0020】
【化1】
【0021】
本明細書に記載されているゲニステイン製剤は、1種または複数の担体、賦形剤および/または希釈剤から形成された懸濁媒体中に懸濁されたナノ粒子状ゲニステインを含む懸濁製剤である。特定の実施態様において、製剤は医薬組成物として提供され、そのような組成物の形成で用いられる担体、賦形剤および/または希釈剤は薬学的に許容される材料から選択される。治療的使用に適している薬学的に許容される担体、賦形剤および希釈剤は医薬の分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Maack Publishing Co.(A.R.Gennaro(編)1985)に記載されている。そのような一実施態様において、本明細書で開示されている製剤には、水溶性ポリマーおよび非イオン性界面活性剤を含む懸濁媒体中に懸濁したナノ粒子状ゲニステインを含む懸濁剤が含まれてよい。本明細書に記載されている製剤で用いられるゲニステインは、天然に由来するまたは合成的に生成されるゲニステインであってよい。本明細書に記載されているゲニステインの医薬組成物は、経口および非経口投与の両方に同時に適するように製剤化することができる。本明細書に記載
されているゲニステインの製剤は懸濁剤として特徴づけられるが、一部の実施態様において、ナノ粒子状ゲニステインを懸濁させる媒体に含まれる担体、賦形剤および希釈剤に応じて、測定可能な量のゲニステインが懸濁媒体中に溶解していてもよい。
【0022】
本明細書で開示されている製剤で使用するのに適するナノ粒子状ゲニステインは、ナノサイズの粒子を生成するための公知の方法に従って調製することができる。一実施態様において、天然または合成のゲニステイン材料を、当技術分野で公知の粉砕技術に従ってナノ粉砕することができる。一実施態様において、ナノ粉砕は、連続分散および微細湿式磨砕のための水平磨砕容器内の撹拌ビーズミルを利用する湿式ビーズ粉砕を含むことができる。DYNO−MILL(CB Mills、Gurnee、IL)などのビーズミルを用いる別の実施態様において、分散および磨砕に必要なエネルギーは、撹拌機シャフト上に取り付けられた撹拌機ディスクを通して磨砕ビーズに伝えられる。
【0023】
一実施態様において、本明細書に記載されているナノ粒子状ゲニステイン組成物は、薬学的に許容される懸濁媒体中に懸濁したゲニステインをビーズミルに導入することによって提供される。そのような実施態様において、ゲニステイン懸濁液はビーズミル中に供給され、薬学的に許容される懸濁媒体中に懸濁したナノ粒子状ゲニステインを特徴とする医薬ゲニステイン組成物を生じさせる様式で粉砕される。そのような一実施態様において、規定の粒径分布のナノ粒子状ゲニステイン材料を含有する懸濁組成物に到達するまで、ビーズミルを通してゲニステイン懸濁製剤を連続的に供給することができる。例えば、ビーズミルを通して懸濁液の量を再循環させ、その後ビーズミルを1回または複数回単独通過させて、所望のゲニステイン粒径分布を示す医薬組成物に到達することによって、ゲニステイン製剤をナノ粉砕することができる。本明細書に記載されている医薬組成物中に懸濁したゲニステイン材料の粒径は、ビーズミルのパラメータおよび磨砕条件を調整することによって制御することができる。例えば、ビーズミルにおいてゲニステインまたはゲニステイン懸濁製剤をナノ粉砕することによって生じる粒径は、ビーズサイズ、ビーズ負荷/懸濁液重量比、懸濁液組成、撹拌速度および粉砕時間によって制御することができる。
【0024】
本明細書において、ナノ粉砕は、本明細書に記載されている製剤で使用するのに適するナノ粒子状材料を生成する手段として一般に参照されているが、ナノ粒子状材料は他の適する技術によっても生成することができる。例えば、本明細書で用いられるナノ粒子状ゲニステイン材料は、1つまたは複数の公知の湿式粉砕技術、超臨界もしくは圧縮流体技術、高温もしくは高圧均質化、乳化技術、蒸発沈殿、逆溶剤沈殿、微小沈殿、低温技術、錯体化技術、超音波処理技術または固体分散技術を用いて生成することができる。水性または溶媒分散技術から生じるナノ粒子を単離するために、処理後に噴霧乾燥および凍結乾燥を用いることができる。
【0025】
本明細書に記載されている製剤に含まれるゲニステインは、本明細書で定義されるナノ粒子状材料である。一実施態様において、本明細書で開示されている組成物は、0.2μm以下のD(0.50)を示すナノ粒子状ゲニステイン材料を含むことができる。そのような一実施態様において、ナノ粒子状ゲニステイン材料は、0.2μm以下のD(0.50)および0.5μm以下のD(0.90)を示す。さらに別の実施態様において、ナノ粒子状ゲニステイン材料は、0.2μm以下のD(0.50)および0.4μm以下のD(0.90)を示す。
【0026】
本明細書に記載されている製剤に含まれるナノ粒子状ゲニステイン材料は、1種または複数の担体、賦形剤および/または希釈剤を含む懸濁媒体中に懸濁している。本明細書に記載されているように、特定の実施態様において、そのような担体、賦形剤および希釈剤は、疾患または障害、例えば本明細書に記載されている疾患または障害のリスクがあるまたはそれを患っている対象に投与することができる医薬組成物の調製を促進する薬学的に
許容される材料から選択される。
【0027】
湿潤を促進し、ナノ粒子状ゲニステイン原薬の凝集の防止を助けるために、1種または複数の非イオン性界面活性剤が懸濁媒体に含まれてもよい。本明細書に記載されている製剤で使用するのに適する非イオン性界面活性剤は、例えば、ポリソルベート、ポロキサマー、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(例えば、Cremophor EL、Cremophor RH60)、胆汁酸塩、レシチン、12−ヒドロキシステアリン酸−ポリエチレングリコールコポリマー(例えば、Solutol HS 15)などから選択されてよい。具体的な実施態様において、本明細書に記載されている製剤は、ポリソルベート80(Tween 80)、ポリソルベート20(Tween 20)、ポロキサマー188およびそれらの組合せから選択される非イオン性界面活性剤を含む。一実施態様において、非イオン性界面活性剤の総含有量は、約0.01重量%から約10重量%(w/w)の範囲にある。別の実施態様において、非イオン性界面活性剤の総含有量は、約0.1%から約10%(w/w)の範囲である。特定のそのような実施態様において、非イオン性界面活性剤の総含有量は、約0.2%から約5%(w/w)、約0.2%から約1%(w/w)、約0.2%から約1%(w/w)、約0.2%から約0.6%(w/w)および約0.2%から約0.8%(w/w)から選択される。
【0028】
本明細書に記載されている懸濁製剤は1種または複数の水溶性ポリマーを含むことができ、それは、例えば、懸濁液の粘度を強化する役目、または粒子凝集もしくは他の製剤成分からの潜在的有害作用に対してナノ粒子状ゲニステインを安定させる役目をすることができる。水溶性ポリマーは、水に溶解または分散させることができる薬学的に許容されるポリマーである。本明細書に記載されている製剤で用いるのに適する水溶性ポリマーは、例えば、植物ガム、例えばアルギン酸塩、ペクチン、グアーガムおよびキサンタンガム、化工デンプン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒプロメロース(HPMC)、メチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースなどから選択することができる。特定の実施態様において、本明細書に記載されている製剤は、水溶性ポリマーとしてポロキサマー188などのポロキサマーを含むことができる。ポロキサマー188は、ポリマーでもあり界面活性剤でもある。他の実施態様において、本明細書に記載されている製剤は、水溶性ポリマーとしてポビドンK17を含むことができる。本明細書に記載されている懸濁製剤に1種または複数の水溶性ポリマーが含まれる場合は、具体的な実施態様において、水溶性ポリマーの総含有量は約0.5%から約15%(w/w)の範囲である。例えば、特定のそのような実施態様において、水溶性ポリマーの総含有量は、約1%から約10%(w/w)の範囲である。他のそのような実施態様において、水溶性ポリマーの総含有量は、約5%から約15%(w/w)、約10%から約15%(w/w)、約12%から約15%(w/w)、約1%から約8%(w/w)および約1%から約5%(w/w)から選択することができる。
【0029】
特定の実施態様において、懸濁製剤に含まれる懸濁媒体は、1種または複数の非イオン性界面活性剤と1種または複数の水溶性ポリマーとの組合せを含む。その場合、非イオン性界面活性剤成分および水溶性ポリマー成分は、そのような材料の組合せを含む、本明細書に既に記載されている材料から選択されてよい。さらに、懸濁媒体が非イオン性界面活性剤と水溶性ポリマーとの組合せを含む場合、懸濁製剤に含まれる総非イオン性界面活性剤および総水溶性ポリマーは、既に詳述されている量から選択することができる。例えば、懸濁媒体が非イオン性界面活性剤と水溶性ポリマーとの組合せを含む場合、非イオン性界面活性剤の総含有量は、約0.01%から約10%(w/w)、約0.1%から約10%(w/w)、約0.2%から約5%(w/w)、約0.2%から約1%(w/w)、約0.2%から約1%(w/w)、約0.2%から約0.6%(w/w)および約0.2%から約0.8%(w/w)から選択することができ、水溶性ポリマーの総含有量は、約0
.5%から約15%(w/w)、約1%から約10%(w/w)、約5%から約15%(w/w)、約10%から約15%(w/w)、約12%から約15%(w/w)、約1%から約8%(w/w)および約1%から約5%(w/w)から選択することができる。そのような一実施態様において、非イオン性界面活性剤成分は約0.1%から約1%(w/w)の範囲の量で存在することができ、水溶性ポリマー成分は約1%から約15%(w/w)の範囲の量で存在することができる。別のそのような実施態様において、非イオン性界面活性剤成分は約0.2%から約1%(w/w)の範囲の量で存在することができ、水溶性ポリマー成分は約5%から約15%(w/w)の範囲の量で存在することができる。懸濁媒体が非イオン性界面活性剤および水溶性ポリマーの両方を含む懸濁製剤の具体的な実施態様において、非イオン性界面活性剤はポリソルベート、例えばポリソルベート80(Tween 80)およびポリソルベート20(Tween 20)から選択することができ、水溶性ポリマーは、ポロキサマー、例えばポロキサマー188、およびPVP、例えばポビドンK17から選択することができ、非イオン性界面活性剤および水溶性ポリマーは、本明細書で詳述されている相対量のいずれかで製剤に含まれる。
【0030】
本明細書による懸濁製剤に含まれる懸濁媒体は、担体を含むこともできる。例えば、本明細書に記載されている製剤で使用するのに適する担体には、薬学的に許容される水性担体、例えば滅菌水、生理的に緩衝化された生理食塩水ハンク溶液、リンガー液および他の任意の適する水性担体が含まれる。本明細書に記載されている懸濁製剤は、所望のpHおよびオスモル濃度を達成するために、緩衝液、例えばクエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス緩衝液およびホウ酸緩衝液の1種または複数を利用することができる。例えば、注射用医薬品を製剤化するための一般的なpH範囲は、約2から約12である。一部の実施態様において、製剤のpHは、生理的pHにより近似する範囲内であってよい。例えば、特定の実施態様において、本明細書に記載されている懸濁製剤は、約4から約8の範囲、および約5から約7の範囲から選択されるpHを示すように製剤化される。
【0031】
本明細書に記載されている懸濁製剤は、1種または複数の希釈剤を含むこともできる。適する希釈剤は、例えば、薬学的に許容される緩衝液、溶媒および界面活性剤から選択することができる。
【0032】
本明細書に記載されている通りに調製された懸濁製剤は、高濃度ゲニステイン製剤(すなわち、約250mg/mL以上の量でゲニステインを含有する製剤)を提供するのに適している。ゲニステインは、いくつかの薬学的に許容される溶媒への溶解度が低い〜実質的にゼロであるが、本明細書に記載されているナノ粒子状懸濁製剤は最大で300mg/mlまでおよびそれを超えるゲニステインを組み込むことができる。具体的な実施態様において、本明細書に記載されているゲニステイン製剤は、約250mg/mLから約500mg/mLの範囲の量でゲニステインを組み込むことができる。特定のそのような実施態様において、本明細書に記載されている懸濁製剤に含まれるゲニステインの量は、約200mg/mlから約400mg/ml、約250mg/mlから約350mg/ml、および約275mg/mlから約325mg/mlから選択することができる。
【0033】
本明細書に記載されている懸濁製剤に含まれるゲニステインの相対量は、所望の総含有量のゲニステインを有する製剤を達成するために所望により変化させることができる。例えば、本明細書に記載されている懸濁製剤は、最大で約85%(w/w)のゲニステインを含むことができる。特定のそのような実施態様において、ゲニステインの相対量は、最大で約75%(w/w)、最高約65%(w/w)および最高約50%(w/w)から選択される。あるいは、本明細書に記載されている懸濁製剤の実施態様は、約40%から約75%(w/w)の範囲、約40%から約65%(w/w)の範囲、約40%から約50%(w/w)の範囲、約50%から約75%(w/w)の範囲および約50%から約65%(w/w)の範囲から選択される量のゲニステインを含むことができる。
【0034】
本発明者らは、本明細書に従って調製された懸濁組成物が、溶液製剤と比較してゲニステインの生物学的利用能を増大させることができることも見出した。詳細には、あとに続く実験例で例示されているように、例えば薬学的に許容されるPEG溶媒を用いて調製された溶液製剤と比較して、本明細書に記載された通りに調製された懸濁製剤は有意に向上した相対的生物学的利用能を示した。そのような結果は、一般に予想されるものと逆である。例えば、特定の実施態様において、ゲニステインの溶液製剤またはより大きなサイズのゲニステイン材料を組み込んでいるゲニステインの製剤に対して、本明細書に記載されている懸濁製剤は最大で300%のピーク総ゲニステイン血清濃度の増加を提供する。特定のそのような実施態様において、ピーク総ゲニステイン血清濃度の増加は約50%から約300%の範囲である。他のそのような実施態様において、ピーク総ゲニステイン血清濃度の増加は、約50%以上、約75%以上、約100%以上および約200%以上から選択される。
【0035】
本明細書に記載されている製剤により提供される高い薬剤負荷と有意に増大した相対的生物学的利用能との組合せは、いくつかの利点を提示する。本明細書に記載されているゲニステイン懸濁製剤による薬剤負荷の有意な飛躍は、はるかに少ない製剤化原薬を用いて、それを必要とする対象への治療有効量のゲニステインの投与を容易にし、そのことは、次に、患者の薬剤服用遵守を増加させること、および比較的高い用量のゲニステインの送達を必要とする治療的状況におけるゲニステインの投与にはるかによく適しているゲニステイン製剤の製造を容易にすることができる。さらに、本明細書に記載されているゲニステイン懸濁製剤によって与えられる生物学的利用能の増大は、治療的ゲニステイン血漿レベルを達成および維持するために対象に送達されなければならないゲニステインの量を低減させる付加利益を提供する。したがって、本明細書に記載されている製剤は、治療効果を達成および維持するために必要な投与されるゲニステインの相対量の有意な低減を提供し、そのことは、ゲニステイン処置の費用を低減させること、化合物の比較的より高い用量に伴い得る潜在的副作用を緩和させるまたは回避する働きをすること、および治療効力を達成および維持するために必要な製剤化原薬の量をさらに減少させることができる。
【0036】
尚さらに、本明細書に教示されている懸濁製剤は、単一の所与の製剤が経口および非経口送達の両方に適するように製剤化することができる。本明細書に記載されている懸濁製剤が非経口送達のために調製される場合は、それは、例えば静脈内注射もしくは注入、血管内注射、皮下注射または筋肉内注射を介して送達可能な滅菌組成物を提供する標準の方法に従って製造することができる。本明細書に記載されている懸濁製剤は、非経口投与の所望の経路に適する粘度を示すように調製することができ、所望の用途に適する任意の様式で、例えば静脈内注射もしくは注入、血管内注射、皮下注射または筋肉内注射を介して送達可能な製剤として製造およびパッケージすることができる。特定の実施態様において、本明細書に記載されている製剤は、所与の用量または用量範囲のゲニステインの投与のために調製された予充填注射器(pre-filled syringes)に含まれてもよい。
【0037】
経口投与のために調製される場合、製剤は、所望の用量のゲニステインの経口投与のための任意の適する装置を用いて、任意の適する様式で調製することができる。例えば、本明細書に記載されている製剤が経口送達のために調製される場合は、それらは、所望の用量を送達するために計量することができる、または液状製剤の送達に適しているカプセル剤、例えばゼラチンもしくはソフトカプセル剤に組み込むことができる懸濁液(liquid suspension)として調製することができる。あるいは、経口投与のために調製された本明
細書に記載の製剤は、予充填小袋(sachet)または前計量投薬カップに入れてよい。経口投与のために調製されたゲニステイン製剤は、1種または複数の薬学的に許容される甘味料、保存料、染料、香味料またはそれらの任意の組合せを任意選択で含むことができる。
【0038】
III.方法
本明細書に記載されているゲニステイン懸濁製剤は、ゲニステインで処置できる疾患または障害を患っているまたはそのリスクのある対象を処置するために用いることができる。臨床試験、動物試験、細胞培養実験および疫学調査は、ゲニステインが様々な生理的効果を及ぼすというエビデンスを提供している。ゲニステインによる処置に適合する疾患および障害の例は、本明細書に記載されている。しかし、ゲニステインの潜在的治療的用途は本明細書に記載されているものに限定されず、本明細書によるゲニステイン製剤は、ゲニステインの投与が治療的に有効である任意の疾患または障害のリスクがあるまたはそれを患っている対象を処置するために用いることができる。
【0039】
1つの例として、ゲニステインは、組織培養およびin vivoで抗腫瘍、転移抑制および抗血管新生(血管成長の抑制)特性を示した。いくつかの疫学調査は、大豆の消費が乳房、結腸、前立腺、甲状腺および頭頚部の癌の発病率の低下に寄与することができることを示唆している−ゲニステインおよび他のイソフラボンに起因する効果(Takimotoら、Cancer Epidemiol Biomarkers Prev.2003年11月;12(11 Pt 1):1213〜21頁;Weiら、J Nutr.2003年11月;133(第11補遺1):3811S〜3819S頁;Sakar,F.H.およびY.Li、Cancer Invest.2003年;21(5):744〜57頁;Magee P.J.およびI.R.Roland、Br J Nutr.2004年4月;91(4):513〜31頁;Park,O.J.およびY.J.Surh、Toxicol Lett.2004年4月15日;150(1):43〜56頁;Messina,M.J.、Nutr Re.2003年4月;61(4):117〜31頁)。ゲニステインは、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、肺癌および卵巣癌を抑制することも報告されている(Weiら2003年;Mohammadら、Mol Cancer Ther.2003年12月;2(12):1361〜8頁;Nicosiaら、Hematol Oncol Clin North Am.2003年8月;17(4):927〜43頁;Sunら、Nutr Cancer.2001年;39(1):85〜95頁)。組織培養実験は、ゲニステインの抗癌効果が、非常に大量の大豆製品を食べない限り食品だけから達成するのが困難である用量で起こることを示唆している。したがって、信頼できるゲニステイン投薬は、濃縮された補助食品の使用を必要とする(MageeおよびRoland 2004年)。
【0040】
したがって、ゲニステイン製剤は、乳房、結腸、前立腺、甲状腺および頭頚部の癌から選択される癌などの特定の癌の発生、発症または進行を抑制する方法において用いることができる。そのような一実施態様において、乳房、結腸、前立腺、甲状腺、頭部または頚部の癌を発症するリスクがある対象を特定し、本明細書に記載されているもののいずれかから選択されるゲニステイン製剤の治療有効量を対象に投与する。本明細書に記載されているゲニステイン製剤は、癌を処置する方法で用いることもできる。特定の実施態様において、ゲニステイン処置に応答性の癌、例えば非ホジキンリンパ腫、黒色腫、肺癌および卵巣癌から選択される癌のリスクがあるまたはそれを患っている患者を特定し、本明細書に記載されているもののいずれかから選択されるゲニステイン製剤の治療有効量を対象に投与する。
【0041】
閉経後骨量減少を低減させるゲニステインおよび関連する大豆イソフラボンの能力も、多くの研究において示されている。これらの物質は、特に脊椎における骨量減少を防止し、骨形成を促進する。有効であることが見出された投与計画のうちには、以下がある:1mg/日のゲニステイン+0.5mg/日のダイゼイン+42mg/日の他のイソフラボン(この場合、ビオカニンAおよびホルモノネチン);54mg/日のゲニステイン;57mg/日のイソフラボン;65mg/日のイソフラボン;90mg/日のイソフラボン(Morabitoら J Bone Miner Res.2002年10月;17(
10);1904〜12頁;Cotter A.およびK.D.Cashman、Nutr Rev.2003年10月;61(10):346〜51頁;Atkinsonら、Am J Clin Nutr.2004年2月;79(2):326〜33頁;Setchell K.D.およびE.Lydeking−Olsen、Am J Clin Nutr.2003年9月;78(第3補遺);593S〜609S頁;Clifton−Blighら、Menopause.2001年7月〜8月;8(4):259〜65頁;Fitzpatrick,L.A.、2003年3月14日;第44補遺1:S21〜9頁)。したがって、閉経後骨量減少を低減させるための方法も、本明細書で提供される。一実施態様において、そのような方法は、閉経後骨量減少のリスクがあるまたはそれを起こしている対象を特定するステップと、本明細書に記載されているもののいずれかから選択されるゲニステイン製剤の治療有効量を対象に投与するステップとを含む。あるいは、骨形成を促進するための方法も提供される。そのような一実施態様において、例えば脊椎における骨形成を促進するための方法は、骨質量の減少のリスクがあるまたはそれを起こしている対象を特定するステップと、本明細書に記載されているもののいずれかから選択されるゲニステイン製剤の治療有効量を対象に投与するステップとを含む。
【0042】
ゲニステインは、嚢胞性線維症の処置で用いることも示唆されている。嚢胞性線維症の主要な臨床症状は、嚢胞性線維症に伴う大部分の病的状態(morbidity)および死亡率の
原因である慢性閉塞性肺疾患、ならびに膵機能不全症である。嚢胞性線維症(CF)は、原形質膜タンパク質である嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)における突然変異に起因する。CFTRは塩素チャネルとして機能し、CFTRをコードする遺伝子の約1000個の突然変異が現在知られている。これらの公知の突然変異のうちの最も一般的なものは、CFTRタンパク質の508位でのフェニルアラニンの欠失をもたらす。この突然変異はDelta508と呼ばれ、嚢胞性線維症を患っている大部分の患者に存在する。Delta508突然変異は、原形質膜へ輸送されないが、その代わりにユビキチン−プロテアソーム経路において分解される異常なCFTRを生じさせる。嚢胞性線維症のための処置法を開発するための1つの手法は、CFTRのフォールディングに関与するシャペロンタンパク質に干渉することによってDeltaF508−CFTRの分解を阻止することである。ゲニステインは、関連するシャペロンタンパク質への干渉を通してDeltaF508−CFTRの分解を阻止することがin vitro系において示された。さらに、原形質膜に存在する場合には、ゲニステインを用いて、CFTRまたはその突然変異形を刺激することが可能であることが示されている(Roomans,G.M.、Am J Respir Med.2003年;2(5):413〜31頁)。
【0043】
本明細書に記載されているゲニステイン製剤は、嚢胞性線維症の処置で用いることができる。そのような方法の一実施態様において、嚢胞性線維症のリスクがあるまたはそれを患っている対象を特定し、本明細書に記載されているもののいずれかから選択されるゲニステイン製剤の治療有効量を対象に投与する。特定の実施態様において、DeltaF508−CFTRに伴う嚢胞性線維症のリスクがあるまたはそれを患っている対象を特定し、本明細書に記載されているもののいずれかから選択されるゲニステイン製剤の治療有効量を対象に投与する。本明細書に記載されている嚢胞性線維症を処置するための方法の各実施態様において、対象に投与されるゲニステイン製剤の治療有効量は、以下の1つまたは複数を達成するのに十分である:DeltaF508−CFTRの分解を阻止する;嚢胞性線維症または嚢胞性線維症に伴う1つもしくは複数の症状の発生を阻止または防止する;嚢胞性線維症に伴う1つまたは複数の症状の重症度を緩和または低減させる;嚢胞性線維症の進行または嚢胞性線維症に伴う1つもしくは複数の症状の悪化を遅らせる。
【0044】
ゲニステインは、脂肪が体によって代謝される速度を増加させ、それらが組織に堆積する速度を減少させるようである(Goodman−Gruen,D.およびD.Kritz−Silverstein、Menopause.2003年9月〜10月;10(5
):427〜32頁)。さらに、ヒトおよび動物の臨床研究において、ゲニステインおよびダイゼインの消費は、体脂肪の減少、より低い空腹時インスリン濃度、より低いLDLおよびより高いHDLコレステロール、ならびに血糖へのインスリン応答の向上をもたらした。コレステロール効果は、42mg/日のゲニステインに27mg/日のダイゼインを加えた投与量で見られた(Bhathena,S.J.およびM.T.Velasquez、Am J Clin Nutr.2002年12月;76(6):1191〜201頁;Urbanら、J Urol.2001年1月;165(1):294〜300頁)。LDLを低下させ、HDLを上昇させる(前述)ことに加えて、ゲニステインは、動脈プラークに寄与すると考えられる過程であるLDLの酸化を防止する(Young,S.G.およびS.Parthasarathy、West J Med.1994年2月;160(2):153〜54頁)。本明細書に記載されているゲニステイン製剤は、それを必要とする対象におけるLDLを低下させるおよび/またはHDLを上昇させるための方法において用いることができる。そのような一実施態様において、LDLの高い循環レベルのリスクがあるまたはそれを起こしている対象を特定し、本明細書に記載されているもののいずれかから選択されるゲニステイン製剤の治療有効量を対象に投与し、そこで、ゲニステイン製剤の治療有効量は、対象におけるLDLレベルを低下させる、または循環LDLレベルの上昇を防止するもしくは遅らせるのに十分である。別の実施態様において、循環HDLレベルの上昇によって利益を受けることができる対象を特定し、本明細書に記載されているもののいずれかから選択されるゲニステイン製剤の治療有効量を対象に投与し、そこで、ゲニステイン製剤の治療有効量は、対象における循環HDLレベルを上昇させる、または循環HDLレベルの低下を防止するもしくは遅らせるのに十分である。
【0045】
ゲニステインは、放射線防護薬でもある。例えば、ゲニステインは照射を受けたマウスにおいて造血および生存を増加させることが報告されている(Zhou、2005年;Land Auer、2001年、2003年および2005年)。この放射線防護効果の作用機構は、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)およびPTKによって引き起こされるアポトーシスの阻害、トポイソメラーゼIIの阻害、ホスファチジルイノシトール代謝回転および2次メッセンジャー系の阻害、アゴニストおよびアンタゴニスト両方のエストロゲン様作用、Y/CCA−AT結合因子の不活性化を通してのストレス遺伝子発現の低減、抗酸化活性の増加、アポトーシス、細胞周期停止および分化、免疫防御の向上ならびに/またはAKTキナーゼレベルの増加を含むゲニステインの公知の効果のいくつかを潜在的に含むことができる。ゲニステインの有益な効果は、フリーラジカルを低減させ、細胞膜構造を安定させるその抗酸化特性に一部起因する可能性もある。さらに、ゲニステインは、幹細胞を保護することおよび/または増殖を刺激することにおける役割を果たすこともできる。
【0046】
放射線への曝露の前、間および/または後に投与されるゲニステインは、例えば核爆発、放射性物質の漏れ、放射性物質への接近、癌放射線療法、放射線を利用する診断検査などから生じる電離放射線への曝露に起因する有害な細胞効果を除去するまたはその重症度を低減させるために用いることができる。ゲニステインは、急性の放射線症候群(ARS)(時には放射線毒性または放射線病として知られている)の処置および防止のために用いることができる。ARSは、非常に短い時間(通常せいぜい数分)にわたる高線量の透過性放射線(すなわち、0.7グレイ(Gy)または70ラド超、軽度の症状は0.3Gyまたは30ラドの低さの線量で可能である)による体のかなりの部分の照射に起因する急性の病気である。ARSの主要な原因は、特定の組織における未熟な実質性幹細胞の枯渇であると考えられている。
【0047】
したがって、放射線曝露を処置するための方法が本明細書で提供される。各実施態様において、放射線曝露のリスクがあるまたはそれを被った対象を特定し、本明細書に記載されているもののいずれかから選択されるゲニステイン製剤の治療有効量を対象に投与する
。具体的な実施態様において、放射線曝露を処置する方法は、ARSを防止するための方法であって、ARSのリスクがある対象を特定し、対象が放射線へ曝露される前に、本明細書に記載されているゲニステイン製剤の治療有効量を対象に投与する。他の実施態様において、放射線曝露を処置する方法は、ARSを処置するための方法であって、ARSを発症している対象を特定し、対象が放射線への曝露を被った後に、本明細書に記載されているゲニステイン製剤の治療有効量を対象に投与する。さらに他の実施態様において、放射線曝露のリスクがある対象を特定し、放射線への曝露の前に本明細書に記載されているゲニステイン製剤の治療有効量を対象に投与し、対象が放射線曝露を被っている場合には、放射線曝露が起こった後に治療有効量のゲニステインを投与し続ける。
【0048】
追加の実施態様において、癌放射線療法または放射線を利用する診断検査から選択される事象から生じる放射線曝露のリスクがあるまたはそれを被った対象を特定し、対象にゲニステイン製剤の治療有効量を投与する。そのような一実施態様において、そのような曝露の有害作用を防止するまたはその重症度を低減させるために、ゲニステイン製剤は放射線曝露の前に対象に投与される。別のそのような実施態様において、そのような曝露の有害作用の重症度を緩和、逆行または低減させるために、ゲニステイン製剤は放射線曝露の後に対象に投与される。さらに別の実施態様において、対象における癌放射線療法または放射線を利用する診断検査から選択される事象から生じる放射線曝露を処置する方法は、放射線曝露の前および後の両方で本明細書に記載されているゲニステイン製剤を投与することを含むことができる。
【0049】
本明細書に記載されている方法の実施態様の各々において、ゲニステイン製剤の治療有効量は、経口または非経口投与されてよい。具体的な実施態様において、ゲニステイン製剤が非経口投与される場合は、それは、例えば静脈内注射もしくは注入、皮下注射、血管内注射または筋肉内注射を介して投与することができる。製剤が経口投与される場合は、製剤は、本明細書に記載されているような経口投与に適する任意の様式で調製することができる。本明細書に記載されている治療方法の所与の実施態様に最も適当な用量および投与計画は、例えば、処置される対象、疾患または障害の性質、ならびに発生する任意の症状の重症度によって決めることができる。本明細書に記載されている通りに調製された製剤を用いて、当業者は、本明細書に記載されている方法の各々において治療効力を達成するために有用な適当な用量および投与計画を特定することができる。本明細書に記載されているゲニステイン製剤は、例えば、単一の用量として、定期1日用量として、1日2回用量として、1日3回用量として、または別の所望の投薬スケジュールに従って投与することができる。
【0050】
本明細書に記載されている製剤または方法を用いて送達されるゲニステインの1日総量は、処置される所望の状態または所望の治療効果によって決めることができる。具体的な実施態様において、本明細書によるゲニステイン製剤の治療有効量は、約50mg/日から約10,000mg/日の範囲の用量のゲニステインを送達するのに十分な量であってよい。特定のそのような実施態様において、対象に投与されるゲニステイン製剤の量は、約50mg/日から約9,000mg/日、約50mg/日から約8,000mg/日、約50mg/日から約2,000mg/日、約100mg/日から約9,000mg/日、約100mg/日から約5,000mg/日、約100mg/日から約4,000mg/日および約100mg/日から約2,000mg/日から選択される用量のゲニステインを送達するのに十分である。
【実施例】
【0051】
実施例1
ゲニステインの溶解度
ゲニステインについて計算されたpKaは7〜9の範囲であり、予測される溶解度は最
も低いpKaに従ってpH7より上で増加する。計算された特性を用いて、いくつかの許容される共溶媒へのゲニステインのpH−溶解度プロファイルのための適当なpH範囲を設計し、pH範囲はpH6〜9であることが確認された。ゲニステインの溶解度はより高いpHで増加したが、pH9で分解が観察された。表1は、選択された薬学的に許容される共溶媒へのゲニステインの溶解度の結果を示す。
【0052】
【表1】
【0053】
水へのゲニステインの溶解度はpH6〜7で検出不可能であり、そのことは、溶解度が0.02mg/mL未満またはH2O1gあたり約0.00002g(最低濃度)である
ことを意味する。共溶媒へのpH−溶解度および溶解度に基づき、PEG400が最も高い溶解度を達成する共溶媒であると判定された。非経口製剤は好ましくは最大50%の有機成分を有するので、エタノール(EtOH)、Nメチルピロリドン(NMP)および界面活性剤の添加が考慮されたが、その理由は、これらが注射部位からの吸収を強化することが予想されたからである。エタノールは、粘度低下の付加利益を有する。ポリソルベート80(Tween 80)は12%の高さのレベルでの承認された非経口剤形でのその使用に起因して界面活性剤とみなされた(FDA不活性成分指針)が、より一般的な範囲は0.1〜1%である。溶解度を、非経口剤形のために許容される濃度を有する2つの水性/有機混合物においてさらに評価した。さらに、シクロデキストリン製剤を評価した。ゲニステインの溶解度試験の結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例2
ナノ粒子状ゲニステイン組成物
これまでに評価されたゲニステイン製剤のいずれも、所望のレベルの薬剤負荷を達成しなかった。より高い薬剤負荷を達成するために、滅菌注射用懸濁液を本明細書に従って調製した。製剤は、50mMリン酸緩衝生理食塩水(61mM塩化ナトリウム)中の5%ポビドンK17(w/w)、0.2%ポリソルベート80(w/w)のビヒクル溶液でナノ粉砕されたナノ粒子状ゲニステインを含んだ。製剤の量的組成を表3に記載する。
【0056】
【表3】
【0057】
表1に記載されている各成分および賦形剤の機能は以下の通りである:1)ポリソルベート80は、湿潤を可能にしかつ懸濁したゲニステイン原薬の凝集の防止を助ける界面活性剤として含まれ、2)ポビドンK17は、ゲニステイン原薬懸濁液の安定化を助ける粘度強化剤として含まれ、3)リン酸ナトリウム緩衝液、塩化ナトリウムは、希釈剤として含まれ、生理的オスモル濃度を達成し、組成物の非経口投与のためのpHを維持するために含まれる。
【0058】
50mMリン酸ナトリウム緩衝液/61mM塩化ナトリウム溶液の組成物は、表4に示す通りである。
【0059】
【表4】
【0060】
実施例3
第2のナノ粒子状ゲニステイン組成物
本明細書に記載されている第2のナノ粒子状ゲニステイン製剤を調製した。ナノ粉砕されたゲニステインは、閉鎖系における連続分散および微細湿式磨砕のための水平磨砕容器内の撹拌ビーズミルを利用する湿式ビーズ粉砕を用いて達成された。DYNO(登録商標)−Mill Type Multi Lab撹拌ビーズミルを用いてナノ粒子状ゲニステインを調製し、そこで、分散および磨砕のための必要なエネルギーは、撹拌機シャフト上に取り付けられた撹拌機ディスクを介して磨砕ビーズに伝えらえた。製品ポンプを介して材料をミルに連続的に供給した。ダイナミックギャップ分離器のギャップ設定、ビーズの直径および粉砕時間の長さを用いて、粒径分布を決定した。規定の粒径分布に到達するまで、ミルを通して製品を連続的に供給した。この研究においてDYNO(登録商標)−Mill Type Multi Lab撹拌ビーズミルを利用したが、他の高エネルギー湿式ビーズ粉砕プロセス設備を利用してもよい。
【0061】
安定した粒径分布を維持するために湿潤剤としてポリソルベート80またはポロキサマー188のいずれかを組み込んだ2つの製剤を試験した。粘度強化剤ならびに粒子凝集に抗する安定剤として、ポビドン(ポリビニルピロリドン(PVP))K17を製剤中に5%のレベルで用いた。製剤の量的組成を表5に示す。
【0062】
【表5】
【0063】
製剤は、滅菌注射用水の代わりに、pH調節およびオスモル濃度のためのリン酸緩衝生理食塩水を含むこともできる(例えば、実施例2に記載されている製剤において提供されたように)。
【0064】
製剤は、優れた、再現性のある安定した粒径分布プロファイルを示し、0.2μm未満
のd(0.5)であった。光学顕微鏡法により、懸濁液中の均一な粒径が確認された。粉砕プロセスの結果としての、または製剤不適合性の結果としてのゲニステイン材料の物理的結晶変化を検討するために、粉末のX線回折(XRD)を実施した。実施された分析は、ゲニステイン原薬ならびに0.2%(w/w)ポリソルベート80を5%(w/w)ポビドンK17と一緒に含有する、および0.2%(w/w)ポロキサマー188を5%(w/w)ポビドンK17と一緒に含有する粉砕された懸濁液について粉砕後の結晶形における変化がなかったことを示す。
【0065】
0.2%(w/w)ポリソルベート80を5%(w/w)ポビドンK17と一緒に含有するナノ粒子状ゲニステイン(300mg/mL)から構成されているナノ粉砕されたゲニステイン懸濁液を、5℃、30℃(65%RH)、および(40℃75%RH)で安定化した。懸濁液を、20mmのPTFE表面加工ブチルゴム栓を備える5mLの血清バイアル中に保存した。7カ月後に不純物は観察されず、粒径分布における有意な変化はなかった。
【0066】
実施例4
ゲニステイン懸濁製剤とゲニステイン溶液製剤とのin vivo比較
この実験は、本明細書によるゲニステインのナノ粒子状製剤を評価し、それをPEG400溶液製剤中のゲニステインの投与と比較した。ゲニステイン懸濁製剤は、50nMリン酸緩衝生理食塩水中のナノ粉砕されたゲニステインを0.2%(w/w)ポリソルベート80および5%(w/w)PVP K17と一緒に含んだ。懸濁製剤は6.96のpHを示し、懸濁製剤に組み込まれたナノ粒子状ゲニステインは0.126μmのD(0.50)および0.253μmのD(0.90)を示した。製剤は、照射の24時間前に皮下注射(「SC」)によって投与された。各製剤について別々のビヒクルおよびゲニステイン群が含まれた。研究は、8.75Gyまたは9.0Gyのいずれかの、2つの放射線量で実行された。
【0067】
0.6Gy/分で8.75Gyまたは9.0Gyの線量での両側性全身放射線照射へ、雄CD2F1マウスを曝露した。30日生存率がこの研究のエンドポイントであった。この研究において評価された異なる実験群を表6に詳述する。
【0068】
【表6】
【0069】
表6および図1に示すように、8.75Gyでのゲニステインの溶液製剤(ゲニステイン(PEG−400))およびゲニステインの懸濁製剤(ゲニステイン(ナノ))を受けた群における30日生存率は、それぞれ81%および100%であった。対照群(ビヒクル(PEG−400)およびビヒクル(ナノ))の生存率は、それぞれ38%および25%であった。9.0Gyでは、ゲニステイン(PEG−400)群およびゲニステイン(ナノ)群の30日生存率は、それぞれ81%および88%であった。対照群(ビヒクル(PEG−400)およびビヒクル(ナノ))の生存率は、それぞれ38%および19%であった。照射の24時間前にゲニステインを受けたあらゆる群が、それらのそれぞれの対照群と有意に(p<0.05)異なった。
【0070】
実施例5
非経口投与されたゲニステイン懸濁製剤ならびに経口的に与えられたゲニステイン懸濁製剤およびゲニステイン溶液製剤のin vivo比較
この実験は、筋肉内注射(「IM」)によって与えられた、実施例4に記載の通りに調製されたゲニステインナノ粒子状懸濁製剤(ゲニステイン−IS)の効果を、経口的に与えられたPEG400溶液製剤およびゲニステインIS懸濁製剤の効果と比較して評価した。異なる製剤を照射前の6日間1日2回投与した。照射の24時間前にIM投与されるゲニステイン−ISである陽性対照も含まれた。各群について別々のビヒクルおよびゲニステイン群が含まれた。研究は、9.25Gyの1放射線量で実行された。0.6Gy/分で9.25Gyの線量での両側性全身放射線照射へ、雄CD2F1マウスを曝露した。30日生存率がこの研究のエンドポイントであった。
【0071】
【表7】
【0072】
表7に示すように、9.25Gyでの経口投与されたゲニステイン/PEG400およびゲニステイン−ISの30日生存率は、それぞれ80%および85%であった。対照群(ビヒクルのみの投与)の生存率は、それぞれ0%および15%であった。陽性対照群、照射の24時間前にIM投与されたゲニステインISは、ビヒクルについて10%であるのに対して85%の生存百分率を有した。
【0073】
IMまたは経口のいずれかによってゲニステインを受けたあらゆる群が、それらのそれぞれの陰性対照群と有意に(p<0.05)異なった。しかし、ゲニステイン/PEG−400とゲニステインIS製剤との間で生存率において有意差はなかった。
【0074】
実施例6
9.0Gyの60Co照射の24時間前、18時間前、12時間前または6時間前に皮下投与されたビヒクル注射懸濁液およびゲニステインナノ粒子状注射懸濁液による放射線防護経時的研究
以前の実験は、本明細書に従って調製されたナノ粒子状ゲニステイン注射懸濁液(ゲニステイン−IS)が、照射の24時間前に生理食塩水ベースのビヒクル中で投与された場合に、統計的に有意な放射線防護結果を示した。この経時的研究は、SC投与されたゲニステイン−ISによる放射線防護効力に対する時間依存効果があったかどうか判定するために実施された。ゲニステイン−ISの時間依存効果は、プラセボ製剤(ビヒクル−IS)と比較された。ゲニステイン−IS製剤は、実施例4に記載されている通りに調製された。
【0075】
雄CD2F1マウスをこの実験で用いた。全ての群は、照射の24時間前、18時間前、12時間前または6時間前に単回の200mg/kgSC投与を受けた。SC注射剤は、1mlツベルクリン注射器を介して、25G針を用いて0.1mlの注射量で首筋に投与した。0.6Gy/分で9.0Gyの線量での両側性全身放射線照射へ、全てのマウス
を曝露した。30日生存率がこの研究のエンドポイントであった。
【0076】
【表8】
【0077】
表8および図2に示した結果は、照射の24時間前、18時間前、12時間前または6時間前に投与されたゲニステイン−ISの単回のSC投与が、それぞれ88%、69%、81%および63%の30日生存率をもたらしたことを実証する。対応する時点でのビヒクル−IS群についての生存率は、それぞれ44%、13%、44%および38%であった。ゲニステイン−ISは、照射の24時間前または18時間前のいずれかに注射されたときに、有意(p<0.05)な放射線防護をもたらした。
【0078】
実施例7
9.25Gyの60Co照射の24時間前に投与されたときの、放射線防護効力に対するナノ粒子状ゲニステイン製剤の皮下対筋肉内注射の効果
この実験の目的は、SC投与またはIM投与されたときに200mg/kgのゲニステイン用量を提供するように送達される、本明細書に記載されている通りに調製されたナノ粒子状ゲニステイン懸濁製剤(ゲニステイン−IS)の放射線防護効力を比較することであった。ゲニステイン−IS製剤は、実施例4に記載されている通りに調製された。雄CD2F1マウスをこの実験で用いた。群は、照射の24時間前に、プラセボ注射用懸濁液(ビヒクル−IS)またはゲニステイン−IS(200mg/kg)の単回のSCまたはIM注射が与えられた。この実験には、照射の24時間前にSC投与される、200mg/kgのゲニステイン用量を提供するように送達されるPEG400中のゲニステインの溶液製剤(ゲニステイン)またはプラセボPEG400製剤(PEG400)を受ける群も含まれた。
【0079】
全てのビヒクルおよびゲニステイン−IS群は、照射の24時間前に単回の200mg
/kgのSCまたはIM注射を受けた。SC注射剤は、1mlツベルクリン注射器を介して、25G針を用いて0.1mlの注射量で首筋に投与された。ハミルトン注射器に装着された25G針を用いて、四頭筋の筋肉へのIM注射によってビヒクル−ISまたはゲニステイン−ISをマウスに投与した。注射量は50μlであった。
【0080】
0.6Gy/分で9.25Gyの線量での両側性全身放射線照射へマウスを曝露した。30日生存率がこの研究のエンドポイントであった。
【0081】
【表9】
【0082】
SC投与されたビヒクル−PEG400およびゲニステインPEG400についての生存率は、それぞれ15%および75%であった。この結果として、ゲニステインはPEG400ビヒクルよりも統計的に有意な放射線防護をもたらした(p<0.05)(表9および図3に示す)。
【0083】
ビヒクル−ISまたはゲニステイン−ISがSC投与された場合は、30日生存率はそれぞれ30%および85%であった。IM投与の場合は、ビヒクル−ISおよびゲニステイン−ISについての生存率は、それぞれ15%および75%であった。SCおよびIM経路の両方について、ゲニステインはビヒクルよりも有意な保護を提供した(p<0.05)(表9および図3に示す)。
【0084】
これらの結果は、本明細書に従って調製されたナノ粒子状ゲニステイン製剤が、SCまたはIMのいずれかの経路によって投与された場合、類似したレベルの放射線防護を提供することを実証する。
【0085】
実施例8
14C−ゲニステインの静脈内または筋肉内注射の後のマウスにおける薬物動態
表10の結果に示すように、雄CD1マウスに単一のIM用量(群2、名目200mg/kg)または単一のIVボーラス用量(群3、名目50mg/kg)の14C−ゲニステインを投与した。用いられたゲニステイン製剤は、滅菌水中に懸濁したゲニステインを0.2%(w/w)ポリソルベート80および5%(w/w)PVP K17と一緒に含む
懸濁製剤であった。懸濁製剤で用いられたゲニステイン材料は、0.136μmのD(0.50)および0.310μmのD(0.90)を示した。投薬後、血液、血漿、排泄物および死体中の放射能の含有量および濃度、ならびに全血および血漿中の全放射能の非コンパートメント薬物動態を判定した。用量を投与した後、あらゆる臨床徴候の程度および重症度を評価した。200mg/kg(IM)および50mg/kg(IV)の用量レベルは忍容性が高く、したがって主研究のために選択された。
【0086】
両用量製剤における放射能濃度は、液体シンチレーション分光法によって投与の前後に測定されたが、両方の場合で類似していた。用量の投与の前後に、両用量製剤における試験品の放射化学安定性を評価した。筋肉内用量製剤(群2)由来の用量製剤試料における試験品の平均放射化学安定性は、それぞれ98.5%および98.2%であった。静脈内用量製剤(群3)由来の投与前後の試料についての平均放射化学安定性値は、それぞれ98.3%および98.5%であった。したがって、両方の製剤中の14C−ゲニステインは、投薬期間全体にわたって放射化学的に安定していたとみなされた。14C−ゲニステインの単回のIM投与(200mg/kg)または14C−ゲニステインの単回のIV投与(50mg/kg)の後、主研究の雄マウスのいずれにおいても処置関連の臨床徴候は観察されなかった。
【0087】
全血試料を収集し、遠心分離によって血漿を得た。全血および血漿中の放射能濃度は、液体シンチレーション分光法によって測定した。薬物動態パラメータは複合濃度対時間プロファイルから計算された。薬物動態パラメータを表10に提示する。
【0088】
【表10】
【0089】
群2については、投与の30分後(最初の分析時点)に血漿および全血中の最も高い平均放射能濃度が観察されたが、このことはIM用量からの急速な吸収を示唆している。1未満の血液対血漿比は、用量依存性材料が、投与後のいかなるときでも血球と特に関連していないことを示唆した。AUC0-infによって測定されたように、用量依存性材料への
血漿の曝露は全血のそれより大きく、クリアランス速度はより遅かった(t1/2によって
測定されたように)。IM投与後の全身曝露(AUC0-inf)は比較的良好であり、全放
射能の相対的生物学的利用能は血液および血漿についてそれぞれ49.7%および83.5%と推定された。
【0090】
群3については、投与の30分後(最初の分析時点)に血漿および全血中の放射標識材料の最も高い平均濃度が観察された。初期の時点(0〜24時間)では、1未満の血液対血漿比によって反映されているように、血漿中の濃度は血中のそれらより常に高かった。このことは、用量依存性材料が、これらの時点で血球と特に関連していないことを示した。24時間後、血中放射能濃度は血漿中のそれらより常に高かったが、このことは用量依存性材料が血球と関連していることを示唆している。AUC0-infによって測定されたよ
うに、用量依存性材料への血漿の曝露は全血と類似していたが、t1/2によって測定され
たようにクリアランス速度はより速かった。
【0091】
IM投与またはIVボーラス投与の後の排泄の主要な経路は尿を介するものであり、より小さな百分率が糞便において回収された。筋肉内および静脈内投与の後の排泄物における回収率は非常に類似しており、尿についておよそ52.5%から54.0%であり、糞便についておよそ31.3%から35.5%であった。両方の投与経路について、排泄は比較的急速であり、投与された用量の大部分が24時間以内に排泄された。糞便において回収された、投与された放射標識材料の割合は、用量依存性材料の胆汁中排泄が両投与経路の後に起こったことを示唆した。排泄物回収率は群2および3についてそれぞれおよそ92%および93%であったが、このことは排泄が投与の168時間後までに本質的に完了したことを示している。両方の経路について、投与された放射標識材料の小さな百分率が残りの死体において見出された。したがって、放射能の全体の平均質量収支は良好であり、群2および3の動物の両方について、投与された用量のおよそ93%から94%であった。
【0092】
結論として、雄マウスに、IM用量(200mg/kg)またはIVボーラス用量(50mg/kg)の14C−ゲニステインを投与した。全血、血漿、排泄物および死体中の放射能濃度を判定した。最も高い放射能濃度は筋肉内または静脈内ボーラス投与の30分後に観察されたが、このことは筋肉内投与からの急速な吸収を示している。筋肉内投与の後の用量依存性材料の生物学的利用能は良好であり、49%を超えていた。放射能は速やかに排泄され、両方の投与経路について尿が排泄の主要な経路であった。筋肉内または静脈内ボーラス投与の後の糞便において回収された高レベルの放射能は、胆汁中排泄が起こったことを示唆した。両方の投与経路の後の用量依存性材料の全回収率は、投与の168時間後までに本質的に完了した。
【0093】
実施例9
14C−ゲニステインの静脈内または筋肉内注射の後のビーグル犬における薬物動態
雄ビーグル犬に、単回のIVボーラス用量(群1、名目20mg/kg)または単回のIM用量(群2、名目20mg/kg)の14C−ゲニステインを投与した(結果を表11に示す)。用いられたゲニステイン懸濁製剤は、実施例8に記載されている通りに調製された。投薬後、血液、血漿および排泄物中の放射能の含有量および濃度、ならびに全血および血漿中の全放射能の非コンパートメント薬物動態を判定した。両方の用量製剤における放射能濃度は、液体シンチレーション分光法によって投与の前後に測定されたが、両方の場合で類似していた。用量の投与の前後に、両方の用量製剤における試験品の放射化学安定性を評価した。静脈内用量製剤(群1)由来の投与前後の試料についての平均安定性値は、それぞれ100%および99.6%であった。筋肉内用量製剤(群2)由来の投与前後の試料についての平均安定性値は、それぞれ99.2%および98.9%であった。したがって、両方の製剤中の14C−ゲニステインは、投薬期間全体にわたって放射化学的に安定していたとみなされた。
【0094】
全血試料を収集し、遠心分離によって血漿を得た。全血および血漿中の放射能濃度は、液体シンチレーション分光法によって測定された。薬物動態パラメータは濃度対時間プロファイルから計算された。薬物動態パラメータを表11に提示する。
【0095】
【表11】
【0096】
群1(IVボーラス用量)については、投与の15分後(最初の分析時点)に血漿および全血中の放射標識材料の最も高い平均濃度が観察された。1未満の血液対血漿比によって反映されているように、血漿中の濃度は血中のそれらより常に高かった。このことは、用量依存性材料が、これらの時点で血球と特に関連していないことを示した。AUC0-infによって測定されたように、用量依存性材料への血漿の曝露は全血のそれより大きかっ
たが、t1/2によって測定されたようにクリアランス速度は類似していた。
【0097】
群2(IM用量)については、投与の2時間後に血漿および全血中の最も高い平均放射能濃度が観察されたが、このことは筋肉内投与からの比較的急速な吸収を示唆している。1未満の血液対血漿比は、用量依存性材料が、投与後のいかなるときでも血球と特に関連していないことを示唆した。AUC0-tlastによって測定されたように、用量依存性材料
への血漿の曝露は全血のそれより大きかった。クリアランス速度(t1/2によって測定さ
れたように)は、IVボーラス投与の後に観察されたものよりも一般に遅かった。しかし、IM投与後の全身曝露(AUC0-tlast)は良好であり、全放射能の相対的生物学的利
用能は血液および血漿についてそれぞれ92.9%および96.1%と推定された。
【0098】
静脈内ボーラス投与またはIM投与の後の排泄の主要な経路は糞便を介するものであり、より小さな百分率が尿において回収された。IVボーラスおよびIM投与の後の排泄物における回収率は非常に類似しており、糞便についておよそ48.7%から51.9%であり、尿についておよそ32.0%から33.6%であった。両方の投与経路について、排泄は比較的急速であり、投与された用量の大部分が48時間以内に排泄された。糞便において回収された、投与された放射標識材料の割合は、用量依存性材料の胆汁中排泄が両方の投与経路の後に起こったことを示唆した。投与の168時間後までの排泄物回収は、
群1および2についてそれぞれおよそ87.9%および85.8%であった。したがって、両群についての放射能の全体の平均排泄物質量収支は良好であり、投与された用量のおよそ86〜88%であった。
【0099】
結論として、雄イヌに、IVボーラス用量(20mg/kg)またはIM用量(20mg/kg)の14C−ゲニステインを投与した。全血、血漿および排泄物中の放射能濃度を判定した。臨床徴候が両群において観察され、用量依存性であるとみなされた。投与の15分後(静脈内投与)または2時間後(筋肉内投与)に血液および血漿中の最も高い放射能濃度が観察されたが、このことはIM投与からの比較的急速な吸収を示している。IM投与の後の用量依存性材料の生物学的利用能は良好であり、92%を超えていた。試験品関連の材料は速やかに排泄され、両方の投与経路について糞便が排泄の主要な経路であった。IVボーラスまたは筋肉内投与の後の糞便において回収された高レベルの放射能は、胆汁中排泄が起こったことを示唆した。両方の投与経路についての排泄物質量収支は良好とみなされ、85%を超えていた。
【0100】
実施例10
経口薬物動態比較研究
(PEG400中のゲニステイン溶液製剤)対(本明細書に従って調製されたゲニステインナノ懸濁剤)の経口生物学的利用能の比較を実行した。ゲニステイン懸濁製剤は、実施例4に記載されている通りに調製された。より初期の前臨床および臨床研究におけるゲニステインの限られた経口生物学的利用能を考慮して、この実験は、ビヒクルとしてPEG400で調製された以前に用いられたゲニステイン溶液製剤と、本明細書に記載されている通りに調製されたゲニステインナノ懸濁製剤とを比較するように設計された。
【0101】
2つの製剤の各々について、各時点(70匹のマウス)で7匹のマウスの10群を準備した(合計マウス=140匹)。400mg/kgの単回用量のゲニステインを強制経口投与によって与え、次に以下の10時点で血液を収集した。血液収集の時点は、以下の通りであった:投与の0、0.5、1、2、3、4、6、8、10および12時間後。
【0102】
ナノ粒子状懸濁剤に関する経口生物学的利用能は、PEG400溶液製剤において達成されたものよりも統計学的に有意に高かった。遊離および総ゲニステインレベルの両方を各群において時点ごとに判定した。7匹のマウスの平均濃度を各時点について判定し、報告した。0時間時点で、遊離および総ゲニステイン濃度は定量限界未満であり、報告されなかった。ナノ粒子状懸濁剤を受けたマウスについては、PEG400溶液製剤を受けたマウスにおいて達成された濃度と比較して、遊離ゲニステイン濃度は1、2、4、8、10および12時間時に有意により高かった。ナノ粒子状懸濁剤に関する総ゲニステイン濃度も、PEG400溶液製剤と比較して、0.5、1、2、4、8、10および12時間時に有意に高かった。表12および表13に記すように、ならびに図4および図5に示すように、ナノ粒子状懸濁剤についての吸収および排泄曲線はまた、遊離および総ゲニステイン濃度の両方について、PEG400製剤によって達成されたものよりはるかに予測可能であり、不規則性が低い。マウスにおける2つの異なるゲニステイン製剤についての400mg/kgの単回の経口投与後の遊離ゲニステインの判定。
【0103】
【表12】
【0104】
【表13】
【0105】
実施例11
非ナノ粒子状ゲニステイン懸濁製剤およびナノ粒子状ゲニステイン製剤の経口生物学的利用能の比較
以前の実験において、PEG−400に溶解したゲニステインの製剤と比較して、経口投与されたゲニステイン−IS懸濁製剤に関する向上した経口生物学的利用能を実証することができた。この実験は、非ナノ粒子状ゲニステイン材料を含んだ水性ゲニステイン懸濁製剤の経口生物学的利用能を、実施例4に記載されている通りに調製されたゲニステイン−IS製剤によって提供されたものと比較した。非ナノ粒子状ゲニステイン(genisten)懸濁製剤は、ゲニステイン(genestein)材料が、ゲニステイン−IS懸濁製剤によっ
て示された0.13μmの容積平均粒径の代わりに8μmの容積平均粒径を示したことを
除いて、ゲニステイン−IS製剤と同じであった。
【0106】
2つの製剤の各々について、各時点で7匹のマウスの10群(70匹のマウス)を準備した(合計マウス=140匹)。400mg/kgの単回用量を強制経口投与によって与え、次に以下の10時点で血液を収集した。血液収集の時点は、以下の通りであった:投与の0、0.5、1、2、4、6、8、10、12および24時間後。
【0107】
遊離および総ゲニステインレベルの両方を各群において時点ごとに判定した。7匹のマウスの平均濃度を各時点について判定し、報告した。0時間時点で、遊離および総ゲニステイン濃度は定量限界未満であり、報告されなかった。ゲニステイン−IS懸濁製剤マウスについては、遊離ゲニステイン濃度は、非ナノ粒子状ゲニステイン製剤によって達成されたものと比較して、0.5、1および2時間時に有意により高かった(表14を参照)。ゲニステイン−IS懸濁製剤での総ゲニステイン濃度も、非ナノ粒子状ゲニステイン製剤によって達成されたものと比較して、0.5、1および2時間時に有意に高かった(表15を参照)。図6および図7に記すように、ゲニステイン−IS懸濁製剤についての吸収および排泄曲線はまた、遊離および総ゲニステイン濃度の両方について、非ナノ粒子状ゲニステイン製剤によって達成されたものよりはるかに予測可能であり、不規則性が低い。
【0108】
【表14】
【0109】
【表15】
【0110】
本発明の基礎をなす原理から逸脱せずに上記の実施態様の詳細へ多くの変更をなすことができることが、当業者には明らかであろう。したがって本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲だけによって決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7